特許拒絶査定不服審判
2016-005176
内燃機関のためのレーザ誘起式の外部点火装置
- 審判番号
- 2016-005176
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-222308外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年04月07日
- 審決日
- 2017年02月24日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
- 【請求人代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 【請求人代理人】前川 純一
- 【請求人代理人】二宮 浩康
- 【請求人代理人】上島 類
- 分類
- P18 .121-Z (F02P) / P18 .575-Z (F02P)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-222308「内燃機関のためのレーザ誘起式の外部点火装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月13日出願公開、特開2014- 43861〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本願は、2009年11月18日(優先権主張 2008年11月21日 ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする特願2011-536846号(以下、「原出願」という。)の一部を平成25年10月25日に新たな特許出願としたものであって、平成25年10月25日に上申書が提出された後、平成26年12月12日付けで拒絶理由が通知され、平成27年7月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年11月27日付けで拒絶査定がされ、平成28年4月7日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、さらに、平成28年9月7日に上申書が提出されたものである。
第2.平成28年4月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年4月7日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.本件補正
(1)本件補正の内容
平成28年4月7日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に関しては、本件補正前の(すなわち、平成27年7月6日提出の手続補正書によって補正された)特許請求の範囲の請求項1の下記(ア)の記載を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の下記(イ)の記載へと補正するものである。
(ア)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
内燃機関(10)のためのレーザ点火装置であって、レーザ活性固体(44)を備えた点火レーザ(26)と、燃焼室窓(58)と、ハウジング(38)とを有している形式のものにおいて、
ハウジング(38)の、燃焼室窓(58)が配置されている端部に、オリフィス(74)が設けられており、
オリフィス(74)が円錐形に構成されており、オリフィス(74)の直径(DB)は燃焼室窓(58)に向かって次第に大きくなっており、オリフィス(74)の円錐角(β)はレーザパルス(24)の出射角(α)に相当し、
レーザパルスの外側輪郭と前記オリフィス(74)との間に前記オリフィス(74)の全長に亘って1mmよりも小さいギャップが存在するよう、前記オリフィス(74)の寸法が決められていることを特徴とする、内燃機関(10)のためのレーザ点火装置。」
(イ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
内燃機関(10)のためのレーザ点火装置であって、レーザ活性固体(44)を備えた点火レーザ(26)と、燃焼室窓(58)と、ハウジング(38)とを有している形式のものにおいて、
ハウジング(38)の、燃焼室窓(58)が配置されている端部に、オリフィス(74)が設けられており、
オリフィス(74)が円錐形に構成されており、オリフィス(74)の直径(DB)は燃焼室窓(58)に向かって次第に大きくなっており、オリフィス(74)の円錐角(β)はレーザパルス(24)の出射角(α)に相当し、
レーザパルスの外側輪郭と前記オリフィス(74)との間に前記オリフィス(74)の全長に亘って1mmよりも小さいギャップが存在するよう、前記オリフィス(74)の寸法が決められており、
ハウジング(38)は、雄ねじ山を有するインナースリーブ(62)と雌ねじ山を有するアウタースリーブ(64)とを有し、
アウタースリーブ(64)は、燃焼室(14)に向いた側の端部に段部(66)を一体的に有し、
