特許拒絶査定不服審判
2015-009266
少なくとも1種の固体脂肪アルコールを含む組成物、それを用いる染色または明色化方法およびデバイス
- 審判番号
- 2015-009266
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-541572外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年05月19日
- 審決日
- 2017年05月29日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011-541572「少なくとも1種の固体脂肪アルコールを含む組成物、それを用いる染色または明色化方法およびデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 6月24日国際公開、WO2010/070244、平成24年 6月 7日国内公表、特表2012-512856〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2009年(平成21年)12月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年12月19日 フランス(FR))を国際出願日とする出願であって、平成27年1月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年5月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされた。
その後、当審において、平成28年8月5日付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対して、平成29年2月8日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし16に係る発明は、平成29年2月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項16に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項16に記載されている事項により特定される次のとおりのものである。
「 1つのコンパートメントに、1種または複数の脂肪物質、任意選択で、1種または複数の酸化染料を含む第1組成物を、また別のコンパートメントに、1種または複数の酸化剤を含む第2組成物を含む、2-コンパートメントデバイスであって、第1組成物および第2組成物を混合することにより、
(a)周囲温度(25℃)で固体である1種または複数の脂肪アルコールを含み、C6~C16低級アルカン、動物、ミネラルまたは合成由来の非シリコーンオイル、周囲温度で固体である脂肪アルコール以外の脂肪アルコール、脂肪酸および/または脂肪アルコールのエステル、非シリコーンワックス、シリコーン、あるいはこれらの混合物から選択される少なくとも1種のさらなる脂肪物質を含む脂肪物質混合物を少なくとも25重量%;
(b)1種または複数の酸化剤;および
(c)アルカリ金属炭酸塩もしくは炭酸水素塩、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、および25℃でのpKbが12未満である有機アミンから選択される1種または複数の塩基性化剤
を美容上許容される媒体中に含む、ヒトのケラチン繊維を染色または明色化するための組成物が得られ、
第1組成物および第2組成物は、周囲温度で固体である少なくとも1種の脂肪アルコールを含み、前記1種または複数の塩基性化剤は前記第1組成物中に含まれる
ことを特徴とする、
2-コンパートメントデバイス。」
第3 当審の平成28年8月5日付け拒絶理由の概要
当審の平成28年8月5日付け拒絶理由のうち、請求項16に係る発明に対する特許法第29条第2項の規定に係る拒絶理由の概要は、次のとおりである。
本願の請求項16に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2003-81790号公報(以下「引用例1」という。)及び特開2003-81792号公報(以下「引用例2」という。)に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 引用例記載の事項
1 引用例1には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加した。)。
(引1-ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、良好な染毛力又は脱色力を有するとともに、使用時に粘度変化を抑制することができる脱色剤組成物及び染毛剤組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】・・・
・・・
【0005】一方、染毛剤組成物は、染料としての酸化染料中間体とアンモニア等のアルカリ剤を含有する液状又はクリーム状の第1剤及び過酸化水素等の酸化剤を含有する液状又はクリーム状の第2剤とからなる二剤型の酸化染毛剤として知られている。
【0006】そして、これらの脱色剤組成物及び染毛剤組成物において、第2剤中に10.0重量%以上の油性成分を配合することにより、脱色力及び染毛力を向上させる試みがなされている。」
