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特許無効審判

2024-800105

炭酸感が改善された炭酸飲料

審判番号
2024-800105
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2019-165114
登録番号
6902076
請求日
2024年09月05日
審決日
2025年09月17日
公報発行日
2026年03月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】モンスター エナジー カンパニー
  • 【請求人代理人】弁理士法人秀和特許事務所
  • 【被請求人】サントリーホールディングス 株式会社
  • 【被請求人代理人】山本 修
  • 【被請求人代理人】鶴喰 寿孝
審判長/審判官
  • 審判長 植前 充司
  • 審判官 柴田 昌弘
  • 審判官 加藤 友也
分類
P1113.113-Y (A23L) / P1113.121-Y (A23L) / P1113.537-Y (A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項1号特許法123条1項4号特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第6902076号発明「炭酸感が改善された炭酸飲料」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨 1 請求の趣旨 令和6年12月24日付け手続補正書により補正された審判請求書の「6 請求の趣旨」に記載された次のとおりのものである。 特許第6902076号の特許請求の範囲の請求項1、2、4ないし6に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。 2 答弁の趣旨 本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とするとの審決を求める。 第2 手続の経緯 1 本件審判請求がされるまでの経緯 特許第6902076号(以下、「本件特許」という。)の請求項1、2、4ないし6に係る特許についての出願は、平成27年4月27日に出願した特願2015-90884号の一部を令和1年9月11日に新たな出願としたものであって、令和3年6月22日にその特許権の設定登録がされたものである。 その後、本件特許について、令和4年1月14日に特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし6)がされ、令和4年10月14日付けで「特許第6902076号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。特許第6902076号の請求項1、2、4ないし6に係る特許を維持する。特許第6902076号の請求項3に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。」との異議の決定がされたものである。 2 本件審判請求における主な手続の経緯 本件審判請求における主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和 6年 9月 5日:無効審判請求書提出(請求人) 同年12月24日:手続補正書提出(請求人) 令和 7年 3月24日:審判事件答弁書提出(被請求人) 同年 5月19日付:審理事項通知書(特許庁審判長から請求人及 び被請求人双方に対して) 同年 6月26日:口頭審理陳述要領書提出(請求人) 同年 同月 同日:口頭審理陳述要領書提出(被請求人) 同年 7月10日:口頭審理 同年 同月24日:上申書提出(被請求人) 同年 8月 7日:上申書提出(請求人) 第3 本件特許発明 本件特許の請求項1、2、4ないし6に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、これらをまとめて「本件特許発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1、2、4ないし6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 カフェイン及びカリウムを含有する炭酸飲料であって、 当該炭酸飲料100ml当たり、 カフェインを10mg~40mg、 カリウムを6mg~30mg、 ナトリウムを10mg以下、及び カリウムとナトリウム含量の合計が16mg以下、 である前記炭酸飲料。 【請求項2】 カラメル色素を更に含む、請求項1に記載の炭酸飲料。」 「【請求項4】 前記炭酸飲料100ml当たりカリウムを14mg以上含有する、請求項1又は2に記載の炭酸飲料。 【請求項5】 前記カリウムの供給源は、炭酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三カリウム、水酸化カリウム、乳酸カリウム、酒石酸カリウム、コハク酸カリウム、リンゴ酸カリウム、クエン酸カリウム、及びフマル酸カリウムからなる群より選ばれる、請求項1、2、及び4のいずれか1項に記載の炭酸飲料。 【請求項6】 請求項1、2、4、及び5のいずれか1項に記載の炭酸飲料の製造方法。」 第4 請求人の主張の概要及び証拠方法 1 請求人の主張の概要 請求人は、「特許第6902076号の特許請求の範囲の請求項1、2、4ないし6に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、その理由として、おおむね次の無効理由を主張している。 (1)無効理由1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない発明であるから、それらの特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。 (2)無効理由2(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許の請求項1、2、4ないし6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。 (3)無効理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1、2、4ないし6に係る発明の特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、それらの特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるべきものである。 その具体的理由は、概略次のとおりである。 ア 本件明細書段落0038の表4の開示について(審判請求書III.(1)) (ア)本件特許発明が解決しようとする課題は、「炭酸感が改善された、カフェインを含有する炭酸飲料の提供」(本件明細書段落0004)である。表4の試験サンプルのうち、本件特許発明1の範囲に含まれる3つの試験サンプルのうち1つ(当審注:K量:6mg、Na量:10mg)は、官能スコアが1.7点しかなく、一部の専門家パネラーは炭酸感が改善されていないと判断しているから、本件特許発明1の範囲に課題を解決していないものが含まれている。 (イ)本件特許発明の炭酸飲料は、100mlあたりカリウムを6mg~16mg、ナトリウムを0mg~10mg、カリウムとナトリウム含量の合計が16mg以下であるが、表4の試験結果からだけでは、カリウム、ナトリウムの全ての組合せの炭酸飲料において炭酸感の向上効果があるとは到底理解できない。特に、本件特許発明の範囲内の実施例で1.7という低い官能スコアのものが含まれているので、カフェイン含量が20mg/100ml以下であれば課題が解決できることになるし、最も好ましいと考えられるサンプル(K:30mgかつNa:0mg)が本発明の範囲に含まれていないので、本件特許発明で特定される数値範囲とすることにより前記課題が解決されることが、発明の詳細な説明に裏付けられているとはいえない。 (ウ)本件特許発明1の炭酸飲料の炭酸感改善効果は、表4及び本件明細書の段落0030の記載からみて、下記の甲第1号証、甲第2号証と同程度のものであり、炭酸感が改善された炭酸飲料を提供できているとはいえない。 イ 本件明細書段落0030の表2の開示について(審判請求書III.(2)) 本件明細書段落0030の表2は、少なくともカリウム含量が15mg以上の場合において、カリウム含量の変化が官能スコアに影響しないこと、すなわち炭酸感改善に寄与しないことを示している。また、カフェイン含量が40mg/100mlの場合、カリウム含量が本件特許発明1の範囲外のもの(すなわちカリウムが5、50、60mg/100ml)と本件特許発明1の範囲内のもの(すなわちカリウムが6、10、14、15mg/100ml)とで、官能スコアに差がなく、カリウム含量の変化が官能スコアに影響しないこと、すなわち炭酸感改善に寄与しないことを示している。 したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、カリウム含量を本件特許発明で特定される数値範囲とすることにより炭酸感改善という課題が解決されることが裏付けられているとは認められない。 2 証拠方法 甲第1号証:「Way Back Machine |ペプシ リフレッシュショット 商品情報(カロリー・原材料) サントリー」、[online]、2013年5月21日、[2023年 4月28日検索]、インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20130521000257/http:/products.suntory.co.jp/d/4901777243262/ペプシ+リフレッシュショット> 甲第2号証:「Way Back Machine|Over Caffeinated, Diet Pepsi Lime」、[online]、2014 年12月30 日、[2021 年 12 月 15日検索]、インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20141230211304/http://www.overcaffeinated.org/database/soda-pop/diet-pepsi-lime/> 甲第3号証:国際公開2012/005349号 甲第4号証:特開2015-43766号公報 甲第5号証:Guillermo Espinosa, et al., An analysis of the potassium concentrations of soft drinks by HPGe gamma spectrometry, J Radioanal Nucl Chem, 2009, 282:401-404, Springer 甲第6号証:「Way Back Machine|How much caffeine is in Diet Coke, Coca- Cola and Coke Zero? : FAQ - Coca-Cola GB」、[online]、2010年12月5日、[2024年4月10日検索]、インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20101205011309/http://www.coca-cola.co.uk:80/faq/ingredients/how-much-caffeine-is-in-diet-coke-coca-cola-and-coke-zero.html> 甲第7号証:特開2012-147779号公報 甲第8号証:米国特許第6056989号明細書 甲第9号証:「Nutritive Value of Foods」、[online]、アメリカ合衆国農務省、[2025年6月25日検索]、インターネット<URL: https://www.ars.usda.gov/arsuserfiles/80400525/data/hg72/hg72_2002.pdf> 甲第10号証:令和2年10月8日付で起案された拒絶理由通知書 甲第11号証:令和3年2月12日付で提出された意見書 甲第12号証:「Way Back Machine |ペプシ リフレッシュショット 商品情報(カロリー・原材料)サントリー」、[online]、2014年6月30日、[2025年6月17日検索]、インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20140630235003/http://products.suntory.co.jp/d/4901777243262/ペプシ+リフレッシュショット> 甲第13号証:国際公開2012/005349号 