特許拒絶査定不服審判
2015-008967
繊維強化熱可塑性樹脂成形品
- 審判番号
- 2015-008967
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-104079外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年05月14日
- 審決日
- 2017年02月21日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人特許事務所サイクス
- 分類
- P18 .121-WZ (B29C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-104079「繊維強化熱可塑性樹脂成形品」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月 3日出願公開、特開2013-199121〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成19年5月23日(優先権主張 平成18年5月25日、平成18年6月15日及び平成18年9月15日)を出願日とする特許出願である特願2007-136363号の一部を、平成25年5月16日に新たな出願としたものであって、平成27年2月20日付けの拒絶査定に対し、同年5月14日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、同年6月11日付けで前置報告がなされ、その後、当審において、平成28年10月25日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月28日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 当審拒絶理由
当審拒絶理由は、要するに、本願の請求項1~4に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものであり、引用刊行物として、以下の引用刊行物が指摘されている。
A. 特開2006-83227号公報(以下、「引用文献A」という。)
B. 特開2006-45390号公報(以下、「引用文献B」という。)
C. 特開平8-318561号公報(以下、「引用文献C」という。)
D. 特開2005-349697号公報(「引用文献D」という。)
第3 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1~4に係る発明は、平成28年12月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂70~35重量%および(B)断面が下記式による扁平率2.3以上の長円形であるガラス繊維30~65重量%を含む熱可塑性樹脂組成物からなり、成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長が1mm以上である成形品の製造方法において、ロービング状のガラス繊維に熱可塑性樹脂を被覆した後、3mm以上の長さにカットされたペレットを緩圧縮なタイプのスクリューを用い、背圧0.2~3MPaおよびスクリュー回転数40~100rpmにて射出成形する工程を含み、
前記(A)熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂のみからなり、前記ポリアミド樹脂の20重量%以上が、0~50モル%のパラキシリレンジアミンと、50~100モル%のメタキシリレンジアミンとからなる混合ジアミンと、炭素数6~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応により得られるポリアミド樹脂である、繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法。
扁平率=ガラス繊維長径(a)/ガラス繊維短径(b)」
第4 引用文献の記載
(1)引用文献Aの記載
引用文献Aには、次のとおり記載されている。
(a)特許請求の範囲
「【請求項1】
成形体中に分散する強化繊維の、含有率が30重量%~90重量%であって、重量平均繊維長が1.5mm~10mmであり、成形体の最大投影面積が20000mm2 以上であり、成形時に断面積100mm2 以下の狭流路の流路長が150mm以下であり、かつ、次の諸性質を備えることを特徴とする長繊維強化ポリアミド樹脂製外装成形体。
1)肉厚2mm以上の成形体部分の、最大線膨張係数が5×10-5K-1以下であり、かつ、最大線膨張係数/最小線膨張係数の比が1.8以下である
2)肉厚2mm以上の成形体部分の、最大吸湿寸法変化率が0.3%以下である
・・・
【請求項4】
上記ポリアミド樹脂が、芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応によって得られるポリアミドを主成分とする芳香族ポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂製外装成形体。
・・・
【請求項8】
上記成形体が、射出成形により得られることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂製外装成形体。」
(b)【0001】
「本発明は、耐衝撃性等の機械的性質や流動性に優れた長繊維強化ポリアミド樹脂の射出成形体に関するものであって、さらに、射出成形時の繊維配向によって生じる成形体の異方性、特に最大線膨張係数、線膨張係数の異方性、最大吸湿寸法変化率を低減した、長繊維強化ポリアミド樹脂製外装成形体・・・に関するものである。」
(c)【0015】
「本発明成形体を構成するポリアミド樹脂としては、・・・ジアミンとジカルボン酸の重縮合によって得られる、種々の重合体及び共重合体を用いることができる。・・・また、芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応より得られるポリアミドを主成分とする芳香族ポリアミド樹脂も好ましい。芳香族ジアミンとしては・・・パラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンとの混合ジアミンを用いることが好ましい。・・・」
(d)【0017】
