特許拒絶査定不服審判
2019-013073
アンテナ装置
- 審判番号
- 2019-013073
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-243878
- 請求日
- 2019年10月01日
- 審決日
- 2020年08月25日
- 公報発行日
- 2020年10月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人鷲田国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 北岡 浩
- 審判官 岡本 正紀
- 審判官 富澤 哲生
- 分類
- P18 .113-WY (H01Q) / P18 .121-WY (H01Q) / P18 .537-WY (H01Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-243878「アンテナ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年6月20日出願公開、特開2016-111384、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は平成26年12月2日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年10月10日付け:拒絶理由通知
平成30年12月11日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 4月12日付け:拒絶理由通知
令和 元年 6月17日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 6月25日付け:拒絶査定
令和 元年10月 1日 :拒絶査定不服審判の請求
令和 2年 5月 8日付け:拒絶理由通知
令和 2年 7月 3日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、令和2年7月3日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
地導体と、
略三角形の形状を有し、前記略三角形の頂点の1つが前記地導体に接続される地導体延長部と、
前記地導体に接続され、第1の周波数帯と第1の周波数帯より高い第2の周波数帯との両方の周波数帯で動作するアンテナ素子と、を具備するアンテナ装置であって、
前記地導体と前記地導体延長部との合計の長さは、前記第1の周波数帯と前記第2の周波数帯との間の中央周波数の4分の1波長の-5%から+20%の長さを有し、かつ、前記地導体と前記地導体延長部との合計の長さは、前記第1の周波数帯において共振しない長さである、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記地導体と前記地導体延長部との合計の長さは、前記中央周波数の4分の1波長の長さを有する、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記地導体は、略長方形の形状であり、
前記アンテナ装置は、
前記地導体の第1の辺の端に配置された給電部と、
前記地導体の前記第1の辺と対向した第2の辺上の前記給電部と近い側の端に配置された接続部と、を更に有し、
前記地導体は、前記接続部を介して、前記地導体延長部と接続する、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1の周波数帯は、800MHz帯であり、
前記第2の周波数帯は、2GHz帯であり、
前記中央周波数は、1400MHzである、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
第1筐体、第2筐体、および、第3筐体の3つの筐体が連なって設けられ、
前記地導体は、前記第1筐体に収納され、
前記地導体延長部は、前記第2筐体に収納され、
前記アンテナ素子は、前記第3筐体に収納される、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記アンテナ素子は、前記第1の周波数帯で動作する第1アンテナ素子部、および、前記第2の周波数帯で動作する第2アンテナ素子部を有し、
前記第1アンテナ素子部は、ミアンダ形状の素子であり、
前記第2アンテナ素子部は、逆L字型素子である、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
腕時計端末の本体部と、
前記本体部と接続され、且つ、樹脂からなる第1ベルト部と、
前記第1ベルト部の反対側で前記本体部に接続され、且つ、樹脂からなる第2ベルト部と、
を更に有し、
前記第1筐体は、前記本体部であり、
前記第2筐体は、前記第1ベルト部であり、