アウタースリーブ(64)の雌ねじ山がインナースリーブ(62)の対応する雄ねじ山と協働することにより、段部(66)が燃焼室窓(58)をインナースリーブ(62)に押し付けることを特徴とする、内燃機関(10)のためのレーザ点火装置。」(なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)
(2)本件補正の目的
本件補正は、オリフィス(74)の直径の符合を「DB」から「DB」に補正することによって誤記を訂正するとともに、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明における発明特定事項である「ハウジング(38)」について、「雄ねじ山を有するインナースリーブ(62)と雌ねじ山を有するアウタースリーブ(64)とを有し、アウタースリーブ(64)は、燃焼室(14)に向いた側の端部に段部(66)を一体的に有し、アウタースリーブ(64)の雌ねじ山がインナースリーブ(62)の対応する雄ねじ山と協働することにより、段部(66)が燃焼室窓(58)をインナースリーブ(62)に押し付ける」ことを限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に関しては、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
2.独立特許要件についての判断
本件補正における特許請求の範囲の請求項1に関する補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。
2.1 引用文献
(1)引用文献の記載
原出願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である実願昭53-172504号(実開昭55-88074号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献」という。)には、「内燃機関の点火装置」に関し、図面とともに、例えば、次のような記載がある。
(ア)「 本考案は内燃機関の点火装置、特に高エネルギ密度の光ビームを用いて点火を行うようにした点火装置に関する。
…(中略)…
このため、例えば、レーザ等の高エネルギ密度の光を用いて混合気等の燃料に点火させるようにした点火装置が提案されている。」(明細書第2ページ第15行ないし第3ページ第12行)
(イ)「 以下、本考案の実施例を図面を用いて説明する。
第1図は本考案点火装置の一実施例を内燃機関に取付けた状態の縦断側面図を示す。光透過体1を所定位置に保持させるためのホルダ2は外筒3と内筒4とからなる。光透過体1には凸レンズが用いられており、燃焼室5内の最適位置に光ビームの焦点Fが結ばれるように燃焼室5側の端部近傍でホルダ2の外筒3に挿入され内筒4により固定されている。外筒3は外周に設けられたねじ3aでシリンダヘツド6に螺合して取付け固定され、内筒4は外筒3の端部3bをその間にリング7を挾んでかしめることにより外筒3に固定されている。円筒4の内面4aには光エネルギをよく反射させる物質、例えば、銅或はアルミニウム等がコーテイングされている。また、内筒4の後端、すなわち、燃焼室5から遠い側の端部の外周にねじ4bが設けられており、光エネルギ発生装置(図示せず)からの光エネルギを伝えるための光路管8と螺合により接続されている。」(明細書第5ページ第8行ないし第6ページ第11行)
(ウ)「 第2図は本考案点火装置の他の実施例を示す。この装置で、外筒3に対する内筒4の固定は夫々に設けたねじ3cと4cとの螺合によつて行われている。そして前記実施例で用いた1つの光透過体1を燃焼室5からの燃焼ガスをシールするための耐熱性の高い光透過体1Aと、光エネルギ発生装置から送られた光ビームを集光させる凸レンズの光透過体1Bとに分割させて用いている。光透過体1Aはガスケツト9を介して外筒3に固定され、光透過体1Bはアダプタ13に取付けられて光透過体1Aとの間にスペーサ14を介し外筒3内に挿入され内筒にて固定されている。凸レンズは通常その材質およびコーテイング物質のために耐熱性が劣つており、燃焼室5から出来るだけ遠去けることにより高価で優れた材質の光透過体1Bを用いることができる。この光透過体1Bの交換は内筒4を外筒3から外すことによつて行う。」(明細書第8ページ第3行ないし第9ページ第4行)
(エ)「第4図は本考案装置の更に他の実施例を示す。この装置では、光透過体1は外筒3の先端すなわち燃焼室5側端部から比較的奥の位置にあつて外筒3と内筒4とによつて固定されている。そして外筒3の先端には、光透過体1を透過した光エネルギが妨げられることなく通過して燃焼室5内に焦点Fを結ぶことができる程度の小孔15が穿設されている。このため光透過体1は着火・爆発時の燃焼室5側の火炎を外筒3の先端でさえぎられて直接高熱にさらされることがない。」(明細書第9ページ第9行ないし第10ページ第3行)
(オ)「 上述のように、本考案点火装置によれば、下記の特長を有するものである。
…(中略)…
(4) またホルダの奥所に光透過体を位置させ光透過体からの集光ビームが通過する程度の小孔を残してホルダの先端を塞ぐ構成とすることにより光透過体を火炎から隔離できる。」(明細書第11ページ第5行ないし第12ページ第9行)
(2)引用文献記載の事項
上記(1)(ア)ないし(オ)並びに第1図、第2図及び第4図の記載から、以下の事項が分かる。
