特許拒絶査定不服審判
2021-017493
コンタクトセンター通信セッションルーティング動作の実施
- 審判番号
- 2021-017493
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-178861
- 請求日
- 2021年12月17日
- 審決日
- 2023年03月30日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アバイア インコーポレーテッド
- 【請求人代理人】岡部 讓
- 【請求人代理人】吉澤 弘司
- 【請求人代理人】三村 治彦
- 【請求人代理人】岡部 洋
- 審判長/審判官
- 審判長 角田 慎治
- 審判官 山中 実
- 審判官 土居 仁士
- 分類
- P18 .121-WZ (H04M) / P18 .113-WZ (H04M) / P18 .537-WZ (H04M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-178861「コンタクトセンター通信セッションルーティング動作の実施」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月30日出願公開、特開2020- 68523〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)9月30日(パリ条約による優先権主張 2018年10月24日(以下「優先日」という。)米国)の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和2年11月26日付け:拒絶理由通知書
令和3年 3月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 8月 6日付け:拒絶査定(原査定)
令和3年12月17日 :審判請求書の提出
令和4年 9月29日付け:拒絶理由通知書
令和5年 1月 4日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1-10に係る発明は、令和5年1月4日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。なお、説明の便宜のため、本願発明を<a>-<f>の記号を付して分説した。
「【請求項1】
<a> マイクロプロセッサと、
<b> 前記マイクロプロセッサと結合されたコンピューター可読記憶媒体であって、
<c> コンタクトセンターネットワークにおける通信セッションの1つ以上のルーティング特性及び/又はエージェントセッション特性をリアルタイムで特定することと、
<d> 前記通信セッションの前記特定された1つ以上のルーティング特性を、1つ以上の既定のルーティング特性と比較することにより、及び/又は前記特定された1つ以上のエージェントセッション特性を、1つ以上の既定のエージェントセッション特性と比較することにより、前記コンタクトセンターネットワークにおける望ましい及び/又は望ましくない通信セッション動作を特定することと、
<e> 前記コンタクトセンターネットワークにおける前記望ましい及び/又は望ましくない通信セッション動作を特定したことに応答して、前記コンタクトセンターネットワークにおける前記通信セッションのルーティングを変更すること、及び/又はエージェントセッションの制御を変更することと、
<f>を行うように前記マイクロプロセッサをプログラミングするマイクロプロセッサ可読実行可能命令を含む、コンピューター可読記憶媒体と、
を備える、システム。」
第3 当審による拒絶の理由の概要
令和4年9月29日付けで当審において通知した拒絶理由のうち、請求項1に係る発明についての理由3の概略は、次のとおりのものである。
理由3(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
引用文献1:米国特許出願公開第2006/0062373号明細書
第4 引用文献、引用発明
1 引用文献1、引用発明
当審の拒絶の理由で引用した、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1(米国特許出願公開第2006/0062373号明細書:2006年3月23日公開)には、以下の記載がある。なお、下線は強調のため当審にて付与した。
「[0001] The present invention is related to the field of call center systems.」(第1ページ左欄4行目~5行目)
(当審訳:[0001]本発明は、コールセンターシステムの分野に関する。)
「[0019] FIG. 1 shows a configuration for call center services as known in the art. An IP-based or packet-based call center 10 includes a call center controller 12 (which is essentially a so-called “automatic call distributor” or ACD) and a packet telephony switch shown as an Internet Protocol (IP) telephony switch 14.The call center 10 is configured to route incoming customer calls (originating from a customer circuit phone 15) to “remote” agents 16, in particular to an agent 16 that employs a circuit telephone 18 coupled to the public switched telephone network (PSTN) 20.The