(引1-イ)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の脱色剤組成物及び染毛剤組成物において、第2剤中に10.0重量%以上の油性成分を配合することにより、脱色力又は染毛力を向上させると、使用時に粘度変化を起こし、液だれ等を生じ易いという問題があった。
【0008】本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、良好な染毛力又は脱色力を有するとともに、使用時に粘度変化を抑制することができる脱色剤組成物及び染毛剤組成物を提供することにある。」
(引1-ウ)「【0009】
【課題を解決するための手段】・・・
【0011】・・・請求項4に記載の発明の染毛剤組成物では、アルカリ剤及び染料を含有する第1剤と、酸化剤及び水を含有する第2剤とからなる染毛剤組成物であって、第2剤が10.0~65.0重量%の油性成分を含有し、該油性成分として少なくともグリセリンモノアルキルエーテルを含有するものである。
【0012】請求項5に記載の発明の染毛剤組成物では、請求項4に記載の発明において、前記グリセリンモノアルキルエーテルの含有量が0.1~15.0重量%であるものである。」
(引1-エ)「【0042】・・・
(第2の実施形態)以下、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0043】第2の実施形態の染毛剤組成物は、染料及びアルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤が混合され、毛髪の染色に使用される。」
(引1-オ)「【0043】・・・
[第1剤]本実施形態における第1剤には、染料及びアルカリ剤を含有し、その他の添加成分として油性成分、界面活性剤、水等を含有する液状又はクリーム状組成物である。
【0044】染料は、毛髪を染色するために第1剤に配合される。染料の具体例としては、酸化染料中間体、直接染料、レゾルシン、・・・等が挙げられる。なお、酸化染料中間体は、第2剤中に含有する酸化剤により酸化されることによって毛髪を染色する。酸化染料中間体の具体例としては、フェニレンジアミン類、・・・等が挙げられる。これらの中でも、染毛力が強いことからパラフェニレンジアミン、・・・が好ましい。・・・
【0045】アルカリ剤は、酸化剤の作用を促進することによって毛髪に明度を付与するために第1剤に配合される。アルカリ剤の具体例としては、アンモニア、アルカノールアミン、アンモニウム塩、有機アミン類(2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、グアニジン等)、無機アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン等)及びそれらの塩等が挙げられる。これらのアルカリ剤は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。このアルカリ剤の配合量は、第1剤のpHが8~12の範囲となる量に設定することが好ましい。第1剤のpHが8未満では酸化剤の作用を十分に促進することができない。一方、12を超えると毛髪に損傷等の不具合が発生しやすい。
【0046】油性成分は、アルカリ剤による酸化剤の促進作用を向上させ、良好な染毛力を得るために配合される。油性成分の具体例としては、第1の実施形態の第2剤に記載したものが挙げられる。第1剤中の油性成分の配合量は、好ましくは1.0~20.0重量%、さらに好ましくは3.0~12.0重量%である。1.0重量%未満及び20.0重量%を超えて配合すると、染毛剤組成物の乳化安定性を確保しにくい。
【0047】界面活性剤は、第1剤に分散安定性を付与するために配合される。界面活性剤の具体例としては、第1実施形態の第2剤に記載のものが挙げられ、本実施形態の第1剤に乳化安定性を付与することから非イオン性界面活性剤の少なくとも一種であることが好ましい。・・・
【0048】水は、染料、アルカリ剤及び油性成分の溶媒又は分散媒として適量配合される。第2の実施形態の第1剤には、その他の添加成分として、第1の実施形態に挙げた成分を配合してもよい。・・・」
(引1-カ)「【0048】・・・
[第2剤]本実施形態における第2剤には、前記第1実施形態における第2剤と同じものが用いられる。」
(引1-キ)「【0049】よって、第2の実施形態の染毛剤組成物によれば、染料及びアルカリ剤を含有する第1剤と混合されることにより、毛髪を種々の色調に染色することができる。そして、第2の実施形態の染毛剤組成物によれば、良好な染毛力を得ることができるとともに、水中油滴型の安定な乳化液となるため、使用時に粘度変化を抑制することができる。」
(引1-ク)「【0013】
【発明の実施の形態】(第1の実施形態)以下、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0014】・・・
[第1剤]本実施形態における第1剤は、アルカリ剤を含有し、その他の添加成分として過硫酸塩等を含有する粉末状組成物である。
・・・
【0021】第1の実施形態の脱色剤組成物の第1剤には、その他の添加成分として、分散剤、水溶性高分子化合物、pH調整剤、各種界面活性剤、粘度調整剤、保湿剤、帯電防止剤、毛髪柔軟剤、酸化防止剤、防腐剤、キレート剤、賦形剤、色素、香料等が挙げられる。
・・・
【0023】水溶性高分子化合物は粘度調整のために配合される。この水溶性高分子化合物としては、粘度調整の効果が高いことから、・・・ヒドロキシエチルセルロース、・・・が好ましい。・・・
