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特許無効審判

2013-800191

炭酸飲料

審判番号
2013-800191
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2002-567084
登録番号
特許第4324761号(P4324761)
請求日
2013年10月02日
審決日
2015年03月24日
公報発行日
2017年04月28日
結論
訂正認容・請求不成立
当事者
  • 【請求人】ジェイケー スクラロース インコーポレイテッド
  • 【請求人代理人】稲葉 良幸
  • 【請求人代理人】小林 綾子
  • 【請求人代理人】赤堀 龍吾
  • 【請求人代理人】田中 智典
  • 【請求人代理人】小笠原 耕司
  • 【請求人代理人】松野 英
  • 【請求人代理人】片倉 秀次
  • 【請求人代理人】田村 有加吏
  • 【請求人代理人】山崎 臨在
  • 【被請求人】三栄源エフ・エフ・アイ 株式会社
  • 【被請求人代理人】特許業務法人三枝国際特許事務所
  • 【被請求人代理人】田中 千博
  • 【被請求人代理人】溝内 伸治郎
  • 【被請求人代理人】小林 幸夫
  • 【被請求人代理人】坂田 洋一
審判長/審判官
  • 審判長 田村 明照
  • 審判官 大宅 郁治
  • 審判官 齋藤 恵
分類
P1113.121-YAA(A23L) / P1113.537-YAA(A23L) / P1113.832-YAA(A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第134条の2第1項、特許法第134条の2第9項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第134条の2第6項、特許法第123条第1項第2号、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

上記当事者間の特許第4324761号発明「炭酸飲料」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 請求のとおり訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本件特許第4324761号についての手続の経緯の概要は以下のとおりである。 平成14年 2月27日   国際特許出願 平成21年 6月19日   特許権の設定登録 平成25年10月 2日   審判請求書 及び 甲第1~7号証、甲第4号証の抄訳提出 平成25年12月24日   訂正請求書(第1回目)並びに 答弁書(第 1回目)及び 乙第1~5号証提出 平成26年 2月28日   弁駁書(第1回目) 及び 甲第8~9号証提出 平成26年 4月14日   答弁書(第2回目) 及び 乙第6~14号証(枝番号を含む)提出 平成26年 5月14日付け 審理事項通知書 平成26年 6月20日   口頭審理陳述要領書(請求人) 平成26年 6月20日   口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成26年 7月 4日   口頭審理 平成26年 7月18日   上申書(被請求人) 及び 乙第15~16号証提出 平成26年 8月 1日付け 審決予告 平成26年10月 6日   訂正請求書(第2回目) 平成26年12月 4日   弁駁書(第2回目) 及び 甲第10~13号証提出 平成27年 1月14日付け 審理終結通知書 平成27年 2月 3日付け 審理再開通知書 平成27年 2月 3日付け 手続補正指令書(方式) 平成27年 3月 5日   手続補正書(訂正請求) 第2 訂正の適否 本件特許の訂正について、平成25年12月24日付け訂正請求書(第1回目)及び平成26年10月6日付け訂正請求書(第2回目)が提出されているが、「訂正の請求がされた場合において、その審判事件において先にした訂正の請求があるときは、当該先の請求は、取り下げられたものとみなす」(特許法第134条の2第6項)と規定されているから、訂正請求書(第2回目)における訂正の請求のみを審理の対象とする。 ただし、訂正請求書(第2回目)における訂正の請求は、平成27年2月3日付け手続補正指令書(方式)に対応して、特許法施行規則様式第29の2備考15に規定された様式に適合するように手続補正されている。 1 訂正事項 被請求人が求めている訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許第4324761号の明細書及び特許請求の範囲(以下、前者を「特許明細書」といい、両者を併せて「特許明細書等」という。)を、平成27年3月5日付けで提出された手続補正書(訂正請求)に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することであり、訂正事項は、以下訂正事項1ないし20のとおりである。 (1)訂正事項1 特許明細書等の請求項1を、次の通りに訂正する(下線部が訂正箇所である。以下同じ。)。 