特許拒絶査定不服審判
2016-000573
イグサ加工食品
- 審判番号
- 2016-000573
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-051465外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年01月13日
- 審決日
- 2017年03月27日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011- 51465号「イグサ加工食品」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月 4日出願公開、特開2012-187015号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成23年3月9日の出願であって、平成27年10月8日付けで拒絶査定がされた。これに対し、平成28年1月13日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後、当審より平成28年11月1日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月10日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明について
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成29年1月10日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める(以下「本願発明」という。)。
「イグサを熱湯に浸漬してブランチング処理し、熱風乾燥して所定の粒子サイズの粉末に粉砕してイグサ粉末を製造する工程と、
パパイヤの果肉にブドウ糖と水を加えて粉砕し、パン酵母および乳酸菌を加えて一定期間発酵熟成させるとともにpHを3.0~3.8に調整したのち、得られた発酵熟成溶液を濾過し、濾液にさらに乳酸菌とブドウ糖とを、濾液:乳酸菌:ブドウ糖とを重量比で12:1:1の比率で加え、発酵させてパパイヤ発酵エキスを製造する工程と、
前記イグサ粉末と、前記パパイヤ発酵エキスと、有胞子乳酸菌とを混合し、低温乾燥させて顆粒状に加工した後、天然オリゴ糖を加える工程と、
を備えることを特徴とするイグサ加工食品の製造方法。」
第3 引用例
(1) 引用例1
ア 引用例1記載事項
当審の拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2008-167743号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
イグサを熱湯に浸漬してブランチング処理した後に熱風乾燥して粉末状に粉砕したイグサ粉末と抹茶粉末とを、イグサ粉末の混合割合を抹茶粉末よりも多くして含むことを特徴とするイグサ青汁。
【請求項2】
前記イグサ粉末に対し、抹茶粉末と環状オリゴ糖とをそれぞれ所定の割合で混合したことを特徴とする請求項1記載のイグサ青汁。」
(イ)「【0012】
本発明は上記の課題を解消するためになされたもので、食物繊維含有量が高く、抗菌機能や消炎機能を有するイグサを主原料とし、イグサ本来の機能に加えて、抹茶粉末との相互作用により極めて高い活性酸素消去機能を発揮させられ、しかも飲みやすいイグサ青汁を提供しようとするものである。」
(ウ)「【0017】
さらに、環状オリゴ糖を混合したことで、整腸作用の他に、苦みや渋みなどの飲みにくい味覚成分を閉じ込めて、飲みやすくする作用を備え、また、環状オリゴ糖自身が食物繊維の一種であり、食物繊維の含有量を増加させるとともに、腸内の悪玉菌や血液中のコレステロールや中性脂肪酸などを包み込んで排せつする作用を有している。そして、イグサ粉末と抹茶粉末との相互作用により発揮される極めて高い活性酸素除去機能を有し、優れた薬効機能を発揮する機能性健康食品であり、さらに、灰汁が多くて食用に不向きなイグサを湯通ししたことにより、抹茶に近い爽やかな風味に変化し、嗜好性が向上し、例えば水やお湯に溶かし青汁として飲むときに、無理なくおいしく飲むことができる。」
(エ)「【0021】
