特許拒絶査定不服審判
2015-019945
低アレルギー性フード組成物
- 審判番号
- 2015-019945
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-000137外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年11月06日
- 審決日
- 2016年10月03日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド
- 【請求人代理人】村井 康司
- 分類
- P18 .537-Z (A23K) / P18 .121-Z (A23K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第159条第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011- 137「低アレルギー性フード組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 5月19日出願公開、特開2011- 97951〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成17年9月23日(優先権主張 平成16年9月24日および平成16年11月23日 米国)を国際出願日とする特願2007-533644号(以下「原出願」という。)の一部を、平成23年1月4日に新たな特許出願としたものであって、平成25年5月2日付けで拒絶理由が通知され、同年11月7日に意見書の提出とともに手続補正がされ、平成26年8月19日付けで拒絶理由が通知され、同年12月18日に意見書が提出され、平成27年7月3日付けで拒絶査定がされ、同年11月6日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がされたものである。
第2 補正却下の決定
[結論]
平成27年11月6日付け手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正発明
平成27年11月6日付け手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、次のとおり補正された(下線は補正箇所を示す。)。
(補正前)
「【請求項1】
半固体配合物状態で加水分解産物を含む低アレルギー性のネコ用フード組成物であって、乾物ベースで約25重量%~約85重量%の量で前記加水分解産物を含み、該組成物は栄養的に完全なネコ用フード組成物であり、該加水分解産物は複数のポリペプチド及び遊離アミノ酸を含み、該ポリペプチド及び遊離アミノ酸の約60%~約95%は、平均分子量約6,000ドルトン未満を有し、該組成物中で該加水分解産物がタンパク質栄養の少なくとも約95%を提供する、前記組成物。」
(補正後)
「【請求項1】
半固体配合物状態で加水分解産物を含む低アレルギー性のネコ用フード組成物であって、55重量%~65重量%の量で前記加水分解産物を含み、該組成物は栄養的に完全なネコ用フード組成物であり、該加水分解産物は複数のポリペプチド及び遊離アミノ酸を含み、該ポリペプチド及び遊離アミノ酸の60%~95%は、平均分子量6,000ドルトン未満を有し、該組成物中で該加水分解産物がタンパク質栄養の少なくとも95%を提供し、該加水分解産物は、鶏または家禽からの加水分解済みタンパク質を含む、前記組成物。」
本件補正は、本件補正前の、平成25年11月7日付け提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された「ネコ用フード組成物」が含む「加水分解産物」について、「乾物ベースで25重量%~85重量%の量で前記加水分解産物を含み」とされていたものを、「55重量%~65重量%の量で前記加水分解産物を含み」と、数値範囲を減縮するとともに「乾物ベースで」という限定を削除し、「該加水分解産物は、鶏または家禽からの加水分解済みタンパク質を含む」との限定を付加するものである。
そうすると、補正前の請求項1に係る発明の「乾物ベースで」という発明特定事項を省いたものである上記補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。
また、特許法第17条の2第5項第1、3、4号に掲げる、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものではないことは明らかである。
2 小括
以上のとおり、請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げる事項を目的とするものではないから、特許法第17条の2第5項の規定に違反する。
3 独立特許要件(予備的検討)