(カ)上記(1)(ア)ないし(ウ)並びに第1図、第2図及び第4図の記載から、引用文献には、内燃機関のためのレーザ等の高エネルギ密度の光ビームを用いて点火を行うようにした点火装置が記載されていることが分かる。
(キ)上記(1)(イ)並びに第1図、第2図及び第4図の記載から、引用文献に記載された点火装置は、光エネルギ発生装置からの光エネルギを伝えるための光路管8と、光透過体1と、外筒3と内筒4とからなるホルダ2とを有していることが分かる。
(ク)上記(1)(エ)及び第4図の記載から、引用文献の第4図に実施例として記載された点火装置は、ホルダ2の光透過体1が配置されている端部に、小孔15が設けられていることが分かる。
(ケ)第4図において、小孔15は、円筒体と切頭円錐体を、この順に燃焼室側から並置した形状の孔であり、切頭円錐体形状の部分において、その直径は光透過体1に向かって次第に大きくなっていることが看取できる。
(コ)上記(1)(イ)及び(エ)並びに第4図の記載から、引用文献の第4図に実施例として記載された点火装置において、内筒4は外筒3の端部3bをその間にリング7を挾んでかしめることにより外筒3に固定され、光透過体1は外筒3の先端すなわち燃焼室5側端部から比較的奥の位置にあつて外筒3と内筒4とによつて固定されていることが分かる。
(サ)上記(1)(ウ)及び第2図の記載から、引用文献の第2図に実施例として記載された点火装置において、ホルダ2は、雄ねじ4cを有する内筒4と雌ねじ3cを有する外筒3とを有し、外筒3は、燃焼室に向いた側の端部に段部を一体的に有し、外筒3の雌ねじ3cと内筒4の外筒4cの螺合により、光透過体1Aがガスケット9を介して外筒3に固定されることが分かる。
(3)引用発明
上記(1)及び(2)(カ)ないし(コ)並びに第1図及び第4図の記載から、引用文献には第4図に記載された実施例に着目すると、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「内燃機関のためのレーザ等の高エネルギ密度の光ビームを用いて点火を行うようにした点火装置であって、光エネルギ発生装置からの光エネルギを伝えるための光路管8と、光透過体1と、ホルダ2とを有しているものにおいて、
ホルダ2の、光透過体1が配置されている端部に、小孔15が設けられており、
小孔15は、円筒体と切頭円錐体を、この順に燃焼室側から並置した形状の孔であり、切頭円錐体形状の部分において、その直径は光透過体1に向かって次第に大きくなっており、
内筒4は外筒3の端部3bをその間にリング7を挾んでかしめることにより外筒3に固定され、光透過体1は外筒3の先端すなわち燃焼室5側端部から比較的奥の位置にあつて外筒3と内筒4とによつて固定されている点火装置。」
(4)引用文献記載技術
上記(2)(カ)、(キ)及び(サ)並びに第2図の記載から、引用文献には第2図に記載された実施例に着目すると、次の技術(以下、「引用文献記載技術」という。)が記載されていると認める。
「内燃機関のためのレーザ等の高エネルギ密度の光ビームを用いて点火を行うようにした点火装置であって、光エネルギ発生装置からの光エネルギを伝えるための光路管8と、光透過体1と、ホルダ2とを有しているものおいて、
ホルダ2は、雄ねじ4cを有する内筒4と雌ねじ3cを有する外筒3とを有し、外筒3は、燃焼室に向いた側の端部に段部を一体的に有し、外筒3の雌ねじ3cと内筒4の雄ねじ4cの螺合により、光透過体1Aがガスケット9を介して外筒3に固定される技術。」
2.2 対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「内燃機関」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願補正発明における「内燃機関(10)」に相当し、以下同様に、「光透過体1」は「燃焼室窓(58)」に、「ホルダ2」は「ハウジング(38)」に、「小孔15」は「オリフィス(74)」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「レーザ等の高エネルギ密度の光ビームを用いて点火を行うようにした点火装置」はレーザ点火装置を包含することは明らかであるから、本願補正発明における「レーザ点火装置」に相当し、「レーザ照射手段」という限りにおいて、引用発明における「光エネルギ発生装置からの光エネルギを伝えるための光路管8」は、本願補正発明における「レーザ活性固体(44)を備えた点火レーザ(26)」に相当する。
よって、本願補正発明と引用発明とは、
「 内燃機関のためのレーザ点火装置であって、レーザ照射手段と、燃焼室窓と、ハウジングとを有している形式のものにおいて、
ハウジングの、燃焼室窓が配置されている端部に、オリフィスが設けられているレーザ点火装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点>
(a)「レーザ照射手段」に関し、本願補正発明においては「レーザ活性固体(44)を備えた点火レーザ(26)」であるのに対し、引用発明においては「光エネルギ発生装置からの光エネルギを伝えるための光路管8」である点(以下、「相違点1」という。)。
