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特許拒絶査定不服審判

2018-005352

塗布装置及び塗布方法

審判番号
2018-005352
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-004928外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年04月18日
審決日
2019年01月28日
公報発行日
2019年05月31日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (B05C) / P18 .575-Z (B05C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2014-  4928「塗布装置及び塗布方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月23日出願公開、特開2015-131279〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成26年1月15日の出願であって、平成29年10月5日付けで拒絶理由が通知され、同年10月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年3月6日付けで拒絶査定がされ、同年4月18日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。 第2 平成30年4月18日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年4月18日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 平成30年4月18日付けの手続補正の内容 平成30年4月18日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正により補正される前の(すなわち、平成29年10月25日に提出された手続補正書により補正された)下記(1)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載を下記(2)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載へ補正するものである。なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。 (1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】 先端部分に設けられた吐出部から金属を含む液状体を吐出するノズルを有する塗布部と、 前記先端部分と基板とを対向させた状態で前記基板と前記ノズルとを相対移動させる相対駆動部と、 前記ノズルのうち少なくとも前記先端部分を覆い、前記液状体との間の親和性が前記液状体同士の親和性よりも弱くなるように形成されたコーティング層と を備え、 前記ノズルは、前記先端部分に接続された傾斜部分を更に有し、 前記コーティング層は、前記ノズルのうち、前記先端部分と、前記先端部分から前記傾斜部分の一部まで拡張された部分と、にのみ設けられている塗布装置。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】 先端部分に設けられた吐出部から金属を含む液状体を吐出するノズルを有する塗布部と、 前記先端部分と基板とを対向させた状態で前記基板と前記ノズルとを相対移動させる相対駆動部と、 前記ノズルのうち少なくとも前記先端部分を覆い、前記液状体との間の親和性が前記液状体同士の親和性よりも弱くなるように形成されたコーティング層と を備え、 前記ノズルは、前記先端部分に接続された傾斜部分を更に有し、 前記コーティング層は、前記ノズルのうち、前記先端部分と、前記先端部分から前記傾斜部分の一部まで拡張された部分と、にのみ設けられ、 前記コーティング層は、前記先端部分および前記傾斜部分を覆う形状に形成された払拭部の内方に収まる部分にのみ設けられている塗布装置。」 2 本件補正の適否 2-1 本件補正の目的 特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項である「コーティング層」が設けられる部分について、「前記コーティング層は、前記ノズルのうち、前記先端部分と、前記先端部分から前記傾斜部分の一部まで拡張された部分と、にのみ設けられている」とあるのを「前記コーティング層は、前記ノズルのうち、前記先端部分と、前記先端部分から前記傾斜部分の一部まで拡張された部分と、にのみ設けられ、 前記コーティング層は、前記先端部分および前記傾斜部分を覆う形状に形成された払拭部の内方に収まる部分にのみ設けられている」とさらに限定するものであり、しかも、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 したがって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 2-2 独立特許要件の検討 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて、さらに検討する。 (1)引用文献2並びに周知文献1及び2に記載された事項等 ア 引用文献2に記載された事項及び引用発明 (ア)引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内において、頒布された特開2012-81428号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「塗布装置及び塗布方法」に関して、おおむね次の記載(以下、順に「記載事項2a」のようにいい、総称して「引用文献2に記載された事項」という。)がある。なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。 2a 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 先端部分に設けられた吐出部から易酸化性の金属を含む液状体を吐出するノズルを有する塗布部と、 前記先端部分と基板とを対向させた状態で前記基板と前記ノズルとを相対移動させる相対駆動部と を備え、 前記ノズルのうち少なくとも前記先端部分には、前記液状体との間の親和性が前記液状体同士の親和性よりも弱くなるように形成された親和性調整部が設けられている 塗布装置。 【請求項2】 前記親和性調整部は、前記ノズルのうち、前記先端部分と、前記先端部分に隣接する部分と、を含む部分に設けられている 請求項1に記載の塗布装置。」 2b 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 これに対して、本発明者は、光吸収層を形成する手法として、上記半導体材料を分散させた液状体をノズルによって基板上に吐出し、当該液状体の膜を基板上に塗布する手法を提案する。光吸収層を液状体の塗布によって形成する場合、基板上に形成される液状体の膜厚が均一になるように基板上に液状体をムラ無く塗布することが求められる。 【0006】 以上のような事情に鑑み、本発明は、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能な塗布装置及び塗布方法を提供することを目的とする。」 2c 「【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明の第一の態様は、先端部分に設けられた吐出部から易酸化性の金属を含む液状体を吐出するノズルを有する塗布部と、前記先端部分と前記基板とを対向させた状態で前記基板と前記ノズルとを相対移動させる相対駆動部とを備え、前記ノズルのうち少なくとも前記先端部分には、前記液状体との間の親和性が前記液状体同士の親和性よりも弱くなるように形成された親和性調整部が設けられている塗布装置である。 【0008】 本発明の第一の態様によれば、ノズルのうち少なくとも先端部分に、液状体との間の親和性が液状体同士の親和性よりも弱くなるように形成された親和性調整部が設けられているので、ノズルの先端部分から吐出された液状体が当該先端部分に付着するのを抑制することができる。これにより、液状体が基板に定着しやすくなるため、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。 【0009】 上記の塗布装置において、好ましくは、前記親和性調整部は、前記ノズルのうち、前記先端部分と、前記先端部分に隣接する部分と、を含む部分に設けられている。 この場合、親和性調整部がノズルのうち先端部分と、当該先端部分に隣接する部分とを含む部分に設けられているため、液状体がノズルの先端部分から当該先端部分に隣接する部分へ伝ってしまうのを防ぐことができる。」 2d 「【発明の効果】 【0022】本発明によれば、基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能となる。」 2e 「【0025】 [塗布装置] 図1は、本実施形態に係る塗布装置CTRの構成を示す概略図である。 図1に示すように、塗布装置CTRは、ロードロック装置LL、第一チャンバ装置CB1、第二チャンバ装置CB2を備えている。ロードロック装置LL、第一チャンバ装置CB1及び第二チャンバ装置CB2は、例えばX方向に直列に接続されている。塗布装置CTRは、基板S上に液状体を塗布する装置である。本実施形態では、基板Sとして、例えばモリブデンなどの金属を用いて形成された板状部材が採用されている。」 2f「【0038】 塗布部CTは、第一チャンバ装置CB1の収容室RM1に収容されている。塗布部CTは、長尺状に形成されたスリットノズルNZを有している。スリットノズルNZは、収容室RM1の例えば基板搬入口EN1の近傍に設けられている。スリットノズルNZは、例えばY方向に長手になるように形成されている。スリットノズルNZは、例えば収容室RM1のX方向のほぼ中央部に配置されている。スリットノズルNZの+X側及び-X側は、それぞれ基板Sが配置可能なスペースが確保されている。 【0039】 図2は、スリットノズルNZの構成を示す図である。図2(a)は、スリットノズルNZを+Z方向に見たときの構成を示している。図2(b)は、スリットノズルNZを+Y方向に見たときの構成を示している。 【0040】 図2(a)及び図2(b)に示すように、スリットノズルNZは、例えばY方向が長手の長尺状に構成されている。