特許拒絶査定不服審判
2023-017331
内部コンダクタンスが改良され破壊電圧能力がより高いアルミニウムポリマーコンデンサ
- 審判番号
- 2023-017331
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-512414
- 請求日
- 2023年10月12日
- 審決日
- 2024年08月07日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ケメット エレクトロニクス コーポレーション
- 【請求人代理人】弁理士法人白坂
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 信一
- 審判官 須原 宏光
- 審判官 ▲高▼橋 徳浩
- 分類
- P18 .121-Z (H01G) / P18 .113-Z (H01G) / P18 .537-Z (H01G) / P18 .572-Z (H01G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-512414「内部コンダクタンスが改良され破壊電圧能力がより高いアルミニウムポリマーコンデンサ」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 3月11日国際公開、WO2021/045857、令和 4年11月 2日国内公表、特表2022-546020〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年7月31日(パリ条約による優先権主張2019年9月3日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の概略は以下のとおりである。
令和 5年 3月 3日付け:拒絶理由通知
令和 5年 6月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和 5年 6月12日付け:拒絶査定(原査定)
令和 5年10月12日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年10月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年10月12日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正による特許請求の範囲の記載
本件補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
コンデンサであって、
作動要素を備え、前記作動要素は、
アノード上に金属酸化物からなる第1の誘電体を含む前記アノードと、
カソードと、
前記第1の誘電体と前記カソードとの間に設けられ、セパレータと第1の導電性ポリマーとを含む層状構造からなり、前記第1の導電性ポリマーは、前記セパレータ上の第1の層であり、少なくとも部分的に、前記セパレータを包囲する導電性セパレータと、
少なくとも部分的に、前記第1の導電性ポリマーを包囲し、前記第1の導電性ポリマーは、第2の導電性ポリマーより高い導電性を有する前記第2の導電性ポリマーであって前記第2の導電性ポリマーが前記第1の導電性ポリマー上の第2の層であり、
前記アノードと電気的に接触するアノードリードと、
前記カソードと電気的に接触するカソードリードとを備え、
前記第1の誘電体と前記カソードとの間に液体電解質をさらに含み、
前記アノードはバルブメタルを含み、
前記バルブメタルは、タンタル、アルミニウム、ニオビウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、これらの元素の合金、及びこれらの導電性酸化物からなる群より選択され、
前記第1の誘電体は、リン酸、リン酸塩含有液、ホウ酸、ホウ酸塩含有液、アジピン酸アンモニウムをさらに含む、コンデンサ。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、令和5年6月1日にされた手続補正により補正された次のとおりである。
「【請求項1】
コンデンサであって、
作動要素を備え、前記作動要素は、
アノード上に第1の誘電体を含む前記アノードと、
カソードと、
前記第1の誘電体と前記カソードとの間に設けられ、セパレータと第1の導電性ポリマーとを含む層状構造からなり、前記第1の導電性ポリマーは、前記セパレータ上の第1の層であり、少なくとも部分的に、前記セパレータを包囲する導電性セパレータと、
少なくとも部分的に、前記第1の導電性ポリマーを包囲し、前記第1の導電性ポリマーは、第2の導電性ポリマーより高い導電性を有する前記第2の導電性ポリマーであって前記第2の導電性ポリマーが前記第1の導電性ポリマー上の第2の層であり、
前記アノードと電気的に接触するアノードリードと、
