特許拒絶査定不服審判
2015-022136
視覚的なレイヤリングシステム及びその方法
- 審判番号
- 2015-022136
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-522803外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年12月15日
- 審決日
- 2017年03月14日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ヒューレット-パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
- 【請求人代理人】奥山 尚一
- 【請求人代理人】有原 幸一
- 【請求人代理人】松島 鉄男
- 【請求人代理人】河村 英文
- 分類
- P18 .121-WY (G09G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-522803「視覚的なレイヤリングシステム及びその方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月 7日国際公開、WO2013/019190、平成26年10月16日国内公表、特表2014-527643、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成23年7月29日を国際出願日とする出願であって、平成27年1月19日付けの拒絶理由通知に対して、平成27年4月6日付けで手続補正がなされたが、平成27年9月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年12月15日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。
第2 平成27年12月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1 補正の内容
(1)請求項1について
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1、4に、
「【請求項1】
作業空間内に位置する物理的なオブジェクトを識別するためのカメラと、
該作業空間内に第1のディジタル情報を表示するためのディスプレイと、
前記物理的なオブジェクトを前記作業空間内の第1のレイヤとして扱うため及び前記第1のディジタル情報を該作業空間内の第2のレイヤとして扱うためのレイヤリングモジュールと、
前記第1のディジタル情報の表示を変更することにより前記第1のレイヤ及び前記第2のレイヤの視覚的な順序を変更するためのコントローラと
を備えているシステム。
【請求項4】
前記第1のレイヤ及び前記第2のレイヤの視覚的な順序を変更するための要求を指示するユーザ入力を受信するためのユーザ入力モジュールを更に備えており、
該ユーザ入力に応じて、前記コントローラが、前記第1のレイヤ及び前記第2のレイヤの視覚的な順序を変更するよう前記第1のディジタル情報の表示を変更する、
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載のシステム。」
とあったところを、
「【請求項1】
作業空間内に位置する物理的なオブジェクトを識別するためのカメラと、
該作業空間内に第1のディジタル情報を表示するためのディスプレイと、
前記物理的なオブジェクトを前記作業空間内の第1のレイヤとして扱うため及び前記第1のディジタル情報を該作業空間内の第2のレイヤとして扱うためのレイヤリングモジュールと、
前記第1のディジタル情報の表示を変更することにより前記第1のレイヤ及び前記第2のレイヤの視覚的な順序を変更するためのコントローラと、
前記第1のレイヤ及び前記第2のレイヤの視覚的な順序を変更するための要求を指示するユーザ入力を受信するためのユーザ入力モジュールと
を備え、
該ユーザ入力に応じて、該ユーザ入力モジュールで前記物理的なオブジェクトに触れた場合には前記物理的なオブジェクトをフォアグラウンドレイヤにするように、又は、該ユーザ入力モジュールで前記作業空間の表面に触れた場合には前記第1のディジタル情報を前記フォアグラウンドレイヤにするように、前記コントローラが、前記第1のレイヤ及び前記第2のレイヤの視覚的な順序を変更するよう前記第1のディジタル情報の表示を変更する、システム。」
とする補正(以下、「補正事項1」という。)を含むものである(下線は、補正箇所を示す。)。
(2)請求項4について
