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特許拒絶査定不服審判

2021-004347

高RF同調、広い温度動作範囲、及び低粘度の無線周波数液晶(RFLC)混合物を有するアンテナ

審判番号
2021-004347
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-560814外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年04月05日
審決日
2021年12月07日
公報発行日
2022年05月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H01Q) / P18 .575-Z (H01Q) / P18 .572-Z (H01Q)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-560814「高RF同調、広い温度動作範囲、及び低粘度の無線周波数液晶(RFLC)混合物を有するアンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月23日国際公開、WO2017/201515、令和 1年 7月18日国内公表、特表2019-520738〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2017年(平成29年)5月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年5月20日 アメリカ合衆国、2017年5月19日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。 令和 2年 6月11日付け 拒絶理由通知書 9月14日 意見書・手続補正書 11月27日付け 拒絶査定(以下、「原査定」という。) 令和 3年 4月 5日 審判請求書・手続補正書 5月24日 手続補正書(請求の理由) 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和3年4月5日の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 令和2年9月14日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲(以下の(2)を参照。)は、本件補正により、以下の(1)のとおり補正された。 (1)本件補正後の特許請求の範囲 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1及び請求項17の記載は、それぞれ以下のア及びイのとおりである。なお、下線部は補正箇所を示す。 ア 「【請求項1】 複数のメタマテリアル表面散乱アンテナ素子を有するアンテナ素子アレイを備え、各アンテナ素子が、該各アンテナ素子において共振を制御する能動素子として動作する液晶(LC)構造を有するアンテナであって、前記LC構造は、少なくともプロトン、水素(H)、又はヘテロ原子のうちの1つ以上で側方官能化され、 A、B、Rx及びRzは1つ以上の化学要素又は化合物を表し、Y及びZは単結合又は三重結合を表し、かつmは整数を表し、そしてさらにAはCnH(2n+i)に結合されたCH2、O、S、又はSeを含み、nは整数である、 以下の: 【化1】 [図:0001383793000001.jpg] のうちの1種以上の混合物を含むことを特徴とする、アンテナ。」 イ 「【請求項17】 フィードから同心円状に伝搬する給電波を入力するためのアンテナ給電部と、 複数のスロットと、 複数のパッチであって、前記パッチの各々は、LCセルを用いて前記複数のスロット内のスロットの上に共に配置されると共に該スロットから隔てられ、パッチ/スロットペアを形成し、各パッチ/スロットペアは、制御パターンによって指定される前記ペア内のパッチに対する電圧の印加に基づいてオン又はオフになる、複数のパッチと、 を更に備えることを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、本件補正は請求項17の記載を変えていないから、請求項17については省略する。 「【請求項1】 複数のアンテナ素子を有するアンテナ素子アレイを備え、各アンテナ素子が液晶(LC)構造を有するアンテナであって、前記LC構造は、少なくともプロトン、水素(H)、又はヘテロ原子のうちの1つ以上で側方官能化され、 A、B、Rx及びRzは1つ以上の化学要素又は化合物を表し、Y及びZは単結合又は三重結合を表し、かつmは整数を表し、そしてさらにAはCnH(2n+i)に結合されたCH2、O、S、又はSeを含み、nは整数である、 以下の: 【化1】 [図:0001383793000002.jpg] のうちの1種以上の混合物を含むことを特徴とする、アンテナ。」 2 補正の目的及び独立特許要件 請求項17は請求項1を引用するものであって、本件補正は、本件補正前の請求項17に記載された発明を特定するために必要な事項である「アンテナ素子」及び「液晶(LC)構造」(いずれも本件補正前の請求項1に記載のもの)を、それぞれ「メタマテリアル表面散乱アンテナ素子」及び「該各アンテナ素子において共振を制御する能動素子として動作する液晶(LC)構造」に限定するものであって、補正前の請求項17に記載された発明と補正後の請求項17に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項17に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、前記1(1)ア及びイに記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献3 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された米国特許出願公開第2015/0236412号明細書(以下、原査定が参照する令和2年6月11日付け拒絶理由通知書にならい「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は強調のために当審で付し、当審訳は引用文献3の日本語ファミリーである特表2017-506467号公報を参考にして当審で作成した。 a 「[0002] Embodiments of the present invention relate to the field of antennas; more particularly, embodiments of the present invention relate to an antenna that is cylindrically fed.」 (当審訳:[0002] 本発明の実施形態は、アンテナの分野に関し、より詳細には、本発明の実施形態は、円筒状に給電されるアンテナに関する。) b 「[0037] Embodiments of a metamaterial antenna system for communications satellite earth stations are described. In one embodiment, the antenna system is a component or subsystem of a satellite earth station (ES) operating on a mobile platform (e.g., aeronautical, maritime, land, etc.) that operates using either Ka-band frequencies or Ku-band frequencies for civil commercial satellite communications. Note that embodiments of the antenna system also can be used in earth stations that are not on mobile platforms (e.g., fixed or transportable earth stations). [0038] In one embodiment, the antenna system uses surface scattering metamaterial technology to form and steer transmit and receive beams through separate antennas. In one embodiment, the antenna systems are analog systems, in contrast to antenna systems that employ digital signal processing to electrically form and steer beams (such as phased array antennas).」 (当審訳:[0037] 通信衛星地上局のためのメタマテリアルアンテナシステムの実施形態を説明する。一実施形態において、該アンテナシステムは、民間商業衛星通信のためのKa帯域周波数又はKu帯域周波数のいずれかを使用して作動するモバイルプラットフォーム(例えば、航空、海上、陸上など)を運用する衛星地上局(ES)の構成要素又はサブシステムである。該アンテナシステムの実施形態はまた、モバイルプラットフォーム上にない地上局(例えば、固定型又は可搬型の地上局)でも使用可能であることに注意されたい。 [0038] 一実施形態において、該アンテナシステムは、表面散乱メタマテリアル技術を使用することで、複数の独立したアンテナを通して送信ビーム及び受信ビームの形成及び方向制御を行う。一実施形態において、該アンテナシステムは、アナログシステムであり、デジタル信号処理を使用して電気的にビームの形成及び方向制御を行うアンテナシステム(フェーズドアレイアンテナなど)とは対照的である。) c 「[0039] In one embodiment, the antenna system is comprised of three functional subsystems: (1) a wave propagating structure consisting of a cylindrical wave feed architecture; (2) an array of wave scattering metamaterial unit cells; and (3) a control structure to command formation of an adjustable radiation field (beam) from the metamaterial scattering elements using holographic principles. Examples of Wave Propagating Structures [0040] FIG. 1 illustrates a top view of one embodiment of a coaxial feed that is used to provide a cylindrical wave feed. Referring to FIG. 1, the coaxial feed includes a center conductor and an outer conductor. In one embodiment, the cylindrical wave feed architecture feeds the antenna from a central point with an excitation that spreads outward in a cylindrical manner from the feed point. That is, a cylindrically fed antenna creates an outward travelling concentric feed wave. Even so, the shape of the cylindrical feed antenna around the cylindrical feed can be circular, square or any shape. In another embodiment, a cylindrically fed antenna creates an inward travelling feed wave. In such a case, the feed wave most naturally comes from a circular structure.」 (当審訳:[0039] 一実施形態において、該アンテナシステムは、以下の3つの機能的サブシステムで構成される:(1)円筒状波給電アーキテクチャから構成される波伝播構造、(2)波散乱メタマテリアルユニットセルのアレイ、及び(3)ホログラフィック原理を使用したメタマテリアル散乱素子からの調整可能な放射場(ビーム)の形成を指令する制御構造。 波伝播構造の例 [0040] 図1は、円筒状波給電を提供するのに使用される同軸給電の一実施形態の上面図である。図1を参照すると、同軸給電は、中心導体と外側導体を含む。一実施形態において、円筒状波給電アーキテクチャは、給電点から円筒状に外向きに伝搬する励振を使用して中心点からアンテナに給電する。すなわち、円筒状給電アンテナは、外向きに進行する同心円状の給電波を生成する。そうではあるが、円筒状給電周囲の円筒状給電アンテナの形状は、円形、正方形、あるいはどのような形状にもできる。別の実施形態において、円筒状給電アンテナは、内向きに進行する給電波を生成する。