「本発明成形体は、成形材料として長繊維強化ポリアミド樹脂(A)、又は必要に応じ(A)に後記のリサイクル樹脂(B)を配合した混合物を用いて成形される。その方法は、ポリアミド樹脂について一般に用いられている成形法、すなわち射出成形、射出圧縮成形、・・・等の各種成形法をあげることができるが、成形品外観や設計の自由度、製造工程削減の点から射出成形法で成形することが特に好ましい。長繊維強化ポリアミド樹脂(A)を成形する際、通常、成形機のシリンダー中での溶融・混練時、金型充填時に強化繊維が破砕され、繊維の長さが短くなる危険性があるが、本発明成形体中に分散する強化繊維の重量平均繊維長を1.5mm~10mmの範囲内に保持するには、ペレットの長さ、成形機のシリンダー内壁の形状やスクリュー形状、成形条件(例えば、成形時の樹脂温度、射出速度)、前記狭流路の点を含め金型形状等の調整が有効である。・・・」
(e)【0029】~【0035】)
「【0029】
[実施例1]
ガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットの調製
連続したガラス繊維束(ロービング)を開繊して引き取りながら含浸ダイの中を通し、含浸ダイに供給される溶融樹脂を含浸させた後、賦形、冷却、切断する引き抜き成形法を用いて、繊維含有率50%、長さ10mmのガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットを製造した。樹脂としては、ポリアミド6(・・・)を溶融して使用した。得られたペレット中の、ガラス繊維は、直径16μmで、ペレットと同一長さを有し、ペレットの長さ方向に実質的に平行配列しているものであった。
【0030】
外装成形体の射出成形
添付の図1に示す、厚み3mm、150mm×150mm、最大投影面積22500mm2の平板状外装成形体を、東芝機械製IS-150射出成形機を用いて成形した。すなわち、上記のように調製した長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットを、270℃に加熱した射出成形機の加熱シリンダーに供給し、可塑化、溶融、計量した。なお、可塑化、計量は射出成形機のゲージ圧で5MPaの背圧をかけながら実施した。計量後、金型のキャビティに図示の樹脂ゲートを介し射出充填した。射出時間を2秒とし、射出成形機のゲージ圧力で100MPaの保圧力を20秒かけ、冷却時間25秒経過後に金型を開き長繊維強化ポリアミド樹脂製外装成形体を取り出し、成形を終了した。なお、このときの金型温度は70℃とした。
・・・
【0031】
[実施例2]
実施例1において、長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット調製の際に、繊維含有率30%を50%に代えた以外は、実施例1と同様にして長繊維強化外装成形体を成形した。
・・・
【0032】
[実施例3]
実施例2において、長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット調製の際に、ポリアミド6に代えて芳香族ポリアミド(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、製品名レニー6002、相対粘度2.1、MXD6-PAと略称する。)を使用し、射出成形の際に、射出成形機の加熱シリンダー温度270℃を280℃、金型温度70℃を135℃とした以外は、実施例2と同様にして長繊維強化外装成形体を成形した。
このようにして得られた長繊維強化外装成形体は、剛性感の高い構造体であった。また、該成形体から切り出した試験片について、繊維含有率、重量平均繊維長、機械的性質、線膨張係数、吸湿寸法変化率を評価した結果を後記表-1に示す。評価結果における機械的性質がいずれも非常に高く、さらに、線膨張係数、線膨張の異方性、吸湿寸法変化率がすべて小さく、自動車用外装成形体としての機能を満たすものであった。
・・・
【0035】
【表1】
」
(なお、[実施例1]に言及されている図1の記載は省略する。)
(2)引用文献Bの記載
引用文献Bには、次のとおり記載されている。
(f)特許請求の範囲
「【請求項1】
熱可塑性樹脂からなるペレット中に、
断面が扁平な扁平ガラス繊維フィラメントを、該フィラメントの両端面が前記ペレット表面に達するように、複数一方向に配列させた、扁平ガラス繊維含有ペレット。
【請求項2】
前記扁平ガラス繊維フィラメントは繊維長2~50mmであり、前記熱可塑性樹脂からなるペレット中に配列させる前記扁平ガラス繊維フィラメントの数は500~8000本である、請求項1記載の扁平ガラス繊維含有ペレット。
・・・
【請求項4】
断面が扁平な長尺扁平ガラス繊維フィラメントを複数引き揃えて配列させた繊維束を、
熱溶融した熱可塑性樹脂とともに、貫通孔が形成されているダイスの当該貫通孔に通して引き抜いて、
引き抜いて得られた、熱可塑性樹脂が付着した繊維束を切断する、扁平ガラス繊維含有ペレットの製造方法。
・・・
【請求項6】
請求項4又は5記載の製造方法で得ることのできる扁平ガラス繊維含有ペレット。
【請求項7】
請求項1、2、3又は6記載の扁平ガラス繊維含有ペレットを射出成型する、扁平ガラス繊維含有熱可塑性樹脂成型物の製造方法。
・・・ 」
(g)【0009】
「このような扁平ガラス繊維含有ペレットを用いて射出成型によりガラス繊維含有熱可塑性樹脂成型物を製造すると、成型時のガラス繊維粉砕に伴うガラス繊維の短繊維化を抑制することができる。これにより、引張強度のみならず、衝撃強度も向上し、且つ成型物に方向性が生じてしまう現象も抑制され、反りが防止されて表面平滑性も向上する。更には、熱可塑性樹脂の種類によらず上記効果が発揮され、従来困難であったポリアミド樹脂についても安定した特性が得られる。」
(h)【0021】
「扁平ガラス繊維フィラメントについては、・・・扁平率が2~10(更には3~8)の範囲のものが好適である。・・・『長径』及び『短径』は、扁平ガラス繊維フィラメント20に外接する最小面積の長方形Rを想定したときに、その長方形Rの長辺Raの長さA(繊維断面の最長寸法に相当)、及び、短辺Rbの長さBにそれぞれ相当する。また、「扁平率」は、長辺の長さと短辺の長さの比(A/B)で示される。
(j)【0023】
「・・・『扁平』には非円形状のものが含まれ、例えば、扁平ガラス繊維フィラメント20には、断面形状が楕円形状、長径方向に直線部を有する長円形状、・・・繭型のガラス繊維フィラメントなどが含まれる。本発明では、扁平ガラス繊維フィラメントがペレット中に複数配列されるときに、それぞれの扁平ガラス繊維フィラメントの長径がほぼ同一方向に向くように重なり合って配列しやすい。断面が繭型の扁平ガラス繊維フィラメント・・・についても同様であり、・・・へこみ部とふくらみ部とが組み合わされた集合状態になりやすい。扁平ガラス繊維フィラメントの断面形状は成型品の熱可塑性樹脂の種類や要求特性により適宜選定することができる。」
