特許拒絶査定不服審判
2016-004721
発光ディスプレイおよびその安定的電流ソース・シンクのための効率的プログラミングおよび高速校正
- 審判番号
- 2016-004721
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-538429外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年03月31日
- 審決日
- 2016年12月09日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】イグニス・イノベイション・インコーポレーテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人YKI国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (G09G) / P18 .575-Z (G09G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-538429「発光ディスプレイおよびその安定的電流ソース・シンクのための効率的プログラミングおよび高速校正」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 5月19日国際公開、WO2011/058428、平成25年 3月28日国内公表、特表2013-511061〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2010年11月12日(パリ条約による優先権主張 2009年11月12日(以下、「最先の優先日」という。)、カナダ、2009年12月7日、カナダ、2010年2月17日、カナダ、2010年11月11日、米国、2010年11月11日、米国、2010年11月11日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年8月27日付けで拒絶理由が通知され、平成26年11月27日付けで手続補正がなされ、平成27年4月21日付けで拒絶理由が通知され、平成27年10月27日付けで手続補正がなされたが、平成27年11月25日付けで拒絶査定がなされ(送達日:平成27年12月1日)、これに対し、平成28年3月31日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。
第2 平成28年3月31日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年3月31日付けの手続補正(以下、「本件補正」という」)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
基板に配設された複数の発光素子を有するアクティブエリアと、前記アクティブエリアから区別されるディスプレイパネルの周辺エリアとを有するディスプレイパネルのための回路であって、
電圧データラインと、共有ラインとの間に接続された共有スイッチトランジスタであって、共有基準電圧スイッチを通して基準電圧に接続され、前記電圧データライン又は前記基準電圧を選択的に前記共有ラインに接続するように制御され、基準電圧制御ラインによる前記共有基準電圧スイッチの制御によって前記基準電圧に接続される共有スイッチトランジスタと、
第1蓄電素子を通して前記共有ラインに接続された第1駆動回路により電流駆動されるように構成された第1発光素子を含む第1画素と、
第2蓄電素子を通して前記共有ラインに接続された第2駆動回路により電流駆動されるように構成された第2発光素子を含み、前記第1蓄電素子及び前記第2蓄電素子は前記共有ラインによって直接接続されている第2画素と、
前記第1および第2駆動回路にバイアス電流を印加するように構成された基準電流ラインと、
を包含する回路。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の平成27年10月27日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
基板に配設された複数の発光素子を有するアクティブエリアと、前記アクティブエリアから区別されるディスプレイパネルの周辺エリアとを有するディスプレイパネルのための回路であって、
電圧データラインと、共有ラインとの間に接続された共有スイッチトランジスタであって、共有基準電圧スイッチを通して基準電圧に接続され、前記電圧データライン又は前記基準電圧を選択的に前記共有ラインに接続するように制御される共有スイッチトランジスタと、
第1蓄電素子を通して前記共有ラインに接続された第1駆動回路により電流駆動されるように構成された第1発光素子を含む第1画素と、
第2蓄電素子を通して前記共有ラインに接続された第2駆動回路により電流駆動されるように構成された第2発光素子を含み、前記第1蓄電素子及び前記第2蓄電素子は共有ラインによって直接接続されている第2画素と、
前記第1および第2駆動回路にバイアス電流を印加するように構成された基準電流ラインと、
を包含する回路。」
2 補正の適否について
本件補正は、特許請求の範囲についてするもので、請求項1については、本件補正前の請求項1に記載された「共有スイッチトランジスタ」について、「基準電圧制御ラインによる前記共有基準電圧スイッチの制御によって前記基準電圧に接続される」との限定を付加するものである。
よって、請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記「1」「(1)」に記載のとおりのものである
