特許拒絶査定不服審判
2015-020148
シート搬送装置、画像形成装置及び画像読取装置
- 審判番号
- 2015-020148
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-097765外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年11月10日
- 審決日
- 2017年05月02日
- 公報発行日
- 2017年06月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】コニカミノルタ株式会社
- 【請求人代理人】松川 克明
- 分類
- P18 .121-WY (B65H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第5項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011- 97765「シート搬送装置、画像形成装置及び画像読取装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月22日出願公開、特開2012-229080、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成23年4月26日の出願であって,平成27年1月26日付けで拒絶理由通知がされ,同年3月12日付けで手続補正がされ,同年8月7日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年11月10日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成27年8月7日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1.本願請求項1-2,4-5に係る発明は,以下の引用文献1及び2に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。(請求項3については,審査を行っていない旨の記載がある。)
引用文献等一覧
1:特開2009-83948号公報
2:特開平1-281227号公報
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は,以下に検討するとおり,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
補正事項1
平成27年3月12日付け手続補正書における請求項1に「(給紙ローラにおけるシート搬送速度の減速割合を変更する)にあたり,シートが前記搬送ローラに到達してから所定時間が経過するまでは給紙ローラによるシート搬送速度を変更せず,上記の所定時間の経過後に給紙ローラによるシート搬送速度を減速させるように制御する」という事項(以下,「補正事項」という。)を追加する。
補正事項2
平成27年3月12日付け手続補正書における請求項3を削除する。
補正事項3
平成27年3月12日付け手続補正書における請求項4及び5の「請求項1~請求項3」を,「請求項1又は請求項2」と補正するとともに,項番をそれぞれ一つずつ繰り上げて,「請求項3」,「請求項4」とする。
補正事項4
発明の詳細な説明の段落【0014】に「(給紙ローラにおけるシート搬送速度の減速割合を変更する)にあたり,シートが前記搬送ローラに到達してから所定時間が経過するまでは給紙ローラによるシート搬送速度を変更せず,上記の所定時間の経過後に給紙ローラによるシート搬送速度を減速させる」という事項を追加する。
補正事項1は,制御手段に関して具体的に限定したものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また,上記補正事項は,当初明細書の段落【0044】,【0050】,【図4】及び【図5】に,実質的に記載されているから,当該補正は新規事項を追加するものではない。
補正事項2は,請求項3を削除するものであるから,特許法第36条第5項に規定する請求項の削除を目的とするものであり,新規事項を追加するものではない。
補正事項3は,請求項3を削除したことにともなって,引用する請求項を整理し,項番を整えたものであるから,明りようでない記載の釈明を目的とするものであり,新規事項を追加するものではない。
補正事項4は,請求項1を補正に合わせて,対応する発明の詳細な説明の記載を,同様に補正したものであるから,明りようでない記載の釈明を目的とするものであり,新規事項を追加するものではない。
そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1-4に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は,平成27年11月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
シートを給紙させて搬送する給紙ローラと,給紙ローラよりシートの搬送方向下流側に設けられてシートを搬送する搬送ローラとが設けられ,給紙ローラによるシート搬送速度が搬送ローラによるシート搬送速度よりも速く,給紙ローラと搬送ローラとの間で搬送されるシートにたわみが形成されるシート搬送装置において,上記の給紙ローラと搬送ローラとの間におけるシートのたわみ量を検出するたわみ量検出手段と,上記の給紙ローラの回転速度を制御する制御手段を設け,この制御手段により,シートの後端が給紙ローラを通過する前に,給紙ローラにおけるシート搬送速度を減速させて,給紙ローラと搬送ローラとの間におけるシートのたわみが解消される時点における,給紙ローラによるシート搬送速度と搬送ローラによるシート搬送速度との速度差を所定の速度差以下にするように,上記のたわみ量検出手段の検出結果に基づいて,上記の給紙ローラにおけるシート搬送速度の減速割合を変更するにあたり,シートが前記搬送ローラに到達してから所定時間が経過するまでは給紙ローラによるシート搬送速度を変更せず,上記の所定時間の経過後に給紙ローラによるシート搬送速度を減速させるように制御することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート搬送装置において,シートのたわみが解消される時点における,給紙ローラによるシート搬送速度と搬送ローラによるシート搬送速度との速度差が100mm/s以下であることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシート搬送装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2の何れか1項に記載のシート搬送装置を備えていることを特徴とする画像読取装置。」
第5 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
本発明は,複写機,プリンタ等の画像形成装置等において利用される給紙機構,給紙機構の制御装置,給紙機構の制御方法,及びそれを用いた画像形成装置等に関する。」
イ 「【0041】
又,図1は,本発明の実施の形態1の給紙機構10の機能を説明するための機能ブロック図である。ただし図7と同一又は相当部には,同一符号を付した。図1において,制御部11は,検知スイッチ133からの検知信号を受けて,第1のローラ駆動部12及び第2のローラ駆動部13を動作させる制御命令を発行させる手段であり,第1のローラ駆動部12は,給紙ローラ130を回転駆動させる手段であり,制御部11からの制御命令に応じた回転速度で給紙ローラ130を駆動する。又,第2のローラ駆動部13は,搬送ローラ129を回転駆動させる手段であり,制御部11からの制御命令に応じた回転速度で搬送ローラ129を駆動する。第1のローラ駆動部12及び第2のローラ駆動部13は例えばステッピングモータにより実現される。
【0042】
なお,上記の構成において,制御部11は本発明の制御部及び制御装置に相当し,第1のローラ駆動部12,給紙ローラ130及びピックローラ123は,本発明の給紙部に相当し,第2のローラ駆動部13,搬送ローラ129は,本発明の搬送部に相当する。」
ウ 「【0044】
はじめに,初期状態として,制御部11は,第1のローラ駆動部12及び第2のローラ駆動部13を制御して給紙ローラ130を回転速度VA,搬送ローラ129を回転速度VBで順次駆動させる。図2に示すように,給紙ローラ130を時刻t0に,搬送ローラ129を時刻t1に,それぞれ駆動開始する。
【0045】
給紙ローラ130の駆動により,トレイ122から搬出された用紙121は,搬送路を形成する搬送ガイド132に沿って搬送ローラ129へ送り込まれる。用紙121の先端は,搬送路上で搬送ローラ129の手前に設けられた検知スイッチ133と先端が接触し,検知スイッチ133は制御部11へ検知信号を出力する。検知信号を受けた制御部11は,その受信時間から用紙121の先端が搬送ローラ129のニップに達する時刻t2を算出し,時刻t2に第1のローラ駆動部12に給紙ローラ130の回転速度を,搬送ローラ129の回転速度VBより小さい回転速度である回転速度VCに切り替えるための制御命令を発行する。制御命令を受けた第1のローラ駆動部12は給紙ローラ130を回転速度VAから回転速度VCに切り替えて駆動させる。
