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特許拒絶査定不服審判

2015-002721

耳かけダイナミックバランスドスマホ,PC

審判番号
2015-002721
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2013-162914外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2015年02月12日
審決日
2016年07月25日
公報発行日
2017年05月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (G02C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第36条、特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2013-162914「耳かけダイナミックバランスドスマホ,PC」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月26日出願公開,特開2015- 38542〕について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。

理由

目次 ▾ 9項目
【理 由】

第1 事案の概要

1 手続の経緯

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本件出願は,平成25年8月6日の特許出願であって,その手続の経緯の概要は,以下のとおりである。

平成26年 9月10日:拒絶理由通知(同年同月30日発送)
平成26年11月27日:意見書
平成26年11月27日:手続補正書
平成26年12月10日:拒絶査定(同年同月16日送達)
平成27年 2月12日:審判請求
平成28年 2月 1日:拒絶理由通知(同年同月9日発送)
平成28年 4月 7日:意見書(以下「意見書」という。)
平成28年 4月 7日:手続補正書

2 本願発明

本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,以下のとおりである。

「 つるの耳の後方にバッテリーと配線を配置して,支点である耳より後の錘をW1として天秤機能をさせ,ダイナミックバランサーとし,前方にディスプレイ又はカメラを設けて,その重さをW2として顔が止まっても動いてもW1とW2のバランスをディスプレイ・カメラ部とバッテリー部とによりとり,鼻などの顔部に荷重がかからないことを特徴とする耳かけダイナミックバランスドスマホ,PC。」

3 拒絶の理由

平成28年2月1日の拒絶理由通知による拒絶の理由(以下,「当審拒絶理由」という。)は,概略,以下のとおりである。

「理由1:平成26年11月27日付けでした手続補正は,下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
記
平成26年11月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により,請求項1に「スタティックバランス及びダイナミックバランスをディスプレイ・カメラ部とバッテリー部とによりとり」との事項が追加された。
しかし,出願当初明細書の発明の詳細な説明を参酌するに,段落【0009】に「バッテリー11の重さや電子回路12の重さW1とディスプレイ16やカメラ18との重量W2のバランスをとり,天秤の原理で顔が動いてもダイナミックバランス即ち動的にも水平となる」との記載は存在するものの,「スタティックバランス」という用語自体が出願当初明細書に記載されていないし,また「スタティックバランス及びダイナミックバランス」をとることが,出願当初明細書に記載または示唆されているともいえない。
してみれば,本件補正は,出願当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえない。 」
「理由2:この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
記
(1) 請求項1には,「支点の耳より後の錘をW1として天秤機能をさせ」との記載がある。しかし,この記載は,以下のような理由により,明確でない。
ア 「支点の」との修飾語が「耳」に係るようにも読める一方で,「錘」に係るようにも読める。したがって,上記記載の意味するところが一義的に定まらず,不明瞭なものとなっている。
続きを表示(全13行)
イ 仮に,「支点」が「耳」であることを意味することが理解できるとしても,「支点」となる「耳」の位置は,装着する人によって,又は装着の態様によって異なるものと認められる。してみれば,「支点」の位置や「支点の耳より後」の位置が特定できないこととなるから,請求項1に係る発明は明確でない。
(2) 請求項1には,「止まっても動いても」との記載があるが,主語が何であるのか(すなわち,止まったり動いたりする主体が何であるのか)が明らかでない。
(3) 請求項1には「スタティックバランス及びダイナミックバランス」との用語が記載されている。
一般に,バランス,すなわち釣合いには,動的なものと静的なものがあるところ,静的な釣合いは,いわゆる一般的な「釣合い」を指すものであって,二以上の力が一物体に作用しても,その物体が静止している,あるいは運動状態に変化を生じない状態を指すものといえる(広辞苑第6版)。そして,動的な釣合いとは,運動状態にある物体について,その運動状態によって発生している力をも考慮した釣合いを指すものと考えられる。一般には,回転体に対して広く用いられる用語であって,回転運動による遠心力も考慮した,モーメントの釣合いを指す用語として広く用いられている(例えば,マグローヒル科学技術用語大辞典編集委員会編「科学技術用語大辞典」(日刊工業新聞社,改訂第3版,2001)1270頁には「動的不つりあいdynamic unbalance[機械]単一軸面と回転軸の反対側にかかる力または異なる軸面にかかる力によって,回転装置の一部分の回転軸が慣性主軸の一つと合致しないこと。破損の原因となる。」と記載され,また機械学ポケットブック編集委員会編「図解板 機械学ポケットブック」(オーム社,第1版,2004)169頁には,「また,回転の基準位置からの距離を示す位置ベクトルziを用いて,モーメントのつりあいを考えると,Σzi×miriω2=0 となる。これを動つりあいの条件という。」と記載されている。)。
一方,本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0009】には,ダイナミックバランスについて,以下のように記載されている。
「【0009】13は本発明装置支点で,耳でつる1を支持する。バッテリー11の重さや電子回路12の重さW1とディスプレイ16やカメラ18との重量W2のバランスをとり,天秤の原理で顔が動いてもダイナミックバランス即ち動的にも水平になる。バッテリー11や電子回路12の重量をW1,ビューアー16やカメラ18,タッチセンサ部15の重量をW2とすると,W1=W2となるようにすれば,鼻部14は無荷重状態になる。14は「鼻あて」である。」
W1=W2を満たしても,動的又は静的な釣合いがとられるとは限らないことは,当業者にとって技術常識であるところ,上記記載は,ΣWiri=0(riは,支点からみたWiの位置ベクトル)を意図した記載であると思われる。いずれにしても,段落【0009】においては,動的な釣合いではなく,静的な釣合いがとれていることを「ダイナミックバランス」がとれていると表現しているものと認められる。
しかし,既に検討したように,「ダイナミックバランス」,すなわち「動的な釣合い」という用語表現は,運動状態にある物体についての,その運動状態によって発生している力をも考慮した釣合いをいうのであるから,本件出願の特許請求の範囲及び明細書の発明の詳細な説明における用語の用法は,一般的な用語の用法と著しく異なっている。しかも,請求項1には「スタティックバランス及びダイナミックバランス」と記載されており,「ダイナミックバランス」は「スタティックバランス」とは異なる用語・意味であることが強調されている。
してみれば,請求項1における「スタティックバランス及びダイナミックバランス」との用語が,一体何を意味するものであるのか,著しく不明確となっている。」
「理由3:この出願の請求項1に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の引用例1,2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用例1:特開平1-136115号公報
引用例2:国際公開第2012/020527号
続きを表示(全11行)
引用例3:特表2003-505718号公報
●引用例1に基づく容易想到性
引用例1については,第1頁左欄第9行目~右欄第7行目及び第1図等を特に参照されたい。
引用例1に記載された発明(以下「引用発明1」という。)を,引用例3に記載されるようなPC機能等を有する装置に適用すること,あるいは,引用発明1に,PC機能,通話機能等を付加することは,当業者が適宜なし得たことである。
●引用例2に基づく容易想到性
引用例2については,段落[0001]~[0018],[0028]~[0032],[0048]~[0056]及び図1等を特に参照されたい。
引用例2に記載された発明(以下「引用発明2」という)を,引用例3に記載されるようなPC機能等を有する装置に適用すること,あるいは,引用発明2に,PC機能,通話機能等を付加することは,当業者が適宜なし得たことである。」