甲第14号証:「Way Back Machine|Over Caffeinated, Diet Pepsi Wild Cherry」、[online]、2014年12月30日、[2021年12月15日検索]、インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20141230212458/http://overcaffeinated.org/database/soda-pop/diet-pepsi-wild-cherry/> 甲第15号証:「Way Back Machine|Over Caffeinated, Diet Pepsi Vanilla」、[online]、2014年12月30日、[2021年12月21日検索]、インターネット<URL: https://web.archive.org/web/20141230210346/http://www.overcaffeinated.org/database/soda-pop/diet-pepsi-vanilla/> 甲第16号証:「ペプシ リフレッシュショット 200ml缶 商品情報(カロリー・原材料) サントリー」、[online]、[2025年6月17日検索]、インターネット<URL: https://products.suntory.co.jp/d/4901777273689/> 証拠の表記は、審判請求書及び口頭審理陳述要領書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。なお、甲9ないし甲16は、令和7年6月26日に提出された口頭審理陳述要領書に添付して提出されたものである。 第5 被請求人の主張の概要及び証拠方法 1 被請求人の主張の概要 被請求人は、「本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、その理由として、請求人が主張する上記無効理由1ないし3はいずれも理由がない旨主張している。 2 証拠方法 被請求人は、下記乙第1号証ないし乙第12号証を証拠方法として提出した。 乙第1号証:特許第6902076号公報 乙第2号証:訂正特許請求の範囲 乙第3号証:健康増進法 平成25年6月28日改正 乙第4号証:健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令 平成22年3月31日改正 乙第5号証:製品規格書 ペプシリフレッシュショット 200ml缶 乙第6号証:国際公開2012/005349号 乙第7号証:特開2015-43766号公報 乙第8号証:Guillermo Espinosa, et al., An analysis of the potassium concentrations of soft drinks by HPGe gamma spectrometry, J Radioanal Nucl Chem, 2009, 282:401-404, Springer 乙第9号証:特開2012-147779号公報 乙第10号証:米国特許第6056989号明細書 乙第11号証:陳述書 乙第12号証:エナジードリンクのカフェイン含量を【多い順】ラン キングで比較!最強の商品はどれ? 、https://web.archive.org/web/20211016091631/https://chisou-media.jp/posts/5376 証拠の表記は、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書及び令和7年7月24日に提出された上申書の記載におおむね従った。以下、順に「乙1」のようにいう。なお、乙12は、令和7年7月24日に提出された上申書に添付して提出されたものである。 第6 当審の判断 当審は、無効理由1ないし3について検討した結果、以下のとおり、いずれの理由によっても本件特許を無効とすることはできないものと判断する。 1 無効理由1及び2(甲1を主たる証拠とする新規性・進歩性)について (1)主な証拠に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項等 (ア) 甲1に記載された事項 甲1には、ペプシリフレッシュショットに関して、次の記載がある。なお、下線は、請求人により付与されたものである。以下同様である。 ・「 [図:0001432834000001.jpg] 」 ・「 [図:0001432834000002.jpg] 」 ・「 [図:0001432834000003.jpg] 」 ・「 [図:0001432834000004.jpg] 」 (イ)甲1に記載された発明 甲1に記載された事項を、特にペプシリフレッシュショットの成分について整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1飲料発明」、「甲1製法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1飲料発明> 「カフェイン及びカリウムを含有するペプシリフレッシュショットであって、当該ペプシリフレッシュショット100ml当たり、 カフェインを19mg、 カリウムを10mg未満、 ナトリウムを3mg、 含有する、ペプシリフレッシュショット。」 <甲1製法発明> 「甲1飲料発明のペプシリフレッシュショットの製造方法。」 イ 甲2に記載された事項 甲2には、ダイエットペプシライムに関して、次の記載がある。なお、甲2は外国語で記された文献であるため、訳文にて示す。甲5及び甲6についても同様である。 ・「 [図:0001432834000005.jpg] 」 ウ 甲3に記載された事項 甲3には「カフェインを含有する炭酸飲料」に関して、おおむね次の記載がある。 ・「[請求項1] 100mL当たり20kcal以下のカロリー量である炭酸飲料であって、以下の成分(A)及び(B): (A)カフェイン 0.005~0.06重量% (B)ショウガ抽出物 0.00001~10重量% を配合して得られる炭酸飲料。 [請求項2] 成分(B)が少なくともジンゲロールを含有し、炭酸飲料中のジンゲロールの含有量が0.00001~0.002重量%である、請求項1に記載の炭酸飲料。 [請求項3] さらに、高甘味度甘味料を含む、請求項1又は2に記載の炭酸飲料。 [請求項4] ガス圧が、1.5~5.0kg/cm2である、請求項1~3のいずれかに記載の炭酸飲料。」 ・「[0006] 本発明の目的は、カフェインを用いた炭酸飲料であって、低カロリー飲料の特性を維持しながらも適度なドライ感を有し、かつ、カフェインの苦味が抑制された炭酸飲料を提供することにある。」 ・「[0021] 本発明に用いられる高甘味度甘味料は、1つ又はそれ以上の組合せで用いてもよい。特に、本発明の炭酸飲料の呈味を改善する作用(ドライ感の付与、カフェインと炭酸による苦味の抑制)は、高甘味度甘味料としてアセスルファムカリウム、スクラロース、ステビアから選択される少なくとも1種を用いた場合に顕著に発揮される。また、アセスルファムカリウム及び/又はスクラロースを用いた場合には、低カロリー飲料で不足しがちなコク(ボディ感)、飲み応えも付与できることから、高甘味度甘味料としてアセスルファムカリウム、スクラロース、ステビアから選択される少なくとも1種、特にアセスルファムカリウム及び/又はスクラロースを用いた炭酸飲料は、本発明の好ましい態様の一つである。 [0022] 本発明の炭酸飲料における高甘味度甘味料の配合割合は、特に限定的ではなく、その配合目的に応じて適宜選択される。例えば、高甘味度甘味料としてアセスルファムカリウム及び/又はスクラロースを用いた場合、飲料100mL当たり、アセスルファムカリウムが0.001~0.1g、スクラロースが0.0004~0.45g程度である。なお、後述するように、本発明の炭酸飲料は、気泡の持ちが維持されるという特徴も有することから、好適な態様の一つとして高ガス圧炭酸飲料が挙げられる。高ガス圧炭酸飲料における高甘味度甘味料の配合割合は、甘味度として8~14度、好ましくは8~12度、より好ましくは9~11度程度である。ここで、甘味度は、甘味強度、甘味比ともいわれる、甘味の強さを示す尺度のことであり、ショ糖1重量%(20℃)の甘味を1として、このショ糖の甘さの強さに対する倍率を示す。」 エ 甲4に記載された事項 甲4には「容器詰め炭酸飲料」に関して、おおむね次の記載がある。 ・「【請求項1】 甘味料およびカラメル組成物を含んでなる容器詰め炭酸飲料であって、難消化性デキストリンを含有し、かつ該飲料中の4-メチルイミダゾールの含有量が200ppb未満である、容器詰め炭酸飲料。 【請求項2】 甘味料が高甘味度甘味料である、請求項1に記載の容器詰め炭酸飲料。 【請求項3】 高甘味度甘味料が、アスパルテームを含んでなる、請求項2に記載の容器詰め炭酸飲料。 【請求項4】 高甘味度甘味料が、飲料に対して、0.01~0.2質量%を含んでなる、請求項2または3に記載の容器詰め炭酸飲料。 【請求項5】 カラメル組成物がカラメル色素である、請求項1~4のいずれか一項に記載の容器詰め炭酸飲料。 【請求項6】 カラメル色素が、飲料に対して、0.01~0.5質量%を含んでなる、請求項5に記載の容器詰め炭酸飲料。 【請求項7】 甘味料およびカラメル組成物を含んでなる容器詰め炭酸飲料の製造方法であって、難消化性デキストリンを含有し、かつ該飲料中の4-メチルイミダゾールの含有量が200ppb未満となるように調整する、容器詰め炭酸飲料の製造方法。 【請求項8】 甘味料およびカラメル組成物を含んでなる容器詰め炭酸飲料において、難消化性デキストリンを含有し、かつ該飲料中の4-メチルイミダゾールの含有量が200ppb未満となるように調整することを特徴とする、容器詰め炭酸飲料の泡安定化方法。」 ・「【0007】 これまで、起泡剤や泡保持剤の添加により、炭酸飲料の泡の改善すなわち安定な泡の形成と、長時間安定な泡の持続性とが図られてきた。しかし、起泡剤や発泡剤を添加した炭酸飲料は、泡のはじけ感を保持し、泡は滑らかで消えにくいものの、該炭酸飲料に好ましくない香味を付与したり、粘度が上昇するなどの物性の変化を起こすことなどにより、嗜好性が低下してしまうといった欠点を有している場合があった。特に、カラメル色素などを含有するコーラ系炭酸飲料においては、好ましくない香味の付与は、商品特性を著しく損なうものとなっていた。 【0008】 本発明は、容器詰め炭酸飲料(特に、カラメル組成物を含有するコーラ系炭酸飲料)において、溶存二酸化炭素(以下、単に「炭酸ガス」という)により形成された泡(飲料液面上部に形成されるフォーム)が安定化された容器詰め炭酸飲料、およびその製造方法、並びに容器詰め炭酸飲料の泡の安定化方法を提供することを目的とする。」 ・「【0038】 添加される高甘味度甘味料としては、天然高甘味度甘味料であっても、合成高甘味度甘味料であってもよく、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、キシリトール、D-キシロース、グリチルリチンおよびその酸およびその塩、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、D-ソルビトール、ステビア抽出物、ステビア末、タウマチン、アブルソサイドA、シクロカリオサイドI、N-アセチルグルコサミン、L-アラビノース、オリゴ-N-アセチルグルコサミン、カンゾウ抽出物、酵素処理ステビア、α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア、酵素処理カンゾウ、L-ソルボース、ネオテーム、ラカンカ抽出物、L-ラムノース、D-リボース等が挙げられる。」 ・「【0041】 本発明の容器詰め炭酸飲料中の高甘味度甘味料の含有量は、目的とする飲料に応じて適宜決定することができるが、例えば、0.01~0.2質量%、好ましくは0.02~0.1質量%、より好ましくは0.03~0.07質量%とすることができる。」 オ 甲5に記載された事項 甲5には「HPGeガンマスペクトロメとリーによるソフトドリンクのカリウム濃度の分析」に関して、おおむね次の記載がある。 ・「炭酸飲料(ソーダ)であるCoca-Cola、Coca-Cola Light(米国及びその他の国ではDiet Cokeとして販売)、Coca-Cola Zero、Pepsi、Pepsi Light、Pepsi Max、Big Cola、Lulu-Cola、Manzana Lift、SpriteとFanta、ミネラルウォーターのCielとPenafielを分析した。」(401頁、左欄、「Abstract」の13~15行目) ・「カリウムの過剰摂取は、腎臓、心臓、冠状動脈疾患、高血圧、糖尿病に苦しむ人々、および体のカリウム処理能力を妨げる薬を服用している人々の健康に悪影響を与える可能性がある。