特許拒絶査定不服審判
2022-014022
接続構造体、金属原子含有粒子及び接合用組成物
- 審判番号
- 2022-014022
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-537325外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年09月07日
- 審決日
- 2023年06月26日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】積水化学工業株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (H01R)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-537325「接続構造体、金属原子含有粒子及び接合用組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月28日国際公開、WO2017/222010〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)6月22日(優先権主張 平成28年6月22日(以下、「優先日」という。))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
令和3年1月18日付け:拒絶理由通知書
令和3年3月29日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年9月15日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和4年1月18日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年5月31日付け:令和4年1月18日の手続補正についての補正の
却下の決定、拒絶査定(以下、「原査定」という
。)
令和4年9月7日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和5年3月3日 :上申書の提出
第2 令和4年9月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年9月7日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正は特許請求の範囲の補正をするものであるところ、請求項1は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「金属原子含有粒子と、金属粒子の焼結体とを含む接着層を備えた接続構造体であって、
前記金属原子含有粒子は、基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された金属部とを備え、
前記基材粒子の粒子径の変動係数(CV値)が50%以下であり、
前記金属原子含有粒子と前記焼結体とは化学結合を介して接触しており、
前記接着層の断面において、前記金属原子含有粒子の外周長さの5%以上が前記焼結体と接触し、
前記金属部はニッケル、クロム、白金及びロジウムの全量が、前記金属部の総質量に対して30質量%以下である、接合構造体。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和3年3月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「金属原子含有粒子と、金属粒子の焼結体とを含む接着層を備えた接続構造体であって、
前記金属原子含有粒子は、基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された金属部とを備え、
前記基材粒子の粒子径の変動係数(CV値)が50%以下であり、
前記金属原子含有粒子と前記焼結体とは化学結合を介して接触しており、
前記接着層の断面において、前記金属原子含有粒子の外周長さの5%以上が前記焼結体と接触している、接合構造体。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「金属部」について、本件補正前の請求項9に記載された事項を付加し限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2014-170864号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は、当審で付したもの。)。
「【0001】
本発明は、接合体およびその製造方法に関する。」
「【0006】
