特許拒絶査定不服審判
2015-005976
容器
- 審判番号
- 2015-005976
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-026956外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年04月01日
- 審決日
- 2016年01月25日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (B05C) / P18 .575-Z (B05C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第46条の2第1項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013- 26956「容器」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月23日出願公開、特開2013- 99750〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件出願は、平成22年12月2日に請求人により出願された実願2010-7877号(以下、「原出願」という。)に係る実用新案登録第3165967号(登録日:平成23年1月19日)に基づいて、特許法第46条の2第1項の規定により、平成25年2月14日にされた特許出願であって、平成26年3月13日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成26年5月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年12月11日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成27年4月1日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、平成27年5月11日に審判請求書における請求の理由について補正する手続補正書が提出されたものである。
第2 平成27年4月1日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年4月1日付けの手続補正を却下する。
[理由]
〔1〕本件補正の内容
平成27年4月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成26年5月1日に提出された手続補正書により補正された)下記の(A)に示す請求項1ないし10を、下記の(B)に示す請求項1ないし9と補正するものである。
(A)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1及び2
「 【請求項1】
液体を入れることができる内容器であって、
前記内容器が、開口部と前記開口部の周りにある縁部とを有する上部と、前記内容器の底に位置する底部と、側部とを備え、
前記側部に少なくとも1つの突起部を有し、
前記開口部が他の前記内容器を重ねることができるような広さを有し、
前記液体が塗料であり、
前記少なくとも1つの突起部が、塗料を塗るものに付いた塗料の量を調整するために使用される内容器。
【請求項2】
前記内容器の材質が半透明の樹脂である、請求項1に記載の内容器。
【請求項3】
前記内容器が金型で樹脂を1回プレスすることにより作られる、請求項1または2に記載の内容器。
【請求項4】
前記内容器を塗料バケットに配置した場合、前記縁部が前記内容器を引き上げるために使用され得る、請求項1~3のうちの1つに記載の内容器。
【請求項5】
前記上部が塗料バケットから前記内容器を引き上げるための取手部を有している、請求項1~4のうちの1つに記載の内容器。
【請求項6】
前記少なくとも1つの突起部が、上または下で屈曲したひと連なりの線状である、請求項1~5のうちの1つに記載の内容器。
【請求項7】
前記少なくとも1つの突起部が線状であり、前記底部と略平行となる、請求項1~5のうちの1つに記載の内容器。
【請求項8】
前記少なくとも1つの突起部が第1の突起部と第2の突起部を有し、前記第1の突起部と前記第2の突起部とを前記側面と底部とで作られる辺に投影した場合に、それらの投影部が少なくとも一部重なっている、請求項1~5のうちの1つに記載の内容器。
【請求項9】
前記少なくとも1つの突起部が第1の突起部と第2の突起部を有し、前記第1の突起部と前記第2の突起部とを、それらを有する側面の開口部から底部に延びている辺に投影させた場合、それらの投影部が少なくとも一部重なっている、請求項1~5のうちの1つに記載の内容器。