agent also has a terminal 22 coupled to the call center controller 12 via a virtual private network (VPN) 24. Such an agent 16 may be located at his/her home, for example, rather than at the same facility as the call center 10. This arrangement thus enables agents to “telecommute”,with the telephone connection being made via the PSTN 20 and a gateway 28, and the agent's “computer telephony interface” (CTI) connection being made via the VPN 24. The call center 10 also includes an IP bridging server 30 having connections to the IP telephony switch 14 and the gateway 28.」(第2頁左欄40~59行)
(当審訳:[0019]図1は、当技術分野で知られているように、コールセンターサービスのための構成を示している。IPまたはパケットベースのコールセンター10は、コールセンター制御部12(本質的にいわゆる自動呼分配器またはACD)及びインターネットプロトコル(IP)電話スイッチ14として示されたパケット電話スイッチを備えている。コールセンター10は、顧客の着信呼(顧客回線電話機15からの発呼)をリモートエージェント16、特に網(PSTN)20に接続された回線電話機18を使用するエージェント16へルーティングし、エージェントは、またバーチャルプライベートネットワーク(VPN)24を介してコールセンター制御部12に接続された端末22を有している。このようなエージェント16はコールセンター10と同じ施設内に配置されるよりも、例えば、自宅に置かれるかもしれない。したがって、この構成は、公衆回線網20およびゲートウェイ28を介して行われる電話接続、VPN(24)を介してエージェントの”コンピューター電話インターフェース“(CTI)接続を介して、エージェント達に”テレコミュート”を可能にする。コールセンター10は、また、IP電話スイッチ14及びゲートウェイ28への接続されたIPブリッジサーバ30を備える。)
「[0024]The IP bridging server 30 further includes one or more software processes that collectively implement a real-time protocol (RTP) packet switch 40. During operation,“connections”are established between respective pairs of the IP phones 38. These connections take the form of packet transfers by the RTP packet switch 40. That is, when a connection between two IP phones 38 has been established, the RTP packet switch 40 is responsible for forwarding RTP packets received at one of the IP phones 38 of the pair to the other IP phone 38 of the pair, and vice-versa. Thus, the RTP packet switch 40 can also be thought of as a packet relay mechanism.」(第2頁右欄58行~第3頁左欄7行)
(当審訳:「[0024]IPブリッジサーバ30はさらに、リアルタイムプロトコル(RTP)パケットスイッチ40を集合的に実施する1つ以上のソフトウェア・プロセスを含む。動作時において、「接続」は、IP電話機38のそれぞれの対の間で確立される。これらの接続は、RTPパケットスイッチ40によるパケット転送の形態をとる。すなわち、2台のIP電話機38との間の接続が確立されたとき、RTPパケットスイッチ40は、2台のうちの一つのIP電話機38で受信されたRTPパケットを2台のうちの別のIP電話機38に転送すること、及びその逆方向の転送を担う。このように、RTPパケットスイッチ40は、パケットリレー機構として考えることができる。」)
「[0034] FIG.5 shows a process by which the bridging server 30 determines whether the remote agent 16 is actually present, for the purposes of re-routing a customer call if necessary.The presence detection is based on determining whether the agent starts to speak to the customer within a predetermined time period, such as 3-6 seconds for example.」(第3頁右欄26~31行)
(当審訳:[0034]図5は、ブリッジサーバ30が、必要に応じて顧客の呼を再ルーティングするために、リモートエージェント16が実際に存在するか否かを決定するプロセスを示している。存在の検出は、例えば3―6秒などの所定の期間内にエージェントが顧客との会話を開始するか否かに基づいて行われる。)