(2)引用例の記載事項
ア 引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の最先の優先日前に頒布された刊行物である、特開2004-341144号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高画質画像表示装置に係り、特に低コスト化に好適な画像表示装置に関する。」
「【0008】
【発明の実施の形態】
(第一の実施例)
以下図1~図5を用いて、本発明の第一の実施例に関して説明する。
始めに図1を用いて、本実施例の全体構成に関して述べる。
図1は本実施例である有機EL(Organic Electro-luminescent)表示パネルの全体構成図である。表示領域20内には画素10がマトリクス状に設けられており、画素10には信号線8及びリセットゲート線11、OLEDゲート線12、及び電源線9がそれぞれ接続されている。信号線8の一端は信号線切替えスイッチ17を介して信号電圧生成回路16に、リセットゲート線11、OLEDゲート線12の一端は走査回路15に接続されている。電源線9の一端は電源入力線13にまとめられ、また信号線切替えスイッチ17は信号線8を信号電圧生成回路16と定電圧入力線14とに切替える。
【0009】
実際には画素10は表示領域20内に多数個設けられているが、図面の簡略化のために図1には4画素のみを記載してある。また実際には単位表示画素はRGBの3種類の発光特性を有する画素で構成されているが、これも省略している。また後述するように画素10には他にも共通接地電極が配線されているが、これらの記載も省略してある。なお信号電圧生成回路16はDA変換器と電圧バッファ回路を用いて従来からよく知られているLSI技術で実現されており、走査回路15も既知のシフトレジスタ回路と適当な論理回路を多結晶Si-TFT技術を用いてガラス基板上に実現したものである。
【0010】
続いて図2を用いて、画素10の構造に関して説明する。
図2は画素10の回路構成図である。各画素10には発光素子としての有機EL素子1が設けられており、有機EL素子1のカソード端は共通接地に接続されている。またアノード端はOLEDスイッチ7と駆動TFT 2のチャネルとを介して電源線9に接続されている。また駆動TFT 2のゲートは記憶容量4を介して信号線8に接続されており、駆動TFT 2のドレイン端子とゲート端子間にはリセットスイッチ6が設けられている。なおここでOLEDスイッチ7、リセットスイッチ6はそれぞれ前述のOLEDゲート線12、リセットゲート線11に接続されている。駆動TFT 2及びOLEDスイッチ7、リセットスイッチ6は、多結晶Si TFTを用いてガラス基板上に構成されている。多結晶Si-TFT や有機EL素子1の製造方法などに関しては、一般に報告されているものと大きな相違はないため、ここではその説明は省略する。なお有機EL素子1に関しては、例えば特開2001-159878号公報等従来の文献を参照することができる。
【0011】
次に本第一の実施例の動作について図3及び図4を用いて説明する。
図3は本実施例における有機EL表示パネルの動作タイミングチャートであり、1フレーム期間における信号線8、リセットスイッチ6、OLEDスイッチ7の動作を表している。なおリセットスイッチ6、OLEDスイッチ7の駆動タイミング波形は、上をスイッチがオフの状態、下をスイッチがオンの状態として示した。1フレーム期間は前半の「書込み期間」と、後半の「発光期間」から構成されており、両期間の長さは凡そ等しく設定されている。前半の「書込み期間」においては走査回路15の走査に従って、画素10におけるリセットスイッチ6、OLEDスイッチ7は順次駆動される。ここで走査回路15によって選択された画素10の「書込み期間」における動作について、図4を用いて説明する。
【0012】
図4は本実施例における画素10の動作タイミングチャートであり、当該画素10が走査回路15によって選択され、表示信号が書込まれる際の、信号線8、リセットスイッチ6、OLEDスイッチ7の動作を表している。リセットスイッチ6、OLEDスイッチ7の駆動タイミング波形は、上をスイッチがオフの状態、下をスイッチがオンの状態として示しているのは、これまでのと同様である。画素10への表示信号電圧の書込み時には、始めにt0でリセットスイッチ6及びOLEDスイッチ7がオン状態になり、信号線8には信号電圧Vsが印加される。これにより駆動TFT2はゲートとドレインが接続されたダイオード接続になり、前のフィールドで記憶容量4に記憶されていた駆動TFT2のゲート電圧はクリアされる。次にt1で OLEDスイッチ7がオフすると、駆動TFT2のゲート電圧が電源線9に印加されている電源電圧よりもしきい値電圧Vthだけ低い電圧まで上昇した時点で、駆動TFT2を流れる電流は停止する。従ってこの状態で安定した後にt2でリセットスイッチ6をオフすると、駆動TFT2のゲート電圧は電源線9に印加されている電源電圧よりもしきい値電圧Vthだけ低い電圧で固定される。即ち記憶容量4への書込みによって、信号線8に先の信号電圧Vsが印加された際には、駆動TFT2のゲート端子には、電源線9を介してソース端子に印加されている電源電圧よりもしきい値電圧Vthだけ低い電圧が再現されることになる。これに続いて次の画素10への表示信号の書込みが開始され、信号線8には次の画素10に書込むべき信号電圧が印加される。以上の繰返しによって全ての画素10に対して信号電圧が書込まれたところで、前半の「書込み期間」が終了する。
【0013】
