特許拒絶査定不服審判
2015-011261
航空機厨房食品サービスシステム用の冷蔵庫-オーブン組合体
- 審判番号
- 2015-011261
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-168511外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年06月16日
- 審決日
- 2017年01月24日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .121-WZ (F25D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-168511号「航空機厨房食品サービスシステム用の冷蔵庫-オーブン組合体」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月12日出願公開、特開2013-250050号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2006年4月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2005年4月25日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2008-507758号の一部を平成25年8月14日に新たな特許出願としたものであって、平成27年2月12日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年6月16日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされた。
その後、平成27年10月30日に上申書が提出され、当審において平成28年7月14日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年10月19日に意見書及び手続補正書が提出された。
第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1~7に係る発明は、平成28年10月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「食品の品目を加熱する加熱モードと、食品及び飲料の品目を冷却する冷蔵モードとを有する航空機厨房食品サービスシステムのための冷蔵庫-オーブン組合体において、
食品の品目を収容するための単一の熱絶縁された区画を画成するハウジングと、
前記熱絶縁された区画内に配置され、前記熱絶縁された区画の内部の少なくとも一部分を加熱するためのスチーム加熱装置と、
前記熱絶縁された区画内に配置され、前記熱絶縁された区画の内部の少なくとも一部分を冷却するための冷蔵装置であって、前記熱絶縁された区画の内壁に取り付けられた冷蔵装置と、
前記熱絶縁された区画内で空気を循環させるために前記熱絶縁された区画に配置されたモーター作動ファンと、
を備えた冷蔵庫-オーブン組合体。」
第3 引用文献
1 これに対して、当審において通知した平成28年7月14日付け拒絶理由に引用され、原出願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2003-21340号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(なお、省略した箇所は「・・・」と記載している。)。
(1) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、加熱装置、例えば電子レンジやオーブンレンジにおいて、コンプレッサーあるいはペルチェ素子等を搭載することで冷却機能を具備せしめ、調理中に加熱室内の温度を故意に変化させることで新しい調理を可能にする冷却機能を備えた加熱装置、および冷却方法を備えた加熱方法、冷却手段と加熱手段を備えた加熱プログラムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】冷蔵庫は食品・食材を冷蔵あるいは冷凍保存し、電子レンジはこれらをすばやく加熱あるいは解凍する。簡便化・合理化の進む現代の台所において、大変相性のいい厨房器具同志であると言える。ところが、互いに独立分離しているため使い勝手が悪い面もある。この両者を融合あるいは連携させることで、より利便性の高い商品、システム、サービスが実現できるのではないか、と期待される。」