【請求項10】
前記少なくとも1つの突起部が、複数の屈曲したひと連なりの線状である、請求項1~5のうちの1つに記載の内容器。」
(B)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし9
「 【請求項1】
液体を入れることができる内容器であって、
前記内容器が、開口部と前記開口部の周りにある縁部とを有する上部と、前記内容器の底に位置する底部と、側部とを備え、
前記側部に少なくとも1つの突起部を有し、
前記開口部が他の前記内容器を重ねることができるような広さを有し、
前記液体が塗料であり、
前記少なくとも1つの突起部は、その上をローラが転がることにより前記ローラに付いた塗料の量を調整するために使用され、
前記内容器は金型で樹脂をプレスすることにより作られる内容器。
【請求項2】
前記内容器の材質が半透明の樹脂である、請求項1に記載の内容器。
【請求項3】
前記内容器を塗料バケットに配置した場合、前記縁部が前記内容器を引き上げるために使用され得る、請求項1または2に記載の内容器。
【請求項4】
前記上部が塗料バケットから前記内容器を引き上げるための取手部を有している、請求項1~3のうちの1つに記載の内容器。
【請求項5】
前記少なくとも1つの突起部が、上または下で屈曲したひと連なりの線状である、請求項1~4のうちの1つに記載の内容器。
【請求項6】
前記少なくとも1つの突起部が線状であり、前記底部と略平行となる、請求項1~4のうちの1つに記載の内容器。
【請求項7】
前記少なくとも1つの突起部が第1の突起部と第2の突起部を有し、前記第1の突起部と前記第2の突起部とを前記側面と底部とで作られる辺に投影した場合に、それらの投影部が少なくとも一部重なっている、請求項1~4のうちの1つに記載の内容器。
【請求項8】
前記少なくとも1つの突起部が第1の突起部と第2の突起部を有し、前記第1の突起部と前記第2の突起部とを、それらを有する側面の開口部から底部に延びている辺に投影させた場合、それらの投影部が少なくとも一部重なっている、請求項1~4のうちの1つに記載の内容器。
【請求項9】
前記少なくとも1つの突起部が、複数の屈曲したひと連なりの線状である、請求項1~4のうちの1つに記載の内容器。」
(なお、下線は、請求人が補正箇所を明示するために付したものである。)
〔2〕本件補正の目的要件について
本件補正は、本件補正前の請求項1における「前記少なくとも1つの突起部が、塗料を塗るものに付いた塗料の量を調整するために使用され」という記載を、「前記少なくとも1つの突起部は、その上をローラが転がることにより前記ローラに付いた塗料の量を調整するために使用され」とするものであるから、本件補正前の請求項1に係る発明における発明特定事項である「少なくとも1つの突起部」の機能を限定すると共に、本件補正前の請求項1に係る発明における発明特定事項である「塗料を塗るもの」を「ローラ」に限定するものといえる。
また、本件補正は、本件補正前の請求項1における「内容器」という記載を、「前記内容器は金型で樹脂をプレスすることにより作られる内容器」とするものであるから、本件補正前の請求項1に係る発明における発明特定事項である「内容器」について、製造方法により特定される状態を限定するものといえる。
よって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定したものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
〔3〕本願補正発明の独立特許要件について
1.本願補正発明
本願補正発明は、平成26年5月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、上記〔1〕(B)の【請求項1】に示したとおりのものである。
2.引用刊行物
(1)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物であって、本件出願の原出願前に頒布された刊行物である特開2004-344799号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
a)「【請求項1】
容器本体内に、傾斜面を一体形成するとともに、この傾斜面は、容器本体の底面に連続する塗料馴染ませ部と、この塗料馴染ませ部から容器本体の縁まで連続する塗料絞り部とからなることを特徴とするローラ用バケット。