【0046】
用紙121の先端が搬送ローラ129のニップに達した瞬間,図3(a)に示すように,用紙121は後端が給紙ローラ130にて挟持されたまま搬送ガイド132の壁面に沿ってたわんだ状態にあり,図8(a)の従来例と同様,給紙ローラ130及び搬送ローラ129との間で湾曲した搬送ラインLA(図中破線)をなしている。搬送ラインLAは給紙ローラ130及び搬送ローラ129それぞれのニップ間の直線距離よりも長いため,用紙121は搬送ラインLAに対応したたわみを有したまま,給紙ローラ130及び搬送ローラ129によって搬送路上を運ばれていることになる。
【0047】
ここで給紙ローラ130の回転速度が回転速度VAからVCに切り替えられたことにより,給紙ローラ130が用紙121をトレイ122から搬出する速度より搬送ローラ129が用紙121を下流へ搬送する速度が大きくなるため,搬送路上を移動する用紙121のたわみは減少する。
【0048】
次に,制御部11は,所定時刻t3において,第1のローラ駆動部12に給紙ローラ130の回転速度を,搬送ローラ129の回転速度VBより小さく回転速度VCより大きい速度である回転速度VDに切り替えるための制御命令を発行する。制御命令を受けた第1のローラ駆動部12は給紙ローラ130を回転速度VCから回転速度VDに切り替えて駆動させる。ここで所定時刻t3とは,用紙121のたわみが解消するより前の位置として予め設定した時刻であり,実際に用紙121を搬送させ,たわみの変化を観測することによって実験的に定めた値である。
【0049】
図3(a)において,時刻t3における用紙121の位置は搬送ラインLC(図中点線)により示される。搬送ローラ129により下流に引き込まれる部分が多くなったことで搬送ラインLAに比して用紙121のたわみは減少し,搬送路において搬送ガイド131に近い側に位置している。
【0050】
時刻t3以降は,給紙ローラ130が回転速度VD,搬送ローラ129が回転速度VBでそれぞれ駆動しながら,用紙121を搬送する。回転速度VBはVDよりも大きいため,搬送される用紙121のたわみは減少し続けるが,双方の回転速度の差分(VB-VD)は時刻t2~t3の期間における回転速度の差分(VB-VC)よりも小さいため,たわみが減少するスピードは小さくなる。
【0051】
次に,制御部11は,所定時刻t4において,第1のローラ駆動部12に給紙ローラ130の回転速度を0に切り替えるための制御命令を発行する。制御命令を受けた第1のローラ駆動部12は給紙ローラ130の動作を停止させる。ここで所定時刻t4とは,用紙121の後端が給紙ローラ130のニップを離れる位置として,t3と同様,予め実験的に設定した時刻である。
【0052】
図3(b)において,時刻t4における用紙121の位置は搬送ラインLB(図中一点鎖線)により示される。図8(b)の搬送ラインLBと同様,用紙121のたわみが解消される位置であるが,搬送ラインLCからLBまでの期間,たわみの減少するスピードは小さいため,張り音の発生は抑制される。
【0053】
時刻t4以後,用紙121が給紙ローラ130を完全にすり抜けると,給紙ローラ130は徐々に回転速度を落として,時刻t5に回転を停止する。(公報では「搬送ローラ129は徐々に回転速度を落として」と記載されているが,当審で誤記と認めて,上記のとおり認定した。)
【0054】
以上の動作において,搬送路上の用紙121に生じたたわみは,搬送路を搬送される間に,期間(t3-t2),及び期間(t4-t3)の二段階に分けて,それぞれ異なるスピードで低減される。」
エ 「【0078】
又,上記の各実施の形態においては,給紙ローラ130及び搬送ローラ129の回転速度の切り替えは瞬時に行うものとして説明を行ったが,回転速度の切り替えは連続的な速度変化として行わせるようにしてもよい。要するに,本発明の制御部の制御は,給紙部及び搬送部のそれぞれに対し,用紙のたわみを段階的に解消するのに必要な速度の差分を作り出すことができれば,回転速度の切り替えの具体的な手法によって限定されるものではない。例えば,第1のローラ駆動部12及び第2のローラ駆動部13として,ステッピングモータの他,通常のDCモータ,サーボモータ等を用いることができる。」
