特許拒絶査定不服審判
2021-013238
柔軟なルーティングのためのシステム及び方法
- 審判番号
- 2021-013238
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-131597
- 請求日
- 2021年10月01日
- 審決日
- 2023年03月14日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アバイア インコーポレーテッド
- 【請求人代理人】岡部 讓
- 【請求人代理人】吉澤 弘司
- 【請求人代理人】三村 治彦
- 【請求人代理人】岡部 洋
- 審判長/審判官
- 審判長 角田 慎治
- 審判官 寺谷 大亮
- 審判官 丸山 高政
- 分類
- P18 .121-WZ (H04M) / P18 .55 -WZ (H04M) / P18 .574-WZ (H04M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-131597「柔軟なルーティングのためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月23日出願公開、特開2020- 14207〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年7月17日(パリ条約による優先権主張2018年7月17日、米国、2018年12月21日、米国)の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである(以下、2018年7月17日を「優先日」という。)。
令和2年 6月 2日付け:拒絶理由通知書
令和2年12月 4日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 5月28日付け:拒絶査定
令和3年10月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和4年 5月20日付け:拒絶理由通知書
令和4年 8月24日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年10月13日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和5年 1月18日 :意見書、手続補正書、誤訳訂正書の提出
第2 本件補正について
1 本件補正の内容
令和5年1月18日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)の前後の特許請求の範囲の請求項8は、それぞれ、以下の(1)及び(2)のとおりである。
(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項8は、以下のとおりである。
「 【請求項8】
第2の通信デバイスとの第1の通信セッションを確立するリクエストを受信するステップであって、前記第1の通信セッションを確立する前記リクエストは前記第1の通信セッションをルーティングするための第1のルーティング属性を備えるものである、ステップと、
前記第1のルーティング属性に基づきデータベースから1以上のルーティング規則をフェッチさせるステップと、
1以上の規則の集合を含む動的ルーティングフレームワークにおいて前記第1のルーティング属性があると判断した場合、前記第1のルーティング属性及び前記動的ルーティングフレームワークにおいて定義される1以上の規則に基づいて第3の通信デバイス又は送信先に前記第1の通信セッションをルーティングするステップと
を備え、
前記第3の通信デバイス又は送信先は前記1以上のルーティング規則に基づき識別される、方法。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項8の記載は、次のとおりである(下線は補正箇所を示し、当審で付した。)。
「 【請求項8】
第2の通信デバイスとの第1の通信セッションを確立するリクエストを受信するステップであって、前記第1の通信セッションを確立する前記リクエストは前記第1の通信セッションをルーティングするための第1のルーティング属性を備えるものである、ステップと、
前記第1のルーティング属性に基づきデータベースから1以上の第1のルーティング規則をフェッチさせるステップと、