【請求項2】
塗料馴染ませ部の断面形状を円弧にし、塗料絞り部の断面形状を直線的にしたことを特徴とする請求項1記載のローラ用バケット。
【請求項3】
塗料馴染ませ部の表面に、幅方向に凸部を形成したことを特徴とする請求項1または2記載のローラ用バケット。
【請求項4】
塗料馴絞り部の表面に、複数の突起を設けたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載のローラ用バケット。
【請求項5】
容器本体に脚部を形成するとともに、この脚部には、その上部を開口させた凹部を形成したことを特徴とする請求項1~4のいずれか1に記載のローラ用バケット。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項5】)
b)「【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、塗装用ローラを用いて塗装するときに、塗料を入れておくローラ用バケットに関する。
【0002】
【従来の技術】
塗装用ローラを用いて塗装するときに、塗料を入れておくローラ用バケットとして、特許文献1に記載されたものが従来から知られている。
この従来のバケットは、図9に示すように、塗料を入れる容器本体1と、網目3を有するプレート2とによって構成されている。
上記プレート2は、ローラの刷毛部に含ませる塗料の量を調節するためのものである。また、このプレート2は、容器本体1と別体になっていて、その上部を容器本体1の縁4に引っかけることによって、容器本体1の底面に対して傾斜させている。そして、このようにしたプレート2の上で、ローラの刷毛部を転がすことによって、刷毛部に含ませた余分な塗料を下に落とすようにしている。
【0003】
【特許文献1】
特開平8-133351号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のバケットは、ローラの刷毛部に含ませた塗料の量を、プレート2によって調節可能にしているが、このプレート2を利用しても、刷毛部全体に塗料を均一に馴染ませることが難しかった。すなわち、刷毛部全体に塗料を均一に馴染ませるためには、刷毛部を転がしながら塗料に浸すとよい。しかし、刷毛部にに塗料を含ませると、その部分が重くなるために、刷毛部が回りにくくなる。刷毛部が回りにくくなると、プレート2上で刷毛部を回転させにくくなる。そのため、刷毛部を十分に転がしながら塗料に浸すことができなくなり、刷毛部全体に塗料を均一に馴染ませることが難しくなる。
【0005】
以上のように、刷毛部全体に塗料を均一に馴染ませるという作業が、難しいにもかかわらず、刷毛部表面に塗料が付着していると、塗料が均一に馴染んでいるものと思いこんでしまう。そして、そのまま塗装すると、塗装面に塗りむらが生じるという問題があった。このような問題は、素人が塗装する場合に特に生じやすかった。
【0006】
また、上記従来例では、プレート2上でローラの刷毛部を転がすと、この刷毛部の表面に、プレート2の網目3の跡が付いてしまう。そして、そのまま塗装すると、塗装面に網目3の跡が転写されてしまうという問題もあった。
【0007】
さらに、上記従来のバケットは、プレート2を固定したまま容器本体1を重ね合わせると、嵩張ってしまうため、輸送効率が低下するという問題もあった。
そこで、従来は、輸送効率の低下を防止するため、容器本体1とプレート2とを別々にして、容器本体1は容器本体だけで重ね合わせ、プレート2はプレート2だけで重ね合わせて工場から出荷するようにしていた。
【0008】
ところが、容器本体1とプレート2とを別々に重ね合わせて出荷すると、容器本体1とプレート2とが一組の商品であることがわかりにくいため、これら容器本体1とプレート2とが必ずしも一組で販売されないことがある。例えば、販売店においても、陳列スペースを少なくするために、容器本体1だけを複数重ね合わせておいて、一番上の容器本体1内に、プレート2を複数まとめて入れておくことがある。このような状態でバケットが陳列されていると、1つの容器本体1に対して複数枚のプレート2が付属されているものと購入者が勘違いしてしまい、そのことに店員も気づないまま、バケットを販売してしまうと、最終的にプレート2が足りなくなるという問題もあった。そして、このようにプレート2が不足すると、この不足分を製造メーカーが無償で提供しなければならない場合もあり、それが製造メーカにとって負担になるという不都合もあった。
【0009】
この発明の目的は、上記種々の問題を解決することのできるローラ用バケットを提供することである。」(段落【0001】ないし【0009】)