前記カソードと電気的に接触するカソードリードとを備えるコンデンサ。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1の誘電体」について、「金属酸化物からなる」及び「リン酸、リン酸塩含有液、ホウ酸、ホウ酸塩含有液、アジピン酸アンモニウムをさらに含む」との限定を付加するものである。
また、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「アノード」について、「前記アノードはバルブメタルを含み、前記バルブメタルは、タンタル、アルミニウム、ニオビウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、これらの元素の合金、及びこれらの導電性酸化物からなる群より選択され」と限定するものである。
さらに、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「コンデンサ」について、「前記第1の誘電体と前記カソードとの間に液体電解質をさらに含み」との限定を付加するものである。
上記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)特許法第36条第6項第2号について
本件補正発明は、上記「1(1)」に記載したとおりのものである。
ここで、請求項1には「アノード上に金属酸化物からなる第1の誘電体を含む前記アノードと」及び、「前記第1の誘電体は、リン酸、リン酸塩含有液、ホウ酸、ホウ酸塩含有液、アジピン酸アンモニウムをさらに含む」と記載されている。
上記記載では、「金属酸化物」である「第1の誘電体」が、液体である「リン酸塩含有液」又は「ホウ酸塩含有液」を含むことになるが、液体を含む金属酸化物がどのようなものであるのか、技術的に不明であり、上記記載は請求項1に係る発明を不明確にしている。
また、請求項1の「前記第1の誘電体は、リン酸、リン酸塩含有液、ホウ酸、ホウ酸塩含有液、アジピン酸アンモニウムをさらに含む」との記載では、「第1の誘電体」が、「リン酸」、「リン酸塩含有液」、「ホウ酸」、「ホウ酸塩含有液」及び「アジピン酸アンモニウム」を全て含むのか、それらの中から選択されるものが含まれればよいのか不明であり、上記記載は請求項1に係る発明を不明確にしている。
したがって、請求項1に係る発明は明確でない。
以上のとおり、本願の特許請求の範囲(請求項1)の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本願は、拒絶すべきものであり、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(2)特許法第29条第2項について
ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記「1(1)」に記載したとおりのものである。
イ 引用文献及びその記載事項
(ア)引用文献1
a 原査定の拒絶の理由に引用された、特開2005-347600号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。(下線は当審で付与した。以下同様。)
「【0011】
上記課題を解決するために本発明は、エッチングして誘電体酸化皮膜を形成した陽極箔とエッチングした陰極箔とをその間に導電性セパレータを介在させて巻回することにより構成したコンデンサ素子と、このコンデンサ素子を駆動用電解液と共に金属ケース内に収納した電解コンデンサにおいて、上記導電性セパレータが、不織布のセパレータ基材に導電性高分子を気相重合により形成することにより導電性化され、かつ、少なくとも陽極箔と接する面の表面層の導電率を内層の導電率よりも小さくした構成のものである。」
「【0015】
図1は本発明の一実施の形態による電解コンデンサの構成を示した部分断面斜視図であり、同図において9はコンデンサ素子を示し、このコンデンサ素子9はエッチング処理により表面を粗面化した後に陽極酸化処理により誘電体酸化皮膜を形成したアルミニウム箔からなる陽極箔1と、アルミニウム箔を少なくともエッチング処理した陰極箔2とを、その間に、予め非遷移金属系酸化剤と有機酸化合物を少なくとも含む溶液中で重合モノマーを化学酸化重合することにより形成される導電性高分子を被覆した導電性セパレータ3を介在させて巻回することにより構成されたものである。
【0016】
4と5は上記陽極箔1と陰極箔2に夫々接続された外部導出用の陽極リードと陰極リード、7は上記コンデンサ素子9を図示しない駆動用電解液と共に収納した有底円筒状のアルミニウムからなる金属ケース、6は上記陽極リード4と陰極リード5が挿通する孔を備えて上記金属ケース7の開口部を封止した封口部材、8は陽極リード4と陰極リード5が挿通する孔を備えてこの封口部材6側に装着された絶縁性樹脂からなる座板であり、この座板8の外表面に設けられた溝に沿って陽極リード4と陰極リード5を折り曲げることにより面実装型の電解コンデンサを構成したものである。」
「【0019】
(実施例1)
