特許拒絶査定不服審判
2015-003679
異形性のリジン飼料顆粒
- 審判番号
- 2015-003679
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2010-527143外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年02月26日
- 審決日
- 2016年11月09日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アーチャー-ダニエルズ-ミッドランド カンパニー
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】大貫 敏史
- 【請求人代理人】江口 昭彦
- 【請求人代理人】内藤 和彦
- 分類
- P18 .121-WZ (A23K) / P18 .537-WZ (A23K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2010-527143「異形性のリジン飼料顆粒」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月 2日国際公開、WO2009/042779、平成22年12月24日国内公表、特表2010-539939〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2008年9月25日(パリ条約による優先権主張、外国庁受理2007年9月27日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年11月25日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成27年2月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、平成28年3月24日付けで当審から拒絶理由が通知され、これに対して、同年9月23日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 当審からの拒絶理由通知の概要
平成28年3月24日付けの拒絶理由通知の概要は以下のとおりである。
「<理由1>
本件出願は、特許請求の範囲及び明細書の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号及び同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1)特許法第36条第6項第1号違反
請求項1に係る発明と、本願の発明の詳細な説明に記載された実施例との対応関係が不明であって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないから、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない。
請求項2ないし15についても、同様である。
(2)特許法第36条第4項第1号違反
この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1~15に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
<理由2>
本件出願の請求項1~15に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1~4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
請求項1~15に対して、
刊行物1:特開平11-253110号公報
刊行物2:米国特許出願公開第2007/0160740号明細書
刊行物3:特開平2-128654号公報
刊行物4:国際公開第2007/047350号
」
第3 手続補正書、意見書の概要
当審からの拒絶理由通知に対し、請求人が平成28年9月23日付けで提出した手続補正書及び意見書の概要は以下のとおりである。
1 平成28年9月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲
【請求項1】
乾燥した塩酸リジンからなる外シェル層、ならびに乾燥したリジン遊離塩基単独からなる内核領域を含む飼料用顆粒。
【請求項2】
前記顆粒が、塩酸リジンの外シェルで取り囲まれている乾燥したリジン遊離塩基の核を有する、請求項1に記載の顆粒。
【請求項3】
前記乾燥したリジン遊離塩基は、前記顆粒の10~80%の重量であり、該顆粒は、24から168時間にわたって、摂氏30度の温度、かつ、33%と91%との間の相対湿度の湿度に曝露されたときに、10%未満の水を吸収する、請求項1に記載の顆粒。
【請求項4】
前記顆粒が、窒素、リン、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄および亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む少なくとも1つの無機化合物をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の顆粒。
【請求項5】