第2 当合議体の判断

事案に鑑み,当審拒絶理由における理由2の(1),(3)及び理由3について検討する。

1 理由2の(1)について

請求項1は,その末尾の記載から明らかなように,「耳かけダイナミックバランスドスマホ,PC。」という物の発明である。そして,請求項1には,「つるの耳の後方にバッテリーと配線を配置して,支点である耳より後の錘をW1として天秤機能をさせ」との,使用時の態様によって物を特定しようとする記載がある。

しかし,「支点」となる「耳」の位置が,「耳かけダイナミックバランスドスマホ,PC」を装着する人によって,又は装着の態様(深くかけるか,浅くかけるか等)によって異なってくることは,当業者にとって明らかである。

また,請求項1には,「・・・W1とW2のバランスをディスプレイ・カメラ部とバッテリー部とによりとり・・・」との記載があるところ,本願明細書の段落【0009】の「13は本発明装置支点で,耳でつる1を支持する。バッテリー11の重さや電子回路12の重さW1とディスプレイ16やカメラ18との重量W2のバランスをとり,天秤の原理で・・・水平になる」との記載,及び,同【0010】の「バッテリー収納部21の端部を曲線部10とすることにより,ここを耳かけとして耳の位置決めによる天秤支点位置決めと・・・」との記載からみて,「耳」の位置が,「天秤の原理」で「W1とW2のバランス」をとる際の天秤の支点の位置となっていることは明らかである。

しかし,上記のとおり,「支点」となる「耳」の位置は,装着する人又は装着の態様によって異なってくるのであり,特定の「支点」の位置に基づいて「W1とW2のバランス」がとれるように設計したとしても,支点の位置が設計時の位置から異なってくれば「W1とW2のバランス」がとれなくなることは明白であるから,結局のところ,請求項1の「耳かけダイナミックバランスドスマホ,PC」は,はたして「W1とW2のバランス」がとられた物なのか否か不明である。