ポリパラフェニレンテレフタラミドを主成分とする芳香族ポリアミド樹脂を原料にスパンボンド法により得られた不織布からなるセパレータの基材(基材の厚さ50μm、秤量25g/m2)を、過硫酸アンモニウム(濃度3重量%)と有機酸化合物である2-ナフタレンスルホン酸(濃度5重量%)を含有する水とエタノールとの混合溶媒(以下、これを酸化剤溶液Aとする)に浸漬した。この際の、酸化剤溶液Aの含浸量は15mg/cm2であった。この酸化剤溶液Aを含浸したセパレータを、ピロールモノマーを入れた槽の上に酸化剤溶液Aを含浸したセパレータがピロールモノマーに接触しないように設置し、この系を密閉して雰囲気温度を40℃に保った。5分間放置後、セパレータを取り出し、ポリピロールが被覆されたセパレータの基材を60℃の温水中で5分間洗浄し、その後、105℃で乾燥してセパレータを得た(以下、これをセパレータAとする)。」
「【0065】
また、セパレータ基材の表面層の導電率を内層よりも小さくする表面処理として、200~250℃の範囲で熱処理することにより、セパレータ表面層の導電性高分子を酸化劣化させ、セパレータ表面層の導電率が内層よりも小さくなってセパレータ表面層の耐電圧が高くなるため、耐電圧が高く、かつ、セパレータ内層の導電率が高いために低ESRの電解コンデンサを得ることができるものである。」
b 上記記載から、引用文献1には電解コンデンサに関して、次の技術事項が記載されているものと認められる。
(a)陽極酸化処理により誘電体酸化皮膜を形成したアルミニウム箔からなる陽極箔1と、陰極箔2とを、その間に、導電性セパレータ3を介在させて巻回することにより構成されたコンデンサ素子9と、陽極箔1と陰極箔2に夫々接続された外部導出用の陽極リード4と陰極リード5と、コンデンサ素子9を駆動用電解液と共に収納した有底円筒状のアルミニウムからなる金属ケース7と、陽極リード4と陰極リード5が挿通する孔を備えて金属ケース7の開口部を封止した封口部材6を備える電解コンデンサ(【0015】、【0016】)。
(b)導電性セパレータは、不織布のセパレータ基材に導電性高分子を気相重合により形成することにより導電性化されたものである(【0011】)。
(c)導電性高分子(ポリピロール)がセパレータ基材を被覆している(【0019】)。
(d)セパレータ表面層の導電性高分子を酸化劣化させ、表面層の導電率を内層よりも小さくする熱処理は(【0065】)、導電性高分子の表面層の導電率を、導電性高分子の内層の導電率よりも小さくしていると解される。
そうすると、導電性セパレータは、熱処理することにより、セパレータ表面層の導電性高分子を酸化劣化させて、導電性高分子の表面層の導電率を、導電性高分子の内層の導電率よりも小さくしたものであるといえる。
c 上記技術事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「陽極酸化処理により誘電体酸化皮膜を形成したアルミニウム箔からなる陽極箔1と、
陰極箔2とを、その間に、導電性セパレータ3を介在させて巻回することにより構成されたコンデンサ素子9と、
陽極箔1と陰極箔2に夫々接続された外部導出用の陽極リード4と陰極リード5と、
コンデンサ素子9を駆動用電解液と共に収納した有底円筒状のアルミニウムからなる金属ケース7と、
陽極リード4と陰極リード5が挿通する孔を備えて金属ケース7の開口部を封止した封口部材6を備える電解コンデンサであって、
導電性セパレータ3が、不織布のセパレータ基材に導電性高分子を気相重合により形成することにより導電性化されたものであって、
導電性高分子がセパレータ基材を被覆しており、
熱処理することにより、セパレータ表面層の導電性高分子を酸化劣化させて、導電性高分子の表面層の導電率を、導電性高分子の内層の導電率よりも小さくした、
電解コンデンサ。」
(イ)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された、米国特許出願公開第2014/0321029号明細書(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
「[0044] The electrolytes employed during the first and second stages of the anodization process may be the same or different. Typically, however, it is desired to employ different solutions to help better facilitate the attainment of a higher thickness at the outer portions of the dielectric layer. For example, it may be desired that the electrolyte employed in the second stage has a lower ionic conductivity than the electrolyte employed in the first stage to prevent a significant amount of oxide film from forming on