特許拒絶査定不服審判
2019-012349
グロープラグ
- 審判番号
- 2019-012349
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-006315
- 請求日
- 2019年09月18日
- 審決日
- 2020年06月22日
- 公報発行日
- 2020年08月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】日本特殊陶業株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人明成国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 渡邊 豊英
- 審判官 谷治 和文
- 審判官 西中村 健一
- 分類
- P18 .121-WY (F02P)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015- 6315「グロープラグ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月25日出願公開、特開2016-133005、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年1月16日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 8月15日付け:拒絶理由通知
平成30年10月19日 :意見書・補正書の提出
平成30年12月21日付け:拒絶理由通知
平成31年 3月 5日 :意見書
平成31年 3月26日付け:拒絶理由通知
令和元年 5月14日 :意見書
令和元年 6月25日付け:拒絶査定
令和元年 9月18日 :審判請求書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和元年6月25日付け拒絶査定)の拒絶の理由の概要は次のとおりである。
本願請求項1-4に係る発明は、以下の引用文献1-4に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開平10-089227号公報
2.特開平10-089225号公報
3.特開2010-073417号公報
4.特開2004-092415号公報
第3 本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、平成30年10月19日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下の通りである。
「【請求項1】
軸線方向に延びるセラミック製の基体と、前記基体に埋設され、通電によって自身の先端付近が発熱する発熱体と、を有するヒータと、
前記発熱体の前記先端付近を含む前記ヒータの先端側を露出させた状態で前記ヒータを保持し、内燃機関に取り付けられる際にシリンダブロックに接触するハウジングと、を備え、
前記内燃機関の燃焼室内で発生するイオンに基づくイオン電流を測定するための検知部として機能するグロープラグであって、
前記発熱体の発熱時に前記基体の外表面において最高温度を呈する位置から、前記基体と前記ハウジングとが接触する部位のうち最も先端の位置までの前記軸線方向の距離は、7mm以上であり、
検出対象となる前記イオン電流が流れる導電体を前記基体の内部に埋設したことを特徴とするグロープラグ。」
なお、本願発明2-4の概要は以下のとおりである。
本願発明2は、本願発明1の「導電体」を限定(「電極」又は「発熱体」)した発明である。
本願発明3は、本願発明1の「導電体」を限定(「電極」及び「発熱体」)した発明である。
本願発明4は、本願発明1-3の「軸方向の距離は7mm以上」を「軸方向の距離は10mm以上」と置き換えた発明である。
第4 引用文献、引用発明等
引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0025】また,請求項4の発明のように,上記通電発熱体と上記イオン検出用電極とは同一体により構成されている構造にすることもできる。即ち,この同一体に通電発熱体とイオン検出用電極の両機能を兼ね備えさせることもできる。この場合には,さらに構造を簡単にすることができる。またイオン電極検出状態における電極面積を拡大することができ,より広範囲に渡ったイオン検出が可能となり検出精度向上が図られる。
【発明の実施の形態】
実施形態例1
本発明の実施形態例にかかるグロープラグにつき,図1~図9を用いて説明する。本例のグロープラグは,ディーゼルエンジンの始動補助装置として用いられる,セラミックグロープラグである。本例のグロープラグ1は,図1に示すごとく,ハウジング4と該ハウジング4内に支持された本体10とよりなる。本体10は,支持体11と,該支持体11の内部に設けられた通電発熱体2及び該通電発熱体2の両端部に電気的に接続されて支持体11の外部に導出された一対のリード線21,22とを有する。
【0026】また,上記支持体10の内部に配設された,火炎中のイオン化の状態を検出するための,イオン検出用電極3を有する。かつ該イオン検出用電極3は上記火炎に曝されないように上記支持体11の内部に埋設されている。また,本例においては,後述するように,支持体11として,Si3 N4 (窒化珪素)とTiB2(ホウ化チタン)との混合物からなるセラミックを用いた。