仮に、請求項1に係る補正が特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものとして、本件補正後の上記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、念のため検討しておく。
(1)特許法第36条第6項第1号について
ア サポート要件について
請求項1中の「該加水分解産物は複数のポリペプチド及び遊離アミノ酸を含み、該ポリペプチド及び遊離アミノ酸の60%~95%は、平均分子量6,000ドルトン未満を有し」という記載についての発明の詳細な説明の記載をみると、発明の詳細な説明に記載された実施例(【0060】~【0075】)では、「キャットフード配合物」の実施例(実施例F1~F3)のみならず「ドッグフード配合物」の実施例「(実施例C1~C8)」まで参照しても、「加水分解産物」が添加されていることの記載はあるが、当該加水分解産物のポリペプチド及び遊離アミノ酸の平均分子量について記載も示唆もされていない。そうすると、「該加水分解産物は複数のポリペプチド及び遊離アミノ酸を含み、該ポリペプチド及び遊離アミノ酸の60%~95%は、平均分子量6,000ドルトン未満を有し」ということが、おいしい低アレルギー性ネコ用フード組成物を得るという本願発明の課題を解決するものであるかは、発明の詳細な説明の記載からは明らかとはいえない。
そして、発明の詳細な説明において、当該数値範囲のすべてにおいて本願発明の課題が解決されるものであるかの確認もされておらず、(効果があるとしても)当該数値範囲の内外で顕著な差異が生じるものであるのかも不明である。
よって、請求項1中の上記記載の範囲まで、出願時の技術常識に照らしても、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
イ 請求人の主張についての補足的判断
請求人は、平成27年12月16日に手続補正された平成27年11月6日提出の審判請求書における「(4)本願発明が特許されるべき理由」の「(4.1)理由1について」において、以下の主張をしている。
「平成25年11月7日付け意見書で述べましたように、本願明細書の表1のF1には、加水分解産物を含む猫用の配合物が記載されています。本願明細書の表1のF1の配合物の組成は、以下の通りです。
鶏肝臓加水分解産物(凍結) 63.4%
水 23.2%
コーンスターチ(炭水化物) 11.0%
ミネラル混合物 0.8%
大豆油 0.5%
セルロース 0.5%
ビタミン混合物 0.4%
DLメチオニン及びタウリン 0.2%
本願明細書の段落番号[0062]には、『本発明を例示する典型的な猫の食餌の組成物は、重量で最高約78%までの水、重量で最高約20%までの炭水化物、及び重量で約55%~約65%の加水分解産物を、他の成分、例えば炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、セルロース、塩化コリン、リン酸カルシウム、メチオニン、ミネラル、塩化カリウム、塩、大豆油、タウリン、ビタミン、及び香味料と共に含むことができる。』という記載があります。上記で示したF1の配合物の組成は本願明細書の該段落において述べられた成分を、該段落において述べられた量で含んでいます。即ち上記で述べたF1の組成は、本願明細書の段落番号[0062]の記載に対応する生データです。そしてF1に記載された63.4%という加水分解産物の含有量は、55重量%~65重量%の量で加水分解産物を含むという、補正後の本願請求項1に記載された要件を満たしています。
また、平成26年12月18日付けの意見書で詳しく述べた通り、本願明細書の実施例に記載されたF1を作製するのに使用した加水分解産物であるM8106の成分表を、参考資料1として提出しました。参考資料1の1ページの"DEFINITIONS"には、「得られた最高分子量は3000ダルトン未満である。(日本語訳)」と記載されています。この記載から、本願明細書の実施例で使用されたキャットフード配合物(F1)が、本願請求項1において規定された条件(平均分子量6,000ドルトン未満)を満たしていることが判ります。F2とF3についても加水分解産物であることから同様に、平均分子量が6,000ドルトン未満という条件を満たしている高い蓋然性が認められます。
更に本願明細書の段落番号[0032]には、本願発明で使用する加水分解産物の平均分子量に関連する詳細な記載があります。加えて該段落には、加水分解産物に含まれるポリペプチドの分子量分布は、サイズ排除クロマトグラフィー、またはSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用して決定することが記載されています。
参考資料1のデータと本願明細書における上記の記載を考慮すると、本願の特許請求の範囲に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載されていると認められます。よって本願の特許請求の範囲に記載された発明は、特許法第36条第6項第1号に関する拒絶理由を有しない、と本出願人は思料致します。」