1以上の規則の集合を含む動的ルーティングフレームワークにおいて前記第1のルーティング属性があると判断した場合、前記第1のルーティング属性及び前記動的ルーティングフレームワークにおいて含まれる前記1以上の第1のルーティング規則に基づいて第3の通信デバイス又は送信先に前記第1の通信セッションをルーティングするステップと
を備え、
前記第3の通信デバイス又は送信先は前記1以上の第1のルーティング規則に基づき識別される、方法。」
なお、本件補正と同日にされた誤訳訂正書による補正は、明細書及び図面の誤訳の訂正を目的とするものである。
2 補正の適否について
請求項8に係る本件補正は、当審での令和4年10月13日付けの拒絶理由通知(最後)の理由2(明確性)の「1以上のルーティング規則」と動的ルーティングフレームワークにおいて定義される「1以上の規則」との関係が不明確であるとの指摘に対し、両者はともに、動的ルーティングフレームワークに含まれる「1以上の第1のルーティング規則」であることを明確にするためのものと認められる。そのため、請求項8に係る本件補正は、特許法17条の2第5項4号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、請求項8に係る本件補正は、同法17条の2第3項及び第4項の規定に違反するものでない。
その他、本件補正に違法は認められない。
したがって、本件補正は、適法になされたものである。
第3 本願発明
本願の請求項8に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2、1(2)の本件補正後の特許請求の範囲の請求項8の記載のとおりのものと認める。
第4 原査定の拒絶の理由
原査定の請求項8についての拒絶理由のうちの理由2は、次のとおりのものである。
この出願の請求項8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.特開2016-82507号公報
なお、当審での令和4年5月20日付けの拒絶理由通知、及び同年10月13日付けの拒絶理由通知(最後)は、新規性、進歩性等の特許要件についての判断を留保してなされたものである。
第5 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は、強調のために当審で付した。)。
「【0013】
本発明の第4の態様における通信接続方法は、ユーザ端末とIPネットワークを介して接続されるとともに、複数のオペレータ端末とIPネットワークを介して接続されたコンタクトセンタ装置の通信接続方法である。この通信接続方法は、以下のステップ(a)~(c)を備える。
(a)オペレータへの問い合わせ内容を含むメッセージを前記ユーザ端末から受信するステップ、
(b)前記問い合わせ内容に基づき、問い合わせを受け付けるオペレータ端末を前記複数のオペレータ端末の中から選択するステップ、及び
(c)選択したオペレータ端末に前記メッセージを送信することにより、前記ユーザ端末と前記オペレータ端末との間で通信を接続させるステップ。」
「【0023】
[実施の形態2]
実施の形態2では、本発明にかかるコンタクトセンタシステム1の具体的な構成及び通信フローについて、さらに詳細に説明する。実施の形態2にかかるコンタクトセンタシステム1の全体構成は、図1に示した通りである。なお、IPネットワーク3はインターネットであり、IPネットワーク5はイントラネットである。コンタクトセンタ装置4、IPネットワーク5及び複数のオペレータ装置6は、例えば社内ネットワークを形成している。」
「【0024】
図2には、コンタクトセンタ装置4の構成例が示されている。コンタクトセンタ装置4は、メニュー情報提供部41、インタラクション制御部42、オペレータ選定部43を備える。」
「【0029】
次に、ユーザ端末2、コンタクトセンタ装置4及びオペレータ端末7の通信処理について、図3のシーケンス図を参照して説明する。」
「【0033】
ユーザは、ユーザ端末2を用いてメニュー情報に回答することで、問い合わせ内容を入力する(ステップS3)。そして、ユーザがユーザ端末2を操作することで、問い合わせ内容を含むメッセージがインタラクション制御部42に送信される(ステップS4)。例えば、図4において、ユーザが「対話開始」のボタン102を押下する操作を行うと、作成された問い合わせ内容が含まれるSIPメッセージが、コンタクトセンタ装置4のインタラクション制御部42に送信される。このメッセージは、SIPを用いたIP電話の発呼やチャットの発信等において、ユーザ端末2からコンタクトセンタ装置4に初めて送信されるINVITEメッセージである。
