特許無効審判
2015-800185
高純度羅漢果配糖体を含有する甘味料組成物
- 審判番号
- 2015-800185
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2000-023408
- 登録番号
- 特許第3502587号(P3502587)
- 請求日
- 2015年09月28日
- 審決日
- 2016年11月08日
- 公報発行日
- 2017年11月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】FONTEC R&D 株式会社
- 【請求人代理人】石下 雅樹
- 【請求人代理人】江間 由実子
- 【請求人代理人】渡辺 知博
- 【請求人代理人】江間 布実子
- 【請求人代理人】永野 真理子
- 【請求人代理人】益弘 圭
- 【被請求人】サラヤ 株式会社
- 【被請求人代理人】特許業務法人三枝国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 田村 嘉章
- 審判官 佐々木 正章
- 審判官 紀本 孝
- 分類
- P1123.537-ZDA(A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項1号特許法123条1項4号特許法169条2項民事訴訟法64条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第123条第1項第4号、特許法第134条の2第1項、特許法第134条の2第9項、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
上記当事者間の特許第3502587号発明「高純度羅漢果配糖体を含有する甘味料組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第3502587号の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1-6、12〕、〔7-11〕について訂正することを認める。
特許第3502587号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。
特許第3502587号の請求項2に係る発明についての審判請求は、成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第3502587号(以下「本件特許」という。)は、平成12年1月31日の出願であって、その請求項1ないし12に係る発明について、平成15年12月12日に特許権の設定登録がなされた。
これに対して、FONTEC R&D株式会社(以下「請求人という。)から平成27年9月28日に、本件特許の請求項1及び2に係る発明の特許について、無効審判が請求されたものであり、その後の手続は以下のとおりである。
審判請求書 平成27年 9月28日
審判事件答弁書 平成27年12月18日
訂正請求書 平成27年12月18日
手続補正書 平成28年 2月18日
審判事件弁駁書 平成28年 3月30日
審理事項通知書 平成28年 5月16日
口頭審理陳述要領書(請求人) 平成28年 5月23日
口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成28年 6月14日
口頭審理陳述要領書(2)(請求人)平成28年 6月28日
第1回口頭審理 平成28年 6月28日
審決の予告 平成28年 7月14日
上申書(請求人) 平成28年 8月15日
上申書(被請求人) 平成28年 9月20日
第2 審判請求人の主張
1 審判請求書における無効理由の概要
請求人は、「特許第3502587号発明の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、以下の無効理由を主張している。
モグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIの合計含有量について、請求項1の「33重量%以上」及び請求項2の「35重量%以上」の全範囲にわたって、本件発明の課題を解決できることは、発明の詳細な説明に裏付けられておらず、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていないから、請求項1及び2に係る発明についての特許は特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
2 証拠方法
請求人が提出した証拠方法は以下のとおりである。
(1)甲第1号証:特願2000-023408号の平成15年8月13日付け拒絶理由通知書
(2)甲第2号証:特願2000-023408号の平成15年10月16日付け意見書
(3)甲第3号証:特許第3502587号公報(本件特許公報)
甲第1号証ないし甲第3号証の成立につき当事者間に争いはない。
第3 被請求人の主張
1 被請求人の主張の概要
被請求人は答弁書において、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、請求人の主張する上記無効理由はいずれも理由がない旨主張している。
2 証拠方法
被請求人が提出した証拠方法は以下のとおりである。