このようにすれば、乳糖が腸内の乳酸菌の栄養素となり、乳酸に変化し、また腸内で酵素(ラクターゼ)により分解され、吸収される。そして、腸内の乳酸菌を増やすことで、整腸作用があり、便秘等に効果があるほか、カルシュウムの吸収を促進する。しかも、乳糖による甘味が加えられて飲みやすくなり、腸内の有用な善玉菌の餌となる環状オリゴ糖と、腸内の乳酸菌を増やす効果がある乳糖との相互作用により、整腸作用を発揮し、腸内環境を整えることができる。」
(オ)「【0027】
収穫したイグサは、ブランチング処理の目的で、高温(100℃以上)の熱湯に7~9分間(本例では8分間)湯通しした後、55℃の熱風を当てて5時間乾燥し、こうして乾燥したイグサを粉砕機(本例では、型式MKアトマイザーMKA-5J:増幸産業株式会社製)により平均粒子径が20μm以下(本例では18.6μm)になるまで粉砕し、微粉末状に粉末化している。」
(カ)「【0034】
続いて、上記のようにして製造したイグサ粉末に、抹茶粉末( 抹茶用のお茶)を混合する。抹茶は、周知のように碾茶(玉露に比べてやや長い期間、日光をさえぎって育生した茶葉を、蒸気で蒸した後に、揉まずに、茶葉(荒茶)を一枚ずつ乾燥させて、葉脈や茎を取り除いたお茶)を石臼で挽いて粉末にしたお茶である。
【0035】
本実施形態のイグサ青汁では、さらに環状オリゴ糖と乳糖を混合している。」
(キ)「【0038】
上記の混合割合(混合比率)にて、イグサ粉末、抹茶粉末、環状オリゴ糖および乳糖を混合することによって本実施形態に係る粉末状のイグサ青汁が製造される。こうして製造されたイグサ青汁は、通常、下記のようにして飲用する。粉末状のイグサ青汁を3g程度スプーンですくい取り、これを水やお湯に溶かして青汁とし、飲用する。水やお湯の量は、好みにもよるが、100ml~200ml程度である、1日に1回~2回程度飲用すれば、活性酸素除去機能は十分に得られる。水やお湯の他、牛乳やジュースなどに溶かして飲用しても良い。」
(ク)「【0059】
環状オリゴ糖は、無味無臭であるが、腸内の善玉菌の餌となって善玉菌を増やす効能を有している。さらに、糖の分子が環状につながっており分子内に空洞を有する構造となっている。そのために、各種の分子を空洞内に取り込んで包み込む機能、本例では特にイグサ青汁中の渋みや苦みの元になる分子を取り込むことにより、飲みやすくする効果を奏している。」
イ 引用例1に記載された発明
上記記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「収穫したイグサを、ブランチング処理の目的で、高温の熱湯に7~9分間湯通しし、55℃の熱風を当てて5時間乾燥し、乾燥したイグサを粉砕機により平均粒子径が20μm以下になるまで粉砕し、微粉末状に粉末化する工程と、
上記のようにして製造したイグサ粉末に、抹茶粉末と環状オリゴ糖を混合する工程と、
を備えるイグサ青汁の製造方法。」
(2) 引用例2
当審の拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-215517号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るイグサ加工食品およびイグサ加工食品による体質改善方法の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
本実施形態のイグサ加工食品を得るために用いたイグサは、熊本県八代市で栽培されたものである。また、実験に影響が出ないように、一貫して無農薬で栽培し、150cmまで伸長したものを刈り取っている。
【0022】
収穫したイグサは、ブランチング処理目的で、100℃の熱湯に8分間(7~9分間程度でよい)湯通しした後、55度で5時間熱風乾燥し、粉砕機(型式MKアトマイザーMKA-5J:増幸産業株式会社製)により平均粒子径が20μm以下になるまで、例えば18.6μmにまで粉砕し、微粒子状に粉末化している。
【0023】
ブランチング処理とは、加熱による酵素の不活性化処理のことであり、ブランチング処理し熱風乾燥した後で粉末状としているので、変色や変性を抑制することができ、長期間に亘って品質を維持することができる。
【0024】
粉砕方法として、本実施の形態では、回転ディスクに固定されたハンマーがケーシング内を高速回転して衝撃式粉砕を行う粉砕機を用いているので、平均粒子径が20μm以下になるまで、イグサを微粒子状に粉砕することができる。そのために、粉末状食品としてそのまま服用することも、種々の飲料品に混ぜ合わせて服用することも容易となる。
【0025】
また、湯通しした後で熱風乾燥し、粉末化しているので、植物に含まれる不要成分である灰汁を好適に除去しており、薬効成分のみを凝縮した粉末状食品を得ることができる。