(2) 「【0009】本発明は、前記従来の課題を解決するもので、冷却機能を具備する加熱装置が調理中に加熱室内の温度を故意に変化させることで新しい調理を可能にする冷却機能を備えた加熱装置、および冷却方法を備えた加熱方法、冷却プログラムを備えた加熱プログラムを提供することを目的とする。」
(3) 「【0026】(実施例1)図2は本発明の実施例1における冷却機能を備えた加熱装置を示す正面図である。本体10の前面には開閉自在に扉体11が軸支され、ハンドル12によって開閉操作される。また扉体11の下部には操作パネル13が一体的に形成されている。操作パネル13上にはさまざまな情報を表示する表示窓14、加熱時間や加熱温度を設定する操作つまみ15、加熱指令手段たる加熱指令キー16が配されている。
【0027】図3はかかる冷却機能を備えた加熱装置の構成を示す断面ブロック図である。扉体11の対抗する位置には加熱室17が存在する。この加熱室17に加熱手段たるマグネトロン18が結合されている。金属翼19は回動し、マイクロ波を攪拌する。これにより一定の定在波を立ちにくくし、食品は加熱ムラを引き起こすことを防止する。20は金属翼19のある空間を閉塞するセラミック等の誘電体による仕切り部である。冷却手段たるコンプレッサ21は加熱室17に冷風を送り込む。22は断熱材である。
【0028】加熱指令キー16から入力された加熱指令は、制御手段23により解読され、加熱手段たるマグネトロン18および冷却手段たるコンプレッサ21への給電を制御する。」
(4) 「【0029】図1はかかる制御手段の制御のしかたを示すタイムチャートである。本実施例は加熱指令キーが煮込みのケースである
・・・
【0030】制御シーケンスは大別すると4つのサイクルから成る。まず最初は「冷蔵保存」サイクルである。このサイクルは材料が加熱室に収容され、加熱が開始されるまでの間、食材が腐ったりしないよう保存をするサイクルである。冷却手段にのみ通電され、加熱室の温度が一定になるよう、例えば5℃に保たれるよう断続通電される。
・・・
【0031】次いで、2番めに「煮こみ加熱」サイクルが続く。ここでは冷却手段への通電が打ち切られ、加熱手段に給電が開始され、調理が始まる。
・・・
【0032】3番めに本発明のうち最も重要なサイクルである「冷却(味の浸透)」サイクルが実行される。ここでは加熱手段への給電が完了し、再び冷却手段に通電が始まる。そして一気に食材の温度が低下させられる。
・・・
【0033】ただ、冷ましてしまった食材はそのままではおいしくないので、味が浸透した時点で「再加熱」サイクルを設ける。この時間は短く、また、いったん浸透した味は失われることはない。
【0034】以上が加熱指令キーとして煮込みが選択された場合の制御のしかたである。」
(5) 「【0042】図5はかかる実施例における装置の構成を示す断面ブロック図である。図3と同一の構成には同一の付番を付して示している。ここでは加熱手段として電熱ヒータ24が加熱室17の天井および床に配されている。本実施例ではマイカヒータなどの面上のヒータが加熱室17の壁面の外側に固着されている。・・・なお、ヒータはミラクロンヒータなどの輻射型のものを配してもよいし、熱風を撹拌するいわゆるコンベクション方式でも、またこれらの組み合わせでも可能である。
・・・
【0047】例えば野菜をマイクロ波で加熱した後、通常は水に晒して色止めをするが、このあら熱とりシーケンスを利用すれば、水溶性のビタミンの流出がなく、より栄養価を残すことができる。また弁当などをつめた後、いったんマイクロ波で再加熱し、即座に冷却すれば雑菌が繁殖する温度帯をすみやかに通過できるので、弁当が傷みにくい。」
(6) 「【0048】図7は本発明の実施例3における冷却機能を備えた加熱装置の構成を示す断面ブロック図である。図3と同一の構成には同一の付番を付して示している。ここでは冷却手段としてペルチェ素子25が加熱室17の後壁に配されている。ペルチェ素子はヒートシンクに固着され、必要に応じて冷却ファンなどで冷却される(図示せず)。