(1)乙第1号証:サラヤ株式会社従業員村田雄司及び伊藤雄太作製の実験報告書
乙第1号証の成立につき当事者間に争いはない。
第4 訂正請求について
1 訂正の内容
平成27年12月18日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に「前記モグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIの合計含有量が、35重量%以上である、請求項1に記載の羅漢果エキス。」とあるのを「甘味料組成物を調製するための羅漢果エキスであって、モグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIの合計含有量が、35重量%以上である、羅漢果エキス。」に訂正する。
(2)訂正事項2
明細書の段落【0108】の「実施例1」を「実施例2」に、及び段落【0110】の「比較例1」(2箇所)を「比較例2」(2箇所)にそれぞれ訂正する。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件特許の特許請求の範囲の請求項2に「請求項1に記載の羅漢果エキス」とあるのを、請求項1の記載を引用しないものとし、請求項間の引用関係を解消するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第4号の他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項1は、新規事項を追加するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、段落【0108】の「実施例1」及び段落【0110】の「比較例1」(2箇所)が、その前後の文章から誤記であることが明らかである「実施例2」、「比較例2」(2箇所)にそれぞれ訂正するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号の誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
そして、訂正事項2は、誤記の訂正であって、新規事項を追加するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、また、訂正後の請求項3~12に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しないから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項~第7項の規定に適合する。
なお、請求人は、訂正請求の適法性について争わない(第1回口頭審理調書)。
3 むすび
したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第9項で準用する同法第126条第5項~第7項の規定に適合するので、本件特許の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1~6、12〕、〔7~11〕について訂正することを認める。
第5 無効理由についての判断
1 訂正請求項1及び2に係る発明
上記訂正請求により訂正された請求項1及び2に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」という。また、合わせて「本件発明」という。)は、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
甘味料組成物を調製するための羅漢果エキスであって、モグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIの合計含有量が、33重量%以上である、羅漢果エキス。
【請求項2】
甘味料組成物を調製するための羅漢果エキスであって、モグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIの合計含有量が、35重量%以上である、羅漢果エキス。」
2 特許明細書の記載事項
特許明細書には、以下の記載がある。なお、○内に数字は、○に数字で表記する。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ショ糖よりもエネルギーが低く、ショ糖にきわめて近い甘味質を有し、高品質で十分な甘味強度を示し、かつ安全性が高い甘味料およびその製造方法に関する。より詳細には、羅漢果エキス、羅漢果エキスを含有する甘味料組成物およびその製造方法に関する。」
(2)「【0035】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ショ糖よりもエネルギーを実質的に抑制し得る甘味料組成物であって、ショ糖に酷似する甘味質を有し、安全性が高く、かつ従来の甘味料と比較して生理的および物理的特性に遜色のないエネルギー抑制甘味料組成物を提供することを目的とする。
【0036】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、羅漢果エキスを含有する甘味料組成物は、甘味質の基本性能である「後引き、しつこさ、くせ、渋味、刺激、すっきり感、まろやかさ、こく、および苦み」のいずれの評価に対してもショ糖にきわめて近い甘味質を有し、安全性が高く、さらに、一般の甘味料と生理的および物理的特性に遜色のないエネルギー抑制甘味料であることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。
