特許拒絶査定不服審判
2016-000589
改善されたESR安定性を備えた固体電解コンデンサ
- 審判番号
- 2016-000589
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-063772外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年01月14日
- 審決日
- 2016年10月18日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ケメット エレクトロニクス コーポレーション
- 【請求人代理人】特許業務法人三枝国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (H01G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014- 63772「改善されたESR安定性を備えた固体電解コンデンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月21日出願公開、特開2014-150271〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、平成22年7月30日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2009年7月30日 米国(US))を国際出願日とする特願2012-523073号の一部を平成26年3月26日に新たな出願としたものであって、手続の概要は以下のとおりである。
上申書 :平成26年 4月16日
手続補正 :平成26年 4月16日
拒絶理由通知 :平成27年 2月 4日(起案日)
意見書 :平成27年 4月24日
手続補正 :平成27年 4月24日
拒絶査定 :平成27年 9月 7日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成28年 1月14日
理由補充 :平成28年 1月29日
2.本願発明
本願の請求項1ないし23に係る発明は、平成27年4月24日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし23に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「 【請求項1】
陽極と、前記陽極上の誘電体と、前記誘電体上の陰極層とを含み、
前記陰極層は、少なくとも1つの導電層と、前記導電層および導電性接着層の間の絶縁性接着増強層の包装とを含み、
前記絶縁性接着増強層が5ミクロン未満のコーティング厚さを有する、コンデンサ。」
3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2008-235907号公報(平成20年10月2日公開、以下「引用例」という。)には、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)
(1)「【0003】
本発明のある1つの実施態様によれば、アノードと、前記アノードの上に位置する誘電体層と、前記誘電体層の上に位置する固体電解質層と、前記固体電解質層の上に位置するバリヤー層とを含む固体電解コンデンサが提供される。前記バリヤー層は、バリヤーポリマーから形成される三次元架橋網目構造を含む。」
(2)「【0007】
一般的に言って、本発明は、アノードと、前記アノードの上に位置する固体電解質とを含む電解コンデンサに関する。前記コンデンサは、前記固体電解質の上に位置して前記コンデンサをその作業環境から保護するのに役立つバリヤー層を更に含んでいてもよい。さらに具体的に言うと、前記バリヤー層は、下層に対する優れた粘着性だけでなく、向上した防湿性も提供する三次元架橋網目構造を含んでいてもよい。このように、前記バリヤー層は、電解コンデンサが、比較的高湿度および/または高温環境においてその性能を高めることができるようにすることができる。以下、本発明の様々な実施態様を更に詳しく説明する。」
(3)「【0037】
固体電解質を形成した後、前記パーツに、炭素層(例えば、グラファイト)および金属層(例えば、銀)をそれぞれ形成してもよい。前記銀層は、例えば、前記コンデンサ用のはんだ付け可能な導体、接触層および/または電荷捕集器として機能することができ、前記炭素被覆は、前記銀層と固体電解質との接触を制限することができる。その後、当該技術分野において周知であるように、鉛電極を設けてもよい。一般に、前記銀層は、銀と、樹脂(例えば、エポキシ樹脂)などの有機結合剤とを含む。」
(4)「【0041】
ある1つの実施態様において、ポリアルキレンイミンポリマー(例えば、ポリエチレンイミン)は、ポリウレタンを架橋するだけでなく、それら自身が架橋構造を形成できる能力を備えているため、好ましい。例えば、分岐ポリエチレンイミンは、一般に、第1級、第2級および第3級アミンを含む。これらのアミン基は、他のアミン基、ポリウレタンの官能基、および場合によって、コンデンサの表面上に存在する任意の官能基と(例えば、水素結合、ファンデルワールス結合、および/またはイオン結合によって)分子間結合を形成する結合部位を提供することができる。例えば、バリヤー層を、有機結合剤を含有する銀またはグラファイト被覆に被覆すると、多官能架橋剤は、バリヤー層のポリマーを、前記銀および/またはグラファイト被覆の有機結合剤へ化学的に引き寄せたり、あるいは場合によって結合させることさえできる。さらに、ポリアルキレンイミンポリマーは、比較的極性のあるポリマーであり、バリヤー層に被覆された任意の液体(例えば、水蒸気)の表面張力を低下させることができる。」
(5)「【0044】
透過性は拡散の関数であるため、被覆量が増えると透過が遅くなる。従って、膜厚の変化は、酸素透過速度および水蒸気透過速度に影響を及ぼす。しかしながら、より厚みのあるバリヤー層の利点と、より厚みのある被覆が、得られる被覆されたコンデンサの性能に与え得るあらゆる悪影響とを、よく比較検討する必要がある。例えば、前記被覆の厚さは、1.5μm未満、例えば約0.1~約1μm、でもよい。」
上記摘示事項から以下のことがいえる。
(a)引用例には、「アノードと、前記アノードの上に位置する誘電体層と、前記誘電体層の上に位置する固体電解質層と、前記固体電解質層の上に位置するバリヤー層とを含む固体電解コンデンサ」が記載されている(摘示事項(1))。