【0034】
図5は、ボタン102を押下することでコンタクトセンタ装置4に送信されるSIPメッセージのヘッダ部の一例を示した図である。SIPメッセージのヘッダ部201は、必須ヘッダ部202と独自ヘッダ部203を有する。必須ヘッダ部202は、送信者欄「From」、受信者欄「To」等を有する、メッセージのヘッダが必ず備える情報である。なお、図4において、送信者であるユーザ端末2は「User<SIP:09011112222@192.168.0.1>」のIPアドレスで示されている。また、受信者であるインタラクション制御部42は「<SIP:08033334444@192.168.0.2>」のIPアドレスで示されている。このインタラクション制御部42のIPアドレスは、ステップS2でメニュー情報提供部41から取得したものである。
【0035】
独自ヘッダ部203は、ステップS3で作成された問い合わせ内容が含まれている部分である。図3における問い合わせの商品種別・問い合わせ商品・問い合わせ事項について、ユーザは例えば「テレビ」・「商品A」・「購入」をそれぞれ選択する。その結果、図5における独自ヘッダ部203には、各選択項目を示す「TV」・「product_A」・「buy」が問い合わせ内容として含まれる。
【0036】
ユーザ端末2からメッセージを受信したインタラクション制御部42は、メッセージ中の問い合わせ内容(図5の独自ヘッダ部203の内容)を検出し、その問い合わせ内容を含むオペレータ端末の選定要求をオペレータ選定部43に出力する(ステップS5)。なお、この選定要求には、問い合わせ内容以外のメッセージの内容が一部又は全部含まれていてもよい。
【0037】
オペレータ選定部43は、選定要求中の問い合わせ内容に基づいてオペレータ端末の選定を行う(ステップS6)。例えば、オペレータ選定部43には複数のオペレータ端末7のデータが格納されており、オペレータ選定部43はそのデータと受信した問い合わせ内容とを比較することで、ユーザ端末2と接続される(ユーザの問い合わせを受け付ける)オペレータ端末7を選定する。
【0038】
図6は、オペレータ選定部43に格納されている複数のオペレータ端末7のデータである。ここで、複数のオペレータ端末7はn台設けられており、対応できる問い合わせ内容(対応可能内容)が1番~n番のオペレータ端末毎に設定されている。図6では、1番のオペレータ端末は「テレビ、パソコン・商品A、商品B・購入」の問い合わせ内容に対応可能であり、2番のオペレータ端末は「パソコン、オーディオ・商品A、商品C・故障」の問い合わせ内容に対応可能である。また、n-1番のオペレータ端末は「テレビ、パソコン、オーディオ・商品A、商品B、商品C・購入」の問い合わせ内容に対応可能であり、n番のオペレータ端末は「テレビ、オーディオ・商品A、商品C・故障、その他」の問い合わせ内容に対応可能である。
【0039】
また、図6のデータには、各オペレータ端末が現在応答可能か否かを示す「応答可能フラグ」も格納されている。オペレータ端末において応答可能フラグが「可」である場合にはそのオペレータ端末は現在応答可能であり、応答可能フラグが「不可」である場合にはそのオペレータ端末は現在応答不可である状態を示す。オペレータ選定部43は、オペレータ端末が現在ユーザ端末と接続されている場合に、そのオペレータ端末の応答可能フラグを「不可」に設定する。図5では、1番のオペレータ端末の応答可能フラグは「可」であり、2番のオペレータ端末の応答可能フラグは「可」であり、n-1番のオペレータ端末の応答可能フラグは「不可」であり、n番のオペレータ端末の応答可能フラグは「可」である。
【0040】
オペレータ選定部43は、ユーザ端末2から送信された問い合わせ内容を参照し、その問い合わせ内容が対応可能内容に全て含まれる端末を最初に選択する。ユーザ端末2から送信された問い合わせ内容は「テレビ・商品A・購入」であるため、オペレータ選定部43はその問い合わせ内容が対応可能内容に全て含まれる1番及びn-1番のオペレータ端末を選択する。
【0041】
次に、オペレータ選定部43は、選択されたオペレータ端末のうち応答可能フラグが「可」であるものを選択する。図5では、1番のオペレータ端末の応答可能フラグが「可」であり、n-1番のオペレータ端末の応答可能フラグが「不可」であるため、オペレータ選定部43は1番のオペレータ端末を選択する。この1番のオペレータ端末が、ユーザ端末2と接続されるオペレータ端末(ユーザからの問い合わせを受けるオペレータ端末)に決定される。なお、1番のオペレータ端末以外にも上述の要件を満たしているオペレータ端末がある場合には、オペレータ選定部43は要件を満たしている複数のオペレータ端末の中から1つを選択する。