the internal surface of anode body. In this regard, the electrolyte employed during the first stage may contain an acidic compound, such as hydrochloric acid, nitric add, sulfuric acid, phosphoric acid, polyphosphoric acid, boric acid, boronic acid, etc. Such an electrolyte may have an electrical conductivity of from about 0.1 to about 100 mS/cm, in some embodiments from about 0.2 to about 20 mS/cm, and in some embodiments, from about 1 to about 10 mS/cm, determined at a temperature of 25°C. The electrolyte employed during the second stage typically contains a salt of a weak acid so that the hydronium ion concentration increases in the pores as a result of charge passage therein. Ion transport or diffusion is such that the weak acid anion moves into the pores as necessary to balance the electrical charges. As a result, the concentration of the principal conducting species (hydronium ion) is reduced in the establishment of equilibrium between the hydronium ion, acid anion, and undissociated acid, thus forms a poorer-conducting species. The reduction in the concentration of the conducting species results in a relatively high voltage drop in the electrolyte, which hinders further anodization in the interior while a thicker oxide layer is being built up on the outside to a higher formation voltage in the region of continued high conductivity. Suitable weak acid salts may include, for instance, ammonium or alkali metal salts (e.g., sodium, potassium, etc.) of boric acid, boronic acid, acetic acid, oxalic acid, lactic acid, adipic acid, etc. Particularly suitable salts include sodium tetraborate and ammonium pentaborate. Such electrolytes typically have an electrical conductivity of from about 0.1 to about 20 mS/cm, in some embodiments from about 0.5 to about 10 mS/cm, and in some embodiments, from about 1 to about 5 mS/cm, determined at a temperature of 25°C.」
(当審訳:[0044] 陽極酸化プロセスの第1段階と第2段階の間に使用される電解質は、同一または異なっていてもよい。しかし、典型的には、誘電体層の外側部分でより高い厚さの達成を容易にするのを助けるために、異なる溶液を使用することが望ましい。例えば、第2段階で使用する電解液は、かなりの量の酸化膜を陽極体の内部表面上に形成させる第1段階で用いられる電解質よりも低いイオン伝導性を有することが所望され得る。この点に関して、第1の段階の間に使用される電解質は、酸性化合物と、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、ボロン酸などを含むことができる。