以上のことからみて,請求項1に係る発明は明確でない。

2 理由2の(3)について

請求項1には,「ダイナミックバランサー」,「ダイナミックバランスド」との用語が用いられている。

一般に,バランス,すなわち釣合いには,動的(ダイナミック)なものと静的(スタティック)なものがあるところ,静的な釣合いは,いわゆる一般的な「釣合い」を指すものであって,二以上の力が一物体に作用しても,その物体が静止している,あるいは運動状態に変化を生じない状態を指すものといえる(広辞苑第6版)。そして,動的な釣合いとは,運動状態にある物体について,その運動状態によって発生している力をも考慮した釣合いを指すものと考えられる。一般には,回転体に対して広く用いられる用語であって,回転運動による遠心力も考慮した,モーメントの釣合いを指す用語として広く用いられている(例えば,マグローヒル科学技術用語大辞典編集委員会編「科学技術用語大辞典」(日刊工業新聞社,改訂第3版,2001)1270頁には「動的不つりあいdynamic unbalance[機械]単一軸面と回転軸の反対側にかかる力または異なる軸面にかかる力によって,回転装置の一部分の回転軸が慣性主軸の一つと合致しないこと。破損の原因となる。」と記載され,また機械学ポケットブック編集委員会編「図解版 機械学ポケットブック」(オーム社,第1版,2004)169頁には,「また,回転の基準位置からの距離を示す位置ベクトルziを用いて,モーメントのつりあいを考えると,Σzi×miriω2=0 となる。これを動つりあいの条件という。」と記載されている。)。

このような技術常識を考慮すれば,請求項1の「ダイナミックバランサー」,「ダイナミックバランス」とは,「動的な釣り合い」について特定したものと認めることが相当である。

しかしながら,本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0009】には,ダイナミックバランスについて,以下のように記載されている。

「【0009】13は本発明装置支点で,耳でつる1を支持する。バッテリー11の重さや電子回路12の重さW1とディスプレイ16やカメラ18との重量W2のバランスをとり,天秤の原理で顔が動いてもダイナミックバランス即ち動的にも水平になる。バッテリー11や電子回路12の重量をW1,ビューアー16やカメラ18,タッチセンサ部15の重量をW2とすると,W1=W2となるようにすれば,鼻部14は無荷重状態になる。14は「鼻あて」である。」

W1=W2を満たしても,動的又は静的な釣合いがとられるとは限らないことは,当業者にとって技術常識であるところ,上記記載は,「天秤の原理」との記載からみて,ΣWiri=0(riは,支点からみたWiの位置ベクトル)を意図した記載であると思われる。すなわち,段落【0009】においては,動的な釣合いではなく,静的な釣合いがとれていることを「ダイナミックバランス」がとれていると表現しているものと思われる。

ただし,段落【0009】には,「天秤の原理で顔が動いてもダイナミックバランス即ち動的にも水平になる。」という記載もあり,文章上は,静的な釣り合いが取れていることを根拠として,動的な釣り合いが取れていると説明しているようにも解される。

このように,請求項1には,「ダイナミックバランス」(ダイナミックバランサー)という,一般にその意味が明確な用語が用いられているにもかかわらず,本件明細書の段落【0009】には,当該用語が有する通常の意味とは著しく異なる用語の説明が記載されているから,当該用語について,一般的に用いられる「動的な釣り合い」の文脈で捉えるべきものであるのか,あるいは明細書に記載された「静的な釣り合い」の文脈で捉えるべきものであるのか,いずれと解すべきものであるのかが不明となっている。

したがって,請求項1に係る発明は明確でない。

3 理由3について(引用例1に基づく容易想到性)

前記1,2で検討したように,請求項1に係る発明は明確であるということができないが,請求項1に記載された物の構成,及び明細書の段落【0009】に記載された物の動作又は状態を手がかりにして,以下,請求項1に係る発明の容易想到性について検討する。

引用例1:特開平1-136115号公報

(当審拒絶理由における引用例1)

引用例2:特表2003-505718号公報

(当審拒絶理由における引用例3)

(1) 引用例1の記載及び引用発明

ア 引用例1には,以下の事項が記載されている(下線は,当合議体が付した。以下同じ。)。

(ア) 1頁左欄7~8行

「本発明は,耳より後方で支持して鼻を圧しないようにしたメガネに関する。」

(イ) 1頁左欄9~右欄7行

第1図は本発明実施例を示し,レンズ1付メガネフレーム2のつる3の後端4を幅広しゃもじ状とし第2図に示すように後頭部の頸部を包むようにしたものである。後端4は耳の後方の凹み5にはまるような形状にすると更に保持効果がある。本発明メガネはこのようになっているので,つる3と耳6の接点7から前方の重心8までの距離L,重心8における重さWとするときのメガネのモーメントWLが,頭9に固定されるつる後部4によって支えられるので,メガネの荷重が鼻にかかって苦痛とならず,又,跡がつくことがなくなるので,女性の化粧がはがれない。第2図に示すようにつる3にヒンヂ10を設け,バネによりつる後部4が頭方向11に付勢するようにすると効果的である。

