特許拒絶査定不服審判
2014-000517
存在追跡および名前空間相互接続の技術
- 審判番号
- 2014-000517
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2009-073366外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2014年01月10日
- 審決日
- 2016年11月22日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アバイア インコーポレーテッド
- 【請求人代理人】岡部 讓
- 【請求人代理人】臼井 伸一
- 分類
- P18 .536-WZ (H04M) / P18 .537-WZ (H04M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2009- 73366「存在追跡および名前空間相互接続の技術」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 8月 6日出願公開,特開2009-177831〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,2003年2月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2002年2月14日 米国,2003年1月23日 米国)を国際出願日とする出願である特願2003-568432号の一部を,平成21年3月25日に新たな特許出願としたものであって,平成25年9月4日付けで補正の却下の決定がされるとともに同日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成26年1月10日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付けで手続補正がされ,その後,当審において平成27年6月15日付けで拒絶理由が通知され,同年9月24日付けで手続補正がされ,平成28年6月14日付けで拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,同年9月16日付けで手続補正がされたものである。
第2 当審において通知した拒絶理由
当審拒絶理由の概要は,以下のとおりである。
理由1 (実施可能要件・省令)この出願は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由2 (サポート要件及び明確性)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。
(理由3は省略。)
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
[理由1について]
(1)先の拒絶理由1に対する平成27年9月24日付け意見書の釈明を見ても,個人の存在-応対可能性システムに係る第1,2の実施例に関して【0031】~【0082】,図1~図7に開示されている内容と,無生物の物体に関する情報を提供する第3の実施例に関する【0019】~【0021】,【0027】,【0083】~【0088】の記載との対応関係及び関連性が不明である。このため,先の拒絶理由1はなんら解消していない。([当審注]:上記「先の拒絶理由1」である平成27年6月15日付け拒絶理由通知の理由1は以下のとおりである。
「(1)本願は,その発明の詳細な説明の記載によれば,【技術分野】は,段落【0001】に記載されたとおり,「一般に,電話網を対象とし,より具体的には,存在認識電話網を対象とする。」ものであり,【背景技術】の記載も,発明の詳細な説明の記載も,全般的に,個人の存在-応対可能性システムについてのものであって,存在-応対可能性を確認し,連絡先の存在情報を提供することについて,図1~図7等を用いて具体的な開示がなされている。そして,当該具体的な開示内容により,存在-応対可能性システムに係る【背景技術】の問題を解決しているものである。一方,特許請求の範囲に記載された発明は,無生物の物体に関する情報を提供する方法に関するものであって,【第3の実施例】に対応するものと認められるところ,第3の実施例に関しては,段落【0019】~【0021】,【0027】,【0083】~【0088】に記載があるものの,その具体的な開示はされていない。そして,無生物の物体に関する情報を提供する方法は,存在-応対可能性システムとは,技術分野が異なり,その解決しようとする課題も,作用効果も異なるものである。このため,図1~図7等に開示された存在-応対可能性システムと無生物の物体に関する情報を提供する方法との関連性は見いだせず,図1~図7等に開示された存在-応対可能性システムによりどのようにして無生物の物体に関する情報を提供する方法を実施するのか不明である。例えば,存在-応対可能性システムにおいては,個人は移動したり様々なイベントが経験することから,存在確認のために,選択された時間間隔で,かつ/または所定のイベントが生じた際に所定のタイプの生の位置および応対可能性の情報を含む報告を第2の存在サーバに提供する1つまたは複数のコンテキスト検知エージェント150,または状態報告エージェントを含むが,無生物の物体にはこのような個人の特性はないから,存在確認のためのこれらの構成との関連性は不明である。また,ポリシー規則,追跡規則は,個人の行動に基づくものであるから,無生物の物体におけるポリシーは意味不明である。この他にも,存在情報データベースにおける図2の情報と,無生物の物体に関する情報を提供する方法との対応が不明である。このため,無生物の物体に関する情報を提供する方法における,図1に開示されたシステムの具体的な動作も把握することができない。
以上のとおり,存在-応対可能性システムについての開示の具体的な開示はされているものの,無生物の物体に関する情報を提供する方法についての具体的な開示はされておらず,存在-応対可能性システムについての開示の具体的な開示が無生物の物体に関する情報を提供する方法にどのように適用されるのかについてもなんら明らかにされていないから,当業者といえども特許請求の範囲に記載された発明を実施することができない。また,特許請求の範囲に記載された発明と【技術分野】及び【背景技術】との関連も不明であるから,発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されているともいえない。
よって,この出願の発明の詳細な説明は,当業者が請求項1ないし9に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められない。」)
(2)発明の詳細な説明には,無生物の物体に関する情報を提供する本願発明において,コンテキスト検知エージェント,追跡エージェント,ポリシー・エージェントが,それぞれどのような動作を行っているのか明らかにされておらず,また,存在情報データベースの中のデータ構造も明らかにされていない。このため,何によりどのような「エージェント報告」がどのようになされるのか,存在サーバは何をエントリとするどのようなレコードを有するのか,どのような「応対可能性インテリジェンス」がどのように形成されるのか,不明である。
また,請求項1,6には,スキャンデバイスにより走査をなしたもの(モバイルデバイス)が「前記存在サーバに存在情報を提供し」とされているが,無生物の物体に関する情報を提供する第3の実施例に関する【0019】~【0021】,【0027】,【0083】~【0088】には,モバイルデバイスが存在サーバに存在情報を提供することについての開示がされていない。そして,個人の存在-応対可能性システムに係る第1,2の実施例に関する【0031】~【0082】,図1~図7に開示に照らせば,存在サーバに送られるエージェント報告に基づいて応対可能性インテリジェンスが形成され,当該応対可能性インテリジェンスがポリシー規則に従ってクエリの要求側に存在情報として提供されるところ,仮に請求項1,6において存在サーバに提供される存在情報がエージェント報告であるとすると,クエリの要求側に提供される存在情報の元となるエージェント報告の内容(エージェントID,エージェントの位置データ等)はエージェントであるモバイルデバイスに関する情報であって,無生物の物体に関する「存在情報」ではない。また,エージェントIDとしてスキャンデバイスによりキャプチャした第1の名前空間内のアドレス/識別子を適用したところで,いかなる応対可能性インテリジェンスが形成されるのか不明である。このため,存在サーバに提供する「存在情報」とはいかなるものか不明であり,モバイルデバイスに提供される「無生物の物体についての情報」との関係も不明である。
また,個人の存在-応対可能性システムでは,各通信デバイスが自己の応対可能性に関する情報を含むエージェント報告(存在情報)を存在サーバに提供し,存在サーバがユーザIDに基づいて複数の名前空間に係るエージェント報告を統合的に管理することにより,他の通信デバイスが目的のユーザに係る通信デバイスの応対可能性(存在情報)を得ることができるものであって,通信デバイスが存在サーバに提供する存在情報と存在サーバから提供される存在情報とは同質なものであって,エージェント報告をする側もクエリを要求する側も通信デバイスである。これに対し,無生物の物体に関する情報を提供する本願発明においては,通信デバイスが存在サーバに提供する存在情報と存在サーバから提供される存在情報とは異質なものであり,存在サーバから提供される存在情報の例として【0087】に挙げられているものは製造業者自身,小売業者自身等が提供する情報であるから,存在情報の元である報告を提供する側とクエリを要求する側とは異種のものである。このため,存在サーバが,複数の名前空間に係る報告をどこからどのように収集し,どのように管理するのかが不明である。すなわち,【0031】~【0082】,図1~図7に開示されている個人の存在-応対可能性システムでは,【0087】に挙げられている「無生物の物体についての情報」は提供することができない。