しかしながら、従来の銀ペーストを用いた接合体では、以下の点で改良の余地がある。銀ペーストを用いた接合体は、使用時において、はんだでは溶融など問題で適用できない高温でも信頼性の高い接合として一般に用いられている。一方、銀ペーストを用いた接合体の製造段階では、搭載する半導体素子への熱の影響の最小化、熱膨張のミスマッチの最小化し、できるだけ低温での接合を実現するため、低温で行われるように工夫されている。銀ペーストは、銀の微粒子と有機溶媒と添加剤により構成されている。銀ペーストは、部材に挟まれ加熱されることにより溶媒が揮発し、次に銀の微粒子が互いに及び部材と接合する焼結反応によって部材間の接合が行われる。」
「【0013】
本発明の接合体の製造方法は、前記塗布工程と、前記導体載置工程と、前記焼成工程とを有している。特に、前記導体載置工程では、第2接合面の表面に塗布されたペースト上に第1接合面を沈めるとともにペーストにて第1導体の側面を濡らす。この際、ペースト中に銀粒子以外に導電性スペーサが含有されているので、第2接合面の表面に塗布されたペースト上に第1接合面を沈めた際、導電性スペーサがストッパーの役割を果たし、第1接合面よりも外側にペーストが過剰に流れ出るのを抑制することができる。また、導電性スペーサは、第1接合面と第2接合面との間に空間を確保する。それ故、第1接合面と第2接合面との間を接合する接合層の形成を確実なものとすることができる。また、第1接合面よりも外側に適量はみ出したペーストが第1導体の側面まで濡れ上がる。そのため、ペーストの焼成後、接合層と連続させることができ、かつ、ペーストが焼成によって体積収縮するので、第1導体の側面から第2導体の第2接合面に向かって延びるフィレット部を形成することができる。したがって、前記接合体を比較的容易に得ることができる。」
「【0015】
本発明の接合体は、第1接合面と該第1接合面から延びる側面とを有する第1導体と、該第1接合面と対向して配置されており、かつ該第1接合面よりも面積が大きい第2接合面を有する第2導体との間を接合するための導電性の接合体であって、
該第1接合面と該第2接合面との間に配置される接合層と、
該接合層と連続しており、かつ、該第1導体の側面から該第2導体の第2接合面に向かって延びるフィレット部とを有しており、
該接合層および該フィレット部は、これらの基本骨格をなす多孔質であって銀系の焼結部と、該焼結部中に分散された導電性スペーサとを含んで構成されていることを特徴とする」
「【0022】
本発明の接合体は、接合層とフィレット部とを有している。接合層は、第1接合面と第2接合面と間を接合するために両者の間に配置される層状の部位であり、その層厚は、例えば、5~40μm程度とすることができる。」
「【0025】
本発明の銀系の焼結部は、銀または銀合金の焼結によって形成された部位である。焼結部は、熱歪みなど外部から加わる歪みを緩和する観点から、銀の焼結によって形成され、多孔質であることが好ましい。銀は、酸化されにくいので、表面に酸化被膜ができにくく、また酸化被膜を有していても還元剤、還元性ガスで容易に除去でき、焼結しやすいので好ましい。焼結部は、多孔質であるので、多孔質の空隙が外部から加わる歪みを吸収し、クラックが発生しにくくすることができる。」
「【0027】
一方、前記導電性スペーサは、接合層を構成する焼結部、フィレット部を構成する焼結部のいずれにも含まれている。なお、接合層中に含まれる導電性スペーサは、第1接合面および第2接合面のいずれか一方と接触していてもよいし、第1接合面および第2接合面の両方と接触していてもよいし、第1接合面および第2接合面の両方と接触していなくても構わない。また、これらの組合せであってもよい。
【0028】
本発明の導電性スペーサは、第1導体と第2導体との導通を妨げることがないように導電性を有している。導電性スペーサは、少なくともその表面が導電性を有しておればよい。導電性スペーサは、例えば、表面から中心部まで一様に導電性物質で満たされている構造を有していてもよいし、表層が導電性物質から構成されており、表層よりも内方にある内層が非導電性物質から構成されている構造を有していてもよい。また、表層と内層とが異なる導電性物質から構成されている構造を有していてもよい。導電性スペーサは、好ましくは、前者であるとよい。良好な導電性を確保しやすい上、一定の比重を確保しやすいので、接合体の製造時の導体載置工程において、導電性スペーサがストッパーの役割を果たしやすく、第1接合面よりも外側にペーストが過剰に流れ出るのを抑制しやすくなる利点があるからである。」
「【0034】
本発明の導電性スペーサは、具体的には、少なくともその表面が銀、金、白金、パラジウム、銅およびこれらの合金から選択される1種または2種以上の金属材料よりなる構成とすることができる(請求項3)。
【0035】
本発明の導電性スペーサは、少なくともその表面が銀、金、白金、パラジウム、銅およびこれらの合金から選択される1種または2種以上の金属材料であると、導電性に優れた接合体が得られる。これら金属材料は、酸化被膜が形成されにくく、銀と固溶体を形成するので銀系の焼結部と強く接続することができる。導電性スペーサは、より具体的には、例えば、Cu、Cu合金、Ag、Ag合金、Auなどから構成することができる。これらのうち、導電性スペーサは、導電性、伝熱性、耐熱性などの観点から、Cu、Cu合金、Ag、Ag合金より構成されているとよい。」