【0049】なお、実施例1の冷却機能を備えた加熱装置として、図3の代わりに図7に示す本構成を用いることもできる。また、図5に示す冷却機能を備えた加熱装置のコンプレッサ21に代わり、本実施例のペルチェ素子25を搭載することもできる。あるいは図3と図5を組み合わせて加熱手段としてマグネトロンと電熱ヒータを備えることもできる。さらにこの組み合わせにおいて、冷却手段をコンプレッサから図7に示すようなペルチェに置換することも可能である。」
(7) 上記(1)~(6)の記載事項について、特に上記(6)の「図3と図5を組み合わせて加熱手段としてマグネトロンと電熱ヒータを備えることもできる。さらにこの組み合わせにおいて、冷却手段をコンプレッサから図7に示すようなペルチェに置換することも可能である。」という実施例に着目すると、引用文献1には以下の事項が記載されていることが把握される。
ア 冷却機能を備えた加熱装置は、加熱手段及び冷却手段を備えている。
イ 冷却機能を備えた加熱装置の本体10の前面開口部以外の内側は断熱材22で覆われており、断熱材22で囲われた空間内に、加熱室17、加熱手段及び冷却手段が配置されている。
ウ 加熱手段として、マグネトロンと電熱ヒータを同時に備えている。
エ マグネトロン18は、マイクロ波を撹拌する金属翼19とともに加熱手段を構成し、当該金属翼19のある空間は仕切り部20で閉塞されている。
オ 冷却手段は、ペルチェ素子25を使用している。
カ ペルチェ素子25は、断熱材22に囲われた空間内において、加熱室17の後壁と当該断熱材22の内壁の間に配置されている。
キ 冷却機能を備えた加熱装置はいくつかの加熱指令キーを有しており、加熱指令キーが「煮込み」の場合には、冷却手段による「冷蔵保存」サイクル、加熱手段による「煮込み加熱」サイクル、冷却手段による「冷却(味の浸透)」サイクル、そして「再加熱」サイクルが行われる。
2 引用発明
引用文献1についての上記「1(1)~(7)」の事項から、引用文献1には、
「加熱手段及び冷却手段を有する冷却機能を備えた加熱装置であって、
冷却機能を備えた加熱装置の本体10の断熱材22で囲われた空間内に、加熱室17、加熱手段及び冷却手段が配置されており、
加熱手段としてマグネトロンと電熱ヒータを備え、
冷却手段としてペルチェ素子25を備え、該ペルチェ素子25は、断熱材22に囲われた空間内において、加熱室17の後壁と断熱材22の内壁との間に配置されており、
加熱指令キーが煮込みの場合には、食品が冷却手段により冷蔵される冷蔵保存サイクルと、食品が加熱手段により加熱される煮こみ加熱サイクル及び再加熱サイクルを行う、
冷却機能を備えた加熱装置。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
第4 対比
1 本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「本体10」、「断熱材22で囲われた空間」は、その機能・構造からみて、本願発明の「ハウジング」、「区画」に相当する。
そして、引用発明の「断熱材22で囲われた空間内」は、その外部から熱絶縁されていることは明らかであり、当該空間内には加熱室17、加熱手段及び冷却手段が配置され、加熱室17において「食品」が加熱又は冷却されることが自明であるから、本願発明の「食品の品目を収容するための」「熱絶縁された区画」に相当し、よって、引用発明の「断熱材22で囲われた空間」を有する「本体10」は、本願発明の「食品の品目を収容するための」「熱絶縁された区画を画成するハウジング」に相当する。
引用発明の「断熱材22で囲われた空間内」に配置された「加熱手段」は、「断熱材22で囲われた空間」に配置された「加熱室17」の内部の少なくとも一部分を加熱することは明らかであるから、本願発明の「前記熱絶縁された区画内に配置され、前記熱絶縁された区画の内部の少なくとも一部分を加熱するための」「加熱装置」に相当する。
同様に、引用発明の「断熱材22で囲われた空間」に配置された「ペルチェ素子25」は、「食品が」「冷蔵される冷蔵保存サイクル」における「冷却手段」であって、「断熱材22で囲われた空間」に配置された「加熱室17」の内部の少なくとも一部分を冷却することは明らかであるから、本願発明の「前熱絶縁された区画内に配置され、前記熱絶縁された区画の内部の少なくとも一部分を冷却するための冷蔵装置」に相当する。
また、引用発明の「断熱材22に囲われた空間内において、加熱室17の後壁と断熱材22の内壁との間に配置されて」いる「ペルチェ素子25」と、本願発明の「前記熱絶縁された区画の内壁に取り付けられた冷蔵装置」とは、「熱絶縁された区画の内壁に配置された冷蔵装置」である点において共通する。