又,しゃもじ状部4に重錘を入れて前記モーメントWLを支えたり,レンズ1に液晶層を設けたときその電源となる電池を埋込んでもよい。」

第1図

第2図

イ 上記ア(ア)及び(イ)から,引用例1には,以下の発明が記載されている(以下,「引用発明」という。)。

「レンズ付メガネフレームのつるの後端を幅広しゃもじ状のしゃもじ状部としたメガネであって,
前記しゃもじ状部に重錘を入れることで,つると耳の接点から前方の重心までの距離L,重心における重さWとするときのメガネのモーメントWLを支える,
メガネ。」

(2) 引用例2の記載

引用例2には,以下の事項が記載されている。

ア 「【0001】
発明の分野
本発明は,通信のための方法および装置(システム)に関する。さらに具体的には,本発明は,ユーザが他の活動に関与している間に,視覚的および聴覚的な情報をユーザに提供することができる,統合通信装置(システム)に関する。
・・・(中略)・・・
【0005】
今日の無線網を介して情報を送受する携帯電話は,より小型に,またより低廉になってきていると同時に,より長い利用範囲およびより多くのサービスを提供し続けている。これら周知の携帯電話は,無線電話用途で使用できるだけでなく,別の用途でも同様に使用することができる。例えば,或る周知の携帯電話は,目下インターネットアクセスを提供している。
【0006】
利用可能なサービスがこのように増大し,サイズか小型化しているにもかかわらず,周知の携帯電話は,以前と同じ欠点を有し続けている。例えば,周知の携帯電話上に表示されたインターネットからの情報を見るために,ユーザは眼から所定の距離を置いてしかも視界内に電話を保持しなければならず,表示された情報を見るために,携帯電話のディスプレイに注意を変えなければならない。従って,ユーザは,携帯電話に表示された情報を見ている間は他の仕事を行うことはできない。
【0007】
着用可能なコンピュータおよび無線電話の使用が増大し続けることは予見できるが,しかし,現行の典型的なデザインのもとでは,これらは今日経験されるコンセプト上の欠点を有し続けることになる。」
イ 「【0008】
発明の概要
本発明に従って,通信のための統合された方法および装置が提供される。1つの実施態様によれば,ユーザのための頭部装着式の可視ディスプレイシステムが提供される。このシステムはアイウェア(眼装着物)とマイクロ光学ディスプレイとを有している。マイクロ光学ディスプレイは,ユーザの視界内に配置されており,ユーザの屈折誤差部分を補正するように構成されている。」
ウ 「【0011】
詳細な説明
図1は,本発明の実施例によるアイウェア11を着用したユーザ10の頭部を示している。アイウェア11は外見上は従来型であってよく,リム(eyewire)14と,レンズ18と,テンプル15とを有している。図面から明らかなように,この実施例のアイウェア11は,アイウェア11のレンズ18に配置されたマイクロ光学ディスプレイ12を有している。この実施例におけるマイクロ光学ディスプレイ12は,ユーザの眼17の視野内にあるように位置決めされているので,ユーザ10の都合が良いときに,ユーザ10はマイクロ光学ディスプレイを覗き,ディスプレイに表示された情報13を見ることができる。ユーザ10の視野内にマイクロ光学ディスプレイを位置決めすることにより,ユーザ10は他の活動に関与している間に,ディスプレイからの情報にアクセスすることができる。
【0012】
ユーザ10に表示された情報13は,株式相場,eメール,運転案内および他のタイプのデータを含む種々のデータを有していてよい。
【0013】
マイクロ光学ディスプレイ12はアイウェア11と一体化されるか,または,別個の取り付けられてよい。マイクロ光学ディスプレイ12内の光学素子は,1つまたは複数の文字列から成る画像を投影して,文字がユーザの視野内に現れるように構成されていてよい。」

【図1】

エ 「【0014】
図2.0は,図1のアイウェアをより詳細に示す正面斜視図である。図面から明らかなように,この実施例のアイウェアは,従来の一対の眼鏡に見えるように形成されている。あるいは,下で説明するように,アイウェア11は,スポーツグラス,セーフティゴーグル,および,ユーザが着用できる他のタイプのアイウェアとして形成されてもよい。
【0015】
本実施の形態のアイウェア11は,多用途通信システムの一部である。アイウェア11は,プロセッサ・通信・制御・記憶ユニット(図2.2に示したPCCSU)と連携して作業して,無線網を介して無線コールを送受することができる。さらに,アイウェア11は無線網からデータを受け取り,マイクロ光学ディスプレイ上にそのデータを表示してもよい。使用に際しては,アイウェア11の使用者は,アイウェア11に設けられたマイクロフォン20とスピーカ24とを使用して,無線網を介して他者と会話することになる。アイウェアに配置されたアンテナ23は,PCCSUと通信するのに用いられてよく,あるいは,無線網を介して直接的に通信するのに用いられてよい。
【図2.2】
【0016】
図面から明らかなように,図2.0のアイウェア11は,マイクロフォン20と,マイクロ光学ディスプレイ12と,太陽電池22と,アンテナ23と,スピーカ24と,トランシーバ25と,マイクロプロセッサ26と,レンズ29と,ブリッジ28と,バッテリ27とを有している。アイウェア11のテンプル15に配置されたこれらの太陽電池22は,バッテリ27を充電するのに利用されてよく,また,アイウェア11の構成部分に直接的に給電するのに利用されてもよい。マイクロプロセッサ26はアイウェア11のイヤーレストの一方に設けられている。マイクロプロセッサ26は構成部分のそれぞれと通信してよく,トランシーバ25の情報を受け取り,次いで情報をマイクロ光学ディスプレイ12上に表示するのに利用されてよい。トランシーバ25は,アイウェア11のための機能を送受するのに用いられてよい。トランシーバ25は,PCCSUと通信するのに利用されてよく,また,無線網を介して直接通信するのに利用されてもよい。この実施例のレンズ29は,開口またはノッチを有しており,この開口またはノッチは,ディスプレイ12がレンズを貫通して,外面と内面とを超えて延びるのを可能にする。」