(k)【0040】~【0042】、【0046】及び【0047】
「【0040】
(実施例1)
<ペレットの作製>
短径8μm、長径31μm(扁平率3.8、換算繊維径17μm)のEガラス組成の扁平ガラス長繊維(長尺扁平ガラス繊維フィラメント)を、ウレタン系集束剤で被覆処理し、4000本集束して、扁平ガラス繊維束を得た。この扁平ガラス繊維束を、熱溶融したナイロン(登録商標)6,6(旭化成(株)製 レオナ1300S)中に導入し溶融含浸して、円形の貫通孔を有するダイスを通過させた後、長さ10mmに切断し、ガラス含有率40質量%の実施例1のペレットを作製した。ここで、「換算繊維径」とは扁平ガラス繊維と同等の断面積を有する丸断面繊維の直径をいう。
<射出成型品の作製>
実施例1のペレットを、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、射出圧4MPaで射出成型し、実施例1の試験片A及び試験片Bを作製した。試験片Aは長さ方向の両側につかみしろ部を有する長さ100mm、幅12mm、厚さ3mmの試験片であり、試験片Bは厚さ1mmの80mm角の平板の試験片である。
・・・
【0042】
(比較例2)
直径17μmの円形断面のガラス繊維を用いた他は実施例1と同様の方法で、比較例2のペレット、試験片A、試験片Bを作製した。
【0047】
【表1】
」
(3)引用文献Cの記載
引用文献Cには、次のとおり記載されている。
(m)【0004】
「長繊維を含む熱可塑性樹脂の成形材料(以下、長繊維強化熱可塑性樹脂と略称する)は、繊維強化材を含まない通常の熱可塑性樹脂の成形材料と同様にペレット状で供給されることが多いが、この場合、長軸のペレットとなる。上記長繊維強化熱可塑性樹脂を用いた射出成形で最も重要な点は、長軸ペレットを可塑化・溶融させる過程で、ガラス繊維(以降、GFと称する)等の繊維強化材を切断させないことである。繊維強化材の切断が著しくなると、成形品の機械的物性等を向上させるという観点から、成形材料として長繊維強化熱可塑性樹脂を用いる利点がなくなる。」
(n)【0008】~【0015】
「【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、射出成形において、特に、長繊維強化熱可塑性樹脂の長軸ペレットをスクリュ1によって可塑化・溶融させる場合、図4に示されるような、繊維強化されていない通常の熱可塑性樹脂の可塑化・溶融に用いられているスクリュ1と同様のものを使用すると、スクリュ1の供給部9、圧縮部2、および計量部3において繊維が切断する場合が多々あった。
【0009】上記供給部9においては、長軸ペレットに圧力が作用している状態で、しかもスクリュ1の回転の影響を受けるため、固体状態の長軸ペレットには曲げ、引張り、回転等が複雑に絡みあった力が作用し、その結果繊維が切断する。また、圧縮部2においては、同圧縮部2がスクリュ1の軸方向の長さに対して短かかったり、圧縮比が大きい場合、圧縮部2の始点近傍において、長軸ペレットは、固体状態、あるいは半溶融状態で急激な圧縮力を受けると同時に、大きな剪断を受けて繊維が切断する。
【0010】さらに、計量部3においては、溝深さが小さい場合等に、溶融樹脂や繊維に大きな剪断が作用して、繊維が切断する。上記のように、図3に示されるような従来のスクリュ1による場合は、可塑化・溶融時に繊維が著しく切断するという不具合が多発し、これにより、成形品の長繊維強化材による優れた特性が発揮されないという問題点が内在する。
【0011】本発明の目的は、長繊維と熱可塑化樹脂との組成物から構成される樹脂成形ペレットの可塑化・溶融を行うものにおいて、樹脂中の繊維強化材の剪断切断の発生を防止して、強度及び剛性が高く、かつ耐衝撃性も大なる樹脂成形品を得ることである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の手段は、長繊維強化熱可塑性樹脂の可塑化・溶融を行うための可塑化スクリュにおいて、同スクリュをテーパ状の圧縮部とこれに延設される計量部のみにて構成して供給部を設けず、かつ圧縮比を1.0~2.5と従来のものよりも小さく構成したことである。
・・・
【0015】
【作用】本発明の第1の手段によれば、スクリュの供給部を備えず、圧縮部と計量部のみとしているので、限られたスクリュ全長の中で圧縮部の長さが最大限に確保され、その結果圧縮部の溝深さの変化が緩やかに形成されると共に、必要な圧縮比も同時に確保される。これにより、樹脂温度などの溶融品質になんら支障なくして、繊維切断の要因となる剪断、圧縮、引張り等の力を抑制でき、繊維の切断を低減することができる。」
(4)引用文献Dの記載
引用文献Dには、次のとおり記載されている。
(p)特許請求の範囲
「【請求項1】
繊維を束ねた繊維束と溶融樹脂をダイスに供給し、ダイス内で繊維束と溶融樹脂とを接触させて繊維束に溶融樹脂を含浸させる工程と、
前記溶融樹脂を含浸させた繊維束をダイスから引き出し、冷却、切断する工程と、を有する繊維強化樹脂ペレットの製造方法において、
前記繊維として、繊維断面の長径と短径の比(長径/短径)が2.5~6である繊維を使用することを特徴とする繊維強化樹脂ペレットの製造方法。
・・・
【請求項3】
前記溶融樹脂が、ポリプロピレン又はポリアミドである請求項1又は2に記載の繊維強化樹脂ペレットの製造方法。
【請求項4】
前記繊維が、ガラス繊維、カーボン繊維又は有機繊維である請求項1~3のいずれかに記載の繊維強化樹脂ペレットの製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の製造方法で作製した繊維強化樹脂ペレットであって、
前記ペレット内の強化繊維がペレットの長手方向と略平行に並列している繊維強化樹脂ペレット。
【請求項6】
請求項5の繊維強化樹脂ペレットを使用した成形品。」
(q)【0005】、【0008】及び【0022】
「【0005】
・・・長繊維ペレットを用いた成形品は、短繊維ペレットを用いた成形品と比較すると、衝撃強度が高い、高温化での強度が高い等の利点が存在する。
しかしながら、短繊維ペレットと比較すると、流動性が劣る、成形時に繊維が折れるため、期待した程の効果が現れない、流動長の長いものは逆に繊維が配向し反り変形が発生する・・・等の欠点も有していた。
・・・
【0008】
本発明者らは、・・・使用する材料について鋭意検討した。その結果、扁平状の断面を有する繊維からなる繊維束を使用することにより、繊維束の中に溶融樹脂が容易に含浸できることを見出し、従来問題とされていた多くの課題が飛躍的に改善できることを見出した。・・・」
