特許拒絶査定不服審判
2016-003624
無線端末に適用されるPCB、及び無線端末
- 審判番号
- 2016-003624
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-550618外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年03月09日
- 審決日
- 2017年04月28日
- 公報発行日
- 2017年11月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】▲華▼▲為▼終端有限公司
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】大貫 進介
- 分類
- P18 .561-Z (H01Q) / P18 .575-Z (H01Q) / P18 .113-Z (H01Q) / P18 .121-Z (H01Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-550618「無線端末に適用されるPCB,及び無線端末」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月12日国際公開,WO2014/086034,平成27年 3月26日国内公表,特表2015-509318〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,2012年12月7日を国際出願日とする特許出願であって,平成27年7月9日付けで拒絶理由が通知され,同年10月14日付けで手続補正がされたが,同年11月4日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成28年3月9日に拒絶査定不服審判が請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 補正の却下の決定
[結論]
平成28年3月9日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.平成28年3月9日付けの手続補正の概要
平成28年3月9日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)による補正後の特許請求の範囲の請求項1(以下,「補正後の請求項1に係る発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
無線端末に適用されるPCBであって,前記PCBは共振コンポーネントを有し,前記PCBは,前記共振コンポーネント以外の前記PCBの一部を用いて前記無線端末の少なくとも2個のアンテナに接続され,
第1のギャップが前記PCB上に形成され,前記第1のギャップは,前記PCBを第1の部分と第2の部分とに分け,前記第2の部分は前記少なくとも2個のアンテナに接続され,前記第2の部分は金属グランドを有し,前記第1の部分は,前記第2の部分の前記金属グランドに接続され,前記共振コンポーネントは前記第1の部分であり,前記第1のギャップは,前記PCBの端の近くに該端に沿って設けられた長方形の穴であり,
前記第1の部分は導体に接続され,前記共振コンポーネントは,前記第1の部分及び前記導体であり,前記第1の部分及び前記導体の長さの和は,前記共振コンポーネントの共振周波数帯の実効波長の4分の1である,
無線端末に適用されるPCB。」
そして,補正後の請求項1に係る発明は,次のAの構成(以下、「構成A」という。)及びBの構成(以下、「構成B」という。)を含むものである。
A 「前記第1のギャップは,前記PCBの端の近くに該端に沿って設けられた長方形の穴であり,」
B 「前記第1の部分は導体に接続され,前記共振コンポーネントは,前記第1の部分及び前記導体であり,前記第1の部分及び前記導体の長さの和は,前記共振コンポーネントの共振周波数帯の実効波長の4分の1である,」
2.新規事項の追加について
(1)当初明細書等の記載について
出願時の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には,構成Aについて以下の記載がある。
ア 「【0036】
任意で,本実施形態の可能な実装では,図5Aに示すように,第2のギャップ50がPCB10上に形成される。第2のギャップ50は,PCB10を第3の部分13と第4の部分14とに分ける。第4の部分14は,少なくとも2個のアンテナ20に接続される。第4の部分14は金属グランドを有する。ここで,共振ネットワークは130,第3の部分13に実装される。
【0037】
望ましくは,第3の部分13は,PCB10の端にあるストリップ構造であっても良い。
【0038】