【0026】
実際の効果確認実験としては、被験者として20名の女子高生(15歳~18歳)を対象とし、本人および彼女らの保護者から承認を得た上で行ったものである。
【0027】
まず、本発明に係るイグサ加工食品の摂取実験の試験スケジュールを図1に示す。図に示しているように、7日間のイグサ非摂取期間Aの後に、14日間のイグサ摂取期間Bを設ける構成とし、試験開始時とイグサ非摂取期間Aの終わり、および試験期間終了時で各被験者の身体測定を3回行い、イグサ摂取前と摂取後でどのような変化が生じたかを調査した。
【0028】
また、イグサ非摂取期間の5日目朝の血液検査A-10と、イグサ摂取期間終了翌日朝の血液検査B-10をそれぞれ行い、イグサ摂取前と摂取後の血液成分を比較した。両検
査とも、空腹状態で午前中に採血し、総コレステロール、中性脂肪、血糖、尿酸の各値を計測した。その結果を図2に示す。
【0029】
試験期間中の食事は通常の食生活を心がけ、便秘薬やその他の整腸剤等の薬剤や、整腸作用の期待される食品の摂取は避けることとした。また、イグサ摂取期間中は、朝昼晩の食後に1.5gずつ計4.5g/dayのイグサを摂取するものとした。
【0030】
イグサは前述した通り平均粒子径が20μm以下に粉末化されているので、そのまま摂取することも、水や白湯や牛乳等の飲料材に混入して摂取することもできる。
【0031】
また、イグサ非摂取期間、イグサ摂取期間ともに、毎日の排便回数と排便量をアンケート調査により記録しておくこととした。排便量は、多い(5点)、やや多い(4点)、普通(3点)、やや少ない(2点)、少ない(1点)、排便なし(0点)の点数をカウントしスコア化する方式とした。スコア化した評価尺度を等間隔尺度として使用し、数値は全て平均値±標準偏差(SD)で示すこととした。また、イグサ非摂取期間とイグサ摂取期間との比較には、2群間の比較手法で一般的に使用されているウイルコクソンの順位和検定を適用した。
【0032】
排便回数の変化を図3に示し、排便量の変化を図5に示す。
【0033】
身体測定は、イグサ非摂取期間1日目夕方の身体測定A-1、イグサ非摂取期間7日目夕方の身体測定A-2、およびイグサ摂取期間終了時夕方の身体測定B-1との計3回実施した。その測定項目は、体重、体脂肪、ウエスト周囲径の3項目と、1回目に測定した身長とそれぞれの測定体重からBMI(ボディマス指数)を算出した。その結果を図6に示す。また、ウエスト周囲径の変化を図4に示す。
【0034】
図2に示す血液検査結果から、イグサ摂取前の総コレステロール値は172.2±27.2mg/dlであり、イグサ摂取後(14日後)には168.4±29.3mg/dlとなり、中性脂肪は、41.5±14.4mg/dlから45.1±12.6mg/dlと変化していることが分かる。また、血糖は、63.6±7.6mg/dlから64.9±7.6mg/dlとなり、尿酸値は、4.6±0.7mg/dlから4.5±0.8mg/dlとなったことを示している。ただし、これらの結果を有意水準5%で有意差検定を行ったところ、いずれも明確な有意差があるとは認められなかった。
【0035】
図3に示す排便回数の変化によれば、イグサ非摂取期間内では、0.74±0.22回/日であったものが、イグサ摂取期間中では、1.11±0.43回/日となっており、有意水準5%で検定したところ明らかな有意差が認められる。」
(イ)「図3
」
(3) 引用例3
ア 引用例3記載事項
当審の拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-169145号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0002】
【従来の技術】最近、“体質改善をねらった健康指向の食品”が世を賑わしており、特に腸の環境改善効果を目指した商品の要望が高まってきている。そういった中である種の乳酸菌又はビフィズス菌を継続的に飲用することで腸内菌叢が改善され、それにより健康増進されることが多くの研究者により研究され知られている。しかし、乳酸菌は一般に寿命が短く、特に乾燥条件下ではその生存率は極めて低く、また健康増進効果を得るには胃液及び胆汁酸による影響をのがれて腸管に達する必要性があり、現在多くのメーカーでは耐酸性乳酸菌の利用、腸溶性カプセルを用いた導入方法等が考案され用いられてきている。