「【0037】
本発明の導電性スペーサは、その形状が特に限定されるものではない。導電性スペーサは、例えば、球状、柱状、紡錘状、繊維状などの形状であってよい。前記導電性スペーサは、好ましくは球状とすることができる(請求項4)。この場合は、フィレット部の表面凹凸を少なくするのに寄与できる。そのため、この場合は、フィレット部における応力集中を抑制するのに有利であり、接合強度の向上に寄与しやすくなる。また、球状であると均一な厚みの接合層を確保するのに有利である。」
「【0068】
(実施例1)
実施例1の接合体の概略構成を図1、図2を用いて説明する。図1に示すように、本例の接合体3は、第1接合面11と第1接合面11から延びる側面12とを有する第1導体1と、第1接合面11と対向して配置されており、かつ第1接合面11よりも面積が大きい第2接合面21を有する第2導体2との間を接合するための導電性の接合体である。本例では、具体的には、第1導体1は、柱状導体であり、第2導体2は、半導体素子(不図示)が有する平面状の導体である。」
「【0071】
そして、接合層31およびフィレット部32は、これらの基本骨格をなす焼結部33と、焼結部33中に分散された導電性スペーサ34とを含んで構成されている。本例では、具体的には、焼結部33は、多孔質の銀より形成されている。また、導電性スペーサ34は、略球形のCu粒子である。」
「【0074】
(実施例2)
実施例2の接合体3は、基本的に、実施例1の接合体3と同構成を有している。但し、実施例2の接合体3は、実施例2の接合体の製造方法によって製造されたものである。実施例2の接合体の製造方法は、実施例1の接合体の製造方法における塗布工程(図3(a))において、第2導体2の第2接合面21の表面に加え、第1導体1の第1接合面11の表面にもペースト4を塗布している。その他の構成は、実施例1の接合体の製造方法と同様である。
【0075】
以下、実施例2に従う接合体試料と、比較例の接合試料とを作製し、評価を行った。その実験例について説明する。
【0076】
(実験例)
<Agペーストの調製>
市販のAgペースト(三ツ星ベルト(株)製、「MDot-SLP」、Ag粒子含有量=50.5vol%、Ag粒子径=、溶媒含有)100質量部と、α-テルピネオール20質量部と、導電性スペーサとしての略球形のCu粒子(50%体積累積径d50=20μm)5質量部とをスパチュラを用いて十分に混合することにより、接合体試料の作製に用いるAgペーストを調製した。なお、Agペーストの固形分含有量(ペーストにおける銀系粒子及び導電性スペーサの含有量)は、23.7vol%であった。」
「【0078】
<試料1の接合体の作製>
試験チップのCuめっき層の表面に、スクリーン印刷法によりAgペーストを厚み50μm塗布した。また、ピン型導体の底部をAgペーストに接触させることにより、底部表面にAgペーストを付着させた。
【0079】
次いで、Cuめっき層の表面に塗布されたAgペースト上に、底部を下向きにしてピン型導体を載置した。そして、ピン型導体の自重により、ピン型導体の底部より外側にAgペーストをはみ出させるとともに、Agペーストにてピン型導体の胴体面の下端部を濡らした。この際、導電性スペーサとしてのCu粒子がストッパーの役割を果たしたため、第1接合面よりも外側にペーストが過剰に流れ出るのが抑制された。そしてその結果、ピン型導体の底部は、Cuめっき層の表面と接触しておらず、両者の間には接合層を形成するためのAgペーストが存在していた。また、Agペーストは、ピン型導体の底部より外側にはみ出した。
【0080】
次いで、この状態のまま、N2ガス雰囲気中、300℃で0.5時間、全体を熱処理することにより、ペーストを焼成した。ピン型導体の底部より外側にはみ出したAgペーストは、焼成によるペーストの体積収縮と表面張力により図2に示したようなフィレット形状となった。
【0081】
以上により、試料1の接合体を作製した。図4に試料1の接合体の断面SEM写真を示す。接合層およびフィレット部は、これらの基本骨格をなす多孔質のAg焼結部と、このAg焼結部中に分散されたCu粒子とを含んで構成されていることがわかる。なお、フィレット高さは270μm程度、フィレット幅は600um程度であった。試料1のピン一本当たりの接合強度は、3.3kgfであった。」
「【図1】
[図:0001401331000001.jpg]
」
「【図4】
[図:0001401331000002.jpg]
」
【図4】より、接合体の断面において、略球形のCu粒子34の外周長さの少なくとも5%以上が多孔質の銀より形成される焼結部33と接触していることが看取される。