【0042】
オペレータ選定部43は、以上のようにして選定されたオペレータ端末7の情報(選定結果)をインタラクション制御部42に通知する(ステップS7)。
【0043】
オペレータ選定部43から選定結果を取得したインタラクション制御部42は、その選定結果に基づき、選定されたオペレータ端末7にステップS4で取得したメッセージを送信する(ステップS8)。ここで、インタラクション制御部42は、ステップS4で取得したメッセージにおける受信者情報(図5における必須ヘッダ部202内のToヘッダの情報)を、インタラクション制御部42のIPアドレスから、選定されたオペレータ端末7のIPアドレスに変更する。オペレータ端末7のIPアドレスは、例えばオペレータ選定部43においてオペレータ端末7と関連付けて記憶されている。オペレータ選定部43は、オペレータ端末7を選定した際に、そのオペレータ端末7に関連付けて記憶されているIPアドレスをインタラクション制御部42に送信する。インタラクション制御部42は、メッセージ中のToヘッダの情報を、送信されたIPアドレスに書き換える。このような処理を行って、インタラクション制御部42は選定されたオペレータ端末7にメッセージを送信する。
【0044】
選定されたオペレータ端末7は、インタラクション制御部42からメッセージを受信することで、ユーザ端末2との間で通信の接続がなされる(ステップS9)。具体的には、メッセージを受信したオペレータ端末7は、ユーザ端末2にOKレスポンス(IP電話の場合には呼び出しメッセージ)を送信する。OKレスポンスを受信したユーザ端末2は、ACKメッセージをオペレータ端末7に送信する。このようにしてユーザ端末2とオペレータ端末7とが接続されるため、ユーザ端末2とオペレータ端末7との間でIP電話やチャットを行うことができる。また、オペレータ端末7は、その画面上に、受信したメッセージに含まれる問い合わせ内容を表示させる(ステップS10)。このため、オペレータは、ユーザからの問い合わせ内容を視認しながらユーザと対話を行うことができる。」
「【図1】
[図:0001399843000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001399843000002.jpg]
」
「【図5】
[図:0001399843000003.jpg]
」
「【図6】
[図:0001399843000004.jpg]
」
2 引用発明
前記1によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、引用発明をA~Oに分説した。
「A コンタクトセンタ装置の通信接続方法であって(【0013】)、
B コンタクトセンタ装置4は、メニュー情報提供部41、インタラクション制御部42、オペレータ選定部43を備え(【0024】)、
C ユーザがユーザ端末2を操作することで、問い合わせ内容が含まれるSIPメッセージがインタラクション制御部42に送信され、このメッセージは、SIPを用いたIP電話の発呼やチャットの発信等において、ユーザ端末2からコンタクトセンタ装置4に初めて送信されるINVITEメッセージであり(【0033】)、
D SIPメッセージのヘッダ部201は、必須ヘッダ部202と独自ヘッダ部203を有し、必須ヘッダ部202は、送信者欄「From」、受信者欄「To」等を有し、送信者であるユーザ端末2は「User<SIP:09011112222@192.168.0.1>」のIPアドレスで示され、受信者であるインタラクション制御部42は「<SIP:08033334444@192.168.0.2>」のIPアドレスで示され(【0034】)、
E 独自ヘッダ部203は、問い合わせ内容が含まれ(【0035】)、
F ユーザ端末2からメッセージを受信したインタラクション制御部42は、メッセージ中の問い合わせ内容(独自ヘッダ部203の内容)を検出し、その問い合わせ内容を含むオペレータ端末の選定要求をオペレータ選定部43に出力し(【0036】)、
G オペレータ選定部43は、選定要求中の問い合わせ内容に基づいてオペレータ端末の選定を行い、オペレータ選定部43には複数のオペレータ端末7のデータが格納されており、オペレータ選定部43はそのデータと受信した問い合わせ内容とを比較することで、ユーザ端末2と接続される(ユーザの問い合わせを受け付ける)オペレータ端末7を選定し(【0037】)、