【0037】
本発明の羅漢果エキスは、甘味料組成物を調製するための羅漢果エキスであって、モグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIの合計含有量が、33重量%以上である。」
(3)「【0042】
本発明の方法は、甘味料組成物の製造方法であって、羅漢果の果実から羅漢果エキスを抽出する工程を包含し、ここで、該羅漢果エキス中のモグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIの合計含有量が、33重量%以上である。」
(4)「【0049】
本発明の羅漢果エキスは、モグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIからなる群より選択される1種以上の配糖体を含有する。」
(5)「【0053】
「羅漢果エキス」とは、モグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIの合計含有量が33重量%以上、好ましくは35重量%以上である羅漢果エキスをいう。」
(6)「【0059】
本発明の羅漢果エキスは、モグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIの合計含有量が33重量%以上になるように、例えば、抽出・濾過・濃縮・分離・精製・乾燥などの製造諸工程を行なうことによって得られる。本発明の羅漢果エキスは、当業者に公知の抽出および分離方法を用いて製造され得る。」
(7)「【0087】
「シアメノサイドI」はフラクションB-3に含まれているので、このフラクションを再度カラムクロマトグラフィーにかけ、メタノール-水=54:46(1.5L)の溶媒で溶出させ、溶出液を約100本の試験管に回収し、上記と同様にTLCにかけてシアメノサイドIのスポットを確認し、そしてLCにかけてシアメノサイドIが単離されていることを確認した。この結果に基づいて約100本の試験管に含まれる溶出液を4つのフラクションに分けた。No.42~53のフラクションにシアメノサイドIが含まれており、このフラクションを乾燥することにより、高純度(純度97.4%)の「シアメノサイドI」を単離した。
【0088】
「モグロサイドIV」はフラクションB-8に含まれているので、このフラクションを再度カラムクロマトグラフィーにかけ、メタノール-水=54:46(1.5L)の溶媒で溶出させ、溶出液を約100本の試験管に回収し、上記と同様にTLCにかけてモグロサイドIVのスポットを確認し、そしてLCにかけてモグロサイドIVが単離されていることを確認した。この結果に基づいて約100本の試験管に含まれる溶出液を4つのフラクションに分けた。No.57~68のフラクションにモグロサイドIVが含まれており、このフラクションを乾燥することにより、高純度(純度95.5%)の「モグロサイドIV」を単離した。」
(8)「【0091】
「11-オキソ-モグロサイドV」はフラクションC-2に含まれているので、このフラクションを再度逆相カラムクロマトグラフィーにかけ、メタノール-水=52:48(1.5L)の溶媒で溶出させ、溶出液を約100本の試験管に回収し、上記と同様に順相系TLCにかけて11-オキソ-モグロサイドVのスポットを確認し、そしてLCにかけて11-オキソ-モグロサイドVが単離されていることを確認した。この結果に基づいて約100本の試験管に含まれる溶出液を4つのフラクションに分けた。No.38~53のフラクションに11-オキソ-モグロサイドVが含まれており、このフラクションを乾燥することにより、高純度(純度99.3%)の「11-オキソ-モグロサイドV」を単離した。」
(9)「【0094】
「モグロサイドV」はフラクションD-5に含まれているので、このフラクションを再度逆相カラムクロマトグラフィーにかけ、メタノール-水=54:46(1.5L)の溶媒で溶出させ、溶出液を約100本の試験管に回収し、上記と同様に順相系TLCにかけてモグロサイドVのスポットを確認し、そしてLCにかけてモグロサイドVが単離されていることを確認した。この結果に基づいて約100本の試験管に含まれる溶出液を5つのフラクションに分けた。No.35~45のフラクションにモグロサイドVが含まれており、このフラクションを乾燥することにより、高純度(純度97.3%)の「モグロサイドV」を単離した。」
(10)「【0096】
(実施例1:甘味強度の測定)
Pauliの全系列法(澱粉糖関連工業分析法(株式会社食品化学新聞社発行))による官能試験により、上記製造例1で羅漢果の果実から分画および精製した高甘味度甘味成分であるモグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIの甘味強度を測定した。その結果、10%ショ糖水溶液と同等の甘味強度を得るために必要なモグロサイドV水溶液の濃度は0.03重量%であって、11-オキソ-モグロサイドVでは0.15重量%であって、モグロサイドIVでは0.04重量%であって、そしてシアメノサイドIでは0.02重量%であった。」
(11)「【0100】
(実施例2および比較例2)