【0024】・・・
[第2剤]本実施形態における第2剤は、酸化剤及び油性成分を含有し、該油性成分として少なくともグリセリンモノアルキルエーテルを含有している。さらに、その他の添加成分として界面活性剤等を含有している。そして、この第2剤は、液状又はクリーム状組成物である。
【0025】酸化剤は、毛髪に含まれるメラニンを脱色するために配合される。酸化剤の具体例としては、過酸化水素等が挙げられる。・・・
【0026】油性成分は、アルカリ剤による酸化剤の作用を促進させ、脱色力を得るために配合される。油性成分の具体例としては、油脂類、ロウ類、炭化水素類、エステル類、シリコーン類、高級脂肪酸、高級アルコール等が挙げられる。油脂類としては、アボカド油、ホホバ油、マカデミアンナッツ油、オリーブ油等のグリセライド等、ロウ類としては、ミツロウ、ラノリン等、炭化水素類としては、流動パラフィン、固形パラフィン、イソパラフィン、スクワラン等が挙げられる。エステル類としては、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等、シリコーン類としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン等が挙げられる。高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、2-ヘキシルデカノール、2-オクチルドデカノール、グリセリンモノアルキルエーテル等が挙げられる。
・・・
【0028】油性成分としてのグリセリンモノアルキルエーテルは、前記の効果の発現に加えて、より安定で粘度変化の少ない水中油滴型の乳化液を得るために配合される。グリセリンモノアルキルエーテルがこのような効果を発揮できるのは、親水基としての2つのヒドロキシル基と疎水基としてのアルキル基をバランス良く有しているためと考えられる。グリセリンモノアルキルエーテルの具体例としては、バチルアルコール(モノステアリルグリセリルエーテル、オクタデシルグリセリルエーテル)、キミルアルコール(グリセリンモノセチルエーテル、モノセチルグリセリルエーテル、ヘキサデシルグリセリルエーテル)、セラキルアルコール(モノオレイルグリセリルエーテル)、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
・・・
【0030】界面活性剤は、第2剤に分散安定性を付与するために配合される。界面活性剤の具体例としては、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。
・・・
【0033】非イオン性界面活性剤は、前記の作用に加えて水と油性成分により水中油滴型乳化物を構成して乳化安定性を付与するために配合される。非イオン性界面活性剤の具体例としては、エーテル型非イオン性界面活性剤及びエステル型非イオン性界面活性剤等が挙げられる。エーテル型非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、POEという)セチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル等が挙げられる。・・・
・・・
【0036】水は酸化剤の溶媒及び油性成分の分散媒として適量配合される。その他の成分として、上記した第1剤に配合されうるその他の添加成分の中から選ばれる少なくとも一種を第2剤に配合してもよい。
【0037】さて、脱色剤組成物を構成する第2剤はグリセリンモノアルキルエーテルを始めとする油性成分及び水を含有している。従って、水中油滴型の安定な乳化液を得ることができる。」
(引1-ケ)「【0060】・・・
(実施例7~12及び比較例4~6)表4に示すように、二剤型の染毛剤組成物として第2剤を調製し、リン酸を添加してpH3に調整した。そして、表5に示すように二剤型の染毛剤組成物として第1剤を調製した。次に、第2剤及び第1剤を重量比において1:1の割合で混合した。
【0061】なお、表4及び表5における数値は重量%を示し、表中のPOEに付随するカッコ内の数値はエチレンオキシドの平均付加モル数を示す。
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
そして、第2剤と第1剤を混合した後に毛束に塗布した。第2剤中における油性成分の含有量合計の算出結果、上記実施例1~6に記載の(1)~(4)の項目及び下記の(6)と(7)の項目についての評価結果を表6に示す。なお、油性成分の含有量合計は重量%で示す。
【0064】(6)染毛力
第1剤と第2剤を混合調製された染毛剤組成物を毛髪に適用し、その毛髪の染色の程度を目視にて観察し、優(◎)、良(○)、やや不良(△)及び不良(×)の4段階で評価した。
【0065】(7)均染性
第1剤と第2剤を混合調製された染毛剤組成物を毛髪に適用し、その毛髪の色ムラの程度を目視にて観察し、優(◎)、良(○)、やや不良(△)及び不良(×)の4段階で評価した。
【0066】
【表6】
表6の結果から明らかなように、実施例7~10では乳化安定性、混合後の粘度の経時変化、操作性、毛髪の感触、染毛力及び均染性のいずれについても良好であった。実施例11ではグリセリンモノアルキルエーテルの配合量が0.05重量%と少ないため、乳化安定性がやや悪く、操作性がやや不良であったが、その他の項目に関しては良好であった。実施例12ではグリセリンモノアルキルエーテルの配合量が20.0重量%と多いため、操作性及び毛髪の感触がやや不良であったが、その他の項目に関しては良好であった。
