特許拒絶査定不服審判
2016-005122
電気化学キャパシタ
- 審判番号
- 2016-005122
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-080159外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年04月07日
- 審決日
- 2017年01月30日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (H01G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012- 80159「電気化学キャパシタ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月10日出願公開、特開2013-211395〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、平成24年3月30日の出願であって、平成27年11月16日付け拒絶理由通知に対する応答時、平成28年1月21日付けで手続補正がなされたが、同年2月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月7日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされたものである。
2.本願発明
平成28年4月7日付け手続補正は、明細書中の記載のみを補正するものであることから、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成28年1月21日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
正極と、
前記正極に対して対向配置される負極と、
前記正極および前記負極が浸漬される電解液とを備え、
前記正極が、導電剤を含有し、
Boehm法により測定される前記導電剤の官能基の量が、0.063mmol/g以下であることを特徴とする、電気化学キャパシタ。」
3.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-332456号公報(以下、「引用例」という。)には、「電気二重層キャパシタ」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。
(1)「【請求項1】 正極及び負極の少なくとも一方が活性炭とカーボンブラックとを含む分極性電極から形成されると共に、これら正負極間に介在させたセパレータと、非水系電解液とから構成された電気二重層キャパシタであって、上記カーボンブラックとして酸素遮断空気若しくは真空又は不活性雰囲気下において1800~3000℃で焼成した焼成カーボンブラックを用いることを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項2】 正極として活性炭と酸素遮断空気若しくは真空又は不活性雰囲気下において1800~3000℃で焼成した焼成カーボンブラックとバインダーとを含む分極性電極を用いると共に、負極としてリチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出し得る炭素材料にリチウムイオンを吸蔵させた炭素材料を含む非分極性電極を用いる請求項1記載の電気二重層キャパシタ。」
(2)「【0016】本発明のカーボンブラックは、分極性電極に導電性を付与してその内部抵抗を下げる目的で添加され、以下のようにして製造されるものである。
【0017】まず、従来のファーネスブラックの製造方法により、一次粒子径が20~55nm、BET法により求めた比表面積が500m2/g以上、好ましくは550~1800m2/gである高導電性カーボンブラックを得る。このカーボンブラックは酸素遮断空気若しくは真空又は不活性雰囲気下において1800~3000℃で本焼成するための前処理として粉砕や予備焼成を行うことが好ましい。
【0018】この場合、予備焼成は、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下、特に窒素ガス雰囲気下で温度900~1200℃、好ましくは950~1100℃の範囲で1~24時間焼成するものである。この予備焼成により不純物としての有機物、水、カーボンブラックの表面官能基を除去することができる。即ち、カーボンブラックの表面には化学反応を担う多種の官能基が存在しており、これら表面官能基などを除去することは、本焼成での装置保護のみならず高導電性を得る上でも有効なものである。
【0019】具体的には、カーボンブラック表面の物理吸着水分は100℃で水蒸気ガスとして除去することができる。カルボキシル基は200~300℃で二酸化炭素ガスとして除去することができる。水酸基は400℃で水蒸気ガスとして除去することができる。カルボニル基、アシル基、メチレン鎖、及びエーテル鎖は600~900℃で一酸化炭素ガスや水素として除去することができる。」
・上記引用例に記載の「電気二重層キャパシタ」は、上記(1)の【請求項1】の記載事項、及び図1によれば、正極及び負極と、これら正負極間に介在させたセパレータと、非水系電解液とから構成された電気二重層キャパシタに関し、さらに上記(1)の【請求項2】の記載事項によれば、正極が、活性炭と(焼成)カーボンブラックとを含む分極性電極から形成されてなるものである。
・上記(2)の記載事項によれば、カーボンブラックは、分極性電極に導電性を付与してその内部抵抗を下げる目的で添加されるものである。
・上記(3)の記載事項によれば、添加されるカーボンブラックは、不活性ガス雰囲気下などにおいて予備焼成することにより、化学反応を担う多種の表面官能基が除去されてなるものである。
したがって、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「正極及び負極と、