特に,本実施形態の共振ネットワーク130は,特に共振回路であっても良い。共振ネットワーク130は,キャパシタCにより,又はインダクタLとキャパシタCとの組み合わせにより,形成されても良い。つまり,本実施形態の共振ネットワーク130は,キャパシタにより実装されるか,又はインダクタとキャパシタとの組み合わせにより実装されても良い。図5Bは,共振ネットワーク130の概略的部分拡大図である。」
イ 「
」(図5A,図5B)
当初明細書等には,構成Bについて以下の記載がある。
ウ 「【0034】
特に,図3に示すように,第1の部分11は,導体80とさらに接続されても良い。共振コンポーネント30は,第1の部分11及び導体80であっても良い。第1の部分11及び導体80の長さの和は,共振コンポーネントの共振周波数帯の実効波長の4分の1であっても良い。」
エ 「
」(図3)
(2)判断
構成Aは,長方形のギャップを有する上記イの図5A及び図5B(以下、併せて「図5」という。)の実施形態に対応するものといえ,構成Bは,上記エの図3の実施形態に対応するものといえるところ,構成Aと構成Bを併せ持つ実施形態は,当初明細書等に明記されていない。そこで,構成Aと構成Bとを併せ持つ実施形態が当初明細書等に実質的に記載されたものであるか否かについて検討する。
まず,構成Aを有する図5の実施形態に構成Bを適用することについて検討する。構成Bの導体は,所望の共振周波数に対応して,図3の実施形態では,第1の部分の開放端に接続されているところ,図5の実施形態の第3の部分13(図3の第1の部分11に対応する。)は,両端が第4の部分14(図3の第2の部分12に対応する。)に接続されていて開放端が存在しないから,構成Bの導体を前記第3の部分13に接続することは想定されておらず,また,構成Bの導体を前記第3の部分13に接続することは,出願時の技術常識を考慮しても自明なこととはいえない。
逆に,構成Bを有する図3の実施形態に構成Aを適用することについて検討すると,図3の実施形態では,すでに所望の共振周波数に対応したギャップ40が形成されているから,さらに構成Aの長方形の穴であるギャップを追加することは,出願時の技術常識を考慮しても自明なこととはいえない。
よって,構成Aと構成Bとを併せ持つ実施形態は,当初明細書等に実質的に記載されたものであるとはいえないので,当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術事項を導入するものである。
したがって,本件補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえず,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
3.独立特許要件について
上記2.のとおり,本件補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するが,さらに進めて,本件補正は,補正前の請求項3を構成Aにより限定して補正後の請求項1とする補正を含むものであるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当するため,以下,補正後の請求項1に係る発明が独立して特許を受けることができるか否かについても検討する。
<特許法第36条第6項第1号について>
上記2.のとおり,構成Aと構成Bを併せ持つ実施形態は,当初明細書等に記載されていない事項である。よって,補正後の請求項1に係る発明は,明細書又は図面に記載された発明ではなく,特許法第36条第6項第1号の規定に違反するから,独立して特許を受けることができない。
4.結語
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反し,また,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成27年10月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
無線端末に適用されるPCBであって,前記PCBは共振コンポーネントを有し,前記PCBは,前記共振コンポーネント以外の前記PCBの一部を用いて前記無線端末の少なくとも2個のアンテナに接続され,
第1のギャップが前記PCB上に形成され,前記第1のギャップは,前記PCBを第1の部分と第2の部分とに分け,前記第2の部分は前記少なくとも2個のアンテナに接続され,前記第2の部分は金属グランドを有し,前記第1の部分は,前記第2の部分の前記金属グランドに接続され,前記共振コンポーネントは前記第1の部分である,
無線端末に適用されるPCB。」