(中略)
(3)【0083】の「本発明の別の実施形態では,既存の番号スキームと命名スキーム(名前空間)の間でアドレスのマッピングを行って,通信システムにわたる連絡アドレス,またはドキュメント,製品,およびその他の無生物の物体の中に組み込まれた存在のより広い相関を可能にすることによって存在システムを活用する手段が提供される。」の記載は,「既存の番号スキーム」,「命名スキーム(名前空間)」,「組み込まれた存在」とはそれぞれいかなるものか意味不明であるため,上記意見書の釈明を参酌しても記載内容が意味不明である。また,マッピングを行う必要性及びその意義が不明である。
また,同「元の名前空間(E.164またはSIPなどの)からのアドレスを同じ名前空間内または別の名前空間内の1つまたは複数のアドレスに対するURLポインタに変換するためのアルゴリズムが提供され,URLポインタには,存在サーバに対するポインタが含まれることが可能である。」の記載をみても,いかなる理由で元の名前空間からのアドレスを同じ名前空間内または別の名前空間内の1つまたは複数のアドレスに対するURLポインタに変換するのか,その必然性が不明である。また,何故そのようなURLポインタに「存在サーバに対するポインタ」が含まれるのか不明であり,存在サーバの連絡アドレスに変換する必要があるのか不明である。
ここで,【0057】には,DNS等によって選択された存在サーバにアドレス指定されたエージェント報告を生成されることが記載されているが,無生物の物体に関する情報を提供する第3の実施例に関する【0019】~【0021】,【0027】,【0083】~【0088】には,エージェント報告に関する事項は見当たらず,無生物の物体に関する情報を獲得することについて記載されているのみであり,各存在サーバは収集された存在情報を交換することにも鑑みれば,第1の名前空間内の第1のアドレスから同じ名前空間内,または別の名前空間内の第2のアドレスへ変換することの技術的意義が不明である。
上記意見書の「D.理由4について(6)」にて,「しかしながら,引用文献1は,本願発明の最大の特徴である当該無生物の物体への最初のアクセスで取得した第1の名前空間に属する名前(アドレス)をキーにして,第2の名前空間に属する関連する名前(連絡アドレス)を検索することにより,その連絡アドレスを通じてその商品に対する別の情報を取得すること,更に,その検索は存在サーバへのアクセスにより行われ,そのアクセスの際に,該存在サーバから上記連絡アドレスを提供する第2の名前空間の情報を取得するとともに,該存在サーバもその際に当該無生物の物体に関する情報を取得することを記載していません。」と主張されているが,本願発明の最大の特徴であるとされる上記事項は,個人の存在-応対可能性システムに係る第1,2の実施例に関して【0031】~【0082】,図1~図7に開示されている内容には存在しない。そして,上述の当該事項の必要性及び技術的意義も明らかにされておらず,不明である。
((4)~(6)は省略。)
(7)上記(1)~(6),下記「[理由2について]」のとおりであるから,発明の詳細な説明は,各請求項に係る発明を実施できる程度に十分に記載されているとはいえず,また,発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他の当業者が発明の技術上の意義を理解するための必要な事項が記載されているとはいえない。
よって,この出願の発明の詳細な説明は,当業者が請求項1~9に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められない。また,この出願の発明の詳細な説明は,請求項1~9に係る発明について,経済産業省令で定めるところにより記載されたものでない。
要するに,本願発明は第3の実施例に対応するところ,当該実施例に係る記載は不明確であり,発明の詳細な説明及び図面には個人の存在-応対可能性システムに係る第1,2の実施例については具体的な開示があるものの,無生物の物体に関する情報を提供する方法に係る第3の実施例については具体的な開示はなく,個人の存在-応対可能性システムと無生物の物体に関する情報を提供する方法との間の共通性も認められず,第3の実施例においては個人の存在-応対可能性システムにおける各手段がそれぞれどのように動作するのか不明であり,また,第3の実施例における「組み込まれた存在」の意味が不明確であり,第1,2の実施例における「存在情報」と「無生物の物体に関する情報」との関係も不明であるため,発明の詳細な説明の記載は当業者が無生物の物体に関する情報を提供する方法に係る本願発明を実施することができる程度に十分かつ明確ではないというものである。
[理由2について]
((1)は省略。)
(2)「前記タグを,第2の名前空間内の関連するアドレスのディレクトリに対してマッピングし,該関連するアドレスは連絡アドレスを含むステップと,前記関連するアドレスのディレクトリ内の前記タグに対応する連絡アドレスを識別し,該識別された前記連絡アドレスは存在サーバに対するポインタを含むステップ」(請求項1),「前記タグを,第2の名前空間内の関連するアドレスのディレクトリに対してマッピングし,該関連するアドレスは連絡アドレスを含む手段と,前記関連するアドレスのディレクトリ内の前記タグに対応する連絡アドレスを識別し,該識別された前記連絡アドレスは存在サーバに対するポインタを含む手段」(請求項6)は,上記「[理由1について](3)」のとおり【0083】の記載が不明確であるため,その根拠が不明確である。
また,請求項1の上記各ステップの主体が不明確であり,また,請求項6の上記各手段は,個人の存在-応対可能性システムに係る第1,2の実施例に関して【0031】~【0082】,図1~図7に開示されている内容のうちのどの手段に対応するのかも不明である。
(3)「該プロセッサが,該識別された前記連絡アドレスに対する連絡を開始し,該連絡は前記存在サーバに存在情報を提供し」(請求項1),「前記連絡は,前記存在サーバに存在情報を提供し」(請求項6)について,モバイルデバイスが存在サーバに「存在情報」を提供することは,発明の詳細な説明の【0019】~【0021】,【0027】,【0083】~【0088】には記載も示唆もされておらず,上記「[理由1について](2)」のとおりであるから,いかなる「存在情報」を提供するのかも不明である。((4)~(7)は省略。)
要するに,本願発明は第3の実施例に対応するところ,発明の詳細な説明の第3の実施例においては通信デバイスが「存在サーバに存在情報を提供」することは記載されておらず,個人の存在-応対可能性システムと無生物の物体に関する情報を提供する方法との間の共通性は認められないから,当該存在情報の内容も不明であり,また,発明の詳細な説明の記載を参酌しても,各請求項に記載された事項が第1,2の実施例にて開示された各手段及びその動作とどのように対応するのか不明確であるため,各請求項に係る発明が不明確であるとともに,その裏付けも不明というものである。
第3 請求人の対応
当審拒絶理由に対して,請求人は,平成28年9月16日付けで,明細書の【0083】,【0084】及び特許請求の範囲を補正する手続補正書,意見書を提出した。
1 補正後の特許請求の範囲
平成28年9月16日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1及び6は,以下のとおりである。
「【請求項1】
無生物の物体に関する情報を提供する方法であって,該無生物の物体は,その表面上に位置づけられた1つ又は複数の第1の名前空間内のアドレスおよび識別子のうちの少なくとも1つを有し,前記方法は,情報提供の要求に応じて,
通信デバイスが,該無生物の物体の前記表面を,電気的,磁気的,光学的および光磁気的のうちの少なくともいずれかにより走査して,対応する第1の名前空間内の前記アドレスおよび識別子のうちの少なくとも1つを,識別された該第1の名前空間とともに取得し,該アドレスおよび識別子のうちの少なくとも1つはタグであるステップと,
前記タグが,第2の名前空間内の関連するアドレスのディレクトリに対してマッピングされ,該関連するアドレスは連絡アドレスを含むステップと,
前記関連するアドレスのディレクトリ内の前記タグに対応する連絡アドレスが識別され,該識別された前記連絡アドレスは存在サーバに対するポインタを含むステップと,
前記通信デバイスが,該識別された前記連絡アドレスに対する連絡を開始し,該連絡は前記存在サーバに存在情報を提供し,該存在サーバは該通信デバイスに該無生物の物体についての情報を提供するステップと,が順次実行されることを含む方法。」,
「【請求項6】
無生物の物体に関する情報を提供するシステムであって,該無生物の物体は,その表面上に位置づけられた1つ又は複数の第1の名前空間内のアドレスおよび識別子のうちの少なくとも1つを有し,前記システムは,情報提供の要求に応じて,
通信デバイスが,該無生物の物体の前記表面を,電気的,磁気的,光学的および光磁気的のうちの少なくともいずれかにより走査して,対応する第1の名前空間内の前記アドレスおよび識別子のうちの少なくとも1つを,識別された該第1の名前空間とともに取得し,該アドレスおよび識別子のうちの少なくとも1つはタグである手段と,
前記タグが,第2の名前空間内の関連するアドレスのディレクトリに対してマッピングされ,該関連するアドレスは連絡アドレスを含む手段と,
前記関連するアドレスのディレクトリ内の前記タグに対応する連絡アドレスが識別され,該識別された前記連絡アドレスは存在サーバに対するポインタを含む手段と,