スリットノズルNZのうち-Z方向に向けられた先端部分NZaには、当該スリットノズルNZの長手方向に沿って形成されたスリット状のノズル開口部21が設けられている。スリットノズルNZは、Z方向のほぼ中央部から当該先端部分NZaにかけてX方向の寸法が当該X方向の中央部へ向けて徐々に小さくなるように先細りに形成されている。」 2g 「【0046】 本実施形態では、例えばスリットノズルNZの全体が、上記材料(1)~(8)の少なくとも1種類を用いて形成されている。このため、スリットノズルNZの表面全体において、液状体Qとの間の親和性が液状体Q同士の親和性よりも弱い部分(親和性調整部)AFが形成されることになる。 【0047】 このスリットノズルNZの表面全体には、例えば先端部分NZaや、当該先端部分NZaに隣接する隣接部分が含まれている。当該隣接部分としては、例えば図2(a)及び図2(b)に示すように、スリットノズルNZの先端部分NZaの+X側端辺及び-X側端辺にそれぞれ接続された傾斜部分NZb及びNZcが挙げられる。また、隣接部分として、当該傾斜部分NZb及びNZcの+Z側にそれぞれ接続された壁部分NZd及びNZeを含めても構わない。 【0048】 このように、本実施形態のスリットノズルNZは、上記材料(1)~(8)の少なくとも1種類を用いて形成されていることにより、親和性調整部AF(例えば先端部分NZa、傾斜部分NZb及びNZc、壁部分NZd及びNZeなど)を含む表面全体において、液状体Qが付着しにくくなるように構成されている。」 2h 「【0051】 スリットノズルNZには、ノズル駆動機構NA(図1参照)が設けられている。ノズル駆動機構NAは、スリットノズルNZをX方向、Y方向及びZ方向に駆動する構成を有している。例えば、ノズル駆動機構NAは、収容室RM1の待機位置と塗布位置(図1に示す位置)との間でスリットノズルNZを移動可能な構成を有している。」 2i 「【0075】 基板Sの搬入後、制御装置CONTは、基板駆動機構SA1のローラー部材51を回転させ、基板Sを+X方向に移動させる。基板Sの+X側の端辺がZ方向視でスリットノズルNZのノズル開口部21に重なる位置に到達したら、図5に示すように、制御装置CONTはスリットノズルNZを用いて基板Sに液状体Qを塗布させる。 【0076】 この場合、制御装置CONTは、スリットノズルNZと基板Sとを相対移動させて(本実施形態では基板Sを+X方向に移動させて)スリットノズルNZの先端部分NZaを基板Sに対向させる。先端部分NZaと基板Sとを対向させた後、制御装置CONTは、図5に示すように、先端部分NZaと基板との間で液状体が挟持されるようにノズル開口部21から液状体Qを吐出させる。」 2j 「【0094】 本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。 例えば、上記実施形態では、スリットノズルNZの全体が表1に示す(1)~(8)の少なくとも1種類の材料を用いて構成された例を示したが、これに限られることは無い。 【0095】 例えば図9に示すように、スリットノズルNZの先端部分NZa、傾斜部分NZb及びNZc、壁部分NZd及びNZeをそれぞれ覆うように形成された被覆部NZfを有する構成であっても構わない。当該被覆部NZfは、上記(1)~(8)の少なくとも1種類の材料を用いて形成されている。例えばスリットノズルNZの表面をコーティング処理したり、蒸着処理したりすることにより、上記構成の被覆部NZfを形成することができる。なお、スリットノズルNZの表面に被覆部NZfが設けられた場合であっても、当該被覆部NZfが設けられた部分に親和性調整部AFが形成されることになる。なお、この場合、スリットノズルNZのうち被覆部NZf以外の部分は、上記(1)~(8)の材料とは異なる材料であっても構わない。」 2k 「【図1】 」 2l 「【図2】 」 2m 「【図9】 」 (イ)引用発明 引用文献2に記載された事項を、特に【特許請求の範囲】、【0047】及び【0095】に関して整理すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「先端部分に設けられた吐出部から易酸化性の金属を含む液状体を吐出するノズルを有する塗布部と、 前記先端部分と基板とを対向させた状態で前記基板と前記ノズルとを相対移動させる相対駆動部と 前記ノズルのうち少なくとも前記先端部分には、前記液状体との間の親和性が前記液状体同士の親和性よりも弱くなるように形成された親和性調整部が形成された被覆部と を備え、 前記ノズルは、前記先端部分に接続された傾斜部分を更に有し、 前記被覆部は、前記ノズルのうち、前記先端部分と、前記先端部分に接続された傾斜部分と、を含む部分に設けられている塗布装置。」 イ 周知文献1に記載された事項 本願の出願前に日本国内において、頒布された特開2013-237042号公報(以下、「周知文献1」という。)には、「塗布装置及ぶ塗布方法」に関して、おおむね次の記載がある。 ・「【0030】 以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。 図1は、本実施形態に係る塗布装置CTRの構成を示す概略図である。 図1に示すように、塗布装置CTRは、基板Sに液状体を塗布する装置である。塗布装置CTRは、基板供給回収部LU、第一チャンバーCB1、第二チャンバーCB2、接続部CN及び制御部CONTを有している。第一チャンバーCB1は、塗布部CTを有している。