【請求項1】 下記の処方を有することを特徴とする炭酸飲料: (1)果物又は野菜の搾汁を10~80重量%の割合で含む、 (2)炭酸ガスを2ガスボリュームより多く含む、 (3)可溶性固形分含量が屈折糖度計示度で4~8度である、 (4)全甘味量が砂糖甘味換算で8~14重量%である (5)スクラロースを含む高甘味度甘味料を含む (6)スクラロースを含む高甘味度甘味料によって付与される甘味の全量が、全甘味量100重量%あたり、砂糖甘味換算で25重量%以上を占める、 (7)全ての高甘味度甘味料によって付与される甘味の全量100重量%のうち、スクラロースによって付与される甘味量が、砂糖甘味換算量で50重量%以上である。 (2)訂正事項2 特許明細書等の請求項2を削除し、特許明細書等の請求項3における引用請求項番号を次の通りに訂正する。 【請求項3】 スクラロースを含む高甘味度甘味料が、スクラロースと、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオテーム、アリテーム、サッカリンナトリウム、ステビア甘味料、及びソーマチンよりなる群から選択される少なくとも1種との混合物である請求項1記載の炭酸飲料。 (3)訂正事項3 特許明細書等の請求項4を削除する。 (4)訂正事項4 特許明細書等の請求項5を請求項2及び4の削除に伴い引用請求項番号を訂正し、併せて次の通りに訂正する。 【請求項5】 炭酸ガスを2.5~4ガスボリュームの割合で含む請求項1または3に記載する炭酸飲料。 (5)訂正事項5 特許明細書等の請求項6を削除し、特許明細書等の請求項7における引用請求項番号を次の通りに訂正する。 【請求項7】 スクラロースを含む高甘味度甘味料によって付与される甘味量が、砂糖甘味換算量で、全甘味量100重量%のうち25~85重量%を占めるものである請求項1、3及び5のいずれかに記載の炭酸飲料。 (6)訂正事項6 特許明細書等の請求項8を請求項2、4及び6の削除に伴い引用請求項番号を次の通りに訂正する。 【請求項8】 アルコールを1~15重量%含む請求項1、3、5及び7のいずれかに記載の炭酸飲料。 (7)訂正事項7 特許明細書等の請求項9を次の通りに訂正する。 【請求項9】 実質的に下記の工程を有することを特徴とする炭酸飲料の製造方法: (1)最終炭酸飲料中に果物又は野菜の搾汁を10~80重量%の割合で含まれるように配合する、 (2)最終炭酸飲料中の全甘味量が砂糖甘味換算量で8~14重量%となるように甘味料を配合する、 (3)甘味料として少なくともスクラロースを含む高甘味度甘味料を、最終炭酸飲料の全甘味量100重量%あたり、上記高甘味度甘味料によって付与される甘味の全量が砂糖換甘味換算量で25重量%以上となるような割合で配合する、 (4)全ての高甘味度甘味料によって付与される甘味の全量100重量%のうち、スクラロースによって付与される甘味量が、砂糖甘味換算量で50重量%以上となるように調整する、 (5)最終炭酸飲料の可溶性固形分含量が屈折糖度計示度で4~8度となるように調整する、 (6)最終炭酸飲料のガスが2ガスボリュームより多くなるように炭酸ガスを封入する。 (8)訂正事項8 特許明細書の発明の詳細の説明における下記箇所に炭酸飲料中の炭酸ガスの配合量の単位として記載されている「容量%」及び表1記載の「V/V%」を、すべて「ガスボリューム」に訂正する。なお、訂正箇所は、訂正前明細書の頁及び行数に代えて、対応する本件特許公報の頁及び行数で示す(以下、同じ。)。 (訂正箇所) 本件特許公報の2頁27行及び37行;3頁25行、32行及び42行;4頁25行及び31行;5頁5行、20行及び45行;6頁11行及び37行;8頁9行、10行及び13行;11頁34行及び47行;12頁3行、15行、20行、28行及び41行;13頁7行及び9行;15頁7行及び41行;16頁22行及び47行。 (9)訂正事項9 特許明細書の発明の詳細の説明に記載する植物成分を植物の食用部位の搾汁(果物又は野菜の搾汁)に限定する訂正をする。具体的には、発明の詳細の説明における下記記載を削除し、また本件特許公報の8頁2行に記載する「搾汁」を「果物または野菜の搾汁」に訂正する。 (削除する記載とその箇所) 以下、本件特許公報の頁及び行数で示す (i)7頁13~14行:「食用部位から得られる惨出液(樹液など)、または」 (ii)7頁14行:「、破砕物(ピューレ、ペースト、細断物)、抽出物(抽出液)など」 (iii)7頁32~41行:「また、破砕物としては、上記の各種果物や野菜を破砕して得られる果肉や野菜の細断物、またはその細断物を裏ごしして濃縮したピューレやペーストを挙げることができる。更に、抽出物としては、コーラ、ガラナ、コーヒーなどの植物の種実の抽出液;または生姜(ジンジャー)、サッサフラス、サーサパリラなどの植物の根茎の抽出液;カモミール、エルダーフラワー、レモンバーム、ラベンダー、クローブ、ガーリック、カプシカム、ペパー、マスタード、サンショウ、ワサビ、ローレル、クローブ、タイム、セージ、ナツメグ、メース、カルダモン、ギャラウェイ、アニス、バジル、フェンネル、クミン、ターメリック、パプリカ、サフラン、バジル、ベイリーブス、マジョラム、オレガノ、ローズマリー、セージ、タラゴン、タイム、コリアンダー、クミン、デイル等のハープやスパイス等の抽出物を挙げることができる。」 (iv)7頁42行:「滲出液、」 (v)7頁42~43行:「、破砕物(ピューレ、ペースト、パルプ)、抽出物(抽出液)等」 (vi)8頁2行:「または抽出液」 (vii)16頁4行:「、紅茶抽出物」 (10)訂正事項10 特許明細書(本件特許公報2頁45行)における「1~2容量%」の記載を、「ガス容量で1.0~2.0vol」に訂正する。 (11)訂正事項11 特許明細書(本件特許公報2頁38行)における「抑制きれた」の記載を、「抑制された」に訂正する。 (12)訂正事項12 特許明細書(本件特許公報3頁2行)における「炭酸ガス容量」の記載を、「炭酸ガス」に訂正する。 (13)訂正事項13 特許明細書(本件特許公報3頁23-24行)における「爽やかさで」の記載を、「爽やかさと」に訂正する。 (14)訂正事項14 特許明細書(本件特許公報9頁20行)における「ビバレッジジャパン社」の記載を、「ビバリッジ ジャパン社」に訂正する。 (15)訂正事項15 特許明細書(本件特許公報12頁33行)における「(2)」の記載を、「(1)」に訂正する。 (16)訂正事項16 特許明細書(本件特許公報15頁4~5行)における「それそれ」の記載を、「それぞれ」に訂正する。 (17)訂正事項17 特許明細書(本件特許公報15頁27行)における「3.38重量%」の記載を、「2.6重量%」に訂正する。 (18)訂正事項18 特許明細書(本件特許公報15頁28行)における「×2.0重量%」の記載を、「=2.0重量%」に訂正する。 (19)訂正事項19 特許明細書(本件特許公報16頁4行)における「45重量%」の記載を、「20重量%」に訂正する。 (20)訂正事項20 特許明細書(本件特許公報15頁7行及び41行)における「炭酸ガスをガス容量」の記載を、「炭酸ガスを」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否 なお、請求人の提出した平成26年12月4日付け弁駁書(第2回目)において、訂正を認めるべきではない旨の主張はなされていない。 また、本件特許の明細書の発明の詳細な説明は特許権の設定登録まで手続補正されておらず、特許明細書の発明の詳細な説明の記載は出願時のままである。 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「植物成分」を「果物又は野菜の搾汁」に訂正し(訂正事項1-1)、炭酸ガスの量単位「容量%」を「ガスボリューム」に訂正し(訂正事項1-2)、可溶性固形分含量「8度以下」を「4~8度」に訂正し(訂正事項1-3)、さらに処方として訂正前の請求項2に規定の要件「全ての高甘味度甘味料によって付与される甘味の全量100重量%のうち、スクラロースによって付与される甘味量が、砂糖甘味換算量で50重量%以上である」を追加(訂正事項1-4)するものである。 訂正事項1-1は、訂正前の請求項1に記載の「植物成分」を、特許明細書等の請求項4の記載および特許公報7頁27行等の記載に基づいて「果物又は野菜の搾汁」であることを明確にすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。また、訂正事項1-3は、訂正前の請求項1に記載の可溶性固形分含量「8度以下」を「4~8度」に限定することで特許請求の範囲を減縮しようとするものである。さらに、訂正事項1-4は、訂正前の請求項1に、訂正前の請求項2に記載の要件を追加することで特許請求の範囲を減縮しようとするものである。したがって、訂正事項1のうち、訂正事項1-1、1-3及び1-4は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項1-2は、訂正前の請求項1において、炭酸飲料中の炭酸ガスの含有量を示す単位が錯誤により「容量%」と、当業界の技術常識に照らして明らかに間違っていたことから、本来の意である「ガスボリューム」に正すことで誤記を訂正しようとするものである。したがって、訂正事項1-2は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 訂正事項1のうち、訂正事項1-1、1-3及び1-4は、本件特許公報の明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。具体的には、訂正事項1-1については特許公報7頁27行に記載されており、訂正事項1-3については特許公報8頁26~27行に好ましい可溶性固形分含量が屈折糖度計示度で2~8度、より好ましくは4~6度であることが記載されており、訂正事項1-4については特許公報10頁42~44行に記載されている。 また、訂正事項1-2は、本件特許公報の明細書中の発明の詳細な説明及び出願時の当業界の技術常識から導き出される構成である。前述するように、訂正前の請求項1において飲料中の炭酸ガスの含有量を表わす単位として記載した「容量%」は誤記であり、正しくは「ガスボリューム」である。当該「ガスボリューム」という用語が、当業界で飲料中の炭酸ガスの含有量を表わす単位として用いられていることは、乙第1号証に記載の通りである。本件特許公報8頁の10~12行には、ガス容量に関して「これは20℃での飲料の炭酸ガス内圧に換算すると約1.4kg/cm2以上、好ましくは1.4~3.7kg/cm2、より好ましくは2~3kg/cm2に相当する。」