・・・
【0022】
上記の方法で製造した繊維強化樹脂ペレットを配合して製造した樹脂成形品は、従来の長繊維強化樹脂ペレットを用いて成形したものに比較し、成形中における長繊維の破断が少なくなるため強度に優れている。
また、流動性にも優れているため、成形品の外観が従来の長繊維強化樹脂ペレットを用いたものに比較し良好である。
さらに、強化繊維が成形品で均一に分散し、かつ繊維の断面方向にもアスベスト比があるため、寸法安定性にも優れ、リブやボス等の立ち壁がある部分の強度も大幅に向上できる。」
(r)【0025】~【0038】
「【0025】
[繊維強化樹脂ペレット]
実施例1
表1に示す短径及び長径を有するガラス繊維(GF)よりなる繊維束(ロービング)を用い、図1に示す製造装置によって繊維強化樹脂ペレットを製造した。
溶融樹脂としては、ポリプロピレン(PP:MI=100)を99wt%と、マレイン酸グラフトポリプロピレン(マレイン酸付加量5wt%、出光石油化学社製、商品名:H-1100P)を1wt%とをドライブレンドしたものを使用した。この樹脂を押出機にて溶融させ(250℃)、ダイス内に連続供給した。
ダイス内に設置した含浸バー間に繊維束を通すことにより、溶融樹脂を含浸させた後、繊維束を引出し、冷却後、長さ12mmに切断し、繊維強化樹脂ペレットを得た。ペレットの直径は2.5mmであった。尚、各例において、ペレットに占めるGFの含有量が約60wt%になるように調整した。・・・
・・・
【0031】
実施例4 比較例4
表3に示す断面形状のGFよりなる繊維束を、溶融樹脂として、ポリアミド6(宇部興産社製、グレード:1013B)を使用し、表3に示す引き出し速度で製造した他は、実施例1と同様にして、繊維強化樹脂ペレットを製造した。
得られたペレットについて、樹脂の含浸性及び繊維の抜けを評価した。結果を表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
[繊維強化樹脂ペレットを使用した成形品]
上記の例で製造した繊維強化樹脂ペレットを使用して、成形品を作製し、評価した。・・・
・・・
【0034】
実施例5 比較例5,6
表4に示すように、実施例1-2、比較例1-1、比較例2-1で製造した樹脂ペレットを用い、成形品に占めるGFの量が30wt%になるように、このペレットとポリプロピレン(PP:MI=30)とをドライブレンドした後、射出成形機にて試験片を作製した。このときの成形温度は250℃とした。・・・
・・・
【0037】
実施例7 比較例8
表5に示すように、実施例4-2及び比較例4-1で製造した長繊維ペレットとポリアミド6(宇部興産製、グレード:1013B)とを、成形品に占めるGF量が30%になるようにブレンドし実施例5と同様に射出成形した。このときの成形温度は260℃とした。
得られた試験片の評価結果及び平板の反りの評価結果を表5に示す。
【0038】
【表5】
」
第5 引用文献Aに記載の発明及び本願発明との対比
(1)引用文献Aに記載の発明
引用文献Aの請求項1、4及び8(上記第4(1)の(a))によれば、引用文献Aには、請求項1に特定される構成を有する長繊維強化ポリアミド樹脂製外装成形体であって、射出成形により得られる成形体が記載されているところ、当該長繊維強化ポリアミド樹脂製外装成形体の具体的な製造例として、[実施例3]には、「実施例2において、長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット調製の際に、ポリアミド6に代えて芳香族ポリアミド(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、製品名レニー6002、相対粘度2.1、MXD6-PAと略称する。)を使用し、射出成形の際に、射出成形機の加熱シリンダー温度270℃を280℃、金型温度70℃を135℃とした以外は、実施例2と同様にして長繊維強化外装成形体を成形した。」と記載され、[実施例2]には、「実施例1において、長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット調製の際に、繊維含有率30%を50%に代えた以外は、実施例1と同様にして長繊維強化外装成形体を成形した」ことが、また、[実施例1]には、上記の製造方法が記載されている(いずれも、同(e))。
更に、実施例3で得られた長繊維強化外装成形から切り出した試験片について、繊維含有率、重量平均繊維長、機械的性質等を評価した結果が表-1(同(e))に記載され、該表によれば、実施例3で得られた成形体の繊維含有率は、50.1重量%、ガラス繊維の重量平均繊維長は2.58mmであった。
そうすると、引用文献Aには、
「成形体中に分散する強化繊維であるガラス繊維の含有率が50.1重量%、重量平均繊維長が2.58mmであり、成形体の最大投影面積が20000mm2以上であり、成形時に断面積100mm2以下の狭流路の流路長が150mm以下であり、かつ、
1)肉厚2mm以上の成形体部分の、最大線膨張係数が5×10-5K-1以下であり、かつ、最大線膨張係数/最小線膨張係数の比が1.8以下、
2)肉厚2mm以上の成形体部分の、最大吸湿寸法変化率が0.3%以下 という性質を備えるガラス長繊維強化芳香族ポリアミド(MXD6-PA)樹脂成形体の製造方法であって、
連続したガラス繊維束(ロービング)を開繊して引き取りながら含浸ダイの中を通し、含浸ダイに供給される溶融芳香族ポリアミド(MXD6-PA)樹脂を含浸させた後、賦形、冷却、切断する引き抜き成形法を用いて、繊維含有率50重量%、長さ10mmのガラス長繊維強化樹脂ペレットを調製する工程、及び、調製した長繊維強化樹脂ペレットを、射出成形機で背圧5MPaにて射出成形する工程により長繊維強化芳香族ポリアミド(MXD6-PA)樹脂成形体を製造する方法」の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されている。
(2)本願発明と引用発明Aとの対比
本願発明と引用発明Aを対比する。
引用発明Aの成形体は、強化繊維であるガラス繊維と芳香族ポリアミド(MXD6-PA)樹脂(これは、「熱可塑性樹脂」である。)のみからなるものであるところ、引用発明Aの成形体にはガラス繊維が50.1重量%含まれていることから、成形体中の芳香族ポリアミド(MXD6-PA)樹脂の含有量は、49.9重量%である。
そして、引用発明Aの成形体におけるガラス繊維の含有量である「50.1重量%」は、本願発明の「30~65重量%」を満足するし、熱可塑性樹脂である芳香族ポリアミド(MXD6-PA)樹脂の含有量の「49.9重量%」も、本願発明の「70~35重量%」を満足する。