このような電解質は、約0.1~約100mS/cm、いくつかの実施形態では約0.2~約20mS/cm、及び実施形態によっては約1~約10mS/cmの導電率、25℃の温度を決定してもよい;第2ステージの間に使用される電解質は、典型的には弱酸の塩を含有し、その中の電荷の通過の結果としての細孔中に増加するヒドロニウムイオン濃度である。必要な電荷を釣り合わせるイオン輸送または拡散が弱い酸陰イオンが細孔内に移動するようになっている。その結果、主要な導電性種(ヒドロニウムイオン)の濃度は、ヒドロニウムイオン、酸アニオン、および、解離していない酸との間の平衡の確立が低減され、したがってより低い導電性種を形成する。伝導性種の濃度の減少は、電解質において比較的高い電圧降下は、内部のさらなる陽極酸化の妨げになる持続的な導電性の高い領域においてより高い化成電圧までに形成される厚い酸化物層である。好適な弱酸の塩には、例えば、ホウ酸、ボロン酸、酢酸、シュウ酸、乳酸、アジピン酸などのアンモニウム塩またはアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム、カリウム、等)を含むことができる。特に好適な塩としては、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸アンモニウムが挙げられる。このような電解質は、典型的には約0.1~約20mS/cm、いくつかの実施形態では約0.5~約10mS/cm、及び実施形態によっては約1~約5mS/cmの導電率を有する、25℃の温度で測定した。)
「[0080] 40,000 μFV/g tantalum powder was used to form anode samples. Each anode sample was embedded with a tantalum wire, sintered at 1450°C., and pressed to a density of 5.3 g/cm3. The resulting pellets had a size of 4.80 mm×3.30 mm×0.85 mm (standard “slab” design). The pellets were anodized to 70V in a water/phosphoric acid electrolyte with a conductivity of 8.6 mS/cm at a temperature of 85°C. to form the dielectric layer. The pellets were anodized again to 130V in a solution of water/boric acid/disodium tetraborate with a conductivity of 2.0 mS/cm at a temperature of 30°C. for 30 seconds to form a thicker oxide layer built up on the outside. 」
(当審訳:[0080] 40,000μFV/gタンタル粉末が、アノードサンプルを形成するのに使用した。各アノードサンプルにタンタルワイヤが埋め込まれた、1450℃で焼結し、密度5.3g/cm3となるようにプレスした。得られたペレットを4.80mm×3.30mm×0.85mmのサイズ(標準型)を有していた。ペレットは85℃の温度で8.6mS/cmの導電率を有する水/リン酸電解質中で70Vに陽極酸化処理された誘電体層を形成する。このペレットは、外側に構成されるより厚い酸化物層を形成する30℃の温度で、30秒間、2.0mS/cmの導電率を有する水/ホウ酸/テトラホウ酸二ナトリウムの溶液中に再び130Vまで陽極酸化した。)
ウ 引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明の「電解コンデンサ」、「コンデンサ素子9」、「誘電体酸化皮膜」、「陽極箔1」、「陰極箔2」、「セパレータ基材」、「導電性セパレータ3」、「陽極リード4」、「陰極リード5」、「駆動用電解液」は、それぞれ、本件補正発明の「コンデンサ」、「作動要素」、「第1の誘電体」、「アノード」、「カソード」、「セパレータ」、「導電性セパレータ」、「アノードリード」、「カソードリード」、「液体電解質」に相当する。
(イ)引用発明の「誘電体酸化皮膜」は、アルミニウム箔を陽極酸化処理をして形成したものであるから、金属酸化物であり、また、「アルミニウム箔からなる陽極箔1」の上にあるといえる。
したがって、引用発明の「陽極酸化処理により誘電体酸化皮膜を形成したアルミニウム箔からなる陽極箔1」は、本件補正発明の「アノード上に金属酸化物からなる第1の誘電体を含む前記アノード」に相当する。
(ウ)引用発明は「セパレータ表面層の導電性高分子を酸化劣化させて、導電性高分子の表面層の導電率を、導電性高分子の内層の導電率よりも小さくし」ているので、「導電性高分子の表面層」と「導電性高分子の内層」は、それぞれ構造の異なる導電性高分子であるといえる。そうすると、引用発明の「導電性高分子の内層」と「導電性高分子の表面層」は、第1の導電性ポリマーと第2の導電性ポリマーといえるものである。