以下に示す方法により、ショ糖10重量%溶液と同等の甘味強度の各種甘味料水溶液を調製した。
【0101】
(実施例2:羅漢果配糖体を含有する甘味料水溶液の調製)
容量100mLのガラス製ビーカーに、上記製造例1で羅漢果の果実から分画および精製した高甘味度甘味成分であるモグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIの高純度品を、それぞれ以下の表1の実施例2のサンプルA~サンプルDに示す重量で加え、所定量の精製水に十分に溶解させることにより、サンプルA~サンプルDの甘味料水溶液をそれぞれ100g得た。
【0102】
(比較例2:サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸ジカリウムまたはレバウディオサイドAを含有する甘味料水溶液の調製)
高甘味度甘味成分を表1の比較例2に示すように、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸ジカリウムまたはレバウディオサイドAに変更したこと以外は実施例1と同様に操作して、比較例の甘味料水溶液サンプルE~サンプルGをそれぞれ100g得た。ここで使用したサッカリンナトリウム、グリチルリチン酸ジカリウムおよびレバウディオサイドAは、それぞれ片山化学社製試薬、丸善製薬社製の製品、および守田化学工業社製の製品を用いた。
【0103】
【表1】
【0104】
(実験例1:甘味料水溶液の評価)
熟練した男性の被験者11名および熟練した女性の被験者4名の合計15名の被験者によって、実施例2および比較例2で得られた甘味料水溶液について9要素の味覚に対して官能試験を実施した。ショ糖の10重量%水溶液を基準溶液として、各種甘味料水溶液を試飲し、味覚の9要素、すなわち、「○1苦み、○2後引き、○3しつこさ、○4くせ、○5渋味、○6刺激、○7すっきり感、○8まろやかさ、および○9こく」のそれぞれについて7段階の点数(0点~6点)で評価した。ショ糖10重量%水溶液を基準溶液として比較を行ない、「ショ糖溶液よりもきわめて好評」を0点、「ショ糖溶液よりもかなり好評」を1点、「ショ糖溶液よりもやや好評」を2点、「ショ糖溶液と変わらない」を3点、「ショ糖溶液よりもやや不評」を4点、「ショ糖溶液よりもかなり不評」を5点、そして「ショ糖溶液よりもきわめて不評」を6点として評価した。
【0105】
さらに、各要素別に得られた評価点数を基にしてレーダーチャートを作成した。すなわち、甘味質を構成する9要素を9本の軸で表し、被験者によって評価された順位の平均値をこの軸上にプロットし、このプロットを互いに結んで9角形の曲線を画いた。この9角形に囲まれる面積を算出した。この場合、9要素のいずれも外側に値するほど甘味質が不評であり、内側に値するほど甘味質が好評であることを意味する。したがって、9角形に囲まれる面積は、甘味質が好評であるほど減少する。
【0106】
評価の結果を図1および表2に示す。図1には、上記実施例2および比較例2で得られた甘味料水溶液の甘味質を構成する9要素に対するレーダーチャートを示した。表2には、甘味質を構成する9要素に対して、被験者によって評価された順位の平均値、およびレーダーチャートから求めた面積値を示した。
【0107】
【表2】
【0108】
図1および表2から明らかなように、羅漢果果実から分画精製したモグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIの高純度品を含む実施例2のサンプルA~サンプルDは、味覚の9要素、すなわち、「○1苦み、○2後引き、○3しつこさ、○4くせ、○5渋味、○6刺激、○7すっきり感、○8まろやかさ、および○9こく」のいずれの要素に対しても評価点数4.00以下を示した。また、レーダーチャートからの面積値は、サンプルA~サンプルDの順に40、42、45および45と低い値を示した。
【0109】
これらのことから、サンプルA~サンプルDは、ショ糖の甘味質(評価点数3.00)と類似したすぐれた甘味質を示す甘味料水溶液であることがわかった。
【0110】
一方、サッカリンナトリウム(サンプルE)、グリチルリチン酸ジカリウム(サンプルF)およびレバウディオサイドA(サンプルG)を甘味成分とする比較例2に示した甘味料水溶液の甘味質は、いずれも高純度品の高甘味度甘味料を甘味成分とするにも関わらず、味覚の9要素に対する評価点数が4.00以上を示す要素が認められた。サンプルEは、特に苦みに対する点数が高く、後引き、くせ、および渋味に対しても高い点数が得られた。サンプルFでは、後引き、しつこさ、くせ、およびすっきり感に対して点数が高かった。サンプルGでは、後引き、およびくせにおいて点数が高かった。また、サンプルE~サンプルGのレーダーチャートからの面積値は、順に55、59、および49であったので、比較例2の甘味質は、ショ糖の甘味質と比較して劣っていた。」
(12)「【0111】
(実施例3:甘味強度の測定)
未乾燥羅漢果の果実を原料として抽出および精製を行ない、表3の実施例3のサンプルH~サンプルJに示した含有割合でモグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIを含有する羅漢果エキスを得た。
【0112】
【表3】
【0113】