これら正負極間に介在させたセパレータと、
非水系電解液とから構成され、
前記正極が、活性炭とカーボンブラックとを含む分極性電極から形成され、当該カーボンブラックは、当該分極性電極に導電性を付与してその内部抵抗を下げる目的で添加されるものであり、
添加される前記カーボンブラックは、化学反応を担う多種の表面官能基が除去されてなるものである、電気二重層キャパシタ。」
4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
(1)引用発明における「正極及び負極と、これら正負極間に介在させたセパレータと、非水系電解液とから構成され」によれば、
引用発明における「正極」、「負極」、「非水系電解液」は、それぞれ本願発明における「正極」、「負極」、「電解液」に相当し、
引用発明にあっても、正極と負極とは、セパレータを介して対向配置されてなるものであること(引用例の図1も参照)や、非水系電解液に浸漬されてなるものであることは自明なことであるから、
本願発明と引用発明とは、「正極と、前記正極に対して対向配置される負極と、前記正極および前記負極が浸漬される電解液と」を備えるものである点で一致する。
(2)引用発明における「前記正極が、活性炭とカーボンブラックとを含む分極性電極から形成され、当該カーボンブラックは、当該分極性電極に導電性を付与してその内部抵抗を下げる目的で添加されるものであり、添加される前記カーボンブラックは、化学反応を担う多種の表面官能基が除去されてなるものである」によれば、
引用発明における「カーボンブラック」は、分極性電極である正極に導電性を付与するためのものであることから、本願発明でいう「導電剤」に相当し、
本願発明と引用発明とは、「前記正極が、導電剤を含有」するものである点で一致する。
また、引用発明にあっても、カーボンブラックの表面官能基が除去されてなるものものであるから、少なくとも本願発明とは「前記導電剤の官能基の量が低減されている」点で共通するといえる。
ただし、低減後の導電剤の官能基量について、本願発明では、「Boehm法により測定される前記導電剤の官能基の量が、0.063mmol/g以下」である旨特定するのに対し、引用発明では、そのような具体的な官能基の量についての特定がない点で相違している。
(3)そして、引用発明における「電気二重層キャパシタ」は、本願発明でいう「電気化学キャパシタ」であることは明らかである。
よって、本願発明と引用発明とは、
「正極と、
前記正極に対して対向配置される負極と、
前記正極および前記負極が浸漬される電解液とを備え、
前記正極が、導電剤を含有し、
前記導電剤の官能基の量が低減されている、電気化学キャパシタ。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
低減後の導電剤の官能基量について、本願発明では、「Boehm法により測定される前記導電剤の官能基の量が、0.063mmol/g以下」である旨特定するのに対し、引用発明では、そのような具体的な官能基の量についての特定がない点。
5.判断
上記相違点について検討する。
引用例の段落【0018】~【0019】や、例えば特開2008-288028号公報の段落【0014】、【0016】に記載のように、電気化学キャパシタの電極に添加されるカーボンブラックなどの導電剤の表面官能基については、化学反応の惹起によりガスが発生するのを防止する等のために除去するのが望ましいことは周知といえる技術事項であり、また、引用例における、カーボンブラックの表面官能基を除去することに関する記載部分である上記段落【0018】~【0019】には、除去すべき表面官能基の量に好ましい範囲があるとか、除去すべき表面官能基の量が多すぎると不都合があるといった記載はないことから、引用発明においても、カーボンブラックの表面官能基を除去するための予備焼成(熱処理)の温度や時間を調整するなどして導電剤の官能基の量を極力除去し、本願発明で特定する、Boehm法により測定される官能基の量が「0.063mmol/g以下」を満たすものとすることは当業者であれば容易になし得ることである。
そして、本願発明が奏する効果についてみても、引用発明あるいは引用発明及び周知の技術事項から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。
なお、請求人は審判請求書を提出し、参考実施例1~3及び参考比較例1を追加して導電剤の官能基量とクーロン効率との関係を図1として示し、導電剤の官能基の量の上限値(0.063mmol/g)には臨界的意義がある旨主張している。
しかしながら、上記参考実施例1~3及び参考比較例1は、審判請求書において初めて示されたものであって、本願明細書には、段落【0034】に「導電剤の官能基量として、具体的には、0.1mmol/g未満、好ましくは、、0.09mmol/g以下、より好ましくは、0.08mmol/g以下であり、・・」と記載され、唯一の実施例(実施例1)として導電剤の官能基量が「0.063mmol/g」の例と、唯一の比較例(比較例1)として導電剤の官能基量が「0.101mmol/g」の例が記載されているのみであり、官能基量が実施例1より少ない領域において、官能基量とクーロン効率との関係が審判請求書の図1に示された関係となることは、当業者が、本願明細書及び図面の全体を参酌して、さらに出願時の技術常識に照らしてみても予測可能であったとはいえない。
してみると、審判請求書の図1に示された、導電剤の官能基量とクーロン効率との関係は、本願明細書等に開示された内容ではないし、本願明細書等の記載から当業者が予測し得ることでもないから、当該図1に基づいて、導電剤の官能基量の上限値を「0.063mmol/g」としたことの臨界的意義を認めることはできず、よって、請求人の上記主張は採用できない。
6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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