オ 図2から,ローラの回転速度について,以下に記載した関係が看て取れる。
給紙ローラの回転速度VA > 搬送ローラの回転速度VB > 給紙ローラの回転速度VD > 給紙ローラの回転速度VC
したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「給紙ローラの駆動により,トレイから搬出された用紙は,搬送路を形成する搬送ガイドに沿って搬送ローラへ送り込まれる画像形成装置であって,
初期状態として,制御部は,給紙ローラを時刻t0に回転速度VA,搬送ローラを時刻t1に回転速度VAよりも遅い回転速度VBで順次駆動させ,
搬送ローラの手前に設けられた検知スイッチは,搬送路上で用紙の先端と先端が接触することで制御部へ検知信号を出力し,
制御部は,その受信時間から用紙の先端が搬送ローラのニップに達する時刻t2を算出し,時刻t2に給紙ローラの回転速度を,搬送ローラの回転速度VBより小さい回転速度である回転速度VCに切り替えるための制御命令を発行し,
用紙の先端が搬送ローラのニップに達した瞬間,用紙は後端が給紙ローラにて挟持されたまま搬送ガイドの壁面に沿ってたわんだ状態にあり,給紙ローラ及び搬送ローラとの間で湾曲した搬送ラインLAをなし,搬送ラインLAは給紙ローラ及び搬送ローラそれぞれのニップ間の直線距離よりも長いため,用紙は搬送ラインLAに対応したたわみを有したまま,給紙ローラ及び搬送ローラによって搬送路上を運ばれて,
給紙ローラの回転速度が回転速度VAからVCに切り替えられると,給紙ローラが用紙をトレイから搬出する速度より搬送ローラが用紙を下流へ搬送する速度が大きくなるため,搬送路上を移動する用紙のたわみは減少し,
さらに,制御部は,用紙のたわみが解消するより前の位置として予め設定した時刻である所定時刻t3において,給紙ローラの回転速度を,搬送ローラの回転速度VBより小さく回転速度VCより大きい速度である回転速度VDに切り替えるための制御命令を発行し,搬送ローラにより下流に引き込まれる部分が多くなったことで用紙のたわみは減少し続けるが,双方の回転速度の差分(VB-VD)は時刻t2~t3の期間における回転速度の差分(VB-VC)よりも小さいため,たわみが減少するスピードは小さくなり,
次に,制御部は,用紙の後端が給紙ローラのニップを離れる位置として,また用紙のたわみが解消される位置として設定した時刻である所定時刻t4において,給紙ローラの回転速度を0に切り替えるための制御命令を発行し,徐々に回転速度を落として時刻t5に給紙ローラ回転を停止させる画像形成装置。」
2.引用文献2について
カ 「1,給紙カセットから給紙ローラにより送り出された転写紙を略U字状の搬送ガイドにより搬送方向を反転させてレジストローラに供給し,更に転写部,定着部を経て機外に排出するようにした画像形成装置の給紙装置において,
給紙ローラの送り速度をレジストローラの送り速度より速く設定すると共に,上記給紙ローラとレジストローラの間における転写紙のたるみ量を検出し,上記たるみ量が所定量より小さくなると給紙ローラの回転を開始し,たるみ量が所定量より大きくなると給紙ローラの回転を停止するようにしたことを特徴とする画像形成装置の給紙装置。」(第1頁左欄第5~16行)
キ 「次に,第3図に示したフローチャートを参照して,この実施例の処理手順に付き説明する。尚,以下の説明中S1,S2.・・・は,手順(ステップ)の番号を示す。
例えばプリントボタンが押されることによって,給紙動作が開始されると,メインモータMがオンされる(S1)。
続くステップS2では,紙検知スイッチSW3がオンとなっているか否かが判断され,オンであれば,フィードクラッチCL1がオンとなる(S3)。これにより給紙ローラ3の回転が開始され,給紙カセット2からの転写紙の搬送が開始される。
給紙ローラ3により送り出された転写紙は,略U字状の搬送ガイド4によって,第1図におけるP1のように案内され,やがてレジストローラ5のニップ部にその先端が到達する。従って,その途中において,レジスト部検知スイッチSW1がオンとされ(S4),フィードクラッチCL1がオフとなる(S5)。これにより給紙ローラ3による転写紙Pの送り出しが停止される。
続いてS6で示すように,レジストクラッチCL2がオンとされ,レジストローラ5の回転が開始される。レジストローラ5が回転し,転写紙がレジストローラ5から送り出されていくと,レジストローラ5と給紙ローラ3との間のたるみが少なくなり,やがて転写紙は,P2で示すようにたるみ量検知スイッチSW2と接触するに至る。この状態から更にレジストローラ5の回転が続行され,前記たるみがますます少なくなる(P3の状態)ことにより,転写紙に押されてたるみ量検知スイッチSW2が,やがて第1図に破線で示す状態に至る。すると,たるみ量検知スイッチSW2がオンとなる(S7)。