次に後半の「発光期間」における有機EL表示パネルの動作について、再び図3を用いて説明する。後半の「発光期間」においては、信号線8には一定の電圧Vilが印加され、同時に全ての画素10についてリセットスイッチ6はオフ、OLEDスイッチ7はオンに固定される。前述の記憶容量4への書込みによって、信号線8に信号電圧Vsが印加された際には、駆動TFT2のゲート端子には、電源線9を介してソース端子に印加されている電源電圧よりもしきい値電圧Vthだけ低い電圧が再現される。これに対して信号線8に一定の電圧Vilが印加された際には、記憶容量4に対する駆動TFT2のゲート容量が十分に小さいと仮定すると、駆動TFT2のゲート端子には、電源線9を介してソース端子に印加されている電源電圧よりも(Vs-Vil+しきい値電圧|Vth|)だけ低い電圧が再現されることになる。即ち各画素に対して予め所定の信号電圧Vsを書込んでおくことによって、しきい値電圧Vthのばらつきに影響されることなく、駆動TFT2の駆動電流を用いて有機EL素子1を発光駆動することができる。
画素毎に存在する駆動TFT2のしきい値電圧Vthのばらつきをキャンセルしつつ、(Vs-Vil)なる信号電圧に対応したOLED発光を得ることができる点では、本実施例は従来例と同様の効果を得ることができるが、これに加えて本実施例には、上記しきい値電圧Vthのばらつきのキャンセルを、各画素毎に設けられた駆動TFT2、リセットスイッチ6、OLEDスイッチ7からなる合計3個のトランジスタと、記憶容量4の1個の容量で実現できるという長所がある。本実施例においてはこのように一画素あたりの構成素子数を減少できた結果、発光表示デバイスの歩留りが向上し、コストの低下を図ることができた。」
「【0016】
さて以上に述べた本実施例においては、本発明の主旨を損なわない範囲でいくつもの変更が可能である。例えば本実施例ではTFT基板としてはガラス基板を用いたが、これを石英基板や透明プラスチック基板等の他の透明絶縁基板に変更することも可能であるし、また有機EL素子1の発光を上面に取り出すようにすれば、不透明基板を用いることも可能である。」
「【0018】
また本実施例では走査回路15や信号切替えスイッチ17は、低温多結晶Si-TFT回路で構成している。しかしながらこれらの周辺駆動回路あるいはその一部分を単結晶LSI(Large Scale Integrated circuit)回路で構成して実装することも本発明の範囲内で可能であるし、逆に信号電圧生成回路16を低温多結晶Si-TFT回路で構成しても良い。」
引用例1の段落【0016】の記載を反対解釈すれば、引用例1の実施例において、有機EL素子1の発光を下面から取り出ため、有機EL素子1をガラス基板上に設けていることは明らかである。
よって、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる(括弧内に、引用発明の認定の根拠とした引用例1の記載箇所を記載した。)。
「有機EL(Organic Electro-luminescent)表示パネルの表示領域20内には画素10がマトリクス状に設けられており、画素10には信号線8及び電源線9がそれぞれ接続され、信号線8の一端は信号線切替えスイッチ17を介して信号電圧生成回路16に接続されており、また信号線切替えスイッチ17は信号線8を信号電圧生成回路16と定電圧入力線14とに切替え(【0008】)、
画素10は表示領域20内に多数個設けられており(【0009】)、
各画素10には発光素子としての有機EL素子1が設けられており、また駆動TFT2のゲートは記憶容量4を介して信号線8に接続されており(【0010】)、
フレーム期間は前半の「書込み期間」と、後半の「発光期間」から構成されており(【0011】)、
前半の「書込み期間」においては、画素10が走査回路15によって選択され、表示信号が書込まれ、信号線8には信号電圧Vsが印加される際、即ち記憶容量4への書込みによって、信号線8に先の信号電圧Vsが印加された際には、駆動TFT2のゲート端子には、電源線9を介してソース端子に印加されている電源電圧よりもしきい値電圧Vthだけ低い電圧が再現されることになり、これに続いて次の画素10への表示信号の書込みが開始され、信号線8には次の画素10に書込むべき信号電圧が印加され(【0011】、【0012】)、
後半の「発光期間」においては、信号線8には一定の電圧Vilが印加され、各画素に対して予め所定の信号電圧Vsを書込んでおくことによって、しきい値電圧Vthのばらつきに影響されることなく、駆動TFT2の駆動電流を用いて有機EL素子1を発光駆動することができ(【0013】)、
有機EL素子1をガラス基板上に設け(【0016】)、
走査回路15や信号切替えスイッチ17は、周辺駆動回路として実装する(【0018】)、
有機EL表示パネル。」
イ 引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の最先の優先日前に頒布された、国際公開第2009/127065号(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「[00149] Figure 24 illustrates a pixel circuit 400 in accordance with a further embodiment of the present invention. The pixel circuit 400 of Figure 24 is a 3-TFT current-biased voltage programmed pixel circuit and employs the CBVP driving scheme. The driving scheme improves the display lifetime and yield by compensating for the mismatches.