(イ)上記引用文献1の摘記事項、及び看取事項より、引用文献1には、実施例2として次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「接合層31とフィレット部32とを有している導電性の接合体3であって、
接合層31及びフィレット部32は、銀系粒子と略球形のCu粒子とを含有するAgペースト4を焼成することにより、多孔質の銀より形成される焼結部33と当該焼結部33中に分散された略球形のCu粒子である導電性スペーサ34とを含んで構成されるものであり、
接合体3の断面において、略球形のCu粒子である導電性スペーサ34の外周長さの少なくとも5%以上が多孔質の銀より形成される焼結部33と接触している、
接合体3。」
イ 引用文献2
(ア)同じく原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて利用可能となった、特開2000-30526号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微細電極間の接続に用いられる導電性微粒子、異方性導電接着剤及び導電接続構造体に関する。」
「【0011】上記微球は、そのCV値が20%以下である。CV値が20%を超えると、粒子径が不揃いとなるため、導電性微粒子を介して電極同士を接触させる際、接触しない導電性微粒子が大量に発生し、電極間でのリーク現象が発生する場合があるので上記範囲に限定される。好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。ここで、CV値とは、下記の式(1);
CV値(%)=(σ/Dn)×100 (1)
(式中、σは、粒子径の標準偏差を表し、Dnは、数平均粒子径を表す)で表される値である。」
(イ)上記記載から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「微細電極間の接続に用いられる導電性微粒子のCV値が20%以下である」
ウ 引用文献3
(ア)同じく原査定の拒絶の理由で引用文献3として引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて利用可能となった、特開2016-15256号公報(以下、「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、金属原子含有粒子を含む接合材料中に分散されて、上記金属原子含有粒子を焼結させて用いられる導電性粒子に関する。また、本発明は、上記導電性粒子を用いた接合用組成物、接合構造体及び接合構造体の製造方法に関する。」
「【0023】
本発明に係る導電性粒子は、金属原子含有粒子を含む接合材料中に分散されて、前記金属原子含有粒子を焼結させて用いられる。本発明に係る導電性粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面上に配置された導電層とを備える。上記基材粒子の熱分解温度は200℃以上である。本発明に係る導電性粒子を10%圧縮したときの圧縮弾性率(10%K値)は300N/mm2以上、3500N/mm2以下である。」
「【0066】
上記導電性粒子の粒子径のCV値(粒度分布の変動係数)は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下である。上記CV値が上記上限以下であると、接合後に第1,第2の接合対象部材間の間隔をより一層高精度に制御することができる。さらに、接合部の厚みをより一層均一にできるので、接合部の放熱性が部分的に低くなるのを抑制することもできる。
【0067】
上記CV値は下記式で表される。
【0068】
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:導電性粒子の粒子径の標準偏差
Dn:平均粒子径」
(イ)上記記載から、引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「金属原子含有粒子を含む接合材料中に分散されて、前記金属原子含有粒子を焼結させて用いられる導電性粒子であって、導電性粒子の粒子径のCV値(粒度分布の変動係数)は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下である。」
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「接合体3」は、本件補正発明の「接続構造体」に相当する。
(イ)引用発明の「接合層31とフィレット部32」は、本件補正発明の「接着層」に相当する。
(ウ)引用発明の「銀系粒子」は、本件補正発明の「金属粒子」に相当し、引用発明の「銀系粒子と略球形のCu粒子とを含有するAgペースト4を焼成することにより、多孔質の銀より形成される焼結部33」は、本件補正発明の「金属粒子の焼結体」に相当する。