(b)バリヤー層は、下層に対する優れた粘着性だけでなく、向上した防湿性も備えている(摘示事項(2))。
(c)固体電解質を形成した後、炭素層(例えば、グラファイト)および金属層(例えば、銀)をそれぞれ形成し、その後、リード(「鉛」は「lead」の誤訳であると認める。)電極を設ける(摘示事項(3))。
(d)バリヤー層を、銀またはグラファイト被覆に被覆する(摘示事項(4))。
(e)バリヤー層の被覆の厚さは、1.5μm未満、例えば約0.1~約1μm、である(摘示事項(5))。
以上を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「アノードと、前記アノードの上に位置する誘電体層と、前記誘電体層の上に位置する固体電解質層と、前記固体電解質層の上に位置するバリヤー層とを含む固体電解コンデンサであって、
前記バリヤー層は、下層に対する優れた粘着性だけでなく、向上した防湿性も備えており、
前記固体電解質層を形成した後、炭素層(例えば、グラファイト)および金属層(例えば、銀)をそれぞれ形成し、その後、リード電極を設け、
前記バリヤー層を、銀またはグラファイト被覆に被覆し、
前記バリヤー層の被覆の厚さは、1.5μm未満、例えば約0.1~約1μm、である固体電解コンデンサ。」
4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。
(1)コンデンサ
引用発明は、「固体電解コンデンサ」であるから、本願発明と引用発明とは、「コンデンサ」である点で一致する。
(2)陽極、誘電体、陰極層
引用発明の「アノード」は、「陽極」を意味する。また、引用発明の「誘電体層」は、アノード(陽極)の上に位置する。また、引用発明の「固体電解質層」、「炭素層」、「金属層」は「陰極層」を構成し、いずれも誘電体層の上に位置する。
したがって、本願発明と引用発明とは、「陽極と、前記陽極上の誘電体と、前記誘電体上の陰極層とを含」む点で一致する。
(3)陰極層の詳細
引用発明の「固体電解質層」、「炭素層」、「金属層」は、いずれも「導電層」といえる。また、引用発明の「バリヤー層」は、下層に対する優れた粘着性を備えているから、「接着増強層」といえる。また、「バリヤー層の被覆」(coat)は、金属層(銀被覆)または炭素層(グラファイト被覆)に施されるから、導電層の上の「接着増強層の被覆」といえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記陰極層は、少なくとも1つの導電層と、前記導電層の上の接着増強層の被覆とを含」む点で一致する。
もっとも、「接着増強層」の位置について、本願発明が「導電層および導電性接着層の間」であるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点、「接着増強層」の導電性について、本願発明は、「絶縁性」であるのに対し、引用発明は、そのような明確な特定がない点、及び、「接着増強層の被覆」の態様について、本願発明は、「包装」(encasement)であるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点で相違する。
(4)接着増強層のコーティング厚さ
引用発明のバリヤー層の被覆の厚さは、1.5μm未満、例えば約0.1~約1μm、であるから、本願発明と引用発明とは、「接着増強層が5ミクロン未満のコーティング厚さを有する」点で一致する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「陽極と、前記陽極上の誘電体と、前記誘電体上の陰極層とを含み、
前記陰極層は、少なくとも1つの導電層と、前記導電層の上の接着増強層の被覆とを含み、
前記接着増強層が5ミクロン未満のコーティング厚さを有する、コンデンサ。」の点。
そして、次の点で相違する。
<相違点>
(1)「接着増強層」の位置について、本願発明が「導電層および導電性接着層の間」であるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。
(2)「接着増強層」の導電性について、本願発明は、「絶縁性」であるのに対し、引用発明は、そのような明確な特定がない点。
(3)「接着増強層の被覆」の態様について、本願発明は、「包装」(encasement)であるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。
5.判断
そこで、上記相違点について検討する。
相違点(1)について
陰極層の外層である銀層を形成後、銀層に対して導電性接着剤を用いて陰極端子を接続することは、一般的に行われる周知技術である(例えば、特開平10-275746号公報の【0015】、【0016】、実願平1-49334号(実開平2-140835号)のマイクロフィルムの明細書2頁14ないし18行、6頁15ないし18行、特開2003-257798号公報の【0027】、【0031】参照)から、引用発明において、リード電極(陰極端子)を設ける際に導電性接着剤を用いることにより、バリヤー層の被覆の位置を、銀またはグラファイト被覆と導電性接着剤の層との間とすることは、当業者が適宜為し得る。
相違点(2)について
引用例には、バリヤー層に導電性を備えさせることは記載されておらず、しかも、より厚みのあるバリヤー層の被覆が、コンデンサの性能に与え得る悪影響を検討する必要がある(摘示事項(5))ことが記載されているから、引用例には、バリヤー層として絶縁性のものを用いることが示唆されているともいえ、引用発明において、バリヤー層に絶縁性を備えさせることは、当業者が容易に想到し得る。
相違点(3)について
引用発明のバリヤー層は、下層に対する優れた粘着性だけでなく、向上した防湿性も備えている(摘示事項(2))から、防湿性をより向上させるために、下層を包装するように形成することは、当業者が容易に想到し得る。
また、効果についてみても、上記構成の変化に伴って当業者であれば予測し得る程度のものに過ぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。
6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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