特許拒絶査定不服審判
2014-010285
タバコベースのニコチンエーロゾル発生システム
- 審判番号
- 2014-010285
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-500827外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2014年06月03日
- 審決日
- 2015年12月14日
- 公報発行日
- 2018年05月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .121-WZ (A61M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-500827号「タバコベースのニコチンエーロゾル発生システム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月23日国際公開、WO2010/107613、平成24年 9月10日国内公表、特表2012-520736号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成22年3月9日(パリ条約による優先権主張 2009年3月17日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成26年1月28日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、平成26年6月3日付けで拒絶査定不服審判が請求され、その後、平成27年5月22日付けで当審から拒絶の理由が通知され、同年10月21日に意見書とともに手続補正書が提出され、特許請求の範囲について補正がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし16に係る発明は、上記平成27年10月21日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項1に係る発明は以下のとおりである。(以下請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「【請求項1】
被験者にニコチンを送達するための装置であって、
ハウジング、
を含み、
前記ハウジングは、
a)互いに連通した入口及び出口であって、ガス状担体が、該入口を通って前記ハウジングに入り、該ハウジングを通り、該出口を通って該ハウジングから出ることができるようになっており、装置が入口から出口までを含む入口及び出口と、
b)前記入口と連通し、ニコチンを含む粒子を形成するための化合物の供給源又は天然物ニコチン源のいずれかを含む第1の内部区域と、
c)前記第1の内部区域と連通し、段階b)に列挙した他方の供給源を含む第2の内部区域と、
d)任意的に、前記第2の内部区域及び前記出口と連通する第3の内部区域と、
を含み、
前記天然物ニコチン源は、加熱されており、且つ、タバコと、アルカリ物質と、水とを含み、
前記アルカリ物質は、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム及び炭酸カリウムから構成された群から選択される、
ことを特徴とする装置。」
第3 引用刊行物記載の発明
これに対して、当審での平成27年5月22日付けの拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、国際公開第2008/121610号(以下「刊行物1」という。)、特開平5-184675号公報(以下「刊行物2」という。)、及び特開平2-190178号公報(以下「刊行物3」という。)には、それぞれ以下の発明、あるいは技術事項が記載されていると認められる。
1 刊行物1
ア 刊行物1に記載された事項
刊行物1には、「DEVICE AND METHOD FOR DELIVERY OF A MEDICAMENT」(薬剤を送給するための装置および方法)に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、括弧内の日本語は、刊行物1の日本語公表公報(特表2010-532672号公報)における翻訳文に準じた仮訳であり、その下線部は当審で付したものである。
(ア)「34. A device for delivering a medicament to a subject, the device comprising a housing, the housing comprising:
an inlet and an outlet in communication with each other and adapted so that a gaseous carrier may pass into the housing through the inlet, through the housing and out of the housing through the outlet, the device comprising in series from inlet to outlet:
a first internal area in communication with the inlet, the first internal areas comprising a delivery enhancing compound source, a second internal area in communication with the first internal area, the second internal area comprising a nicotine or other medicament source, and
optionally, a third internal area in communication with the second internal area.」(claim 34)
(【請求項34】
被検者に薬剤を送給するための装置であって、当該装置がハウジングを含み、該ハウジングが:
相互に連通した状態にあるインレットおよびアウトレットであって、ガス状担体が前記インレットを通じて当該ハウジング内に入り、該ハウジングを通って、前記アウトレットを通じて該ハウジングから出ることができるように成されており、当該装置がインレットからアウトレットまでを直列に含んでいる、インレットおよびアウトレット;
上記インレットと連通した状態にある第1内部領域であって、該第1内部領域が送給増強化合物のソースを含んでいる、第1内部領域;
上記第1内部領域と連通した状態にある第2内部領域であって、該第2内部領域がニコチンまたは他の薬剤のソースを含んでいる、第2内部領域;および
場合によって、前記第2内部領域と連通した状態にある第3内部領域;
を含んでいる、薬剤送給用装置。)
