特許拒絶査定不服審判
2016-002129
接続端子
- 審判番号
- 2016-002129
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-254604外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年02月12日
- 審決日
- 2017年01月23日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (H01R)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011-254604「接続端子」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月 6日出願公開、特開2013-109990〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本願は、平成23年11月22日の出願であって、平成27年6月5日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年7月13日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月15日付け(発送日:平成28年1月5日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年2月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、同年6月10日付けで上申書が提出され、当審において同年9月23日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年11月7日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年11月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「板状部材の一端が解放され、該一端から前記板状部材内に切り込む切り欠きを設けて一対の接触片を形成し、該一対の接触片の向かい合う一対の縁面のそれぞれの縁面が接続対象物に接触される縁面を形成し布線板に立設され電線と接続される接続端子において、
前記一対の接触片を形成するそれぞれの接触片の表面に前記切り欠きの縁底位置よりも前記接触片の延在方向下方位置から上方位置にわたって連続的に前記各接触片の表裏の一方の面に凸部が前記接触片の延出方向に沿うとともに前記凸部に対応する前記各接触片の表裏の他方の面に凹部が前記接触片の延出方向に沿い且つ該接触片のこの延在方向の長さと略同等の長さの直線状に形成されてなるとともに前記凸部及び前記凹部の前記接触片の延出方向に直交する断面形状が三角形状に形成されてなる補強部を、該補強部の前記接触片の延出方向の略中間部が前記切り欠きの前記縁底位置と略同等の高さ位置となるように設けてなる
ことを特徴とする接続端子。」
第3.刊行物
1.刊行物1(特開平10-134861号公報)
当審で通知した拒絶理由に引用された刊行物1である、特開平10-134861号公報には、「フラットケーブル用圧接コネクタ及びそれに用いられる圧接端子」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与。以下、同様。)
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フラットケーブルを用いた自動車用ワイヤハーネス等に使用される圧接コネクタ及びそれに用いられる圧接端子に関し、特に、ケーブル端子間の接触信頼性の向上及び部品点数の削減による低コスト化に対応する圧接コネクタ及び圧接端子に関する。」
(2)「【0007】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、圧接端子の圧接部の機械的強度が高く、自動車のワイヤハーネスに適していると共に、部品点数が少なく、低コストのフラットケーブル用圧接コネクタ、及びこのような圧接コネクタに用いられる圧接端子を提供することを目的とする。」
(3)「【0015】図1は本発明のフラットケーブル用圧接コネクタに用いられる圧接端子を示す図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【0016】これらの図に示すように、圧接端子11は、圧接部12と後述する相手端子に嵌合される嵌合部13とを有している。