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項10,14に、
「【請求項10】
作業空間内に位置する物理的なオブジェクトを識別し、
該物理的なオブジェクトを第1のレイヤに関連付けし、
第1のディジタル情報を第2のレイヤとして前記作業空間内に投影し、
前記第1のレイヤと前記第2のレイヤとの間の視覚的な隣接性を変更するよう該第1のディジタル情報の表示を変更する、
という各ステップからなる、プロジェクタカメラシステムのための方法。
【請求項14】
前記第1のディジタル情報の表示を変更する前記ステップが、
ユーザ入力を受信し、
該ユーザ入力に応じて前記第1のレイヤ及び前記第2のレイヤの視覚的な隣接性を変更するよう前記第1のディジタル情報の表示を変更する、
という各ステップからなる、請求項10ないし請求項13の何れか一項に記載の方法。」
とあったところを、
「【請求項4】
作業空間内に位置する物理的なオブジェクトを識別し、
該物理的なオブジェクトを第1のレイヤに関連付けし、
第1のディジタル情報を第2のレイヤとして前記作業空間内に投影し、
前記第1のレイヤと前記第2のレイヤとの間の視覚的な隣接性を変更するよう該第1のディジタル情報の表示を変更し、
前記第1のディジタル情報の表示を変更する前記ステップが、
ユーザ入力を受信し、
該ユーザ入力に応じて、ユーザ入力モジュールが前記物理的なオブジェクトに触れた場合には前記物理的なオブジェクトをフォアグラウンドレイヤにするように、又は、該ユーザ入力モジュールで前記作業空間の表面に触れた場合には前記第1のディジタル情報を前記フォアグラウンドレイヤにするように、前記第1のレイヤ及び前記第2のレイヤの視覚的な隣接性を変更するよう前記第1のディジタル情報の表示を変更する、
という各ステップからなる、プロジェクタカメラシステムのための方法。」
とする補正(以下、「補正事項2」という。)を含むものである(下線は、補正箇所を示す。)。
2 補正の適否
(1)補正事項1について
a 本件補正前の請求項1を引用する請求項4を、独立形式で記載すれば、次の通りである。
「作業空間内に位置する物理的なオブジェクトを識別するためのカメラと、
該作業空間内に第1のディジタル情報を表示するためのディスプレイと、
前記物理的なオブジェクトを前記作業空間内の第1のレイヤとして扱うため及び前記第1のディジタル情報を該作業空間内の第2のレイヤとして扱うためのレイヤリングモジュールと、
前記第1のディジタル情報の表示を変更することにより前記第1のレイヤ及び前記第2のレイヤの視覚的な順序を変更するためのコントローラと、
前記第1のレイヤ及び前記第2のレイヤの視覚的な順序を変更するための要求を指示するユーザ入力を受信するためのユーザ入力モジュールを更に備えており、
該ユーザ入力に応じて、前記コントローラが、前記第1のレイヤ及び前記第2のレイヤの視覚的な順序を変更するよう前記第1のディジタル情報の表示を変更する、システム。」
b 本件補正の補正事項1は、
本件補正前の請求項4に記載された発明を特定するために必要な事項である「該ユーザ入力に応じて、前記コントローラが、前記第1のレイヤ及び前記第2のレイヤの視覚的な順序を変更するよう前記第1のディジタル情報の表示を変更する」ことについて、「該ユーザ入力に応じて、該ユーザ入力モジュールで前記物理的なオブジェクトに触れた場合には前記物理的なオブジェクトをフォアグラウンドレイヤにするように、又は、該ユーザ入力モジュールで前記作業空間の表面に触れた場合には前記第1のディジタル情報を前記フォアグラウンドレイヤにするように、前記コントローラが、前記第1のレイヤ及び前記第2のレイヤの視覚的な順序を変更するよう前記第1のディジタル情報の表示を変更する」と限定するものであって、補正前の請求項4に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項1に係る発明(以下「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)について以下に検討する。
ア 引用文献の記載事項
(ア)原査定の拒絶の理由で引用され、本願の国際出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、国際公開第2010/137496号(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。
(a)「[0001] 本発明は、展示対象物を含む領域に任意の画像や照射光を投影する情報提示装置に関する。」
(b)「[0030] [第1実施形態]