(イ)「[0129] The methods described herein relate to a surprising discovery regarding the dose of nicotine obtained from nicotine delivery devices. The inventors have unexpectedly identified methods for increasing the dose of nicotine delivered to a subject by inhalation. The importance of this discovery lies in an improved ability to substitute for the nicotine delivery subjects experience while smoking cigarettes and similar tobacco products. With improved nicotine delivery profiles, subjects applying the methods described herein will be provided with superior nicotine replacement therapy during attempts at smoking cessation, harm reduction and/or substitution. With the continued global problem of smoking related health issues, the methods described herein address a critical need in medical efforts to assist smokers in quitting.」
(【0129】
本明細書中で記載されている方法は、ニコチン送給装置から得られるニコチンの用量についての驚くべき発見に関係している。本発明者らは、思いがけなく、吸入によって被検者へ送給されるニコチンの用量を増大させるための方法を特定した。この発見の重要性は、シガレットおよび同様なタバコ製品を喫煙している間に被検者が経験するニコチンの送給に取って代わる能力が改善されることにある。ニコチン送給プロフィールが改善されているため、本明細書中で記載されている方法を適用する被検者には、喫煙の中止、危害の低減および/または代用を試みる際に、優れたニコチン代用療法がもたらされよう。喫煙にかかわる健康上の問題が地球規模での継続的問題として存在しているため、本明細書中で記載されている方法は、喫煙者が禁煙するのを支援するための医学的取り組みにおける非常に重要なニーズに対応する。)
(ウ)「[0137] Alternatively, the delivery enhancing compound forms a particulate aerosol, the particles of which may, for example, adsorb or absorb nicotine base. In particular embodiments, the particulate aerosol includes ammonium chloride salt particles. In embodiments comprising nicotine particle formation or nicotine adsorption/absorption onto particles the particles formed are preferably less than 6 microns, more preferably less than 5 microns or less than 1 micron in size.」
(【0137】
代替的に、本送給増強化合物は微粒子状のエアロゾルを形成し、それらの粒子が例えばニコチン塩基を吸着または吸収してもよい。特定の実施形態においては、その微粒子状エアロゾルは塩化アンモニウム塩粒子を含む。ニコチン粒子の形成または粒子上へのニコチンの吸着/吸収を含む実施形態においては、形成される粒子は、サイズが好適には6ミクロン未満であり、より好適には5ミクロン未満または1ミクロン未満である。)
(エ)「[0139] Embodiments of a nicotine source use a compound comprising any chemical capable of providing a volatile form of nicotine such as nicotine base or nicotine salts (e.g. nicotine-HCl, -ditartrate). Although more than one form of nicotine can be used, free base nicotine is preferred. 」
(【0139】
ニコチンソースの実施形態は、揮発性形態のニコチン、例えばニコチン塩基またはニコチン塩(例えばニコチン-HCl、-二酒石酸塩)などをもたらすことができる何らかの化学物質を含んでいる化合物を使用する。1つより多くの形態のニコチンを使用することができるが、遊離塩基ニコチンが好適である。)
(オ)「[0222] Directing attention to Figure 1, a device for the formation and delivery of a nicotine aerosol to a user according to an embodiment of the present invention is shown. Specifically, nicotine inhaler 10 having the size, shape, and appearance of a cigarette is shown. Nicotine inhaler 10 consists of housing 12, which has an elongated cylindrical shape and is hollow. To allow for a gaseous flow through inhaler 10, housing 12 contains gaseous inlet 14 and gaseous outlet 16 on opposing ends.
[0223] The portion of housing 12 between gaseous inlet 14 and gaseous outlet 16 is divided into three compartments capable of holding a first, second, and/or third substance. The first, second, or third substance can comprise a vapor forming medicament, such as nicotine.