【0017】圧接部12は、フラットケーブルの中の1本の電線が圧接されるスリットSを有し、互いに対向する2つのスリット部材14、15を有しており、各スリット部材に2つずつ、合計4つの補強用ビード16が 設けられている。これら補強用ビード16は、各スリット部材におけるスリットSの両側に、スリット部材の板厚の2倍程度の厚さ(高さ)で形成されている。このように、2つのスリット部材を設け、かつ補強用ビード16を設けることにより、大きな荷重がかかる自動車のワイヤハーネスによく用いられる0.5mm2以上の電線を圧接する場合でも、スリットの開きや座屈が抑制され、信頼性の高い圧接が実現される。」
(4)「【0018】これら2つのスリット部材14、15は連結部17により連結されて一体となっているとともに、これらの連結部17に対向する各端部は、側板18により連結されている。すなわち、圧接部12は、対向する2つのスリット部材14、15を含むボックス形状の部材からなっている。このように、圧接部12をボックス形状とすることにより、ケーブルを圧接する際に、不意な外圧が加わっても圧接部12が変形し難くなっている。
【0019】また、嵌合部13もまたボックス形状をなしており、嵌合部13と圧接部12との間には、これらを連結する底板19の他に補強板20が設けられ、さらに底板19には補強用ビード21が設けられている。このような構成により、圧接端子11をハウジングに挿入又は圧入する際に、底板19が変形することが妨げられ、バランス良く挿入又は圧入することができる。なお、参照符号22は嵌合部のバネ片である。」
(5)「【0022】図3は、本発明の一実施形態に係る圧接コネクタの基本構成を示す概略構成図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。この図に示すように、圧接コネクタ30は、上述の圧接端子が複数装着されるハウジング31と、複数の圧接端子のスリット部材同士の絶縁のためにハウジング31の上に設けられるハウジングカバー32とを有し、更にハウジングカバー32の上に設けられ、フラットケーブル40に及ぼされた荷重が圧接端子11の圧接部12に及ぼされないようにするためのストレインリリーフ33を有している。ハウジングカバー32トストレインリリーフ33とはヒンジ34を介して一体成形され、これらが一部品となっている。
【0023】複数の圧接端子11は、図4に示すように、ハウジング31に対して2列に配列されて装着されている。・・・(後略)・・・」
(6)「【0025】先ず、ハウジング31に上述したように装着された圧接端子11にフラットケーブル40を、その各電線が各圧接端子のスリットSに挿入された状態で、圧接する。次いで、ストレインリリーフ33が開いた状態でハウジングカバー32を装着し、180度曲げた後の戻りのフラットケーブル40をハウジングカバー32の上に位置させる。そして、ストレインリリーフ33をヒンジ34を支点として回動させて装着する。これにより、ハウジングカバー32とストレインリリーフ33との間にフラットケーブル40が挟み込まれた状態となり、フラットケーブル40の装着が終了する。」
(7)「【0027】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、圧接端子が、フラットケーブルの電線を挿入するためのスリットを有するスリット部材を2つ備え、かつ各スリット部材に補強材を設けるとともに、圧接部をスリット部材を含むボックス形状としたので、圧接端子の圧接部の機械的強度を著しく高めることができ、自動車のワイヤハーネスに適したフラットケーブル用圧接コネクタが実現される。」
(8)図1は、刊行物1に係る発明におけるフラットケーブル用圧接コネクタに用いられる圧接端子を示す(a)左側面図、(b)正面図、及び(c)右側面図であり、図2は、図1の圧接端子の展開図であるので、前記(3)及び(4)、図1及び図2の記載からみて、圧接端子11は、板状部材により形成され、その一端が解放され、該一端から前記板状部材内に切り込むスリットSが設けられて、一対のスリット部材14(15)を形成されていることが分かる。また、前記(5)及び(6)、図3及び図7の記載を踏まえると、一対のスリット部材14(15)の向かい合う一対の縁面のそれぞれの縁面がフラットケーブル40に接触される縁面を形成していることが分かる。