2.引用文献と引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された特開2006-229528号公報(以下,「引用文献」という。)には,「アンテナ装置およびそれを用いた携帯無線機」(発明の名称)に関して,以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,移動体通信などに用いられる携帯無線機と,それに搭載されるアンテナ装置に関するものであり,特に複数の周波数,システムを用いるアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体通信に用いられる携帯無線機の代表例である携帯電話は,従来の電話としての機能のみならず,様々なアプリケーションに対応したシステムの塔載が進められている。
【0003】
例としては,FMラジオやテレビ,GPS,BluetoothやWLANなどがある。
【0004】
しかし,これらのシステムは各々使用する周波数や,無線回路が異なるため,各システムに対応したアンテナ素子が必要になる。
【0005】
従来のアンテナ装置を図9に示す。
【0006】
地板100に,第1の周波数を用いて,第1のシステムに対応する第1のアンテナ素子101と,第2の周波数を用いて,第2のシステムに対応する第2のアンテナ素子102とがそれぞれ接続されている。このように,複数のシステムが必要なアンテナ装置の場合,それぞれのシステムに対応する複数のアンテナ素子が必要であった。
【0007】
なお,この出願の発明に関する先行技術文献情報としては,例えば特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2002-237779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら,単に1つの地板に複数のアンテナ素子を配置する場合,素子間の結合による特性の劣化や,結合による素子単体の調整が困難になるといった問題が生じていた。
【0009】
本発明は,上記課題を解決するもので,アンテナ素子間の結合を低減させ,アイソレーション特性を改善したアンテナ装置,およびそれを用いた携帯無線機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために,本発明は,地板と,第1の周波数帯に対応する第1のアンテナ素子と,第1の周波数帯の近傍あるいは重なる第2の周波数帯に対応する第2のアンテナ素子と,前記地板と前記第1のアンテナ素子とを接続する第1の給電部と,前記地板と前記第2のアンテナ素子とを接続する第2の給電部とを備え,前記第1のアンテナ素子と,第2のアンテナ素子を,それぞれ前記地板の長辺に平行に配置する構成としたアンテナ装置であり,アンテナ素子を地板の長辺に平行に配置させることで,素子間の結合を低減し,アイソレーション特性を改善したアンテナ装置,およびそれを用いた携帯無線機を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は,アンテナ素子を地板の長辺に平行に配置することにより,アンテナ素子間の結合を低減させて,アイソレーション特性を改善したアンテナ装置およびそれを用いた携帯無線機を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下に,実施の形態1を用いて,本発明の特に請求項1~3,9に記載の発明について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は,本発明の実施の形態1における装置の構成を示す図である。
【0014】
図1において,第1のアンテナ素子11と第2のアンテナ素子12は,それぞれ地板10の長辺と平行な方向に配置されている。また,第1のアンテナ素子11に給電する第1の給電部13,第2のアンテナ素子12に給電する第2の給電部14とを有している。
【0015】
このように,第1のアンテナ素子11と第2のアンテナ素子12とが互いのアンテナの方向に放射を抑圧するヌル点を向けることで,素子間の結合を低減し,アイソレーション特性を改善したアンテナ装置を得ることが可能となり,さらには,このアンテナ装置を用いた携帯無線機を得ることができる。
【0016】
ここで,図1の配置におけるアンテナ素子間の通過特性を図2に示す。また比較として,2つのアンテナ素子を地板の長辺と直交に配置した場合のアンテナ素子間の通過特性を図3に示す。
【0017】
図2,3より,アンテナの周波数帯域である2.4~2.5GHz間において,図2に示す本実施の形態におけるアンテナ素子間の通過特性が,図3に示す従来のアンテナより特性が3[dB]程度改善しており,この結果からもアイソレーション特性が改善されていることが分かる。
【0018】
さらに,地板10の短辺の長さを所定の周波数のほぼ1/4波長の長さとすることで,地板10の短辺方向に電流を制御するとともに,地板10を介するアンテナ素子間の結合を低減し,さらにアイソレーション特性を改善したアンテナ装置を得ることが可能となる。