【0067】これに対し、比較例4では油性成分としてグリセリンモノアルキルエーテルが配合されていないため、粘度の経時変化が不良であった。さらに、乳化安定性がやや悪く、操作性がやや不良であった。比較例5ではグリセリンモノアルキルエーテルが配合されているが、油性成分含有量合計が7.0重量%と少なすぎるため、染毛力及び均染性がやや不良であった。比較例6では油性成分含有量合計が72.0重量%と多すぎるため、操作性及び染毛力がやや不良であり、毛髪の感触及び均染性が不良であった。」
2 引用例1に記載された発明の認定
(引1-ケ)に実施例7~12に関して「第2剤及び第1剤を重量比において1:1の割合で混合した」(段落【0060】)、及び「そして、第2剤と第1剤を混合した後に毛束に塗布した」(段落【0063】)とあることから、(引1-ケ)に記載された実施例10の二剤型の染毛剤組成物は、第1剤及び第2剤を重量比において1:1の割合で混合することにより染毛剤組成物として使用可能になるものと認められる。
よって、上記(引1-ケ)の実施例10に関する記載から、引用例1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「 p-フェニレンジアミン1.0重量%、レゾルシン1.0重量%、セトステアリルアルコール5.0重量%、イソステアリルアルコール2.0重量%、POE(10)セチルエーテル5.0重量%、ヒドロキシエチルセルロース2.0重量%、モノエタノールアミン6.0重量%、及び残量分の精製水からなる第1剤と、
過酸化水素6.0重量%、流動パラフィン40.0重量%、モノステアリルグリセリルエーテル3.0重量%、モノセチルグリセリルエーテル2.0重量%、POE(2)セチルエーテル3.0重量%、POE(30)セチルエーテル3.0重量%、及び残量分の精製水からなる第2剤と、
からなり、第1剤及び第2剤を重量比において1:1の割合で混合することにより染毛剤組成物として使用可能になる二剤型の染毛剤組成物。」
3 引用例2には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加した。)。
(引2-ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、仕上り後の毛髪に潤いを持たせるとともに、脱色力又は染毛力を十分に向上させることができ、かつ操作性が良好な脱色剤組成物及び染毛剤組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】・・・染毛剤組成物は、染料及びアルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤とからなる二剤型の酸化染毛剤として知られている。
【0003】そして、この種の脱色剤組成物及び染毛剤組成物においては、油性成分を配合することによって、仕上り後の毛髪に潤いを持たせるとともに、脱色力又は染毛力を向上させる試みがなされている。」
(引2-イ)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の脱色剤組成物及び染毛剤組成物において、油性成分を配合し、上記の機能を発現させると、薬液が高粘度となり、操作性が悪くなるという問題があった。
【0005】本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、仕上り後の毛髪に潤いを持たせるとともに、脱色力又は染毛力を十分に向上させることができ、かつ操作性が良好な脱色剤組成物及び染毛剤組成物を提供することにある。」
(引2-ウ)「【0006】
【課題を解決するための手段】・・・
【0008】請求項4に記載の発明の染毛剤組成物では、染料及びアルカリ剤と混合して使用され、酸化剤、油性成分及び水を含有する染毛剤組成物であって、油性成分が、常温で液体の油性成分(a)と、常温で固体の油性成分(b)とから構成され、油性成分の含有量が10.0~65.0重量%で、成分(a)及び成分(b)の重量比((a)/(b))が3~60であるものである。」
(引2-エ)「【0016】これらの中でも、仕上り後の毛髪に潤いを持たせる効果が高いことから、炭化水素、高級脂肪酸及びシリコーン類が好ましい。常温で固体の油性成分は、前述の機能に加えて、乳化安定性を付与するとともに、適度な粘度を得るために配合される。常温で固体の油性成分の具体例としては、炭化水素、動物脂、ロウ類、高級アルコール、高級脂肪酸、エステル類等が挙げられる。炭化水素としては、オゾケライト、セレシン、パラフィン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等、動物脂としては、牛脂、カカオ脂等、ロウ類としては、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ラノリン等が挙げられる。高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、リシノレイン酸等が挙げられる。エステル類としては、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル等が挙げられる。