実施例1と同様に、得られた羅漢果エキスの甘味強度を測定した。その結果、10%ショ糖水溶液と同等の甘味強度を得るために必要なサンプルHは0.11重量%であって、サンプルIは0.07重量%であって、そしてサンプルJは0.05重量%であった。
・・・
【0115】
(比較例3:甘味強度の測定)
未乾燥羅漢果の果実を原料として抽出および精製を行ない、表3の比較例のサンプルKおよびサンプルLに示した含有割合でモグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIを含有する羅漢果エキスを得た。
【0116】
実施例1と同様に、羅漢果エキスの甘味強度を測定した。その結果、10%ショ糖水溶液と同等の甘味強度を得るために必要なサンプルKは0.23重量%、であり、そしてサンプルLは0.20重量%であった。」
(13)「【0118】
(実施例4および比較例4)
以下に示す方法により、ショ糖10重量%溶液と同等の甘味強度の各種羅漢果エキス水溶液を調製した。
【0119】
(実施例4:羅漢果エキス水溶液の調製)
容量100mLのガラス製ビーカーに、上記実施例3で得られたサンプルH~サンプルJの羅漢果エキスおよび精製水を、以下の表4の実施例4のサンプルH~サンプルJに示す重量で加え、十分に溶解させ、サンプルH~サンプルJの羅漢果エキス水溶液をそれぞれ100g得た。
【0120】
(比較例4:羅漢果エキス水溶液の調製)
得られたサンプルKおよびサンプルLの羅漢果エキスを表4の比較例4に示す重量で用いたこと以外は実施例4と同様に操作し、比較例4のサンプルKおよびサンプルLの羅漢果エキス水溶液をそれぞれ100g得た。
【0121】
【表4】
【0122】
(実験例2:羅漢果エキス水溶液の評価)
実施例4で得られた羅漢果エキス水溶液および比較例4で得られた羅漢果エキス水溶液についての官能試験を、実験例1と同様にして、熟練した被験者15名による9要素の味覚に対して行い、それぞれの要素に対して7段階の点数(0点~6点)で評価した。さらに、各要素別に得られた評価点数を基にしてレーダーチャートを作成した。
【0123】
結果を図2および表5に示す。図2には、上記実施例4で得られた羅漢果エキス水溶液および比較例4で得られた羅漢果エキス水溶液の甘味質を構成する9要素に対するレーダーチャートを示した。また、表5には、甘味質を構成する9要素に対して、被験者によって評価された順位の平均値、およびレーダーチャートから求めた面積値を示した。
【0124】
【表5】
【0125】
図2および表5から明らかなように、羅漢果の甘味成分であるモグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドV、およびシアメノサイドIの合計含有量が35重量%以上である、実施例4のサンプルH~サンプルJは、味覚の9要素、すなわち、○1苦み、○2後引き、○3しつこさ、○4くせ、○5渋味、○6刺激、○7すっきり感、○8まろやかさ、および○9こくのいずれに対しても評価点数4.00以下を示し、レーダーチャートからの面積値も約40と低い値を示した。
【0126】
これらのことから、サンプルH~サンプルJの羅漢果エキス水溶液は、ショ糖の甘味質(評価点数3.00)と類似したすぐれた甘味質を示す水溶液であることがわかった。
【0127】
一方、羅漢果の甘味成分であるモグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドV、およびシアメノサイドIの合計含有量が35重量%以上という条件を満足しない、比較例4のサンプルKおよびサンプルLは、味覚の9要素のほとんどに対して、評価点数が4.00または5.00以上を示した。モグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドV、およびシアメノサイドIの合計含有量がわずか16.0重量%であるサンプルKは、特に「苦み」および「くせ」に対する点数が著しく高く、「すっきり感」、「まろやかさ」、「渋み」および「後引き」に対しても高い評価点数を示した。上記合計含有量が29.2%のサンプルLでは、「苦み」および「くせ」に対して点数が高かった。また、サンプルKおよびサンプルLのレーダーチャートからの面積値は、順に67および63であり、これらの甘味質はショ糖の甘味質と比較して著しく劣っていた。」
3 本件特許明細書に開示された範囲について
最初に、「モグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIの合計含有量(以下「4成分合計含有量」という。)」について、本件特許明細書に開示された範囲を検討する。
(1)4成分合計含有量が33重量%であることについて
まず、4成分合計含有量が33重量%であることが詳細な説明に記載されているかについて検討する。
本件特許明細書には、4成分合計含有量が29.20重量%でショ糖の甘味質と比較して著しく劣っていること(【0112】、【0127】)、35.10重量%でショ糖の甘味質と類似したすぐれた甘味質を示すこと(【0112】、【0126】)が記載されており、29.20重量%と35.10重量%との間にショ糖の甘味質と比較して劣っているものと類似したものとの境界があることは理解できる。しかし、29.20重量%と35.10重量%との間の味覚9要素に関する評価は、その前後のサンプルI、J、Kと合わせてみても、下降する直線の関係である等の技術常識はなく、実際に確認しないと理解できないものである。