【図2.0】

オ 「【0018】
図2.2は,前述のプロセッサ・通信・制御・記憶ユニット(PCCSU)の正面斜視図である。PCCSU220は,無線網と,アイウェアに配置されたトランシーバとの間の通信リンクとして作用してよい。PCCSU220は,上述のアイウェアを利用せずに,無線電話として作用してもよい。PCCSU220は,ベルト用ポケットベルのサイズであってよく,ユーザによって着用されるかまたは何らかの形で支持されてよい。
【0019】
図2.2は,PCCSU220がマイクロフォン221と,高速赤外データリンク223と,スピーカ232と,ディスプレイ231と,3D積上げチッププロセッサ230と,RFストリップアンテナ229と,RF電子トランシーバ装置227と,燃料電池パック226と,不揮発性メモリ225と,再充電入力プラグ224と,オンオフ電源スイッチ223と,ディスプレイ機能キー222とを有してよいことを示している。
【0020】
PCCSUのこれらの構成部分に関して,PCCSU220の高速赤外データリンク223は,外部データ転送ユニットに対するデータの送受に用いられてよい。スピーカ232は,可聴アラーム,あらゆるタイプの音声,談話,オーディオ音楽,これらの組み合わせ,および他のタイプの情報をユーザに提供するために用いられてよい。液晶ディスプレイであってよいディスプレイ231は,PCCSU220の状態ならびに他の情報をユーザに提供するのに用いられてよい。PCCSU220内部に含まれる3D積上げチッププロセッサ230は,PCCSU220の機能を処理するのに使用されてよい。3D積上げマイクロプロセッサは,PCCSU220の内部管理機能を制御してもよい。これらの機能は以下のものを含むことになる:ディスプレイ,イヤフォンおよびマイクロフォンへの電力の配分;メモリ内のデータ記憶;および,オーディオ,ビデオ,電子デジタルおよび無線周波数の各フォーマット相互間のデータの伝送および変換。RFストリップアンテナ229は,アイウェアと通信し,無線網を介して通信するのに用いられてよい。VRA調整装置228は,音声とバックグラウンド音とを別個に調整することにより,ユーザの聞き取り効果を向上させるのに用いられる。燃料電池パック226は,PCCSU229に給電するのに用いられてよい。不揮発性メモリ225は,所要の実行ソフトウェア,ならびに,PCCSU229内にダウンロードされた他のあらゆる情報を包含するのに使用されてよい。再充電入力プラグ224は,直流電流または交流電流で燃料電池を再充電し,バッテリを使用せずにPCCSU229を操作するのに必要な電力を供給するために利用されてよい。燃料電池パック226はPCCSU229内に貯えられた箱状ユニットであってよく,または,これとは異なりPCCSU229の表面に被着された薄膜バッテリであってもよい。電池パック226または他の給電手段は別個のユニットであってよく,これらはユーザのシャツカラー,ベルトの裏,または身体の別の箇所に装着可能であり,直接的な導電リンクによってPCCSU229およびアイウェアに接続される。ディスプレイ機能キー222は,ディスプレイ231上およびアイウェアのマイクロ光学ディスプレイ上に表示された情報を制御するのに利用されてよい。これらのディスプレイ機能キーは次のものを含むことができる:株式相場キー;スポーツスコアキー;電話帳キー;時刻,気温または方位キー;および位置または全地球位置キー。最後に,マイクロフォン221は,ユーザからの触覚的な入力を必要とせずに,ユーザからの音声による活性化コマンドを受け取るのに用いられてよい。
【0021】
PCCSUを別個のユニットとして図示したが,他の構成および実施例が考えられる。このような他の実施例は,PCCSU機能をアイウェア内に電気的に結線するか,一体化することを含む。このような他の実施例は,PCCSUのメモリ記憶ユニットを排除し,大量の揮発性記憶なしにPCCSUを操作することを含んでもよい。メモリ記憶ユニットを除去することにより,PCCSUのサイズおよび所要の消費電力を大幅に減じることができる。」