と記載されており、これを炭酸ガスの測定方法を記載する国税庁のHP(国税庁所定分析法(訓令))に掲載の第3表(乙第2号証)を用いて、ガス容(ガスボリューム)に換算すると、炭酸ガス内圧「約1.4kg/cm2」は約2ガスボリューム(第3表の換算値:1.428kg/cm2→2.091ガスボリューム)、「1.4~3.7kg/cm2」は約2~4ガスボリューム(第3表の換算値:3.773kg/cm2→4.084ガスボリューム)、「2~3kg/cm2」は約2.5~3.5ガスボリューム(第3表の換算値:1.937kg/cm2→2.524ガスボリューム、3.059 kg/cm2→3.477ガスボリューム)に相当する。つまり、これらの数値は、特許明細書(本件特許公報8頁の10行)に「好ましいガス容量としては2~4容量%、より好ましくは2.5~3.5容量%である」と記載されているガス容量の数値「2~4」及び「2.5~3.5」にほぼ合致する。 したがって、訂正事項1-1、1-3及び1-4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、訂正事項1-2は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、訂正事項1は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否 上記アの理由から明らかなように、訂正事項1-1及び1-3は発明特定事項を上位から下位に変更するものであり、訂正事項1-4は発明特定事項を直列的に付加するものであり、さらに訂正事項1-2は発明特定事項の誤記を修正するものであり、いずれもカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 エ まとめ 訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書きに規定する事項を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもない。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除し、訂正前の請求項2を削除したことに伴い訂正前の請求項3における引用請求項番号を訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的について 訂正事項4は、訂正前の請求項5に記載する数値範囲「2~4」を「2.5~4」に訂正し(訂正事項4-1)、炭酸飲料の炭酸ガスの含有量を示す単位を「容量%」から「ガスボリューム」に訂正するものである(訂正事項4-2)。また、訂正前の請求項2及び4の削除に伴い引用請求項番号を訂正したものである(訂正事項4-3)。 訂正事項4-1は、数値範囲を「2~4」から「2.5~4」に訂正することで特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、訂正事項4-3は従属請求項の番号を「1乃至4」から「1または3」に訂正することで特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、いずれも特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項4-2は、訂正事項1-2と同様、誤記を本来の意である「ガスボリューム」に正すことで誤記を訂正しようとするものであり、特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 訂正事項4-1は、特許公報8頁10行に炭酸ガスのガス容量のより好ましい下限値が「2.5」であることが記載されている。また、訂正事項4-2は、上記(1)イに記載したように、出願時の当業界の技術常識から導き出される事項である。 したがって、訂正事項4-1及び4-3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、訂正事項4-2は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、訂正事項4は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否 上記訂正事項4-1は発明特定事項を上位から下位に変更するものであり、訂正事項4-2及び4-3も含めて、いずれもカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 エ まとめ 訂正事項4は、特許法第134条の2第1項ただし書きに規定する事項を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもない。 (5)訂正事項5 訂正事項5は、訂正前の請求項6を削除し、訂正前の請求項2、4及び6の削除に伴い訂正前の請求項7の引用請求項番号を訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (6)訂正事項6 訂正事項6は、訂正前の請求項2、4及び6の削除に伴い訂正前の請求項8の引用請求項番号を訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (7)訂正事項7 ア 訂正の目的について 訂正事項7は、訂正前の請求項9の「植物成分」を「果物又は野菜の搾汁」に訂正し(訂正事項7-1)、炭酸ガスの量単位「容量%」を「ガスボリューム」に訂正し(訂正事項7-2)、可溶性固形分含量「8度以下」を「4~8度」に訂正し(訂正事項7-3)、「全ての高甘味度甘味料によって付与される甘味の全量100重量%のうち、スクラロースによって付与される甘味量が、砂糖甘味換算量で50重量%以上になるように調整する」という発明特定事項を追加訂正(訂正事項7-4)したものである。 