微生物を発酵することにより、細胞集団および可溶化されたリジン遊離塩基画分を含む発酵ブロスを生成する工程;
該細胞集団を該可溶化されたリジン遊離塩基画分から分離する工程;
該可溶化されたリジン遊離塩基画分単独を、前記内核を形成するために充分な時間にわたって噴霧凝集する工程;および
該内核を塩酸リジンで噴霧凝集することにより、前記顆粒を生成する工程を包含する、請求項1に記載の顆粒を生成する方法。
【請求項6】
前記リジン遊離塩基画分が、前記内核を形成するために噴霧凝集される前に、乾燥される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記噴霧凝集に栄養のある無機物または無機塩を加える工程をさらに包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
肥料および動物飼料からなる群から選択される少なくとも1つの用途のために、請求項1~4のいずれか1項に記載の顆粒を含む組成物を使用する方法。
【請求項9】
請求項1に記載の顆粒を本質的に含む、反芻動物用の飼料添加物。
【請求項10】
前記顆粒が、不均整の非球形の形態および10μmから800μmの範囲の粒径分布を有し、そして該顆粒からなる粉末が、24から168時間にわたって、摂氏10度から摂氏50度の温度および30%と91%との間の相対湿度の湿度に曝露されるときに、自由流動性として特徴づけられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の顆粒。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか1項に記載の顆粒を本質的に含む肥料組成物であって、ここで、該顆粒は、アルカリ金属塩、窒素源、ホスフェート源、カリウム源を含む群から選択される少なくとも1つの補助剤をさらに含む、肥料組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの補助剤が、前記外シェル層に含まれている、請求項11に記載の肥料組成物。」
2 平成28年9月23日付けの意見書の概要
(1)特許法第36条第6項第1号違反に関して
「(3-1)特許法第36条第6項第1号及び同法第36条第4項第1号違反の拒絶理由について(理由1)
補正後の請求項1に係る発明は「乾燥した塩酸リジンからなる外シェル層、ならびに乾燥したリジン遊離塩基単独からなる内核領域を含む顆粒」に関するものであるところ、表1の記載から明らかなとおり、実施例2の態様(ラン2)が補正後の本願発明に該当します。ここで、審判官殿が拒絶理由通知書中で言及されていますとおり、実施例2は一見、「リジンHCL」を「リジン遊離塩基」で被覆するものについて記載しているようにも思われますが、本発明者によりますと、同実施例の表題中の「リジン遊離塩基のリジンHClに対するコーティング」に対応する国際出願時の当初明細書の記載"coating on lysine HCI of lysine freebase"は、"coating of lysine HCI on lysine freebase "の誤記であるとのことです。すなわち、「リジン遊離塩基のリジンHClに対するコーティング」なる記載は本来「リジン遊離塩基に対するリジンHCLのコーティング」と表現されるべきものでした。
以上の理由から、補正後の請求項1に係る発明が表1に記載のとおり実施例2の態様(ラン2)に相当することがご理解頂けるものと出願人は思料致します。」
(2)特許法第29条第2項違反に関して
「(3-2)特許法第29条第2項違反の拒絶理由について(理由2)
本願発明が解決しようとする課題は、本願明細書の段落0003-0008で詳述されているとおり、塩酸リジンの固化防止特性を保持しつつ比較的高いリジン含有量を有する粒子であって、リジン単独から構成されるか、あるいはリジンと、同様に動物用飼料の必須アミノ酸であるトレオニンとの組み合わせから構成される粒子を提供することにあります。ここで、塩酸リジン以外の市販されているリジンのその他の2つの形態は遊離塩基と硫酸塩の形態です。これらの中でも、リジン遊離塩基が高含量のリジンを有するのは塩のように配位された分子を有さないためです。これらのリジン形態はそれぞれ粒子に乾燥され得るものですが、特にリジン遊離塩基は高い吸湿性を有しているため、リジン遊離塩基から作られる粒子は固化しやすいという傾向があります。よって、リジン遊離塩基から構成される粒子は高湿度条件下において水を吸って流動しません。
このような理由から、リジン遊離塩基は市販される際略常に溶液の状態で提供され、この状態で飼料に噴霧されます。溶液は輸送コストが高い上に扱いが困難であり、専用の装置が必要になります(段落0005)。一方、硫酸リジンはリジン遊離塩基と比較するとさほど問題はありませんが、塩酸リジンと比べると固化の影響を受けやすいという欠点があります。硫酸リジンは固体の形態で製造販売されていますが、常に高湿度の時に輸送されるのではありません。更に、硫酸リジンは、培養液に付随する不純物等が原因で3つの市販の形態のうちで最も低いリジン含量を有しています(段落0005)。
本発明者らは、かかる課題がリジン遊離塩基単独の内核領域と、これを覆う塩酸リジンの外シェル層とを有する粒子により解決されることを見出し、本願発明を完成させるに至りました。