[00150] The pixel circuit 400 includes an OLED 402, a storage capacitor 404, a driving transistor 406, and switch transistors 408 and 410. Each transistor has a gate terminal, a first terminal and a second terminal. The transistors 406, 408 and 410 are p-type TFT transistors. The driving technique applied to the pixel circuit 400 is also applicable to a complementary pixel circuit having n-type transistors as well understood by one of ordinary skill in the art.
[00151] The transistors 406, 408 and 410 may be implemented using poly silicon, nano/micro (crystalline) silicon, amorphous silicon, CMOS, organic semiconductor, metal organic technologies, or combination thereof. A plurality of pixel circuits 400 may form an active matrix array. The driving scheme applied to the pixel circuit 400 compensates for temporal and spatial non-uniformities in the active matrix display.
[00152] A select line SEL, a signal line Vdata, a bias line Ibias, and a voltage supply line Vdd are connected to the pixel circuit 400. The bias line Ibias provides a bias current (Ibias) that is defined based on display specifications, such as lifetime, power, and device performance and uniformity.
[00153 ] The first terminal of the driving transistor 406 is connected to the voltage supply line Vdd. The second terminal of the driving transistor 406 is connected to the OLED 402 at node B20. One terminal of the capacitor 404 is connected to the signal line Vdata, and the other terminal of the capacitor 404 is connected to the gate terminal of the driving transistor 406 at node A20.
[00154] The gate terminals of the switch transistors 408 and 410 are connected to the select line SEL. The switch transistor 408 is connected between node A20 and node B20. The switch transistor 410 is connected between the node B20 and the bias line Ibias.
[00155] For the pixel circuit 400, a predetermined fixed current (Ibias) is provided through the transistor 410 to compensate for all spatial and temporal non-uniformities and voltage programming is used to divide the current in different current levels required for different gray scales.
[00156] As shown in Figure 25, the operation of the pixel circuit 400 includes a programming phase X61 and a driving phase X62. Vdata [j] of Figure 25 corresponds to Vdd of Figure 24. Vp[kj] of Figure 25 (k=l, 2, ..., n) represents the kth programming voltage on Vdata (J] where "j" is the column number.