訂正事項7-1は、訂正前の請求項9に記載の「植物成分」を、特許公報7頁27行等の記載に基づいて「果物又は野菜の搾汁」に限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、訂正事項7-3は、訂正前の請求項9に記載の可溶性固形分含量「8度以下」を「4~8度」に限定することで特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、訂正事項7-4は、訂正前の請求項9に、訂正前の明細書(特許公報10頁42~44行)に記載の事項を追加することで特許請求の範囲を減縮しようとするものである。したがって、訂正事項7-1、7-3及び7-4は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項7-2は、訂正事項1-2と同様、誤記を本来の意である「ガスボリューム」に正すことで誤記を訂正しようとするものであり、特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 訂正事項7のうち、訂正事項7-1、7-2、7-3及び7-4は、上記(1)イに記載したように、本件特許公報の明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。 したがって、訂正事項7-1、7-3及び7-4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、訂正事項7-2は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、訂正事項1は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否 上記アの理由から明らかなように、訂正事項7-1及び7-3は発明特定事項を上位から下位に変更するものであり、訂正事項7-4は発明特定事項を直列的に付加するものであり、さらに訂正事項7-2は発明特定事項の誤記を修正するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 エ まとめ 訂正事項7は、特許法第134条の2第1項ただし書きに規定する事項を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもない。 (8)訂正事項8 ア 訂正の目的について 訂正事項8は、訂正事項1-2と同様、明細書の発明の詳細な説明における誤記を正しい記載に正すため、訂正前の明細書の発明の詳細な説明に記載された「容量%」を、「ガスボリューム」に訂正するものである。 したがって、訂正事項8は、特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 訂正事項8は、訂正事項1-2に関して上記(1)イに記載したように、出願時の当業界の技術常識から導き出される事項であるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否 訂正事項8は、訂正事項1-2に関して上記(1)ウに記載したように、明細書の発明の詳細な説明における誤記を修正するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 エ まとめ 訂正事項8は、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもない。 (9)訂正事項9 ア 訂正の目的について 訂正事項9は、訂正事項1-1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、訂正前の明細書の発明の詳細な説明に記載する植物成分を、「果物又は野菜の搾汁」に訂正するものである。 したがって、訂正事項9は、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 訂正事項9は、訂正事項1-1に関して上記(1)イに記載したように、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否 訂正事項9は、訂正事項1-1に関して上記(1)ウに記載したように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 エ まとめ 訂正事項9は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもない。 (10)訂正事項10 ア 訂正の目的について 訂正事項10は、明細書の発明の詳細な説明における誤記を正しい記載になおすため、訂正前の明細書(本件特許公報の2頁45行)に記載された「1~2容量%」の記載を、従来技術を開示する公知文献「特開2000-4852号公報」の記載に基づいて、「ガス容量で1.0~2.0vo1」に訂正するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 本件特許公報2頁45行に記載された公知文献「特開2000-4852号公報」には、「ガス容量で1.0~2.0volの炭酸ガス」を含む果汁入り炭酸飲料(請求項1等参照)が記載されており、本来「ガス容量で1.0~2.0vol」とすべきところ、訂正前の明細書では、「1~2容量%」と誤った記載をしていたところ、訂正事項10は、訂正前の明細書における誤記を公知文献の記載に基づいて本来の意に正すものである。したがって、訂正事項10は、明細書中の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識から導き出されるものであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否 訂正事項10は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 エ まとめ 訂正事項10は、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもない。 (11)訂正事項11 訂正事項11は、「抑制きれた」が「抑制された」の誤記であることが前後関係から明らかであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (12)訂正事項12 訂正事項12は、訂正前の明細書(本件特許公報3頁2行目)の「炭酸ガス容量或いは果汁のいずれかの配合量」という記載において、「炭酸ガス容量」の「容量」とその後ろの「配合量」が重複した記載になっており、「炭酸ガス容量」との記載は「炭酸ガス」と記載するほうが適切であることが明らかであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (13)訂正事項13 訂正事項13は、「爽やかさで」という記載が「爽やかさと」の誤記であることが前後関係から明らかであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (14)訂正事項14 訂正事項14は、「ビバレッジジャパン社『飲料用語事典』」という記載を「ビバリッジ ジャパン社『飲料用語事典』」に訂正するものであって、当該記載が誤記であることは、乙第1号証の奥付から明白であり、特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。そして、訂正事項14は、「ビバレッジジャパン社」という記載から「ビバリッジジャパン社」が正しい記載であることが明らかであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (15)訂正事項15 訂正事項15は、「(2)」が「(1)」の誤記であることは前後関係から明らかであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (16)訂正事項16 訂正事項16は、「それそれ」が「それぞれ」の誤記であることは前後関係から明らかであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (17)訂正事項17 訂正事項17は、「3.38重量%」が「2.6重量%」の誤記であることは前後関係から明らかであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (18)訂正事項18 訂正事項18は、「×2.0重量%」が「=2.0重量%」の誤記であることは前後関係から明らかであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (19)訂正事項19 ア 訂正の目的について 訂正事項19は、特許請求の範囲において訂正前の「植物成分」が「果物又は野菜の搾汁」に減縮されたこと(訂正事項1-1、訂正事項7-1)に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、実施例3の植物成分(果汁)の含有量を当初の「45重量%」から「20重量%」に訂正したものであり、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項追加の有無 実施例3のティーソーダ飲料中に含まれる植物成分(果汁)の量は「5倍濃縮のりんご果汁 4重量%」である。これを1倍濃度のりんご果汁の重量%に換算すると20重量%となるので、ティーソーダ飲料にはりんご果汁が「20重量%」含まれていることになる。したがって、訂正前の明細書(本件特許公報16頁4行)に記載の「45重量%」は、正しくは「20重量%」であるから、訂正事項19は、本件特許公報の明細書中の発明の詳細な説明から導き出される事項であって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否 訂正事項19は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 エ まとめ 訂正事項19は、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもない。 (20)訂正事項20 訂正事項20は、誤記又は誤訳の訂正を目的とする訂正事項8により「容量%」を「ガスボリューム」に訂正したことに伴って、必要となくなった「ガス容量」という記載を削除するものである。 