前記通信デバイスが,該識別された前記連絡アドレスに対する連絡を開始する手段と,を含み,
前記連絡は,前記存在サーバに存在情報を提供し,該存在サーバは該通信デバイスに該無生物の物体についての情報を提供するように構成されたシステム。」
2 意見書の主張
当審拒絶理由の上記理由1,2に対して,請求人は平成28年9月16日付け意見書で以下のとおり主張している。
「(2)理由1の(1)について
審判長は,まず初めに「個人の存在-応対可能性システムに係る第1,2の実施例に関して[0031]~[0082],図1~図7に開示されている内容と,無生物の物体に関する情報を提供する第3の実施例に関する[0019]~[0021],[0027],[0083]~[0088]の記載との対応関係及び関連性が不明である」と指摘しています。
しかしながら,本願明細書の段落[0006]の1~5行に「従来の存在-応対可能性システムは,特に個人に関連しない物体識別システムに関して,ユニバーサル・リソース・アイデンティファイア(URI)またはユニバーサル・リソース・ロケータ(URL)の名前空間の小さいサブセット,および少数の非URIまたは非URLの名前空間に結び付けられている」と記載されるように,存在-応対可能性システムというのは必ずしも個人の存在-応対可能性システムに限定される概念ではありません。本願発明は,そのような広い概念である存在-応対可能性システムの一形態(第3の実施形態)を「無生物の物体に関する情報を提供する方法」あるいはその方法を実行するシステムとして捉えた発明です。
ですから,本願発明の基本的な考え方は,段落[0006]の11~12行に「存在-応対可能性システムとそれらの他の通信-識別システムとのインターフェイスをとる」と記載されるように,現在の存在-応答可能性システムによってサポートされていない名前空間(UPC,ISBN等)ともネットワーキングを行って包括的に存在関連情報を収集するという点にあり,これは個人の存在-応答可能性システムに関する第1,第2の実施形態と同じです。このため,課題および解決手段ならび発明の効果についても,基本的な部分は第1,第2の実施形態と共通しますから,それらを記載する段落[0008]~[0028]では第1~第3の実施形態を包括的に扱っています。
一方,発明の実施の形態を説明する段落[0031]以降の部分,特にネットワーク・アーキテクチャの概要や様々なエージェントの役割及び動作を説明する部分では,個人の存在-応答可能性システムに関する第1の実施形態を例にとって説明するにとどめ,第3の実施形態(すなわち本願発明)については,第1の実施形態についての説明を援用し,第3の実施形態に特有の構成,すなわち,無生物の物体からのアドレスやIDの取得,異なる名前空間の間でのアドレスやIDのマッピング,存在サーバに対するポインタなどについてのみ,段落[0083]~[0088]で説明しているわけです。
審判長は,第1,第2の実施形態に関する記載と第3の実施形態に関する記載との対応関係および関連性が不明であると指摘していますが,上に述べたように,これらの記載はパラレルになされているわけではなく,第3の実施形態については,第1,第2の実施形態に関する記載をベースにして,これらとは追跡対象の違いにより必然的に異なってくる部分を読み替え,第3の実施形態に特有の部分についてのみ段落[0083]~[0088]の記載によって補充するといった記載の仕方がされています。すなわち法律に例えるならば,準用規定と同様の読み方をすべきところなのです。そして,そのように本願明細書を読むならば,本願発明(第3の実施形態)は十分明確に記載されていると考えます。 例えば,本願明細書の段落[0019]には,第3の実施形態に関し,無生物の物体がその物体上に提示された(第1の)名前空間内のアドレス(や識別子ID)を有することが記載されており,また,段落[0022]~[0023]においては,第1~第3の実施形態を包括して,本願発明では「個人または物体に関するIDを表現する一般的な手段,一般的なポリシー規則,ならびに応対可能性を表現する一般的なやり方を提供することが可能である・・・電話番号を有する人は誰でも,従来の『find-me/hide-me』存在-応対可能性システムの融通の利かないプログラミング制約なしに,自身の連絡可能性を制御することができる・・・を存在情報を収集するためのエージェントとして使用することができる」と記載されています。
すなわち,本願発明(第3の実施形態)では,追跡対象が個人ではなく無生物の物体であって自ら行動をおこしたり(存在)情報の発信をしたりすることはできませんから,追跡対象となる物体に関する(存在)情報はその物体に組み込まれた(提示された)アドレス等の識別子を出発点として収集していくように構成しているのであります。そして,その情報収集のためにはたらいてくれるエージェントとして,通信デバイス,電話交換機,サーバなどのネットワーク・ノードを使用する点は,第1,第2の実施形態と共通しますから包括的な説明ですませているわけです。
本願のクレーム1では,モバイルデバイスが無生物の物体から第1の名前空間(例えば,製造業者の電話番号や製品の識別子など,本願明細書の段落[0084]~「0087」を参照)内のアドレスまたは識別子を(タグとして)取得し,取得したタグを第2の名前空間の関連するアドレスのディレクトリに対してマッピングして対応する連絡アドレス(存在サーバに対するポインタを含む)を識別し,その識別された連絡アドレスに対する連絡を開始する,と規定されています。
これに対し,第1の実施形態では,対象となる個人は名前や電話番号を通じてネットワーク上で自ら存在情報を発信しており,その個人に関連する存在サーバはネットワークを介してその個人の存在情報を随時更新していますから,名前や電話番号などをキーにしていずれかの存在サーバにアクセスすれば更新された(何らかの)存在情報が得られます。従って,その個人自体から第1の名前空間内の識別子(名前や電話番号など)を取得して,それを第2の名前空間にマッピングすることにより上記存在サーバへの連絡アドレスを識別するステップは省略できるわけです。すなわち,第1,第2の実施形態では,本願発明(第3の実施形態)の後半の部分のみを実行すればよく,特に,存在サーバとコンテキスト検知エージェントとの間で情報交換を行うことが重要な特徴であるということになります。
結局,第3の実施形態である本願発明に特有の構成とは,要求側の通信デバイスが無生物の物体から第1の名前空間内のアドレスまたは識別子(の少なくとも一部)をタグとして取得する点,そのタグが第2の名前空間に対してマッピングされることにより存在サーバに対するポインタが(連絡アドレスの少なくとも一部として)識別される点,および,マッピングによって識別された連絡アドレスに対して要求側の通信デバイスが連絡を開始する,という点です。そして,存在サーバがどのようにして存在情報を収集し更新するのかといったことや,存在サーバから当該無生物の物体についての存在情報が提供される際に通信デバイス(コンテキスト検知エージェント)からも存在情報が存在サーバに提供されるといったことは,第1~第3の実施形態に共通する構成といえますから,段落[0031]~[0082]の記載は概略そのまま第3の実施形態についての説明にもなっているわけです。
(3)理由1の(2)について
審判長は,まず第1に「無生物の物体に関する情報を提供する本願発明において,コンテキスト検知エージェント,追跡エージェント,ポリシー・エージェントが,それぞれどのような動作を行っているのか明らかにされておらず・・・何によりどのような『エージェント報告』がどのようになされるのか,存在サーバは何をエントリとするどのようなレコードを有するのか,どのような『応対可能性インテリジェンス』がどのように形成されるのか,不明である」と指摘しています。
しかしながら,コンテキスト検知エージェント,追跡エージェント,ポリシー・エージェントがどのような役割を果たしており,どのような動作を行うかということは,個人の存在情報を提供する第1,第2の実施形態であっても,無生物の物体の存在情報を提供する第3の実施形態(すなわち本願発明)であっても,基本的には変わりません。
すなわち,コンテキスト検知エージェント150は,段落[0035]に記載されるように,交換機/サーバ108および通信デバイス124a~nにおいて,選択された時間間隔で,あるいは所定のイベントが生じた際に,所定のタイプのエージェント報告を存在サーバに提供する役割を果たしており,その動作は段落[0055]~[0060]および図3に記載されています。
また,追跡エージェント154は,段落[0039]に記載されるように,存在サーバ106,132において,様々なエージェント報告を受け取り,事前定義された追跡規則に従って含まれる情報を濾過し,濾過された情報をフォーマットし,所定の追跡規則を使用して濾過された情報を相関させ,またはマップして応対可能性インテリジェンスを形成する役割を果たしており,その動作は段落[0061]~[0066]および図4に記載されています。
また,ポリシー・エージェント158は,段落[0040]に記載されるように,存在サーバ106,132において,特定の対象に関連する存在情報のクエリに応答して,対応する応対可能性インテリジェンスを取り出し,それにポリシー規則を適用するか,またはポリシー規則に対してマップすることにより,どのような存在情報が要求側に提供されるべきかを決める役割を果たしており,その動作は段落[0071]~[0077]および図5に記載されています。
なお,本願の請求項1(および請求項6)では,コンテキスト検知エージェント,追跡エージェント,ポリシー・エージェントといったものを,構成要件として記載しているわけではありません。