[00157] Referring to Figures 24 and 25, during the programming cycle X61 , SEL is low so that the switch transistors 408 and 410 are on. The bias current Ibias is applied via the bias line Ibias to the pixel circuit 400, and the gate terminal of the driving transistor 406 is self-adjusted to allow all the current passes through source-drain of the driving transistor 406. At this cycle, Vdata has a programming voltage related to the gray scale of the pixel. During the driving cycle X62, the switch transistors 408 and 410 are off, and the current passes through the driving transistor 406 and the OLED 402.」(当審訳:なお、翻訳にあたっては、引用例2のパテントファミリーである、特表2011-520139号公報を参考にした。)
[0149] 図24は、本発明の更なる実施形態による画素回路400を示す。図24の画素回路400は3-TFT電流バイアス電圧プログラム画素回路(3-TFT current-biased voltage programmed pixel circuit)であり、CBVP駆動方式を使用する。この駆動方式は、不整合を補償することによりディスプレイの寿命および歩留りを改善する。
[00150] 画素回路400は、OLED402、ストレージ・キャパシタ404、駆動トランジスタ406、ならびにスイッチ・トランジスタ408および410を含む。各トランジスタは、ゲート端子、第1の端子、および第2の端子を有する。トランジスタ406、408、および410はp型TFTトランジスタである。画素回路400に適用される駆動技術は、当業者には十分に理解されているn型トランジスタを有する相補型画素回路にも適用できる。
[00151] トランジスタ406、408、および410は、ポリシリコン、ナノ/マイクロ(結晶)シリコン、アモルファス・シリコン、CMOS、有機半導体、金属有機の技術、またはそれらの組み合わせを使用して実現することができる。複数の画素回路400はアクティブ・マトリクス・アレイを形成することができる。画素回路400に適用される駆動方式は、アクティブ・マトリクス・ディスプレイにおける時間的および空間的な不均一性を補償する。
[00152] 選択ラインSEL、信号ラインVdata、バイアス・ラインIbias、および電圧供給ラインVddが、画素回路400に接続される。バイアス・ラインIbiasは、ディスプレイの仕様に基づいて規定されるバイアス電流(Ibias)を供給する。ディスプレイの仕様とは、寿命、パワー、ならびにデバイスの性能および均一性などである。
[00153] 駆動トランジスタ406の第1の端子は電圧供給ラインVddに接続される。駆動トランジスタ406の第2の端子は、ノードB20でOLED402に接続される。キャパシタ404の一方の端子は、信号ラインVdataに接続され、キャパシタ404の他方の端子は、ノードA20で駆動トランジスタ406のゲート端子に接続される。
[00154] スイッチ・トランジスタ408および410のゲート端子は選択ラインSELに接続される。スイッチ・トランジスタ408はノードA20とノードB20との間に接続される。スイッチ・トランジスタ410はノードB20とバイアス・ラインIbiasとの間に接続される。
[00155] 画素回路400では、すべての空間的および時間的な不均一性を補償するために、所定の固定電流(Ibias)が、トランジスタ410を通して供給され、また、様々なグレイ・スケールで必要とされる様々な電流レベルに電流を分割するために、電圧プログラミングが使用される。
[00156] 図25に示されるように、画素回路400の動作は、プログラミング・フェーズX61および駆動フェーズX62を含む。図25のVdata[j]は図24のVddに対応する。図25のVp[k,j](k=1、2、…、n)は、Vdata[j]のk番目のプログラミング電圧を表し、ここで「j」は列(コラム)番号である。
[00157] 図24および図25を参照すると、プログラミング・サイクルX61の間、SELはローであり、したがってスイッチ・トランジスタ408および410がオンである。バイアス電流Ibiasは、バイアス・ラインIbiasを介して画素回路400へ印加され、駆動トランジスタ406のゲート端子は自己調整され、すべての電流が駆動トランジスタ406のソース-ドレインを通過できるようになる。このサイクルで、Vdataは、画素のグレイ・スケールに関連するプログラミング電圧を有する。駆動サイクルX62の間、スイッチ・トランジスタ408および410はオフであり、電流は駆動トランジスタ406およびOLED402を通る。)