【0019】
このときのアンテナ素子間の通過特性を図4に示す。
【0020】
図4の結果から,地板10上の電流分布を制御することで通過特性の極を所望の周波数帯に合わせることができ,図3と比較すると,アンテナの周波数帯域である2.4~2.5GHz間において,15[dB]程度通過特性を改善でき,アイソレーション特性が改善されていることが分かる。
【0021】
また,アンテナ素子に対応する周波数をBluetoothとWLANの周波数帯である2.4~2.5GHzに合わせることで,これらのアプリケーションに対応したアンテナ装置を得ることが可能となり,さらには,このアンテナ装置を用いた携帯無線機を得ることができる。
【0022】
(実施の形態2)
以下に,実施の形態2を用いて,本発明の特に請求項4,5に記載の発明について図面を参照しながら説明する。
【0023】
図5は,本発明の実施の形態2におけるアンテナ装置の構成を示す図である。
【0024】
なお,本実施の形態1と同様の構成を有するものについては,同一符号を付しその説明を省略する。
【0025】
図5において,地板10に接続されるアンテナ素子11側の短辺のほぼ1/4波長の長さの位置に第1のスリット15を,アンテナ素子12側の短辺のほぼ1/4波長の長さの位置に第2のスリット16を構成している。
【0026】
本実施の形態では,スリット15,16を地板10の短辺の長さの1/4波長の位置に装荷することで,スリットによる共振を利用して,地板10の短辺の長さを1/4波長とすることができるため,アイソレーション特性を改善しつつ,地板10の短辺の長さを自由に設定することが可能となる。
【0027】
さらに,スリット15,16の長さを所望の周波数のほぼ1/4波長とすることで,スリットでの共振を最大限利用することができるため,さらにアイソレーション特性を改善することが可能となる。」(2~4ページ)
上記記載からみて、引用文献には、特に実施の形態2のアンテナ装置に関連して,以下の事項が記載されている。
a 前記アンテナ装置は,【0001】より,「携帯無線機に搭載される」ものであり,前記アンテナ装置は,【0025】より,地板10を有するから,「携帯無線機に搭載される地板」が記載されているといえる。
b 【0027】より,前記地板10に第1及び第2のスリット15,16を設けそれぞれのスリットの長さを所望の周波数のほぼ1/4波長とすることで前記スリットで共振を発生させており,前記地板の前記共振する部分を共振部と称することは任意である。
【0025】より,前記地板10に第1のアンテナ素子11及び第2のアンテナ素子12が接続され,図5より,前記地板10と両アンテナは前記共振部以外の部分で接続されていることが見て取れる。
そうすると,引用文献に記載のものは,「前記地板は共振部を有し,前記地板は,前記共振部以外の部分で2つのアンテナに接続され」ているといえる。
c また,前記地板10に形成した第1のスリット15は,図5において,前記地板10をアンテナ側とは反対側の部分(第1の部分)とアンテナ側の部分(第2の部分)とに分けているといえる。そして,前記地板10には,外周に沿って電流が流れ,前記第1の部分と前記第2の部分では所望の周波数のほぼ1/4波長の長さを有する前記第1のスリット15に沿って電流が流れて共振が発生することは技術常識に照らして明らかであるから,前記第1の部分は前記共振部の一部を構成するといえる。
また,図5より,前記第2の部分には,接地の記号を介して前記第1及び第2のアンテナ素子が接続されることが読み取れるから,前記第2の部分はグランドを有するといえる。
また,図5より,前記第1の部分は,前記第2の部分のグランドと接続されていることは明らかであり,上述のとおり前記共振部の一部といえる。
そうすると,引用文献には,「第1のスリットが前記地板に形成され,前記第1のスリットは,前記地板を第1の部分と第2の部分に分け,前記第2の部分は前記第1及び第2のアンテナ素子に接続され,前記第2の部分はグランドを有し,前記第1の部分は,前記第2の部分のグランドに接続され,前記共振部は,前記第1の部分を含む,」ことが記載されている。
以上を総合すると,引用文献には上記「地板」について,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「携帯無線機に搭載される地板であって,前記地板は共振部を有し,前記地板は,前記共振部以外の部分で2つのアンテナに接続され,
第1のスリットが前記地板に形成され,前記第1のスリットは,前記地板を第1の部分と第2の部分に分け,前記第2の部分は前記第1及び第2のアンテナ素子に接続され,前記第2の部分はグランドを有し,前記第1の部分は,前記第2の部分のグランドに接続され,前記共振部は,前記第1の部分を含む,
携帯無線機に搭載される地板。」
3.対比・判断