[0224] As illustrated in Figure 2, nicotine inhaler 10 includes first compartment 18, second compartment 20, and third compartment 22. Nicotine, preferably in the free base form, may be placed in any of the three compartments. For example, nicotine can be placed within second compartment 20. A suitable delivery enhancing compound, such as an acid, is placed within first compartment 18. Any suitable acid can be used. For example, pyruvic acid can be placed within first compartment 18.」
(【0222】
図1に注意を向けると、本発明の1つの実施形態によりニコチンエアロゾルを形成し、使用者に送給するための装置が示されている。具体的には、シガレットのサイズ、形状および外観を有するニコチン吸入器10が示されている。ニコチン吸入器10は、細長い円筒形を有し、且つ、中空のハウジング12から成っている。吸入器10を通じてガスが流れるのを可能にするため、ハウジング12は、対向する端部に、ガスインレット14およびガスアウトレット16を含んでいる。
【0223】
ガスインレット14とガスアウトレット16との間のハウジング12の中間部分は、第1、第2および/または第3の物質を保持することができる3つのコンパートメントに分かれている。当該第1、第2または第3の物質は、薬剤、例えばニコチンなどを形成する蒸気を含むことができる。
【0224】
図2に描かれているように、ニコチン吸入器10は、第1コンパートメント18、第2コンパートメント20、および第3コンパートメント22を含んでいる。ニコチン、好適には遊離塩基の形態のニコチンが、これら3つのコンパートメントのうちのいずれかに置かれてよい。例えば、ニコチンを第2コンパートメント20内に配置することができる。ある適切な送給増強化合物、例えば酸などが、第1コンパートメント18内に配置される。あらゆる適切な酸を使用することができる。例えば、ピルビン酸を第1コンパートメント18内に配置することができる。)
(カ)「[0231] In operation, a user puffs on gaseous outlet 16 of nicotine inhaler 10, as shown in Figure 3. The partial vacuum created by the puffing action draws a gaseous stream into housing 12 through gaseous inlet 14. The gaseous stream enters first compartment 18 and captures a vapor of the acid by passing over the pyruvic acid source element held in first compartment 18. The gaseous stream that exits first compartment 18 and subsequently enters second compartment 20 is an acid-containing gaseous stream. The acid-containing gaseous stream generates a stream of nicotine-containing particles by passing over the nicotine held by the nicotine source element in second compartment 20. The stream of nicotine-containing particles passes through third compartment 22 and exits through gaseous outlet 16 into the mouth of the user.」
(【0231】