「[0035] At step 58, the bridging server 30 connects the call, as is described above with reference to FIGS.3 and 4. The bridging server 30 can optionally provide a notification to the agent 16 that he/she is receiving a new customer call.This notification may take the form, for example, of a pre-recorded message or a tone played out to the agent's phone 18. The notification may also include information identifying the customer to the agent, which may have been obtained, for example, from records within the call center 10 based on the telephone number of the calling party.」(第3頁ページ右欄32~41行)
(当審訳:[0035]図3、図4に記載されているように、ステップ58で、ブリッジサーバ30は、呼を接続する。ブリッジサーバ30は、必要に応じて新たな顧客の呼を受信しているということをエージェント16に通知することができる。この通知は、たとえば、予め録音されたメッセージ又はエージェントの電話機18に対して再生されるトーンの形をとることができる。また、通知は、顧客をエージェントに識別させる情報、例えば、発呼者の電話番号に基づいて、コールセンター10内のレコードから得られたものを含んでもよい。)
「[0036] At step 60, the bridging server 30 monitors the RTP stream from the remote agent 16 for the presence of energy indicating that the agent is speaking.In general, this process involves calculating the energy of the media carried in the RTP packets over an appropriate interval and comparing the calculated value with a predetermined threshold.An appropriate interval is likely in the range of 3-6 seconds, and may be configurable.If the line is normally silent in the absence of speech from the agent, then the threshold will be a relatively low value. In some cases, so-called “comfort noise” may have been injected into the line for the customer's benefit, and if so the calculation may involve a relatively higher threshold based on the level of the comfort noise. That is, the total energy being calculated is that of the comfort noise plus any agent speech, and this level would have to be higher than the average comfort noise level to indicate that speech is also present. The voice detection algorithm also looks for signals with tonality properties which separate voice from tones (such as DTMF or other signaling tones).」(第3頁右欄42~61行)
(当審訳:[0036]ステップ60で、ブリッジサーバ30は、リモートエージェント16からのRTPストリームを監視して、そのエージェントが話していることを示すエネルギーの存在を確認する。一般に、このプロセスでは、適切な間隔でRTPパケットで搬送されるメディアのエネルギーを計算し、計算値を所定の閾値と比較する。適切な間隔は、3-6秒の範囲でありうるが、設定可能であることが望ましい。エージェントからの発話がない場合、回線は通常無音であるため、閾値は比較的低い値となる。場合によっては、いわゆる「快適なノイズ」が顧客の利益のために回線に注入されている可能性があり、その場合、計算には、快適なノイズのレベルに基づいて比較的高い閾値が含まれることがある。つまり、計算される総エネルギーは、快適なノイズとエージェント音声の合計であり、音声も存在することを示すには、このレベルが平均的な快適なノイズレベルより高くなければならない。音声検出アルゴリズムは、音声をトーン(DTMFや他の信号音など)から分離する階調特性を持つ信号も探す。
「[0037] If the monitoring of step 60 indicates that speech is present, then the process proceeds to step 62. The monitoring function within the bridging server 30 drops out of the call.If it is desired at the system level, the successful detection of agent speech may be logged or otherwise reported to a supervisory function within the call center 10.」(第3頁右欄62~第4頁左欄4行)