本発明は、例えば、図1に示すように構成された第1実施形態として示す情報提示装置に適用される。この情報提示装置は、機能的には、プロジェクタ等の画像投影部1と、パーソナルコンピュータ等の画像制御装置2とで構成されている。そして、情報提示装置は、展示対象物及び展示対象物以外の領域に対して画像を投影する。ここで、展示対象物とは、任意の凹凸形状を有する3次元形状の商品及び商品模型、プレートなど、展示されうるあらゆる物体を指す。」
(c)「[0032] 画像制御装置2は、情報提供画像データ生成部11、展示対象画像データ生成部12、展示対象領域設定部14、投影画像データ生成部13、投影画像描画部15を有する。
[0033] 情報提供画像データ生成部11は、展示対象物が存在する領域の少なくとも一部を含む情報提供領域に対して、任意の内容の情報提供画像を投影するための情報提供画像データを生成する。
[0034] 展示対象画像データ生成部12は、展示対象物に展示対象画像を投影するための展示対象画像データを生成する。」
(d)「[0039] この情報提示装置において、画像投影部1は、プロジェクタである。画像投影部1は、図3に示すように、展示対象物111A,111B(以下、総称して「展示対象物111」と呼ぶ。)が存在する領域の少なくとも一部を含む範囲が投影範囲となる位置に設置される。なお、図3において、3は、ユーザが操作するマウス等の操作部である。
[0040] このような環境において、画像投影部1による投影範囲が「情報提供領域」となり、画像投影部1により、当該情報提供領域に画像を投影する。具体的には、図4に示すように、画像投影部1の投影範囲全体に、図中斜線で示した単色画像を情報提供画像1bとして投影し、展示対象物111A,111Bには格子状の展示対象画像1aを投影できる。このような画像の投影を行うために、情報提供画像データ生成部11及び展示対象画像データ生成部12は、既存の画像作成ツールで情報提供画像及び展示対象画像を作成しても良く、予め作成された画像を格納しておき、画像投影時に読み出しても良い。」
(e)「[0046] 以上詳細に説明したように、本発明の第1実施形態として示す情報提示装置によれば、情報提供領域のうち、展示対象物111に対しては展示対象画像1aを投影し、展示対象物111以外の情報提供領域には情報提供画像1bを投影できる。したがって、この情報提示装置によれば、展示対象画像1aと情報提供画像1bとを一台の画像投影部1から同時に投影することが可能となり、展示対象物111と当該展示対象物111を展示する筐体との双方に対して、異なる画像を投影できる。」
(f)「[0048] 更にまた、この情報提示装置によれば、展示対象画像1aを黒い画像として生成することにより、展示対象物111上には画像を投影せず、その他の領域(情報提供領域)にだけ情報提供画像1bを投影するような効果を発揮させることができる。
[0049] 更にまた、この情報提示装置によれば、展示対象画像1aを、情報提供画像1bと同様の画像で生成することにより、展示対象物111が情報提供画像1bに溶け込んで見えなくなるような効果(カメレオン効果)を発揮させることができる。」
(g)「[0063] [第3実施形態]
つぎに、第3実施形態として示す情報提示装置について説明する。なお、上述の実施形態と同様の部分については同一符号を付することによりその詳細な説明を省略する。
[0064] 第3実施形態として示す情報提示装置は、図10に示すように、撮像部4を更に備える。また、情報提示装置は、画像制御装置2に、撮像画像データ生成部21、撮像画像データ格納部22、撮像画像データ補正部23、展示対象領域トリミング部24を備える。そして、この情報提示装置は、展示対象領域設定部14により、展示対象領域トリミング部24により指定された領域を展示対象領域として設定する。
[0065] 撮像部4は、例えば図11に示すように、情報提供領域を撮像する位置に設けられている。撮像部4は、情報面101及び展示面102、展示対象物111を含む撮像画像信号を撮像画像データ生成部21に出力する。」
a 引用文献1記載の[第3実施形態]に着目すると、段落[0063]及び[0064]に「[0063][第3実施形態] つぎに、第3実施形態として示す情報提示装置について説明する。なお、上述の実施形態と同様の部分については同一符号を付することによりその詳細な説明を省略する。[0064] 第3実施形態として示す情報提示装置は、図10に示すように、撮像部4を更に備える。」と記載されていることから、撮像部4以外の部分については、第3実施形態と同様の形態部分を有する第1実施形態についても摘記する。