審判長は,第2に「仮に請求項1,6において存在サーバに提供される存在情報がエージェント報告であるとすると,クエリの要求側に提供される存在情報の元となるエージェント報告の内容(エージェントID,エージェントの位置データ等)はエージェントであるモバイルデバイスに関する情報であって,無生物の物体に関する『存在情報』ではない。また,エージェントIDとしてスキャンデバイスによりキャプチャした第1の名前空間内のアドレス/識別子を適用したところで,いかなる応対可能性インテリジェンスが形成されるのか不明である。このため,存在サーバに提供する『存在情報』とはいかなるものか不明であり,モバイルデバイスに提供される『無生物の物体についての情報』との関係も不明である」と指摘しています。
しかしながら,本願発明でいう「エージェント報告」とは,コンテキスト検知エージェントから存在サーバに向けられた情報提供の形態であり,存在情報自体がエージェント報告であるわけではありません。存在サーバはエージェント情報を受け取ることにより,その中に含まれる存在情報(の断片)を用いて自身が保有する存在情報を更新しながら維持していくわけです。そして「存在情報」とは,段落[0009]の5~9行に記載されるように,追跡対象(それが個人であるか無生物の物体であるかを問わない)に関連する応対可能性情報,位置情報,プロファイル情報,あるいはユーザが定義した属性などのことです。したがって,エージェントのIDや位置データは,エージェント報告に通常含まれる情報ですが,これら自体が追跡対象に関連する情報でない限り存在情報ではありません。また「応答可能性インテリジェンス」というのは,段落[0015]に記載されるように,処理された存在情報またはメタ情報のことですから,存在サーバが有する存在情報(すなわち集合)に対して要求側からのクエリに則して処理(抽出,演算等)することにより生成された,要求側への応答としての存在情報であります。以上のように,存在サーバに提供される「存在情報」がどのようなものかは明らかですし,また,要求側の通信デバイス(審判長のいう「モバイルデバイス」に相当)に提供される「無生物の物体についての情報」は上記「応答可能性インテリジェンス」ですから,それがどのようなものであるかも明らかです。
審判長は,第3に「個人の存在-応対可能性システムでは・・・通信デバイスが存在サーバに提供する存在情報と存在サーバから提供される存在情報とは同質なものであって,エージェント報告をする側もクエリを要求する側も通信デバイスである。これに対し,無生物の物体に関する情報を提供する本願発明においては,通信デバイスが存在サーバに提供する存在情報と存在サーバから提供される存在情報とは異質なものであり・・・このため,存在サーバが,複数の名前空間に係る報告をどこからどのように収集し,どのように管理するかが不明である」と指摘しています。
しかしながら,通信デバイスが存在サーバに提供する存在情報と存在サーバから提供される存在情報とは,いずれも「存在情報」であるという点では同質ですし,前者は生の断片的情報であるのに対し後者は加工された情報であるという点では異質です。そして,この点は,第1,第2の実施形態でも,第3の実施形態(本願発明)でも同じです。審判長が何をもって「同質なもの」あるいは「異質なもの」といっているのか,必ずしも十分には理解できませんが,いずれにしても,存在サーバは,エージェント報告の受領や他の存在サーバとの情報交換により自身の保有する存在情報を整備し更新していき,そうして整備(管理)された存在情報に対して要求側からのクエリをマッピングすることにより新たに生成された存在情報を応答として要求側に返していることは明らかです。
審判長は,第4に「上記意見書にて・・・と釈明されているが,そのような情報は,[0031]~[0082],図1~図7に開示されている個人の存在-応対可能性システムと同様の構成では収集することができないから,提供することもできない・・・何がどのようなエージェント報告をなすことにより,このような状況に対応し得るのか不明である・・・どのようなエージェント報告にどのような追跡規則がどのように適用されてどのような応対可能性インテリジェンスが形成されるのか不明であって・・・具体的動作が不明であるから,当該釈明は不十分である」と指摘しています。
しかしながら,上にも述べたように,段落[0031]~[0082]および図1~図7の記載は,個人の存在-応対可能性システムだけを開示しているわけではなく,追跡対象が個人である場合を例にとって存在-応対可能性システム一般に共通する内容を説明してしるものです。そして,審判長が指摘する意見書の中の主張は,対象が無生物の物体であっても,その存在情報およびその変動を追跡するという概念は,対象が個人の場合と同様であることを説明するために例示したものに過ぎません。存在情報の変動を追跡するためにネットワークを介して情報を交換し収集するという基本理念と,それを行うための具体的動作は,第1~第3の実施形態に共通のものであり,第3の実施形態(本願発明)はその追跡対象が個人ではなく無生物の物体であるという点でのみ第1,第2に実施形態と異なるものです。その点に鑑みて,本願発明では通信デバイスが当該無生物の物体に提示された第1の名前空間に属するアドレスまたは識別子を取得し,それを第2の名前空間にマッピングして存在サーバへのポインタを取得(識別)し,その存在サーバにアクセスして所望の(加工された)存在情報を取得するという構成をとったわけです。ただし,本願発明において最も特徴的な点は,存在サーバから所望の(加工された)存在情報を取得する際に,存在サーバも(生の)存在情報を取得し,それにより自身が保有する存在情報を更新し整備するという点であり,この点は第1,第2の実施形態と共通する特徴ということになります。
(4)理由1の(3)について
審判長は,まず第1に,段落[0083]中の「既存の番号スキーム」および「命名スキーム(名前空間)」の意味が不明であり,それらの間でアドレスのマッピングを行う必要性及びその意義が不明であると指摘しています。また,同段落中の「組み込まれた存在」の意味も不明であると指摘しています。
請求人は,審判長の御指摘に鑑み,段落[0083]中の「既存の番号スキームと命名スキーム(名前空間)の間で」なる記載を「同一または異なる名前空間の間で」に変更し,また「組み込まれた存在」なる記載を「組み込まれた存在情報」に変更しました。これにより審判長の上記指摘は解消したものと思われます。
なお,異なる名前空間の間でアドレスのマッピングを行う意義は,異なる名前空間の間でのフレキシビリティ(情報の融通性)が担保され,ネットワークを介した広い範囲での情報の共有が可能になることにあります。例えば,第2の名前空間に存在サーバへのポインタが含まれることにより,当該無生物の物体に提示された第1の名前空間内のアドレスに関連する製品が現時点でも入手可能であるかどうか,がわかります。そして,その入手可能性に基づいて存在情報を適用すれば,段落[0083]の15~18行に記載されるように,人間の仲介者や手動のルックアップなしでも,所望の納入業者やサービス・プロバイダへの連絡要求をルーティングすることができます。また,第2の名前空間からは,第1の名前空間内のアドレスが当該無生物の物体に提示された時点では入手できなかった情報,例えば,そのアドレスに関連する製品が最早サポートされていなかったり入手可能ではなくなったりしていないか,といった情報が得られる場合もあります。
審判長は,次いで第2に「いかなる理由で元の名前空間からのアドレスを同じ名前空間内または別の名前空間内の1つまたは複数のアドレスに対するURLポインタに変換するのか・・・何故そのようなURLポインタに『存在サーバに対するポインタ』が含まれるのか不明である」と指摘しています。
元の名前空間からのアドレスをURLポインタに変換する目的は,インターネットを通じた検索に便利だからであり,また,そのURLポインタに存在サーバに対するポインタが含まれる理由は,インターネット上で存在サーバを検索することが存在情報の収集に有利だからです。
審判長は,第3に,段落[0031]~[0082]および図1~図7には,本願発明の最大の特徴であるとされる「当該無生物の物体への最初のアクセスで取得した第1の名前空間に属する名前(アドレス)をキーにして,第2の名前空間に属する関連する名前(連絡アドレス)を検索することにより,その連絡アドレスを通じてその商品に対する別の情報を取得すること,更に,その検索は存在サーバへのアクセスにより行われ,そのアクセスの際に,該存在サーバから上記連絡アドレスを提供する第2の名前空間の情報を取得するとともに,該存在サーバもその際に当該無生物の物体に関する情報を取得する」点を開示する内容が見当たらないと主張しています。
しかしながら,上に述べたように,段落[0031]~[0082]は,第1~第3の実施形態に共通する構成(および第1の実施形態に特有の構成)を記載するところであり,上記特徴は第3の実施形態に特有の構成であるため,上記箇所には記載されていないわけです。上記特徴は,段落[0083]~[0088]に記載されています。
(中略)
(9)理由2の(2)について
請求人は,審判長の御指摘に鑑み,段落[0083]の記載を補正しましたので,この点は解消したと考えます。
なお,請求項1の各ステップの主体は,直接的には,第1の名前空間内の前記アドレス/識別子を取得するステップと識別された連絡アドレスに対する連絡を開始するステップでは通信デバイスであり,取得したアドレス/識別子を第2の名前空間にマッピングして連絡アドレスを識別するステップでは通信デバイスまたは存在サーバ等のネットワーク・ノードです。この点は,発明の内容から明らかであると考えます。
また,請求項6の各手段は,そのほとんどが本願発明(第3の実施形態)に特有の構成要素ですから,第1~第3の実施形態に共通する構成を記載する段落[0031]~[0082]および図1~図7には記載されていません。
(10)理由2の(3)について