しかしながら、上記「F1の配合物の組成」あるいは「F1を作製するのに使用した加水分解産物であるM8106の成分表」(「参考資料1」)は、出願後に提出されたものであって、その内容が発明の詳細な説明に記載あるいは示唆されているものではない。
さらに上記主張で触れている「本願明細書の段落番号[0032]」を見ても、「該加水分解産物は複数のポリペプチド及び遊離アミノ酸を含み、該ポリペプチド及び遊離アミノ酸の60%~95%は、平均分子量6,000ドルトン未満を有し」ということが本願発明の課題を解決するものであるかを明らかにする記載はない。ここで、上記主張及び上記平成25年11月7日付け意見書を見ても、「更に本願明細書の段落番号[0032]には、本願発明で使用する加水分解産物の平均分子量に関連する詳細な記載があります。加えて該段落には、加水分解産物に含まれるポリペプチドの分子量分布は、サイズ排除クロマトグラフィー、またはSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用して決定することが記載されています。」と言うにとどまり、具体的に当該段落のどの記載がどのようにサポート要件を満たすとするのか、明らかでない。
また、上記「F1の配合物の組成」及び「参考資料1」、並びに上記主張及び上記平成25年11月7日付け意見書を見ても、請求項に係る発明の範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができるような出願時の技術常識を示すものでもない。
したがって、上記請求人の主張は採用することができない。
ウ まとめ
以上のとおり、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反する。
(2)特許法第29条第2項について
ア 引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原出願の優先日前に日本国内において頒布された特表2003-532394号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「愛玩動物用の低アレルゲン性食餌組成物」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】 本発明は、イヌおよびネコなどの愛玩動物における食物アレルギーを診断し、また管理するための食餌組成物(dietary composition)に関し、さらに特に単独タンパク質源として加水分解されたタンパク質を用いる低アレルゲン性組成物に関する。 」
(イ)「【0005】 タンパク質をペプチドに酵素により加水分解することによって、タンパク質のアレルゲン性物性を減少させることができることが見出された。研究によって、加水分解されたタンパク質を用いて組成された食餌が抗原重荷を減少させ、食物アレルギーモデルにおけるアレルギー反応を減少させることが示唆されている。部分的に加水分解された食餌が危険度の高い幼児用に、またイヌおよびネコにおける食物過敏症の臨床的兆候の防止に使用されている。」
(ウ)「【0009】 本発明の組成物を、動物の栄養上の必要性に適応する量および頻度で愛玩動物に与える場合、動物は減少された抗原産生を示すことが見出された。」
(エ)「【0012】 本組成物は好ましくは、脂肪約9重量%~30重量%、炭水化物50~60重量%、および加水分解されたタンパク質源約20~30重量%(全部が乾燥物質に基づく)を含有する。・・・
本組成物中の加水分解されたタンパク質源は、好ましくは加水分解されたニワトリ肝臓を包含する。本組成物中の加水分解されたタンパク質源は、好ましくは加水分解されたニワトリ肝臓を包含する。本組成物は、タンパク質源の少なくとも99%を、アレルギー反応が防止される程度にまで加水分解を確実に生じさせる1.5kDaよりも小さい分子量を有するように組成すると好ましい。」
(オ)「【0014】 例1
タンパク質源として加水分解されたニワトリ肝臓および炭水化物源としてカッサバを用いる、ネコ用食餌を組成した。この食餌は、下記表1に示されているように、1.4キロダルトン(kDa)以下の分子量を有するタンパク質を99.8%の量で用いて組成した。」
上記記載事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「加水分解されたタンパク質源を含む低アレルゲン性のネコ用食餌組成物であって、乾燥物質に基づき約20~30重量%の量で前記加水分解されたタンパク質源を含み、該組成物は栄養上の必要性に適応する量および頻度で与えるネコ用食餌組成物であり、前記タンパク質源の少なくとも99%がアレルギー反応が防止される程度にまで加水分解を確実に生じさせる1.5kDaよりも小さい分子量を有するように組成されたものであり、該加水分解されたタンパク質源は、ニワトリ肝臓からの加水分解されたタンパク質源を含む、前記組成物。」