(9)前記(3)、図1及び図2の記載から見て、一対のスリット部材14(15)を形成するそれぞれのスリット部材14(15)の表面に前記スリットSの縁底位置よりも前記スリット部材14(15)の延在方向下方位置から上方位置にわたって連続的に前記各スリット部材14(15)の表裏の一方の面にスリット部材14(15)の板厚の2倍程度の厚さ(高さ)に形成された補強用ビード16は、スリット部材14(15)の面に対して凸部を形成しており、該凸部が前記スリット部材14(15)の延出方向に沿って設けられていることが分かる。
また、図1及び図2の記載からみて、スリット部材14(15)の延在方向の長さと補強用ビード16の長さは、略同等であり、補強用ビード16は、直線状に形成されていることが分かる。さらに、スリットSの縁底位置に対して、補強用ビード16におけるスリット部材14(15)の延在方向上方部分の長さと延在方向下方部分の長さの比が約3:1であることが分かる。
上記記載事項及び認定事項を総合して、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「板状部材の一端が解放され、該一端から前記板状部材内に切り込むスリットSを設けて一対のスリット部材14(15)を形成し、該一対のスリット部材14(15)の向かい合う一対の縁面のそれぞれの縁面がフラットケーブル40に接触される縁面を形成しハウジング31に装着されフラットケーブル40と接続される圧接端子11において、
前記一対のスリット部材14(15)を形成するそれぞれのスリット部材14(15)の表面に前記スリットSの縁底位置よりも前記スリット部材14(15)の延在方向下方位置から上方位置にわたって連続的に前記各スリット部材14(15)の表裏の一方の面に凸部が前記スリット部材14(15)の延出方向に沿うとともに且つ該スリット部材14(15)のこの延在方向の長さと略同等の長さの直線状に形成されてなる補強用ビード16を、スリットSの縁底位置に対して、補強用ビード16におけるスリット部材14(15)の延在方向上方部分の長さと延在方向下方部分の長さの比が約3:1となるように設けてなる圧接端子11。」
2.刊行物2(特開平8-79943号公報)
当審で通知した拒絶理由に引用された刊行物2である、特開平8-79943号公報には、「配線板組立体の配線方法」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ワイヤハーネスの相互接続などに用いる電気接続箱に収容される配線板組立体の配線方法に関する。」
(2)「【0010】
【実施例】図1は、本発明の実施例に係わる布線板1および配線板2の配線される前の状態を示す斜視図である。配線板2は、配線が終了した後、電気接続箱を構成するメインカバー3とアンダーカバー4との間に収容されるものである。布線板1は、電気絶縁性の合成樹脂材を成形加工により形成したもので、基板部1a上に、所定の間隔をおいて突条5が並設されている。
【0011】隣り合う突条5、5間には、図2に示すように、配線板2に配設された圧接端子6、またはブスバー8の圧接端子部9に対応した位置に、基板部1aを貫通する複数の端子挿通孔10が開設されている。また、図3に示すように、突条5の端部5a、5b、5cなどと、端子挿通孔10の近傍には、図4に示すような、圧接端子6のスロット6aまたはブスバー8の圧接端子部9のスロット9aの幅より若干幅広い間隙11を有する電線係止壁12が、隣り合う突条5、5間に跨設されている。」
(3)「【0015】次いで、上記の電線係止体14を布線台Rから取り外して配線板2上に重ね、布線板1の端子挿通孔10に圧接端子6またはブスバー8の圧接端子部9を挿入する。そして、布線台Rに電線係止体14を重ね合わせた配線板2を載置し、圧接治具16または19を下降させて電線係止体14に仮係止してある電線13を、圧接端子6のスロット6aまたはブスバー8の圧接端子部9のスロット9aに圧入する。図9は、電線13がスロット6aまたはスロット9aに圧入された状態を示している。」
第4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用からみて、後者の「スリットS」は、前者の「切り欠き」に相当し、以下同様に、後者の「スリット部材14(15)」、「フラットケーブル40」、「圧接端子11」、及び「補強用ビ-ド16」は、それぞれ「接触片」、「接続対象物」及び「電線」、「接続端子」、及び「補強部」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「板状部材の一端が解放され、該一端から前記板状部材内に切り込む切り欠きを設けて一対の接触片を形成し、該一対の接触片の向かい合う一対の縁面のそれぞれの縁面が接続対象物に接触される縁面を形成し電線と接続される接続端子において、