カ 上記ア~オから,引用例2には,以下の事項が記載されているものと認められる(以下,「引用例2記載技術」という。)。なお,引用例2では,表示手段について,具体的に「マイクロ光学ディスプレイ」と表記する箇所と,単に「ディスプレイ」と表記する箇所が混在しているが,混乱を避けるために,以下,単に「ディスプレイ」と表記した。また,段落【0016】の「マイクロプロセッサ26は・・・(中略)・・・情報をマイクロ光学ディスプレイ12上に表示するのに利用されてよい。」とは,要するに,マイクロプロセッサによってディスプレイ上に情報を表示することを意味していることは明らかであるから,そのように認定した。

「マイクロフォンと,ディスプレイと,スピーカと,トランシーバと,マイクロプロセッサと,バッテリを備えたアイウェアであって(【0016】),
前記アイウェアは,プロセッサ・通信・制御・記憶ユニット(以下「PCCSU」という。)と連携して作業するものであって(【0015】),
ユーザはディスプレイを覗くことで前記ディスプレイに表示された情報を見ることができるものであり(【0011】),
前記情報は,株式相場,eメール,運転案内及び他のタイプのデータを含む種々のデータを有し(【0012】),
前記マイクロプロセッサによって,前記ディスプレイ上に前記情報を表示するものであり(【0016】),
前記PCCSUは,アイウェアのディスプレイ上に表示された情報を制御するのに利用されるディスプレイ機能キーを有する(【0020】),
アイウェア」

(3) 対比及び判断

ア 対比

(ア) 引用発明の「つる」は,本願発明の「つる」に相当する。

また,本願発明は,「つるの耳の後方にバッテリーと配線を配置して・・・(中略)・・・前方にディスプレイ又はカメラを設け」と特定されており,ここで,「ディスプレイ又はカメラ」が設けられるのは,人の目が存在する方向であることは明らかであるから,本願発明における「前方」とは,「つる」が「耳」と接触する部分からみて人の目が存在する方向であることは明らかである。一方引用例1には,「レンズ付きメガネフレーム2のつる3の後端4を幅広しゃもじ状とし第2図に示すように後頭部の頸部を包むようにした」との記載があるから(1頁左欄9~12行目),引用発明における「後」の方向(後方)は,「つる」が耳と接触する部分からみて,人の目が存在する方向とは逆方向であることは明らかである。すなわち,引用発明における「前方」は,本願発明の「前方」と同様,つるが耳と接触する部分からみて人の目が存在する方向を指しており,また逆に,引用発明における「後」の方向(後方)は,本願発明の「後方」と同様,つるが耳と接触する部分からみて人の目が存在する方向とは逆方向を指しているものと認められる。

そうすると,引用発明における「つるの後端」は,本願発明の「つるの耳の後方」に相当する位置にあることは明らかであるし,また,引用発明の「つるの後端」,すなわち「しゃもじ状部」に入れられる「重錘」は,「つるの耳の後方」に配置されるものであって,「支点である耳より後の錘」に相当することもまた,明らかである。

さらに,当該「重錘」の重さは,本願発明の「W1」に相当するものとなることもまた,明らかである。

(イ) 本願発明は,「前方にディスプレイ又はカメラを設けて,その重さをW2」とするものであるところ,引用発明は(「ディスプレイ又はカメラ」はないが)「レンズ」を有しており,「レンズ」が重量を持つことは明らかであるから,一定の重さを有する部材が,支点である耳より前方に存在するという点で,本願発明と一致している。

(なお,引用発明における重さ「W」は,「重心」における重さとされているから,重錘の実際の重量ではなく,重心位置における仮想の重量であると認められるので,本願発明の「W2」には直接的には対応しない。)

(ウ) 引用発明では,「つるの後端」に位置する「しゃもじ状部」に入れられた「重錘」によって「つると耳の接点から前方の重心までの距離L,重心における重さWとするときのメガネのモーメントWLを支える」のであるから,引用発明の「重錘」は,本願発明の「支点の耳より後の錘をW1として天秤機能をさせ」との要件を満たす。また,引用発明の「重錘」は,本願発明の「ダイナミックバランサー」にも相当することとなる。

(エ) 本願発明の「顔が止まっても動いてもW1とW2のバランスをディスプレイ・カメラ部とバッテリー部とによりとり」との構成要件について,段落【0009】には,「バッテリー11の重さや電子回路12の重さW1とディスプレイ16やカメラ18との重量W2のバランスをとり,天秤の原理で顔が動いてもダイナミックバランス即ち動的にも水平になる」と記載されている。すなわち,天秤の原理で,静的な釣り合いが取れていることによって生じる作用又は効果を,請求項に記載したものと認められる。

しかし,前記(ウ)で検討したように,引用発明も本願発明と同様に,天秤機能をさせる(天秤の原理で静的な釣り合いを取る)ものである。

してみれば,引用発明の「レンズ」の重さを「W2」であるとすれば,引用発明は,本願発明の「顔が止まっても動いてもW1とW2のバランスを」とるとの点で,本願発明と一致しているものといえる。