使用する際、図3に示されているように、使用者はニコチン吸入器10のガスアウトレット16をふかす。ふかす動作によって作りだされる部分的な真空が、ガスインレット14を通じてガスの流れをハウジング12内に引き込む。このガスの流れは、第1コンパートメント18に入り、第1コンパートメント18内に保持されているピルビン酸ソースエレメント上を通ることにより、その酸の蒸気を捕獲する。第1コンパートメント18から出た後に第2コンパートメント20に入るガスの流れは酸含有ガス流である。この酸含有ガス流は、第2コンパートメント20内のニコチンソースエレメントによって保持されているニコチン上を通ることにより、ニコチン含有粒子の流れを発生させる。このニコチン含有粒子の流れは、第3コンパートメント22を通過し、ガスアウトレット16から出て、使用者の口内に入る。)
(キ)「[0256] INDUSTRIAL APPLICABILITY
[0257] The methods and devices herein are useful for the therapeutic delivery of nicotine for smoking cessation, harm reduction and/or substitution. In addition, the devices and methods herein are useful as an alternative, general nicotine delivery system in place of tobacco based products. The methods and devices herein are further useful for the delivery of other medicaments as described herein.」
(【0256】
[産業上の利用可能性]
【0257】
ここで開示されている方法および装置は、喫煙の中止、危害の低減および/または代用を目的としたニコチンの治療的な送給に有用である。これに加え、ここで開示されている装置および方法は、タバコをベースとした製品の代わりの代替的な一般ニコチン送給システムとしても有用である。更に、ここで開示されている方法および装置は、本明細書で説明されている如き他の薬剤の送給にも有用である。)
イ 刊行物1発明
(ク)上記記載事項(ア)の「被検者に薬剤を送給するための装置」及び「薬剤送給用装置」について、上記記載事項(イ)及び(オ)ないし(キ)に照らすと、「被検者にニコチンを送給するための装置」であると認められる。
(ケ)上記記載事項(ア)の「第3内部領域」について、上記記載事項(オ)及び(カ)並びに図2及び3の図示内容に照らすと、第2内部領域ないし第2コンパートメント20とともに、アウトレットないしガスアウトレット16と連通した状態にあるものと認められる。
(コ)上記記載事項(エ)の「ニコチンソース」は、上記記載事項(カ)の「ニコチンソースエレメント」に相当するものであって、上記記載事項(エ)及び(オ)からみて、「遊離塩基ニコチン」といった「揮発性形態のニコチン」を含むものであると認める。
そこで、上記記載事項(ア)ないし(キ)並びに上記認定事項(ク)ないし(コ)を、技術常識を踏まえ本願発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認める。(以下「刊行物1発明」という。)
「被検者にニコチンを送給するための装置であって、
ハウジング12、
を含み、
該ハウジング12は、
相互に連通した状態にあるインレット14及びアウトレット16であって、ガス状担体が、前記インレット14を通って前記ハウジング12に入り、該ハウジング12を通り、該アウトレット16を通って該ハウジング12から出ることができるようになっており、装置がインレット14からアウトレット16までを含むインレット14及びアウトレット16と、
前記インレット14と連通し、送給増強化合物のソースを含む第1内部領域18と、
前記第1内部領域18と連通し、ニコチンソースを含む第2内部領域20と、
場合によって、前記第2内部領域20及び前記アウトレット16と連通する第3内部領域22と
を含み、
前記ニコチンソースは、揮発性形態のニコチンを含む、装置。」
2 刊行物2
ア 刊行物2に記載された事項
刊行物2には、「電気化学的熱源を備えた喫煙物品」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線部は当審で付したものである。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、シガレット(紙巻タバコ)、及び、葉巻、パイプタバコ等の喫煙物品に関し、特に、タバコ材を加熱してタバコ香味又はタバコ香味付エアゾールを発生させるために比較的低温の熱源を使用する喫煙物品に関する。」