よって、引用例2には、次の技術が記載されている(以下、「引用例2記載技術」という。)
「キャパシタ404の一方の端子は、信号ラインVdataに接続され、キャパシタ404の他方の端子は、駆動トランジスタ406のゲート端子に接続され、バイアス・ラインIbiasは、バイアス電流(Ibias)を供給し、画素回路400の動作は、プログラミング・フェーズX61および駆動フェーズX62を含み、プログラミング・フェーズX61の間、バイアス電流Ibiasは、バイアス・ラインIbiasを介して画素回路400へ印加され、駆動トランジスタ406のゲート端子は自己調整され、すべての電流が駆動トランジスタ406のソース-ドレインを通過できるようになる、CBVP(電流バイアス電圧プログラム)駆動方式。」
(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「ガラス基板上に設け」られた「有機EL素子1」が、本願補正発明における「基板に配設された」「発光素子」に相当する。
イ 引用発明における「表示領域20」には、「画素10」が「多数個設けられて」おり、「画素10」には、「ガラス基板上に設け」られた「有機EL素子1」が「発光素子」として設けられているから、引用発明における「表示領域20」が、本願補正発明における「基板に配設された複数の発光素子を有するアクティブエリア」に相当する。
ウ 引用発明の「有機EL表示パネル」において、「周辺駆動回路」を「実装」する領域が、本願補正発明における「前記アクティブエリアから区別されるディスプレイパネルの周辺エリア」に相当する。
エ 引用発明における、「有機EL表示パネル」のための回路が、本願補正発明における「ディスプレイパネルのための回路」に相当する。
オ 引用発明において、「信号線切替えスイッチ17は信号線8を信号電圧生成回路16と定電圧入力線14とに切替え」ているから、「信号電圧生成回路16」が「線」により「信号線切替えスイッチ17」と接続されていることは明らかである(引用例1の図1にも、「信号電圧生成回路16」から延び、「信号線切替えスイッチ17」と接続する「線」が概念的に描かれている。)。
よって、引用発明における、「信号電圧生成回路16」を「信号線切替えスイッチ17」に接続する「線」が、本願補正発明における「電圧データライン」に相当するといえる。
カ 引用発明における「信号線8」は、「走査回路15によって選択され、表示信号が書込まれ」る「画素10」と、「書込むべき信号電圧が印加される」「次の画素10」とで共有されているから、本願補正発明における「共有ライン」に相当するといえる。
キ 引用発明における「一定の電圧Vil」が、本願補正発明における「基準電圧」に相当する。
ク 上記「オ」を踏まえると、引用発明における「信号線切替えスイッチ17」は、「信号線8を信号電圧生成回路16と定電圧入力線14とに切替え」るものであって、「フレーム期間」の「前半の「書込み期間」」では「信号線8には信号電圧Vsが印加され」、「後半の「発光期間」」においては「信号線8には一定の電圧Vilが印加され」るから、本願補正発明における「電圧データラインと、共有ラインとの間に接続された共有スイッチトランジスタであって、共有基準電圧スイッチを通して基準電圧に接続され、前記電圧データライン又は前記基準電圧を選択的に前記共有ラインに接続するように制御され、基準電圧制御ラインによる前記共有基準電圧スイッチの制御によって前記基準電圧に接続される共有スイッチトランジスタ」とは、「電圧データライン又は前記基準電圧を選択的に前記共有ラインに接続するように制御する手段」の点で共通するといえる。
ケ 引用発明における「前半の「書込み期間」」において「走査回路15によって選択され」た「画素10」(以下、「選択された画素10」という。)に設けられた「記憶容量4」が、本願補正発明における「第1蓄電素子」に相当する。
コ 引用発明における「選択された画素10」の「駆動TFT2」が、本願補正発明における「第1駆動回路」に相当する。
サ 引用発明における「選択された画素10」の「有機EL素子1」は、「駆動TFT2の駆動電流を用いて」「発光駆動」され、「駆動TFT2のゲートは記憶容量4を介して信号線8に接続されて」いるから、本願補正発明における「第1蓄電素子を通して前記共有ラインに接続された第1駆動回路により電流駆動されるように構成された第1発光素子を含む第1画素」に相当する。
シ 引用発明における「前半の「書込み期間」」において「選択された画素10」の「次の画素10」(以下、「次の画素10」という。)に設けられた「記憶容量4」が、本願補正発明における「第2蓄電素子」に相当する。
ス 引用発明における「次の画素10」の「駆動TFT2」が、本願補正発明における「第2駆動回路」に相当する。
セ 次に、引用発明における「次の画素10」の「有機EL素子1」は、「駆動TFT2の駆動電流を用いて」「発光駆動」され、「駆動TFT2のゲートは記憶容量4を介して信号線8に接続されて」いるから、本願補正発明における「第2蓄電素子を通して前記共有ラインに接続された第2駆動回路により電流駆動されるように構成された第2発光素子」を含む「第2画素」に相当する。