(オ) 本願発明の「鼻などの顔部に荷重がかからない」との構成要件について検討するに,段落【0004】には,「バッテリー等を耳の後に配置して,耳の支点を中心にダイナミックバランスがとれて鼻部に荷重がかからないようにし,表示される情報を安定性よく見ることができるようにしたものである。」と記載され,段落【0009】には,「バッテリー11の重さや電子回路12の重さW1とディスプレイ16やカメラ18との重量W2のバランスをとり,天秤の原理で顔が動いてもダイナミックバランス即ち動的にも水平になる。バッテリー11や電子回路12の重量をW1,ビューアー16やカメラ18,タッチセンサ部15の重量をW2とすると,W1=W2となるようにすれば,鼻部14は無荷重状態になる。14は「鼻あて」である。」と記載されている。

このような記載からみて,「鼻などの顔部に荷重がかからない」とは,天秤の原理で,静的な釣り合いが取れていることによって生じる作用又は効果であると認められる。

しかし,上記(ウ)で検討したように,引用発明も本願発明と同様に,天秤機能をさせる(天秤の原理で静的な釣り合いを取る)ものであるから,引用発明は,本願発明の「鼻などの顔部に荷重がかからない」との要件を満たす。

(カ) 引用発明のメガネは,耳にかけるものであることは明らかであるから,引用発明と本願発明とは,「耳かけ部品」である点で,一致している。

イ 一致点

本願発明と引用発明は,以下の構成において一致する。

「 支点である耳より後の錘をW1として天秤機能をさせ,ダイナミックバランサーとし,前方の重さをW2として顔が止まっても動いてもW1とW2のバランスをとり,鼻などの顔部に荷重がかからない耳かけ部品。」

ウ 相違点

本願発明と引用発明は,以下の点において相違する。

相違点:本願発明は,「つるの耳の後方にバッテリーと配線を配置」し,「前方にディスプレイ又はカメラを設け」た「耳かけダイナミックバランスドスマホ,PC」であるのに対し,引用発明は,つるの耳の後方にバッテリーと配線を配置しておらず,前方にディスプレイ又はカメラが設けられていない,「メガネ」である点。

エ 判断

判断に先立って,本願発明の「スマホ,PC」との用語の意味について検討するに,「スマホ」とはスマートホンの略であって携帯電話の一種であることは当合議体において顕著な事実であり,また,「PC」とは「パソコン」(段落【0001】),すなわち「パーソナルコンピュータ」のことであるから,いずれも,マイクロプロセッサ,メモリ,入出力装置等を有する点で共通するものの,一応別種の装置である。また,本願明細書の段落【0003】,【0008】及び【0016】では,「スマホやPC」という並列表現が用いられていることも併せ鑑みるに,本願発明の「スマホ,PC」とは,「スマホ又はPC」を示しているものと認められる。

引用例2記載技術は,前記(2)カで認定したとおり,「マイクロフォンと,ディスプレイと,スピーカと,トランシーバと,マイクロプロセッサと,バッテリを備えたアイウェアであって,アイウェアは,PCCSUと連携して作業するものであって,ユーザは前記ディスプレイを覗き,前記ディスプレイに表示された情報を見ることができるものであり,前記情報は,株式相場,eメール,運転案内及び他のタイプのデータを含む種々のデータを有し,前記マイクロプロセッサによって,前記ディスプレイ上に前記情報を表示するものであり,前記PCCSUは,アイウェアの前記ディスプレイ上に表示された前記情報を制御するのに利用されるディスプレイ機能キーを有する,アイウェア」である。そして,引用例2記載技術のアイウェアのバッテリ(本願発明の「バッテリー」に相当)は,段落【0016】及び図2.0の記載からみて,つるの耳の後方部分に存在しているものと認められる。

ところで,本願発明の解決しようとする課題は「従来は,手持ちの携帯端末に情報を表示して見ることができるようにしたものであった。だから,携帯電話の情報表示部を見る場合,手がふさがっている欠点があった。」(段落【0002】)というものであり,「本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって,スマホやPCを手で持たずに操作でき」るスマホ,PCを提供することを,本願発明の目的の一つとしている。そして,具体的には,「15はつる1側面に設けられた動作タッチパネルである。電子回路12は,ディスプレイ16,カメラ18動作や演算,通信の回路や表示データを記憶するメモリやディスプレイ16を駆動するドライバ等から構成されている。この電子回路12は,バッテリー又は電源キャパシタ11からパワーを供給される。表示する情報としては,スマホやPCのディスプレイと同じようなものが表示される。」(段落【0005】)といった手段で,上記のような課題を解決している。