H オペレータ選定部43に格納されている複数のオペレータ端末7のデータは、対応できる問い合わせ内容(対応可能内容)が1番~n番のオペレータ端末毎に設定され(【0038】、図6)、
I 各オペレータ端末が現在応答可能か否かを示す「応答可能フラグ」も格納され(【0039】)、
J オペレータ選定部43は、ユーザ端末2から送信された問い合わせ内容を参照し、その問い合わせ内容が対応可能内容に全て含まれる端末を最初に選択し(【0040】)、
K オペレータ選定部43は、選択されたオペレータ端末のうち応答可能フラグが「可」であるものを選択し(【0041】)、
L オペレータ選定部43は、選定されたオペレータ端末7の情報(選定結果)をインタラクション制御部42に通知し(【0043】)、
M オペレータ選定部43から選定結果を取得したインタラクション制御部42は、その選定結果に基づき、選定されたオペレータ端末7に取得したメッセージを送信し(【0043】)、
N 選定されたオペレータ端末7は、インタラクション制御部42からメッセージを受信することで、ユーザ端末2との間で通信の接続がなされる(【0044】)
O コンタクトセンタ装置の通信接続方法」
第6 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
1 「第2の通信デバイスとの第1の通信セッションを確立するリクエストを受信するステップであって、前記第1の通信セッションを確立する前記リクエストは前記第1の通信セッションをルーティングするための第1のルーティング属性を備えるものである、ステップと」について
(1)ア 引用発明の「コンタクトセンタ装置4」(分説B)は、通信デバイスといえる。
イ 引用発明の「INVITEメッセージ」は、「SIPを用いたIP電話の発呼やチャットの発信等において、ユーザ端末2からコンタクトセンタ装置4に初めて送信される」もの(分説C)であるから、通信セッションをリクエストするものである。
また、引用発明の「INVITEメッセージ」は、「送信者欄「From」」及び「受信者欄「To」」を有する(分説D)から、「INVITEメッセージ」によってリクエストされる通信セッションは、送信者欄に示される「ユーザ端末2」と、受信者欄に示される「インタラクション制御部42」との通信セッションであると認められる。
ウ 前記「インタラクション制御部42」との通信セッションは、前記「インタラクション制御部42」を備える「コンタクトセンタ装置4」(分説B)との通信セッションといえるから、該通信セッション及び「コンタクトセンタ装置4」は、それぞれ本願発明の「第1の通信セッション」及び「第2の通信デバイス」に相当し、引用発明の「INVITEメッセージ」と本願発明の「リクエスト」は、「第2の通信デバイスとの第1の通信セッションを確立するリクエスト」である点で一致する。
(2)引用発明は、「インタラクション制御部42」が前記(1)の「INVITEメッセージ」を「受信」するものである(分説C、F)。
よって、前記(1)も考慮すると、本願発明と引用発明とは「第2の通信デバイスとの第1の通信セッションを確立するリクエストを受信するステップ」を備える点で一致する。
(3)ア 引用発明は、「オペレータ選定部43」が「オペレータ端末7」を「選定」し(分説G)、「インタラクション制御部42」が「選定」された前記「オペレータ端末7」に「INVITEメッセージ」を送信する(分説M)から、「INVITEメッセージ」を送信する「オペレータ端末7」の前記「選定」は、「INVITEメッセージ」のルーティングである。
また、これにより、前記(1)の通信セッションの確立(接続)先が前記「オペレータ端末7」になる(分説N)から、引用発明の前記「オペレータ端末7」の「選定」は、本願発明の「通信セッションをルーティングする」ことに相当する。
イ 前記アの「オペレータ端末7」の「選定」には、前記「INVITEメッセージ」に含まれる「問い合わせ内容」が用いられる(分説E、F、G)から、引用発明の前記「問い合わせ内容」は、本願発明の「通信セッションをルーティングするための第1のルーティング属性」に相当する。
ウ 前記ア及びイ並びに前記(1)によれば、引用発明の「INVITEメッセージ」と本願発明の「リクエスト」は、「前記第1の通信セッションをルーティングするための第1のルーティング属性を備える」点で一致する。