引用発明の「食品が冷却手段により冷蔵される冷蔵保存サイクル」は、本願発明の「冷蔵モード」に、引用発明の「食品が加熱手段により加熱される煮こみ加熱サイクル及び再加熱サイクル」は、本願発明の「加熱モード」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「冷却機能を備えた加熱装置」と本願発明の「冷蔵庫-オーブン組合体」とは、ともに食品を調理して提供する装置であり、「食品サービスシステムのための」ものという点で共通する。
そして、引用発明の「冷却機能を備えた加熱装置」は、「食品が冷却手段により冷蔵される冷蔵保存サイクル」及び「食品が加熱手段により加熱される煮こみ加熱サイクル及び再加熱サイクル」を行うものであり、また、「食品」には、飲料が含まれることは明らかであることを踏まえると、引用発明の「食品が冷却手段により冷蔵される冷蔵保存サイクル」及び「食品が加熱手段により加熱される煮こみ加熱サイクル及び再加熱サイクル」を行う「冷却機能を備えた加熱装置」は、本願発明の「食品の品目を加熱する加熱モードと、食品及び飲料の品目を冷却する冷蔵モードとを有する」「食品サービスシステムのための」「冷蔵庫-オーブン組合体」に相当する。
2 したがって、本願発明は引用発明とは、
「食品の品目を加熱する加熱モードと、食品及び飲料の品目を冷却する冷蔵モードとを有する食品サービスシステムのための冷蔵庫-オーブン組合体において、
食品の品目を収容するための熱絶縁された区画を画成するハウジングと、
前記熱絶縁された区画内に配置され、前記熱絶縁された区画の内部の少なくとも一部分を加熱するための加熱装置と、
前記熱絶縁された区画内に配置され、前記熱絶縁された区画の内部の少なくとも一部分を冷却するための冷蔵装置であって、前記熱絶縁された区画の内壁に配置された冷蔵装置と、
を備えた冷蔵庫-オーブン組合体。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
冷蔵庫-オーブン組合体について、本願発明は、航空機厨房食品サービスシステムのためのものであるのに対して、引用発明は、食品を調理して提供する装置である点で食品サービスシステムのためのものということができるものの、航空機厨房のものであるかどうか明らかでない点。
[相違点2]
加熱手段について、本願発明は、スチーム加熱装置であるのに対して、引用発明は、マグネトロンと電熱ヒータである点。
[相違点3]
冷蔵装置について、本願発明は、熱絶縁された区画の内壁に取り付けられているのに対して、引用発明は、熱絶縁された区画の内壁に配置されているものの、当該内壁に取り付けられているかどうか明らかでない点。
[相違点4]
本願発明は、熱絶縁された区画内で空気を循環させるために熱絶縁された区画に配置されたモーター作動ファンを備えているのに対して、引用発明は、そのような構成を有していない点。
[相違点5]
熱絶縁された区画について、本願発明は、「単一の」ものと特定されているのに対して、引用発明は、そのような構成であるか明らかでない点。
第5 判断
1 上記各相違点について検討する。
まず、相違点1について検討すると、この種の食品の冷却装置及び加熱装置が厨房に配置される装置であることは明らかであり、航空機厨房においても加熱及び冷却装置を備えることは通常のことであるから、引用発明を航空機厨房食品サービスシステムのためのものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、それによる作用効果、すなわち冷却装置と加熱装置を一体化することで厨房のスペースを節約することについても、例えば、引用文献1【0006】の「電子レンジ付冷蔵庫では、・・・置き場所を節約する効果・・・はある。」旨の記載、当審の拒絶理由に引用された特開2001-255056号公報(以下「引用文献2」という。)【0015】の「冷凍冷蔵庫と、・・・加熱調理器の機能を一体化したため、・・・冷凍冷蔵庫と加熱調理器を別々に設けるより、台所等にこれらを設置する空間を節約することができる。」旨の記載にみられるように、当業者の予測し得る範囲内のものである。
2 次に、相違点2について検討する。