一方で,引用例2記載技術は,上記のように,PCCSUに設けられたディスプレイ機能キーによって,株式相場,eメール,運転案内等のデータからなる情報を制御し,マイクロプロセッサによって,前記ディスプレイ上に前記情報を表示するものである。そして,「株式相場,eメール,運転案内」等のデータからなる,ディスプレイに表示される情報は,本願発明にいう「スマホやPCのディスプレイと同じようなもの」であるといえる。してみれば,引用例2記載技術は,本願発明と同様に,スマホやPCのディスプレイと同じようなもの(情報)を,マイクロプロセッサによってディスプレイ上に表示することで,スマホやPCを手で持たずに操作できるというものであるということができるから,引用例2記載技術における「ディスプレイ機能キー」を有する「PCCSU」,「マイクロプロセッサ」及び「ディスプレイ」は,全体として,本願発明の「PC」に相当するものといえる。なお,引用例2記載技術は,「ディスプレイ機能キー」を有する「PCCSU」が「アイウェア」とは別体に設けられているが,引用例2の段落【0021】 には,「このような他の実施例は,PCCSU機能をアイウェア内に電気的に結線するか,一体化することを含む」と記載されており,「PCCSU」を,「ディスプレイ機能キー」とともに「アイウェア」内に一体化することは,当業者が適宜行い得た事項である。

さらに,バッテリからディスプレイ等へ電気供給されることは明らかであるから,引用例2記載技術が,本願発明の「配線」に相当する構成を具備することもまた,明らかである。なお仮に,当該電気供給が「配線」を有さない,無線接続によるものだとしても,これを有線接続とすること,すなわち「配線」を設けることは,当業者が適宜行い得た事項である。

引用例1には,1頁右欄6~7行に「レンズ1に液晶層を設けたときその電源となる電池を埋込んでもよい」と記載されるように,メガネにディスプレイやバッテリを付加しても良いことが示唆されている。してみれば,必要に応じて,引用発明に引用例2に記載されるようなディスプレイ,バッテリ及び配線等を利用し,PC機能を付加することは,当業者が適宜なし得たことである。

そして,引用発明にディスプレイを設ける場合には,人の目が存在する箇所,すなわちつるの耳の前方に設けられることは明らかである。また,引用例2記載技術の「バッテリ」はつるの耳の後方に位置することは既に検討したとおりであり,前記「バッテリ」に接続される配線も「つるの耳の後方」に存在することは明らかであるから,引用発明に,引用例2記載技術のバッテリや配線を設ける場合には,「つるの耳の後方」に設けることも明らかである。さらにいえば,引用例1の1頁右欄5~7行目には「しゃもじ状部4に重錘を入れて前記モーメントWLを支えたり,レンズ1に液晶層を設けたときその電源となる電池を埋込んでもよい」との記載があるのだから,電源となる「バッテリ」を設ける場合には,「つるの耳の後方」にある「しゃもじ状部」に設けるのが最も自然であるともいえる。

してみれば,引用発明に基づいて,つるの耳の後方にバッテリーと配線を配置し,前方にディスプレイを設けることとして,相違点1に係る構成を具備する本願発明のような構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。

なお仮に,本願発明の「スマホ,PC」との記載を,「スマホ及びPC」と解するとしても,依然として,本願発明は進歩性を有しない。すなわち,引用例2のアイウェアもマイクロフォン,スピーカ,トランシーバを有しているから,「スマホ」のような通話機能を有することは明らかである。また,メガネに通話機能を持たせること自体,従来から広く知られた事項にすぎない(例えば特開2001-76168号公報の段落【0032】,登録実用新案第3122306号公報の段落【0021】及び図16,特開2007-53585号公報の段落【0010】等を参照されたい)。

したがって,引用発明にPC機能を付加するとともに通話機能をも付加して,「スマホ,PC」とすることは,当業者が容易になし得たことである。

オ 効果について

本願発明の効果は,引用発明及び周知技術から期待される効果の範囲内にとどまる。なお,静的釣り合いが取られると,鼻への荷重がなくなるとの効果は,引用例1にも記載されている他,国際公開第2012/020527号(当審拒絶理由における引用例2)の段落[0031],[0032]や特開平10-73789号公報の段落【0016】~【0018】にも記載されるとおり,当業者にとってよく知られていた効果にすぎない。

カ 請求人の主張

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請求人は,平成28年4月7日付け意見書の(3)において,「引用例1には,耳より後方でつる3をしゃもじ状後端4で支持して鼻を圧しないようにしたメガネが記載されています。しかしながら,この発明は耳を支点としてその前方のつると後方の後端部のバランスをとって,鼻への荷重を0にするものではありません。」と主張している。しかし,前記3(1)イで検討したように,引用発明は「しゃもじ状部に重錘を入れることで,つると耳の接点から前方の重心までの距離L,重心における重さWとするときのメガネのモーメントWLを支える」のであるから,耳を支点としてその前方のつると後方の後端部のバランスが取られ,鼻への荷重がほぼ0となっていることは明らかである。

したがって,請求人の主張は採用できない。

第3 まとめ

以上のとおりであるから,他の理由について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

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2015-002721

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