c)「【0015】
【発明の実施の形態】
図1~図8に、この発明の一実施形態を示す。
図1及び図2に示すように、容器本体A内には、傾斜面Bを一体形成している。この傾斜面Bは、図3に示すように、容器本体Aの底面5に連続する塗料馴染ませ部6と、この塗料馴染ませ部6から容器本体Aの縁8まで連続させた塗料絞り部7とによって構成されている。
上記塗料馴染ませ部6は、その断面形状を円弧にするとともに、その表面に複数の凸部9を幅方向に形成している。また、上記塗料絞り部7は、その断面形状を直線的にするとともに、その表面に複数の突起10を全体的に形成している。なお、これら突起10の先端は、曲面にしている。
【0016】
また、上記傾斜面Bの両側には、凹部11,11を形成している。これら凹部11,11は、容器本体Aに設けた脚部12,12の部分に形成したものであり、脚部12,12の上部が凹部11,11によって開口した状態になっている。そして、これら凹部11,11には、塗装用の刷毛を収納できるようにしている。
上記脚部12,12の底には、取り外し可能なキャップ13,13を設けている。このキャップ13,13を取り外すことによって、凹部11,11の内部が簡単に清掃できるようにしている。
なお、図1に示すように、容器本体Aの縁8は、窪み14を形成しているが、この窪み14は、図3に示すように、塗装用ローラRのグリップ21の部分を容器本体Aの縁8に引っかけたときに、塗装用ローラRのロッド20をはめるためのものである。このように窪み14にロッド20をはめることによって、塗装用ローラRがずれないようにしている。
【0017】
次に、塗装用ローラの刷毛部に塗料を含ませるときの手順について説明する。
まず、図4に示すように、容器本体A内に塗料を入れと、その塗料は、容器本体Aの最も深い底部5に溜まる。
次に、この塗料の溜まった部分(以下「塗料溜まりP」という)に、ローラRの刷毛部19を浸す。このように塗料溜まり刷毛部19を浸すと、この浸した部分に塗料がしみこむ。ただし、塗料に浸していない上側部分には、塗料がなかなかしみ込まない。そこで、図5に示すように、傾斜面Bに沿って刷毛部19を引き上げる。
【0018】
傾斜面Bに沿って刷毛部19を引き上げると、この引き上げ方向に対して、断面形状を円弧にした塗料馴染ませ部6が交差した状態になる。そのため、引き上げ動作によって、刷毛部19が塗料馴染ませ部6に押しつけられた状態になる。しかも、この塗料馴染ませ部6には、複数の凸部9が幅方向に形成されているので、各凸部9の段差の部分に刷毛部19が引っかかる。したがって、刷毛部19の引き上げ動作に伴って、刷毛部19が矢印方向に回転することになる。
このように刷毛部19を回転させて、塗料がしみ込んでいない部分を下側に向けた後、刷毛部19を塗料溜まりPに再び浸す。このようにすれば、刷毛部19の残りの部分にも、塗料をしみ込ませることができる。そして、このような作業を数回繰り返すことによって、刷毛部10全体に塗料を馴染ませていく。
【0019】
刷毛部19全体に塗料を馴染ませたら、傾斜面Bに沿ってさらに刷毛部19をさらに引き上げて、図6に示すように、塗料絞り部7の上でローラRを往復移動させる。このようにすると、塗料絞り部7に設けた複数の突起10が、ローラRの表面に食い込むために、刷毛部19が塗料絞り部7の上で回転する。そして、このように塗料絞り部7の上で刷毛部19を転がすことによって、刷毛部19に含まれている余分な塗料を排出する。
以上のようにすれば、刷毛部19全体に適量な塗料を均一に含ませた状態にすることができる。
【0020】
この実施形態によれば、傾斜面Bに沿って刷毛部19を動かすだけで、刷毛部19全体に塗料を均一に馴染ませることができる。そのため、素人が塗装する場合であっても、塗装面の塗りむらが生じにくい。
また、塗料絞り部7に設けた突起10の先端が曲面になっているので、刷毛部19の表面に、ほとんど跡がつかない。また、跡がついたとしても、それはごく小さいものなので、塗装面において突起10の跡が目立つことはない。
さらに、上記突起10は、他の突起10と十分な間隔を開けて配置しているので、刷毛部19から排出された塗料を、傾斜面Bに沿って素早く塗料溜まりPに戻すことができる。
【0021】
さらにまた、この実施形態によれば、脚部12の上部を開口させているので、図7に示すように、複数の容器本体Aを重ね合わせるときに、上側の容器本体Aの脚部12,12を、下側の容器本体Aの凹部11に差し込むことができる。このようにすれば、重ね合わせた容器本体Aが嵩張ることがない。