ソ 引用発明における「選択された画素10」の「記憶容量4」と、「次の画素10」の「記憶容量4」が、共に「信号線8に接続されて」いることが、本願補正発明における「前記第1蓄電素子及び前記第2蓄電素子は前記共有ラインによって直接接続されている」ことに相当する。
タ 引用発明では、「信号線8」に、画素10に書込むべき「信号電圧Vs」が印加される際、つまり「選択された画素10」の「記憶容量4」への「書込み」と、「次の画素10」の「記憶容量4」への「書込み」の際に、「駆動TFT2のゲート端子」を「ソース端子に印加されている電源電圧よりもしきい値電圧Vthだけ低い電圧」に「再現」しているから、引用発明における「記憶容量4」への「書込み」の際に、「駆動TFT2のゲート端子」を「ソース端子に印加されている電源電圧よりもしきい値電圧Vthだけ低い電圧」に「再現」する手段と、本願補正発明における「前記第1および第2駆動回路にバイアス電流を印加するように構成された基準電流ライン」とは、「前記第1および第2駆動回路にバイアスを印加するように構成された手段」の点で共通する。
よって、本願補正発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「基板に配設された複数の発光素子を有するアクティブエリアと、前記アクティブエリアから区別されるディスプレイパネルの周辺エリアとを有するディスプレイパネルのための回路であって、
電圧データライン又は前記基準電圧を選択的に前記共有ラインに接続するように制御する手段と、
第1蓄電素子を通して前記共有ラインに接続された第1駆動回路により電流駆動されるように構成された第1発光素子を含む第1画素と、
第2蓄電素子を通して前記共有ラインに接続された第2駆動回路により電流駆動されるように構成された第2発光素子を含み、前記第1蓄電素子及び前記第2蓄電素子は前記共有ラインによって直接接続されている第2画素と、
前記第1および第2駆動回路にバイアスを印加するように構成された手段と、
を包含する回路。」
(相違点1)
本願補正発明では、電圧データライン又は前記基準電圧を選択的に前記共有ラインに接続するように制御する手段が、「電圧データラインと、共有ラインとの間に接続された共有スイッチトランジスタであって、共有基準電圧スイッチを通して基準電圧に接続され」、「前記電圧データライン又は前記基準電圧を選択的に前記共有ラインに接続するように制御され、基準電圧制御ラインによる前記共有基準電圧スイッチの制御によって前記基準電圧に接続される共有スイッチトランジスタ」であるのに対し、引用発明では、「信号線8を信号電圧生成回路16と定電圧入力線14とに切替え」る「信号線切替えスイッチ17」であって、「信号線切替えスイッチ17」は、「フレーム期間」の「前半の「書込み期間」」では「信号線8には信号電圧Vsが印加され」、「後半の「発光期間」」においては「信号線8には一定の電圧Vilが印加され」るように切り替えるものである点。
(相違点2)
本願補正発明では、前記第1および第2駆動回路にバイアスを印加するように構成された手段が、「前記第1および第2駆動回路にバイアス電流を印加するように構成された基準電流ライン」であるのに対し、引用発明では、「記憶容量4」への「書込み」の際に、「駆動TFT2のゲート端子」を「ソース端子に印加されている電源電圧よりもしきい値電圧Vthだけ低い電圧」に「再現」しているものの、「駆動TFT2」にバイアス電流を印加することで、該電圧を「再現」するものではない点。
(4)判断
そこで、上記各相違点につて検討する。
ア (相違点1)について:
例えば、特開平7-140939号公報の段落0049~0050、図5及び図8には、「切換スイッチSW」について、「【0049】次に、図8に示すものは、トランジスタQ4のソースがトランジスタQ1のドレインに直接接続されており、トランジスタQ4のゲートにはコントロール信号CTLが供給されており、トランジスタQ3のゲートにはコントロール信号CTLtが供給されている。
【0050】この回路では、トランジスタQ3,Q4がコントロール信号CTL,CTLtにより交互に切り換えられて、信号電圧VSとリファレンス電圧VRが交互に液晶容量CLに印加されるようになる。」
と記載されている。
このように、切換スイッチSWを、2つのトランジスタQ3,Q4で構成し、トランジスタQ3,Q4をコントロール信号CTL,CTLtにより交互に切り換えて、2つのトランジスタQ3,Q4にそれぞれ供給された電圧を選択的に出力することは、周知の事項である。
そして、上記周知の事項は、「表示装置」における回路に適用し得るものであることは明らかであるから、引用発明における「信号線切替えスイッチ17」を、2つのトランジスタQ3,Q4で構成し、トランジスタQ3,Q4をコントロール信号CTL,CTLtにより交互に切り換えて、2つのトランジスタQ3,Q4にそれぞれ供給された電圧を選択的に出力すること、つまり、