【0017】これらの中でも、乳化安定性を付与する効果が高いことから、炭素数14~22の高級アルコールが好ましい。この炭素数が14未満の高級アルコールの場合、親水性が強すぎるため、乳化安定性を付与する効果が得られにくい。一方、22を超えると、疎水性が強すぎるため、乳化安定性を付与する効果が得られにくい。常温で固体の油性成分の配合量は好ましくは0.2~3.0重量%である。この配合量が0.2重量%未満であると適度な粘度が得られにくい。一方、3.0重量%を超えると粘度が高くなりやすい。」
(引2-オ)「【0032】第2の実施形態の染毛剤組成物には、酸化剤、水、常温で液体の油性成分(a)及び常温で固体の油性成分(b)を含有する。その他、界面活性剤等が配合されている。この染毛剤組成物は、液状、乳液状等の毛髪に適用可能な形態で第2剤として使用され、毛髪を染色するときには染料及びアルカリ剤を含有する第1剤と混合される。」
(引2-カ)「【0050】・・・
(実施例5~8及び比較例7~12)表4に示すように、二剤型の染毛剤組成物として第2剤を調製し、リン酸を添加してpH3に調整した。そして、表5に示すように二剤型の染毛剤組成物として第1剤を調製した。次に、第2剤及び第1剤を1:1の割合で混合した。
【0051】なお、表4及び表5における数値は重量%を示し、表5の28重量%アンモニア水の数値はアンモニア換算したときの重量%で表す。また、表中のPOEに付随するカッコ内の数値はエチレンオキシドの平均付加モル数を示す。
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
表4の各例の染毛剤組成物について、油性成分の含有量合計及び常温で液体の油性成分(a)と常温で固体の油性成分(b)との重量比((a)/(b))を算出した。この算出結果を表6に示す。そして、第2剤と第1剤を混合した後に毛束に塗布した。また、上記実施例1~4に記載の(1)~(4)の項目及び下記の(5)と(6)の項目についての評価結果を表6に示す。なお、油性成分の含有量合計は重量%で示す。
【0054】(5)染色性
第1剤と第2剤を混合調製された染毛剤組成物を毛髪に適用し、その毛髪の染色の程度を目視にて観察し、優(◎)、良(○)、やや不良(△)及び不良(×)の4段階で評価した。
【0055】(6)均染性
第1剤と第2剤を混合調製された染毛剤組成物を毛髪に適用し、その毛髪の色ムラの程度を目視にて観察し、優(◎)、良(○)、やや不良(△)及び不良(×)の4段階で評価した。
【0056】
【表6】
表6の結果から明らかなように、実施例5~8では染色性、操作性、乳化安定性、混合粘度、均染性及び毛髪の感触のいずれについても良好な効果を示すものであった。
【0057】これに対し、比較例7では油性成分の含有量が2.1重量%と少なく、油性成分の重量比も0.05と低いため、混合粘度、操作性及び染色性がやや不良であった。比較例8では油性成分の重量比が6000と高いため、乳化安定性がやや悪く、混合粘度及び操作性がやや不良であった。比較例9では油性成分の重量比が2と低いため、混合粘度及び操作性が不良であり、毛髪の感触もやや不良であった。比較例10では油性成分の含有量が5.5重量%と少ないため、染色性及び均染性がやや不良であった。比較例11では油性成分の含有量が70.0重量%と多いため、混合粘度及び操作性が不良となり、染色性、均染性及び毛髪の感触がやや不良であった。比較例12では比較例11より固体の油性成分の配合量を減らし、液体の油性成分を多く配合したが、操作性及び染色性がやや不良となり、均染性及び毛髪の感触が不良であった。」
第5 本願発明と引用発明との対比
1 本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「染毛剤組成物」が、ヒトの毛髪、すなわちケラチン繊維を染色するためのものであることは明らかである。
本願発明の「2-コンパートメントデバイス」は、第1組成物に任意選択で酸化染料を含むものであるところ、酸化染料を含む場合には、第1組成物及び第2組成物を混合することにより、ヒトのケラチン繊維を染色するための組成物が得られるものである。
よって、引用発明の「二剤型の染毛剤組成物」と本願発明の「2-コンパートメントデバイス」とは、「ヒトのケラチン繊維を染色するための二剤型染毛剤」である点において共通する。
(2)引用発明の「混合することにより染毛剤組成物として使用可能になる」ことは、本願発明の「混合することにより」、「ヒトのケラチン繊維を染色」「するための組成物が得られ」ることに相当する。
よって、引用発明の「第1剤」及び「第2剤」は、混合することによりヒトのケラチン繊維を染色するための組成物が得られる点において、それぞれ本願発明の「第1組成物」及び「第2組成物」に相当する。
(3)引用発明の第1剤に含まれる「セトステアリルアルコール」は、(引1-ク)の段落【0026】の記載から、油性成分として用いられているものである。
よって、引用発明の「セトステアリルアルコール」は、本願発明の「脂肪物質」の1種に相当する。
(4)引用発明の第1剤に含まれる「イソステアリルアルコール」は、(引1-ク)の段落【0026】の記載から、油性成分として用いられているものである。
よって、引用発明の「イソステアリルアルコール」は、本願発明の「脂肪物質」の1種に相当する。
(5)引用発明の「p-フェニレンジアミン」は、(引1-オ)の段落【0044】の記載から、酸化染料中間体として用いられており、酸化染料中間体は酸化染料に属するものである。