そのような場合に、給電波は、最も自然には円形構造から生じる。) d 「[0048] In operation, when a feed wave is fed in from coaxial pin 201, the wave travels outward concentrically oriented from coaxial pin 201 in the area between ground plane 202 and interstitial conductor 203. The concentrically outgoing waves are reflected by sides 207 and 208 and travel inwardly in the area between interstitial conductor 203 and RF array 206. The reflection from the edge of the circular perimeter causes the wave to remain in phase (i.e., it is an in-phase reflection). The travelling wave is slowed by dielectric layer 205. At this point, the travelling wave starts interacting and exciting with elements in RF array 206 to obtain the desired scattering.」 (当審訳:[0048] 運用中、給電波が同軸ピン201から給電されるとき、該波は同軸ピン201から外へ向けて同心円状にグラウンドプレーン202と浸入型導体203との間の領域を進む。同心円状の外向き波は、側面207及び208によって反射され、浸入型導体203とRFアレイ206との間の領域を内向きに進む。円形の外周の端からの反射は、該波の位相をそのままにとどめる(すなわち、それは同相反射である)。進行波は、誘電体層205により減速される。この時点で、進行波はRFアレイ206中の素子との相互作用及び励起を開始し、その結果、所望の散乱が得られる。) e 「Array of Wave Scattering Elements [0054] RF array 206 of FIG. 2A and RF array 216 of FIG. 2B include a wave scattering subsystem that includes a group of patch antennas (i.e., scatterers) that act as radiators. This group of patch antennas comprises an array of scattering metamaterial elements. [0055] In one embodiment, each scattering element in the antenna system is part of a unit cell that consists of a lower conductor, a dielectric substrate and an upper conductor that embeds a complementary electric inductive-capacitive resonator (“complementary electric LC” or “CELC”) that is etched in or deposited onto the upper conductor. [0056] In one embodiment, a liquid crystal (LC) is injected in the gap around the scattering element. Liquid crystal is encapsulated in each unit cell and separates the lower conductor associated with a slot from an upper conductor associated with its patch. Liquid crystal has a permittivity that is a function of the orientation of the molecules comprising the liquid crystal, and the orientation of the molecules (and thus the permittivity) can be controlled by adjusting the bias voltage across the liquid crystal. Using this property, the liquid crystal acts as an on/off switch for the transmission of energy from the guided wave to the CELC. When switched on, the CELC emits an electromagnetic wave like an electrically small dipole antenna. [0057] Controlling the thickness of the LC increases the beam switching speed. A fifty percent (50%) reduction in the gap between the lower and the upper conductor (the thickness of the liquid crystal) results in a fourfold increase in speed. In another embodiment, the thickness of the liquid crystal results in a beam switching speed of approximately fourteen milliseconds (14 ms). In one embodiment, the LC is doped in a manner well-known in the art to improve responsiveness so that a seven millisecond (7 ms) requirement can be met.」 (当審訳:波散乱素子のアレイ [0054] 図2AのRFアレイ206及び図2BのRFアレイ216は波散乱サブシステムを含み、該サブシステムは放射体として動作する1群のパッチアンテナ(すなわち、散乱体)を含む。このパッチアンテナ群は、散乱メタマテリアル素子のアレイを含む。 [0055] 一実施形態において、該アンテナシステム内の各散乱素子はユニットセルの一部であり、該ユニットセルは下側導体、誘電体基板及び上側導体から成り、該上側導体は相補的な電気誘導性-容量性共振器(「相補的電気LC」又は「CELC」)を組み込んでおり、CELCは該上側導体にエッチング又は被着されている。 [0056] 一実施形態において、液晶(LC)が、散乱素子の周囲の間隙に注入される。液晶は各ユニットセル内にカプセル封入され、スロットに関連する下側導体をそのパッチに関連する上側導体から分離する。液晶には誘電率があり、該誘電率は液晶を構成する分子の配向の関数であり、そして、分子の配向(そしてそれ故に誘電率)は該液晶を横切るバイアス電圧を調整することによって制御できる。この特性を使用して、液晶は、被嚮導波からCELCへのエネルギー伝達のためのオン/オフスイッチとして作用する。スイッチがオンになったとき、CELCは、電気的に微小なダイポールアンテナのように電磁波を放射する。 [0057] LCの厚みを制御することにより、ビームのスイッチング速度が増加する。下側及び上側導体間の間隙(液晶の厚み)を50%減少させると、4倍の速度増加をもたらす。