イ 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「加水分解されたタンパク質源」は、明らかに加水分解の産物であるところ、本願補正発明の「加水分解産物」に相当する。また、引用発明の「タンパク質源」中の「源」という記載は、これを摂取する側から栄養源として見た表現であり、物として「タンパク質」に等しい。また、引用発明の「低アレルゲン性」は、本願補正発明の「低アレルギー性」に相当し、引用発明の「ネコ用食餌組成物」は、本願補正発明の「ネコ用フード組成物」に相当する。そして、引用発明の「ニワトリ肝臓からの加水分解されたタンパク質源」は、本願補正発明の「鶏または家禽からの加水分解済みタンパク質」に相当する。
以上の点からみて、本願補正発明と引用発明とは、
[一致点]
「加水分解産物を含む低アレルギー性のネコ用フード組成物であって、該加水分解産物は、鶏または家禽からの加水分解済みタンパク質を含む、前記組成物。」
である点で一致し、
次の点で相違する。
[相違点1]
組成物の状態に関して、本願補正発明は「半固体配合物状態」であるのに対して、引用発明はその特定がない点。
[相違点2]
組成物の栄養的な面において、本願補正発明は「栄養的に完全」とされるのに対して、引用発明は「栄養上の必要性に適応する量および頻度で与える」ものである点。
[相違点3]
組成物の加水分解産物の含有割合に関して、本願補正発明は「55重量%~65重量%の量」であるのに対して、引用発明は「乾燥物質に基づき約20~30重量%の量」である点。
[相違点4]
組成物の加水分解産物の成分に関して、本願補正発明は「該加水分解産物は複数のポリペプチド及び遊離アミノ酸を含み、該ポリペプチド及び遊離アミノ酸の60%~95%は、平均分子量6,000ドルトン未満を有し」ているのに対して、引用発明はその特定がない点。
[相違点5]
タンパク質の加水分解に関して、本願補正発明は「該組成物中で該加水分解産物がタンパク質栄養の少なくとも95%を提供」するのに対して、引用発明は「タンパク質の少なくとも99%がアレルギー反応が防止される程度にまで加水分解を確実に生じさせる1.5kDaよりも小さい分子量を有するように組成」されている点。
ウ 判断
[相違点1]について
ペットフードの状態としてペットのニーズ等に応じて水分含有度合いに様々な選択肢があることは当業者に周知の事項(周知例として例えば特表2002-530095号公報の【0004】段落参照。)であるから、その中から適宜の状態、例えば半固体状態(半固体配合物状態)を選択することは当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない。
したがって、相違点1に係る選択は、当業者が適宜なし得たことである。
[相違点2]について
引用発明の組成物が「栄養上の必要性に適応する量および頻度で与え」られるということは当該組成物は「栄養上の必要性に適応する」物であるということであり、「栄養上の必要性に適応する」組成物と、本願補正発明の「栄養的に完全」な組成物との間に実質的な相違は見出せない。ここで、本願の発明の詳細な説明を参照しても、「栄養的に完全」か否かの具体的要件の説明は無い。
よって、相違点2は実質的な相違点ではない。
[相違点3]について
まず、一定の課題を解決するために数値範囲を最適化又は好適化することは当業者の通常の創作能力の発揮であって、この点には通常は進歩性はない。
そして、本願発明と引用発明とでは数値範囲に大きな差異があるものの、ネコ用フード組成物中のタンパク質の含有割合が当該フードのネコへの受けに影響があることは当業者に周知の事項(周知例として例えば特表2006-511236号公報の実施例1、3参照。)であるから、ニーズに応じてネコ用フードのタンパク質の含有割合を適宜に選択することは当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない。ここで、引用発明において加水分解されるのはタンパク質であるところ、タンパク質の含有割合という形で選択するか、加水分解産物の含有割合という形で選択するかに格別の創作力は要しない。
また、本願の発明の詳細な説明には、「【0062】 本発明を例示する典型的な猫の食餌の組成物は、・・・重量で約55%~約65%の加水分解産物・・・含むことができる。」との記載はあるものの、具体的な「キャットフード配合物」の各実施例(実施例F1~F3)がそれぞれいかなる重量%なのか記載はなく、当該数値範囲のすべてにおいて本願発明の課題が解決されるものであるかの確認ができるような記載、また(効果があるとしても)当該数値範囲の内外で差異が生じるものであるのかの記載もない。したがって、本願補正発明の「55重量%~65重量%の量」との数値範囲に格別の技術的意義は見出せない。