このため、一部の国では、水やその他の飲料の最大カリウム濃度に関するガイドラインを導入する必要性を決定した。」(401頁、右欄、「Introduction」の6~13行目) ・「 [図:0001432834000006.jpg] 」 カ 甲6に記載された事項 甲6には「ダイエットコーク、コカコーラ、コークゼロにはどれくらいのカフェインが入っているの?」に関して、おおむね次の記載がある。 ・「1LのCoke Zero又はCoca-Colaには96mgのカフェインが含まれており、1LのDiet Cokeには128mgのカフェインが含まれている。」 キ 甲7に記載された事項 甲7には「容器詰発泡飲料」に関して、おおむね次の記載がある。 ・「【請求項1】 次の成分(A)、(B)及び(C); (A)穀物由来たんぱく質 (B)カリウム、及び (C)起泡剤 を含有し、 前記成分(A)に占める(D)分子量5000以下のペプチドの割合が70~100質量%であり、 前記成分(D)と前記成分(B)との含有質量比[(D)/(B)]が15~300であり、 pHが3~5である、容器詰発泡飲料。」 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、前記発泡性飲料は泡立ちや泡持ちが改善されているものの、汗をかいたときの喉越しが不十分で、しかも喉の渇きが収まり難く、水分を欲するときに飲む止渇飲料として必ずしも適していなかった。 したがって、本発明の課題は、喉越しが良好でかつ酸味感が緩和されていることにより、汗をかいて水分を欲するときに飲む止渇飲料として有用な容器詰発泡飲料を提供することにある。」 ・「【0016】 本発明の容器詰発泡飲料は、成分(B)としてカリウムを含有する。(B)カリウムは、主に(A)穀物由来たんぱく質に由来するものであるが、新たに加えられたものでもよい。 本発明の容器詰発泡飲料中の(B)カリウムの含有量は、酸味感の緩和及び喉越しの観点から、飲料100g中に5mg以上、更に7mg以上、更に9mg以上であることが好ましく、他方上限は飲料100g中に40mg、更に30mg、更に20mg、更に15mgであることが好ましい。かかる(B)カリウムの含有量の範囲としては、5~40mg、更に5~30mg、更に7~30mg、更に9~20mg、殊更に9~15mgが好ましい。なお、カリウム含有量の測定方法は、後掲の実施例に記載の方法にしたがうものとする。」 2 対比・判断 (1)本件特許発明1について ア 本件特許発明1と甲1飲料発明との対比 甲1飲料発明の「ペプシリフレッシュショット」は、甲1の商品情報の項目において炭酸飲料のカテゴリーの中に記載されていることからみて、本件特許発明1の「炭酸飲料」に相当する。そして、甲1飲料発明の炭酸飲料は「カフェインを19mg」及び「ナトリウムを3mg」、それぞれ含むものであるから、本件特許発明1の「カフェインを10mg~40mg」及び「ナトリウムを10mg以下」であるという発明特定事項を満たすといえる。そして、甲1飲料発明の炭酸飲料は、カリウムとナトリウム含量の合計が13mg未満(カリウム:10mg未満+ナトリウム:3mg=13mg未満)であるから、本件特許発明1の「カリウムとナトリウム含量の合計が16mg以下」であるという発明特定事項を満たすといえる。 そうすると、本件特許発明1と甲1飲料発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「カフェイン及びカリウムを含有する炭酸飲料であって、 当該炭酸飲料100ml当たり、 カフェインを10mg~40mg、 ナトリウムを10mg以下、及び カリウムとナトリウム含量の合計が16mg以下、 である前記炭酸飲料。」 そして、両者は、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件特許発明1は「カリウム」を「6~30mg」含むものであるのに対し、甲1飲料発明は「カリウム」が「10mg未満」である点。 イ 判断 上記相違点1について検討する。 甲1には、カリウムが「10mg未満」と記載されており、0mg~10mg未満の間で具体的にどの程度の量のカリウムを含むのかが特定されておらず、甲1飲料発明における具体的なカリウム含量は不明である。そして、甲1及び他の証拠をみても、甲1飲料発明において、カリウムの含有量が「6mg以上10mg未満」であると解する理由もない。したがって、この点は実質的な相違点である。 そして、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲1飲料発明において、「10mg未満」の数値範囲から「6mg以上」を選択して、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けがあるとはいえない。また、本件特許発明1は当該特定事項を満たすことで、炭酸感が向上するという当業者が予測し得た範囲を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ 請求人の主張について 請求人は、審判請求書、口頭審理陳述要領書及び上申書において、以下の(ア)~(ウ)を述べ、相違点1は実質的な相違点ではないか、仮に相違点1が実質的な相違点であったとしても、当業者が容易に想到しえたものである旨主張する。 (ア)甲1飲料発明の炭酸飲料は、カリウムを100ml当たり10mg未満(すなわち、0mg以上10mg未満)含有し、6mg以上10mg未満の蓋然性が高いので、相違点1は実質的な相違点ではない(審判請求書[ハ]無効理由の詳細I.無効理由1(新規性)について(I-1)ii)本件発明1と甲1発明との対比)。なお、甲1飲料発明は甲1の記載事項から導かれるものであって、「飲料そのもの」ではないこと並びに乙5は未公開の情報であることから、甲1飲料発明のカリウム含量を5mg/100mlと解することはできない(口頭陳述要領書2頁)。 (イ)甲1飲料発明において、カリウムの含有量が「0mg以上6mg未満」であった場合には、この点が相違点となるが、当該相違点は、甲3ないし7に基づいて、当業者が容易に想到しえたものである(審判請求書[ハ]無効理由の詳細II.無効理由2(進歩性)について(II-1)ii)本件発明1と甲1発明との対比、上申書7頁)。また、甲11に記載のとおり、被請求人は、本件特許の審査過程において、商品パッケージが変更される場合、成分組成を変えて中味を変化させることが慣用的に行われることを主張しており、市販品だからといってその組成を変更する動機付けがないとはいえない(口頭陳述要領書5-6頁、上申書6-7頁)。 (ウ)本件特許発明1の効果について、本件明細書の段落0038の表4において、例えば、以下の点から、カリウム含量とナトリウム含量を本件特許発明1の範囲とすることに格別顕著な効果は認められず、数値範囲が臨界的意義を有するとも認められない(審判請求書[ハ]無効理由の詳細II.無効理由2(進歩性)について(II-1)iii)本件発明1の効果に関して)。 a 本件特許発明に含まれるK:6mgかつNa:10mgの官能スコアは1.7であり、本件特許発明に含まれないK:6mgかつNa:20mgの官能スコアは1.5と比して、格別顕著な効果があるとはいえない。 b K:6mgかつNa:0mgの官能スコアは2.6であり、本件特許発明に含まれないK:15mgかつNa:10mgの官能スコアと同じであり、格別顕著な効果は認められない。 c 本件特許に含まれるK:15mgかつNa:0mgの官能スコアは3.4であり、本件特許発明に含まれないK:30mgかつNa:0mgの官能スコア3.5と比して、格別顕著な効果があるとはいえない。 d 本件特許発明に含まれないK:15mgかつNa:10mgのサンプルは、甲2に開示された飲料(K:15.50mg、Na:9.86mg、カフェイン:10.71mg)に組成が近似しており、本件特許発明1は、甲2の公知の飲料と比して顕著な効果を有するとはいえない。 上記主張について検討する。 ・(ア)について 甲1飲料発明は、カリウムが「10mg未満」であるものの、具体的にどの程度の量のカリウムを含むかは不明である。 令和7年5月19日付け審理事項通知において、合議体は請求人に対して、甲1に記載されたペプシリフレッシュショットについて、カリウムの含有量が6mg以上である蓋然性が高いと主張する根拠の説明を求めたものの、口頭審理陳述要領書においてこれに対する主張はなく、上申書においても、「本件発明1のカリウム含量(6~30mg)と、甲第1号証に開示されるカリウム含量(10mg未満)とが重複しており、本件発明1は新規性違反であることが明らかである。そのため、「カリウムの含有量が6mg以上」である蓋然性が高いことを主張する必要がない。つまり、請求人は、新規性違反を立証するにあたり、甲第1号証に実際に記載されたカリウム含有量が10mg未満であることを根拠としている」と反論するのみである。 そして、甲1には飲料中の具体的なカリウム含量が特定されていないことは上記のとおりであり、甲1及び他の証拠をみても、甲1飲料発明におけるカリウムの含有量が「6mg以上10mg未満」であると解する理由はないから、甲1飲料発明におけるカリウム含量が「6mg以上」であると解することはできない。 また、令和7年8月7日付け上申書(1-4頁、10-11頁)において、請求人は、甲1の開示内容と、乙5の開示内容とは明確に区別されるべきである等の主張をしているが、甲1及び他の証拠の記載から、甲1飲料発明におけるカリウム含量が6mg以上であると解することはできないのであるから、甲1と乙5との関係や、乙5及び乙11の内容の真偽にかかわらず、本件特許発明1は、甲1飲料発明であるとはいえない。 よって、請求人の主張(ア)は採用できない。 ・(イ)について 甲3ないし甲7に記載された発明は、炭酸感の向上を課題とするものではない。そして、甲3及び甲4には、高甘味度甘味料としてアセスルファムカリウムが例示されているものの(甲3の[0021]-[0022]並びに甲4の【0038】、【0041】)、カリウムそのものの含有量を調整するものではないこと、甲5には市販の炭酸飲料に含まれるカリウム含有量が記載されているものの(甲5の表1)、どの程度の含有量が好ましいかについての記載はないこと、甲6には市販の炭酸飲料のカフェイン含有量が記載されているものの、カリウム含有量の好ましい範囲については記載がないこと、並びに、甲7には穀物由来たんぱく質と起泡剤を含む発泡飲料においてカリウムの含有量を調整することが記載されているものの(甲7の【請求項1】、【0016】)、本件特許発明1とは成分が大きく異なる特定の発泡飲料において、本件特許発明1とは異なる課題を解決するためにカリウムの含有量を調整するものであることからすると、仮に、市販の飲料製品である甲1飲料発明において、成分組成を変えて中味を変化させることを想起したとしても、甲3ないし甲7の記載に基づいて、数ある成分の中からカリウムに着目して、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けがあるとはいえない。 よって、請求人の主張(イ)は採用することができない。 ・(ウ)について 上記(イ)で検討したとおり、甲1飲料発明において上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けがあるとはいえないので、本件特許発明1の効果の顕著性や臨界的意義について検討するまでもなく、甲1飲料発明において、当業者が上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することを容易に想到することができたとはいえない。 よって、請求人の主張(ウ)は、上記イの判断に影響するものではない。 口頭審理陳述要領書(6-8頁)並びに上申書(7-9頁)における本件特許発明1の荒野か数値範囲の臨界的意義に関する請求人の主張についても同様に、上記イの判断に影響するものではない。 (2)本件特許発明2、4及び5について 本件特許発明2、4及び5は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定するものである。 そうすると、本件特許発明2、4及び5と甲1飲料発明とは、少なくとも上記相違点1において相違するから、本件特許発明2、4及び5は、甲1飲料発明であるとはいえない。 また、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲1飲料発明において、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けがあるとはいえないことは、上記(1)イにおいて検討したとおりである。 