また、引用発明Aの「成形体中のガラス繊維の・・・重量平均繊維長が2.58mm」は、本願発明の「成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長が1mm以上」に相当する。
本願発明の、ロービング状のガラス繊維に「熱可塑性樹脂を被覆」する工程は、具体的には、ロービング状のガラス繊維に熱可塑性樹脂を「引抜き成形法」により「含浸」し被覆するものである(本願明細書の【0053】及び【0066】参照。)ところ、引用発明Aの、「切断」工程を経て得られたガラス長繊維強化樹脂ペレットは、「長さ10mm」であって、これは、本願発明の「3mm以上の長さにカットされたペレット」に相当するから、引用発明Aの「連続したガラス繊維束(ロービング)を開繊して引き取りながら含浸ダイの中を通し、含浸ダイに供給される溶融芳香族ポリアミド(MXD6-PA)樹脂を含浸させた後、賦形、冷却、切断する引き抜き成形法を用いて、繊維含有率50重量%、長さ10mmのガラス長繊維強化樹脂ペレットを調製する工程」で調製された「ガラス長繊維強化樹脂ペレット」は、本願発明の「ロービング状のガラス繊維に熱可塑性樹脂を被覆した後、3mm以上の長さにカットされたペレット」に相当する。
更に、引用発明Aの「成形体」と本願発明の「成形品」は同義であるところ、本願発明においては、成形品が備える性質についての特定はなされておらず、任意の性質の成形品を包含し得る記載となっていること、及び、本願発明の成形品と引用発明Aの成形体は、いずれも、機械的性質、寸法安定性(異方性)の点で優れた成形品を得ることを課題とするものである(本願明細書の【0008】、【0048】及び【0049】、引用文献Aの【0001】(上記第4(1)の(b)))ことから、本願発明の「成形品」は、引用発明Aで特定されている成形体(「成形体の最大投影面積が20000mm2以上であり、成形時に断面積100mm2以下の狭流路の流路長が150mm以下であり、かつ、1)肉厚2mm以上の成形体部分の、最大線膨張係数が5×10-5K-1以下であり、かつ、最大線膨張係数/最小線膨張係数の比が1.8以下、2)肉厚2mm以上の成形体部分の、最大吸湿寸法変化率が0.3%以下という性質を備える・・・成形体」)を包含するものといえる。
してみると、本願発明と引用発明Aは、本願請求項1に記載の発明特定事項で記載すると、以下の点で一致している。
・一致点
「(A)熱可塑性樹脂70~35重量%および(B)ガラス繊維30~65重量%を含む熱可塑性樹脂組成物からなり、成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長が1mm以上である成形品の製造方法において、ロービング状のガラス繊維に熱可塑性樹脂を被覆した後、3mm以上の長さにカットされたペレットを射出成形する工程を含み、
前記(A)熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂のみからなる、繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法。」
そして、本願発明と引用発明Aは、以下の点で相違している。
<相違点1>
繊維強化熱可塑性樹脂成形品を構成するポリアミド樹脂が、本願発明では、「20重量%以上が、0~50モル%のパラキシリレンジアミンと、50~100モル%のメタキシリレンジアミンとからなる混合ジアミンと、炭素数6~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応により得られるポリアミド樹脂」であるのに対して、引用発明Aでは「芳香族ポリアミド(MXD6-PA)」である点。
<相違点2>
繊維強化熱可塑性樹脂成形品に含まれるガラス繊維が、本願発明では、「扁平率=ガラス繊維長径(a)/ガラス繊維短径(b)」の式で表される「扁平率」が「2.3以上の長円形のガラス繊維」に特定されているのに対し、引用発明Aでは、そのような特定はなされていない点。
<相違点3>
本願発明の製造方法では、射出成形工程で、「緩圧縮なタイプのスクリューを用いる」ことが特定されているのに対し、引用発明Aの製造方法においては、そのような特定はなされていない点。
<相違点4>
本願発明では、射出成形の条件について、「背圧0.2~3MPaおよびスクリュー回転数40~100rpm」と特定されているのに対し、引用発明Aでは、「背圧5MPa」とされ、スクリュー回転数についての特定はなされていない点。
第6 相違点についての判断
そこで、相違点について、以下に検討する。
(1)相違点1について
引用文献Aには、引用発明Aにおいて用いられた「芳香族ポリアミド(MXD6-PA)」、すなわちポリアミド(PA)である芳香族ポリアミド「MXD6」の具体的な化学構造についての明示的な記載はない。
しかしながら、「MXD6」が、ポリアミドを構成するジアミンが、「メタキシリレンジアミン」を主成分とするジアミンであり、これと反応させる脂肪族ジカルボン酸成分が炭素数6のジカルボン酸(通常、本願発明の「炭素数6のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸」に相当するアジピン酸)であるモノマー成分からの重縮合反応により得られるポリアミドであること、及び、代表的なMXD6が、「パラキシリレンジアミンを10~50モル%とメタキシリレンジアミン50~90モル%とを含む混合ジアミンと炭素数6の脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応より得られるポリアミド」(これは、相違点1にかかる本願発明のポリアミド樹脂に相当する。)であることは、本願の原出願の優先日当時、当業者に周知の事項であった。(例えば、本件審判事件における前置報告書に記載された引用文献6である、特開2006-82275号公報(以下、「周知例」という。)の【0015】には、「パラキシリレンジアミンを10~50モル%とメタキシリレンジアミン50~90モル%とを含む混合ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応より得られるポリアミドを主成分とするMXDナイロン」と記載されている。)
また、引用文献Aの【0015】(上記第4(1)の(c))には、成形体を構成するポリアミド樹脂について、「芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応より得られるポリアミドを主成分とする芳香族ポリアミド樹脂も好ましい。芳香族ジアミンとしては・・・パラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンとの混合ジアミンを用いることが好ましい。」との記載もされている。