(当審訳:[0037]ステップ60の監視は、音声が存在することを示す場合、プロセスはステップ62に進む。ブリッジサーバ30内の監視機能は、呼からドロップアウトする。システムレベルにおいて所望される場合、エージェントの音声の検出の成功が記録されるか、またはコールセンター10内の監視機能に報告することができる。)
「[0038] If the monitoring of step 60 indicates that speech is not present, it is inferred that the agent is either not present or for some other reason is not responding to the customer. The process proceeds to step 64, at which the call is removed from the agent back to a queue for waiting calls within the call center 10.The call center controller 12 takes these actions upon receiving a signal from the bridging server 30 that this“agent not present”event has occurred.」(第4頁左欄5~12行)
(当審訳:[0038]ステップ60の監視が、音声が存在しないことを示す場合、それは、エージェントが存在しないか、または何らかの理由で顧客に応答していないためと推察される。プロセスは、ステップ64に進み、そこで呼をエージェントコールセンター10内の待機呼のためのキューへ戻す。コールセンター制御部12はかかるブリッジサーバ30からの信号を受信し、このエージェントは存在しないという事象が発生したこととする。)
「[0039] At step 66, a script is executed that may be the same as that executed in a“ring no answer”scenario.Among other possible call-specific actions, the script can play a message to the customer indicating that there is a connection problem and that they will be handled by the next available agent, and can raise the priority of this customer call on the queue so that the customer receives the next available agent.」(第4頁左欄13~20行)
(当審訳:[0039]ステップ66では、「鳴らしたが電話に応答しない」というシナリオで実行されるものと同じであり得るスクリプトが実行される。他の可能な呼固有の動作の中で、スクリプトは、接続問題があり、次に利用可能なエージェントによって処理されることを示すメッセージを顧客に流すことができ、顧客が次に利用可能なエージェントを受け取るようにキュー上のこの顧客呼の優先度を上げることができる。)
「[0040] At step 68, various follow-up actions can be taken. The agent is marked NOT READY so that no further calls are routed to him/her.This results in a CTI message to the agent indicating that a call was removed from him/her due to lack of speaking. Also,the agent is forced to manually become READY again via the CTI.」(第4頁左欄21~26行)
(当審訳:[0040]ステップ68で、様々な追従動作を行うことができる。エージェントは「NOT READY」とマークされ、これ以上、さらに発呼者からの呼を、該エージェントに送らないようにされる。この結果、エージェントが話さないので、呼をその電話から除去したことを示すCTIメッセージが示され、また、エージェントは、強制的に手動で、CTIを介して再び「READY」とされる。)
「Fig.1
[図:0001400978000001.jpg]
」
「Fig.5
[図:0001400978000002.jpg]
」
2 引用発明
上記1に示した事項と図面より、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。なお、説明の便宜のため、引用発明をA-Oの記号を付して分説した。
(引用発明)
「A IPまたはパケットベースのコールセンター10は、コールセンター制御部12(いわゆる自動呼分配器)及びインターネットプロトコル(IP)電話スイッチ14として示されたパケット電話スイッチを備え、([0019]、Fig.1)
B コールセンター10は、顧客の着信呼(顧客回線電話機15からの発呼)をリモートエージェント16、特に網(PSTN)20に接続された回線電話機18を使用するエージェント16へルーティングし、([0019]、Fig.1)
C エージェントは、またバーチャルプライベートネットワーク(VPN)24を介してコールセンター制御部12に接続された端末22を有し、([0019]、Fig.1)