また、本願明細書の発明の詳細な説明の「【0087】 酸化染料は通常、1種または複数のカプラーと任意選択で組み合わせて、1種または複数の酸化塩基から選択される。【0088】 酸化塩基は、例えば、パラ-フェニレンジアミン、ビス(フェニル)アルキレンジアミン、パラ-アミノフェノール、オルト-アミノフェノール、および複素環式塩基、ならびにこれらの付加塩から選択される。【0089】 挙げることができるパラ-フェニレンジアミンの中には、例えば、パラ-フェニレンジアミン、・・・、ならびに酸とこれらの付加塩がある。【0090】 上記パラ-フェニレンジアミンの中では、パラ-フェニレンジアミン、・・・、ならびに酸とこれらの付加塩が、特に好ましい。」との記載を参酌するに、本願発明でいう酸化染料は、パラ-フェニレンジアミン等の酸化塩基を包含するものである。
よって、引用発明の「p-フェニレンジアミン」は、本願発明の「酸化染料」に相当する。
(6)上記(2)ないし(5)を踏まえると、引用発明の「p-フェニレンジアミン1.0重量%、レゾルシン1.0重量%、セトステアリルアルコール5.0重量%、イソステアリルアルコール2.0重量%、POE(10)セチルエーテル5.0重量%、ヒドロキシエチルセルロース2.0重量%、モノエタノールアミン6.0重量%、及び残量分の精製水からなる第1剤」は、本願発明の「1種または複数の脂肪物質」、「1種または複数の酸化染料を含む第1組成物」に相当する。
(7)引用発明の「過酸化水素」は、(引1-ク)の段落【0025】の記載から、酸化剤として用いられているものである。
よって、引用発明の「過酸化水素」は、本願発明の「酸化剤」に相当する。
(8)上記(2)及び(7)を踏まえると、引用発明の「過酸化水素6.0重量%、流動パラフィン40.0重量%、モノステアリルグリセリルエーテル3.0重量%、モノセチルグリセリルエーテル2.0重量%、POE(2)セチルエーテル3.0重量%、POE(30)セチルエーテル3.0重量%、及び残量分の精製水からなる第2剤」は、本願発明の「1種または複数の酸化剤を含む第2組成物」に相当する。
(9)
ア
(ア)引用発明は、第1剤及び第2剤を重量比において1:1の割合で混合することにより染毛剤組成物として使用可能になるものであるから、第1剤及び第2剤を混合した染毛剤組成物は、混合前の第1剤及び第2剤が含んでいる成分を全て含んでいるものである。
(イ)引用発明の第1剤及び第2剤に含まれる「精製水」は、それぞれ(引1-キ)の段落【0048】及び(引1-ク)の段落【0036】の記載から、溶媒又は分散媒として用いられており、引用発明の第1剤及び第2剤を重量比において1:1の割合で混合した染毛剤組成物において、第1剤及び第2剤に含まれていた各成分は、溶媒又は分散媒である精製水中に含まれているものと認められる。
(ウ)上記(イ)を踏まえると、引用発明の「精製水」は、本願発明の「美容上許容される媒体」に相当する。
イ
(ア)本願発明の「脂肪物質」の1種に相当する引用発明の「セトステアリルアルコール」は、本願発明の「脂肪物質」のうちの「周囲温度(25℃)で固体である1種または複数の脂肪アルコール」に相当する。
(イ)本願発明の「脂肪物質」の1種に相当する引用発明の「イソステアリルアルコール」は、本願発明の「脂肪物質」のうちの「周囲温度で固体である脂肪アルコール以外の脂肪アルコール」に相当する。
(ウ)引用発明の第2剤に含まれる「流動パラフィン」は、石油から得られる鎖式飽和炭化水素であり、(引1-ク)の段落【0026】の記載から、油性成分として用いられている。
よって、引用発明の「流動パラフィン」は、本願発明の「脂肪物質」のうちの「ミネラル由来の非シリコーンオイル」に相当する。
(エ)引用発明の第2剤に含まれる「モノステアリルグリセリルエーテル」は、(引1-ク)の段落【0028】の記載から、油性成分として用いられている。
よって、引用発明の「モノステアリルグリセリルエーテル」は、本願発明の「脂肪物質」に相当する。
(オ)引用発明の第2剤に含まれる「モノセチルグリセリルエーテル」は、(引1-ク)の段落【0028】の記載から、油性成分として用いられている。
よって、引用発明の「モノセチルグリセリルエーテル」は、本願発明の「脂肪物質」に相当する。
(カ)引用発明の第1剤は、油性成分として、本願発明の「脂肪物質」のうちの「周囲温度(25℃)で固体である1種または複数の脂肪アルコール」に相当するセトステアリルアルコール5.0重量%、及び、本願発明の「脂肪物質」のうちの「周囲温度で固体である脂肪アルコール以外の脂肪アルコール」に相当するイソステアリルアルコール2.0重量%を含み、引用発明の第2剤は、油性成分として、本願発明の「脂肪物質」のうちの「ミネラル由来の非シリコーンオイル」に相当する流動パラフィン40.0重量%、本願発明の「脂肪物質」に相当するモノステアリルグリセリルエーテル3.0重量%、及び、本願発明の「脂肪物質」に相当するモノセチルグリセリルエーテル2.0重量%を含むことから、引用発明の第1剤及び第2剤を重量比において1:1の割合で混合した染毛剤組成物は、精製水中にセトステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、流動パラフィン、モノステアリルグリセリルエーテル及びモノセチルグリセリルエーテルを含む油性成分混合物を26.0重量%含んでいる。
このことは、本願発明の、「第1組成物および第2組成物を混合することにより、(a)周囲温度(25℃)で固体である1種または複数の脂肪アルコールを含み、C6~C16低級アルカン、動物、ミネラルまたは合成由来の非シリコーンオイル、周囲温度で固体である脂肪アルコール以外の脂肪アルコール、脂肪酸および/または脂肪アルコールのエステル、非シリコーンワックス、シリコーン、あるいはこれらの混合物から選択される少なくとも1種のさらなる脂肪物質を含む脂肪物質混合物を少なくとも25重量%」「を美容上許容される媒体中に含む」ことに相当する。