一方、有胞子乳酸菌〔バチルス コアグランス(Bacillus coagulans) 〕は、一般的な乳酸菌と異なり、一定の条件下で乾燥にも熱や酸にも非常に強く、腸内で発芽して活発に増殖する特性を有するものであり、各種食品用途への応用がなされている。しかしながら、有胞子乳酸菌は、胞子が発芽せずに成熟胞子のままでいてこそ、耐熱性等に優れているものであり、一旦発芽し発芽胞子(発芽胞子は更に栄養細胞へと変化する)となると、耐熱性、耐薬品性等が失われてしまうことが知られている。そこで、従来より、有胞子乳酸菌の安定化(胞子を発芽させずに成熟胞子のまま維持すること)について各種の検討がなされてきている。有胞子乳酸菌は粉末の状態では極めて安定であり、1年以上にわたり一定の菌数を保持することが知られている。しかしながら、水系で安定に保持する方法は未だ提案されてない。即ち、生理食塩水や糖水溶液に保存しても、経時的に死滅菌数が増加し、安定に保持しているとは言いがたく、有胞子乳酸菌の各種飲料等への応用性が損なわれているのが現状である。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、飲料中において有胞子乳酸菌を安定に保持する方法について鋭意検討した結果、特定の耐熱性値を有する有胞子乳酸菌を選抜し、これを飲料に添加すれば、保存安定性に優れた有胞子乳酸菌含有飲料を提供できることを見出し、本発明を完成するに到った。即ち本発明は、pHが3.5 の酸性溶液中でのD100 値(分)が2.8 以上の有胞子乳酸菌を配合した飲料である。」
(イ)「【0005】また、MnやCaを添加することによって胞子形成が促進され、形成された胞子の耐熱性が向上するのも公知の事実である〔食衛誌、25(6)488(1984)〕。一方、胞子は耐熱性を有するが、発芽すると、現象的には耐熱性が消失すると言われているが、耐熱性と水系での安定性の関係については不明であった。本発明者らは、上記の公知事実をふまえた上で、公知の胞子形成条件で調製した胞子の耐熱性と安定性との関係について鋭意検討した結果、特定の耐熱性値を有する有胞子乳酸菌を選抜し、これを飲料に添加すれば、保存安定性に優れた有胞子乳酸菌含有飲料を提供できることを見出したのである。即ち、本発明で用いる有胞子乳酸菌は、pHが3.5 の酸性溶液中でのD100 値(分)が2.8 以上、好ましくは3.0 以上の有胞子乳酸菌である。ここで、D100 値とは、100 ℃加熱時に、胞子を10%に減少させるのに要する時間(分)である。本発明において、飲料とは酸性飲料であり、配合組成に特に制限はなく、pH3~4の飲料であれぱ何れでもよく、市販品でもよい。また、有胞子乳酸菌の飲料への添加量は、特に制限はないが、1回の飲用で健腸効果を示すと言われている10 8個程度であれば何れでもよい。」
イ 引用例3に記載された事項
したがって、引用例3には、以下の点が記載されている。
「有胞子乳酸菌が、一定の条件下で乾燥にも熱や酸にも非常に強く、腸内で発芽して活発に増殖する特性を有することから、健腸効果を期待して、飲料に有胞子乳酸菌を保持させる」点。
(4) 引用例4
ア 引用例4記載事項
当審の拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-75086号公報(以下「引用例4」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、パパイヤに微生物を作用させることにより得られる発酵物、特にパパイヤを発酵することによって様々な生理作用を有する発酵物に関する。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、用いる原料、原料の処理方法、および用いる微生物等によっては、発酵物が生理活性を有するとは限らないばかりか、発酵すらしないこともあるといった問題点がある。つまり、生理活性の高い発酵物を得るために発酵させても、その発酵における方法および素材の選択が誤っていれば、生理活性が低いまたは生理活性を有さない発酵物しか得られないという問題点がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、生理活性の高い発酵物と、その発酵物を用いた経口用組成物および経皮用組成物とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、動植物原料へ微生物を作用させて得られる発酵物について鋭意検討を行ったところ、パパイヤを微生物で発酵して、優れた生理活性を有する発酵物を得ることができることを見出し、本発明に至った。」