前記第3筐体は、前記第2ベルト部である、
請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第1ベルト部に含まれる前記地導体延長部の前記三角形の一辺が前記第1ベルト部の延長方向に沿って配置される、
請求項7に記載のアンテナ装置。」
第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定(令和元年6月25日付け拒絶査定)の拒絶の理由に引用された引用文献1(特表2013-539322号公報)には、図面とともに、以下の記載事項がある。(なお、下線は当審にて付与した。)
(1)「【0020】
図1a~図1bは、本開示のいくつかの態様によるマルチバンドアンテナを示している。図1aに示す例では、マルチバンドアンテナ100は、第1のセクション102、第2のセクション106、および第3のセクション110を含み、この場合に各セクションはそれぞれ104、108、および112のような(長方形の破線で示されている)筐体に位置し得る。第1のセクション102は、マルチバンドアンテナ100の接地面を実装することができ、第2のセクション106は、マルチバンドアンテナ100の延長接地面を実装することができる。」
(2)「【0023】
第3のセクション110は、3つの並列アンテナアーム114、116、および118を含む。例示的な一実装形態では、アンテナアーム114は、セル帯域(824~894MHz)およびISM帯域(902~928MHz)において信号を送信または受信するように調整可能であり、アンテナアーム116は、GPS帯域(1565~1585MHz)において信号を送信または受信するように調整可能であり、アンテナアーム118は、PCS帯域(1850~1990MHz)において信号を送信または受信するように調整可能である。別の実施形態では、1つまたは複数のアンテナアームが、図1aに示す3つの並列アンテナアームの代わりに実装され得る。3つのアンテナアーム114、116および118、接地面102、ならびに接地面延長部106は、電磁波の形態で信号を生成するために、接地面102および接地面延長部106から3つの並列アンテナアーム114、116および118に電流を通すことによって、セル帯域、ISM帯域、GPS帯域およびPCS帯域において信号を通信するように構成される。
【0024】
本開示の実施形態によれば、アンテナアーム114は、セル帯域およびISM帯域における周波数の約4分の1波長に比例する長さに調整可能であり、アンテナアーム116は、GPS帯域における周波数の約4分の1波長に比例する長さに調整可能であり、アンテナアーム118は、PCS帯域における周波数の約4分の1波長に比例する長さに調整可能である。加えて、接地面102および接地面延長部106は、セル帯域およびISM帯域における周波数のような、アンテナアームによってサポートされる複数の周波数帯域における周波数の約4分の1波長に比例する長さに調整可能である。いくつかの手法では、約4分の1波長は、マルチバンドアンテナの設計者が指定する、4分の1波長から一定の範囲内(たとえば、プラスまたはマイナス5%、10%、20%以内など)にあり得る。」
(3)図1a
(4)上記(3)からは接地面延長部106の形状が略コの字型であることが見て取れる。
(5)上記(1)から(4)の記載事項から、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「第1のセクション、第2のセクション、および第3のセクションを含むマルチバンドアンテナ100であって、
前記第1のセクションは接地面102を有し、
前記第2のセクションは略コの字型の接地面延長部106を有し、
前記第3のセクションは3つの並列アンテナアーム114、116、および118を含み、アンテナアーム114は、セル帯域(824~894MHz)およびISM帯域(902~928MHz)において信号を送信または受信するように調整可能であり、アンテナアーム116は、GPS帯域(1565~1585MHz)において信号を送信または受信するように調整可能であり、アンテナアーム118は、PCS帯域(1850~1990MHz)において信号を送信または受信するように調整可能であって、
前記3つのアンテナアーム114、116および118、接地面102、ならびに接地面延長部106は、電磁波の形態で信号を生成するために、接地面102および接地面延長部106から3つの並列アンテナアーム114、116および118に電流を通すことによって、セル帯域、ISM帯域、GPS帯域およびPCS帯域において信号を通信するように構成され、
前記接地面102および接地面延長部106は、セル帯域およびISM帯域における周波数のような、アンテナアームによってサポートされる複数の周波数帯域における周波数の約4分の1波長に比例する長さに調整可能であって、4分の1波長から一定の範囲内(たとえば、プラスまたはマイナス5%、10%、20%以内など)にあり得る、