【0027】上記本体10は,図1,図2に示すごとく,金属製のハウジング4内に,金属製の環状支持体41を介して,固定されている。そして,上記通電発熱体2の一方のリード線21は,支持体11の内部を上昇して,本体10の側面に設けた導電性の端子部23を介して内部リード線231に電気的に接続されている。また,他方のリード線22は,上記環状支持体41を介してハウジング4に電気的に接続されている。また,上記イオン検出用電極3の上部は,支持体11の上端部に設けた導電性の端子部31を介して内部リード線33に電気的に接続されている。
【0028】一方,ハウジング4は,上記環状支持体41を有し,図2に示すごとく,その上部に保護筒42を有している。また,ハウジング4は,エンジンのシリンダヘッド45へ装着するための,雄ねじ部43を有する。上記保護筒42の上方開口部には,ゴムブッシュ421が嵌合されている。また,該ゴムブッシュ421には,外部リード線233,333が貫挿され,これらはそれぞれ接続端子232,332を介して,上記内部リード線231,33に接続されている。したがって,外部リード線233は通電発熱体2の一端に,外部リード線333はイオン検出用電極3にそれぞれ電気的に導通されている。」
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
引用発明1
「軸線方向に延びる支持体11と、前記支持体11に埋設され、通電によって自身の先端付近が発熱する通電発熱体2と、を有する本体10と、
前記通電発熱体2の前記先端付近を含む前記本体10の先端側を露出させた状態で前記本体10を保持し、エンジンに取り付けられる際にシリンダヘッド45に接触するハウジング4と、を備え、
前記エンジンの燃焼室内で発生するイオンに基づくイオン電流を測定するための検知部として機能するセラミックグロープラグ1であって、
検出対象となる前記イオン電流が流れるイオン検出用電極3を前記支持体11の内部に埋設したセラミックグロープラグ1。」
引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0057】実施形態例4
本例は,図13~図15に示すごとく,通電発熱体2とイオン検出用電極3とを電気的に接続して一体化した。そして,図13~図15に示すごとく,イオン検出用電極3の露出部30の面積を変更し,その面積とイオン電流検出精度との関係を試験した。また,グロープラグ本体の直径Dは3.5mm,ハウジング4からの突出長さLは10mmとした。
【0058】図13に示したグロープラグ103は,イオン検出用電極3の露出部30を本体10の先端部の半球面部分全体に設け,さらに露出部30全体を表面粗さRz=4.5μmの研磨部分6とした。この場合の露出部30の面積(研磨部分6の面積)は,0.5cm 2である。
【0059】図14に示したグロープラグ104は,イオン検出用電極3の露出部3をできるだけ小さくし,さらに露出部30全体を表面粗さRz=4.5μmの研磨部分6とした。この場合の露出部30の面積(研磨部分6の面積)は,1×10-6cm2 である。
【0060】図15に示したグロープラグ105は,イオン検出用電極3の露出部3を上記図13,図14の場合の中間程度の大きさとし,さらに露出部30全体を表面粗さRz=4.5μmの研磨部分6とした。この場合の露出部30の面積(研磨部分6の面積)は,0.008cm2である。
【0061】また,例えば図15に示したグロープラグを用いた全体図を図16に示す。また,その作動回路を図17に示す。即ち,図16に示すごとく,通電発熱体2とイオン検出用電極3とを一体化の場合には,通電発熱体2に設けたリード線22を,絶縁体11の上端に設
けた端子部31に接続する。このように構成したグロープラグは,前記実施形態例1と同様にして,シリンダヘッド45に装着する。
【0062】また,本例の場合には,通電発熱体2とイオン検出用電極3とが一体化されているので,グロープラグの作動回路は,図17に示す構成となる。そして,通電発熱体2を発熱させる場合には,同図に示すごとく,イオンリレー530はオフとし,グローリレー53,531はオンとする。一方,イオン検出用電極3によりイオン電流を検出する場合には,イオンリレー530をオンとし,グローリレー53及び531はオフとする。
【0063】次に,上記3種類のグロープラグ103,104,105を用いて,実施形態例3と同様の条件により,イオン電流の検出精度を調べた。その結果,いずれのグロープラグも検出精度が100%となり,非常に良好であった。この結果から,露出部30に上記特定の範囲内の表面粗さRzを有する研磨部分を設けることによって,露出部30の面積が1×10-6~0.5cm2の範囲内において変動しても,十分良好にイオン電流の検出ができることがわかる。また,本例の結果から,露出部30の面積は,1×10-6cm2 という非常に小さい面積でもよいことから,少しでも露出部30が外部に露出していれば有効であることもわかる。」
したがって、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
引用発明2
「発熱体の発熱時に絶縁体11の外表面において突出長さの先端から、絶縁体11とハウジング4とが接触する部位のうち最も先端の位置までの軸線方向の距離は、10mmであるグロープラグ103」
引用文献3、4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0039】
グロープラグ用ヒータは、エンジンの始動を補助するために燃焼室内等に配置される先端側部分が加熱される形態とされる。そして、本発明では、セラミックヒータのうち、軸線方向先端から2mm以内の部位が、最高温度に加熱される形態とされている。」
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている
「【0014】