(ア)「信号電圧生成回路16」の「線」と、「信号線8」との間に接続されたトランジスタQ4であって、トランジスタQ3を通して「一定の電圧Vil」に接続され、
(イ)「信号電圧生成回路16」の「線」又は「一定の電圧Vil」を選択的に「信号線8」に接続するように制御され、コントロール信号CTLtの信号線によるトランジスタQ3の制御によって「一定の電圧Vil」に接続される、トランジスタQ4
を用い、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
イ (相違点2)について:
引用例2記載技術(上記(2)イ)を再掲すれば、次のとおりである。
「キャパシタ404の一方の端子は、信号ラインVdataに接続され、キャパシタ404の他方の端子は、駆動トランジスタ406のゲート端子に接続され、バイアス・ラインIbiasは、バイアス電流(Ibias)を供給し、画素回路400の動作は、プログラミング・フェーズX61および駆動フェーズX62を含み、プログラミング・フェーズX61の間、バイアス電流Ibiasは、バイアス・ラインIbiasを介して画素回路400へ印加され、駆動トランジスタ406のゲート端子は自己調整され、すべての電流が駆動トランジスタ406のソース-ドレインを通過できるようになる、CBVP(電流バイアス電圧プログラム)駆動方式。」(なお、最後の文節は、「駆動トランジスタ406のゲート端子は、すべての電流が駆動トランジスタ406のソース-ドレインを通過できるように自己調整される」の意味である。)
引用発明と引用例2記載技術とは、画素への書込み(プログラミング)技術の点で共通するから、引用発明に引用例2記載技術を適用し、引用発明において、バイアス電流(Ibias)を供給するバイアス・ラインIbiasを設け、「記憶容量4」への「書込み」の際に、バイアス・ラインIbiasにより、駆動TFT2にバイアス電流Ibiasを印加して「駆動TFT2のゲート端子」を「ソース端子に印加されている電源電圧よりもしきい値電圧Vthだけ低い電圧」を「再現」するようにし、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用例2記載技術及び周知の事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ よって、本願補正発明は、引用発明、引用例2記載技術及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、独立して特許を受けることができないものである。
(5)本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年3月31日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし25に係る発明は、平成27年10月27日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし25に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(2)に記載したとおりのものである。再掲すれば、次のとおり。
「【請求項1】
基板に配設された複数の発光素子を有するアクティブエリアと、前記アクティブエリアから区別されるディスプレイパネルの周辺エリアとを有するディスプレイパネルのための回路であって、
電圧データラインと、共有ラインとの間に接続された共有スイッチトランジスタであって、共有基準電圧スイッチを通して基準電圧に接続され、前記電圧データライン又は前記基準電圧を選択的に前記共有ラインに接続するように制御される共有スイッチトランジスタと、
第1蓄電素子を通して前記共有ラインに接続された第1駆動回路により電流駆動されるように構成された第1発光素子を含む第1画素と、
第2蓄電素子を通して前記共有ラインに接続された第2駆動回路により電流駆動されるように構成された第2発光素子を含み、前記第1蓄電素子及び前記第2蓄電素子は共有ラインによって直接接続されている第2画素と、
前記第1および第2駆動回路にバイアス電流を印加するように構成された基準電流ラインと、
を包含する回路。」
2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1,引用例2及びその記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。
3 対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本願補正発明から、「共有スイッチトランジスタ」についての「基準電圧制御ラインによる前記共有基準電圧スイッチの制御によって前記基準電圧に接続される」との限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明、引用例2記載技術及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用例2記載技術及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-004721