このようにしてたるみ量が所定量より小さくなったことが検知されると,S8においてフィードクラッチCL1がオンとなり,給紙ローラ3の回転が再開される。給紙ローラ3の送り速度は,前記レジストローラ5による送り速度よりも速いので,レジストローラ5と給紙ローラ3とが一緒に回転している状態では,上記レジストローラ5と給紙ローラ3との間で,転写紙Pのたるみが増大していく,従って,給紙ローラ3とレジストローラ5との間で,P4のように転写紙が張られた状態にはならない。
この時点でS9において,前記レジスト部検知スイッチSW1がオフになっているか否かが判断される。レジスト部検知スイッチがオフでないならば,転写紙の後端が未だレジストローラ5を通過していないことを示しているので,処理をS7に戻す。
S7において,たるみ量検知スイッチSW2がオンでないと判断された場合には,上記搬送ガイド4の部分において,所定量以上のたるみが確保されたことを示している。従って,それ以上たるみを大きくする必要がないので,S10においてフィードクラッチCL1をオフとし,処理をS9にジャンプさせる。
こうして転写紙がレジストローラ5を完全に通過するまで,搬送ガイド4の部分における所定量以上のたるみが確保され,レジストローラ5と給紙ローラ3との間で転写紙が張られることによるレジストローラ5における大きな負荷変動が回避される。」(第3頁左上欄17行-右下欄19行)
したがって,上記引用文献2には次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「給紙カセットから給紙ローラにより送り出された転写紙を略U字状の搬送ガイドにより搬送方向を反転させてレジストローラに供給し,更に転写部,定着部を経て機外に排出するようにした画像形成装置の給紙装置において,
給紙動作が開始されると,紙検知スイッチSW3がオンとなっているか否かが判断され,オンであれば,フィードクラッチCL1がオンとなり,給紙ローラ3の回転が開始され,給紙カセット2からの転写紙の搬送が開始され,
給紙ローラ3により送り出された転写紙は,略U字状の搬送ガイド4によって案内され,その先端がレジストローラ5のニップ部に到達する途中において,レジスト部検知スイッチSW1がオンとされ,フィードクラッチCL1がオフとなって,給紙ローラ3による転写紙Pの送り出しが停止され,
レジストクラッチCL2がオンとされ,レジストローラ5の回転が開始されて,転写紙がレジストローラ5から送り出されていくと,レジストローラ5と給紙ローラ3との間のたるみが少なくなり,転写紙はたるみ量検知スイッチSW2と接触してたるみ量検知スイッチSW2がオンとなると,フィードクラッチCL1がオンとなり,給紙ローラ3の回転が再開されるが,レジストローラ5と給紙ローラ3とが一緒に回転している状態では,給紙ローラ3の送り速度は,前記レジストローラ5による送り速度よりも速いので,レジストローラ5と給紙ローラ3との間で,転写紙Pのたるみが増大していく,画像形成装置の給紙装置。」
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
後者の「用紙」は前者の「シート」に 以下同様に,「給紙ローラ」は「給紙ローラ」に, 「搬送ローラ」は「搬送ローラ」に,「制御部」は「制御手段」に,それぞれ相当する。
前者の「シート搬送装置」は「シートを給紙させて搬送する給紙ローラと,給紙ローラよりシートの搬送方向下流側に設けられてシートを搬送する搬送ローラ」で構成されており,後者の「給紙ローラ」と 「搬送ローラ」も同様であるから,後者においても,前者の「シート搬送装置」に相当する構成が備わっていることは明らかである。
後者の給紙ローラ及び搬送ローラの「回転速度」は,前者の給紙ローラ及び搬送ローラの「シート搬送速度」に相当する。
後者において「給紙ローラの駆動により,トレイから搬出された用紙は,搬送路を形成する搬送ガイドに沿って搬送ローラへ送り込まれる」のであるから,「給紙ローラよりシートの搬送方向下流側に搬送ローラが設け」られていることは明らかである。
後者において,用紙の先端が搬送ローラのニップに達する時刻t2から,用紙のたわみが解消される位置として設定した時刻である所定時刻t4までの時間において,「給紙ローラと搬送ローラとの間で搬送されるシートにたわみが形成」されることは明らかである。