(イ)「【0016】タバコ材は、その香味物質が喫煙中に受ける上記温度で迅速に揮発するように加工又は何らかの処理を施すことができる。・・・本発明の喫煙物品を喫煙するには、喫煙者は、熱源の構成成分間の相互作用を開始させ、それによって熱を発生させる。熱源の構成成分間の相互作用は、タバコ材を加熱するのに十分な熱を供給し、タバコ材からタバコ香味及びその他の香味料を揮発させる。喫煙者が喫煙物品を吸込むと、揮発した成分が喫煙物品を通って喫煙者の口の中へ吸込まれる。」
(ウ)「【0022】
【実施例】図1は、本発明の一実施例によるシガレット9を示す。シガレット9は、細長い円筒形ロッドの形を有する。シガレット9は、例えばシガレット用巻紙のような筒状の外側ラップ13と、該ラップによって包被され、タバコ材ロッド15を形成するタバコ材のロール又は装入物11を有する。・・・タバコ材のロール(以下、単に「タバコ材」とも称する)11内には、熱チャンバー20を配置する。熱チャンバー20は、シガレット9の空気取入れ口領域25の近くに開放端22を有し、タバコ材ロッド15の吸口端33に近接したところに密封端28を有する。」
(エ)「【0023】熱チャンバー20内に、後に詳述する熱源35を挿入する。図示の実施例では、熱源35は、低融点パラフィンワックスの薄い表面コーチングを有する湿気不透過性の、可塑化酢酸セルローストウ又はパラフィンワックスの薄いコーチングで覆われた弾性の連続気泡フォーム材のようなプラグ38によって熱チャンバー20内に保持する。」
(オ)「【0026】図2に示されたシガレット59は、図1のシガレット9と基本的に同様の構成であり、同様な部品は同じ参照番号で示されている。図1のシガレット9との主要な相違は、シガレット59はの熱源60は、熱源の構成成分である金属材62を包む外側ラップ64を有していることである。この熱源60については以下に詳述する。図2は、熱源60を熱チャンバー20内に嵌合させる態様を示す。」
(カ)「【0027】本発明の喫煙物品の熱源は、その構成成分の燃焼の結果としてではなく、その構成成分間の1つ又はそれ以上の電気化学的相互作用の結果として所望の量の熱を所望の速度で発生する。」
(キ)「【0028】本発明の好ましい熱源は、その構成成分の電気化学的相互作用が開始されると迅速に熱を発生する。従って、喫煙者がシガレットの使用を開始すると直ぐに発生する熱が、タバコ材の適正な量の香味成分を揮発させるのに十分な程度にタバコ材を加熱する。・・・このように、熱源の発生熱温度の最高限度を制御するのが望ましいのは、タバコ材自体のもつ香味成分、並びにタバコ材に添加されタバコ材によって担持されている香味成分の熱劣化及び、又は過度の、早期揮発を回避したいからである。」
(ク)「【0049】・・・電解質のための溶媒は、電解質(熱源中に存在する場合)を解離して上記金属材間の電気化学的相互作用を開始させるのに用いられる。好ましい溶媒は、水である。水のpHは、いろいろに選定することができるが、通常は約6未満とする。熱源の構成成分と水との接触は、いろいろな態様で行うことができる。・・・あるいは別法として、図11に示されるように、熱チャンバー20内に熱源60の他の構成成分とは別個に収容した破断自在のカプセル120のような容器内に水を入れておき、水を熱源60の他の成分に接触させたいときカプセル120を破って水を出すようにしてもよい。その場合、カプセル120は、熱チャンバー20の側壁及び端部28と、破断自在の脆弱シール122とによって構成することができる。」
(ケ)「【0057】本発明の喫煙物品又はシガレットには、ある形態のタバコ材を組入れる。いろいろな形態のタバコ材を用いることができ、又、一種類以上の形態のタバコ材を用いることができる。タバコの種類も、噴霧乾燥させた、バーレー種、マリーランド種、オリエンタル種タバコ、稀種タバコ、特殊タバコ又は知れらのブレンド等、いろいろな種類のものを使用することができる。例えば、刻みタバコ材補充料(例えば、幅約0.635~約1.69mm、長さ約6.35~約76.2mmのタバコ材ストランド又は裁刻片から成る補充料)等の任意の形態のタバコ材を使用することができるが、他の形態のタバコ材を用いることもできる。刻みタバコ材補充料は、タバコ薄片、膨嵩タバコ材、カットロールド又はカットパフドタバコ葉柄のような加工タバコ葉柄、又は再構成タバコ材の形で用いることができる。」