第二チャンバーCB2は、焼成部BKを有している。接続部CNは、減圧乾燥部VDを有している。」 ・「【0046】 塗布部CTは、吐出部31、メンテナンス部32、液状体供給部33、洗浄液供給部34、廃液貯留部35、気体供給排出部37及び基板搬送部25を有する。 【0047】 吐出部31は、ノズルNZ、処理ステージ28及びノズル駆動部NAを有している。 図3(a)ノズルNZの構成を示す図である。 図3(a)に示すように、ノズルNZは、長尺状に形成されており、長手方向がX方向に平行になるように配置されている。ノズルNZは、本体部NZa及び突出部NZbを有している。本体部NZaは、内部に液状体を収容可能な筐体である。本体部NZaは、例えばチタン又はチタン合金を含んだ材料を用いて形成されている。突出部NZbは、本体部NZaに対して+X側及び-X側にそれぞれ突出して形成されている。突出部NZbは、ノズル駆動部NAの一部に保持される。 【0048】 図3(b)は、-Z側からノズルNZを見たときの構成を示している。 図3(b)に示すように、ノズルNZは、本体部NZaの-Z側の端部(先端TP)に吐出口OPを有している。吐出口OPは、液状体が吐出される開口部である。吐出口OPは、X方向に長手となるようにスリット状に形成されている。吐出口OPは、例えば長手方向が基板SのX方向の寸法とほぼ同一となるように形成されている。 【0049】 ノズルNZは、例えば上記のCu、Zn、Sn、Seの4種類の金属が所定の組成比で混合された液状体を吐出する。ノズルNZは、接続配管(不図示)などを介して、それぞれ液状体供給部33に接続されている。ノズルNZは、内部に液状体を保持する保持部を有している。なお、上記保持部に保持された液状体の温度を調整する温調部が配置されていても構わない。」 ・「【0053】 メンテナンス部32は、ノズルNZのメンテナンスを行う部分である。メンテナンス部32は、ノズル待機部44及びノズル先端管理部45を有している。 ノズル待機部44は、ノズルNZの先端TPが乾燥しないように当該先端TPをディップさせる不図示のディップ部と、ノズルNZを交換する場合やノズルNZに供給する液状体を交換する場合にノズルNZ内に保持された液状体を排出する不図示の排出部とを有している。 【0054】 ノズル先端管理部45は、ノズルNZの先端TP及びその近傍を洗浄したり、ノズルNZの吐出口OPから予備的に吐出したりすることで、ノズル先端のコンディションを整える部分である。ノズル先端管理部45は、ノズルNZの先端TPを払拭する払拭部45aと、当該払拭部45aを案内するガイドレール45bと、を有している。ノズル先端管理部45には、ノズルNZから排出された液状体や、ノズルNZの洗浄に用いられた洗浄液などを収容する廃液収容部35aが設けられている。 【0055】 図3(c)は、ノズルNZ及びノズル先端管理部45の断面形状を示す図である。図3(c)に示すように、払拭部45aは、断面視においてノズルNZの先端TP及び先端TP側の斜面の一部を覆う形状に形成されている。 【0056】 ガイドレール45bは、ノズルNZの吐出口OPをカバーするようにX方向に延びている。払拭部45aは、不図示の駆動源などにより、ガイドレール45bに沿ってX方向に移動可能に設けられている。払拭部45aがノズルNZの先端TPに接触した状態でX方向に移動することで、先端TPが払拭されることになる。」 ・「【図1】 」 ・「【図3】 」 ウ 周知文献2に記載された事項 本願の出願前に日本国内において、頒布された特開平11-239750号公報(以下、「周知文献2」という。)には、「凹凸基材への塗液の塗布装置および方法並びにプラズマディスプレイの製造装置および方法」に関して、おおむね次の記載がある。 ・「【0061】次に、図1を参照して、塗液除去装置としての拭取り装置200について説明する。この拭取り装置200においては、拭取り部材201がノズル20の開口部面45に接触する位置に配置されている。 【0062】図5および図6に示すように、拭取り部材201は、開口部面先端部をくるむような形状をしているが、開口部面45だけに接触する形状にしてもよい。拭取り部材201はトレイ202に取り付けられているブラケット203に固定されており、トレイ202とともに幅方向(Y軸方向)に移動する。拭取り部材201が開口部面45に接触して図6に示すように幅方向に移動する動作によって、開口部面45に付着している塗液がかき落とされることになる。・・・(略)・・・ 【0066】このように構成された拭取り装置200を用い、拭取り部材201をノズル20の開口部面45に接触させ、かつ、拭取り部材201をノズル20の幅方向Yに移動させることにより、塗布前に、開口部面45に付着していた塗液がきれいに拭き取られ、除去される。したがって、清浄な望ましい状態の開口部面45の状態から塗布が開始され、続行される。塗布前にブリードを行う場合にも、ブリード後にこの拭き取りを行うことにより、全く問題のない状態で塗布を開始することができる。すなわち、ブリードの有無や塗布前の状態にかかわらず、容易に望ましい塗布開始状態に整えることができる。これにより、塗液の垂れ落ちや、付着していた塗液が塗布すべき塗液に付加されて塗布量が増大するといった不都合の発生が回避され、塗布量が均一な塗布が安定して行われる。」 ・「【図5】 【図6】 」 (2)対比 本願補正発明と引用発明を対比する。 