本願発明と引用発明とを技術常識を勘案しつつ対比する。
引用発明の「携帯無線機」は,本願発明の「無線端末」に含まれ,引用発明の「搭載される」は,本願発明の「適用される」に含まれるといえる。そして,本願発明の「PCB」は,「printed circuid board」(プリント回路基板)のこと(明細書【0001】)であり,引用発明の「地板」は,板状のものであることが明らかであるから,本願発明の「PCB」と引用発明の「地板」は,以下の一応の相違点を除き「基板」である点で共通する。
また,引用発明の「共振部」及び「第1及び第2のアンテナ素子」は,それぞれ本願発明の「共振コンポーネント」及び「2個のアンテナ」に相当する。そうすると,引用発明の「地板」と本願発明の「PCB」は,「共振コンポーネントを有」する点,及び,「前記共振コンポーネント以外の」「一部を用いて前記無線端末の」「2個のアンテナに接続され」る点で共通する。
引用発明の「第1のスリット」は,その形状からみて本願発明の「第1のギャップ」に相当するから,本願発明の「第1のギャップが前記PCB上に形成され」と引用発明の「第1のスリットが前記地板に形成され」は,「第1のギャップが前記基板上に形成され」の点で共通する。そして,本願発明の「前記第1のギャップは,前記PCBを第1の部分と第2の部分とに分け」と引用発明の「前記第1のスリットは,前記地板を第1の部分と第2の部分に分け」とは,「前記第1のギャップは,前記基板を第1の部分と第2の部分とに分け」の点で共通する。
共通点である「第2の部分」について,本願発明と引用発明は,さらに「2個のアンテナに接続され」る点で共通し,引用発明の「グランド」は本願発明の「金属グランド」に相当するから,両者は,「金属グランドを有」する点でも共通する。
共通点である「第1の部分」について,本願発明と引用発明は,さらに「金属グランドに接続され」る点,及び,「共振コンポーネント」である点で共通する。
以上のとおりであるから,本願発明と引用発明は以下の点で一致し,また一応相違する。
(一致点)
「無線端末に適用される基板であって,前記基板は共振コンポーネントを有し,前記基板は,前記共振コンポーネント以外の前記基板の一部を用いて前記無線端末の2個のアンテナに接続され,
第1のギャップが前記基板上に形成され,前記第1のギャップは,前記基板を第1の部分と第2の部分とに分け,前記第2の部分は前記少なくとも2個のアンテナに接続され,前記第2の部分は金属グランドを有し,前記第1の部分は,前記第2の部分の前記金属グランドに接続され,前記共振コンポーネントは前記第1の部分である,
無線端末に適用される基板。」
(一応の相違点)
一致点である「基板」について,本願発明は「PCB」であるのに対し,引用発明は「PCB」である点が特定されていない点。
そこで,一応の相違点について検討すると,携帯電話機に小型化のために必要な回路を形成したPCBを用いることは自明なことであり,携帯電話機に用いられアンテナを備えるPCBには地板としての作用があることも自明(例えば、特開2002-152116の【0003】に「図6は従来の携帯電話機に広く用いられているモノポール・アンテナ方式によるアンテナ構造及び動作時の電流分布、電圧分布を示す。図6(a)において、電話機本体のPCB(プリント配線基板)1には、1/4λモノポール・アンテナ2が給電点3を介して取り付けられている。図6(a)(b)において、モノポール・アンテナ1はアンテナ素子とアンテナ地板とにより所望の周波数で共振し1つのアンテナを構成するため、アンテナ電流iaに応じてPCB1を地板とする地板電流ieが図示のようにPCB1に流れる。」と記載されている。)であるから,引用発明の携帯無線機に搭載される「地板」は、前記作用に対応した呼称であることが明らかであり、引用発明の「地板」を一般的な呼称である「PCB」と称することは引用文献に記載されているに等しい事項といえる。
よって、本願発明は引用発明と同一であるといえる。
また、仮に本願発明と引用発明との間に差異があるとしても、それは表現上の差異にすぎず,引用発明の「地板」を一般的な呼称である「PCB」と称することは当業者が適宜になし得ることであるから,本願発明は引用発明に基づいて容易に発明することができたものである。
4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明と同一であるから特許法第29条第1項第3号に該当し,仮に同一でないとしても,引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,同法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
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2016-003624