(ウ)「【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所定の条件下でパパイヤに乳酸菌を作用させると、酵素阻害活性(チロシナーゼ阻害活性、リパーゼ阻害活性など)や抗酸化活性(例えばSOD活性など)といった生理活性を有する発酵物を得ることができる。さらに、その発酵物を用いれば、美容効果等を有する経口用組成物および経皮用組成物を得ることができる。」
(エ)「【0019】
上記パパイヤまたはその破砕物には、発酵を効率的に行うために、必要に応じて、加水されてもよい。加水量には、特に制限はない。例示すれば、パパイヤまたはその破砕物1質量部に対して、加える水の量の下限値は0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、加える水の量の上限値は30質量部以下、好ましくは10質量部以下とすればよい。」
(オ)「【0020】
(酵素処理工程および中和処理工程)
次に、パパイヤまたはその破砕物の発酵を促進するための工程について説明する。このような発酵を促進するための工程としては、例えば、酵素による細胞壁分解処理工程、中和処理工程が挙げられる。なお、この工程は、上記細胞壁分解処理工程および中和処理工程のいずれか1種だけ用いてもよいし、両方を用いてもよい。
【0021】
酵素による細胞壁分解処理工程において、用いることができる酵素としては、例えば、アミラーゼ、ペクチナーゼ、エンドアラバナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、エンドβ-グルカナーゼ、エキソβ-グルカナーゼ、キシラーゼ、β-グルコシダーゼなどが挙げられる。そのうち、ペクチナーゼを用いることが好ましい。もちろん、上記酵素を混合して用いてもよい。特に好ましくは、ペクチナーゼと、アミラーゼ、エンドアラバナーゼ、エンドβ-グルカナーゼ、エキソβ-グルカナーゼ、キシラナーゼ、およびβ-グルコシダーゼからなる群より選択される少なくとも1種の酵素との混合酵素である。これらの添加量は、酵素の種類によって異なるが、通常、酵素濃度が、0.0001~0.5質量/容量%、好ましくは0.0005~0.3質量/容量%となるように添加される。
【0022】
酵素処理の条件は、処理するパパイヤの形状、酵素の種類、酵素濃度に応じて適宜設定すればよい。例えば、酵素処理における温度は、その下限値を30℃以上、好ましくは35℃以上とすればよく、その上限値を75℃以下、好ましくは70℃以下とすればよい。酵素処理における時間(酵素反応の時間)は、例えば、その下限値を30分間以上、好ましくは1時間以上、その上限値を72時間以下、好ましくは48時間以下とすればよい。
【0023】
酵素処理を行えば、例えば、発酵の阻害要因(例えば、ペクチン等の細胞壁を構成する多糖類)を分解することができ、その結果、発酵を短時間で終了させることができる。このように発酵を短時間で終了させることができれば、例えば、発酵により損失させたくない成分(例えばアスコルビン酸など)がある場合は、そのような成分の損失を最小限とすることが可能となる。具体例でいえば、発酵による損失(例えばアスコルビン酸の損失)が少ないパパイヤの発酵物を得ることができる。
【0024】
さらに、例えば、酵素処理により多糖類が分解されれば、多糖類の分解物(単糖類、オリゴ糖など)が生成される。これらは、得られるパパイヤの発酵物中における新たな成分となる。例えば、オリゴ糖は、整腸作用、発酵物の可溶化を促進するなどの様々な効果を有する。単糖類は、さらに微生物の増殖に必要な栄養素となり、微生物の有用物質の産生を促進すると考えられる。
【0025】
中和処理は、最適なpHで発酵するために行われる。例えば、パパイヤまたはその破砕物のpHを4.0~7.5に調節する。pHの調節は、当業者が用いる通常の方法を用いて行われる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、重曹、クエン酸ナトリウムなどのpH調整剤、電解水、緩衝液(例えばクエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液)などを添加して、pHを調節することができる。
【0026】