ウ 引用発明の第2剤は、本願発明の「酸化剤」に相当する「過酸化水素」を含むことから、引用発明の第1剤及び第2剤を重量比において1:1の割合で混合した染毛剤組成物は、精製水中に本願発明の「酸化剤」に相当する「過酸化水素」を含んでいる。
このことは、本願発明の、「第1組成物および第2組成物を混合することにより」、「(b)1種または複数の酸化剤」「を美容上許容される媒体中に含む」ことに相当する。
エ
(ア)引用発明の第1剤に含まれる「モノエタノールアミン」は、(引1-オ)の段落【0045】の記載から、アルカリ剤として用いられている。
そして、本願明細書の発明の詳細な説明の「【0121】 有機塩基性化剤は、25℃でのpKbが12未満、好ましくは10未満、より一層有利には6未満である有機アミンから好ましくは選択される。・・・ 【0122】 有機塩基性化剤は、例えば、アルカノールアミン、・・・から選択され、・・・【0127】 1から3個の同じかまたは異なるC1~C4ヒドロキシルアルキル基を含むモノ-、ジ-もしくはトリ-アルカノールアミンのようなアルカノールアミンから選択される有機アミンが、本発明の実施には特に適している。【0128】 この種類の化合物の中では、モノエタノールアミン、・・・を挙げることができる。」との記載によれば、モノエタノールアミンは25℃でのpKbが12未満の有機アミンである。
よって、引用発明の第1剤に含まれる「モノエタノールアミン」は、本願発明の「25℃でのpKbが12未満である有機アミン」である「塩基性化剤」に相当する。
(イ)引用発明の第1剤は、本願発明の「25℃でのpKbが12未満である有機アミン」である「塩基性化剤」に相当する「モノエタノールアミン」を含むことから、引用発明の第1剤及び第2剤を重量比において1:1の割合で混合した染毛剤組成物は、精製水中に本願発明の「25℃でのpKbが12未満である有機アミン」である「塩基性化剤」に相当する「モノエタノールアミン」を含んでいる。
このことは、本願発明の、「第1組成物および第2組成物を混合することにより」、「(c)アルカリ金属炭酸塩もしくは炭酸水素塩、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、および25℃でのpKbが12未満である有機アミンから選択される1種または複数の塩基性化剤を美容上許容される媒体中に含む」ことに相当する。
オ 上記アないしエを踏まえると、引用発明の「第1剤及び第2剤を重量比において1:1の割合で混合することにより染毛剤組成物として使用可能になる」ことは、本願発明の「第1組成物および第2組成物を混合することにより、 (a)周囲温度(25℃)で固体である1種または複数の脂肪アルコールを含み、C6~C16低級アルカン、動物、ミネラルまたは合成由来の非シリコーンオイル、周囲温度で固体である脂肪アルコール以外の脂肪アルコール、脂肪酸および/または脂肪アルコールのエステル、非シリコーンワックス、シリコーン、あるいはこれらの混合物から選択される少なくとも1種のさらなる脂肪物質を含む脂肪物質混合物を少なくとも25重量%; (b)1種または複数の酸化剤;および (c)アルカリ金属炭酸塩もしくは炭酸水素塩、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、および25℃でのpKbが12未満である有機アミンから選択される1種または複数の塩基性化剤を美容上許容される媒体中に含む、ヒトのケラチン繊維を染色」「するための組成物が得られ」ることに相当する。
(10)上記「(9)イ(ア)」を踏まえると、引用発明において、第1剤が「セトステアリルアルコール」を含むことは、本願発明において「第1組成物」「は、周囲温度で固体である少なくとも1種の脂肪アルコールを含」むことに相当する。
(11)上記「(9)エ(ア)」を踏まえると、引用発明において、第1剤が「モノエタノールアミン」を含むことは、本願発明において「1種または複数の塩基性化剤は」「第1組成物中に含まれる」ことに相当する。
(12)引用発明の「レゾルシン」は、(引1-オ)の段落【0044】の記載から、染料として用いられている。
そして、染料としてのレゾルシンは、通常、酸化染料の中間体と結合して発色する酸化染料のカプラーとして用いられており、引用発明は、酸化染料中間体としてp-フェニレンジアミンを含んでいることから、引用発明の「レゾルシン」は酸化染料のカプラーとして用いられているものと認められる。
ここで、本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0087】の「酸化染料は通常、1種または複数のカプラーと任意選択で組み合わせて、1種または複数の酸化塩基から選択される。」との記載を参酌するに、本願発明でいう酸化染料は、カプラーを包含しないものと認められるが、本願発明はカプラーの使用を排除するものではない。
(13)(引1-ク)の段落【0023】及び【0033】の記載から、引用発明の第1剤は、粘度調製のための水溶性高分子化合物としてのヒドロキシエチルセルロース、及び、界面活性剤としてPOE(10)セチルエーテルを含み、引用発明の第2剤は、界面活性剤としてPOE(2)セチルエーテル及びPOE(30)セチルエーテルを含むが、本願発明はこれらの成分の使用を排除するものではない。
2 一致点及び相違点
よって、本願発明と引用発明とは、