また、塗料を馴染ませたり塗料の含み量を調節する傾斜面Bを、容器本体Aと一体化しているので、販売店において、塗料の含み量を調節するプレートだけが足りなくなるといった不都合が生じない。
【0022】
なお、この実施形態では、容器本体Aに取っ手を付けていないが、図8に示すように、容器本体Aに取っ手15,15を取り付けてもよい。これら取っ手15,15は、その握り15aの部分が傾斜面Bと平行、すなわち傾斜面Bの幅方向に配置されており、この握り15aを握って容器本体Aを持ち上げると、塗料溜まりPが容器本体Aに対して偏った位置にあるために、図示するように容器本体Aが傾く。このように容器本体Aが傾くと、傾斜面B側に位置する取っ手15によって形成される開口部の面積Sが大きくなる。作業員は、この開口部から塗装用ローラRを容器本体A内に出し入れするので、この開口部の面積Sが大きくなる分、塗装用ローラRを出し入れしやすくなる。そして、このように塗装用ローラRを出し入れしやすくなるので、作業効率もアップする。」(段落【0015】ないし【0022】)
d)「【0023】
【発明の効果】
第1の発明によれば、容器本体内に設けた塗料馴染ませ部によって、塗装用ローラの刷毛部を回転させることができるので、刷毛部全体に塗料を均一に馴染ませることができる。
【0024】
第2の発明によれば、塗料馴染ませ部の断面形状を円弧にし、塗料絞り部の断面形状を直線的にしたので、塗料絞り部と平行に塗装用ローラを引き上げたときに、その引き上げ方向に対して塗料馴染ませ部が交差した状態になる。このように引き上げ方向に対して塗料馴染ませ部が交差すれば、塗料馴染ませ部に塗装用ローラの刷毛部を強く押しつけることができる。したがって、塗装用ローラの引き上げ動作によって、刷毛部を確実に回転させることができる。
【0025】
第3の発明によれば、塗料馴染ませ部の表面に形成した凸部が、ローラの刷毛部に食い込むので、より確実に刷毛部を回転させることができる。
【0026】
第4の発明によれば、塗料絞り部の表面に、複数の突起を設けたので、塗料絞り部の表面で、塗装用ローラの刷毛部が回転せずに滑ってしまうといった不都合を防止できる。
【0027】
第5の発明は、塗料本体に脚部を形成するとともに、この脚部の上部を開口させたので、容器本体を重ね合わせたときに、下側の容器本体の開口部に、上側の容器本体の脚部を挿入することができる。したがって、重ね合わせた容器本体の嵩を少なく抑えることができる。」(段落【0023】ないし【0027】)
(2)上記(1)及び図面の記載から分かること
a)上記(1)a)ないしd)及び図1ないし8の記載によれば、引用刊行物には、ローラ用バケットの容器本体Aが記載されている。
b)上記(1)c)及び図1ないし6の記載(特に、段落【0017】ないし【0019】及び図3ないし6の記載)によれば、ローラ用バケットの容器本体Aに入れる塗料は、ローラ用バケットの容器本体Aの底部5に溜まり、塗装用ローラRの刷毛部にしみこむことから、液体であることが明らかである。
よって、ローラ用バケットの容器本体Aは、液体を入れることができるものであって、前記液体が塗料であることが分かる。
c)上記(1)c)及びd)並びに図1ないし6の記載(特に、段落【0015】ないし【0017】及び図1ないし6の記載)によれば、ローラ用バケットの容器本体Aが、開口部と前記開口部の周りにある縁部8とを有する上部と、前記ローラ用バケットの容器本体Aの底に位置する底部5と、側部とを備えることが分かる。
d)上記(1)c)及びd)並びに図1ないし6の記載(特に、段落【0019】、【0020】及び【0026】並びに図1ないし6の記載)によれば、ローラ用バケットの容器本体Aが、側部の傾斜面Bにおける塗料絞り部7に複数の突起10を有すること、及び、複数の突起10が、その複数の突起10を設けた塗料絞り部7の上を塗装用ローラRが転がることにより前記塗装用ローラRの刷毛部19に含まれている余分な塗料を排出するために使用されるものであることが分かる。
e)上記(1)c)及びd)並びに図1ないし7の記載(特に、段落【0016】、【0021】及び【0027】並びに図1、2及び7の記載)によれば、ローラ用バケットの容器本体Aが、開口部に他のローラ用バケットの容器本体Aを挿入して重ねることができるような構造を有するものであることが分かる。
なお、請求人は、平成27年5月11日に提出された審判請求書の請求の理由について補正する手続補正書の3.(4)(c)において、引用刊行物における図面の記載を根拠として、引用刊行物に記載されたローラ用バケットの容器本体Aは、重ね合わせることができない旨主張するが、引用刊行物における図面は、説明図であって、正確な寸法や角度までを特定することはできないから、請求人の上記主張を認めることができない。