(エ)引用発明の「略球形のCu粒子である導電性スペーサ34」は、本件補正発明の「金属原子含有粒子」に相当する。
(オ)上記(ア)~(エ)を踏まえると、引用発明の「接合層31とフィレット部32」は、「銀系粒子と略球形のCu粒子とを含有するAgペースト4を焼成することにより、多孔質の銀より形成される焼結部33と当該焼結部33中に分散された略球形のCu粒子である導電性スペーサ34とを含んで構成されるもの」であり、銀系粒子の焼結体である焼結部33と略球形のCu粒子である導電性スペーサ34とを含んでいて、両者は焼結反応という化学結合を介して接触しているといえる。
したがって、引用発明の「接合層31とフィレット部32とを有している導電性の接合体3であって、接合層31及びフィレット部32は、銀系粒子と略球形のCu粒子とを含有するAgペースト4を焼成することにより、多孔質の銀より形成される焼結部33と当該焼結部33中に分散された略球形のCu粒子である導電性スペーサ34とを含んで構成されるもの」であることは、本件補正発明の「金属原子含有粒子と、金属粒子の焼結体とを含む接着層を備えた接続構造体であって」、「前記金属原子含有粒子と前記焼結体とは化学結合を介して接触して」いることに相当する。
(カ)上記(ア)~(エ)を踏まえると、引用発明の「接合体3の断面において、略球形のCu粒子である導電性スペーサ34の外周長さの少なくとも5%以上が多孔質の銀より形成される焼結部33と接触している」ことは、本件補正発明の「前記接着層の断面において、前記金属原子含有粒子の外周長さの5%以上が前記焼結体と接触」していることに相当する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点]
「金属原子含有粒子と、金属粒子の焼結体とを含む接着層を備えた接続構造体であって、
前記金属原子含有粒子と前記焼結体とは化学結合を介して接触しており、
前記接着層の断面において、前記金属原子含有粒子の外周長さの5%以上が前記焼結体と接触している、
接合構造体。
[相違点1]
本件補正発明は、「前記金属原子含有粒子は、基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された金属部とを備え」、「前記金属部はニッケル、クロム、白金及びロジウムの全量が、前記金属部の総質量に対して30質量%以下である」とされているのに対し、引用発明は、「略球形のCu粒子である導電性スペーサ34」である点。
[相違点2]
本件補正発明は、「前記基材粒子の粒子径の変動係数(CV値)が50%以下」とされているのに対し、引用発明の「略球形のCu粒子」の粒子径の変動係数(CV値)については特定されていない点。
(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用文献1の段落【0028】には、「導電性スペーサは、少なくともその表面が導電性を有しておればよい。導電性スペーサは、例えば、表面から中心部まで一様に導電性物質で満たされている構造を有していてもよいし、表層が導電性物質から構成されており、表層よりも内方にある内層が非導電性物質から構成されている構造を有していてもよい。また、表層と内層とが異なる導電性物質から構成されている構造を有していてもよい。」と記載されているから、引用発明の「略球形のCu粒子である導電性スペーサ34」について、内層と表層とからなる構造とし、表層のみをCuとすることは当業者であれば容易に想到し得たことといえる。
また、引用発明の「略球形のCu粒子である導電性スペーサ34」のCuについて、ニッケル、クロム、白金及びロジウムを含有させることは引用文献1には記載されていないことからすれば(引用文献1の段落【0068】、【0071】、【0074】~【0076】、及び【0078】~【0081】を参照。)、引用発明の「略球形のCu粒子である導電性スペーサ34」のCuは、ニッケル、クロム、白金及びロジウムを積極的に含有するものではないし、含有していないものが排除されるものでもない。また、製造コストの観点からこれら希少金属をできるだけ使用しないものにすることは当業者が適宜なし得た設計的事項に過ぎないものともいえる。そうすると、引用発明の「略球形のCu粒子である導電性スペーサ34」のCuを、ニッケル、クロム、白金及びロジウムの全量が、Cuの総重量に対して30質量%以下とすることは当業者が適宜なし得たことといえる。
したがって、引用発明において、相違点1に係る本件補正発明の構成となすことは当業者であれば容易に想到し得たことといえる。
イ 相違点2について
引用文献1の段落【0013】には、引用発明の「略球形のCu粒子である導電性スペーサ34」は、第1導体の第1接合面と第2導体の第2接合面との間に空間を確保する役割のみならず、ペースト4が流れ出すのを抑制するストッパーの役割も果たすものであることが記載されている。