「 1種または複数の脂肪物質、1種または複数の酸化染料を含む第1組成物と、1種または複数の酸化剤を含む第2組成物を含む、ヒトのケラチン繊維を染色するための二剤型染毛剤であって、第1組成物および第2組成物を混合することにより、
(a)周囲温度(25℃)で固体である1種または複数の脂肪アルコールを含み、C6~C16低級アルカン、動物、ミネラルまたは合成由来の非シリコーンオイル、周囲温度で固体である脂肪アルコール以外の脂肪アルコール、脂肪酸および/または脂肪アルコールのエステル、非シリコーンワックス、シリコーン、あるいはこれらの混合物から選択される少なくとも1種のさらなる脂肪物質を含む脂肪物質混合物を少なくとも25重量%;
(b)1種または複数の酸化剤;および
(c)アルカリ金属炭酸塩もしくは炭酸水素塩、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、および25℃でのpKbが12未満である有機アミンから選択される1種または複数の塩基性化剤
を美容上許容される媒体中に含む、ヒトのケラチン繊維を染色するための組成物が得られ、
第1組成物は、周囲温度で固体である少なくとも1種の脂肪アルコールを含み、前記1種または複数の塩基性化剤は前記第1組成物中に含まれる、ヒトのケラチン繊維を染色するための二剤型染毛剤。」
の発明である点において一致し、次の相違点1及び2において相違する。
(相違点1)
「第2組成物」が、本願発明においては、「周囲温度で固体である少なくとも1種の脂肪アルコールを含む」のに対し、引用発明においては、そのような特定がなされていない点。
(相違点2)
ヒトのケラチン繊維を染色するための二剤型染毛剤が、本願発明においては、1つのコンパートメントに第1組成物を、また別のコンパートメントに第2組成物を含む、2-コンパートメントデバイスであるのに対し、引用発明においては、そのような特定がなされていない点。
第6 当審の判断
1 上記各相違点について検討する。
ア 相違点1について
二剤型染毛剤において、第1剤及び第2剤に含ませる油性成分の種類は、その目的から見て許容される範囲において、選択しうるものである。
また、引用例2は、二剤型の染毛剤に関する文献であり、(引2-イ)、(引2-ウ)及び(引2-カ)から、仕上り後の毛髪に潤いを持たせるとともに、染毛力を十分に向上させることができ、かつ操作性が良好な染毛剤組成物を得るために、酸化剤を含む第2剤の油性成分を常温で液体の油性成分と常温で固体の油性成分とから構成した二剤型の染毛剤組成物が記載されている。
そして、(引2-エ)には、高級アルコールが乳化安定性を付与する効果が高いことが記載され、(引2-カ)には、高級アルコールであり常温で固体の油性成分であるセタノール(本願発明1の周囲温度で固体である少なくとも1種の脂肪アルコールに相当する。)を、第1剤及び第2剤の双方に含ませた実施例が記載されている。
引用例1及び2は、二剤型の染毛剤として共通する技術分野に関するものであり、引用例2に接した当業者であれば、高級アルコールの乳化安定性を付与する効果を期待して、引用発明において、第1剤に含まれている高級アルコールであるセトステアリルアルコールを第2剤にも含ませ、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項のように構成することは、容易に想到しうることである。
イ 相違点2について
二剤型染毛剤において、第1剤及び第2剤が使用前に混合してしまうことを防止するために、第1剤及び第2剤を分離収容することは、本願優先日当時における技術常識であり、第1剤及び第2剤をそれぞれ異なるコンパートメントに収容した2-コンパートメントデバイスとすることも普通に行われている事項である。
よって、引用発明において、第1剤及び第2剤をそれぞれ異なるコンパートメントに収容した2-コンパートメントデバイスとして相違点2に係る本願発明の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到しうることである。
2 本願発明の奏する作用効果
(引1-ケ)の【表6】には、引用発明に相当する実施例10について、染毛力、均染性、粘度の経時変化及び操作性に関してよい評価が得られたことが記載されている。
(引2-カ)の【表6】にも、引用例2に記載された実施例において、染色性、均染性、混合粘度及び操作性に関してよい評価が得られたことが記載されている。
そして、(引1-ア)の段落【0006】に第2剤中に10.0重量%以上の油性成分を配合することにより、染毛力を向上させる試みがなされていることが記載されていることから、本願発明の脂肪物質に相当する油性成分の含有量を増加させることにより染毛力が向上することも、当業者であれば予測しうる事項である。
また、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を見ても、第1組成物及び第2組成物の双方が周囲温度で固体である少なくとも1種の脂肪アルコールを含むことの技術的意義を見出すことはできない。
よって、本願発明が、引用例1及び2の記載事項から当業者が予測しうる程度を超えた、格別な効果を奏するものとは認められない。
3 小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、引用例2の記載事項、及び本願優先日当時において周知な事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2015-009266