(b)本願補正発明においては「オリフィス(74)が円錐形に構成されており、オリフィス(74)の直径(DB)は燃焼室窓(58)に向かって次第に大きくなっており、オリフィス(74)の円錐角(β)はレーザパルス(24)の出射角(α)に相当し、レーザパルスの外側輪郭と前記オリフィス(74)との間に前記オリフィス(74)の全長に亘って1mmよりも小さいギャップが存在するよう、前記オリフィス(74)の寸法が決められて」いるのに対し、引用発明においては「小孔15は、円筒体と切頭円錐体を、この順に燃焼室側から並置した形状の孔であり、切頭円錐体形状の部分において、その直径は光透過体1に向かって次第に大きくなって」いる点(以下、「相違点2」という。)。
(c)本願補正発明においては「ハウジング(38)は、雄ねじ山を有するインナースリーブ(62)と雌ねじ山を有するアウタースリーブ(64)とを有し、アウタースリーブ(64)は、燃焼室(14)に向いた側の端部に段部(66)を一体的に有し、アウタースリーブ(64)の雌ねじ山がインナースリーブ(62)の対応する雄ねじ山と協働することにより、段部(66)が燃焼室窓(58)をインナースリーブ(62)に押し付ける」のに対し、引用発明においては「内筒4は外筒3の端部3bをその間にリング7を挾んでかしめることにより外筒3に固定され、光透過体1は外筒3の先端すなわち燃焼室5側端部から比較的奥の位置にあって外筒3と内筒4とによって固定されている」点(以下、「相違点3」という。)。
2.3 判断
まず、上記相違点1について検討すれば、「内燃機関のレーザ点火装置において、固体レーザを備える固体レーザユニットを用いること」は、原出願の優先日前に周知の技術(以下、「周知技術」という。例えば、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特表2007-506031号公報の請求項1並びに図3及び5や特開2008-45496号公報の請求項1及び段落【0022】並びに図1等参照。)であって、引用発明において、レーザ照射手段として、上記周知技術の固体レーザを備える固体レーザユニットを用いることにより、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到し得たことである。
次に、相違点2について検討する。
本願の明細書には、「オリフィスの直径は、点火レーザのレーザパルスが妨げられることなくオリフィスを通過できるように、寸法設計されている。勿論、オリフィスの直径は、燃焼室窓を最適に保護するために必要な最低限の大きさを越えてはならない。」(段落【0009】)、「オリフィスの直径が小さければ小さい程、より少ない量のガスがオリフィス内に流入し、燃焼室窓に達することができる。」(段落【0011】)及び「点火レーザの光軸の方向のオリフィスの長さによって、燃焼室窓における不純物の堆積及び排ガスの侵入はさらに減少される。それと同時に、オリフィスの隙間容積は減少され、これは内燃機関の運転特性に有利に働く。」(段落【0012】)と記載されており、本願補正発明は、上記相違点2に係る発明特定事項を有することにより、点火レーザのレーザパルスがオリフィスによって妨げられない範囲で、オリフィスの直径を小さくすることで、ガスがオリフィス内に流入することを防ぐものであることが分かる。
そして、本願補正発明において「レーザパルスの外側輪郭とオリフィス(74)との間に前記オリフィス(74)の全長に亘って1mmよりも小さいギャップが存在するよう、前記オリフィス(74)の寸法が決められ」る点については、「レーザ点火装置のレーザパルスは着火点ZPに収束され、フォーカスレンズ系の光学精度は非常に高いので、オリフィスの直径を、レーザパルスの外側輪郭とオリフィスとの間に、1mmよりも小さい、有利には0.5mmよりも小さい、特に有利には0.25mmよりも小さいギャップが存在するように寸法設計することができる。」との記載にも表されているように、上記ギャップをできるだけ小さくすることにより、オリフィス内へのガスの流入を防ぐことができることを示しているにすぎず、1mmという値に臨界的な意義は認められない。
これに対し、引用文献には「そして外筒3の先端には、光透過体1を透過した光エネルギが妨げられることなく通過して燃焼室5内に焦点Fを結ぶことができる程度の小孔15が穿設されている。このため光透過体1は着火・爆発時の燃焼室5側の火炎を外筒3の先端でさえぎられて直接高熱にさらされることがない。」(上記2.1(1)(エ)参照。下線は当審で付した。)と記載され、「程度」という表現により、小孔15の大きさが、光透過体1を透過した光エネルギを通過させるための必要最低限の大きさであることを開示している。また、光透過体1をできる限り高熱にさらさないためには、小孔15の大きさを必要最低限としてガスの流入を防ぐ必要があることは明らかであるから、引用発明における小孔15は、本願補正発明におけるオリフィスと同様に、光エネルギが小孔15によって妨げられない範囲で小孔15の大きさを小さくすべく、光エネルギの外側輪郭と小孔15との間のギャップを最低限とすることでガスが小孔15内に流入することを防ぐものであることが分かる。