前記一対の接触片を形成するそれぞれの接触片の表面に前記切り欠きの縁底位置よりも前記接触片の延在方向下方位置から上方位置にわたって連続的に前記各接触片の表裏の一方の面に凸部が前記接触片の延出方向に沿うとともに且つ該接触片のこの延在方向の長さと略同等の長さの直線状に形成されてなる補強部を設けてなる
接続端子。」
[相違点1]
接続端子が、本願発明では、「布線板に立設され」るのに対して、引用発明は、ハウジング31に装着される点。
[相違点2]
接触片において、本願発明では、「前記凸部に対応する前記各接触片の表裏の他方の面に凹部が前記接触片の延出方向に沿」うのに対して、引用発明は、かかる構成を有するのか明らかでない点。
[相違点3]
接触片において、本願発明では、「前記凸部及び前記凹部の前記接触片の延出方向に直交する断面形状が三角形状に形成されて」いるのに対して、引用発明は、かかる構成を有するのか明らかでない点。
[相違点4]
補強部について、本願発明は、「該補強部の前記接触片の延出方向の略中間部が前記切り欠きの前記縁底位置と略同等の高さ位置となるように設けて」いるのに対して、引用発明は、補強用ビード16を、スリットSの縁底位置に対して、補強用ビード16におけるスリット部材14(15)の延在方向上方部分の長さと延在方向下方部分の長さの比が約3:1となるように設けている点。
第5.当審の判断
(1)相違点1について
刊行物2には、電線13をスロット6aに圧入する圧接端子6を、布線板1に設けられた端子挿通孔10に挿入して、立設するものが記載されている(前記第3.2.(2)、(3)、【図1】、【図2】、【図9】)。
すなわち、圧接端子(接続端子)を立設する布線板は、刊行物2に記載されるように公知の事項である。引用発明の圧接端子11はフラットケーブル40をスリットSに挿入し、圧接するものであり(前記第3.1.(6))、刊行物2における圧接端子6は電線6をスロット6aに圧入するものであり、両者は電線をスリット(スロット)に圧入する圧接端子で共通するから、引用発明の圧接端子を、布線板に立設させるようにすることは、刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たことである。
(2)相違点2について
相違点2に係る「前記凸部に対応する前記各接触片の表裏の他方の面に凹部が前記接触片の延出方向に沿」う構成については、本願明細書に、「一対の接触片11の各接触片11は、図1に示すように、接触片11の表面11b内で切り欠き10の縁底10a位置Pに対して接触片11の延在方向下方位置から上方位置にわたって連続的に凸状に形成されてなる補強部20を有してなる。この補強部20は、図2に示すように各接触片11の表裏の一方の面11b1から他方の面11b2に向けて打ち出し加工、いわゆるビード打ち加工を施すことによって形成される。」(段落【0020】)と記載されているものの、「凹部」については、単に図2において補強部20のある面の反対側の面に凹みが示されていることが把握されるのみで、当該箇所に符号も付されておらず、本願明細書にはその技術的意義について何ら記載されていない。
引用発明の補強用ビード16は、「各スリット部材におけるスリットSの両側に、スリット部材の板厚の2倍程度の厚さ(高さ)で形成されている」(刊行物1の段落【0017】)ものであり、刊行物1の図1及び図2の記載も踏まえると、補強用ビード16は、スリット部材14(15)の面に対して凸部を形成しており、該凸部が前記スリット部材14(15)の延出方向に沿って設けられている(前記第3.1.(9))と認められる。しかしながら、刊行物1には、補強用ビード16がどのようにして形成されるのかについて明示的記載はない。
一般に、板状部材に突条(ビード)を設けて板状部材の補強を行うことは、引用文献を示すまでもなく周知の技術であり、接続端子の技術分野においても同様である。
また、その突条(ビード)の形成手段として、板状部材の一方の面より圧力を加えて他方の面を突出させて凸部を形成するように行うことは、周知の手段(例えば、特開平10-149847号公報における「打ち出し」により形成された「補強部2k、2k」(段落【0018】ないし【0020】、【図1】)、特開平11-40214号公報における「叩き出し」により形成された「ビード31」(段落【0017】、【0018】、【図5】、【図6】)、特開2009-245825号公報における「半押し」により形成された「補強リブ7」(段落【0010】、【図1】、【図2】参照。以下、「周知の手段」という。)であると認められる。