一方、刊行物1及び2には上記課題を解決するために内核をリジン遊離塩基単独とすることについて記載も示唆もしておりません。
ここで、審判官殿が引用された刊行物2の段落0059及び0060には確かにリジン遊離塩基等を内核とすることは記載されていますが、ここでのリジン遊離塩基はリジン含量を調節するために添加されているのであって、これは上記課題を解決するための手段ではありません。
以上の理由から、当業者にとって「リジン塩酸塩等で被覆した顆粒」の「内核」として「リジン遊離塩基」のみを採用することは容易ではないと出願人は確信致します。」
第4 当審の判断
1 特許法第36条第6項第1号違反(理由1)について
(1)特許請求の範囲、明細書の記載
ア 平成28年9月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1には、「乾燥した塩酸リジンからなる外シェル層、ならびに乾燥したリジン遊離塩基単独からなる内核領域を含む飼料用顆粒。」と記載されているとおり、請求項1に係る「飼料用顆粒」は、「内核領域」が「乾燥したリジン遊離塩基単独」からなり、「外シェル層」が「乾燥した塩酸リジン」からなるもの、すなわち、「乾燥したリジン遊離塩基単独」からなる「内核領域」を「乾燥した塩酸リジン」で被覆したものである。
イ 平成28年9月23日付け手続補正書により全文補正された本願明細書には以下の記載がある(下線を審決にて付した。以下同様。)。
「【0095】
実施例2 ラン(RUN)2:この実施形態では、リジン遊離塩基のリジンHClに対するコーティングを調べた。
【0096】
噴霧造粒機を用いて、70パーセント乾燥固体を含む725g/lのリジン遊離塩基の90体積部の溶液を、リジンHCL再補給に対して、50.8パーセントの乾燥固体および320.4g/lのリジン遊離塩基を含むリジン母液(図15における35)の10体積部の溶液と同時噴霧した。250gの生成物の最初の再補給を用いた。乾燥機の入口温度を135℃(275°F)に維持し、そして床温度は、82.2~85℃(180°~185°F)だった。フィードを71.1℃(160°F)の温度に予熱し、そして70.6℃(159°F)を超える出口温度を維持する速度で、その乾燥機を噴霧した。噴霧凝集を、はじめに最初の15分間、8ml/分で開始し、そして出口温度が許容されるとき、徐々に20ml/分まで上昇させた。合計1800mlのリジン遊離塩基および900mlのリジンHCLを用いた。その床の重量が1.5kgに達するまで噴霧凝集を続け、ここで、生成物を回収し、ふるいにかけ、そして分析した。結果を表1~3に示す。
【0097】
実施例3 ラン3:この実施形態では、リジン塩に対するリジンおよびトレオニン遊離塩基のコーティングの作用を調べた。
【0098】
噴霧造粒機を用いて、70パーセント乾燥固体を含む725g/lのリジン遊離塩基の60体積部の溶液を、リジンHCL再補給に対して、70パーセント乾燥固体および120g/lのトレオニン遊離塩基を含むトレオニン限外濾過濃縮混合物の40体積部の溶液と同時噴霧した。250gの生成物の最初の再補給を用いた。乾燥機の入口温度を70Cに維持し、そして床温度は、65.6~76.7℃(150~170度F)だった。フィードを37.8℃(100°F)の温度に予熱し、そして70.6℃(159°F)を超える出口温度を維持する速度で、その乾燥機を噴霧した。噴霧凝集を、はじめに最初の15分間、8ml/分で開始し、そして出口温度が許容されるとき、徐々に15ml/分まで上昇させた。その床の重量が1.5kgに達するまで噴霧凝集を続け、ここで、生成物を回収し、ふるいにかけ、そして分析した。結果を表1~3に示す。」
「【0109】【表1】
」
「【0110】【表2】
」
ウ 上記イの実施例2,3を含めて、本願明細書には、実施例1~9が記載されており、例えば、実施例2(段落【0095】「ラン(RUN)2:この実施形態では、リジン遊離塩基のリジンHClに対するコーティングを調べた。」)に関して、段落【0096】の記載(「70パーセント乾燥固体を含む725g/lのリジン遊離塩基の60体積部の溶液を、リジンHCL再補給に対して、70パーセント乾燥固体および120g/lのトレオニン遊離塩基を含むトレオニン限外濾過濃縮混合物の40体積部の溶液と同時噴霧した。」、及び、【表1】のラン番号2の記載(「再補給源」が「リジンHCl」、「フィードA」が「1800mlの70%のDSリジン遊離塩基」)から明らかなとおり、「リジンHCl」を「リジン遊離塩基」で被覆するものである。
実施例3~9に係る記載、及び、【表1】のラン番号3~8を参照しても、「再補給源」が「リジンHCl」であるもの、すなわち、内核領域が「リジンHCl」であるものしか記載されていない。(なお、この「リジンHCl」とは、本願明細書の段落【0004】に「リジン飼料栄養補助剤は、本質的に3つの形態で(リジン-HCl塩(単にリジンHCLと呼ばれることが多い)の乾燥した顆粒として、・・・」と記載されているとおり、「リジン-HCl塩」(乾燥した塩酸リジン)のことである。)