食品加熱装置において電熱ヒータとスチーム加熱装置を備えるようにすることは、例えば、当審の拒絶理由に引用された実願平5-74982号(実開平7-39714号)のCD-ROM(以下「引用文献3」という。)【0002】の「この種の加熱調理器例えば業務用のコンベクションオーブンにあっては、近年、スチーマの機能を兼ね備えたものが供されてきている。このものは、本体内に、ヒータ及びファン装置からなる熱風生成装置を備えると共に、蒸気発生装置を備えて構成されている。」という記載等、同じく当審の拒絶理由に引用された特開2002-364852号公報(以下「引用文献4」という。)【0003】の「上述のようなオーブン機能に加えて、水蒸気を用いて被調理物を強力に加熱したり蒸したりすることができるスチーム機能を備え、冷凍パンやローストビーフなどを短時間で調理することができるスチームコンベクションオーブンも知られている。」という記載等にみられるように周知技術である。
また、引用発明の加熱手段は、電熱ヒータとマグネトロンの組合せであるところ、引用文献1には、加熱手段には、マグネトロンのほか、電熱ヒータ、ミラクロンヒータなどの輻射型のもの、熱風を撹拌するいわゆるコンベクション方式などの種々の加熱装置、またはこれらの組合せを用い得るものであることが示唆されている(上記記載事項「第3 1(5)及び(6)」参照)。そして、引用文献1には、煮込み以外に野菜などスチーム調理にも適した食品を調理対象物とすることが記載されている(上記記載事項「第3 1(5)」参照)。
そうすると、引用発明には、電熱ヒータとマグネトロン以外の組合せが可能である加熱手段として、上記周知の電熱ヒータとスチーム加熱装置の組合せを選択しようとする動機づけがあるから、引用発明における電熱ヒータとマグネトロンという加熱手段の組合せに代えて、上記周知の電熱ヒータとスチーム加熱装置という加熱手段の組合せにすることは当業者が容易になし得ることである。
よって、引用発明においてスチーム加熱装置を備えるようにすること、すなわち上記相違点2における本願発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得ることである。
3 次に、相違点3について検討する。
引用発明の冷却手段であるペルチェ素子25は、断熱材22に囲われた空間内において、加熱室17の後壁と断熱材22の内壁との間に配置されているところ、熱絶縁された区画の内壁と加熱室の後壁のいずれに取り付けられているかは明らかでない。しかしながら、当該ペルチェ素子25は、断熱材22に囲われた空間内にあって、加熱室17の後壁から当該加熱室17を冷却することができれば冷蔵装置としての機能を果たし得るものであることを考慮すれば、当該ペルチェ素子25を、熱絶縁された区画の内壁と加熱室の後壁のいずれに取り付けるかは、当業者が適宜に採用し得る設計的事項にすぎず、それにより作用効果上格段の差異を生ずるものではない。
よって、引用発明のペルチェ素子25を断熱材22の内壁に取り付けるようにすること、すなわち上記相違点3における本願発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得ることである。
4 次に、相違点4について検討する。
引用文献1には、加熱手段について、熱風を撹拌するいわゆるコンベクション方式を用いてもよい旨の記載があり(上記記載事項「第3 1(5)」参照)、加熱手段によって加熱された空気を加熱室内に対流・循環させることが示唆されるところ、熱風の循環にモータ作動ファンが使用されることは例えば引用文献3(【0011】ファン8)、引用文献4(【0039】ファン41)にみられるように周知技術である。
よって、引用発明において加熱手段とともに、加熱室内の空気を循環させるためのモーター作動ファンを備えるようにすること、すなわち上記相違点4における本願発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得ることである。
5 次に、相違点5について検討する。
相違点5について、本願発明において「単一の」と特定されているのは「熱絶縁された区画」である。引用発明も、断熱材22で囲われた空間についてみれば、当該空間は、引用文献1の【図7】の記載からも見て取れるように、ひとつの空間となっており、「単一の熱絶縁された区画」を画成するものといえる。よって、上記相違点5は、実質的な相違点ではない。