(4)前記(1)~(3)によれば、本願発明と引用発明とは、「第2の通信デバイスとの第1の通信セッションを確立するリクエストを受信するステップであって、前記第1の通信セッションを確立する前記リクエストは前記第1の通信セッションをルーティングするための第1のルーティング属性を備えるものである、ステップ」を備える点で一致する。
2 「前記第1のルーティング属性に基づきデータベースから1以上の第1のルーティング規則をフェッチさせるステップと」について
(1)引用発明の「複数のオペレータ端末7のデータ」は、「オペレータ端末毎」の「対応可能内容」のデータの集合である(分説H)からデータベースといえる。
(2)引用発明の前記「複数のオペレータ端末7のデータ」は、「問い合わせ内容(対応可能内容)」を「1番~n番のオペレータ端末毎」に設定した(分説H)ものであり、前記1(3)の「オペレータ端末43」の「選定」は、「INVITEメッセージ」に含まれる「問い合わせ内容」(分説C)が、「対応可能内容」に全て含まれる「オペレータ端末7」を選択する(分説J)ことに基づく。
そうすると、前記「対応可能内容」は、それぞれの「オペレータ端末」を「選定」するための規則といえる(例えば、図6に示されるオペレータ端末「1」番の「対応可能内容」は、「問い合わせ内容」に、テレビ、パソコン、商品A、商品B又は購入を含み、それら以外のものが含まれない場合に、オペレータ端末「1」番を「選定」する、という規則といえる。)。
したがって、引用発明の「オペレータ端末毎」の「対応可能内容」は、本願発明の「ルーティング規則」に相当する。
(3)前記(2)の「オペレータ端末7」の選択は、「オペレータ選定部43」に、「複数のオペレータ端末7のデータ」(前記(2)の例では図6の全データ)から「問い合わせ内容」を全て含む「対応可能内容」(前記(2)の例では、図6のオペレータ端末1番のデータ)をフェッチさせることといえる。
してみると、前記フェッチさせる「対応可能内容」は、本願発明の「第1のルーティング規則」に相当し、前記(1)及び(2)並びに前記1(3)も踏まえると、本願発明と引用発明とは、「前記第1のルーティング属性に基づきデータベースから1以上の第1のルーティング規則をフェッチさせるステップ」を備える点で一致する。
3 「1以上の規則の集合を含む動的ルーティングフレームワークにおいて前記第1のルーティング属性があると判断した場合、前記第1のルーティング属性及び前記動的ルーティングフレームワークにおいて含まれる前記1以上の第1のルーティング規則に基づいて第3の通信デバイス又は送信先に前記第1の通信セッションをルーティングするステップと」について
(1)本願発明の「動的ルーティングフレームワーク」について、明細書【0033】に「動的ルーティングフレームワーク127は、通信セッションのルーティングを定義する規則のあらゆる集合であってもよいし、それを含み得る。動的ルーティングフレームワーク127は、管理端末140を介して管理者141によって動的に定義され得る。」と記載されている。前記記載によれば、本願発明の「動的ルーティングフレームワーク」の「動的」は「動的に定義され得る」ことを意味し、「ルーティングフレームワーク」は「通信セッションのルーティングを定義する規則のあらゆる集合を含み得る」ものを意味すると解される。
他方、前記2(2)のとおり、引用発明の「オペレータ端末毎」の「対応可能内容」は、各「オペレータ端末4」を「選定」することを定義した規則といえる。そして、引用発明の「複数のオペレータ端末7のデータ」(例えば、図6のデータ全体)は、前記「対応可能内容」の集合を含むものであるから、前記「通信セッションのルーティングを定義する規則のあらゆる集合を含み得る」との意味で「ルーティングフレームワーク」といえる。
してみると、引用発明の「複数のオペレータ端末7のデータ」は、本願発明の「1以上の規則の集合を含む動的ルーティングフレームワーク」と、「1以上の規則の集合を含むルーティングフレームワーク」である点で共通するといえる。
(2)引用発明の前記2(2)の「オペレータ端末7」の「選定」は、前記「問い合わせ内容」が「複数のオペレータ端末7のデータ」の「対応可能内容」に全てあると判断したことによるものといえる。
よって、本願発明と引用発明とは、「前記第1のルーティング属性があると判断した場合」の動作が存在する点で共通する。
(3)ア 引用発明の「オペレータ端末7」は、通信デバイスといえる。