上述の酵素処理および中和処理は、いずれも、発酵を促進させて比較的短時間で発酵することにより、パパイヤに含有される有効な成分の損失を少なくすることができる点で有用である。そして、酵素処理または中和処理したパパイヤまたはその破砕物と、発酵能力が高い微生物(例えば後述する特定の乳酸菌等)とを組合せて、下記の発酵工程で発酵を行えば、比較的短時間(例えば、24時間~72時間)で発酵を完了させることができる。
【0027】
(発酵工程)
次に、発酵工程について説明する。上記パパイヤまたはその破砕物を発酵させることにより、または、上記酵素処理および中和処理のうちの少なくとも1種で処理したパパイヤを発酵させることにより、本発明の発酵物を得ることができる。
【0028】
発酵としては、乳酸発酵、クエン酸発酵、アルコール発酵、酢酸発酵などが挙げられる。これらの中でも、乳酸発酵が好ましく、これらの発酵を組み合わせてもよい。発酵させる時間は、例えば24時間~72時間で終了することが好ましい。また、発酵の種類に応じては、乳酸菌、酵母菌、酢酸菌などが用いられる。酵母や酢酸菌は、耐酸性が強いため、特に好ましく用いられる。」
(カ)「【0036】
また、乳酸菌の発酵を促進するために、乳酸菌代謝性の糖を添加してもよい。この糖の添加は、糖分含量が少ない植物(例えば糖分含量が1質量%未満の植物)を発酵させる場合に有用である。もちろん、発酵の促進および発酵物への甘味の付加という目的で糖を添加してもよい。糖を添加する場合、その種別は特に限定されないが、乳酸菌が生育または発酵に利用することができる糖を添加することが好ましく、例えば、庶糖、ぶどう糖、果糖、麦芽糖などを添加するのが好ましい。もちろん、ここに例示した糖とは別の糖を添加してもよい。添加する糖の量については、糖分がパパイヤの糖分と合わせて約1~6質量%になるように加えることが好ましい。」
(キ)「【0041】
乳酸発酵は、パパイヤ中の成分を資化して有機酸やオリゴ糖などの有用成分を産生するだけでなく、発酵物を低いpHに維持できるため、他の雑菌の繁殖を防ぐことも可能である。また、乳酸菌を添加するため、風味の改善や整腸作用、酵素阻害作用などの生理活性の高いパパイヤ発酵物を得ることができる。
【0042】
(クエン酸発酵)
クエン酸発酵は、一般的には、酵母を、パパイヤまたはその破砕物と好気的条件下で接触させて培養することによって行われる。クエン酸発酵において、乳酸菌をさらに添加して発酵すると、酵母の増殖が促進されやすく、さらに得られる発酵物の嗜好性も高まるため好ましい。
【0043】
酵母としては、清酒酵母、ワイン酵母、ビール酵母、パン酵母などが用いられる。例えば、サッカロミセス属、シゾサッカロミセス属などに属する酵母が用いられ、好ましくは、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・パストリアヌス、シゾサッカロミセス・ポンベなどが挙げられる。特にアミノ酸やビタミンなどの有用物質を産生する点で、サッカロミセス・セレビシエおよびその単離株が好ましい。
【0044】
酵母は、パパイヤまたはその破砕物100質量部に対して、乾燥体質量で0.001~15質量部、好ましくは0.01~10質量部添加する。
【0045】
クエン酸発酵は、パパイヤまたはその破砕物と酵母とを発酵槽に入れ、通気攪拌しながら、4℃~40℃、好ましくは10℃~35℃で24時間~14日間行う。特にパパイヤが酸性であると酵母発酵により香気成分が高くなるため、より嗜好性の高い発酵物を得ることができる。
【0046】
クエン酸発酵は、酵母を用いて行われるため、発酵物中に酵母が産生するアミノ酸、タンパク質、ビタミン類などが含まれ、栄養価が高く嗜好性に優れる点で好ましい。」
イ 引用例4に記載された事項
上記記載及び【0036】の「乳酸菌の発酵を促進するためにぶどう糖を添加するのが好ましい。」という記載を参酌すると、引用例4には、以下の点が記載されている。
「酵素阻害活性や抗酸化活性の生理活性の高い経口用組成物として、パパイヤの破砕物に加水し、中和処理後、乳酸菌とぶどう糖を添加した乳酸発酵や、パン酵母と乳酸菌とぶどう糖を添加してクエン酸発酵を組み合わせて行うことでパパイヤ発酵エキスを製造する」点。
第4 本願発明と引用発明の対比、判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「収穫したイグサを、ブランチング処理の目的で、高温の熱湯に7~9分間湯通し」することは、本願発明の「イグサを熱湯に浸漬してブランチング処理」することに相当する。