マルチバンドアンテナ100。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特表2002-512463号公報)には、図面とともに、以下の記載事項がある。(なお、下線は当審にて付与した。)
(1)「【0001】
本発明は、携帯電話機等の無線通信装置の延長構造に関する。延長構造とは無線通信装置のアンテナシステムの1部を構成するものである。このような延長構造は可動で且つ好ましくは非導電性の支持体とこの支持体によって支持された導電性手段を含む。特に支持手段は携帯電話機の折り畳みまたはスライド式カバーであってもよい。」
(2)「【0020】
図1の好ましい態様において、放射エレメントA,A´の電気長は、およそ1/4波長であり、エレメントB´は半波長の電気長を有する。接地延長エレメントB´は、電話機の接地の放射を再分布し、放射パターンが改善され、SARの減少に貢献する。
(中略)
【0023】
この好ましい態様では、放射エレメントA´の電気長は、特に限定されないが、例えば1波長の1/4波長から1/2波長の範囲で選択され、この範囲の上限に近い範囲の波長が好ましい。エレメントB、B´の電気長は共に1/4波長以上であるのが好ましい。エレメントB、B´の電気長は、エレメントA´で述べた範囲の上限に近い部分またはそれ以上になるようように選択されるのが好ましい。接地延長エレメントB、B´の重要な特徴は、共に電話機の設置の放射を再分布し、放射パターンを改良し、SARの減少に貢献するということである。」
(3)図1
3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特表2005-522063号公報)には、図面とともに、以下の記載事項がある。(なお、下線は当審にて付与した。)
(1)「【0001】
本発明は、ケーシング内に収容され所定の縦横寸法を有する少なくとも1つのプリント配線板と、このプリント配線板に結合され無線放射の電磁場を送受信する少なくとも1つのアンテナとを有している無線通信機に関する。」
(2)「【0025】
図3には、スタブエレメントKV1,KV2として、Z方向でそれぞれZVBだけ電流路を延長する補正素子ZV1と、これに併せてさらにX方向でZVLだけ電流路を延長するスタブエレメントPST1,PST2とが示されている。電流路延長部に対して支配的なのは1次近似では特に各補正素子の機械的な導体区間である。この区間はプリント配線板LPの結合領域からその端部までの距離であり、補正素子を展開した仮定のプレーナ形の状態で測定されるものである。補正素子はいわばプリント配線板の長さ方向において、本来の層レベルでなく、4つの側縁で囲まれる領域BFの上方および/または下方へ延長されるのである。図3では得られる延長部の距離が補正素子ZV1のX方向およびZ方向での全折り込み長さ、すなわち区間ZVBおよびZVLの和として表されている。実験で30%の延長を試みたところ、有利には約20%SAR値が低減された。」
(3)図3
4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開平6-090107号公報)には、図面とともに、以下の記載事項がある。(なお、下線は当審にて付与した。)
(1)「【0011】〔実施例1〕図1は本発明の実施例1に係る腕装着型無線機(腕装着型無線機用アンテナ装置)の全体構成を示す断面図、図2はそれを腕から外してバンド体を延ばした状態における横断面図、図3はその縦断面図である。
【0012】これらの図において、本例の腕装着型無線機1は、外装ケース21内に回路基板22および無線機用回路ブロック23(受信回路ブロック)を備える受信機本体2と、この受信機本体2の側部に接続された皮革,シリコン樹脂形成体やウレタン樹脂成形体などからなる第1のバンド体3Lおよび第2のバンド体3Rを備える腕装着用バンド3とを有する。この腕装着用バンド3のうち、第2のバンド体3Rの端部には金属製の尾錠31(中留め)が取り付けられており、この尾錠31によって、第1のバンド体3Lの自由端が第2のバンド体3Rの端部に連結されるバンドコネクタ部30が構成されている。
【0013】ここで、第1のバンド体3Lと第2のバンド体3Rは、皮革,シリコン樹脂またはウレタン樹脂などからなる絶縁性のシートが縫い合わされて、またはそれらが貼り合わされて構成されており、それらの内部には、それぞれ第1の導電体板5Lと第2の導電体板5Rとが一体に固定されている。(後略)」
(2)図2
5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2013-197852号公報)には、図面とともに、以下の記載事項がある。(なお、下線は当審にて付与した。)
(1)「【0044】
(第7の応用例)