イ 前記2(2)の「オペレータ端末7」の「選定」は、前記「問い合わせ内容」及び前記「対応可能内容」に基づいたものであり(分説G)、選定された「オペレータ端末7」に通信セッションがルーティングされる(前記1(3))から、引用発明の「オペレータ端末7」は、本願発明の「第1のルーティング規則に基づいて」ルーティングされる先である「第3の通信デバイス」に相当する。
ウ そうすると、本願発明と引用発明とは、「前記第1のルーティング属性及び前記ルーティングフレームワークにおいて含まれる前記1以上の第1のルーティング規則に基づいて第3の通信デバイス又は送信先に前記第1の通信セッションをルーティングする」点で共通する。
(4)前記(1)~(3)によれば、本願発明と引用発明とは、「1以上の規則の集合を含むルーティングフレームワークにおいて前記第1のルーティング属性があると判断した場合、前記第1のルーティング属性及び前記ルーティングフレームワークにおいて含まれる前記1以上の第1のルーティング規則に基づいて第3の通信デバイス又は送信先に前記第1の通信セッションをルーティングするステップ」を備える点で共通する。
4 「前記第3の通信デバイス又は送信先は前記1以上の第1のルーティング規則に基づき識別される」について
前記2(2)のとおり、引用発明の「選定」は「対応可能内容」に基づくから、「選定」された「オペレータ端末7」は、「対応可能内容」に基づいて識別されたものといえる。そうすると、本願発明と引用発明とは、「前記第3の通信デバイス又は送信先は前記1以上の第1のルーティング規則に基づき識別される」点で一致する。
5 「方法」について
引用発明の「コンタクトセンタ装置の通信接続方法」(分説O)は、後述する相違点を除き、本願発明の「方法」に相当する。
6 前記1~5によれば、本願発明と引用発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「 第2の通信デバイスとの第1の通信セッションを確立するリクエストを受信するステップであって、前記第1の通信セッションを確立する前記リクエストは前記第1の通信セッションをルーティングするための第1のルーティング属性を備えるものである、ステップと、
前記第1のルーティング属性に基づきデータベースから1以上の第1のルーティング規則をフェッチさせるステップと、
1以上の規則の集合を含むルーティングフレームワークにおいて前記第1のルーティング属性があると判断した場合、前記第1のルーティング属性及び前記ルーティングフレームワークにおいて含まれる前記1以上の第1のルーティング規則に基づいて第3の通信デバイス又は送信先に前記第1の通信セッションをルーティングするステップと
を備え、
前記第3の通信デバイス又は送信先は前記1以上の第1のルーティング規則に基づき識別される、方法。」
<相違点>
「ルーティングフレームワーク」について、本願発明は、「動的」に定義され得るものであるのに対し、引用発明は、「複数のオペレータ端末7のデータ」が動的に定義され得るものであるのか明らかでない点。
第7 判断
以下、相違点について検討する。
ア 引用発明のコンタクトセンタ装置の運用中に新たな商品が発売されることは、当然に想定される事態であり、それに伴い、各オペレータが対応すべき問い合わせ内容が変わることは明らかである。
そうすると、前記事態に対応すべく、引用発明の各「オペレータ端末7」の「対応可能内容」を随時更新すること、換言すると、「複数のオペレータ端末7のデータ」を動的に定義することは、引用発明を実施するにあたり当然に行われるべきことであるから、このような変更は、当業者が容易になし得たものであるといえる。
イ そして、相違点を勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
ウ したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第8 請求人の主張について
請求人は、令和3年10月1日に提出した審判請求書において、「このように、引用文献1(中略)は「前記第3の通信デバイス又は送信先は前記第1のルーティング属性のルックアップに基づき識別される」という構成を開示および示唆していません。」として、本願の請求項8に係る発明が進歩性を有する旨を主張する。(審判請求書4~5頁)
しかしながら、本願発明は、前記構成を備えるものではないから、請求人の前記主張は採用することができない。
第9 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-013238