このような、導電性スペーサ34のペースト4が流れ出すのを抑制するストッパーとしての役割に鑑みれば、導電性スペーサ34の粒子径が適度に揃っているほどその役割を果たすことができる(粒子径が揃っていないと粒子径が小さい方からペースト4があふれ流出し易くなる)ことは当業者であれば容易に理解しうる事項であるといえる。
そうだとすれば、引用発明において「略球形のCu粒子である導電性スペーサ34」の粒子径の変動係数(CV値)を所定の値以下とする課題は内在しており、引用発明に接した当業者であれば、引用発明の「略球形のCu粒子である導電性スペーサ34」の粒子径の変動係数(CV値)を所定の値以下とする動機付けはあったといえる。
ここで、導電性粒子を用いた接続構造における、導電性粒子の粒子径の変動係数(CV値)について、引用文献2では20%以下、引用文献3では10%以下とすることが記載されているように、本件補正発明における「前記基材粒子の粒子径の変動係数(CV値)が50%以下」という数値は、当業者であれば導電性粒子の粒子径の変動係数(CV値)として通常設定しうる程度の数値にすぎないともいえる。
以上のことを勘案すれば、引用発明において、「略球形のCu粒子である導電性スペーサ34」の粒子径の変動係数(CV値)を50%以下とし、以て、相違点2に係る本件補正発明の構成となすことは当業者であれば容易に想到し得たものといえる。
ウ 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において概略次のように主張する。
本願発明(当審注:本件補正発明と同じ、以下同様。)は、「前記金属部はニッケル、クロム、白金及びロジウムの全量が、前記金属部の総質量に対して30%以下である」との構成を具備する以上、本願発明は、金属部中にニッケル、クロム、白金及びロジウムを含まない態様も含まれる。そして、この本願発明に対応する実施例が比較例より、接触割合、平坦度及び接続信頼性の全ての性能が向上していることが実証されている以上、「前記金属部はニッケル、クロム、白金及びロジウムの全量が、前記金属部の総質量に対して30%以下である」との発明特定事項を必須の構成要件としている本願発明は、引用文献1に記載された発明に対して進歩性を有するものである(第5頁第20行~第8頁末行)。
しかしながら、上記(4)アで述べたように、引用文献1の段落【0068】、【0071】、【0074】~【0076】、及び【0078】~【0081】の記載からすれば、引用発明の「略球形のCu粒子」のCuは、ニッケル、クロム、白金及びロジウムを(不可避的に混入することがあったとしても)積極的に含有するものではないといえ、本件補正発明の「前記金属部はニッケル、クロム、白金及びロジウムの全量が、前記金属部の総質量に対して30%以下である」とすることは当業者が適宜なし得たことといえる。
したがって、審判請求人の上記主張は採用できない。
エ 作用効果について
以上の相違点1及び2の存在を勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
オ 小括
したがって、本件補正発明は引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、上記1で述べた請求項1の補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年9月7日にされた手続補正は、上記「第2」のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和3年3月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2」の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、次のとおりである。
(進歩性)本願発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2014-170864号公報
引用文献2:特開2000-30526号公報
3 原査定に拒絶の理由についての当審の判断
(1)引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2の記載事項及び引用発明は、上記「第2」の[理由]2(2)ア、イに記載したとおりである。
(2)対比・判断
本願発明は、上記「第2」の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記金属部はニッケル、クロム、白金及びロジウムの全量が、前記金属部の総重量に対して30質量%以下である」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記限定事項を付加したものである本件補正発明が、上記「第2」の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-014022