図11は、本実施の形態に係る携帯無線端末用ケース1の第7の応用例の基本構成を示し、(a)は携帯無線端末100に装着したときの正面図、(b)は携帯無線端末100に装着したときの側面図である。同図に示すように、第7の応用例は、下端側が広がったテーパ状の導電性グランド拡大板金5Eを有するものである。このような構成を採ることで、軽量化が図れる。」
(2)図11
第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明は「アンテナアーム114、116、および118」を備える「マルチバンドアンテナ100」であるから、『アンテナ装置』に含まれる。
イ 引用発明の「接地面102」は、本願発明1の『地導体』に相当する。
ウ 引用発明では「前記3つのアンテナアーム114、116および118、接地面102、ならびに接地面延長部106は、電磁波の形態で信号を生成するために、接地面102および接地面延長部106から3つの並列アンテナアーム114、116および118に電流を通すことによって、セル帯域、ISM帯域、GPS帯域およびPCS帯域において信号を通信するように構成され」ており、「接地面102」と「接地面延長部106」とは(電気的に)接続されている。
してみると、本願発明1の『地導体延長部』の形状が『略三角形』である点を除き、引用発明の「接地面延長部106」は、本願発明1でいう『前記地導体に接続される地導体延長部』に相当する。
エ 引用発明では「前記3つのアンテナアーム114、116および118、接地面102、ならびに接地面延長部106は、電磁波の形態で信号を生成するために、接地面102および接地面延長部106から3つの並列アンテナアーム114、116および118に電流を通すことによって、セル帯域、ISM帯域、GPS帯域およびPCS帯域において信号を通信するように構成され」ており、「接地面102」と「並列アンテナアーム114、116および118」とは(電気的に)接続されている。
また、引用発明の「並列アンテナアーム」は「セル帯域(824~894MHz)およびISM帯域(902~928MHz)において信号を送信または受信するように調整可能」な「アンテナアーム114」と「PCS帯域(1850~1990MHz)において信号を送信または受信するように調整可能」な「アンテナアーム118」を有しており、ここで、「PCS帯域(1850~1990MHz)」は「セル帯域(824~894MHz)およびISM帯域(902~928MHz)」より高い周波数帯である。
してみると、引用発明の「アンテナアーム114」と「アンテナアーム118」は、本願発明1でいう『地導体に接続され、第1の周波数帯と第1の周波数帯より高い第2の周波数帯との両方の周波数帯で動作するアンテナ素子』に相当する。
(2)一致点及び相違点
上記(1)で対比した様に、本願発明1と引用発明とは、
「地導体と、
前記地導体に接続される地導体延長部と、
前記地導体に接続され、第1の周波数帯と第1の周波数帯より高い第2の周波数帯との両方の周波数帯で動作するアンテナ素子と、を具備するアンテナ装置。」
で一致しており、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願発明1の『地導体延長部』は『略三角形の形状を有し、前記略三角形の頂点の1つ』が『前記地導体』に接続されるのに対し、引用発明の「接地面延長部106」は「略コの字型」の形状を有している点。
[相違点2]
本願発明1では『地導体』と『地導体延長部』との合計の長さが『前記第1の周波数帯と前記第2の周波数帯との間の中央周波数の4分の1波長の-5%から+20%の長さを有し、かつ、前記地導体と前記地導体延長部との合計の長さは、前記第1の周波数帯において共振しない長さである』であるのに対し、引用発明では「接地面102」と「接地面延長部106」との合計の長さは、「アンテナアームによってサポートされる複数の周波数帯域における周波数の約4分の1波長に比例する長さに調整可能であって、4分の1波長から一定の範囲内(たとえば、プラスまたはマイナス5%、10%、20%以内など)」である点。
(3)判断
『地導体延長部』の形状が異なれば、物理長が同じであっても電気長は異なり得ることや、アンテナ導体の電気長がアンテナの特性に影響することが技術常識であることを踏まえれば、『地導体延長部』の形状に関する上記相違点1と、『地導体延長部』(と『地導体』との合計)の長さに関する上記相違点2とは密接に関係するものであるといえるから、上記相違点1と2を一体的に判断する。
引用文献2、3には無線通信装置に延長構造を設けることでSARを低減できることは開示されているものの、SARの低減のために『地導体延長部』の形状及び、『地導体』と『地導体延長部』との合計の長さを規定することが当業者にとって周知であるとまではいえない。また、引用文献4、5には上記相違点2に関連する事項は記載されていない。