b 段落[0030]、[0032]及び「0064」の記載から、引用文献1には、「撮像部4と、画像投影部1と、情報提供画像データ生成部11と、展示対象画像データ生成部12とを備える情報提示装置」が記載されている。
c 段落[0039]及び[0040]の記載から、「展示対象物111」は「情報提供領域」に位置しているといえ、段落[0065]の記載から、引用文献1には、「情報提供領域を撮像する位置に設けられ、情報提供領域に位置する展示対象物111を含む撮像画像信号を撮像画像データ生成部21に出力する撮像部4」が記載されているといえる。
d 段落[0046]の記載から、引用文献1には、「情報提供領域のうち、展示対象物111に対しては展示対象画像1aを投影し、展示対象物111以外の情報提供領域には情報提供画像1bを投影する画像投影部1」が記載されている。
e 段落[0033]及び[0034]の記載から、引用文献1には、「展示対象物が存在する領域の少なくとも一部を含む情報提供領域に対して、任意の内容の情報提供画像を投影するための情報提供画像データを生成する情報提供画像データ生成部11と、展示対象物に展示対象画像を投影するための展示対象画像データを生成する展示対象画像データ生成部12」が記載されている。
f 段落[0048]及び[0049]の記載から、引用文献1には、「展示対象画像1aを黒い画像として生成することにより、展示対象物111上には画像を投影せず、その他の領域(情報提供領域)にだけ情報提供画像1bを投影するような効果を発揮させることができ、展示対象画像1aを、情報提供画像1bと同様の画像で生成することにより、展示対象物111が情報提供画像1bに溶け込んで見えなくなるような効果(カメレオン効果)を発揮させることができる」ことが記載されている。
上記a~fより、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「情報提供領域を撮像する位置に設けられ、情報提供領域に位置する展示対象物111を含む撮像画像信号を撮像画像データ生成部21に出力する撮像部4と、
情報提供領域のうち、展示対象物111に対しては展示対象画像1aを投影し、展示対象物111以外の情報提供領域には情報提供画像1bを投影する画像投影部1と、
展示対象物が存在する領域の少なくとも一部を含む情報提供領域に対して、任意の内容の情報提供画像を投影するための情報提供画像データを生成する情報提供画像データ生成部11と、
展示対象物に展示対象画像を投影するための展示対象画像データを生成する展示対象画像データ生成部12とを備え、
展示対象画像1aを黒い画像として生成することにより、展示対象物111上には画像を投影せず、その他の領域(情報提供領域)にだけ情報提供画像1bを投影するような効果を発揮させることができ、
展示対象画像1aを、情報提供画像1bと同様の画像で生成することにより、展示対象物111が情報提供画像1bに溶け込んで見えなくなるような効果(カメレオン効果)を発揮させることができる情報提示装置。」
(イ)原査定の拒絶の理由で引用され、本願の国際出願日前に頒布された刊行物である、特開2006-189712号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。
「【0015】
情報提示部2は、画像記憶部3と、画像処理部4と、画像送信部5と、表示・処理制御部7と、データ変換部8と、DB検索部9とを備える。画像記憶部3は、カメラ1から入力される作業対象物26を含む作業エリアを撮像した画像データを記憶する。画像処理部4は、作業者によりレーザポインタ等の指示具28を用いて指定された投影対象物27を識別する。すなわち、画像記憶部3に記憶された画像データから指定された投影対象物27の座標を画像処理により検出する。また、画像送信部5は、画像記憶部3に記憶された画像データを通信ネットワークNWを介して情報設定装置200に向け送信する。」
(ウ)原査定の拒絶の理由で引用され、本願の国際出願日前に頒布された刊行物である、特開2003-131319号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。
「【0051】上記のように構成された光送受装置100においては、図9に示すように、スクリーンSr上にプロジェクタ120により投影画像Dを形成する場合において、カメラ110で撮影した撮影画像から投影画像Dの投影範囲と重なる物体Ob(例えば説明者など)を認識し、この物体Obが存在する領域だけ光を投射しないようにすることにより、例えば物体Obが説明者である場合、説明者が眩しく感ずるのを防止できる。また、この場合において、物体Obが移動すると、その移動は上記撮影画像に基づいて認識され、その認識情報に応じて投射画像生成手段144により光を投射しない範囲を修正した画像に逐次更新されるので、物体Obが移動しても投影画像D内の物体Obと重なる範囲のみが常に画像投影されないように構成することができる。」