別の実施形態においては、液晶の厚みが約14ミリ秒(14ms)のビームスイッチング速度をもたらす。一実施形態においては、7ミリ秒(7ms)の要件を満たせるように、LCを当該技術分野で周知の方法によりドープして応答性を改善する。) (当審注:[0056]の「guided wave」の訳は、研究社「リーダーズ英和辞典第2版」に従い、「被嚮導波」とした。) f 「[0062] FIG. 3 illustrates a top view of one embodiment of one patch antenna, or scattering element. Referring to FIG. 3, the patch antenna comprises a patch 301 collocated over a slot 302 with liquid crystal (LC) 303 in between patch 301 and slot 302.」 (当審訳:[0062] 図3は、1つのパッチアンテナ又は散乱素子の一実施形態の上面図を示している。図3を参照すると、該パッチアンテナは、液晶(LC)303とともに、スロット302の上に配置されたパッチ301を含み、該液晶303はパッチ301とスロット302との間にある。) g 「[0070] FIG. 6 illustrates one embodiment of iris board 403. This is a lower conductor of the CELCs. Referring to FIG. 6, the iris board includes an array of slots. In one embodiment, each slot is oriented either +45 or -45 relative to the impinging feed wave at the slot's central location. In other words, the layout pattern of the scattering elements (CELCs) are arranged at ±45 degrees to the vector of the wave. Below each slot is a circular opening 403b, which is essentially another slot. The slot is on the top of the Iris board and the circular or elliptical opening is on the bottom of the Iris board. Note that these openings, which may be about 0.001″ or 25 mm in depth, are optional.」 (当審訳:[0070] 図6は、アイリス基板403の一実施形態を示している。これは、CELCの下側導体である。図6を参照すると、アイリス基板は、スロットのアレイを含む。一実施形態において、各スロットは、該スロットの中央位置に突き当たる給電波に対して+45度又は-45度のいずれかに向けられる。言い換えれば、散乱素子(CELC)のレイアウトパターンは、該波の方向に対して±45度で配置される。各スロットの下には円形開口部403bがあり、これは本質的に別のスロットである。スロットはアイリス基板の上端にあり、円形又は楕円形開口部は、アイリス基板の下端にある。これらの開口部は、深さ約0.001インチ又は25mmであってよいが、任意的であることに注意されたい。) h 「[0075] FIG. 9 illustrates an embodiment of patch board 405. This is an upper conductor of the CELCs. Referring to FIG. 9, the patch board includes rectangular patches covering slots and completing linearly polarized patch/slot resonant pairs to be turned off and on. The pairs are turned off or on by applying a voltage to the patch using a controller. The voltage required is dependent on the liquid crystal mixture being used, the resulting threshold voltage required to begin to tune the liquid crystal, and the maximum saturation voltage (beyond which no higher voltage produces any effect except to eventually degrade or short circuit through the liquid crystal). In one embodiment, matrix drive is used to apply voltage to the patches in order to control the coupling.」 (当審訳:図9は、パッチ基板405の一実施形態を示している。これは、CELCの上側導体である。図9を参照すると、パッチ基板は複数の矩形パッチを含み、該矩形パッチは、スロットを覆い、かつ、オン・オフされる直線偏波パッチ/スロット共振ペアを完成させる。このペアは、コントローラを使用してパッチに電圧を印加することによりオン又はオフにされる。 必要とされる電圧は、使用する液晶混合物、液晶の同調を開始するのに必要な最終的な閾値電圧、及び最大飽和電圧(これを超える高電圧は、結局のところ、液晶を劣化させるか又は液晶が短絡する以外には何の効果も生み出さない)に依存する。一実施形態において、共振対の結合を制御するために、マトリックス駆動方式を使用してパッチに電圧を印加する。) i 「[0079] More specifically, the controller controls which elements are turned off and those elements turned on at the frequency of operation. The elements are selectively detuned for frequency operation by voltage application. A controller supplies an array of voltage signals to the RF radiating patches to create a modulation, or control pattern. The control pattern causes the elements to be turned on or off. In one embodiment, the control pattern resembles a square wave in which elements along one