したがって、引用発明において、引用文献2-5に記載された事項に基づき、「接地面延長部106」の形状を「略コの字型」から“略三角形”に変更するとともに、「接地面102」と「接地面延長部106」との合計の長さを「アンテナアームによってサポートされる複数の周波数帯域」の“中央周波数”の“4分の1波長”とすることが当業者にとって容易であるとはいえない。
よって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2 本願発明2-8について
本願発明2-8も、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、上記1で説示した理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第5 原査定の概要及び原査定についての判断
1 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
(1)理由1(特許法第29条第1項第3号)
本願請求項1、2、4、5に係る発明は、上記引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)理由2(特許法第29条第2項)
ア 本願請求項1、2、4、5に係る発明は、上記引用文献1-3に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
イ 本願請求項3、6に係る発明は、上記引用文献1-3に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
ウ 本願請求項7に係る発明は、上記引用文献1-4に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
エ 本願請求項8に係る発明は、上記引用文献1-5に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2 原査定についての判断
(1)理由1についての判断
令和2年7月3日付けの補正により補正された請求項1は「略三角形の形状を有し、前記略三角形の頂点の1つが前記地導体に接続される地導体延長部」という事項及び、「前記地導体と前記地導体延長部との合計の長さは、前記第1の周波数帯と前記第2の周波数帯との間の中央周波数の4分の1波長の-5%から+20%の長さを有」するとの事項を含むものとなっており、上記第4の1(2)のとおり、補正後の本願発明1は原査定において引用された引用文献1に記載された発明ではないから、原査定の理由1を維持することはできない。請求項1の発明特定事項をすべて含む本願発明2、4、5についても同様に原査定の理由1を維持することはできない。
(2)理由2についての判断
上記第4の1(3)及び第4の2で説示したとおり、本願発明1-8は拒絶査定において引用された引用文献1-5に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由2を維持することはできない。
第6 当審拒絶理由について
1 理由1(特許法第36条第6項第2号)
当審では『請求項1には「・・・前記第1の周波数帯と前記第2の周波数帯との間の中央範囲に含まれる周波数の4分の1波長の-5%から+20%の長さ」と記載されているが、「中央範囲」が前記第1の周波数帯と前記第2の周波数帯との間のどの範囲を示しているのか不明確であり、その「中央範囲に含まれる周波数の4分の1波長の-5%から+20%の長さ」が取り得る範囲が不明確である。』との拒絶の理由を通知しているが、令和2年7月3日付けの補正において、「中央範囲に含まれる周波数」が「中央周波数」と補正された結果、この拒絶理由は解消した。
2 理由2(特許法第36条第6項第1号)
当審では“中央範囲に含まれる周波数の4分の1波長の-5%から+20%の長さを有するように設計すること”及び、“本願発明の詳細な説明には地導体延長部が略三角形形状である実施形態のみ記載されているところ、地導体延長部の形状が異なれば、物理長が同じであっても電気長は異なり得ることや、アンテナ導体の電気長がアンテナの特性に影響することが技術常識であることを考慮すると、本願発明の詳細な説明に開示された地導体と地導体延長部との合計の長さに関する条件が地導体延長部の形状にかかわらず有効であること”は本願の発明の詳細に記載されたものではないとの拒絶理由を通知しているが、令和2年7月3日付けの補正において、「前記地導体に接続される地導体延長部」が「略三角形の形状を有し、前記略三角形の頂点の1つが前記地導体に接続される地導体延長部」と補正され、「中央範囲に含まれる周波数」が「中央周波数」と補正された結果、この拒絶理由は解消した。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-013073