したがって、「乾燥したリジン遊離塩基単独からなる内核領域」を「リジンHCl」でコーティングする実施例は記載されていないから、本願明細書の発明の詳細な説明において、「乾燥したリジン遊離塩基単独」からなる「内核領域」を「乾燥した塩酸リジン」で被覆した「顆粒」、すなわち、請求項1に係る「飼料用顆粒」の分析(かさ密度、純度、固化試験等)がなされているとは認められない。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、平成28年9月23日付けの意見書において、段落【0095】「ラン(RUN)2:この実施形態では、リジン遊離塩基のリジンHClに対するコーティングを調べた。」の記載に関し、「リジン遊離塩基のリジンHClに対するコーティング」に対応する国際出願時の当初明細書の記載"coating on lysine HCI of lysine freebase"は、"coating of lysine HCI on lysine freebase "の誤記」であり、本来「リジン遊離塩基に対するリジンHCLのコーティング」と表現されるべきもので、補正後の請求項1に係る発明が表1に記載のとおり実施例2の態様(ラン2)に相当する旨主張する。
イ しかしながら、上記(1)ウで検討したとおり、段落【0095】の記載は、段落【0096】及び【表1】(段落【0109】)の記載と整合しているから、「リジン遊離塩基に対するリジンHCLのコーティング」の誤記と解釈すべき理由は全く存在しない。
また、「本発明者によりますと、・・・誤記であるとのことです。」と主張するが、そのような主張は、本願の審査において何らなされておらず、そのような誤記が審判段階まで見過ごされるとは到底考えられない。
さらに、平成28年9月23日付け手続補正書においても当該主張に基づく補正もなされていない。
したがって、上記請求人の主張は失当というべきである。
(3)判断
以上のとおり、請求項1に係る発明と、本願の発明の詳細な説明に記載された実施例とが対応しておらず、請求項1に係る発明の実施例は、発明の詳細な説明に記載されていないから、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。
請求項2ないし12に係る発明についても、同様に、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。
したがって、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない。
2 特許法第29条第2項違反(理由2)について(予備的検討)
上記1で検討したとおり、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないが、念のため、予備的に第29条第2項違反(理由2)についても検討しておく。
(1)本願発明
本願に係る発明は、平成28年9月23日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載されたものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「乾燥した塩酸リジンからなる外シェル層、ならびに乾燥したリジン遊離塩基単独からなる内核領域を含む飼料用顆粒。」
(2)刊行物に記載された事項
ア 刊行物1に記載された事項
刊行物1(特開平11-253110号公報)には以下の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、L-リシン発酵ブロスに由来する顆粒状L-リシン飼料補充物を製造する方法、より詳細には、L-リシン含量がL-リシン発酵ブロスの初期L-リシン濃度にのみ依存しない、L-リシン飼料補充物を製造する方法に関する。」
(イ)「【0055】
L-リシン粒子の流動層および凝集過程のための種を作製するためのL-リシン粒子の正確な起源はさほど重要ではないが、L-リシン粒子は、約177ミクロン未満、好ましくは約100ミクロンから177ミクロンのサイズである。」
(ウ)「【0058】
L-リシン粒子の他の適当な起源の例は、当業者に既知の方法により得ることができる、乾燥精製されたL-リシン塩酸塩粉末である。この乾燥粉末を、L-リシン粒子の起源として使用することもできるし、または乾燥粉末を篩過し、凝塊物を除去し、約177ミクロン未満(好ましくは100ミクロンから177ミクロン)のサイズ範囲の粒子を得ることもできる。」
(エ)実施例1-比較例に関して、
「【0084】
L-リシン濃度が92g/l(1リットル当たりのグラム)L-リシン塩基であり、218g/l総乾燥固体を含む400リットルの発酵ブロスを、L-リシン発酵から収集した。この物質を限外濾過し、L-リシン硫酸塩の形態で235g/l(遊離塩基として測定)、493g/l乾燥固体の濃度になるまで蒸発させた。
【0085】
5150ml(ミリリットル)のこの濃縮物を、グラット(Glatt)WSG5噴霧造粒機で乾燥させた。グラット(Glatt)ユニットの入口の温度は、93℃から124℃、好ましくは120℃以上に維持した。出口の温度は、40℃から80℃、好ましくは60℃から65℃に維持した。層の温度は、70℃から92℃、好ましくは71℃から74℃に維持した。気流は、毎分1,300から4,000フィート、好ましくは毎分1,300から1,500フィートに維持した。ノズル霧化空気は、1立方インチの容積当たり50から70ポンドであった。凝集する物質層を形成させるため、最も高い設定のノズルを用いて、約2,500mlの濃縮物を乾燥機に噴霧した。層中の濾過物質の真上になるようノズルを下げ、残りの2,650mlの濃縮物を用いて凝集を完成させた。これにより、表1に示されている組成を有する顆粒化生成物が得られた。」