(2)引用発明の「55℃の熱風を当てて5時間乾燥」することは、本願発明の「熱風乾燥」することに相当する。
(3)引用発明の「乾燥したイグサを粉砕機により平均粒子径が20μm以下になるまで粉砕し、微粉末状に粉末化」することは、本願発明の「所定の粒子サイズの粉末に粉砕してイグサ粉末を製造する」ことに相当する。
(4)引用発明の「環状オリゴ糖」は、通常、天然素材を原料とするものであるから、本願発明の「天然オリゴ糖」に相当する。
そして、引用発明の「上記のようにして製造したイグサ粉末に、抹茶粉末と環状オリゴ糖を混合する工程」と、本願発明の「イグサ粉末と、パパイヤ発酵エキスと、有胞子乳酸菌とを混合し、低温乾燥させて顆粒状に加工した後、天然オリゴ糖を加える工程」とは、「イグサ粉末に、天然オリゴ糖を加える工程」の限りで共通する。
(5)引用発明の「イグサ青汁」は、イグサを加工した食品であるから、本願発明の「イグサ加工食品」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「イグサを熱湯に浸漬してブランチング処理し、熱風乾燥して所定の粒子サイズの粉末に粉砕してイグサ粉末を製造する工程と、
イグサ粉末に、天然オリゴ糖を加える工程と、
を備えるイグサ加工食品の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
イグサ粉末に、天然オリゴ糖を加える工程について、本願発明は、天然オリゴ糖を加える前に、イグサ粉末と、パパイヤ発酵エキスと、有胞子乳酸菌とを混合し、低温乾燥させて顆粒状に加工するのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点2>
本願発明は、パパイヤの果肉にブドウ糖と水を加えて粉砕し、パン酵母および乳酸菌を加えて一定期間発酵熟成させるとともにpHを3.0~3.8に調整したのち、得られた発酵熟成溶液を濾過し、濾液にさらに乳酸菌とブドウ糖とを、濾液:乳酸菌:ブドウ糖とを重量比で12:1:1の比率で加え、発酵させてパパイヤ発酵エキスを製造する工程を備えるのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。
2 当審の判断
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
一般に、健康食品において、更なる健康保持、増進を期待して、同様の健康効果に役立つ成分、材料を適宜選択した上で混合して加工食品を製造することが周知の技術であるところ、引用例1の【0012】に「食物繊維含有量が高く、抗菌機能や消炎機能を有するイグサを主原料とし、イグサ本来の機能に加えて、抹茶粉末との相互作用により極めて高い活性酸素消去機能を発揮させられ、しかも飲みやすいイグサ青汁を提供しようとするものである。」と記載されているように、イグサ加工食品の製造方法においても、更なる健康のための効果をより増大させるために、体に良いとされるものを適宜選択した上で混合して加工食品を製造することが示唆されており、具体的に、体内の活性酸素を少なくするための極めて高い活性酸素消去機能(【0012】)や腸内の乳酸菌を増やすこと(【0021】)が示唆されている。したがって、引用発明のイグサ加工食品において、同じく腸内の健康に効果の期待できる腸内の乳酸菌を増やすための引用例3の有胞子乳酸菌及び体内の活性酸素の減少に効果の期待できる引用例4のパパイヤ発酵エキスを組み合わせ、それらを混合する工程を備えることは当業者が容易に想到し得たことである。
また、一般に、この種の健康食品において、食品の形態を粉末状や顆粒状にすること、及び含有成分を変質させないように低温乾燥させることは、いずれも例を挙げるまでもなく周知の技術であるところ、引用発明のイグサ加工食品に、引用例4のパパイヤ発酵エキスと引用例3の有胞子乳酸菌を混合するに際して、低温乾燥させて顆粒状に加工する程度のことは、当業者が容易になし得ることである。
<相違点2について>
発酵組成物を得る方法として、発酵後、固形物を分離(ろ過)し、再度発酵を行うことは、慣用手段(例えば、当審の拒絶理由で示した引用例5(特開2005-161号公報)の【0100】から【0106】、引用例6(特開昭63-297393号公報)の特許請求の範囲(2)、引用例7(特開2011-36157号公報)の【0015】参照。)であり、パン酵母やクエン酸発酵をpH3.0~3.8の範囲で行うことも周知(例えば、当審の拒絶理由で示した引用例8(特開2000-139402号公報)の【要約】、【0018】、引用例9(特開2004-81053号公報)の【0013】、引用例10(特公昭47-24152号公報)の第6欄5~33行参照。)である。