そして、引用発明の「導電性セパレータ3」は「導電性高分子がセパレータ基材を被覆して」いるので、「セパレータ基材」の上に「導電性高分子の内層」が積層しているといえる。したがって、「導電性セパレータ3」は、「セパレータ基材」と「導電性高分子の内層」とを含む積層構造である。
同様に、「導電性高分子がセパレータ基材を被覆して」いることから、「導電性高分子の内層」は、「セパレータ基材」上の第1の層であり、少なくとも部分的に、「セパレータ基材」を包囲しているといえる。
また、引用発明は「誘電体酸化皮膜を形成したアルミニウム箔からなる陽極箔1と、陰極箔2とを、その間に、導電性セパレータ3を介在させて巻回することにより構成され」ているので「導電性セパレータ3」は、「誘電体酸化皮膜」と「陰極箔2」との間に設けられている。
したがって、引用発明の「導電性セパレータ3」は、本件補正発明の「前記第1の誘電体と前記カソードとの間に設けられ、セパレータと第1の導電性ポリマーとを含む層状構造からなり、前記第1の導電性ポリマーは、前記セパレータ上の第1の層であり、少なくとも部分的に、前記セパレータを包囲する導電性セパレータ」に相当する。
(エ)上記(ウ)で検討したように、引用発明の「導電性高分子の内層」と「導電性高分子の表面層」は、第1の導電性ポリマーと第2の導電性ポリマーといえるものである。
ここで、引用発明は「熱処理することにより、セパレータ表面層の導電性高分子を酸化劣化させて、導電性高分子の表面層の導電率を、導電性高分子の内層の導電率よりも小さくした」ものであるから、酸化劣化した「導電性高分子の表面層」は、「導電性高分子の内層」を包囲しているといえる。また、「導電性高分子の表面層」が「導電性高分子の内層」上の第2の層であるといえる。
そして、引用発明の「導電性高分子の内層」は、「導電性高分子の表面層」より高い導電率を有する。
したがって、引用発明の「導電性高分子の表面層」は、本願補正発明の「少なくとも部分的に、前記第1の導電性ポリマーを包囲し、前記第1の導電性ポリマーは、第2の導電性ポリマーより高い導電性を有する」「前記第2の導電性ポリマーであって」「前記第2の導電性ポリマーが前記第1の導電性ポリマー上の第2の層であ」ることに相当する。
(オ)引用発明の「陽極箔1と」「接続された外部導出用の陽極リード4」は、本件補正発明の「前記アノードと電気的に接触するアノードリード」に相当する。
また、引用発明の「陰極箔2に」「接続された外部導出用の」「陰極リード5」は、本件補正発明の「前記カソードと電気的に接触するカソードリード」に相当する。
(カ)引用発明は「誘電体酸化皮膜を形成したアルミニウム箔からなる陽極箔1と、陰極箔2とを、その間に、導電性セパレータ3を介在させて巻回することにより構成されたコンデンサ素子9」「を駆動用電解液と共に」「金属ケース7」に収納しているので、「誘電体酸化皮膜」と「陰極箔2」との間に「駆動用電解液」を含んでいる。このことは、本件補正発明の「前記第1の誘電体と前記カソードとの間に液体電解質をさらに含」むことに相当する。
(キ)引用発明の「陽極箔1」は「アルミニウム箔からなる」ことは、本件補正発明の「前記アノードはバルブメタルを含み、前記バルブメタルは、タンタル、アルミニウム、ニオビウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、これらの元素の合金、及びこれらの導電性酸化物からなる群より選択され」ることに相当する。
(ク)第1の誘電体について、本件補正発明は「リン酸、リン酸塩含有液、ホウ酸、ホウ酸塩含有液、アジピン酸アンモニウムをさらに含む」のに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。
上記(ア)ないし(ク)によれば、本件補正発明と引用発明との間には、次の一致点及び相違点があるといえる。
(一致点)
「コンデンサであって、
作動要素を備え、前記作動要素は、
アノード上に金属酸化物からなる第1の誘電体を含む前記アノードと、
カソードと、
前記第1の誘電体と前記カソードとの間に設けられ、セパレータと第1の導電性ポリマーとを含む層状構造からなり、前記第1の導電性ポリマーは、前記セパレータ上の第1の層であり、少なくとも部分的に、前記セパレータを包囲する導電性セパレータと、
少なくとも部分的に、前記第1の導電性ポリマーを包囲し、前記第1の導電性ポリマーは、第2の導電性ポリマーより高い導電性を有する前記第2の導電性ポリマーであって前記第2の導電性ポリマーが前記第1の導電性ポリマー上の第2の層であり、
前記アノードと電気的に接触するアノードリードと、
前記カソードと電気的に接触するカソードリードとを備え、
前記第1の誘電体と前記カソードとの間に液体電解質をさらに含み、
前記アノードはバルブメタルを含み、
前記バルブメタルは、タンタル、アルミニウム、ニオビウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、これらの元素の合金、及びこれらの導電性酸化物からなる群より選択される、コンデンサ。」