審判長が御指摘の内容は,コンテキスト検知エージェントと存在サーバとが情報交換(エージェント報告と応対可能性インテリジェンスとの交換)をする場面であり,これは第1~第3の実施形態に共通の構成ですから,審判長が御指摘の箇所ではなく,段落[0031]~[0082]および図1~図7には記載されています。
(後略)」
第4 当審の判断
1 本願明細書の記載
本願明細書には,無生物の物体に関する情報を提供する方法に係る第3の実施例について,以下の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
モバイル電話網,静的電話網,およびIPネットワークの収斂により,無数の通信オプションがユーザに提供されている。別の個人に連絡をとろうと努める場合,いくつかだけを挙げれば,電子メールまたはe-mail,インスタント・メッセージング,有線電話機または無線電話機,パーソナル・コンピュータ,ポケットベル,パーソナル・デジタル・アシスタント,つまりPDA,およびユニファイド・メッセージング・システム,つまりUMシステムによってそうすることができる。これほど多くのオプションが存在しており,いずれのオプションが,所与の時点で所望の個人に,つまり着呼者に連絡をとれる最も高い可能性を発呼者に与えるかを判定することは,不可能でないにしても困難である。試行錯誤および当て推量が,着呼者に連絡をとるのに使用される通常の技術であり,これは,往々にして,発呼者側の時間の浪費と苛立ちにつながる。
【0003】
個人の存在および応対可能性を時間的に追跡することができる存在-応対可能性システムを提供し,これにより,個人に連絡をとることができる最も高い可能性を連絡側に与える様々な試みが行われてきた。これは,通常,個人に関連する通信デバイスから情報を収集することによって行われる。そのようなシステムにより,個人が,自身の受けた連絡に応対できる可能性を一般的に定義し,かつ/または連絡側のグループ,ならびにどのようにその連絡側,または連絡側のグループがその個人に連絡をとることができるかを定義できるようになることがさらに可能である。これは,個人が,連絡側のアクセス制御設定を構成することを許すことによって行うことができる。理解されるとおり,連絡側は,連絡先の応対可能性に関する情報を見ることができ,その情報を使用して,通信を開始または継続するか否か,どのように通信を開始または継続するかを決めることができる。
【0004】
最近,セッション開始プロトコルまたはSIP(これは,データ網マルチメディアの会議および電話向けの単純な通信/アプリケーション・レイヤ・プロトコルである)が,メディア独立の通信,および存在-応対可能性システムの実装を容易にするために開発されている。他のプロトコルも,存在の概念を同じようにサポートすることが可能であるが,SIPは,本発明の例示的な基礎を提供する。SIPでは,終端システムおよびプロキシ・サーバが,コール転送,連絡先番号および連絡側番号の配信(ここで,番号は,従来のURLフォーマットなどの任意の命名スキームであることが可能である),個人の機動性(連絡先が端末装置を変更した場合でさえ,単一の場所独立のアドレスの下で連絡先に連絡をとる能力),端末装置タイプの交渉および選択(例えば,どのように連絡先に連絡をとるかの選択が連絡側に与えられることが可能である),端末装置能力交渉,発呼者および着呼者の認証,ブラインドのコール転送および監視されたコール転送,ならびにマルチパーティ会議への招待を提供することができる。
【0005】
以上の様々なサービスを提供するため,SIPは,比較的単純なシステムを使用する。連絡は,「INVITE」メッセージ(連絡側の選好するコーデックを使用する)および,「OK」メッセージ(連絡先の選好するコーデックを使用する)を介して開始する。様々なソフトウェア・エンティティが参加することが可能であり,すなわち,現時点における所与のユーザのアドレスのマップを保持するレジストラ,コール・ルーティング,いくらかのセッション管理,ユーザ認証,リダイレクト機能,およびメディア・ゲートウェイへのルーティングを実行するプロキシ,転送機能のサブセットを実行するリダイレクト・サーバ,ならびにユーザ・プロファイルを保持し,加入者登録を提供するSIPロケーション・サーバである。「登録」とは,ユーザがオンラインになるたびに,または既存の登録を変化させることを必要とするたびに毎回,ユーザの通信デバイスがネットワークに登録する機構であり,いくつかの異なる基準に基づいて連絡をルーティングするための情報を指定する個々のプロファイルが保持される。
【0006】
以上のことにも関わらず,従来の存在-応対可能性システムは範囲が限られている。従来の存在-応対可能性システムは,特に個人に関連しない物体識別システムに関して,ユニバーサル・リソース・アイデンティファイア(URI)(またはユニバーサル・リソース・ロケータ(URL))の名前空間の小さいサブセット,および少数の非URIまたは非URLの名前空間に結び付けられている。本明細書で使用する「名前空間」とは,事前定義されたセットの識別子のなかで識別子の一意性の属性を保つようにエンティティまたは標準によって管理される数字ベース,英字ベース,または英数字ベースのシステムまたはアドレスを指す。現在の存在システムによってサポートされていない名前空間の例には,統一商品コード,つまりUPC,GSPロケートン・データ,ISBNコード,および独自のメッセージング・ハンドルが含まれる。名前空間内のアドレスは,1つまたは複数の通信デバイスまたは通信物体に関連付けることができる。存在-応対可能性システムとそれらの他の通信-識別システムとのインタフェースをとることが,従来の電話,インターネット,およびその他のシステムの収斂の度合いがますます高まっていることに鑑みて重要である。さらに,従来の存在-応対可能性システムは,他の外部の存在-応対可能性システムおよび/または,無線ネットワークによって生成される加入者の物理的位置の情報などの有用な存在関連情報を収集する他のシステムと相互ネットワーキングが行われていない。SIMPLE作業グループ,IMPP作業グループ,およびSIP作業グループにおいて行われた作業を使用して,公開の存在システムに対してインターネット技術標準化委員会またはIETFにおいて一部の関連する作業が行われているが,現在の提案は,存在サービスの基本的なフレームワークだけを扱い,E.164システムを超えて相互に機能する名前空間を扱っていない。既存の慣例および標準は,機能する相互運用可能な存在-応対可能性システムの必要性を満たすのに重要な多くのアルゴリズムおよび技術を依然として欠いている。
(中略)
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の必要性,およびその他の必要性に本発明の様々な実施形態および構成が対処する。本発明は,一般に,インテリジェントな存在-応対可能性システム,ならびに通信シス
テムまたは無生物の物体に関する名前空間内のアドレスを同じ名前空間内または他の名前空間内のアドレスに対してマップして,要求側に動作上のオプションを提供するための方法を対象とする。
(中略)
【0019】
第3の実施形態では,提示された名前空間内のアドレスを有する無生物の物体に関する情報を提供するための方法が提供される。この方法は,
(a)無生物の物体上のアドレスおよび関連する名前空間を受け取るステップと,
(b)アドレスの一部またはすべてを1つまたは複数の連絡アドレスにマップするステップと,
(c)所望されるサービスまたは機能に対応する適切な連絡アドレスを特定するステップと,
(d)特定されたアドレスに対する連絡を開始するステップとを含む。
【0020】
名前空間は,電話番号のセット,統一商品コードのセット,国際標準図書番号コード,つまりISBNコードのセット,部品番号のセット,電子メール・アドレスのセット,またはWebアドレスのセットなどであることが可能である。連絡アドレスのリストは,複数の名前空間内で作成することができる。名前空間は,組み込まれた存在トークンをさらに含むことが可能である。
【0021】
アドレスおよび関連する名前空間は,光技術,磁気技術,電気技術,電磁技術,および/または光磁気技術を含む任意の適切な技術によって獲得することができる。
特定されたアドレスは,ユニバーサル・リソース・ロケータ(ユニバーサル・リソース・インディケータとしても知られる)の形態で提示することができる。URLまたはURIは,要求側に用意された,異なる動作上のオプションに,または存在サーバに関連付けることができる。
本発明の様々な実施形態は,従来の技術に勝るいくつかの利点を提供することができる。
(中略)
【0027】
第6に,本発明は,存在-応対可能性システムに関連するアドレスを他の既存の名前空間(または番号システム)におけるアドレスにマップして,無生物の物体においても「組み込まれた存在」を可能にするやり方を提供することができる。組み込まれた存在の可能な用途には,納入業者またはサービス・プロバイダの特定および通信を人間の仲介者または手動のルックアップなにし物体の属性から直接に可能にする合理化された発注システムおよびサービス・システムが含まれる。
(中略)
【0044】