そして、引用発明において「円筒体と切頭円錐体を、この順に燃焼室側から並置した形状の孔であり、切頭円錐体形状の部分において、その直径は光透過体1に向かって次第に大きくな」る形状を有する小孔15を、その直径が光透過体1に向かって次第に大きくなる円錐形に構成することは、引用発明の具体化における単なる設計上の事項にすぎない。また、小孔15を円錐形に構成するに際し、光エネルギの外側輪郭と小孔15との間のギャップを最低限とするために、小孔15の円錐角を光エネルギの出射角に一致させることは、当然に行われるべき事項である。
してみると、引用発明において、小孔15を、その直径が光透過体1に向かって次第に大きくなる円錐形に構成し、小孔15の円錐角を光エネルギの出射角に一致させ、光エネルギの外側輪郭と小孔15との間のギャップを最低限とすることによって、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到し得たことである。
さらに、上記相違点3について検討する。
引用発明において、内筒4と外筒3とをその間にリング7を挾んでかしめることにより固定していたものを、引用文献記載技術のように外筒3の雌ねじ3cと内筒4の雄ねじ4cの螺合により固定するように変更することは、単なる設計上の事項である。
また、「内燃機関用のレーザ点火装置における燃焼室窓の固定方法として、ねじにより段部が凸レンズを直接押し付けることにより、凸レンズを固定するとともにガスシールを兼用すること」は、例えば実願平1-2719号(実開平2-94376号)のマイクロフィルム(特に明細書第4ページ第13ないし16行並びに第1及び2図等参照。)等に示されるように、適宜採用される設計的事項(以下、「設計的事項」という。)である。
したがって、引用発明において、引用文献記載技術及び設計的事項を参酌し、内筒4と外筒3にそれぞれ雄ねじ4c、雌ねじ3cを設け、外筒3の雌ねじ3cが内筒4の雄ねじ4cと協働することにより、段部が光透過体1を内筒4に押し付けるように構成することで、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願補正発明は、全体としてみても、引用発明並びに周知技術、引用文献記載技術及び設計的事項から予測できる作用効果以上の格別な作用効果を奏すると認めることはできず、本願補正発明は、引用発明並びに周知技術、引用文献記載技術及び設計的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
なお、審判請求人は、平成28年9月7日提出の上申書において、本願補正発明において、「レーザ活性固体(44)」を「パッシブなクオリティ回路(46)を有するレーザ活性固体(44)」に、「段部(66)が燃焼室窓(58)をインナースリーブ(62)に押し付ける」を「段部(66)が燃焼室窓(58)をインナースリーブ(62)に直接押し付ける」にさらに限定する補正案を示している。
しかし、「内燃機関の点火装置において、受動Qスイッチを有する固体レーザを備える固体レーザユニットを用いる技術」は、上記特表2007-506031号公報の段落【0024】や特開2008-45496号公報の段落【0022】等に示されるように原出願の優先日以前に周知であり、「内燃機関用のレーザ点火装置における燃焼室窓の固定方法として、段部が凸レンズを直接押し付ける」ことは、上記したように設計的事項であるから、上記補正案に係る発明も、引用発明並びに周知技術、引用文献記載技術及び設計的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3.本願発明について
1.本願発明
上記のとおり、平成28年4月7日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成27年7月6日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲、並びに願書に最初に添付された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2.の[理由]1.(1)(ア)に記載したとおりのものである。
2.引用発明
原出願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(実願昭53-172504号(実開昭55-88074号)のマイクロフィルム)記載の発明(引用発明)は、前記第2.の[理由]2.1の(3)に記載したとおりである。
3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、前記第2.の[理由]2.2に示したとおりの相当関係があるから、本願発明と引用発明とは、上記相違点1及び2で相違し、その余の点で一致する。
そして、前記第2.の[理由]2.3で検討したように、引用発明において、周知技術を参酌して上記相違点1及び2に係る本願発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び周知技術から予測できる作用効果以上の格別な作用効果を奏すると認めることはできず、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第4.むすび
上記第3.のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-005176