してみると、引用発明Aの「芳香族ポリアミド(MXD6-PA)」は、本願発明のポリアミド樹脂である蓋然性が高い。
(なお、このことは、引用文献Aの実施例3で使用されている「MXD-6」は三菱エンジニアリングプラスチックス社製であり、「MXD」定義を記載する上記の周知例の出願人と同じであることからも理解できる。)
したがって、相違点1は、実質的には相違点とはいえない。
また、仮に、相違点1が実質的な相違点である場合であっても、引用文献Aの【0015】には、上述のとおり、成形体を構成するポリアミド樹脂として、「パラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンとの混合芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応より得られるポリアミド樹脂」が好ましいことが示唆されているのであるし、周知例に記載のとおり、本願発明で特定されるポリアミド樹脂は、繊維強化樹脂成形体に用いられる芳香族ポリアミド樹脂として周知なのであるから、引用発明Aの芳香族ポリアミドを、本願発明で特定されるポリアミド樹脂とすることは、当業者が適宜なし得ることに過ぎない。
(2)相違点2について
引用発明Aと同様、長繊維のガラス繊維束に熱溶融した熱可塑性樹脂を含浸付着させた後に切断して得られたガラス繊維含有ペレットから、射出成形により繊維強化熱可塑性樹脂成形体(成型物)を製造する方法の発明を開示する引用文献B(上記第4(2)の(f)、及び、同(k)の実施例1参照)には、射出成形に用いられる「ガラス繊維含有ペレット」を、「熱可塑性樹脂からなるペレット中に、断面が扁平な扁平ガラス繊維フィラメントを、該フィラメントの両端面が前記ペレット表面に達するように、複数一方向に配列させた、扁平ガラス繊維含有ペレット」(同(f)の請求項1)とすることで、「成型時のガラス繊維粉砕に伴うガラス繊維の短繊維化を抑制することができ」、「これにより、引張強度のみならず、衝撃強度も向上し、且つ成型物に方向性が生じてしまう現象も抑制され、反りが防止されて表面平滑性も向上する」ことが記載され(同(g)【0009】)、また、「扁平ガラス繊維フィラメント」は、「繊維長2~50mm」(同(f)の請求項2)であり、「長辺の長さと短辺の長さの比(A/B)で示される扁平率」が、「2~10(更には3~8)の範囲のものが好適である」こと(同(g)【0021】)、「扁平」には、「例えば、断面形状が楕円形状、長径方向に直線部を有する長円形状、・・・繭型のガラス繊維フィラメントなどが含まれ」ることが記載されている(同(j)【0023】)。さらに、実施例には、扁平率3.8のガラス長繊維を切断して得られたガラス含有率40質量%の実施例1のペレットからの射出成型物が、同様の条件で円形断面のガラス繊維から作製した比較例2の射出成型物よりも引張強度やシャルピー衝撃強度、反り、表面平滑性の点で優れることが示されている(同(k)表1)。
同様に、連続したガラス繊維束に熱可塑性溶融樹脂を含浸させた後、冷却、切断する工程を経て製造されたガラス長繊維強化樹脂ペレットを用いて、射出成形により繊維強化熱可塑性樹脂成形体(成形品)を製造する方法の発明を開示する引用文献D(上記第4(4)の(p)及び(r)参照)には、射出成形に用いられる「ガラス繊維強化ペレット」を構成する繊維が、繊維断面の長径と短径の比(長径/短径;本願発明の「扁平率」と同義と認める。)が2.5~6である繊維であること(同(p)の請求項1及び4)、扁平状の断面を有する繊維からなる繊維束を使用すると繊維束への溶融樹脂の含浸が容易であり(同(q)の【0008】)、また、得られる成形品も、「従来の長繊維強化樹脂ペレットを用いて成形したものに比較し、成形中における長繊維の破断が少なくなるため強度に優れ」、「流動性にも優れているため、成形品の外観が従来の長繊維強化樹脂ペレットを用いたものに比較し良好」で、さらに、「強化繊維が成形品で均一に分散し、かつ繊維の断面方向にもアスベスト比があるため、寸法安定性にも優れ、リブやボス等の立ち壁がある部分の強度も大幅に向上できる」こと(同(q)の【0022】)が記載されている。そして、実施例の表5には、実施例4-2のガラス繊維ペレット(表3によれば、ガラス繊維の扁平率は5)を含む実施例7の射出成形品が、同様の条件で製造された、扁平率1.8のガラス繊維ペレットを含む原料からの比較例8の射出成形品よりも、引張強度やアイゾット衝撃強度、収縮率比、反り量の点で優れることが示されている(同(r))。
そうすると、引用文献B、Dに記載される知見に接した当業者であれば、引用発明Aにおいて、より引張強度や衝撃強度等の機械的性質及び寸法安定性に優れた成形体を得ることを目的として、成形体の製造に使用するガラス長繊維強化樹脂ペレットに含まれるガラス繊維として、扁平率が引用文献B(扁平率3~8)や引用文献D(同2.5~6)に示唆されるのと同程度の扁平率の扁平断面のものを採用すること、及び、扁平断面の形状を、引用文献Bに例示されている長円形とした製造方法とすることは、当業者が容易に想到し得ることと認められる。
したがって、本願発明の相違点2に係る発明特定事項を備える製造方法とすることは、当業者が容易になし得ることと認められる。
(3)相違点3について
引用文献Aの【0017】(上記第4(1)の(d))には、引用発明Aに関し、「長繊維強化ポリアミド樹脂(A)を成形する際、通常、成形機のシリンダー中での溶融・混練時、金型充填時に強化繊維が破砕され、繊維の長さが短くなる危険性があるが、本発明成形体中に分散する強化繊維本発明成形体中に分散する強化繊維の重量平均繊維長を1.5mm~10mmの範囲内に保持するには・・・成形機の・・・スクリュー形状、成型条件・・・の調整が有効である。」と記載されており、引用文献Aには、長繊維強化ポリアミド樹脂からの成形体の製造においては、成形機中での強化繊維が破砕して繊維長さが短くなる危険性を回避するために、射出成形機のスクリュー形状や成型条件を調整することが示唆されているといえる。