また,後者のそれぞれのローラの回転速度についてまとめると以下のとおりである。
時刻t0-t1区間 給紙ローラ:VA,搬送ローラ:0
時刻t1-t2区間 給紙ローラ:VA,搬送ローラ:VB (VA>VB)
時刻t2-t3区間 給紙ローラ:VC,搬送ローラ:VB (VC<VB)
時刻t3-t4区間 給紙ローラ:VD,搬送ローラ:VB (VD<VB),ただし(VD>VC)
時刻t4-t5区間 給紙ローラ:VDから0,搬送ローラ:VB (VD<VB),ただし(VD>VC)
つまり,前者の時刻t1-t2区間(搬送ローラが回転開始後,用紙の先端が搬送ローラのニップに達するまでの時間)において,「給紙ローラによるシート搬送速度が搬送ローラによるシート搬送速度よりも速く」し,
時刻t2-t3区間(用紙の先端が搬送ローラのニップに達してから,用紙のたわみが解消するより前の位置として予め設定した時刻までの時間)及び時刻t3-t4区間(用紙のたわみが解消するより前の位置として予め設定した時刻から,用紙のたわみが解消される位置として設定した時刻までの時間)において「シートの後端が給紙ローラを通過する前に,給紙ローラにおけるシート搬送速度を減速」させていることは,明らかである。
したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
(一致点)
「シートを給紙させて搬送する給紙ローラと,給紙ローラよりシートの搬送方向下流側に設けられてシートを搬送する搬送ローラとが設けられ,給紙ローラによるシート搬送速度が搬送ローラによるシート搬送速度よりも速く,給紙ローラと搬送ローラとの間で搬送されるシートにたわみが形成されるシート搬送装置において,上記の給紙ローラの回転速度を制御する制御手段を設け,この制御手段により,シートの後端が給紙ローラを通過する前に,給紙ローラにおけるシート搬送速度を減速させるシート搬送装置。」
(相違点)
(相違点1)本願発明1は「給紙ローラと搬送ローラとの間におけるシートのたわみ量を検出するたわみ量検出手段」という構成を備え,「給紙ローラと搬送ローラとの間におけるシートのたわみが解消される時点における,給紙ローラによるシート搬送速度と搬送ローラによるシート搬送速度との速度差を所定の速度差以下にするように,上記のたわみ量検出手段の検出結果に基づいて,上記の給紙ローラにおけるシート搬送速度の減速割合を変更」するのに対し,引用発明1はそのような発明特定事項を備えていない点。
(相違点2)本願発明1は「シートが前記搬送ローラに到達してから所定時間が経過するまでは給紙ローラによるシート搬送速度を変更せず,上記の所定時間の経過後に給紙ローラによるシート搬送速度を減速させる」という構成を備えるのに対し,引用発明1はそのような発明特定事項を備えていない点。
(2)相違点についての判断
相違点1に係る本願発明1の発明特定事項のうち「給紙ローラと搬送ローラとの間におけるシートのたわみ量を検出するたわみ量検出手段」という構成は,上記「第5 2.」の引用発明2に「たるみ量検知スイッチSW2」として記載されているといえる。
しかしながら,引用発明2における「たるみ量検知スイッチSW2」は,その検知結果に基づいて,停止していた給紙ローラの回転を再開するためのものであって,相違点2に係る本願発明1の発明特定事項に記載される「給紙ローラにおけるシート搬送速度の減速割合を変更」する制御を行うためのものではないから,引用発明1に引用発明2を適用したとしても,相違点1に係る本願発明1の発明特定事項には,当業者といえども到達し得ない。
したがって,上記相違点2について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
なお,相違点2に係る本願発明1の発明特定事項については,引用発明2には記載も示唆もなく,当業者にとって設計的事項であるとはいえない。
2.本願発明2-4について
本願発明2-4は,,本願発明1を引用し,さらに限定したものであるから,相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものである。
よって,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定について
上記「第6」で示したとおりであるから,原査定の理由を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2015-020148