D コールセンター10は、IP電話スイッチ14及びゲートウェイ28への接続を有するIPブリッジサーバ30を備え、([0019]、Fig.1)
E ブリッジサーバ30は、必要に応じて顧客の呼を再ルーティングするために、リモートエージェント16が実際に存在するか否かを決定し、存在の検出は、例えば3-6秒などの所定の期間内にエージェントが顧客との会話を開始するか否かに基づいて行われ、([0034]、Fig.5)
F ブリッジサーバ30は、呼を接続し、必要に応じて新たな顧客の呼を受信しているということをエージェント16に通知し、この通知は、予め録音されたメッセージ又はエージェントの電話機18に対して再生されるトーンの形をとることができ、([0035])
G ブリッジサーバ30は、リモートエージェント16からのリアルタイムプロトコル(RTP)ストリームを監視して、そのエージェントが話していることを示すエネルギーの存在を確認し、一般に、このプロセスでは、適切な間隔でRTPパケットで搬送されるメディアのエネルギーを計算し、計算値を所定の閾値と比較し、([0036]、[0024])
H 適切な間隔は、3-6秒の範囲でありうるが、設定可能であることが望ましく、エージェントからの発話がない場合、回線は通常無音であるため、閾値は比較的低い値となり、([0036])
I 音声が存在することを示す場合、ブリッジサーバ30内の監視機能は、呼からドロップアウトし、システムレベルにおいて所望される場合、エージェントの音声の検出の成功が記録され、([0037])
J またはコールセンター10内の監視機能に報告することができ、([0037])
K 監視が、音声が存在しないことを示す場合、それは、エージェントが存在しないか、または何らかの理由で顧客に応答していないためと推察され、([0038])
L 呼をエージェントコールセンター10内の待機呼のためのキューへ戻し、コールセンター制御部12はかかるブリッジサーバ30からの信号を受信し、このエージェントは存在しないという事象が発生したこととし、([0038])
M 「鳴らしたが電話に応答しない」というシナリオで実行されるものと同じであり得るスクリプトが実行され、他の可能な呼固有の動作の中で、スクリプトは、接続問題があり、次に利用可能なエージェントによって処理されることを示すメッセージを顧客に流すことができ、顧客が次に利用可能なエージェントを受け取るようにキュー上のこの顧客呼の優先度を上げることができ、([0039])
N 様々な追従動作を行うことができ、エージェントは「NOT READY」とマークされ、これ以上、さらに発呼者からの呼を、該エージェントに送らないようにされ、この結果、エージェントが話さないので、呼をその電話から除去したことを示すコンピューター電話インターフェース(CTI)メッセージが示され、また、エージェントは、強制的に手動で、CTIを介して再び「READY」とされる、([0040]、[0019])
O システム。」
第5 対比・判断
1 対比
分説ごとに本願発明と引用発明とを対比する。
(1)「<a> マイクロプロセッサ」について
引用発明の「コールセンター10」の「コールセンター制御部12」は、演算処理を行うプロセッサから構成されることは自明であるから、本願発明の「マイクロプロセッサ」に相当する。
(2)<b> 前記マイクロプロセッサと結合されたコンピューター可読記憶媒体であって、」について
引用発明では、「コールセンター制御部12」と結合された「コンピューター可読記憶媒体」に関する構成は特定されていない。
(3)<c>「コンタクトセンターネットワークにおける通信セッションの1つ以上のルーティング特性及び/又はエージェントセッション特性をリアルタイムで特定すること」について、
ア「コンタクトセンターネットワーク」について
本願の明細書の段落【0016】には以下の記載がある。
「【0016】
コンタクトセンターネットワーク111は、通常、コンタクトセンター120に関連付けられたネットワークである。」
そうすると、本願発明の「コンタクトセンターネットワーク」は、「コンタクトセンター」に関連付けられた「ネットワーク」であるといえる。
一方、引用発明の「電話機18」と「端末22」、「コールセンター10」、「バーチャルプライベートネットワーク(VPN)24」及び「公衆交換電話網(PSTN)20」(分説B、分説C)からなる構成は、顧客回線電話機15からの呼をエージェントに接続するものであるから、本願明細書における前記「コンタクトセンター120」に相当するものであるといえ(本願明細書の段落【0013】、図1参照)、よって、本願発明の「コンタクトセンター」に相当するといえる。
したがって、引用発明の上記「電話機18」と「端末22」、「コールセンター10」、「バーチャルプライベートネットワーク(VPN)24」及び「公衆交換電話網(PSTN)20」からなる構成の内、ネットワークである「バーチャルプライベートネットワーク(VPN)」と「公衆交換電話網(PSTN)20」を合わせたものは、本願発明の「コンタクトセンターネットワーク」に相当するといえる。
イ「エージェントセッション特性をリアルタイムで特定すること」について
引用発明の「エージェントからの発話がない」(分説H)、あるいは「音声が存在しない」(分説K)という「エージェント」の状態は、引用発明において、「ブリッジサーバ30」が「必要に応じて顧客の呼を再ルーティングするために、リモートエージェント16が実際に存在するか否かを決定」(分説E)する際の、すなわち、呼のルーティングの際の「エージェント」の状態を意味することから、本願発明の「エージェントセッション特性」に相当する。