図2Bは,生の位置および応対可能性のデータ・ブロック200の中に含まれる情報を示している。図2Bを参照すると,生の位置および応対可能性の情報は,通常,対応するエージェント報告および(オプションの)有効期限220(この有効期限が過ぎると,情報はもはや有効ではない)の送信に関連するタイムスタンプ,対応する交換機/サーバまたは通信デバイス(または対応する報告を提供するエージェント)に関連する固有エージェント識別子224,および(各(IP)アドレスに関連する報告側エンティティまたはホスト・エンティティの連絡(インターネット・プロトコル,つまりIP)アドレスおよびメディア・アクセス制御アドレス,つまりMACアドレスを含むことが可能な)位置データまたは他のコンテキスト・データ228,それぞれのそのようなアドレスにおける追跡されるIDまたはユーザに連絡をとる(ベースラインの)確率,関連する(1次)ネットワークに関する既定のルーティング(または既定のルータ,ゲートウェイ,および/またはプロキシ・サーバ),地理的位置または空間的位置(利用できる場合,GPS位置特定システムを有する,または外部の無線ネットワーク位置特定システムと通信しているセルラー電話機などの),システムのタイプ,モード機能(音声,テキスト,ビデオ,インスタント・メッセージング,電子メールなど),対応する通信デバイスによって関連するユーザから受け取られた(ユーザの存在を示す)最初の人間対話および/または最後の人間対話(例えば,キーボード上またはキーパッド上のボタンを押す)を示す1つまたは複数のコンテキスト上のタイムスタンプ,ならびに通信デバイスのユーザから発信された手動の状態変更の要求またはコマンドのタイプ(例えば,キーボード上でタイプする,電話コールを開始する,または電話コールに参加する(電話機に関して「フックに掛かっている」または「フックから外れている」などの),オフにする,音声メールをチェックする,「ビジー」,「昼食で外出中」など)の様々なエージェント分類タグまたは指示子を含む。エージェント分類タグは,エージェントによって自動的に生成されるか,またはホスト・エンティティのユーザによって手動で生成される。
(中略)
【0047】
追跡規則204は,パターン・マッチング技術またはイベント相関技術に基づくなどして準備され,ユーザによって構成され,かつ/または人工知能によって開発され,どのように生の位置および応対可能性の情報が処理されて存在インテリジェンスになるかを支配する規則を提供する。一部の追跡規則は,生の位置および応対可能性の情報に基づいて分類タグを操作する。分類タグは,ポリシー規則セットをマップすることができる任意の適切な分類スキーマに基づくことが可能である。例えば,分類タグは,通信デバイスの目的(例えば,私用,自宅用,ビジネス用,オフィス用などの),通信デバイスのタイプ(例えば,デジタル有線電話機,アナログ有線電話機,セルラー電話無線電話機,パーソナル・デジタル・アシスタント,つまりPDA,IPハードフォン,IPソフトフォン,ポケットベル,ファクシミリ,電子メール・システム,Webシステムなど),通信デバイスの空間的位置,機能的位置,または地理的位置(例えば,緯度と経度の座標,およびその他の座標,自宅,自動車,オフィスのデスク,国,州,群,市,自治体,ゴルフ・コース,空港,店など),デバイスの動作モード(オン/オフまたは起動/停止),エージェント報告をトリガするイベント(例えば,タイピング(キーボード上の),連絡を発すること,または開始すること,または実行すること,音声メールまたは電子メールにアクセスすること,Web上でブラウズすること,メッセージを送信すること,活動タイムアウト,または他のユーザが誘導するイベント)報告側エンティティの機能またはメディア・サポート(例えば,パケット交換/回路交換,デジタル/アナログ,音声対応,インスタント・メッセージング対応,ビデオ対応,オーディオビジュアル対応,同期通信または非同期通信,電子メール対応,Web対応などの),プロトコル(例えば,H.323,SIP,独自などの),最低限の使用可能優先順位,可視性クラス(すなわち,どのようなクラスの要求側が,そのデータを見るべきか)およびカスタム・タグを通信することができる。分類タグは,拡張マークアップ言語,つまりXMLを使用して実装することができる。
(中略)
【0083】
(名前空間マッピングおよび組み込まれた存在トークン)
本発明の別の実施形態では,同一または異なる名前空間の間でアドレスのマッピングを行って,通信システムを通じた連絡アドレス,またはドキュメント,製品,およびその他の無生物の物体の中に組み込まれた存在情報のより広い相関を可能にすることによって存在システムを活用する手段が提供される。元の名前空間(E.164またはSIPなどの)からのアドレスを同じ名前空間内または別の名前空間内の1つまたは複数のアドレスに対するURLポインタに変換するためのアルゴリズムが提供され,URLポインタには,存在サーバに対するポインタが含まれることが可能である。言い換えれば,この実施形態の方法により,第1の名前空間内の第1のアドレスから同じ名前空間内,または別の名前空間内の第2のアドレスへの一般的な変換が可能になり,第1のアドレスおよび第2のアドレスのそれぞれは,共通の個人,エンティティ,またはサービス,または機能に関連付けられている。一般的なアプリケーションを提供するため,ディレクトリ・サービスからのアドレスの獲得が,ドメイン・ネーム・サービス(つまりDNS)用またはライトウェイト・ディレクトリ・アクセス・プロトコル(つまり,LDPA)用に使用されるような標準化されたクエリ/応答フォーマットを使用して実行される。組み込まれた存在の可能な用途には,納入業者またはサービス・プロバイダの特定および通信を人間の仲介者または手動のルックアップなにし無生物の物体の特性から間接的に可能にする合理化された発注システムおよびサービス・システムが含まれる。
【0084】
一構成では,この実施形態は,無生物の物体に関連する名前空間の中に,ディレクトリ・サービスまたは存在サーバの中で個人またはエンティティの識別にさらに関連しているタグまたは存在トークンを組み込む,または含めることによって実施される。無生物の物体は,車(自動車サービス),雑誌(予約購読),消耗品(販売)などのサービス活動,販売活動,または他のマーケティング活動に関連する任意の物体であることが可能である。
【0085】
名前空間は,特定の物体を一意的に識別することも,しないことも可能な数字であれ,英字であれ,または英数字であれ,任意の適切な形態であることが可能である。例には,統一商品コード,つまりUPC,国際標準図書番号コード,つまりISBNコード,部品番号,MACアドレス,IPアドレス,シリアル番号,IPアドレス,セッション開始プロトコル・アドレス,電子メール・アドレス,Webアドレス,URI,URL,E.164番号,および電話番号等が含まれる。
【0086】
組み込まれたタグは,印刷されるのであれ,無線で共有されるのであれ,任意の適切な形態であることが可能である。使用することができるタグの例には,物体上に印刷されたコード,電話番号,またはその他の識別子,あるいは無線周波数識別子無線タグ,つまりRFID無線タグが含まれる。
【0087】
動作上の例では,タグは,電気スキャン,磁気スキャン,光学スキャン,または光磁気スキャンされて,これにより,PC,PDA,セルラー電話機,ラップトップなどの通信デバイスによってキャプチャされる。次に,デバイスは,存在サーバ,または他のタイプのルックアップ・サービスまたは変換サービスに連絡をとるために自らの関連する名前空間内でそのアドレスをルックアップすることができる。受信側サーバは,その名前空間内でアドレスに対応するエントリを探し出し,製造業者,小売業者,またはサービス・プロバイダの電話番号およびアドレスのような連絡情報だけでなく,物体のアフター・サービスを要求すること,物体に関する追加の機能を購入すること,追加の物体を購入すること,物体を予約購入すること(雑誌の場合),物体の動作または機能,または物体の保証範囲,物体の製造業者または納入業者に関連するWebサイト,物体に関連するサービスのステータス(例えば,物体が,Federal Express(商標)またはUnited Parcel Service(商標)からの配送伝票であり,ステータスは,伝票に関連する配送のステータスである),物体の出所などに関してさらなる情報を獲得するために要求側に用意された動作上のオプションも含むことが可能な応答を提供する。様々なオプションが,オーディオ技術,ビデオ技術,およびオーディオビジュアル技術によるなどの,既知の技術を介して通信デバイスによって要求側に提示されることが可能である。
【0088】
存在サーバ,またはドメイン・ネーム・サービス,または他のマッピング・サービスから応答で受け取られるアドレスは,製造業者,小売業者,またはサービス・プロバイダに関連する第2の存在サーバのアドレスであることも可能である。第2の存在サーバにおけるクエリ・エージェントに連絡が行われた際,要求側には,前述したとおり,通信オプション,ならびに各オプションの関連する確率が提供される。次に,要求側が,自身の必要性に応じて様々なオプションのなかから選択を行うことができる。」
2 判断
(1)特許法第36条第4項第1号について
ア 請求人は,意見書の「(2)理由1の(1)について」にて,本願明細書の【0006】,【0019】~【0021】,【0027】を根拠に,本願発明の基本的な考え方は,現在の存在-応答可能性システムによってサポートされていない名前空間(UPC,ISBN等)ともネットワーキングを行って包括的に存在関連情報を収集するという点にあり,これは個人の存在-応答可能性システムに関する第1,第2の実施形態と同じであり,追跡対象となる物体に関する(存在)情報はその物体に組み込まれた(提示された)アドレス等の識別子を出発点として収集していくように構成し,その情報収集のためにはたらいてくれるエージェントとして,通信デバイス,電話交換機,サーバなどのネットワーク・ノードを使用する点,及び,存在サーバがどのようにして存在情報を収集し更新するのかといったことや,存在サーバから当該無生物の物体についての存在情報が提供される際に通信デバイス(コンテキスト検知エージェント)からも存在情報が存在サーバに提供されるといったことは,第1~第3の実施形態に共通する旨主張している。