(コ)「【0058】タバコ材抽出物を用いる場合は、通常、タバコ材抽出物をタバコ材(例えば、再構成タバコ材又はタバコ薄片)のような基材に担持させる。・・・再構成タバコ材には、炭酸カルシウム、炭素及びアルミナ等の充填材を含めることができる。炭酸水素ナトリウム又は炭酸カリウムで処理されたタバコ材のように、熱を加えられると、容易にその香味成分を放出する加工タバコ材は、基材として特に好ましい。」
(サ)「【0059】揮発性タバコ香味を放出するのを助成するために、タバコ材抽出物及び香味剤をアルカリ性の多孔質材上に適用することが好ましい。」
(シ)「【0063】本発明において特に有用なタバコ煙香味剤は、天然タバコ、例えばバーレー種タバコ、熱風乾燥タバコ、トルコ種タバコ、ラタキア種タバコ、マリーランド種タバコ又はそれらのブレンドを「トーストする」ことによって得られる。」
(ス)「【請求項41】 前記タバコ材は、そのタバコ材中のニコチン及び香味の揮発温度を低下させるように処理されていることを特徴とする請求項1に記載のシガレット。」(【公報種別】特許法第17条の2の規定による補正の掲載、【発行日】平成13年4月24日)
イ 刊行物2事項
上記記載事項(ア)ないし(ス)を、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえて整理すると、刊行物2には以下の事項が記載されていると認める。(以下「刊行物2事項」という。)
「タバコ材と前記タバコ材を加熱する熱源を有するシガレットにおいて、タバコの種類として天然タバコを使用し、前記タバコ材中のニコチンの揮発ないし放出を容易にするために、炭酸水素ナトリウム又は炭酸カリウムで処理されたタバコ材を用いるとともに、水を前記熱源と接触させるように構成したこと。」
3 刊行物3
ア 刊行物3に記載された事項
刊行物3には、「無煙たばこ」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線部は当審で付したものである。
(ア)「〔産業上の利用分野〕
本発明は煙を生じることなく、たばこを賞味できる無煙たばこに関する。」(第1ページ右欄第7~9行)
(イ)「本発明ではたばこを賞味するための手段として、エアロゾル吸入ではなく、たばこ乾留香料を気化させて吸入する方法を採用した。また、たばこ成分の気化を促進し、また現在のシガレットと同様の形態で賞味するための形態を工夫した。
即ち、本発明による無煙たばこは、・・・前記たばこ香料溶液はたばこ乾留香料を含有し、且つpH7.2~pH8.6に調節されていることを特徴とするものである。」(第2ページ左上欄第7行~右上欄第7行)
(ウ)「本発明に用いるたばこ乾留香料は、次のようにして製造される。即ち、たばこ葉を粉砕機で粉砕して乾留釜に入れ、空気の通気下で加熱して乾留を行なう。粗タールの流出が終了したら加熱を止め、流出液中に含まれる水分を除去して乾固することにより、目的の乾留香料が得られる。このたばこ乾留香料の含有量は、溶媒等を含まない正味の量で20~50mg/本が好ましい。
本発明におけるたばこ乾留香料溶液は、上記のたばこ乾留香料を適当な溶媒に溶解することにより調製する。この溶媒としては、例えば水、エチルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン等、身体に害のない溶媒を単独または混合して用いることができる。」(第2ページ右上欄第8行~左下欄第1行)
(エ)「本発明において、たばこ乾留香料溶液を上記のpH値に調節するためのpH調節剤としては、例えばキト酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、リン酸、およびこれらの酸のナトリウム塩、カリウム塩、或いは水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等から任意に選択したものを用いることができる。」(第2ページ左下欄第2~8行)
(オ)「〔作 用〕
本発明の無煙たばこは、たばこ乾留香料溶液からたばこ成分を気化させ、これを吸入することで賞味する。従って煙は全く発生せず、副流煙の問題は完全に解決される。・・・
また、本発明におけるたばこ乾留香料溶液はpH7.2~pH8.6に調節されているため、多くはアミン類であるたばこ成分、特にニコチンの気化が促進される。」(第2ページ左下欄第9行~右下欄第1行)
イ 刊行物3事項
上記記載事項(ア)ないし(オ)を、技術常識を踏まえて整理すると、刊行物3には以下の事項が記載されていると認める。(以下「刊行物3事項」という。)