(3)引用発明
上記(1)及び(2)を総合して、本願補正発明の表現に倣って整理すると、引用刊行物には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「液体を入れることができるローラ用バケットの容器本体Aであって、
前記ローラ用バケットの容器本体Aが、開口部と前記開口部の周りにある縁部8とを有する上部と、前記ローラ用バケットの容器本体Aの底に位置する底部5と、側部とを備え、
前記側部の傾斜面Bにおける塗料絞り部7に複数の突起10を設け、
前記開口部に他の前記ローラ用バケットの容器本体Aを挿入して重ねることができるような構造を有し、
前記液体が塗料であり、
前記複数の突起10は、その複数の突起10を設けた前記塗料絞り部7の上を塗装用ローラRが転がることにより前記塗装用ローラRの刷毛部19に含まれている余分な塗料を排出するために使用されるローラ用バケットの容器本体A。」
3.対比
本願補正発明(以下、「前者」ともいう。)と引用発明(以下、「後者」ともいう。)とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者における「縁部8」は、前者における「縁部」に相当し、以下同様に、「上部」は「上部」に、「底部5」は「底部」に、「側部」又は「側部の傾斜面Bにおける塗料絞り部7」は「側部」に、「複数の突起10」は「少なくとも1つの突起部」に、「設け」は「有し」に、それぞれ相当する。
・後者における「ローラ用バケットの容器本体A」は、前者における「内容器」に、「容器」という限りにおいて、一致する。
・後者における「前記開口部に他の前記ローラ用バケットの容器本体Aを挿入して重ねることができるような構造を有し」は、前者における「前記開口部が他の前記内容器を重ねることができるような広さを有し」に、「他の容器を重ねることができるような所定の構造を有し」という限りにおいて、一致する。
・後者において、「複数の突起10」が、「塗装用ローラRの刷毛部19に含まれている余分な塗料を排出するために使用される」ことは、上記2.(1)b)で摘記した引用刊行物の段落【0002】における「また、このプレート2は、容器本体1と別体になっていて、その上部を容器本体1の縁4に引っかけることによって、容器本体1の底面に対して傾斜させている。そして、このようにしたプレート2の上で、ローラの刷毛部を転がすことによって、刷毛部に含ませた余分な塗料を下に落とすようにしている。」という記載及び段落【0003】における「上記従来のバケットは、ローラの刷毛部に含ませた塗料の量を、プレート2によって調節可能にしている」という記載によれば、複数の突起10(少なくとも1つの突起部)が、塗装用ローラRの刷毛部19(ローラ)に付いた塗料の量を調整するために使用されることといえる。
よって、後者における「前記複数の突起10は、その複数の突起10を設けた前記塗料絞り部7の上を塗装用ローラRが転がることにより前記塗装用ローラRの刷毛部19に含まれている余分な塗料を排出するために使用され」は、前者における「前記少なくとも1つの突起部は、その上をローラが転がることにより前記ローラに付いた塗料の量を調整するために使用され」に、「少なくとも1つの突起部は、ローラに付いた塗料の量を調整するために使用され」という限りにおいて、一致する。
したがって、両者は、
「液体を入れることができる容器であって、
前記容器が、開口部と前記開口部の周りにある縁部とを有する上部と、前記容器の底に位置する底部と、側部とを備え、
前記側部に少なくとも1つの突起部を有し、
他の容器を重ねることができるような所定の構造を有し、
前記液体が塗料であり、
前記少なくとも1つの突起部は、ローラに付いた塗料の量を調整するために使用される容器。」の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
容器に関し、本願補正発明においては、「内容器」であるのに対して、引用発明においては、「ローラ用バケットの容器本体A」である点(以下、「相違点1」という。)。
[相違点2]
他の容器を重ねることができるような所定の構造を有することに関し、本願補正発明においては、「開口部が他の内容器を重ねることができるような広さを有し」ているのに対して、引用発明においては、「開口部に他のローラ用バケットの容器本体Aを挿入して重ねることができるような構造を有し」ている点(以下、「相違点2」という。)。