よって、本件特許発明2、4及び5は、甲1飲料発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明6について ア 対比 甲1製法発明は、甲1飲料発明の炭酸飲料の製造方法であるから、上記(1)アと同様の相当関係があるといえるので、本件特許発明6と甲1製法発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「カフェイン及びカリウムを含有する炭酸飲料であって、 当該炭酸飲料100ml当たり、 カフェインを10mg~40mg、 ナトリウムを10mg以下、及び カリウムとナトリウム含量の合計が16mg以下、 である前記炭酸飲料の製造方法。」 そして、両者は、以下の点で相違する。 <相違点2> 本件特許発明6は「カリウムを6~30mg」と特定するのに対し、甲1製法発明はカリウムが「10mg未満」である点。 イ 判断 上記相違点2は、上記相違点1と実質的に同じ内容であるから、上記(1)イと同様に判断される。 したがって、上記相違点2は実質的な相違点であり、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲1製法発明において相違点2に係る本件特許発明6の発明特定事項を採用する動機付けがあるとはいえない。 よって、本件特許発明6は、甲1製法発明ではなく、甲1製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 請求人の主張について 請求人は、審判請求書の「[ハ]無効理由の詳細II.無効理由2(進歩性)について(II-5)ii)本件発明6と甲1発明との対比」において、本件発明1~5(合議体注:「本件発明1、2、4及び5」の誤記と解される。)のいずれかに記載の炭酸飲料の製造方法は、少なくともその炭酸飲料そのものが容易に想到し得たのと同様の理由により、当業者であれば容易に想到し得たものと考えられる、と主張する。 しかし、本件特許発明1、2、4及び5の炭酸飲料が、甲1飲料発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項から容易に想到しえたものでないことは、上記(1)及び(2)で検討したとおりであるから、上記請求人の主張は採用することができない。 (4)無効理由1及び2についてのむすび したがって、本件特許発明1、2、4ないし6は、特許法第29条第1項第3号に該当するものとはいえず、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 よって、無効理由1及び2によっては、本件特許の請求項1、2、4ないし6に係る特許を無効とすることはできない。 2 無効理由3(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)特許請求の範囲の記載 特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 (3)本件特許発明が解決しようとする課題 本件特許の明細書の【0004】及び請求項6の記載からみて、本件特許発明1、2、4及び5が解決しようとする課題は、炭酸感が改善された、カフェインを含有する炭酸飲料を提供することであり、本件特許発明6が解決しようとする課題は、炭酸感が改善された、カフェインを含有する炭酸飲料の製造方法を提供することであると認められる(以下、これらをまとめて「本発明の課題」という。)。 (4)サポート要件の判断 本件特許の明細書の【0010】にはカフェインの供給源及び含量について記載があり、【0011】にはカリウムの供給源及び含量について記載があり、【0012】にはナトリウムの供給源及び含量並びにカリウムとナトリウムの合計含量について記載があり、【0013】にはカラメル色素に関する記載があり、【0018】~【0024】には炭酸飲料の製造方法についての記載があり、【0025】~【0046】には、カラメル色素及び/又はナトリウムの存在下または不存在下で、カフェインとカリウムの含量を調整した際の炭酸感の改善効果を確認した試験例1ないし4が記載されており、これらの記載を総合すると、本件特許発明1、2、4ないし6に対応する記載があるといえる。 そして、【0030】の【表2】には、カフェインが10mg~40mg及びカリウムが6mg~50mg存在する場合、官能スコアが概ね2.5以上となり炭酸感が改善されることが示され、【0034】の【表3】には、カラメル色素の存在下において、カフェインが10mg~40mg及びカリウムが4mg~50mg存在する場合、官能スコアが概ね2.5以上となり炭酸感が改善されることが示され、【0038】の【表4】には、ナトリウムの存在下において、ナトリウムの含量が高まるにつれて炭酸感が低下する傾向があるものの、カリウムとナトリウム含量の合計が40m以下で、概ね炭酸感の改善効果が得られることが示され、【0043】の【表5】には、カラメル色素及びナトリウムの存在下において、ナトリウムの含量が高まるにつれて炭酸感が低下する傾向があるものの、カリウムとナトリウム含量の合計が40m以下で、概ね炭酸感の改善効果が得られることが示されている。 そうすると、カフェインが10mg~40mg及びカリウムが6mg~50mg存在し、カリウムとナトリウム含量の合計が40m以下である炭酸飲料であれば、本発明の課題を解決できると当業者は認識する。 そして、本件特許発明1及び6は、上記事項を全て満たし、さらに限定するものであるから、発明の詳細な説明の記載から当業者が本発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 したがって、本件特許の明細書の上記記載並びに出願時の技術常識を踏まえれば、当業者であれば本件特許発明1及び6の構成を満たせば本発明の課題が解決できるものと理解する。本件特許発明1の発明特定事項のすべてを有し、さらに限定するものである本件特許発明2、4及び5についても同様である。 よって、本件特許発明1、2、4ないし6に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を充足する。 (5)請求人の主張について ア 審判請求書における主張 請求人は審判請求書において、上記第4 1(3)ア及びイの主張をしている。そこで、検討する (ア)上記第4 1(3)ア(ア)の主張について 本件特許の明細書の【0038】の【表4】の記載から、カリウムの含量が異なる3種類の試験サンプル全てにおいて、ナトリウム含量が高まるにつれて、炭酸感が低下することが見て取れる。