そして,意見書の「(3)理由1の(2)について」にて,コンテキスト検知エージェント,追跡エージェント,ポリシー・エージェントがどのような役割を果たしており,どのような動作を行うかということは,個人の存在情報を提供する第1,第2の実施形態であっても,無生物の物体の存在情報を提供する第3の実施形態(すなわち本願発明)であっても,基本的には変わりなく,コンテキスト検知エージェント150は,交換機/サーバ108および通信デバイス124a~nにおいて,選択された時間間隔で,あるいは所定のイベントが生じた際に,所定のタイプのエージェント報告を存在サーバに提供する役割を果たしており,また,存在サーバはエージェント情報を受け取ることにより,その中に含まれる存在情報(の断片)を用いて自身が保有する存在情報を更新しながら維持していくところ,「存在情報」とは,追跡対象(それが個人であるか無生物の物体であるかを問わない)に関連する応対可能性情報,位置情報,プロファイル情報,あるいはユーザが定義した属性などのことであり,エージェントのIDや位置データはこれら自体が追跡対象に関連する情報でない限り存在情報ではなく,「応答可能性インテリジェンス」とは,存在サーバが有する存在情報(すなわち集合)に対して要求側からのクエリに則して処理(抽出,演算等)することにより生成された,要求側への応答としての存在情報であり,本願発明において最も特徴的な点は,存在サーバから所望の(加工された)存在情報を取得する際に,存在サーバも(生の)存在情報を取得し,それにより自身が保有する存在情報を更新し整備するという点であり,この点は第1,第2の実施形態と共通する旨,また,第3の実施形態(本願発明)はその追跡対象が個人ではなく無生物の物体であるという点でのみ第1,第2に実施形態と異なり,その点に鑑みて,本願発明では通信デバイスが当該無生物の物体に提示された第1の名前空間に属するアドレスまたは識別子を取得し,それを第2の名前空間にマッピングして存在サーバへのポインタを取得(識別)し,その存在サーバにアクセスして所望の(加工された)存在情報を取得するという構成をとっている旨,主張している。
イ しかしながら,本願明細書の【0002】~【0005】には,従来の存在-応答可能性システムとして,個人の存在-応答可能性システムが記載されているだけであり,従来の存在-応答可能性システムと個人に関連しない物体識別システムとの関連は一切明らかにされておらず,【0006】の「従来の存在-応対可能性システムは,特に個人に関連しない物体識別システムに関して,ユニバーサル・リソース・アイデンティファイア(URI)(またはユニバーサル・リソース・ロケータ(URL))の名前空間の小さいサブセット,および少数の非URIまたは非URLの名前空間に結び付けられている。」との記載によっても,個人の存在-応答可能性システムと個人に関連しない物体識別システムとの関連は不明である。そして,【0006】の「存在-応対可能性システムとそれらの他の通信-識別システムとのインタフェースをとる」の「通信-識別システム」は,第3の実施例においては個人に関連しない物体識別システムと解されるものの,第1,2の実施例においては何がこれに該当するのか不明である。そして,第1,2の実施例では,第1,2のネットワークの通信デバイス及び電話交換機/サーバ内のコンテキスト検知エージェントから存在関連情報を収集しており,「現在の存在-応答可能性システムによってサポートされていない名前空間(UPC,ISBN等)ともネットワーキングを行って包括的に存在関連情報を収集する」ものではないから,「これは個人の存在-応答可能性システムに関する第1,第2の実施形態と同じです。」とする請求人の主張は根拠がなく,採用できない。
そして,個人の存在-応答可能性システムは,個人に連絡をとることができる最も高い可能性を連絡側に与えるために,個人の存在および応対可能性を時間的に追跡することができるよう,当該個人が使用する通信デバイスのコンテキスト検知エージェントが,選択された時間間隔かつ/または所定のイベントが生じた際に所定のタイプの生の位置および応対可能性の情報を含むエージェント報告を存在サーバに提供し,当該エージェント報告に追跡規則やポリシーを適用して,追跡されるユーザIDに関する応対可能性インテリジェンスを生成し,存在情報の要求側である前記連絡側のクエリに応答して当該応対可能性インテリジェンスを返すことにより,連絡側は個人に連絡をとることができる最も高い可能性を有する通信デバイスを知ることができるものである。
これに対し,無生物の物体は,個人と異なり,複数の通信デバイスを使用するものではなく,応答するものでもないから,連絡側がどの通信デバイス宛てに連絡すれば目的とする個人に連絡をとることができる可能性が最も高いかという,存在-応答可能性に係る課題自体存在しない。
したがって,存在-応対可能性システムと個人に関連しない物体識別システムとの関連性自体,意味不明である。
ウ また,請求人は,コンテキスト検知エージェント,追跡エージェント,ポリシー・エージェントの役割,動作は,第1,2の実施形態と第3の実施形態とで変わりないと主張しているが,第3の実施例に関する【0019】~【0021】,【0027】,【0083】~【0088】には,上記各エージェントに関する記載は存在せず,通信デバイスが存在サーバに存在情報を提供することは記載も示唆もされていない。このため,当然ながら,存在情報に追跡規則やポリシーを適用して応答可能性インテリジェンスを生成することも,記載も示唆もされていない。
このため,これらの動作が自明か否かについて,検討する。
請求人の主張(上記ア参照。)によれば,存在情報(の断片)が含まれるエージェント報告は,選択された時間間隔であるいは所定のイベントが生じた際に存在サーバに提供されるものであり,「存在情報」とは追跡対象(第3の実施例では無生物の物体)に関連する応対可能性情報,位置情報,プロファイル情報,あるいはユーザが定義した属性などのことであって,エージェントのIDや位置データはこれら自体が追跡対象に関連する情報でない限り存在情報ではなく,「応答可能性インテリジェンス」とは当該存在情報を処理(抽出,演算等)することにより生成された要求側への応答としての存在情報ということになる。
(ア)そうすると,第1,2の実施例においてコンテキスト検知エージェントがエージェント報告として報告する,通信デバイス(または対応する報告を提供するエージェント)に関連する固有エージェント識別子は,追跡対象である無生物の物体に関連するものではないから「存在情報」とはいえず,スキャンによりキャプチャしたタグの情報は追跡対象である無生物の物体に関連するから「存在情報」に該当することになる。
しかしながら,本願明細書には,通信デバイス(または対応する報告を提供するエージェント)に関連する固有エージェント識別子に替えて,無生物の物体の表面上に位置づけられた第1の名前空間内のアドレス及び識別子のうちの少なくとも1つを「存在情報」として報告することは,記載も示唆もされていない。
また,無生物の物体の表面上に位置づけられた第1の名前空間内のアドレス及び識別子のうちの少なくとも1つとして,【0086】に「物体上に印刷されたコード,電話番号,またはその他の識別子,あるいは無線周波数識別子無線タグ,つまりRFID無線タグ」が例示されているところ,これらは【0044】に例示されるエージェント報告には含まれていない。
(イ)また,上述のとおり,存在情報(の断片)が含まれるエージェント報告は,選択された時間間隔であるいは所定のイベントが生じた際に存在サーバに提供されるものであるから,キャプチャしたタグの情報が選択された時間間隔で定期的に,あるいは所定のイベントが生じた際に,存在サーバに提供されることになる。
しかしながら,【0084】,【0087】の記載によれば,無生物の物体に関する情報を要求する者が,通信デバイスがスキャンしてキャプチャした「物体上に印刷されたコード,電話番号,またはその他の識別子,あるいは無線周波数識別子無線タグ,つまりRFID無線タグ」に基づいてサーバにアクセスして,当該サーバから無生物の物体に関する情報を得るものと推察されるから,タグは無生物の物体に関する情報を収集する手掛かりとなるにすぎない。してみると,第3の実施例においてタグがスキャンによりキャプチャされるのは,タグを有する無生物に関する情報を獲得すること望むときと解するのか自然である。このように,タグは,通信デバイスにてスキャンを行う者が無生物の物体に関する情報を収集する手掛かりとなるものにすぎず,定期的にスキャンされるものでもないから,キャプチャされたタグの情報が選択された時間間隔で定期的に存在サーバに報告する背景・理由が理解できない。
また,無生物の物体の表面を走査することは,【0047】に例示される所定のイベントである「タイピング(キーボード上の),連絡を発すること,または開始すること,または実行すること,音声メールまたは電子メールにアクセスすること,Web上でブラウズすること,メッセージを送信すること,活動タイムアウト,または他のユーザが誘導するイベント」に含まれていない。そして,上述のように,タグは通信デバイスにてスキャンを行う者が無生物の物体に関する情報を収集する手掛かりとなるものにすぎず,存在サーバが無生物の物体に係る「存在情報」を収集するためのイベントとしての意義は見出せない。したがって,キャプチャされたタグの情報が所定のイベントが生じた際に存在サーバに報告されることが,発明の詳細な説明に開示されているともいえない。
(ウ)また,上述のとおり,存在サーバから通信デバイスに提供される「無生物の物体についての情報」は,存在サーバにおいて,エージェント報告に含まれる無生物の物体に関連する存在情報に,追跡規則・ポリシーを適用して生成した,「応答可能性インテリジェンス」であることになる。