引用発明における「易酸化性の金属を含む液状体」は本願補正発明における「金属を含む液状体」に相当し、以下、同様に、「親和性調整部が形成された被覆部」は「コーティング層」に相当する。 したがって、両者は、 「先端部分に設けられた吐出部から金属を含む液状体を吐出するノズルを有する塗布部と、 前記先端部分と基板とを対向させた状態で前記基板と前記ノズルとを相対移動させる相対駆動部と、 前記ノズルのうち少なくとも前記先端部分を覆い、前記液状体との間の親和性が前記液状体同士の親和性よりも弱くなるように形成されたコーティング層と を備え、 前記ノズルは、前記先端部分に接続された傾斜部分を更に有している塗布装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点> 本願補正発明においては、「前記コーティング層は、前記ノズルのうち、前記先端部分と、前記先端部分から前記傾斜部分の一部まで拡張された部分と、にのみ設けられ、 前記コーティング層は、前記先端部分および前記傾斜部分を覆う形状に形成された払拭部の内方に収まる部分にのみ設けられている」のに対して、引用発明においては、「前記被覆部は、前記ノズルのうち、前記先端部分と、前記先端部分に接続された傾斜部分と、を含む部分に設けられている」点。 (3)相違点についての判断 そこで、相違点について、以下に検討する。 記載事項2cによると、引用発明における「親和性調整部が形成された被覆部」(本願補正発明における「コーティング層」に相当する。)は、「ノズルの先端部分から吐出された液状体が当該先端部分に付着するのを抑制する」ために設けられたものであり、また、「液状体がノズルの先端部分から当該先端部分に隣接する部分へ伝ってしまうのを防ぐ」ために設けられたものであるから、「液状体」が付着しやすい箇所に設ければ十分であることは、当業者に明らかである。 そして、先端部分に突出部が設けられているのであるから、先端部分に接続された傾斜部分のうち、先端部分に近い部分が「液状体」が付着しやすい箇所であることも、当業者に明らかである。 また、先端部分に設けられた吐出部から液状体を吐出するノズルを有する塗布部を備えた塗布装置において、ノズルの先端部分及び先端部分に接続された傾斜部分の一部を覆う形状に形成された払拭部を、その内方にノズルの先端部分及び先端部分に接続された傾斜部分の一部が収まるように設けることは、周知文献1及び2に記載されているように周知(以下、「周知技術」という。)である。 そして、周知技術における払拭部は、液状体が付着した箇所から液状体を払拭するものであるから、液状体が付着しやすい箇所が払拭部内方に収まるような大きさにするのは当然のことである。 したがって、引用発明において、「親和性調整部が形成された被覆部」を「前記ノズル」のうち「前記先端部分」と「前記先端部分に接続された傾斜部分」の一部にのみ設け、その際に、周知技術を適用して、「前記先端部分」及び「前記先端部分に接続された傾斜部分」を、それらを覆う形状に形成された「払拭部」の内方に収まるようにして、相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 そして、「基板上に液状体をムラ無く塗布することが可能な塗布装置」を提供することができる(本願明細書の【0021】参照。)という本願補正発明の効果は、記載事項2b及び2dからみて、引用発明も奏する効果であり、格別顕著な効果とはいえない。 また、「ノズルの先端部分から傾斜部分の一部まで拡張した範囲で、ノズルの吐出口から吐出された液状体が付着することを抑制することができる。」及び「加えて、スリットノズルNZの先端部分NZa、傾斜部分NZb及びNZc、壁部分NZd及びNZeをそれぞれ覆うように形成された被覆部NZfを有する構成(引用文献2参照)と比較して、コーティング層の形成材料を削減し、低コスト化を図ることができる。」(平成29年10月25日提出の意見書において請求人が主張。)並びに「コーティング層の全部(先端部分および拡張部分に設けられた部分)を一括して払拭することができる。」(審判請求書において請求人が主張。)という本願補正発明の効果は、引用発明において、相違点に係る本願補正発明の発明特定事項を採用すれば、奏されるものであって、格別顕著なものとはいえない。 (4)請求人の主張について ア 平成29年10月25日に提出された意見書における主張について 請求人は、平成29年10月25日に提出された意見書において、「例えば、引用文献には、新請求項1に係る発明の技術的思想(具体的には「前記ノズルは、前記先端部分に接続された傾斜部分を更に有し、前記コーティング層は、前記ノズルのうち、前記先端部分と、前記先端部分から前記傾斜部分の一部まで拡張された部分と、にのみ設けられている」)は記載されていません。・・・(略)・・・引用文献2の段落[0095]には、「スリットノズルNZの先端部分NZa、傾斜部分NZb及びNZc、壁部分NZd及びNZeをそれぞれ覆うように形成された被覆部NZfを有する構成であっても構わない。」と記載されています。 このように引用文献1、2に係る発明は、吐出面およびその外側の側面を全体的にコーティング処理する構成を採用しているに過ぎません。 したがって、新請求項1に係る発明は、引用文献に記載された発明と異なるうえ、これらの発明に基づき、当業者が容易に発明しうるものということはできません。」旨主張する。 