spiral (LHCP or RHCP) are “on” and those elements away from the spiral are “off” (i.e., a binary modulation pattern). In another embodiment, multistate control is used in which various elements are turned on and off to varying levels, further approximating a sinusoidal control pattern, as opposed to a square wave (i.e., a sinusoid gray shade modulation pattern). Some elements radiate more strongly than others, rather than some elements radiate and some do not. Variable radiation is achieved by applying specific voltage levels, which adjusts the liquid crystal permittivity to varying amounts, thereby detuning elements variably and causing some elements to radiate more than others.」 (当審訳:[0079] より具体的には、該コントローラは、動作周波数でどの素子がオフにされてどの素子がオンにされるかを制御する。該素子は、電圧の印加によって周波数動作に対して選択的に離調される。コントローラは、電圧信号のアレイをRF放射パッチに供給し、変調又は制御パターンを作り出す。制御パターンは、素子をオン又はオフにする。一実施形態において、制御パターンは方形波に似ており、該方形波によって1つの螺旋(LHCP又はRHCP)に沿った素子が「オン」し、螺旋から離れた素子が「オフ」する(すなわち、バイナリ変調パターン)。別の実施形態において、多重状態制御が使用され、該制御では様々な素子が様々なレベルでオン及びオフにされ、さらに正弦波制御パターンを近似し、方形波とは対照的である(すなわち、正弦波グレーシェード変調パターン)。一部の素子が放射して一部の素子が放射しないということではなく、一部の素子は、他の素子よりも強く放射する。可変的な放射は、特定の電圧レベルを印加することによって達成されるが、これは、液晶の誘電率を様々な量に調節し、それによって可変的に素子を離調して一部の素子に他の素子より多く放射させる。) j 図1 [図:0001383793000003.jpg] k 図2A [図:0001383793000004.jpg] (当審訳: [図:0001383793000005.jpg] ) 図2Aは円筒状給電アンテナ構造の側面図である([0041])から、上図より、円筒状給電アンテナは、同軸ピン201、グラウンドプレーン202,浸入型導体203、誘電体層205、RFアレイ206、側面207及び側面208を含むことが認められる。 l 図3 [図:0001383793000006.jpg] (当審訳: [図:0001383793000007.jpg] ) m 図6 [図:0001383793000008.jpg] n 図9 [図:0001383793000009.jpg] (イ)前記(ア)によれば、引用文献3には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「円筒状に給電されるメタマテリアルアンテナシステムであって([0002]、[0037])、 該アンテナシステムは、表面散乱メタマテリアル技術を使用し([0038])、 該アンテナシステムは、(1)円筒状波給電アーキテクチャから構成される波伝播構造、(2)波散乱メタマテリアルユニットセルのアレイ、及び(3)ホログラフィック原理を使用したメタマテリアル散乱素子からの調整可能な放射場(ビーム)の形成を指令する制御構造、の3つの機能的サブシステムで構成され([0039])、 波伝搬構造の例としての円筒状給電アンテナは、内向きに進行する給電波を生成し([0040])、 円筒状給電アンテナは、同軸ピン201、グラウンドプレーン202,浸入型導体203、誘電体層205、RFアレイ206、側面207及び側面208を含み(図2A)、 RFアレイ206は波散乱サブシステムを含み、該サブシステムは放射体として動作する1群のパッチアンテナ(すなわち、散乱体)を含み、このパッチアンテナ群は、散乱メタマテリアル素子のアレイを含み([0054])、 該パッチアンテナは、液晶(LC)303とともに、スロット302の上に配置されたパッチ301を含み、該液晶303はパッチ301とスロット302との間にあり([0062])、 上側導体はパッチに関連し([0056])、 該上側導体は相補的な電気誘導性-容量性共振器(「CELC」)を組み込んでおり([0055])、 液晶は、被嚮導波からCELCへのエネルギー伝達のためのオン/オフスイッチとして作用し、スイッチがオンになったとき、CELCは、電気的に微小なダイポールアンテナのように電磁波を放射し([0056])、 LCを周知の方法でドープして応答性を改善し([0057])、 給電波が同軸ピン201から給電されるとき、該波は同軸ピン201から外へ向けて同心円状にグラウンドプレーン202と浸入型導体203との間の領域を進み、同心円状の外向き波は、側面207及び208によって反射され、浸入型導体203とRFアレイ206との間の領域を内向きに進み([0048])、 アイリス基板403は、CELCの下側導体であり、アイリス基板は、スロットのアレイを含み([0070])、 パッチ基板405は、CELCの上側導体であり、パッチ基板は複数の矩形パッチを含み、該矩形パッチは、スロットを覆い、かつ、オン・オフされる直線偏波パッチ/スロット共振ペアを完成させ([0075])、 ユニットセルは下側導体、誘電体基板及び上側導体から成り([0055])、 液晶は各ユニットセル内にカプセル封入され、スロットに関連する下側導体をそのパッチに関連する上側導体から分離し([0056])、 前記ペアは、コントローラを使用してパッチに電圧を印加することによりオン又はオフにされ([0075])、 コントローラは、電圧信号のアレイをRF放射パッチに供給し、制御パターンを作り出し、制御パターンは、素子をオン又はオフにし、制御パターンは方形波に似ており、該方形波によって1つの螺旋に沿った素子が「オン」し、螺旋から離れた素子が「オフ」する([0079])、 メタマテリアルアンテナシステム。」 イ 引用文献2 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された特開2016-37607号公報(以下、原査定にならい「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は、「表A:環要素」(【0197】【化67】)、「表B:結合基」:(【0201】【化71】)、「表C:末端基」(【0202】【化72】)、「表D:説明的な構造」(【0204】【化73】)、「例1~12および比較例」(【0229】)、「比較例」(【0229】)及び「例1」(【0230】)に付されたものは引用文献2に記載されたとおりであり、それ以外のものは強調のために当審で付した。 