(相違点)
第1の誘電体について、本件補正発明は「リン酸、リン酸塩含有液、ホウ酸、ホウ酸塩含有液、アジピン酸アンモニウムをさらに含む」のに対して、引用発明はそのような特定がない点。
エ 相違点についての判断
上記相違点に係る構成は上記「(1)」で指摘したように不明確であるが、請求人が上記構成の補正の根拠としている明細書の段落【0029】には「誘電体は、リン酸、リン酸塩含有液、ホウ酸、ホウ酸塩含有液、アジピン酸アンモニウム等、形成電解質と称される任意の好適な電解質液を使用して形成されてもよい。」と記載されていることから、これら形成電解質を使用して形成された「第1の誘電体」は、「リン酸」、「リン酸塩」、「ホウ酸」、「ホウ酸塩」又は「アジピン酸アンモニウム」のどれかを取り込むことで含むものであると解釈し、以下に相違点についての判断を示す。
コンデンサのアノード(陽極箔)の陽極酸化処理においてリン酸、リン酸塩含有液、ホウ酸、ホウ酸塩含有液、アジピン酸アンモニウムなどの電解質を用いることは周知技術である(例えば、引用文献2(上記「イ(イ)」)、再公表2006-51897号(【0002】)、特開昭50-102861号公報(1頁右欄16-19行)等参照)。
そうすると、引用発明の「電解コンデンサ」において、「陽極酸化処理」に上記周知技術を用いることは通常のことにすぎない。その場合、反応の過程で、「誘電体酸化皮膜」に、リン酸、リン酸塩、ホウ酸、ホウ酸塩、アジピン酸アンモニウム等が取り込まれることは、自明な事項である。
したがって、引用発明に周知技術を適用し、上記相違点に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。
よって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(3)本件補正についてのむすび
上記(1)及び(2)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和5年6月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし45に記載された事項により特定されるものであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1(2)」に記載したとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
請求項1に係る発明に対する原査定の拒絶の理由3(特許法第29条第1項第3号)の概略は次のとおりである。
この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
1.特開2005-347600号公報
3 引用文献及びその記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記「第2[理由]2(2)イ(ア)」に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由]2(2)」で検討した本件補正発明から、「第1の誘電体」を「金属酸化物からなる第1の誘電体」に限定する事項、「前記第1の誘電体と前記カソードとの間に液体電解質をさらに含み、前記アノードはバルブメタルを含み、前記バルブメタルは、タンタル、アルミニウム、ニオビウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、これらの元素の合金、及びこれらの導電性酸化物からなる群より選択され」に係る限定事項、及び、「前記第1の誘電体は、リン酸、リン酸塩含有液、ホウ酸、ホウ酸塩含有液、アジピン酸アンモニウムをさらに含む」に係る限定事項(上記相違点に係る事項)が削除されたものである。
そうすると、上記「第2[理由]2(2)ウ」での検討を踏まえると、本願発明と引用発明は、
「コンデンサであって、
作動要素を備え、前記作動要素は、
アノード上に第1の誘電体を含む前記アノードと、
カソードと、
前記第1の誘電体と前記カソードとの間に設けられ、セパレータと第1の導電性ポリマーとを含む層状構造からなり、前記第1の導電性ポリマーは、前記セパレータ上の第1の層であり、少なくとも部分的に、前記セパレータを包囲する導電性セパレータと、
少なくとも部分的に、前記第1の導電性ポリマーを包囲し、前記第1の導電性ポリマーは、第2の導電性ポリマーより高い導電性を有する前記第2の導電性ポリマーであって前記第2の導電性ポリマーが前記第1の導電性ポリマー上の第2の層であり、
前記アノードと電気的に接触するアノードリードと、
前記カソードと電気的に接触するカソードリードとを備えるコンデンサ。」の点で一致し、相違するところがない。
したがって、本願発明は引用文献1に記載された発明である。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないものであるから、その他の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-017331