イ 対比
本願補正発明1と引用発明を対比する。
(ア)引用発明の「情報提供領域」、「展示対象物111」、「撮像部4」、「画像投影部1」、「情報提示装置」は、それぞれ、本願補正発明1の「作業空間内」、「物理的なオブジェクト」、「カメラ」、「ディスプレイ」、「システム」に相当し、引用発明の「展示対象画像1a」及び「情報提供画像1b」は、本願補正発明1の「第1のディジタル情報」に相当する。
(イ)引用発明の「情報提供領域を撮像する位置に設けられ、情報提供領域に位置する展示対象物111を含む撮像画像信号を撮像画像データ生成部21に出力する撮像部4」は、本願補正発明1の「作業空間内に位置する物理的なオブジェクトを識別するためのカメラ」に相当する。
(ウ)引用発明の「情報提供領域のうち、展示対象物111に対しては展示対象画像1aを投影し、展示対象物111以外の情報提供領域には情報提供画像1bを投影する画像投影部1」は、本願補正発明1の「該作業空間内に第1のディジタル情報を表示するためのディスプレイ」に相当する。
(エ)引用発明の「展示対象画像1aを黒い画像として生成することにより、展示対象物111上には画像を投影せず、その他の領域(情報提供領域)にだけ情報提供画像1bを投影するような効果」は、本願補正発明1の「前記物理的なオブジェクトをフォアグラウンドレイヤにするように」「視覚的な順序を変更するよう前記第1のディジタル情報の表示を変更する」ことに相当し、引用発明の「展示対象画像1aを、情報提供画像1bと同様の画像で生成することにより、展示対象物111が情報提供画像1bに溶け込んで見えなくなるような効果(カメレオン効果)」は、本願補正発明1の「前記第1のディジタル情報を前記フォアグラウンドレイヤにするように」「視覚的な順序を変更するよう前記第1のディジタル情報の表示を変更する」ことに相当する。
そうすると、引用発明の「情報提供画像データを生成する情報提供画像データ生成部11」及び「展示対象画像データを生成する展示対象画像データ生成部12」は、本願発明の「前記第1のディジタル情報の表示を変更することにより」「視覚的な順序を変更するためのコントローラ」に相当するといえる。
すると、本願補正発明と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「作業空間内に位置する物理的なオブジェクトを識別するためのカメラと、
該作業空間内に第1のディジタル情報を表示するためのディスプレイと、
前記第1のディジタル情報の表示を変更することにより視覚的な順序を変更するためのコントローラと
を備え、
前記物理的なオブジェクトをフォアグラウンドレイヤにするように、又は、前記第1のディジタル情報を前記フォアグラウンドレイヤにするように、前記コントローラが、視覚的な順序を変更するよう前記第1のディジタル情報の表示を変更する、システム。」
(相違点1)
本願補正発明1は、「前記物理的なオブジェクトを前記作業空間内の第1のレイヤとして扱うため及び前記第1のディジタル情報を該作業空間内の第2のレイヤとして扱うためのレイヤリングモジュール」を備えるのに対して、引用発明は、「展示対象物111」を第1のレイヤとし、「展示対象画像1a」及び「情報提供画像1b」を第2のレイヤとして扱うためのモジュールの特定がない点。
(相違点2)
本願補正発明1は、「前記第1のレイヤ及び前記第2のレイヤの」視覚的な順序を変更するコントローラを備えるとともに、「前記第1のレイヤ及び前記第2のレイヤの視覚的な順序を変更するための要求を指示するユーザ入力を受信するためのユーザ入力モジュール」を備えるのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点3)
「視覚的な順序を変更するよう前記第1のディジタル情報の表示を変更する」ための起因が、本願補正発明1は、「ユーザ入力に応じて」、「該ユーザ入力モジュールで前記物理的なオブジェクトに触れた場合」又は「該ユーザ入力モジュールで前記作業空間の表面に触れた場合」であるが、引用発明は、そのような特定がない点。
ウ 判断
(ア) 上記相違点3について検討する。