したがって、訂正事項20は、特許法第134条の2第1項ただし書き第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 3 訂正請求に対する結論 以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項により準用する同法第126条第5項及び6項の規定を満たすものである。 よって、本件訂正を認める。 第3 本件訂正発明 以上のとおりであるから、本件請求項1、3、5、7ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1、3、5、7ないし9」といい、併せて「本件訂正発明」という。)は、訂正明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、3、5、7ないし9に記載された事項により特定されるとおりの以下のものであると認める。 なお、特許明細書等の請求項2、4及び6は削除された。 【請求項1】 下記の処方を有することを特徴とする炭酸飲料: (1)果物又は野菜の搾汁を10~80重量%の割合で含む、 (2)炭酸ガスを2ガスボリュームより多く含む、 (3)可溶性固形分含量が屈折糖度計示度で4~8度である、 (4)全甘味量が砂糖甘味換算で8~14重量%である (5)スクラロースを含む高甘味度甘味料を含む (6)スクラロースを含む高甘味度甘味料によって付与される甘味の全量が、全甘味量100重量%あたり、砂糖甘味換算で25重量%以上を占める、 (7)全ての高甘味度甘味料によって付与される甘味の全量100重量%のうち、スクラロースによって付与される甘味量が、砂糖甘味換算量で50重量%以上である。 【請求項3】 スクラロースを含む高甘味度甘味料が、スクラロースと、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオテーム、アリテーム、サッカリンナトリウム、ステビア甘味料、及びソーマチンよりなる群から選択される少なくとも1種との混合物である請求項1記載の炭酸飲料。 【請求項5】 炭酸ガスを2.5~4ガスボリュームの割合で含む請求項1または3に記載する炭酸飲料。 【請求項7】 スクラロースを含む高甘味度甘味料によって付与される甘味量が、砂糖甘味換算量で、全甘味量100重量%のうち25~85重量%を占めるものである請求項1、3及び5のいずれかに記載の炭酸飲料。 【請求項8】 アルコールを1~15重量%含む請求項1、3、5及び7のいずれかに記載の炭酸飲料。 【請求項9】 実質的に下記の工程を有することを特徴とする炭酸飲料の製造方法: (1)最終炭酸飲料中に果物又は野菜の搾汁を10~80重量%の割合で含まれるように配合する、 (2)最終炭酸飲料中の全甘味量が砂糖甘味換算量で8~14重量%となるように甘味料を配合する、 (3)甘味料として少なくともスクラロースを含む高甘味度甘味料を、最終炭酸飲料の全甘味量100重量%あたり、上記高甘味度甘味料によって付与される甘味の全量が砂糖換甘味換算量で25重量%以上となるような割合で配合する、 (4)全ての高甘味度甘味料によって付与される甘味の全量100重量%のうち、スクラロースによって付与される甘味量が、砂糖甘味換算量で50重量%以上となるように調整する、 (5)最終炭酸飲料の可溶性固形分含量が屈折糖度計示度で4~8度となるように調整する、 (6)最終炭酸飲料のガス容量が2ガスボリュームより多くなるように炭酸ガスを封入する。 第4 請求人の主張の概要 1 審決予告前 請求人は、「特許第4324761号の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、甲第1~7号証及び甲第4号証の抄訳を添付して審判請求書を提出し、甲第8~9号証を添付して平成26年2月28日付け弁駁書(第1回目)を提出し、平成26年6月20日付け口頭審理陳述要領書を提出して、以下の無効理由1~5により、本件特許は、特許法第123条第1項第2号及び第4号に該当し、無効とすべきものであると主張している。 (無効理由1) 本件発明1~9は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。 (無効理由2-1) 本件発明1~9は、当業者が、甲第1号証に記載された発明及び周知・慣用技術に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 (無効理由2-2) 本件発明1~9は、当業者が、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 (無効理由3) 特許明細書の発明の詳細な説明に記載され、その効果が確認された実施例のほとんどが、高甘味度甘味料としてスクラロースを単独で含む炭酸飲料であり、スクラロースと他の高甘味度甘味料とを併用した実施例は1つのみである(実施例2)。この実施例2においても、高甘味度甘味料としてスクラロースが主として用いられている。 したがって、発明の詳細な説明は、スクラロース以外の高甘味度甘味料を主として用いた場合、当業者が「植物成分に由来する豊かな味わいと炭酸ガスによる刺激を有しながらも爽やかで清涼感を備えた炭酸飲料」を製造するためには、高甘味度甘味料におけるスクラロースの割合に関し過度の試行錯誤を要するものといえる。 