そのために、イオン検知用電源によるイオン検知用電圧の印加時に流れる検知用電流が、発熱抵抗体に向かって流れずに発熱用電源に向かって流れ、ひいてはグランドライン、エンジンブロックに流れてしまうことがある。そのために、イオン検知用電源のイオン検知用電圧を用いて、発熱抵抗体とエンジンブロックとの間に流れるイオン電流を検出するという目的を達成することができない虞がある。」
第5 対比・判断
本願発明1について
対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、
引用発明1の「支持体11」は本願発明1の「基体」に相当し、以下同様に「通電発熱体2」は「発熱体」に、「本体10」は「ヒータ」に、「エンジン」は「内燃機関」に「セラミックグロープラグ1」は「グロープラグ」に、「イオン検出用電極3」は「導電体」に、「シリンダヘッド45」は「シリンダブロック」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「軸線方向に延びるセラミック製の基体と、前記基体に埋設され、通電によって自身の先端付近が発熱する発熱体と、を有するヒータと、
前記発熱体の前記先端付近を含む前記ヒータの先端側を露出させた状態で前記ヒータを保持し、内燃機関に取り付けられる際にシリンダブロックに接触するハウジングと、を備え、
前記内燃機関の燃焼室内で発生するイオンに基づくイオン電流を測定するための検知部として機能するグロープラグであって、
検出対象となる前記イオン電流が流れる導電体を前記基体の内部に埋設したグロープラグ。」
(相違点)
(相違点1)本願発明1は「発熱体の発熱時に基体の外表面において最高温度を呈する位置から、基体とハウジングとが接触する部位のうち最も先端の位置までの軸線方向の距離は、7mm以上」であるのに対して、引用発明1は、そのような発明特定事項を備えているかどうか、明らかではない点。
相違点についての判断
上記相違点1について検討するにあたり、引用発明2について検討すると、引用発明2の「通電発熱体2」は本願発明1の「発熱体」に相当し、以下同様に「絶縁体11」は「基体」に、「ハウジング4」は「ハウジング」に、「グロープラグ103」は「グロープラグ」に相当する。
したがって、引用発明2は以下の発明の構成を有すると認められる。
「発熱体の発熱時に基体の外表面の突出長さの先端から、基体とハウジングとが接触する部位のうち最も先端の位置までの軸線方向の距離は、10mmのグロープラグ」
しかしながら、引用発明2の前記構成である「軸線方向の距離は、10mm」とする課題及び効果は引用文献2に明記されておらず、引用発明1の課題及び効果と共通性があるとは認められない。したがって、引用発明2の前記構成を引用発明1に適用することが当業者にとり容易に成し得たものであるとはいえない。
また、引用発明2の「発熱体の発熱時に基体の外表面の突出長さの先端から、基体とハウジングとが接触する部位のうち最も先端の位置までの軸線方向の距離は、10mm」の構成は、グロープラグの技術分野において周知技術ともいえない。
そして、上記相違点1の「発熱体の発熱時に基体の外表面において最高温度を呈する位置から、基体とハウジングとが接触する部位のうち最も先端の位置までの軸線方向の距離は、7mm以上」の構成は、グロープラグの技術分野において周知技術とはいえず、引用発明2を参考として当業者が適宜なし得た設計的事項であるともいえない。
さらに、引用文献3及び引用文献4に記載された事項も、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を開示ないし示唆するものではない。
そうすると、引用発明1において、引用発明2、引用文献3及び引用文献4の記載事項を参酌しても、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることはできず、本願発明1が有する「最高温度を呈する部位から軸線方向の距離が7mm以上離れた部位は、基体の温度が最高温度を呈する部位よりも充分に小さくなり、基体の電気抵抗値が先端付近に比べて充分に大きくなる。それによりイオン電流測定時に基体及びハウジングを介してシリンダブロックにリークする電流を減少させることができ、イオン電流値の測定精度を向上させることができる。」(明細書の【0006】参照。)という特有の作用効果を奏することはできない。
したがって、本願発明1は、引用発明1、引用発明2、引用文献3に記載の事項及び引用文献4に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
本願発明2乃至3について
本願発明2乃至3も、本願発明1の「発熱体の発熱時に前記基体の外表面において最高温度を呈する位置から、前記基体と前記ハウジングとが接触する部位のうち最も先端の位置までの前記軸線方向の距離は、7mm以上」の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、引用発明2、引用文献3に記載の事項及び引用文献4に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
本願発明4について
本願発明4は、「前記軸線方向の距離は、10mm以上である」構成を備えるものであり、本願発明1の「軸方向の距離は7mm以上」を「軸方向の距離は10mm以上」と置き換えた発明であることから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、引用発明2、引用文献3に記載の事項及び引用文献4に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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