「無煙たばこにおいて、たばこ乾留香料溶液からのニコチンの気化を促進するために、前記たばこ乾留香料溶液をpH7.2~pH8.6に調節するためのpH調整剤として、キト酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、リン酸、及びこれらの酸のナトリウム塩、カリウム塩、或いは水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等から任意に選択したものを用いること。」
第4 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明の「被検者」は、本願発明の「被験者」に相当し、以下、刊行物1発明の「送給」、「相互に連通した」、「インレット14」、「アウトレット16」、「第1内部領域18」、「第2内部領域20」、「場合によって」、「第3内部領域22」は、それぞれ、本願発明の「送達」、「互いに連通した」、「入口」、「出口」、「第1の内部区域」、「第2の内部区域」、「任意的に」、「第3の内部区域」に相当する。
また、刊行物1発明の「送給増強化合物のソース」は、上記第3の1ア記載事項(ウ)及び(カ)に照らせば、微粒子状エアロゾルの粒子がニコチン塩基を吸着ないし吸収することで、ニコチン含有粒子を形成するものであるから、本願発明の「ニコチンを含む粒子を形成するための化合物の供給源」に相当する。
さらに、刊行物1発明の「ニコチンソース」は、「ニコチン源」である限りにおいて、本願発明の「天然物ニコチン源」と共通する。
そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致し、かつ相違する。
1 一致点
「被験者にニコチンを送達するための装置であって、
ハウジング、
を含み、
前記ハウジングは、
a)互いに連通した入口及び出口であって、ガス状担体が、該入口を通って前記ハウジングに入り、該ハウジングを通り、該出口を通って該ハウジングから出ることができるようになっており、装置が入口から出口までを含む入口及び出口と、
b)前記入口と連通し、ニコチンを含む粒子を形成するための化合物の供給源を含む第1の内部区域と、
c)前記第1の内部区域と連通し、ニコチン源を含む第2の内部区域と、
d)任意的に、前記第2の内部区域及び前記出口と連通する第3の内部区域と、
を含む、装置。」
2 相違点
(1)相違点1
本願発明のニコチン源は、天然物ニコチン源であって、加熱されており、且つ、タバコと、アルカリ物質と、水とを含むものであり、前記アルカリ物質は、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム及び炭酸カリウムから構成された群から選択されるのに対して、
刊行物1発明のニコチン源は、ニコチンソースであって、揮発性形態のニコチンを含むものの、加熱され、タバコ、アルカリ物質及び水を含む旨の限定は付されていない点。
(2)相違点2
本願発明は、第1の内部区域がニコチンを含む粒子を形成するための化合物の供給源又は天然物ニコチン源のいずれかを含むとともに、第2の内部区域が「段階b)に列挙した他方の供給源」を含むのに対して、
刊行物1発明は、第1内部領域18が送給増強化合物のソースを含むとともに、第2内部領域20がニコチンソースを含む点。
第5 相違点の検討
1 相違点1について
刊行物1発明は、「被検者にニコチンを送給するための装置」であって、その「ニコチンソース」は「揮発性形態のニコチンを含む」ものであるところ、「シガレットおよび同様なタバコ製品を喫煙している間に被検者が経験するニコチンの送給に取って代わる能力が改善される」(上記第3の1ア記載事項(イ))及び「タバコをベースとした製品の代わりの代替的な一般ニコチン送給システムとしても有用である」(上記第3の1ア記載事項(キ))に照らせば、シガレットないしタバコ製品の「代替品」として用いることが予定されている。
すなわち、刊行物1発明は、喫煙の目的を達成するために喫煙者にニコチンを送達する道具という点において、シガレットないしタバコ製品と共通するということがいえる。そうすると、刊行物1発明において、シガレットないしタバコ製品の技術事項を適用することは、当業者であれば格別の困難性はないというべきである。
そこで、シガレットないしタバコ製品に関する技術事項である、刊行物2事項及び刊行物3事項の刊行物1発明への適用について検討するに、刊行物2事項は、相違点1に係る本願発明の特定事項のうち、「天然物ニコチン源であって、加熱されており、且つ、タバコと、アルカリ物質と、水とを含むものであり、前記アルカリ物質は、炭酸水素ナトリウム又は炭酸カリウムから選択される」点で一致するということができる。