a 「【0196】 本願においておよび特に以下の実施例において、メソゲン性化合物の構造は、頭文字とも称される、略号により、示す。これらの頭文字において、化学式は以下の表A~Cを用いて以下のように短縮する。全ての基CnH2n+1、CmH2m+1およびClH2l+1またはCnH2n-1、CmH2m-1およびClH2l-1は、各々、n、m、またはl個のC原子を有するそれぞれの場合における、直鎖のアルキルまたはアルケニル、好ましくは1-E-アルケニルを示す。表Aは、化合物のコア構造の環要素に対して用いられるコードを一覧し、一方で表Bは結合基を示す。表Cは、左手側および右手側末端基に対するコードの意味を与える。表Dは、それぞれの略号で、化合物の説明的な構造を示す。」 (当審注:【0196】の「CnH2n+1」、「CmH2m+1」、「CnH2n-1」及び「CmH2m-1」は、それぞれ「CnH2n+1」、「CmH2m+1」、「CnH2n-1」及び「CmH2m-1」の誤記と認める。) b 「【0197】 【化67】 表A:環要素 [図:0001383793000010.jpg] 」 c 「【0201】 【化71】 表B:結合基 [図:0001383793000011.jpg] 【0202】 【化72】 表C:末端基 [図:0001383793000012.jpg] ここにおいて、nおよびmはそれぞれ整数を示し、および3点ドット「...」はこの表からの他の略号のためのプレースホルダーである。」 d 「【0203】 以下の表は、説明的な構造を、それぞれの略号とともに示す。これらは、略号に対する規則の意味を説明するために示される。それらはさらには、好ましく用いられる化合物を表す。 【0204】 以下の説明的な構造は、末端-NSC基を有する、特に好ましく用いられる、化合物である: 【化73】 表D:説明的な構造 以下の説明的な構造は、末端-NCS基を有する、特に好ましく用いられる、化合物である: (化学式省略) 【0205】 【化74】 (化学式省略) 【0206】 【化75】 [図:0001383793000013.jpg] 」 e 「【実施例】 【0229】 例1~12および比較例 比較例 以下の表に示される組成および特性を有する液晶混合物C-1を調製し、その一般的な物性およびそのマイクロ波における適用性に関し特徴付けする。 【表1】 [図:0001383793000014.jpg] この混合物は、マイクロ波範囲における適用に、特にはマイクロ波(MW)域における移相器またはLCベースのアンテナ素子に好適であるが、その応答時間は中程度であるのみであり、要求のより厳しい用途には不十分である。 【0230】 例1 以下の表に示される組成および特性を有する液晶混合物M-1を調製し、その一般的物性およびそのマイクロ波コンポーネントにおける19GHzにおける適用性に関し特徴付けする。 【表2】 [図:0001383793000015.jpg] この混合物は、マイクロ波範囲における適用に、特にはマイクロ波(MW)域における移相器またはLCベースのアンテナ素子に好適である。比較例と比較して、この混合物は明らかに、優れた応答時間を呈する。」 (イ)前記(ア)によれば、引用文献2には、以下の技術(以下、「文献2記載技術」という。)が記載されていると認められる。 「マイクロ波(MW)域におけるLCベースのアンテナ素子に好適な液晶混合物M-1であって、 液晶混合物M-1は、以下の表に示される組成および特性を有し、 [図:0001383793000016.jpg] 優れた応答時間を呈する 液晶混合物M-1(【0230】)。」 (3)引用発明との対比 本件補正発明と引用発明とを対比すると、請求項17が引用する請求項1に記載された発明特定事項に関しては以下のア~ウのとおりであり、請求項17に記載された発明特定事項に関しては以下のエ~ケのとおりであり、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のコのとおりである。 ア 引用発明は「メタマテリアルアンテナシステム」であり、該「メタマテリアルアンテナシステム」は全体でアンテナとして機能することが明らかであるから、本件補正発明と引用発明とは、「アンテナ」である点で共通する。 イ 引用発明は「表面散乱メタマテリアル技術を使用」([0038])しており、そのサブシステムとして波伝播構造([0039])を備え、波伝播構造としての円筒状給電アンテナ([0040])は、「RFアレイ206」を含み(図2A)、「RFアレイ206」に含まれる波散乱サブシステムは「1群のパッチアンテナ(すなわち、散乱体)を含み、このパッチアンテナ群は散乱メタマテリアル素子のアレイを含」む([0054])ものである。 そうすると、引用発明が備える「散乱メタマテリアル素子」は「メタマテリアル表面散乱アンテナ素子」であるといえ、引用発明の「散乱メタマテリアル素子のアレイ」は「アンテナ素子のアレイ」であるといえる。 よって、本件補正発明と引用発明とは「複数のメタマテリアル表面散乱アンテナ素子を有するアンテナ素子アレイを備え」る点で一致する。 ウ 前記イによれば、引用発明の「パッチアンテナ」は、本件補正発明の「アンテナ素子」であると認められる。 引用発明の「パッチアンテナ」は、「液晶(LC)303とともに、スロット302の上に配置されたパッチ301を含」む([0062])ものであるから、本件補正発明の「液晶(LC)構造を有するアンテナ」に対応する。 引用発明の「パッチアンテナ」に含まれる「パッチ301」は、「上側導体」と関連しており([0056])、該「上側導体」には「CELC」が組み込まれており([0055])、「液晶」は「CELCへのエネルギー伝達のためのオン/オフスイッチとして作用」する([0056])ものである。オン/オフスイッチは能動素子に他ならないから、引用発明の「液晶」は能動素子として動作するものである。 引用発明の能動素子としての「液晶」は、「CELC」へのエネルギー伝達を制御するものであり、「CELC」は「相補的な電気誘導性-容量性共振器」である([0055])から、前記「液晶」は「CELC」の共振を制御していると認められる。 以上によれば、本件補正発明と引用発明とは「各アンテナ素子が、該各アンテナ素子において共振を制御する能動素子として動作する液晶(LC)構造を有するアンテナであ」る点で一致する。 エ 引用発明の「同軸ピン201」は、本件補正発明の「フィード」ないし「アンテナ給電部」に相当し、引用発明は「給電波が同軸ピン201から給電されるとき、該波は同軸ピン201から外へ向けて同心円状に」進む([0048])ものであるから、本件補正発明と引用発明とは「フィードから同心円状に伝搬する給電波を入力するためのアンテナ給電部」を備える点で一致する。 オ 引用発明の「アイリス基板403」は「CELCの下側導体であり」、「アイリス基板は、スロットのアレイを含」む([0070])から、引用発明は複数の「スロット」を備えている。 よって、本件補正発明と引用発明とは「複数のスロット」を備える点で一致する。 カ 引用発明の「パッチ基板405」は「CELCの上側導体であり」、「パッチ基板」は「複数の矩形パッチを含」む([0075])ところ、該「矩形パッチ」は明らかに「パッチ301」の別称であるから、本件補正発明と引用発明とは「複数のパッチ」を備える点で一致する。 