そして、引用発明では、「ブリッジサーバ30」が「適切な間隔でRTPパケットで搬送されるメディアのエネルギーを計算し、計算値を所定の閾値と比較」することで、「リモートエージェント16からのリアルタイムプロトコル(RTP)ストリームを監視して、そのエージェントが話していることを示すエネルギーの存在を確認し」(分説G)、その結果「エージェントからの発話がない」(分説H)、あるいは「音声が存在しない」(分説K)ことを監視の結果として取得するものであるから、引用発明の当該「エージェントからの発話がない」あるいは「音声が存在しない」というような「エージェント」の状態を、「リモートエージェント16からのリアルタイムプロトコル(RTP)ストリームを監視して」取得することは、本願発明の「エージェントセッション特性をリアルタイムで特定すること」に相当する。
ウ 以上ア及びイのことから、引用発明の顧客回線電話機15からの呼をエージェントに接続するネットワークである「バーチャルプライベートネットワーク(VPN)」と「公衆交換電話網(PSTN)20」において、「エージェントからの発話がない」あるいは「音声が存在しない」というような「エージェント」の状態を、「リモートエージェント16からのリアルタイムプロトコル(RTP)ストリームを監視して」取得することは、本願発明の「コンタクトセンターネットワークにおける通信セッションの1つ以上のルーティング特性及び/又はエージェントセッション特性をリアルタイムで特定すること」に含まれる。
(4)<d>「前記通信セッションの前記特定された1つ以上のルーティング特性を、1つ以上の既定のルーティング特性と比較することにより、及び/又は前記特定された1つ以上のエージェントセッション特性を、1つ以上の既定のエージェントセッション特性と比較することにより、前記コンタクトセンターネットワークにおける望ましい及び/又は望ましくない通信セッション動作を特定すること」について
ア 「前記特定された1つ以上のエージェントセッション特性を、1つ以上の規定のエージェントセッション特性と比較すること」について
前記(3)イで示したように、引用発明では、「ブリッジサーバ30」が「適切な間隔でRTPパケットで搬送されるメディアのエネルギーを計算し、計算値を所定の閾値と比較」することで、「リモートエージェント16からのリアルタイムプロトコル(RTP)ストリームを監視して、そのエージェントが話していることを示すエネルギーの存在を確認し」(分説G)ている。そして、その結果、「エージェントからの発話がない場合」(分説H)、あるいは「音声が存在しないことを示す場合」は、「エージェントが存在しないか、または何らかの理由で顧客に応答していない」ことを推察(分説K)するものであるから、引用発明の「ブリッジサーバ30」は、前記「メディアのエネルギー」の「計算値」についての「比較」の対象である「閾値」に満たない場合の「エージェント」の状態を、「エージェントが存在しないか、または何らかの理由で顧客に応答していない」という推察結果として予め定めているものといえる。
よって、引用発明において、前記推察結果として予め定めている「エージェントが存在しないか、または何らかの理由で顧客に応答していない」という「エージェント」の状態は、本願発明の「1つ以上の規定のエージェントセッション特性」に含まれる。
したがって、引用発明において、「エージェントからの発話がない」あるいは「音声が存在しない」というような「エージェント」の状態を、「エージェントが存在しないか、または何らかの理由で顧客に応答していない」という推察結果となるように、「適切な間隔でRTPパケットで搬送されるメディアのエネルギーを計算し、計算値を所定の閾値と比較」することは、前記(3)イを踏まえると、本願発明の「前記特定された1つ以上のエージェントセッション特性を、1つ以上の規定のエージェントセッション特性と比較すること」に含まれるといえる。
イ 「前記コンタクトセンターネットワークにおける望ましい及び/又は望ましくない通信セッション動作を特定すること」について
引用発明の「呼固有の動作」として「接続問題があ」る(分説M)ことは、本願発明の「望ましくない通信セッション動作」に相当する。
そして、引用発明の「ブリッジサーバ30」において、顧客回線電話機15からの呼をエージェントに接続する際、すなわち、呼のルーティングの際、「エージェントが存在しないか、または何らかの理由で顧客に応答していない」(分説K)と推察することは、「鳴らしたが電話に応答しない」(分説M)ことと同じく、「接続問題があ」る(分説M)ものとして認識するといえるから、本願発明の「前記コンタクトセンターネットワークにおける」「望ましくない通信セッション動作を特定すること」に相当する。
ウ 以上ア及びイのことから、本願発明の「及び/又は」で表現された択一的な表現を考慮に入れると、本願発明と引用発明とは、「前記通信セッションの前記特定された1つ以上のルーティング特性を、1つ以上の既定のルーティング特性と比較することにより、及び/又は前記特定された1つ以上のエージェントセッション特性を、1つ以上の既定のエージェントセッション特性と比較することにより、前記コンタクトセンターネットワークにおける望ましい及び/又は望ましくない通信セッション動作を特定すること」を行う点で一致する。
(5)<e>「前記コンタクトセンターネットワークにおける前記望ましい及び/又は望ましくない通信セッション動作を特定したことに応答して、前記コンタクトセンターネットワークにおける前記通信セッションのルーティングを変更すること、及び/又はエージェントセッションの制御を変更すること」について
ア 「望ましくない通信セッション動作を特定したことに応答して、前記コンタクトセンターネットワークにおける前記通信セッションのルーティングを変更すること」について
引用発明の「ブリッジサーバ30」において、顧客回線電話機15からの呼をエージェントに接続する際、すなわち、呼のルーティングの際、「リモートエージェント16が存在しないか、または何らかの理由で顧客に応答していない」(分説K)と推察すると、次の動作として、「呼出しをエージェントコールセンター10内の待機呼のためのキューへ戻し」(分説L)、さらに、「スクリプトが実行され」(分説M)、「スクリプトは」「次に利用可能なエージェントによって処理されることを示すメッセージを顧客に流すことができ、顧客が次に利用可能なリモートエージェント16を受け取るようにキュー上のこの顧客呼の優先度を上げる」(分説M)ことから、引用発明の当該「スクリプト」の実行による動作は、本願発明の「前記望ましくない通信セッション動作を特定したことに応答して、前記コンタクトセンターネットワークにおける前記通信セッションのルーティングを変更すること」に相当する。