(オ)実施例3に関して、
「【0089】
上記の実施例1と同様にして限外濾過され濃縮されたリシン発酵ブロスを、純粋なL-リシン塩酸塩と4対1(リシンに基づく)で混合した。混合物を、実施例1の概略に従い噴霧造粒させた。この過程を、3対2混合物、2対3混合物、1対4混合物、およびL-リシン塩酸塩のみを用いて反復した。顆粒化生成物は、表3に示される組成を有していた。」
上記(ア)ないし(オ)の事項を総合すると、刊行物1には、下記の発明が記載されている。
「リシン発酵ブロス(L-リシン硫酸塩)及び純粋なL-リシン塩酸塩等を種(内核)とし、L-リシン塩酸塩等で被覆した飼料補充物用顆粒」
イ 刊行物2に記載された事項
刊行物2(米国特許出願公開第2007/0160740号明細書)には、以下の記載がある(審決にて仮訳を付した。)
(ア)[0056] A fermentation broth produced in this method is concentrated in the process of removing some water. This concentrating process has two purposes: to reduce post-production tasks by reducing the volume of fermentation broths by concentration and, more importantly, and to more easily form granules by raising the lysine density of the broth.
(仮訳)「この方法で生産された発酵薄い澄んだスープが若干の水を削除するプロセスに集中しています。この集中しているプロセスは2つの目的を持っています:発酵出し汁の販売台数を濃度減らすことによって、そして、もっと重要なことに、そしていっそう容易に書式顆粒に、薄い澄んだスープの lysine 密度を上げることによって、ポストプロダクション仕事を減らすために。」
(イ)[0057] The amount of the total solid of the fermentation broth is adjusted to be about 44-52% through the concentrating process in which the method is vacuum concentration with a pressure of about 680 mmHg and a bath temperature of about 65℃. These conditions can be changed according to the status of the concentration process or in order to control the speed of the progress.
(仮訳)「発酵ブロスの全体の固形分量は、約680 mmHg の圧力と約65°Cの溶液温度という条件下での真空濃縮を用いた濃縮工程を通じて、約44-52%に調節される。これらの条件は、濃縮工程の状態に応じて、あるいは進行速度を制御するために、変更することができる。」
(ウ)[0058] The fermentation broth in which concentration is completed goes through a pH adjustment process. The pH is adjusted to about 3.5 by using sulfuric acid. After the pH adjustment, the broth is left at about 60℃. for more than two hours. A broth is left at about 60℃. for at least two hours following the pH adjustment because gDNA materials of fermentation biomass which can be found in granular products have to degrade. Considering the cost for the development of new microorganism strain and the effect of the microorganism itself on the productivity, the security of microorganism is of enormous importance. This process enables satisfactory degradation of gDNA materials and lowers the possibility of leakage of the microorganism.