引用文献1には、ユーザが操作するマウス等の操作部3が記載されているが(上記「ア(ア)(d)段落[0039]」)、操作部3の具体的な操作と、「展示対象画像1aを黒い画像として生成すること」(本願補正発明1の「前記物理的なオブジェクトをフォアグラウンドレイヤにするように」「前記第1のディジタル情報の表示を変更する」ことに相当)と「展示対象画像1aを、情報提供画像1bと同様の画像で生成すること」(本願補正発明1の「前記第1のディジタル情報を前記フォアグラウンドレイヤにするように」「前記第1のディジタル情報の表示を変更する」ことに相当)との関係は記載されていない。
また、引用文献2には、画像処理部4が、作業者によりレーザポインタ等の指示具28を用いて指定された投影対象物27を識別することは記載されているが(上記「ア(イ)」)、「該ユーザ入力モジュールで前記物理的なオブジェクトに触れた場合」又は「該ユーザ入力モジュールで前記作業空間の表面に触れた場合」に、「視覚的な順序を変更する」ことは記載されていない。
そして、引用文献3には、「該ユーザ入力モジュールで前記物理的なオブジェクトに触れた場合」又は「該ユーザ入力モジュールで前記作業空間の表面に触れた場合」に、「視覚的な順序を変更する」ことは記載されていない。
してみると、引用発明において、「該ユーザ入力モジュールで前記物理的なオブジェクトに触れた場合」又は「該ユーザ入力モジュールで前記作業空間の表面に触れた場合」に、「視覚的な順序を変更するよう前記第1のディジタル情報の表示を変更する」ことは、当業者といえども容易であるということはできない。
したがって、上記相違点3に係る本願補正発明1の構成は、引用発明、引用文献1ないし3に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
(イ)そして、本願補正発明1は、上記相違点1及び2について検討するまでもなく、引用発明、引用文献1ないし3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、本願補正発明は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
(2)補正事項2について
本件補正の補正事項2についても、補正事項1と同様に、本件補正前の請求項10を引用する請求項14に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものである。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そして、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項4に係る発明(以下「本願補正発明4」という。)の「該ユーザ入力に応じて、ユーザ入力モジュールが前記物理的なオブジェクトに触れた場合には前記物理的なオブジェクトをフォアグラウンドレイヤにするように、又は、該ユーザ入力モジュールで前記作業空間の表面に触れた場合には前記第1のディジタル情報を前記フォアグラウンドレイヤにするように、前記第1のレイヤ及び前記第2のレイヤの視覚的な隣接性を変更するよう前記第1のディジタル情報の表示を変更する」点は、上記相違点3(上記「(1) イ」)と同様な相違点であるから、本願補正発明4は本願補正発明1と同様に、引用発明及び引用文献1ないし3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、本願補正発明4は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
3 むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。
第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし4に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び4に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下、「本願補正発明1」ないし「本願補正発明4」という。)。
そして、本願補正発明1は、上記「第2 2(1)」に記載のとおり、本願補正発明4は、上記「第2 2(2)」に記載のとおり、引用発明及び引用文献1ないし3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
また、本願補正発明2及び3は、本願補正発明1をさらに限定したものであるので、同様に、引用発明及び引用文献1ないし3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
したがって、本願については、原査定の拒絶の理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-022136