したがって、4成分合計含有量が33重量%である羅漢果エキスがショ糖と類似した甘味質を示すことが、本件特許明細書に開示されているとはいえない。
被請求人は、本件特許明細書には、4成分合計含有量が35.10重量%、53.00重量%、60.80重量%であるサンプルH、I、Jについて味覚の9要素(苦味、後引き、しつこさ、くせ、渋味、刺激、すっきり感、まろやかさ、こく)に関し、ショ糖10重量%水溶液と比較した評価が記載されており、また、4成分合計含有量が16.00重量%、29.20重量%であるサンプルK、Lについても同様に味覚9要素に関する評価が記載され、そして、サンプルH~Lについて、味覚9要素をレーダーチャートとした際の面積及び味覚9要素と4成分合計含有量との関係から、4成分合計含有量33重量%に甘味質改善の臨界的意義があることが読み取れる旨主張する。また、4成分合計含有量が29.20重量%と35.10重量%との間で味覚9要素をレーダーチャートとした際の面積及び味覚9要素の評価点数が共通して著しく低下しており、4成分合計含有量が29.20重量%から35.10重量%に向けて下降する直線として描かれることは疑いがなく、直線的でないとしても、その中間値より14%ほど35.10重量%に近い33重量%の羅漢果エキスの甘味質は、33重量%と35.10重量%の間の極めて狭い範囲において急激な甘味質の変化、改善があることは技術常識に照らして想定し難いから、35.10重量%の羅漢果エキスの甘味質に一層近い旨主張する(審判事件答弁書11頁4行~16頁21行、口頭審理陳述要領書3頁2行~5頁9行、上申書3頁14行~6頁14行)
しかし、上記のとおり、本件特許明細書には、4成分合計含有量が29.20重量%と35.10重量%との間にショ糖の甘味質と比較して劣っているものと類似したものとの境界があることは理解できるが、29.20重量%と35.10重量%との間の味覚9要素の評価は、実際に確認しないと理解できないから、33重量%に甘味質改善の臨界的意義があるとはいえない。また、4成分合計含有量が29.20重量%から35.10重量%に向けて下降する直線の関係であるとする技術常識は存在せず、29.20重量%と35.10重量%との間の味覚9要素に関する評価は、実際に確認しないと理解できないから、33重量%が29.20重量%と35.10重量%との間で、その中間値より35.10重量%に近い値であるとしても、33重量%の羅漢果エキスの甘味質が35.10重量%の羅漢果エキスの甘味質に近いとする根拠はない。
ゆえに、被請求人の主張には理由がない。
(2)4成分合計含有量が35重量%であることについて
本件特許明細書には、4成分合計含有量が35.10重量%であるサンプルHについて、ショ糖と比較した評価が、苦味4.0、後引き3.73、しつこさ3.47、くせ3.80、渋味3.33、刺激3.07、すっきり感3.40、まろやかさ3.20、こく3.13、面積41であること(【0111】~【0124】)、及び「サンプルH~サンプルJの羅漢果エキス水溶液は、ショ糖の甘味質(評価点数3.00)と類似したすぐれた甘味質を示す水溶液であることがわかった。」(【0126】)ことが記載されている。
そして、本件発明において、ショ糖と類似した甘味質を有することは、甘味9要素の評価が、甘味9要素がそれぞれ3点(「ショ糖溶液と変わらない」)であるものと総合的に類似していることであるところ、サンプルI、Jの評価も参酌すると、上記4成分合計含有量が35.10重量%であるサンプルHの結果から、4成分合計含有量が35重量%であるものが、ショ糖に類似した甘味質を有することは理解できる。
したがって、本件特許明細書には、4成分合計含有量が35重量%である羅漢果エキスが、ショ糖と類似した甘味質を有することは開示されている。
(3)4成分合計含有量が35重量%~60.80重量%について
4成分合計含有量が35重量%については、上記(2)のとおりである。
そして、本件特許明細書には、4成分合計含有量が35.10重量%、53.00重量%、60.80重量%であるサンプルH、I、Jについて、甘味9要素とそのレーダーチャートの面積から、ショ糖と類似した甘味質を有することが記載されている。
したがって、4成分合計含有量が35重量%~60.80重量%の羅漢果エキスが、ショ糖と類似した甘味質を有することが開示されていることは明らかである。
(4)4成分合計含有量が60.80重量%を超える範囲について
本件特許明細書には、「実施例2」として、モグロサイドV純度97.3%のサンプルA、モグロサイドIV純度95.5%のサンプルC、11-オキソ-モグロサイドV純度99.3%のサンプルBおよびシアメノサイドI純度97.4%のサンプルDについて、味覚9要素をレーダーチャートとした際の面積及び味覚9要素についてショ糖と比較した結果、ショ糖と類似した甘味質を有することが記載されている。そして、当該記載から、モグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIそれぞれを高純度、すなわち100重量%に近く含有する羅漢果エキスは、それぞれショ糖と類似した甘味質を有すると理解できる。
そうすると、4成分合計含有量が60.80重量%の羅漢果エキスがショ糖と類似した甘味質を有することが記載されており、4成分合計含有量が100重量%に近い羅漢果エキスがショ糖と類似した甘味質を有することが示されていることから、4成分合計含有量が60.80重量%を超える範囲の羅漢果エキスがショ糖と類似した甘味質を有することは理解できる。