キ 引用発明の「直線偏波パッチ/スロット共振ペア」は本件補正発明の「パッチ/スロットペア」に相当する。 そして、前記オ及びカをも考慮すると、本件補正発明と引用発明とは「パッチの各々は、パッチ/スロットペアを形成」する点で一致する。 ク 引用発明の「カプセル封入され」た「液晶」([0056])は、本件補正発明の「LCセル」に相当する。 引用発明は、前記「液晶」により「スロットに関連する下側導体をそのパッチに関連する上側導体から分離」する([0056])のだから、引用発明の「パッチ」は、「液晶」を用いて「スロット」の上に共に配置されると共に「スロット」から隔てられている。 そして、前記キをも考慮すると、本件補正発明と引用発明とは「前記パッチの各々は、LCセルを用いて前記複数のスロット内のスロットの上に共に配置されると共に該スロットから隔てられ、パッチ/スロットペアを形成」している点で一致する。 ケ 引用発明では「前記ペアは、コントローラを使用してパッチに電圧を印加することによりオン又はオフにされ」る([0075])ところ、「前記ペア」は明らかに「直線偏波パッチ/スロット共振ペア」のことである。 また、引用発明では「コントローラは、電圧信号のアレイをRF放射パッチに供給し、制御パターンを作り出し、制御パターンは、素子をオン又はオフに」する([0079])ところ、「RF放射パッチ」は明らかに「パッチ301」ないし「矩形パッチ」のことであり、「素子」は明らかに「メタマテリアル散乱素子」ないし「散乱メタマテリアル素子」のことであって「CELC」や「直線偏波パッチ/スロット共振ペア」と同義であると認められる。 そうすると、引用発明は、コントローラによって作り出された「制御パターン」によって指定される「直線偏波パッチ/スロット共振ペア」内の「矩形パッチ」に対する電圧の印加に基づいて、該「直線偏波パッチ/スロット共振ペア」がオン又はオフになると解されるから、本件補正発明と引用発明とは「各パッチ/スロットペアは、制御パターンによって指定される前記ペア内のパッチに対する電圧の印加に基づいてオン又はオフになる」点で一致する。 コ 前記ア~ケによれば、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 〈一致点〉 「複数のメタマテリアル表面散乱アンテナ素子を有するアンテナ素子アレイを備え、各アンテナ素子が、該各アンテナ素子において共振を制御する能動素子として動作する液晶(LC)構造を有するアンテナ。」であって、 「フィードから同心円状に伝搬する給電波を入力するためのアンテナ給電部と、 複数のスロットと、 複数のパッチであって、前記パッチの各々は、LCセルを用いて前記複数のスロット内のスロットの上に共に配置されると共に該スロットから隔てられ、パッチ/スロットペアを形成し、各パッチ/スロットペアは、制御パターンによって指定される前記ペア内のパッチに対する電圧の印加に基づいてオン又はオフになる、複数のパッチと、 を更に備えることを特徴とする、アンテナ。」である点。 〈相違点〉 本件補正発明は、LC構造について「前記LC構造は、少なくともプロトン、水素(H)、又はヘテロ原子のうちの1つ以上で側方官能化され、 A、B、Rx及びRzは1つ以上の化学要素又は化合物を表し、Y及びZは単結合又は三重結合を表し、かつmは整数を表し、そしてさらにAはCnH(2n+i)に結合されたCH2、O、S、又はSeを含み、nは整数である、 以下の: 【化1】 [図:0001383793000017.jpg] のうちの1種以上の混合物を含むことを特徴とする」との限定を有するのに対し、引用発明は、液晶について「LCを周知の方法でドープして応答性を改善」するとされているが、液晶構造の具体的な組成が明らかではない点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア 本件補正発明の「LC構造」における「Rx」及び「Ry」の解釈 (ア)請求項1には「A、B、Rx及びRzは1つ以上の化学要素又は化合物を表し」との記載はあるものの、「Ry」が何を表すのかは記載されていない。請求項1を引用する請求項17にも「Ry」についての記載はない。 (イ)そこで、本願明細書を参照すると、以下の記載がある。 「【0015】 この考え方は、上記の一般構造(GS1、GS2、GS3、及びGS4)によって表すことができる。GS1、GS2、及びGS4の場合、コアはm個の単位で表される。このコアは、最も一般的にはプロトン、H、及び/又はヘテロ原子、例えばフッ素(F)、臭素(Br)、又は塩素(Cl)などによって側方官能化することができる。アルキル基のような他の基、例えば、メチル(CH3)、エチル(CH2CH3)、プロピル(CH2CH2CH3)、又はメトキシ(OCH3)、エトキシ(OCH2CH3)、プロポキシ(OCH2CH3)、又はトリフルオロメトキシ(OCF3)を、様々なR位置に導入することもできる。このような側方官能化は、スメクチック相形成に不利になるように及び/又は回転粘度γ、弾性定数κ、及び融点Tmを変更するために、分子間相互作用を変更する。」(下線は強調のため当審で付した。) 上記記載の「様々なR位置」は、GS1~GS4(請求項1に記載のGS1~GS4と同じ。)のRx、Ry及びRzを指していると解される。 そして、「様々なR位置」についての記載は、「このコアは、最も一般的にはプロトン、H…(中略)…などによって側方官能化することができる。」との文、及び、「このような側方官能化は、…(後略)」との文に挟まれていることから、側方官能化についての記載であると解される。 そうすると、本願明細書における「Rx」、「Ry」及び「Rz」は、側方官能化を表すものであって、プロトン、水素、ヘテロ原子、メチル、エチル、プロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、又は、トリフルオロメトキシのいずれかであると解釈される。 (ウ)前記(イ)の解釈、及び、請求項1の「前記LC構造は、少なくともプロトン、水素(H)、又はヘテロ原子のうちの1つ以上で側方官能化され、」との記載、及び、請求項1の「A、B、Rx及びRzは1つ以上の化学要素又は化合物を表し」によれば、本件補正発明の「Rx」及び「Ry」は、本願明細書に記載のものと同様に側方官能化を表すものであって、プロトン、水素又はヘテロ原子を含む「化学要素」又は「化合物」を表すものであると解釈される。 イ 本件補正発明の「CnH(2n+i)」の解釈 (ア)請求項1には「AはCnH(2n+i)に結合されたCH2、O、S、又はSeを含み」との記載があり、「nは整数である」との記載はあるが、「i」についての記載はない。 (イ)そこで、本願明細書を参照すると、「この場合、Aは、下記の構造1-6で見られるように飽和炭素鎖であるか、又はアルコキシ(OCnH(2n+1))、又は同様に官能化されたシクロヘキシル及び/又はフェニル部分の何れかである。」(【0015】)との記載がある。 (ウ)前記(イ)の記載に鑑みると、請求項1の「CnH(2n+i)」は、「CnH(2n+1)」の誤記であり、請求項1の「CnH(2n+i)に結合されたCH2」は本願明細書の「飽和炭素鎖」を表し、請求項1の“「CnH(2n+i)に結合された」「O」”は、本願明細書の「アルコキシ」を表すと解釈される。 