そして、刊行物2事項及び刊行物3事項に接した当業者は、ニコチン源の態様が、天然タバコそのものであるのか、天然タバコに乾留や溶媒への溶解といった処理を施したものであるのかの違いがあるとしても、ニコチン源に含まれる特定のアルカリ物質は、ニコチンの揮発を容易にする作用を有するものであり、かかるアルカリ物質として、特定の酸のナトリウム塩及びカリウム塩、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等から任意に選択するということを理解することができる。
一方、一般的に、シガレットないしタバコ製品の添加剤としての、酸化カルシウム、水酸化カルシウム及び水酸化カリウムは、従来周知の技術事項である(例えば、酸化カルシウムにつき、特表2005-522206号公報の段落【0002】を、水酸化カルシウムにつき、国際公開第2004/091325号の第5ページ第13~16行を参照)。
してみれば、刊行物1発明において、揮発性形態のニコチンを含むニコチンソースに代えて、刊行物2事項の「天然物ニコチン源」を採用することは、上記のとおり、刊行物2事項も「喫煙の目的を達成するために喫煙者にニコチンを送達する道具」という点で刊行物1発明と共通すること、刊行物2事項の「天然物ニコチン源」もニコチンを揮発する点で刊行物1発明のニコチンソースとその作用が共通することを踏まえれば、当業者にとって容易に想到し得たことである。
そして、この場合において、刊行物3事項及び上記従来周知の技術事項を踏まえて、「天然物ニコチン源」に含まれるアルカリ物質として、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム及び炭酸カリウムから構成された群から選択されるようにし、もって、相違点1に係る本願発明の特定事項とすることも、当業者にとって容易である。
2 相違点2について
刊行物1には、「ニコチン吸入器10は、第1コンパートメント18、第2コンパートメント20、および第3コンパートメント22を含んでいる。ニコチン、好適には遊離塩基の形態のニコチンが、これら3つのコンパートメントのうちのいずれかに置かれてよい。」(上記第3の1ア記載事項(オ))と記載されており、刊行物1発明のニコチンソースを第2内部領域20に代えて第1内部領域18に配置することが示唆されている。
したがって、刊行物1発明において、当該示唆に基づき、ニコチンソースを第1内部領域18又は第2内部領域20のいずれかに選択的に配置すること、これに伴い、送給増強化合物のソースも第1内部領域18又は第2内部領域20のうち、ニコチンソースが配置されていない他方の領域に選択的に配置することとし、もって、相違点2に係る本願発明の特定事項とすることは、当業者にとって容易に想到し得たことである。
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、刊行物1発明、刊行物2事項、刊行物3事項及び従来周知の技術事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
3 請求人の主張について
請求人は、平成27年10月21日付け意見書において、刊行物1は、タバコをベースとした製品の代わりの代替的な一般ニコチン送給システムとしても有用であることを教示しており(上記第3の1ア記載事項(キ))、シガレットおよび同様なタバコ製品を喫煙している間に被験者が経験するニコチンの送給にとって代わることを教示している(上記第3の1ア記載事項(イ))ところ、これらの教示は、タバコを含む天然物ニコチン源を使用することとは相反する事項を教示するものであり、刊行物1の「精製ニコチン」ソースを天然物ニコチン源と置き換えることは、当業者が容易に想到し得ることではない旨主張している。(意見書4.(iii)(b)(e)項)
しかしながら、請求人が指摘する刊行物1の記載箇所は、上記1で検討したとおり、刊行物1発明がシガレットないしタバコ製品の「代替品」として用いることが予定されていることを教示するものであっても、刊行物1発明のニコチンソースを天然物ニコチン源と置き換えることとは相反することを教示するようなものでないことは、記載内容に照らせば明らかである。
よって、請求人の主張には理由がない。
4 小括
したがって、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2事項、刊行物3事項及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2事項、刊行物3事項及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2014-010285