4 本件発明1(4成分合計含有量が33重量%以上である羅漢果エキス)が本件特許明細書に開示された範囲内のものであるかについて
上記3の(1)のとおり、4成分合計含有量が33重量%である羅漢果エキスは、本件特許明細書に開示されていないから、本件発明1の「モグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIの合計含有量が33重量%以上である」全範囲の「羅漢果エキス」は、本件特許明細書に記載されたものであるとはいえず、特許法第36条第6項第1号の規定を満たさない。
したがって、請求項1に係る発明についての特許は特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
5 本件発明2(4成分合計含有量が35重量%以上である羅漢果エキス)が本件特許明細書に開示された範囲内のものであるかについて
上記3の(2)~(4)のとおり、4成分合計含有量が35重量%以上である羅漢果エキスは、本件特許明細書に開示されているから、本件発明2の「モグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIの合計含有量が35重量%以上である」全範囲の「羅漢果エキス」は、本件特許明細書に記載されており、特許法第36条第6項第1号の規定を満たす。
したがって、請求項2に係る発明についての特許は特許法第123条第1項第4号に該当しない。
請求人は、乙第1号証は本件特許明細書の記載又はこれから読み取れる事実を裏付けるものとはいえず、本件発明は4成分全てが含まれている羅漢果エキスであるから、サンプルA~Dは本願発明の実施例でない。本件特許明細書には、最大で60重量%までのデータしかなく、「まろやかさ」及び「こく」について、53.00重量%から60.80重量%の間で評価点数の増加がみられるから、60重量%を超える範囲でショ糖と類似した甘味質を有することは開示されていない旨主張する(審判請求書8頁下から7行~10頁3行、審判事件弁駁書5頁11行~8頁18行、口頭審理陳述要領書(2)4頁6行~9頁14行、上申書5頁17行~6頁6行)。
まず、特許請求の範囲の「モグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIの合計含有量」との記載について検討する。
「モグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIの合計含有量」とは、その文言自体から、羅漢果エキスに含有する成分のうち、モグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドV、シアメノサイドIの含有量の合計を意味すると解され、モグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドV、シアメノサイドIの合計であるから、必ずしも4成分全てを含有していることまでは特定していないと解される。
このことは、本件特許明細書に、モグロサイドV純度97.3%のサンプルA、モグロサイドIV純度95.5%のサンプルC、11-オキソ-モグロサイドV純度99.3%のサンプルBおよびシアメノサイドI純度97.4%のサンプルDが、「実施例2」として記載されていること、上記サンプルA~Dが、「甘味料水溶液」(【0101】、【0103】、【0104】)と表記されるものであるが、羅漢果果実から分画および精製したものであるから、羅漢果エキスであること、そして、その味覚9要素についてショ糖と比較した結果、ショ糖と類似した甘味質を有することが記載されている(【0100】~【0109】)ことからも明らかである。
さらに、段落【0049】に「本発明の羅漢果エキスは、モグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIからなる群より選択される1種以上の配糖体を含有する。」と記載されており、モグロサイドV、モグロサイドIV、11-オキソ-モグロサイドVおよびシアメノサイドIのいずれかを含有すればよい旨が記載されていることとも整合している。
そうすると、上記のとおり、本件特許明細書には、4成分合計含有量が100重量%近いものもショ糖と類似した甘味質を有することが記載されているから、上記請求人の主張には理由がない。
また、請求人は、被請求人自身、口頭審理期日直前まで60重量%を超える範囲が実験例1によってサポートされるとは認識も想定もしていなかった旨主張する(上申書6頁7行~17行)。
しかし、特許請求の範囲の文言及び本件特許明細書の記載から、上記のとおり解釈できるのであり、上記請求人の主張は、当該解釈を妨げるものではない。
第6 むすび
以上のとおり、本件請求項1に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
また、請求人の主張する無効理由及び証拠方法によっては、本件請求項2に係る発明についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、その2分の1を請求人が負担し、2分の1を被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-800185