ウ 文献2記載技術の「液晶混合物M-1」の解釈 文献2記載技術の「液晶混合物M-1」は、表に示される9つの化合物からなる混合物であって、そのうちの化合物No.4、すなわち、略号「PTG-3-S」で示される化合物は、文献2【0206】の【化75】に示される「PTG-n-S」、すなわち、 [図:0001383793000018.jpg] における、n=3のもの(nについては文献2【0202】の表Cを参照。)、すなわち、 [図:0001383793000019.jpg] であると解される。 よって、文献2記載技術の「液晶混合物M-1」は、 [図:0001383793000020.jpg] を含む混合物であると解釈される。 エ 本件補正発明の「LC構造」と「液晶混合物M-1」との比較 (ア)文献2記載技術の「液晶混合物M-1」の「PTG-3-S」(前記ウの解釈による。以下同様。)は、左端に「C3H7」が結合している。この「C3H7」は「C2H5に結合されたCH2」に他ならない。 そして、本件補正発明の「A」は「CnH(2n+i)に結合されたCH2」と規定され、前記イにより「CnH(2n+1)に結合されたCH2」と解釈されるから、文献2記載技術の前記「C3H7」は、本件補正発明の「A」に含まれる。 (イ)文献2記載技術の「PTG-3-S」は、右端に「NCS」が結合している。これは「化学要素」又は「化合物」に他ならない。 そして、本件補正発明の「B」は「1つ以上の化学要素又は化合物」であると規定されるから、文献2記載技術の「NCS」は、本件補正発明の「B」に含まれる。 (ウ)前記(ア)及び(イ)を踏まえ、文献2記載技術の「PTG-3-S」の「C3H7」「A」と表記し、「NCS」を「B」と表記すると、 [図:0001383793000021.jpg] となる。 上記化学式で表される化合物は、本件補正発明のGS1におけるm=1、Rx=H、Ry=Fの場合、すなわち、 [図:0001383793000022.jpg] に含まれることが明らかである。 ここで、前記アによれば、本件補正発明の「Rx」及び「Ry」は側方官能化を表すものであって、プロトン、水素又はヘテロ原子を含む「化学要素」又は「化合物」を表すものであると解釈されるから、「PTG-3-S」における「H」(化学式では記載が省略されている)及び「F」は、それぞれ本件補正発明の「Rx」及び「Ry」に含まれる化学要素である。 (エ)前記(ア)~(ウ)によれば、文献2記載技術の「PTG-3-S」は、本件補正発明における 「少なくともプロトン、水素(H)、又はヘテロ原子のうちの1つ以上で側方官能化され、 A、B、Rx及びRzは1つ以上の化学要素又は化合物を表し、Y及びZは単結合又は三重結合を表し、かつmは整数を表し、そしてさらにAはCnH(2n+i)に結合されたCH2、O、S、又はSeを含み、nは整数である、 以下の: 【化1】 [図:0001383793000023.jpg] のうちの1種」に含まれる化合物である。 そうすると、文献2記載技術の「液晶混合物M-1」は、本件補正発明の「混合物」に含まれ、ひいては本件補正発明の「LC構造」に含まれる。 オ 引用発明への文献2記載技術の適用容易性 引用発明の「メタマテリアルアンテナシステム」は、「周知の方法でドープ」された「LC」(液晶)を用いるのだから、「LCベースのアンテナ」であるといえ、引用発明はその要素として「散乱メタマテリアル素子」を用いるのだから、引用発明におけるドープされた液晶は、「LCベースのアンテナ素子」に適用されるものである。 そして、引用発明は「LCを周知の方法でドープして応答性を改善」するものであるから、応答性の良い液晶混合物を用いる動機付けが存在する。 他方、文献2記載技術の「液晶混合物M-1」は、「LCベースのアンテナ素子に好適な液晶混合物」であって「優れた応答時間を呈する」ものであるから、文献2記載技術の「液晶混合物M-1」を応答性の良い液晶混合物として用いる動機付けが存在する。 したがって、文献2記載技術の「液晶混合物M-1」を引用発明のドープされた液晶として採用することは、当業者が容易に想到し得ることであるから、相違点に係る構成は、引用発明及び文献2記載技術に基づいて当業者が容易に想到し得る。 カ 効果の検討 本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び文献2記載技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 キ 独立特許要件についてのむすび 以上によれば、本件補正発明は、引用発明及び文献2記載技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび 前記2によれば、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項17に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和2年9月14日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び17に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載(請求項17については前記第2[理由]1(1)を参照。)のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-29に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1~引用文献3(引用文献2及び引用文献3は前記第2、2(2)のものと同じ。)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 請求項17~19及び27~29に係る発明に関しては、令和2年6月11日付け拒絶理由通知書にあるとおり、引用文献3に記載の発明において液晶として、引用文献1又は引用文献2に記載の液晶構造を採用することは、当業者が容易に為し得たものと認められるから、前記請求項に係る発明は、引用文献3に記載された発明及び引用文献1又は引用文献2に記載された技術に基いて容易に発明をすることができた、というものである。 なお、引用文献1は省略する。 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2及び3の記載事項は、前記第2、2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2、2で検討した本件補正発明から、「アンテナ素子」及び「液晶(LC)構造」に係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2、2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明及び文献2記載技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び文献2記載技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-004347

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