仮に、引用文献1記載の加熱室17が本願発明の「単一の」「区画」に相当するものとして、引用文献1記載の加熱手段や冷却手段が加熱室17の外側に配置されており、本願発明のものは内側に配置されている点で、上記相違点5が実質的な相違点であるとしても、加熱手段や冷却手段を加熱室の外側に備えるか、あるいは内側に備えるかは、当該加熱手段や冷却手段の特性や加熱室内の構造、調理対象物の種類に応じて適宜に決定し得るものであるから、この点に格段の困難性はなく、それにより格別顕著な作用効果が生じるものでもない。
よって、上記相違点5が実質的な相違点であるとしても、上記相違点5において本願発明のようにすることは、当業者が適宜になし得る程度の設計的事項というべきものである。
6 そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2~4に記載された事項ないし周知技術の奏する作用効果から予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
7 請求人の主張について
(1) 請求人は、平成28年10月19日付け意見書において、概略、以下ア~エを主張している。
ア 引用文献1の図3、図5、図7に示されているように、引用文献1は、加熱及び冷却すべき食品を収容するための加熱室17と、加熱手段18、24を収容するための区画と、冷却手段21、25を収容するための区画とを含む、複数の熱絶縁された区画を備えた本体又はハウジング10を開示するものであって、本願発明(本願の図1、図2及び明細書の〔0014〕に記載)のように、「単一の熱絶縁された区画を画成するハウジングを備え、その単一の熱絶縁された区画内に加熱装置及び冷却装置が配置されている」という構成は開示されていない。
イ 引用文献1における食品を加熱するための加熱手段18、24は、例えば、引用文献1の図3、図5、図7に記載されているように、加熱室17とは別の区画内に配置されている(マグネトロン18は、加熱室17の下方の、仕切り部20と断熱材22とによって形成された空間(区画)に配置された金属翼19を備えており、電熱ヒータ24は、加熱室17の天井及び床の壁面の外側に配置されている)ものであって、本願発明の加熱装置24(本願の図1~図4及び明細書の〔0014〕に記載)のように、加熱すべき熱絶縁された区画と同じ区画14内に配置されている構成は開示されていない。
ウ 引用文献1の加熱装置をスチーム加熱装置で置き換えた場合には、スチームが加熱室内に入ることが仕切り部20又は断熱材22によって阻止され、その効力は減少するから、引用文献1の開示事項は、そのような置き換えの動機付けに対して、明らかに阻害要因があり、本願発明の「前記熱絶縁された区画内に配置され、前記熱絶縁された区画の内部の少なくとも一部分を加熱するためのスチーム加熱装置」は、引用文献1~4のいずれにも開示されておらず示唆されてもいない。
エ 引用文献1の図7は、ペルチェ素子25が加熱室17の外部に配置されていることを示しており、引用文献1は、本願発明と異なり、加熱室17の内部に配置され、加熱室17の内壁に取り付けられた冷却手段21、25を開示しておらず示唆してもいないから、設計事項と認定した構成の採用には阻害要因があり、本願発明の管アッセンブリ34、熱交換器54を含む冷蔵装置30、50(明細書〔0016〕、〔0017〕、図1、図2に記載)のように、ハウジング12によって画成された熱絶縁された区画14内に配置され、熱絶縁された区画14の内壁に取り付けられている構成は開示されていない。
(2) 上記ア~エの主張について
ア まず、上記アの主張についてみると、引用文献1の【図7】の記載を参照してわかるとおり、冷却機能を備えた加熱装置の本体10の前面開口部以外の内側は断熱材22で覆われており、断熱材22で囲われたひとつの空間に、加熱室17、加熱手段及び冷却手段が配置されている。すなわち、マグネトロン18は、マイクロ波を撹拌する金属翼19とともに加熱手段を構成しているものと把握でき、仕切り部20は断熱材22ではないから、当該加熱手段は、冷却手段たるペルチェ素子25、食品が加熱又は冷却される加熱室17とともに、断熱材22に囲われたひとつの空間、すなわち「単一の熱絶縁された区画」内に配置されていることが見て取れる。また、電熱ヒータをさらに設ける場合は、当該電熱ヒータは加熱室の壁面の外側に固着されることが示されているところ(上記記載事項「第3 1(5)」参照)、当該電熱ヒータは熱効率及び安全性の観点から当然に断熱材22の内側、すなわち断熱材22に囲われた空間内に配置されることは当業者の技術常識である。