ここで、引用文献Aと同様、長繊維強化樹脂ペレットからの射出成形による樹脂成形品の製造技術を開示する引用文献Cには、長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを用いた射出成形で最も重要な点は、長軸ペレットを可塑化・溶融させる過程で、ガラス繊維等の繊維強化材を切断させないことである(上記第4(3)の(m)【0004】)が、従来は、繊維強化されていない通常の熱可塑性樹脂に用いるものと同様のスクリュを使用する場合が多かったために、スクリュ圧縮部や計量部で急激な圧縮力や大きな剪断を受け、ペレットの可塑化・溶融時に繊維が著しく切断するという不具合が多発し、従来のスクリュによる場合は、成形品の長繊維強化材による特性が発揮されないという問題点があったことが記載されている(同(n)【0008】~【0010】)。
そして、引用文献Cでは、上記の問題点を、「長繊維強化熱可塑性樹脂の可塑化・溶融を行うための可塑化スクリュにおいて、同スクリュをテーパ状の圧縮部とこれに延設される計量部のみにて構成して供給部を設けず、かつ圧縮比を1.0~2.5と従来のものよりも小さく構成」(同【0012】)し、「限られたスクリュ全長の中で圧縮部の長さが最大限に確保されされると共に、必要な圧縮比も同時に確保され、」るものとすることで解決したものであり、上記スクリュを用いることで、「繊維切断の要因となる剪断、圧縮、引張り等の力を抑制でき、繊維の切断を低減することができ」(同【0015】)、強度及び剛性が高く、かつ耐衝撃性も大なる樹脂成形品が得られることが記載されている(同【0011】)。
ここで、繊維切断の要因となる圧縮力が従来より抑制される引用文献Cのスクリュは、本願発明の「緩圧縮なタイプのスクリュー」に相当すると認められるから、引用発明Aの樹脂成形体中の製造方法において、強化繊維であるガラス繊維の射出成形工程での切断を抑制し、より物性の優れた成形体を製造する方法とするために、引用文献Cに示されるような、公知の緩圧縮タイプのスクリューを採用することは当業者が容易になし得ることである。
したがって、本願発明の相違点3に係る発明特定事項を備える製造方法とすることは、当業者が容易になし得ることと認められる。
(4)相違点4について
引用文献Aには、長繊維強化ポリアミド樹脂からの成形体の製造において、成形機中での圧縮や剪断力により強化繊維が破断して短くなる危険性を回避するために、射出成形の際の成形条件を調整することも示唆されている((上記第4(1)の(d))ところ、長繊維強化樹脂成形体の製造において、成形体製造工程中の強化繊維の切断を防いで、より繊維長の長い強化繊維を含むより物性の優れた成形体とするために、成形条件を調製し、背圧を低くしたり、スクリュー回転数を低く設定することは、本願優先日当時周知であり(例えば、特開2001-329072号公報(周知例1)の【0070】及び特開2004-291409号公報(周知例2)の【0009】参照。)、背圧やスクリュー回転数を本願発明の程度とすることも従来から行われていた(前記周知例1及び2の前記段落の記載及び特開平11-138601号公報(周知例3)の【0017】参照。なお、引用文献Cの実施例(【0033】)に記載の射出成形においても、背圧は12kgf/cm2 (これは、1.18Mpaに相当する)であり、本願発明の条件を満足する。)。
よって、引用発明Aの樹脂成形体中の製造方法において、射出成形工程での強化繊維であるガラス繊維の切断を抑制し、より物性の優れた成形体を製造する方法とするために、緩圧縮タイプのスクリューを採用した上で、更に、背圧やスクリュー回転数といった成形条件を適宜調製して、本願発明の条件を満足する成形条件とすることは、当業者が適宜なし得ることと認められる。
(5)本願発明の効果について
本願発明の効果に関し、本願明細書には、具体的な樹脂の構成の記載のないポリアミド樹脂(【0075】によれば、これは、三菱ガス化学株式会社製、「商品名:MXナイロン6000である。」)と扁平率4の長円形ガラス繊維ロービングからのガラス繊維50重量%を原料とするペレットから、緩圧縮スクリューを使用した射出成形工程を経て得られた実施例1-6及び1-7の成形品(表3)が、標準タイプスクリューを使用して得られた、参考例としての実施例1-1、1-2の成形品(表1)よりも、曲げ強度等の機械的強度が優れることが示されている(表1と表3の比較)。
しかしながら、(3)で述べたとおり、射出成形工程に使用するスクリューを緩圧縮スクリューとすることで、射出成形工程における繊維の切断が抑制され、より機械的強度に優れた成形品が得られることが引用文献Cに記載されているから、この点の効果は、引用文献Cの記載から当業者が予測し得る効果であると認められる。
また、本願明細書には、実施例1-6(背圧0.2MPa、スクリュー回転数65)及び実施例1-7(背圧0.4MPa、スクリュー回転数65)で得られた成形体が、比較例1-11(背圧6.0MPa、スクリュー回転数65)や比較例1-12(背圧0.4MPa、スクリュー回転数120)で得られた成形体よりも、試験片中の重量平均繊維長が長く、シャルピー衝撃強度や曲げ強度で優れることが示されている。
しかしながら、(4)で述べたとおり、射出成形に際し、より低い背圧やスクリュー回転数とすることで、強化繊維の切断が抑制でき、より繊維長の長い強化繊維が含まれた、より物性の優れた成形体が製造できることは、従来から知られていたことであるし、引用発明Aにおいても、既に、成形体の重量平均繊維長は、本願発明を満足する2.58mmとなっているのであるから、この点の本願発明の効果も、引用文献Aの記載及び本願の優先日当時の周知技術から当業者が予測し得る程度の効果に過ぎないと認められる。
なお、本願明細書には、射出成形工程で使用するスクリューが緩圧縮スクリューではなく、標準スクリューである点で本願発明とは相違するものの、扁平率4の長円形ガラス繊維ロービングからのガラス繊維50重量%を原料とするペレットを使用した射出成形工程を経て得られた実施例1-1の成形品が、断面が扁平率2のまゆ形であるガラス繊維ロービングからの繊維強化ペレットから得られる成形品(比較例1-2)や、断面が円形のガラス繊維ロービングからの繊維強化ペレットから得られる成形品(比較例1-1)に比べて、シャルピー衝撃強度や曲げ強度等の機械的強度、成形収縮率、反り量の点で優れていることも示されている(表1)。
しかしながら、ガラス繊維ロービングからの繊維強化ペレットとして、繊維断面が円形ではなく本願発明と同程度の扁平率のものを使用することで、より引張強度や衝撃強度、収縮率比、反りの点で優れた成形品が得られることは引用文献B、Dに示されているし、特に引用文献Dには、(2)で記載したとおり、ガラス繊維の扁平率を5とした実施例7の射出成形品が、扁平率1.8の比較例8の射出成形品よりも、引張強度や衝撃強度、収縮率比、反り量の点で優れることも示されているのであるから、引用発明Aにおけるガラス繊維の断面形状を、本願発明の程度の扁平率のものとすることによる効果も、引用文献B、Dの記載から、当業者が容易に予測し得る範囲内のものに過ぎない。