(仮訳)「濃縮が行われる発酵ブロスは、pH調整工程がなされる。pHは、硫酸を使うことによって、約3.5に調整される。pH調整の後に、ブロスは約60°Cで2時間以上の間放置される。このようにブロスをpH調整後、約60°Cで2時間以上放置するのは、粒状産物中に見られる発酵バイオマスの gDNA(核ゲノムのDNA) 材料を分解させるためである。新たな微生物菌の開発のコストと、微生物自体の生産性への影響を考慮すれば、微生物の保全は非常に大きな重要性を有する。このプロセスは核ゲノムDNA材料を十分に分解させるとともに、そして微生物の漏出の可能性を下げることを可能とする。」
(エ)[0059] Following the gDNA degradation, the concentrate is transferred to a mixture tank. The mixture process has several purposes. The most important purpose is to control the lysine content of produced granular products to an intended level. The concentrate is mixed with a content-controlling substance in the mixture process. The content-controlling substance can be either a content-controlling agent or free lysine, depending on the content of the concentrate. Any suitable free lysine and content-controlling agents can be used. In one embodiment, the content-controlling agent is one or more of corn starch, starch, carrageenan, and agar.
(仮訳)「核ゲノムDNAの分解の後、濃縮液は混合タンクに移される。 混合工程はいくつかの目的を持っている。最も重要な目的は生産された粒状産物のリジン含量を意図されたレベルに制御することである。濃縮液は混合工程で成分調整物質と混合される。成分調整物質としては、濃縮液の成分に応じて、成分調整剤あるいは遊離リジンを用いることができる。あらゆる適宜の遊離リジン及び成分調整剤が使用可能である。1つの実施例では、成分調整剤はコーンスターチ、でんぷん、カラギーナン及び寒天のうちの1つまたは2つ以上である。」
(オ)[0060] A content-controlling agent may be added to a concentrate when the lysine content of the concentrate is too high. On the other hand, when the lysine content of the concentrate is too low, lysine powder is added to the concentrate to increase the lysine content. The content-controlling method of the embodiment sets the final product content within about 1% error.
(仮訳)「濃縮液のリジン含量があまりにも高いとき、成分調整剤を濃縮液に加えるかもしれない。他方、濃縮液のリジン含量があまりにも低いとき、リジン含量を増大させるため、リジン粉末が濃縮液に添加される。このような成分調整方法により、最終製品の成分量を約1%の誤差の範囲内に調整することができる。」
上記(ア)ないし(オ)から、刊行物2には「リジンを含む顆粒を作成するための、発酵ブロスを濃縮したリジン濃縮液に関して、リジン含量を増大させるために、適宜の遊離リジンやリジン粉末を添加すること」が記載されている。
また、リジン濃縮液からリジン顆粒を作成するのであるから、リジン顆粒の内核に遊離リジンが含まれることは明らかである。
さらに、顆粒を造粒する際にリジン塩酸塩等を噴霧して被覆・成長させることも、刊行物2に記載されているに等しい事項である。
加えて、刊行物2の発明の名称は、「Animal feed addictives based on fermentation broth and production process thereof by granulation」であるから、ここでの「リジン顆粒」は、「動物飼料添加物用顆粒」である。
上記の事項を総合すると、刊行物2には、以下の発明が記載されているといえる。
「リジン硫酸塩等のリジン塩、あるいはリジン遊離塩基等を内核とし、リジン塩酸塩等で被覆した動物飼料添加物用顆粒」
ウ 上記ア及びイのとおり、刊行物1及び刊行物2には、ほぼ同様の発明が記載されているから、まとめると下記の発明が記載されていると認められる(以下、刊行物1に記載された発明と、刊行物2に記載された発明を、まとめて「刊行物発明」という。)。