[相違点3]
少なくとも1つの突起部は、ローラに付いた塗料の量を調整するために使用されることに関し、本願補正発明においては、「少なくとも1つの突起部は、その上をローラが転がることにより前記ローラに付いた塗料の量を調整するために使用され」るのに対して、引用発明においては、「複数の突起10は、その複数の突起10を設けた塗料絞り部7の上を塗装用ローラRが転がることにより前記塗装用ローラRの刷毛部19に含まれている余分な塗料を排出するために使用される」点(以下、「相違点3」という。)。
[相違点4]
本願補正発明においては、「内容器は金型で樹脂をプレスすることにより作られる」のに対して、引用発明においては、ローラ用バケットの容器本体Aがどのようにして作られるのか明らかでない点(以下、「相違点4」という。)。
4.判断
上記相違点について検討する。
[相違点1及び4について]
塗料を入れる容器において、容器の本体とこれに着脱可能な樹脂製の内容器とで構成することは、本件出願の原出願前に周知の技術(以下、「周知技術1」という。必要であれば、特開2010-46638号公報(段落【0002】及び【0003】並びに図5及び6)、実願昭48-47673号(実開昭49-146253号)のマイクロフィルム(特に、明細書1ページ9行ないし3ページ14行及び第1ないし3図)、実願平5-31057号(実開平6-83400号)のCD-ROM(特に、段落【0001】、【0002】、【0005】及び【0006】並びに図1ないし4)、実用新案登録第3135494号公報(特に、段落【0001】ないし【0007】及び【0009】ないし【0011】並びに図1ないし6)及び特開平7-117400号公報(特に、段落【0008】ないし【0013】及び【0020】並びに図1ないし6及び18ないし20)を参照。)であり、この周知技術1によって、塗装作業に際して、多数の容器の本体を用意する必要がないことから、コストの削減を図ることが可能である。
また、樹脂製の容器をプレス成形することは、本件出願の原出願前に周知の技術(以下、「周知技術2」という。必要であれば、特開平8-80560号公報(特に、段落【0002】)、特開平11-43190号公報(特に、段落【0029】)及び実願平5-6706号(実開平6-59041号)のCD-ROM(特に、段落【0002】及び【0003】)を参照。)であり、プレス成形は、樹脂製品の成形に通常用いられる射出成形に比べて金型の製作が容易であることから、周知技術2によってコストの削減を図ることが可能である。
そうすると、引用発明においても、コストの削減は当業者がごく普通に考慮する課題であるから、引用発明において、周知技術1及び2を適用し、ローラ用バケットの容器本体Aを容器の本体と内容器とで構成すると共に、内容器を金型で樹脂をプレスすることにより作られるものとし、上記相違点1及び2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。
[相違点2について]
上記[相違点1について]の検討で示したように、引用発明において、周知技術1を適用すると、開口部に他の内容器を挿入して重ねることができるような構造とされるところ、開口部に他の内容器を挿入して重ねるにあたり、開口部が他の内容器を重ねることができるような広さを有したものとされることは、本件出願の原出願前に技術常識(必要であれば、実願昭48-47673号(実開昭49-146253号)のマイクロフィルム(特に、明細書3ページ8ないし14行及び第3図)、特開平7-117400号公報(特に、段落【0020】及び図20)及び使い捨ての紙や樹脂から成る飲料用カップ等を参照。)であるから、引用発明に周知技術1を適用したものにおいても、開口部が他の内容器を重ねることができるような広さを有するものと認められ、仮にそうでないとしても、引用発明に周知技術1を適用したものにおいて、上記技術常識に基づき、開口部が他の内容器を重ねることができるような広さを有するものとすることは、当業者が適宜なし得ることと認められる。
そうすると、引用発明において、周知技術1を適用することに伴い、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。
[相違点3について]