さらに、繊維の断面形状を長円形とすることによる効果については、本願明細書には、上述のとおり、標準スクリューを使用するものにおいて、扁平率4の長円形断面ガラス繊維を使用する場合(実施例1)に、扁平率2のまゆ形断面のガラス繊維を使用した場合(比較例1-2)に、得られる成形品の物性が優れることは示されているが、両者は断面形状のみならず、断面の扁平率が大きく異なっており、表1に示される物性の違いが、断面形状の違いにより生じたものであることは、本願明細書の記載からは理解できない。
そうすると、緩圧縮スクリューの場合の効果を、標準スクリューである場合の効果から推認できる場合であっても、成形体の製造に使用するガラス繊維の断面を長円形とすることによる本願発明の効果が、引用文献B、Dから予測される範囲を超えた格別なものであるとまではいえない。
以上述べたとおり、本願発明の効果は、いずれも、引用文献A~Dの記載及び本願優先日当時の周知技術から当業者が予測し得た範囲内のものに過ぎない。
(6)請求人の主張について
請求人は、平成28年12月28日提出の意見書の(3)の(iii)において、相違点4に関し、 概略以下の主張をしている。
・引用文献Cには、スクリュー回転数を40~100rpmとすることについて記載も示唆もなく、逆に、段落0033には、「成形条件:(1)スクリュ回転数:150rpm
(2)シリンダ温度:230℃
(3)スクリュ背圧(実際の樹脂圧):12kgf/cm2 」と記載され、
引用文献Cでは、スクリュー回転数が150rpmと本願発明の1.5倍以上の速さであることが記載されている。
そして、引用文献Aにおいて、引用文献Cを適用し、射出成形時のスクリュー回転数を本願発明の範囲とすることは容易ではない。
・本願発明で用いるポリアミド樹脂は、官能基を多く含み、ガラス繊維との密着性が高いために成形品の高い機械的強度を達成しているが、密着性が高いために、溶融混練時に、ガラス繊維が、他の熱可塑性樹脂に配合したときよりも、より折れやすくなるというデメリットがあるため、本願発明ではスクリュー回転数を40~100rpmと小さくしてガラス繊維が折れにくしている。
本願明細書の表3の実施例1-6および実施例1-7と、比較例1-12を比較すると、スクリュー回転数が本願発明の範囲よりも高くなると、ガラス繊維の折れが多くなり、シャルピー衝撃強度や曲げ強度が低くなることが分かるが、冷却時間を短くできる場合、スクリュー回転数は、生産性の観点からは大きい方が望ましい。
・引用文献Cでは、ポリプロピレン樹脂以外の樹脂について具体的記載はないし、ポリプロピレン樹脂は、通常、官能基を持たないのでガラス繊維と殆ど密着しないため、樹脂とガラス繊維を含む組成物を溶融混練しても、本願発明ほど、ガラス繊維が簡単には折れず、スクリュー回転数は、本願発明よりも大きい値(150rpm)とすることができる。スクリュー回転数は、ガラス繊維が折れにくいならできるだけ大きい方が望ましいので、引用文献Cには、スクリュー回転数を低くする動機づけがない。逆に、本願発明の範囲を外れるスクリュー回転数(150rpm)が好ましいことを示唆する記載があるとも言える。
・引用文献A、B、Dには、スクリュー回転数について、具体的記載はない。
よって、引用文献Aに、引用文献Cを適用しても、補正後の本願発明で規定するスクリュー回転数とすることは当業者にとって容易ではない。
・さらに、背圧も低い方が、ガラス繊維が折れにくいことが知られているが、実際本願明細書の表3から、背圧が本願発明の範囲よりも高くなると、シャルピー衝撃強度や曲げ強度が著しく低くなることが分かる。
しかし、背圧が低くなると、フィラーの分散不良、成形品内部のボイド、成形品の重量の問題が大きくなるので、背圧も高い方が望ましい。
引用文献Aには、背圧が5MPaと記載されており(段落0030)、背圧は高い方が好ましいことから、背圧を低くする動機づけがない。また、引用文献B及びDは、背圧について記載も示唆もない。
よって、引用文献Aにおいて、背圧を低くし、本願発明で規定する範囲とすることは当業者にとって容易ではない。
請求人の主張について検討すると、背圧やスクリュー回転数といった成形条件を考慮して成形を行うことは通常に行われていると解されるところ、(4)で記載したとおり、引用文献Aには、ガラス長繊維強化ポリアミド樹脂からの成形体の製造において、成形機中で強化繊維が破砕して繊維長が短くなることを回避し、より物性の優れた成形体とする目的で、成形条件を調整することが示唆されているのであるし、より物性の優れた繊維強化樹脂成形体とするためには、スクリュー回転数や背圧を低く設定することが望ましいことが本願優先日当時周知だったのであるから、生産性やフィラーの分散性等の観点から背圧やスクリュー回転数を高めることが知られていたとしても、そのことが、より優れた物性の成形体とする観点から、背圧やスクリュー回転数を低下させることを妨げるとまではいえないし、本願発明の成形条件は、従来からも知られている程度のものであり、これが、生産性やフィラー分散性等を著しく低下せしめるような条件であるとも解されない。
また、引用発明Aにおける樹脂成形体が背圧5MPaで製造されていたとしても、引用文献Aの【0017】にも記載のとおり、好適な成形体を製造する条件は、使用するペレットの長さや成形時の温度、射出速度、金型の形状といった種々の条件の影響も加味して調整されると解されるから、5MPaより低くできないといったものではなく、むしろ、成形体の物性の観点からは、より低い背圧とすることが望ましいのであるし、本願発明の程度の背圧は、従来から知られていた条件であることも既に(4)で述べたとおりである。
また、引用文献BやDに背圧について記載がないからといって、引用発明Aにおいて、背圧を低くし、本願発明で規定する範囲とすることが容易ではないとはいえない。
さらに、背圧及びスクリュー回転数を調整することによる効果は、成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長を1mm以上にできることであると認められるが、引用発明におけるガラス繊維の重量平均繊維長は2.58mmであるから、引用発明との対比において、この点の効果は格別ではない。
よって、上記の点の請求人の主張は採用できない。
(7)まとめ
よって、本願発明は、引用文献A~Dに記載された発明及び優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第7 むすび
上記第6のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-008967