「リジン硫酸塩等のリジン塩(あるいはリジン遊離塩基)等を内核とし、リジン塩酸塩等で被覆した動物飼料添加物(飼料補充物)用顆粒」
(3)対比
本願発明と刊行物発明とを対比する。
ア 刊行物発明の「リジン硫酸塩等のリジン塩(あるいはリジン遊離塩基)等を内核とし」に関して、リジン塩、あるいはリジン遊離塩基等が乾燥したものであることは、技術常識である。
したがって、刊行物発明の「リジン硫酸塩等のリジン塩(あるいはリジン遊離塩基)等を内核とし」た構成(内核領域)と、本願発明の「乾燥したリジン遊離塩基単独からなる内核領域」とは、「乾燥したリジン塩等からなる内核領域」で共通する。
イ 刊行物発明の「リジン塩酸塩等で被覆した」構成(被覆層)は、本願発明の「乾燥した塩酸リジンからなる外シェル層」に相当する。
ウ 刊行物発明の「動物飼料添加物(飼料補充物)用顆粒」は、本願発明の「飼料用顆粒」に相当する。
エ 上記アないしウから、本願発明と刊行物発明とは、
「乾燥した塩酸リジンからなる外シェル層、ならびに乾燥したリジン塩等からなる内核領域を含む飼料用顆粒。」の点で一致し、下記の点でのみ相違する。
[相違点]:「飼料用顆粒」の「内核領域」に関して、
本願発明は、「内核領域」が「乾燥したリジン遊離塩基単独からなる」のに対して、
刊行物発明は、「リジン硫酸塩等のリジン塩(あるいはリジン遊離塩基)等」であって、「乾燥したリジン遊離塩基単独」との特定がない点。
(4)判断
ア 相違点について
上記相違点のとおり、刊行物1及び刊行物2には、「外シェル層」が「乾燥した塩酸リジン」からなるものは記載されているものの、内核領域をリジン遊離塩基単独からなるものとする点は記載されていない。なお、請求人も、「刊行物1及び2には上記課題を解決するために内核をリジン遊離塩基単独とすることについて記載も示唆もしておりません。」「審判官殿が引用された刊行物2の段落0059及び0060には確かにリジン遊離塩基等を内核とすることは記載されていますが、・・・」と上記相違点について認めている。
そして、刊行物1には、「L-リシン粒子の流動層および凝集過程のための種を作製するためのL-リシン粒子の正確な起源はさほど重要ではない」(上記「(2)ア(ア)」参照。)とも記載されており、「L-リシン」の市販の形態として「リジン遊離塩基」が一般に知られていることに鑑みれば、「L-リシン粒子の流動層および凝集過程のための種」すなわち「リジン塩酸塩等で被覆した顆粒」の「内核」として「リジン遊離塩基」のみを採用する程度のことは、当業者が適宜なし得たことである。
したがって、本願発明は、当業者が刊行物1、2に記載された発明に基づいて容易になし得たものである。
イ 本願発明が奏する効果について
そして、本願発明が奏する効果は、当業者が刊行物1及び2に記載された事項から予測できる程度のものであって、格別のものではない。
ウ 請求人の主張について
請求人は、「リジン遊離塩基は、市販される際溶液の状態で提供されるが、溶液は輸送コストが高い上に扱いが困難であり、硫酸リジンは、塩酸リジンと比べると固化の影響を受けやすく、リジン含量が低い」といった課題があり、「上記課題を解決するために内核をリジン遊離塩基単独とすることについて、刊行物1及び2には記載も示唆もない」旨、「刊行物2の段落0059及び0060には確かにリジン遊離塩基等を内核とすることは記載されているが、ここでのリジン遊離塩基はリジン含量を調節するために添加されているのであって、上記課題を解決するための手段ではない」旨、主張する。
しかしながら、硫酸リジンが3つの市販の形態のうちで最も低いリジン含量であること、リジン含量を高くするために適宜の形態を選択することは、当業者にとって技術常識であり、かつ、刊行物2には、遊離リジン(リジン遊離塩基)を顆粒の内核とすることが開示されているのであるから、請求人が主張する上記課題を解決しようとすることは、刊行物に明記されていなくとも、当業者が当然考慮すべき事項である。
また、例えば、顆粒のリジン含量に関しては、内核領域と、外シェル層との体積比によってリジン含量が変わり、内核領域が「乾燥したリジン遊離塩基単独」からなるか、それ以外のものを含有するかは、リジン含量の大小には必ずしも影響しないから、「内核領域」が「乾燥したリジン遊離塩基単独からなる」点には、格別の技術的意義はないというべきである。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
エ まとめ
以上のとおり、本願発明は、当業者が刊行物1及び2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
上記「第4 1」で検討したとおり、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。
また、上記「第4 2」で検討したとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、当業者が刊行物に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-003679