以上のとおりであるから、相違点3に係る数値範囲の最適化は、当業者が適宜なし得たことである。
[相違点4]について
本願の発明の詳細な説明に記載された実施例(【0060】~【0075】)では、「キャットフード配合物」の実施例(実施例F1~F3)のみならず「ドッグフード配合物」の実施例「(実施例C1~C8)」まで参照しても、「加水分解産物」が添加されていることの記載はあるが、当該加水分解産物のポリペプチド及び遊離アミノ酸の平均分子量について記載はなく、当当該数値範囲のすべてにおいて本願発明の課題が解決されるものであるかの確認できるような記載、また(効果があるとしても)当該数値範囲の内外で差異が生じるものであるのかの記載もないところ、その数値範囲の最適化は当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない。
したがって、相違点4に係る「該ポリペプチド及び遊離アミノ酸の60%~95%は、平均分子量6,000ドルトン未満を有し」との数値範囲に格別の技術的意義は見出せないから、相違点4に係る数値範囲の最適化は、当業者が適宜なし得たことである。
[相違点5]について
引用発明において「タンパク質源の少なくとも99%がアレルギー反応が防止される程度にまで加水分解を確実に生じさせる1.5kDaよりも小さい分子量を有するように組成」するものであるところ、本願補正発明の「該組成物中で該加水分解産物がタンパク質栄養の少なくとも95%を提供」という条件は満たされる。
したがって、相違点5は実質的な相違点ではない。
以上のとおり、引用発明において、上記相違点1ないし5に係る発明特定事項を採用することは、当業者が周知技術に基いて容易になし得たことである。
エ 作用効果について
そして、本願補正発明が奏する効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものではない。
オ まとめ
したがって、本願補正発明は、当業者が、引用発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同様第126条第7項の規定に違反する。
4 補正の却下の決定のむすび
上記2及び3のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定、及び、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成25年11月7日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のもの(以下「本願発明」という。)である。
「【請求項1】
半固体配合物状態で加水分解産物を含む低アレルギー性のネコ用フード組成物であって、乾物ベースで25重量%~85重量%の量で前記加水分解産物を含み、該組成物は栄養的に完全なネコ用フード組成物であり、該加水分解産物は複数のポリペプチド及び遊離アミノ酸を含み、該ポリペプチド及び遊離アミノ酸の60%~95%は、平均分子量6,000ドルトン未満を有し、該組成物中で該加水分解産物がタンパク質栄養の少なくとも95%を提供する、前記組成物。」
2 引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1の記載事項並びに引用発明は、上記第2の3の(2)に記載したとおりである。
3 対比・判断
ア 特許法第36条第6項第1号について
本願発明は、本願補正発明に係る「55重量%~65重量%の量で前記加水分解産物を含み」という限定を「乾物ベースで25重量%~85重量%の量で前記加水分解産物を含み」とし、「該加水分解産物は、鶏または家禽からの加水分解済みタンパク質を含む」と限定する前記発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明も、上記第2の3の(1)に記載したとおり、サポート要件を満たさない。
イ 特許法第29条第2項について
また、「乾物ベースで」という限定を除き、本願発明の発明特定事項をすべて含む本願補正発明が、上記第2の3の(2)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また「乾物ベースで」という限定についても、上記第2の3の(2)のアに記載したように引用発明も加水分解されたタンパク質源の重量%は乾燥物質に基づくものであるところ、本願発明も、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 まとめ
したがって、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、かつ、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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