そして、当該周知の手段を用いて突条(ビード)を形成した場合、板状部材において凸部に対応する他方の面に凹部が形成されることは自明である。
よって、引用発明における補強用ビード16の形成手段として、当該周知の手段を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであると認められ、当該周知の手段を採用することにより補強用ビード16を形成すれば、スリット部材14(15)において凸部に対応する他方の面に凹部が形成されることとなる。
したがって、相違点2に係る本願発明の構成は、引用発明及び前記周知の手段に基いて、当業者が容易に想到し得たことである。
(3)相違点3について
一般に、板状部材に突条(ビード)を設けて板状部材の補強を行う場合、突条(ビード)の断面形状として、四角形状、半円状、三角形状等は、何れもよく知られた形状である(例えば、特開平6-283221号公報の段落【0035】、【図12】、【図13】、特開2009-189623号公報の段落【0034】、【0035】、【0042】、【図3】参照)。
また、本願発明において、補強部の断面形状を「三角形状」に形成した点について、本願明細書には、「より具体的には、補強部20は、図1および図2に示すように、接触片11の延出方向に直交する断面が三角形状をなし、この三角形状の頂点が延出方向に沿う直線となるように形成されている。このため、補強部20は、接触片11の幅方向での寸法S2が小さく抑えられるようになっている。すなわち、図3に示すように、電線Wの絶縁被覆部W2と干渉し難い位置に配置し易いようになっている。」(段落【0024】、【0025】)と記載されているが、本願の請求項1には、そもそも接続端子の幅方向における接触片と補強部の相対的な位置関係や寸法が特定されているわけではないので、「三角形状」の場合と「四角形状や半円状等三角形状以外の形状」の場合と比較して、「接触片11の幅方向での寸法S2」や「電線Wの絶縁被覆部W2と干渉し難い位置」について、格別な作用効果の差異があるとも認められない。
したがって、相違点3に係る構成のうち、「凸部の前記接触片の延出方向に直交する断面形状が三角形状に形成されて」いる点は、単に板状部材に突条(ビード)を設けて板状部材の補強を行う場合に生じる突条(ビード)の断面形状の一つにすぎず、当業者が必要に応じて採用し得た設計上の事項であると認められる。
また、「凹部」を三角形状としたことについては、単に本願の図2において補強部20のある面の反対側の面に略三角形状の凹みが示されていることが把握されるのみで、当該箇所に符号も付されておらず、本願明細書にはその技術的意義について何ら記載されていない。そして、前記「(2)相違点2について」で説示したように、前記周知の手段を用いて突条(ビード)を形成した場合、板状部材において凸部に対応する他方の面に凹部が形成されることは自明であり、「凹部」を三角形状としたことは、凸部を「三角形状」に形成した際に生じ得るものにすぎず、当業者が必要に応じて採用し得た設計上の事項であると認められる。
したがって、相違点3に係る本願発明の構成は、引用発明及び前記周知の手段に基いて、当業者が容易に想到し得たことである。
(4)相違点4について
補強部について、相違点4に係る「該補強部の前記接触片の延出方向の略中間部が前記切り欠きの前記縁底位置と略同等の高さ位置となるように設けてなる」構成については、本願の図1及び図3において、単に「補強部の前記接触片の延出方向の略中間部」と「前記切り欠きの前記縁底位置」の配置が示されているのみで、本願明細書には、当該構成の技術的意義について直接的に説明する記載はない。
しかしながら、当該構成に関連するものとしては、本願明細書に、「ここで、補強部20を有しない従来の接続端子100の応力分布について説明する。図7は、電線Wと接続された従来の接続端子100の応力分布を示した図である。 従来の接続端子100では、図7に示したように、電線Wが接続されると、応力が各接触片110の根元周辺の領域Arに集中して付加される。より具体的には、切り欠き10の縁底10a位置に対して接触片110の延在方向下方位置から上方位置にわたった領域Arに応力が集中して付加される。このような領域Arで分布される応力が、一対の接触片110が開いた状態で塑性変形される原因となる。本発明の実施例に係る接続端子1は、補強部20が接触片11の延在方向下方位置から上方位置にわたって連続的に形成されている。すなわち、一対の接触片11が開いた状態で塑性変形される原因となる応力が集中する領域Arが補強されるようになっている。このような接続端子1は、切り欠き10に電線Wが押し込まれる際、一対の接触片11が開く方向に撓むものの、応力が集中する領域Arで補強部20によって開く方向の力に対する反力が増加されるので、一対の接触片11が弾性を有した状態、すなわち接触圧を所定の大きさで維持した状態で電線Wに接続される。」(段落【0021】ないし【0023】)と記載されている。