そして、同【0039】には、ナトリウム無添加に対して、炭酸感の低下がほぼ50%未満に抑えられるカリウムとナトリウムの組み合わせを、炭酸感の改善効果が奏されていると判断したことが記載されている。 請求人が上記第4 1(3)ア(ア)において指摘するカリウム含量が6mgで、ナトリウム含量が10mgの試験サンプルの官能評価は1.7であり、カリウム含量が6mgでナトリウム含量が0mgの試験サンプルの官能評価は2.6であるから、炭酸感の低下が50%未満に抑えられており、上記の判断基準に従えば、炭酸感が改善されているといえる。 仮に、上記の判断基準に従わないとしても、カリウム含量が6mgで、ナトリウム含量が10mgの試験サンプルの官能評価は、平均点としては1.7であるから、カフェインとカリウムを含まない試験サンプルの官能評価である1.0と比べて炭酸感が改善していないとはいえない。 よって、請求人の主張ア(ア)は上記(4)の判断を左右するものではない。 (イ)上記第4 1(3)ア(イ)の主張について 当業者であれば、本件特許発明1、2、4ないし6が、本発明の課題を解決できると理解することは上記(4)において検討したとおりである。 そして、官能評価が相対的に低い試験サンプルが本件特許発明の範囲に含まれているとしても、当該試験サンプルが、本発明の課題を解決できるものであれば、本件特許発明はサポート要件を充足するといえ、上記(ア)で検討したとおり、表4に記載された官能評価が1.7の試験サンプルは、炭酸感が改善しているといえるから、本件特許発明はサポート要件を充足するといえる。 また、特許請求の範囲に何を記載するかは特許権者が決めるべきことであり、本発明の課題を解決できる炭酸飲料を全て余すところなく特許請求の範囲に記載することが特許権者に求められているわけではないので、最も好ましいと考えられるサンプルが本発明の範囲に含まれていないとしても、このことをもって、本件特許発明がサポート要件を充足しないとすることはできない。 よって、請求人の主張ア(イ)は、上記(4)の結論に影響するものではない。 (ウ)上記第4 1(3)ア(ウ)の主張について 甲1飲料発明の炭酸飲料は、カリウム含量が10mg未満であり、カリウム含量を特定できないこと並びにナトリウム含量が3mgで、表4記載の数値とは異なることから、甲1飲料発明の炭酸飲料が、どの程度の炭酸感改善効果を有するかを表4に記載された試験サンプルから把握することができない。同様に、甲2に記載された炭酸飲料は、カフェイン含量が10.71mg/100mlであり、表4に記載された試験サンプルのカフェイン含量(20mg)と大きく異なるので、甲2に記載された炭酸飲料が、どの程度の炭酸感改善効果を有するかを表4に記載された試験サンプルから把握することができない。 よって、本件特許発明1の炭酸飲料の炭酸感改善効果が、甲1飲料発明及び甲2に記載された炭酸飲料と同程度のものであるとする、請求人の上記主張は根拠がなく、上記(4)の結論に影響するものではない。 仮に、本件特許発明1の炭酸飲料の炭酸感改善効果が、甲1飲料発明及び甲2に記載された炭酸飲料と同程度のものであるとしても、当業者であれば、本件特許発明1、2、4ないし6が、本発明の課題を解決できると理解することは上記(4)において検討したとおりであり、効果が同程度のものであることをもって、本件特許発明がサポート要件を充足しないとすることはできない。 よって、請求人の主張ア(ウ)は上記(4)の結論を左右するものではない。 また、請求人は、口頭審理陳述要領書(9頁)において、本件特許発明1の炭酸感改善効果が、甲1や甲2に記載された炭酸飲料と同程度のものではないことを被請求人は答弁書において一切説明していないこと、並びに、本件特許発明1の炭酸飲料は、乙5に記載された炭酸飲料とカリウム量の差がわずか1mgであるから、乙5の炭酸飲料と比して炭酸感が改善するとは考えられないこと、を主張しているが、甲1や甲2、乙5の炭酸飲料がどの程度の炭酸感改善効果を有するかは不明であるし、仮に、本件特許発明1の炭酸飲料と同程度の炭酸感改善効果を有するとしても、本件特許発明1、2、4ないし6が、本発明の課題を解決できることには変わりがないので、上記(4)の結論を左右するものではない。請求人の上申書(9-10頁)における主張についても、同様に上記(4)の結論を左右するものではない。 (エ)上記第4 1(3)イの主張について 本件明細書段落0030の表2において、カリウム含量が15mg以上50mg以下の場合には、官能評価が3.2以上となっており、カフェイン含量が40mg/100mlかつカリウム含量が6mg以上50mg以下の場合には、官能評価が4~4.5となっており、いずれも炭酸感が改善されているといえるから、カリウム含量の変化が官能スコアに影響しないとしても、本発明の課題は解決できると当業者は認識する。 よって、請求人の主張イは、上記(4)の結論に影響するものではない。 (6)無効理由3についてのむすび 上記(4)及び(5)に記載したとおり、本件特許の請求項1、2、4ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第123条第1項第4号に該当せず、無効理由3によっては、無効とすることはできない。 第6 結語 以上のとおりであるから、本件特許発明1、2及び4ないし6に関しては、無効理由1ないし3はいずれも理由がなく、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明1、2及び4ないし6を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とすべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-800105

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    共通の審決分類: 113・A23L、121・A23L、537・A23L
  • 2017-800013無効審判 / 2018-04-24 / 請求成立(無効)豆乳発酵飲料及びその製造方法
    共通の審決分類: 113・A23L、121・A23L、537・A23L
  • 2015-800005無効審判 / 2016-12-07 / 請求不成立乾麺およびその製造方法
    共通の審決分類: 113・A23L、121・A23L、537・A23L

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