そうすると、引用文献1には、引用発明の「断熱材22で囲われた空間」が「単一の熱絶縁された区画」であることが記載されているから、引用発明の「冷却機能を備えた加熱装置」が「断熱材22で囲われた空間」を有する「本体10」を備え、当該「断熱材22で囲われた空間内に、加熱室17、加熱手段及び冷却手段が配置されて」いる構成は、請求人が主張する上記「本願発明(本願の図1、図2及び明細書の〔0014〕に記載)のように、「単一の熱絶縁された区画を画成するハウジングを備え、その単一の熱絶縁された区画内に加熱装置及び冷却装置が配置されている」という構成」に実質的に相当するものといえる。
イ 次に、上記イの主張についてみると、請求人の主張は、要するに、引用文献1記載の加熱室17が本願発明の熱絶縁された区画に相当するものとして、引用文献1記載の加熱手段が加熱室17の外側に配置されていることをもって、本願発明のような、加熱装置が熱絶縁された区画と同じ区画内に配置されている構成ではないとするものである。しかしながら、引用文献1記載の加熱室17そのものは、その外壁に配置された加熱手段や冷却手段から熱を供給されるものであるところ、本願発明の「単一の熱絶縁された区画」に相当するものでなく、加熱手段、冷却手段、加熱室17が配置される「断熱材22で囲われた空間」こそが、本願発明の「単一の熱絶縁された区画」に相当するものといえる。そして、引用文献1記載の加熱手段は、加熱室17とともに、断熱材22で囲われた空間に配置されており、また、電熱ヒータを更に設ける場合も、断熱材22に囲われた空間内に配置されることは、上述したとおりである。
そうすると、引用文献1には、引用発明の「断熱材22で囲われた空間」が「単一の熱絶縁された区画」であることが記載されているから、引用発明の「加熱手段」が「断熱材22で囲われた空間内に」「加熱室17」とともに「配置されて」いる構成は、請求人が主張する上記「本願発明の加熱装置24(本願の図1~図4及び明細書の〔0014〕に記載)のように、加熱すべき熱絶縁された区画と同じ区画14内に配置されている構成」に実質的に相当するものといえる。
ウ 次に、上記ウの主張についてみると、上述のとおり、引用文献1記載の加熱手段は、加熱室17とともに、断熱材22で囲われた空間、すなわち「単一の熱絶縁された区画」内に配置されているものであり、加熱手段と加熱室17の間に断熱材22は介在しないから、加熱手段をスチーム加熱装置に置き換えたときに、熱伝達が断熱材22によって阻止されることがないことは明らかである。そして、スチーム加熱装置への置き換えに際して、引用文献3には加熱室内にスチーム加熱装置が配置されることが示されるところ、スチーム加熱を妨げるような仕切り部を設けないようにすることは設計上きわめて自然なことである。
よって、加熱手段のスチーム加熱装置への置換に何ら阻害要因はない。
エ 次に、上記エの主張についてみると、上記イの主張と同様、請求人の主張は、要するに、引用文献1記載の加熱室17が本願発明の熱絶縁された区画に相当するものとして、引用文献1記載の冷却手段が加熱室17の外側に配置されていることをもって、本願発明のような、冷蔵装置が熱絶縁された区画と同じ区画内に配置されている構成ではないとするものである。しかしながら、引用文献1記載の加熱室17そのものは、本願発明の「単一の熱絶縁された区画」に相当するものでなく、加熱手段、冷却手段、加熱室17が配置される「断熱材22で囲われた空間」こそが、本願発明の「単一の熱絶縁された区画」に相当するものといえることは上述したとおりである。
そうすると、断熱材22に囲われた空間内において、加熱室17の後壁と断熱材22の内壁との間に配置されたペルチェ素子25を、そのいずれに取り付けるかは、当業者が適宜になし得る設計的事項にすぎないものである。また、冷却効果を考慮してペルチェ素子25の冷却面が加熱室内に露出するように、加熱室17の後壁を省くなどすることも当業者が適宜になし得る設計的事項である。
よって、請求人の上記ア~エの主張は、いずれも失当である。
8 したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2~4に記載された事項ないし周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-011261