しかしながら,第3の実施例においては「応答可能性インテリジェンス」に関する記載は存在せず,通信デバイスがスキャンしてキャプチャした「物体上に印刷されたコード,電話番号,またはその他の識別子,あるいは無線周波数識別子無線タグ,つまりRFID無線タグ」と「応答可能性」との間にどのような因果関係があるのかも不明であるから,どのような追跡規則・ポリシーを適用して生成して,どのような「応答可能性インテリジェンス」が生成されるのかも不明である。
また,第1,2の実施例においては,「応答可能性インテリジェンス」とはエージェント報告に係る通信デバイスによる個人の応答可能性を示すものであるところ,応答を行うことのない無生物の物体の応答可能性は第1,2の実施例における個人の応答可能性とは全く異なる概念のものであるから,第1,2の実施例と同様の手法で「応答可能性インテリジェンス」が生成され得るとはいえない。
そして,【0087】の記載には,応答として,「製造業者,小売業者,またはサービス・プロバイダの電話番号およびアドレスのような連絡情報」だけでなく,「物体のアフター・サービスを要求すること,物体に関する追加の機能を購入すること,追加の物体を購入すること,物体を予約購入すること(雑誌の場合),物体の動作または機能,または物体の保証範囲,物体の製造業者または納入業者に関連するWebサイト,物体に関連するサービスのステータス(例えば,物体が,Federal Express(商標)またはUnited Parcel Service(商標)からの配送伝票であり,ステータスは,伝票に関連する配送のステータスである),物体の出所などに関してさらなる情報を獲得するために要求側に用意された動作上のオプションも含むことが可能な応答」も例示されているが,これらは「物体上に印刷されたコード,電話番号,またはその他の識別子,あるいは無線周波数識別子無線タグ,つまりRFID無線タグ」にどのような追跡規則やポリシーが適用されてどのようにして生成されたものなのか不明である。
(エ)また,「製造業者,小売業者,またはサービス・プロバイダの電話番号およびアドレスのような連絡情報,物体のアフター・サービスを要求すること,物体に関する追加の機能を購入すること,追加の物体を購入すること,物体を予約購入すること(雑誌の場合),物体の動作または機能,または物体の保証範囲,物体の製造業者または納入業者に関連するWebサイト,物体に関連するサービスのステータス,物体の出所などに関してさらなる情報を獲得するために要求側に用意された動作上のオプションも含むことが可能な応答」は,無線デバイスがスキャンして取得した情報(タグ)を手掛かりとして,或いは当該情報(タグ)を他の名前空間にマッピングした得たポインタを手掛かりとして,サーバに蓄積された情報にアクセスして得られるものと解されるから,手掛かりとなる当該情報(タグ)は第1,2の実施例におけるクエリに近い概念であると考えられる。そして,上記「サーバに蓄積された情報」は,上記応答の内容からみて,存在サーバにおいて無線デバイスがスキャンして取得した情報(タグ)に追跡規則やポリシーが適用して生成したものではなく,別途予め生成され蓄積された情報と解する方が自然である。
(オ)ところで,第1,2の実施例のエージェント報告の通信デバイス(または対応する報告を提供するエージェント)に関連する固有エージェント識別子は,当該通信デバイスそのもの(すなわち,特定物。)に関する情報であり,特定の個人に対応するものであるから,当該特定の個人の「存在」(「ある,または,いること。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版])に関する存在情報,応答可能性情報となり得るものである。
一方,無生物の物体上に印刷されたコードが統一商品コード(UPC)や国際標準図書番号コード(ISBN)である場合,同じ商品・雑誌には同じコードが付されているから,「無生物の物体の表面上に位置づけられた第1の名前空間内のアドレス及び識別子のうちの少なくとも1つ」は,無線デバイスがスキャンした無生物そのもの(すなわち,特定物。)の「存在」に関するものではなく,無線デバイスがスキャンした無生物と同種の物すべてに関する共通情報である。これは,「無生物の物体の表面上に位置づけられた第1の名前空間内のアドレス及び識別子のうちの少なくとも1つ」が,部品番号,MACアドレス,IPアドレス,シリアル番号,IPアドレス,セッション開始プロトコル・アドレス,電子メール・アドレス,Webアドレス,URI,URL,E.164番号,および電話番号等であっても,同じである。
そして,無線デバイスがスキャンした統一商品コード(UPC)や国際標準図書番号コード(ISBN)を存在サーバに報告したところで,無線デバイスがスキャンした無生物そのもの(すなわち,特定物。)の「存在」についての情報を他の通信デバイスの要求に対して提供し得るものではない。
(カ)ここで,仮に,第3の実施例においても,コンテキスト検知エージェント,追跡エージェント,ポリシー・エージェントの役割,動作が第1,2の実施例と同じであれば,本願発明の通信デバイスはコンテキスト検知エージェントを備え,当該コンテキスト検知エージェントは選択された時間間隔であるいは所定のイベントが生じた際に,通信デバイス(または対応する報告を提供するエージェント)に関連する固有エージェント識別子を含むエージェント報告を存在サーバに提供し,存在サーバは当該「通信デバイス(または対応する報告を提供するエージェント)に関連する固有エージェント識別子」に追跡規則・ポリシーを適用して,応答可能性インテリジェンスを生成することになる。
しかしながら,エージェント報告に含まれる「通信デバイス(または対応する報告を提供するエージェント)に関連する固有エージェント識別子」は,無生物の物体に関するものではないから,当該識別子を処理したところで,無性物の物体に関する情報である応答可能性インテリジェンスを生成し得るとは認められない。
上記(ア)~(カ)のとおりであるから,第3の実施例におけるコンテキスト検知エージェント,追跡エージェント,ポリシー・エージェントの役割,動作は自明ではなく,第1,2の実施例と第3の実施例とで変わりないとはいえない。そして,第3の実施例において通信デバイスが存在サーバに存在情報を提供すること,存在情報に追跡規則やポリシーを適用して無生物の物体に関する情報である応答可能性インテリジェンスを生成することは読み取れない。
エ 上述のとおり,無生物の物体に提示された第1の名前空間に属するアドレスまたは識別子は,無生物の物体に関する情報を収集する手掛かりとはなるもののの,無生物の物体に関する情報を構成するものではないから,そこには「存在」(「ある,または,いること。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版])なる概念は見出せない。このため,「組み込まれた存在情報」なる概念が依然として意味不明である。
オ 個人の存在-応答可能性システムでは,通信デバイスが無生物の物体に提示された第1の名前空間に属するアドレスまたは識別子を取得し,それを第2の名前空間にマッピングして存在サーバへのポインタを取得(識別)し,その存在サーバにアクセスして所望の(加工された)存在情報を取得するという,本願発明が要件とする第2の名前空間へのマッピングの構成は存在せず,その必要性も全くないから,この点においても,両者に共通性はないというべきである。
カ 以上のとおり,請求人の主張は,本願明細書の記載に基づくものではなく,当を得ないものであるから,採用できない。そして,少なくとも当審拒絶理由の理由1(1)~(3),(7)は,平成28年9月16日付けの手続補正及び同日付け意見書の主張によっても,何ら解消されていない。
(2)特許法第36条第6項第1号,第2号について
ア 上記(1)のとおりであり,請求項1の各動作,請求項6の各手段は,発明の詳細な説明及び図面に記載されておらず,第1,2の実施例として開示されたコンテキスト検知エージェント,クエリエージェント,ポリシー・エージェント,追跡エージェント等とも対応していない。
したがって,請求項1,6及びこれらの請求項を引用する各請求項に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されたものでない。
イ 請求項1,6は,それぞれ「前記通信デバイスが,該識別された前記連絡アドレスに対する連絡を開始し,該連絡は前記存在サーバに存在情報を提供し,」,「前記通信デバイスが,該識別された前記連絡アドレスに対する連絡を開始する手段と,を含み,前記連絡は,前記存在サーバに存在情報を提供し」なる構成を有する発明である。
しかしながら,第3の実施例に関する【0019】~【0021】,【0027】,【0083】~【0088】には,通信デバイスが存在サーバに存在情報を提供することは記載も示唆もされおらず,上記(1)ウのとおり,自明でもない。
したがって,請求項1,6及びこれらの請求項を引用する各請求項に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されたものでない。
このため,請求項1,6に係る発明における「連絡」により「存在サーバ」に提供される「存在情報」も不明確であるから,請求項1,6及びこれらの請求項を引用する各請求項に係る発明は不明確である。
ウ 以上のとおり,少なくとも当審拒絶理由の理由2(2),(3)は,平成28年9月16日付けの手続補正及び同日付け意見書の主張によっても,何ら解消されていない。
第5 むすび
以上のとおり,本件出願は,発明の詳細な説明の記載及び特許請求の範囲の記載に不備があり,特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号並びに第2号に規定する要件を満たしていないから,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
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2014-000517