イ 「エージェントセッションの制御を変更すること」について
引用発明の「エージェント」が「「NOT READY」とマークされること」(分説N)は、「エージェント」の状態を変更し、マークされた以後においては、「これ以上、さらに発呼者からの呼を、該エージェントに送らないようにされ」(分説N)るものである。したがって、引用発明の「エージェント」が「「NOT READY」とマークされること」は、本願発明の「エージェントセッションの制御を変更すること」に相当する。
ウ 以上ア及びイのことから、本願発明の「及び/又は」で表現された択一的な表現を考慮に入れると、本願発明と引用発明は、「前記コンタクトセンターネットワークにおける前記望ましい及び/又は望ましくない通信セッション動作を特定したことに応答して、前記コンタクトセンターネットワークにおける前記通信セッションのルーティングを変更すること、及び/又はエージェントセッションの制御を変更すること」を行う点で一致する。
(6)<a>「マイクロプロセッサと、」及び<f>「(上記<c>~<e>)を行うように前記マイクロプロセッサをプログラミングするマイクロプロセッサ可読実行可能命令を含む、コンピューター可読記憶媒体」と、「を備える、システム。」について
ア 本願発明の「マイクロプロセッサ」は、本願の分説<c>~<e>を行うものであるところ、引用発明の「コールセンター制御部12」は、前記(1)、(3)~(5)の検討を踏まえると、本願発明の、<c>~<e>を行う「マイクロプロセッサ」に相当するといえる。
イ 前記(1)~(5)及び前記アを踏まえると、引用発明の「コールセンター制御部12」を備える「システム」(分説O)と本願発明の「前記マイクロプロセッサをプログラミングするマイクロプロセッサ可読実行可能命令を含む、コンピューター可読記憶媒体と、を備える、システム」とは、「前記マイクロプロセッサがプログラミングされているシステム」である点で共通する。
以上のことから、本願発明と引用発明とを対比すると、以下の点で一致し、相違する。
(一致点)
「<a> マイクロプロセッサであって、
<c> コンタクトセンターネットワークにおける通信セッションの1つ以上のルーティング特性及び/又はエージェントセッション特性をリアルタイムで特定することと、
<d> 前記通信セッションの前記特定された1つ以上のルーティング特性を、1つ以上の既定のルーティング特性と比較することにより、及び/又は前記特定された1つ以上のエージェントセッション特性を、1つ以上の既定のエージェントセッション特性と比較することにより、前記コンタクトセンターネットワークにおける望ましい及び/又は望ましくない通信セッション動作を特定することと、
<e> 前記コンタクトセンターネットワークにおける前記望ましい及び/又は望ましくない通信セッション動作を特定したことに応答して、前記コンタクトセンターネットワークにおける前記通信セッションのルーティングを変更すること、及び/又はエージェントセッションの制御を変更することと、
<f>を行うように前記マイクロプロセッサがプログラミングされている
システム。」
(相違点)
「マイクロプロセッサがプログラミングされているシステム」について、本願発明では、「前記マイクロプロセッサと結合された」、「前記マイクロプロセッサをプログラミングするマイクロプロセッサ可読実行可能命令を含む、コンピューター可読記憶媒体」を備えるのに対して、引用発明では、「コールセンター制御部12」と接続された、「コールセンター制御部12」を「プログラミングする」「可読実行可能命令を含む、コンピューター可読記憶媒体」を備えることは特定されていない点。
2 判断
上記相違点について判断する。
一般に、何らかの処理を行うマイクロプロセッサの技術分野において、「マイクロプロセッサをプログラミングするマイクロプロセッサ可読実行可能指令を含む、コンピューター可読記憶媒体をマイクロプロセッサとともに備える」ことは、引用文献を挙げるまでもなく、本願優先日前に周知技術であるから、引用発明の「コールセンター10」の「コールセンター制御部12」が、所定の制御を行うために、周知技術を適用し、「コールセンター制御部12」を「プログラミングする可読実行可能命令を含む、コンピューター可読記憶媒体」とを備えるように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。
第6 審判請求人の主張について
令和5年1月4日に提出された意見書における請求人の主張は、おおむね以下のとおりである。
「本願発明は、そのような比較が望まれる行動または望まれない行動(例えば、本願の図2のステップ206を参照すると、呼びの転送が少ない場合に望まれる行動となる)を特定するかどうかを判断し続けます。そのような行動が特定されない場合、本願発明は適用されません。特定された場合、その特性が利用されます。換言すれば、本願では、望まれる行動が特定され、それに応じてルーティングが変更されます。引用文献1にはこれらの特徴がありません。したがって、本願発明は引用文献1に基づき特許法第29条第2項によって拒絶されるべきものではない。」
しかしながら、本願発明は、「通信セッション動作」について「望ましい及び/又は望ましくない」との択一的な表現で記載されるのみであるから、少なくとも「望ましくない通信セッション動作」であれば足り、「通信セッション動作」として、請求人が主張する「望まれる行動が特定され、それに応じてルーティングが変更され」ることは、本願発明を特定するための事項とする必要はないものである。したがって、請求人の主張は採用されない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-017493