しかし、引用文献2の【0095】の「スリットノズルNZの先端部分NZa、傾斜部分NZb及びNZc、壁部分NZd及びNZeをそれぞれ覆うように形成された被覆部NZfを有する構成であっても構わない。」という記載は、「であっても構わない。」という語尾の記載、引用文献2の【0094】の「本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。」及び同じく【0095】の「例えば図9に示すように」という記載が示すように、引用発明を限定する記載ではないことから、上記第2 2 2-2(1)ア(イ)のとおり引用発明を認定することは可能である。 仮に、引用発明として、「吐出面およびその外側の側面を全体的にコーティング処理する構成」を有するものを認定すべきであるとしても、上記第2[理由]2 2-2(3)のとおり、引用発明における「親和性調整部が形成された被覆部」は、「液状体」が付着しやすい箇所に設ければ十分であることは、当業者に明らかであり、また、先端部分に接続された傾斜部分のうち、先端部分に近い部分が「液状体」が付着しやすい箇所であることも、当業者に明らかであるから、引用発明において、「親和性調整部が形成された被覆部」を「前記ノズル」のうち「前記先端部分」と「前記先端部分に接続された傾斜部分」の一部にのみ設けることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 イ 平成30年4月18日に提出された審判請求書における主張について 請求人は、平成30年4月18日に提出された審判請求書において、「しかし、引用文献1-5のいずれを参照しても、「前記コーティング層は、前記先端部分および前記傾斜部分を覆う形状に形成された払拭部の内方に収まる部分にのみ設けられている」ことは見受けられません。 以上の点から、本願新請求項1に係る発明は、引用文献に記載された発明ではないと思料致します。また、当業者が引用文献の記載に基づいて本願新請求項1に係る発明に容易に想到することができたものではないと思料致します。」旨主張する。 しかし、上記第2[理由]2 2-2(3)のとおり、先端部分に設けられた吐出部から液状体を吐出するノズルを有する塗布部を備えた塗布装置において、ノズルの先端部分及び先端部分に接続された傾斜部分の一部を覆う形状に形成された払拭部を、その内方にノズルの先端部分及び先端部分に接続された傾斜部分の一部が収まるように設けることは周知技術であり、引用発明に該周知技術を適用して、「前記コーティング層は、前記先端部分および前記傾斜部分を覆う形状に形成された払拭部の内方に収まる部分にのみ設けられている」という発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 (5)まとめ したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 2-3 むすび 以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないので、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 以上のとおり、本件補正は却下されたため、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし11に係る発明は、平成29年10月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに願書に最初に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)のとおりである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし3及び5ないし11に係る発明は、本願の出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。 引用文献2.特開2012-81428号公報 3 引用文献2の記載事項及び引用発明 引用文献2の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]2 2-2(1)アのとおりである。 4 対比・判断 上記第2[理由]2 2-1で検討したように、本願補正発明は本願発明の発明特定事項に「前記コーティング層は、前記先端部分および前記傾斜部分を覆う形状に形成された払拭部の内方に収まる部分にのみ設けられている」という限定を加えたものである。そして、本願発明の発明特定事項に上記限定を加えた本願補正発明が、上記第2[理由]2 2-2(2)ないし(4)のとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、周知技術は、上記限定に対して引用されたものであるから、上記限定のない本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 むすび したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 結語 上記第3のとおり、本願発明、すなわち請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2018-005352

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