この記載及び図7の記載からみて、図7において、補強部20がない従来の接続端子10の場合、電線Wが接続されると、切り欠き10の縁底10a位置に対して接触片110の延在方向下方位置から上方位置にわたった領域Arに応力が集中して付加され、一対の接触片110が開いた状態で塑性変形される原因となるため、本願発明は、補強部20が接触片11の延在方向下方位置から上方位置にわたって連続的に形成することにより、領域Arを補強したものと解される。
すなわち、本願発明の補強部30を設ける位置として、少なくとも応力が集中する「各接触片110の根元周辺の領域Ar」の部分を補強することで、本願発明の課題を達成できると認められる。
一方、引用発明は、補強用ビード16を、スリットSの縁底位置に対して、補強用ビード16におけるスリット部材14(15)の延在方向上方部分の長さと延在方向下方部分の長さの比が約3:1となるように設けており、刊行物1の図1及び図2の記載からみて、本願発明の場合と同様に、少なくともスリット部材14(15)の根元周辺の領域の部分を補強しているものと認められ、本願発明と同様の作用効果を奏するものと認められる。
本審判請求人は、平成28年11月7日付け意見書の2ページ最終行から3ページ10行において「上記従来の接続端子に対し、新請求項1に記載の発明に係る接続端子は、補強部20が、図1に図示するように、接触片11のこの延在方向の長さと略同等の長さの直線状に形成され、この補強部20の、接触片11の延出方向の略中間部が、切り欠き10の縁底10aの位置Pと略同等の高さ位置となるように設けられているため、一対の接触片11が開いた状態で塑性変形される原因となる応力が集中する領域Arの上端位置から下端位置にかけて補強部20が配置されることになります。これにより、新請求項1に記載の発明に係る接続端子によれば、例えば補強部が接触片の延在方向上方位置から切り欠きの縁底位置と同等か、やや下方位置にかけて直線状に形成されるような接続端子と比較して、上記応力が集中する領域Arが、補強部20によって、確実に補強されるようになります。したがいまして、新請求項1に記載の発明に係る接続端子によれば、接続信頼性を、より確実に確保することができるという効果を奏するものであります。」と主張している。
しかしながら、補強部20の、接触片11の延出方向の略中間部が、切り欠き10の縁底10aの位置Pと略同等の高さ位置となるように設けられているので、応力が集中する領域Arが、補強部20によって、確実に補強されるようになる旨の主張に係る効果は、そもそも本願明細書に記載されたものではない。
また、仮に当該効果を認めたとしても、領域Arの補強という効果以外に、相違点4に係る「該補強部の前記接触片の延出方向の略中間部が前記切り欠きの前記縁底位置と略同等の高さ位置となるように設けてなる」構成についての格別な技術的意義は認められない。
よって、引用発明において補強用ビード16をより下方に延ばしてスリット部材14(15)のより下方域も補強することは、当業者が必要に応じて採用し得た設計上の事項にすぎないと認められることから、補強部について、「該補強部の前記接触片の延出方向の略中間部が前記切り欠きの前記縁底位置と略同等の高さ位置となるように設け」ることは、設計上の事項にすぎない。
したがって、相違点4に係る本願発明の構成は、引用発明に基いて、当業者が容易に想到し得たことである。
(5)まとめ
以上を総合すると、相違点1ないし4に係る本願発明の構成は、引用発明、刊行物2に記載された事項、及び前記周知の手段に基いて、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明の奏する効果についてみても、引用発明、刊行物2に記載された事項、及び前記周知の手段から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2に記載された事項、及び前記周知の手段に基いて、当業者が容易に想到し得たことである。
第6.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、刊行物2に記載された事項、及び前記周知の手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2016-002129