引用発明において、「複数の突起10は、その複数の突起10を設けた塗料絞り部7の上を塗装用ローラRが転がることにより前記塗装用ローラRの刷毛部19に含まれている余分な塗料を排出するために使用される」ところ、上記2.(1)c)で摘記した引用刊行物の段落【0019】における「刷毛部19全体に塗料を馴染ませたら、傾斜面Bに沿ってさらに刷毛部19をさらに引き上げて、図6に示すように、塗料絞り部7の上でローラRを往復移動させる。このようにすると、塗料絞り部7に設けた複数の突起10が、ローラRの表面に食い込むために、刷毛部19が塗料絞り部7の上で回転する。」という記載によれば、複数の突起10が、塗装用ローラRの表面に食い込むことによって塗装用ローラRの刷毛部19が回転するのであるから、複数の突起10を設けた塗料絞り部7の上を塗装用ローラRが転がる際に、複数の突起10(少なくとも1つの突起部)の上をローラが転がることは明らかである。
そして、本件出願の明細書の段落【0026】における「本発明の本実施形態において突起部の形状は、上述した形状に限られない。図2(a)~(d)は、本発明の実施形態における容器の側面の一例を示す図である。」という記載によれば、本願補正発明における「少なくとも1つの突起部」は、その形態を限定するものではなく、引用発明の複数の突起10の形態を含むものと解するのが自然である。
そうすると、上記相違点3は、実質的な相違点ではない。
仮に、本願補正発明における「少なくとも1つの突起部」を、本件出願の図1ないし3に示すような線状のものであると限定的に解するとしても、ローラから余分な塗料を排出するために、少なくとも1つの線状の突起を設けることは、本件出願の原出願前に周知の技術(以下、「周知技術3」という。必要であれば、特開平11-319688号公報(特に、段落【0014】ないし【0017】及び図1ないし7)、実用新案登録第3037192号公報(特に、段落【0010】、【0012】及び【0017】並びに図1及び2)及び実願昭54-88571号(実願昭56-6765号)のマイクロフィルム(明細書2ページ7ないし20行及び第1ないし3図)を参照。)であるから、引用発明において、周知技術3を適用することにより、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本願補正発明は、全体としてみても、引用発明並びに周知技術1及び2から、又は、引用発明及び周知技術1ないし3から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
したがって、本願補正発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて、又は、引用発明及び周知技術1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
〔4〕むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成26年5月1日に提出された手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、前記第2[理由]〔1〕(A)の【請求項1】に示したとおりのものである。
2.刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物及びその記載事項、並びに、引用発明は、前記第2[理由]〔3〕2.に記載したとおりである。
3.対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]〔3〕で検討した本願補正発明において、「前記少なくとも1つの突起部は、その上をローラが転がることにより前記ローラに付いた塗料の量を調整するために使用され」という発明特定事項について、「前記少なくとも1つの突起部が、塗料を塗るものに付いた塗料の量を調整するために使用され」とし、「少なくとも1つの突起部」の機能を上位概念化すると共に、「ローラ」を「塗料を塗るもの」に上位概念化し、また、「前記内容器は金型で樹脂をプレスすることにより作られる内容器」という発明特定事項について、「内容器」とし、「内容器」についての製造方法により特定される状態の限定を削除したものに相当する。
そして、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記第2[理由]〔3〕に記載したとおり、引用発明並びに周知技術1及び2に基づいて、又は、引用発明及び周知技術1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は実質的に、上記第2[理由]〔3〕3.対比で示した相違点1及び2の点でのみ相違するのであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-005976