そして、引用例4の「パパイヤ」は本願発明の「パパイヤの果肉」に相当し、同様に、「ぶどう糖」は「ブドウ糖」に、「パン酵母と乳酸菌」「を添加してクエン酸発酵を行う」ことは「パン酵母および乳酸菌を加えて一定期間発酵熟成させる」ことに、「乳酸菌とぶどう糖を添加した乳酸発酵」は「乳酸菌とブドウ糖とを」「加え、発酵させ」ることに相当する。
また、引用例4の「中和処理」と本願発明の「pHを3.0~3.8に調整」することとは、「pHを調整する」ことの限りで一致し、引用例4の「パパイヤの破砕物に加水し、中和処理後、」「パン酵母と乳酸菌とぶどう糖を添加してクエン酸発酵」を行うことと本願発明の「パパイヤの果肉にブドウ糖と水を加えて粉砕し、パン酵母および乳酸菌を加えて一定期間発酵熟成させるとともにpHを3.0~3.8に調整」することとは、「パパイヤの果肉、ブドウ糖および水からなる粉砕物を製造し、パン酵母および乳酸菌を加えて一定期間発酵熟成させるとともにpHを調整する」ことの限りで一致する。
そうすると、引用例4には、本願発明の「パパイヤの果肉、ブドウ糖および水からなる粉砕物を製造し、パン酵母および乳酸菌を加えて一定期間発酵熟成させるとともにpHを調整すること」や「乳酸菌とブドウ糖とを加え、発酵させること」で「パパイヤ発酵エキスを製造する工程」が記載されているといえる。
また、引用例4の「パパイヤの果肉の破砕物に加水し、」「パン酵母と乳酸菌とぶどう糖を添加し」た混合物と、本願発明の「パパイヤの果肉にブドウ糖と水を加えて粉砕し、パン酵母および乳酸菌を加え」た混合物とは、混合物として同じものであることは明らかであって、複数の原材料を加え、破砕を行う製造工程において、原材料を添加する手順や破砕のタイミングは当業者が適宜決定しても差異は生じないから、引用例4において、「パパイヤの果肉にブドウ糖と水を加えて粉砕し、パン酵母および乳酸菌を加え」る工程とすることは、当業者が適宜なし得る設計変更である。
さらに、パン酵母および乳酸菌を加えて一定期間発酵熟成させる際のpHとして、パン酵母を用いた際やクエン酸発酵をpH3.0~3.8の範囲で行うことは上述したとおり周知であるし、濾液に対して発酵に充分な乳酸菌とブドウ糖を加えるために、濾液:乳酸菌:ブドウ糖の重量比を適宜決定する程度のこと、すなわち具体的に12:1:1の比率とすることは、当業者が通常の創作能力を発揮することにより適宜なし得る設計的事項である。
したがって、引用例4のパパイヤの果肉から、パパイヤ発酵エキスを製造する工程について、慣用手段である発酵後、ろ過し、再度発酵する工程を採用するに際し、発酵手段として引用例4の乳酸発酵とクエン酸発酵の組合せを行い、ぶどう糖や加水の手順や破砕のタイミングを適宜決定すること、発酵に適した周知のpHで行うこと、及び発酵に充分な乳酸菌とブドウ糖を加えることで、本願発明の相違点2に係る事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。
<本願発明の奏する効果について>
そして、本願発明のイグサ加工食品の製造方法の奏する効果は、引用発明、引用例1、3、4記載の事項及び上記周知・慣用の事項から、当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
また、請求人の主張する本願発明により製造されたイグサ加工食品自体の効果、すなわち本願発明で製造されたイグサ加工食品を摂取した際の排便効果(本願明細書の図3)は、引用例2のイグサ粉末からなるイグサ加工食品を接種した際の排便効果(図3)と比べて優位な効果を示しているとは認められず、請求人の主張するパパイヤ発酵エキス、有胞子乳酸菌及び環状オリゴ糖を加えたことの相乗効果があるとはいえない。また、請求人の主張するイグサの立体的多孔質内に入り込んだ有胞子乳酸菌による効果は、明細書に記載されたものでなく、その根拠を欠くものであるが、仮にそのような効果があるとしても、周知であるイグサの構造から当業者が予測し得る範囲内のものである。
3 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、引用例1~3記載の事項及び周知・慣用の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-000573