よって、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないから、特許法第36条第4項第1号の要件を満たしていない。 (無効理由4) 当業者が特許明細書の記載内容及び出願時の技術常識を考慮しても、実施例の内容を特許請求の範囲において規定された数値及び/又は材料の全範囲に拡張乃至一般化できるものではない。 よって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないので、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていない。 (無効理由5-1) 本件発明の炭酸飲料が「植物成分」として抽出液を含む場合、その抽出液の含有量を特定することは不可能であるから、特許請求の範囲の「植物成分を10~80重量%の割合で含む」という記載は、不明確であり、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。 (無効理由5-2) 甘味相対比は、一般に人の味覚で決める甘さの指標であり、測定条件によって変動するため、一義的に決まるものではないから、特許請求の範囲の「砂糖甘味換算」という記載は、不明確であり、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。 (無効理由5-3) 炭酸ガスの含有量を示す単位として「容量%」は一般的ではなく、発明の詳細な説明中にも特段定義されていないから、特許請求の範囲の「炭酸ガス」の「容量%」という記載は、不明確であり、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。 そして、請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。 (甲第1号証)国際公開WO00/24273号パンフレット (甲第2号証)特開平10-136953号公報 (甲第3号証)特開2000-4852号公報 (甲第4号証)米国特許出願10/469,046の出願経過書類及びその抄訳 (甲第5号証)特開平10-136952号公報 (甲第6号証)特開昭53-69860号公報 (甲第7号証)特開昭58-51880号公報 (甲第8号証)化学大辞典、5巻、共立出版、1997年9月20日、924頁 (甲第9号証)山口静子「味覚の数量化」、調理科学 Vol.9, No.2 (1976) pp.80-85 2 審決予告に基づく訂正請求(第2回目)後 請求人は、甲第10~13号証を添付して平成26年12月4日付け弁駁書(第2回目)を提出し、訂正請求(第2回目)によっても、無効理由2-1、無効理由2-2、無効理由4が依然として解消していないことを主張している。 そして、請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。 (甲第10号証)特開2000-312580号公報 (甲第11号証)特開平8-149967号公報 (甲第12号証)特開平7-48267号公報 (甲第13号証)特開平5-49456号公報 第5 被請求人の主張の概要 被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、乙第1~5号証を添付した平成25年12月24日付け答弁書(第1回目)を提出し、乙第6~14号証(枝番号を含む)を添付した平成26年4月14日付け答弁書(第2回目)を提出し、平成26年6月20日付け口頭審理陳述要領書を提出し、乙第15~16号証を添付して平成26年7月18日付け上申書を提出し、平成26年10月6日に「訂正明細書、特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを求める」との訂正請求書(第2回目)を提出して、本件訂正は認められるべきであり、請求人の主張する無効理由及び証拠によっては本件訂正発明1ないし6を無効とすることはできないと主張している。 被請求人の提出した証拠方法は以下のとおりである。 (乙第1号証)飲料用語事典、47頁「ガスボリューム」(平成11年6月25日、(株)ビバリッジ ジャパン社発行) (乙第2号証)炭酸ガスの測定方法を記載する国税庁のHP(国税庁所定分析法(訓令))(http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/sonota/070622/01.htm)に掲載の第3表(炭酸ガス吸収係数表[びん内圧力補正表]) (乙第3号証)本件発明の構成要件A~U充足に関する各甲号証記載の発明の説明書 (乙第4号証)日本食品標準成分表2010(文部科学省 科学技術・学術審議会 資源調査分科会 報告)、112-115頁、126-127頁、230-231頁(平成22年12月3日、全国官報販売協同組合発行) (乙第5号証)山口静子『官能検査(最終回)』、調理科学 Vol.20, No.1 (1987) pp.26-32 (乙第6号証)株式会社林原商事のホームページ「第3回糖思考、『甘味度と糖度、Brix』」(http://www.food.hayashibara.co.jp/trehacom/pdf/trehacom_vol3_4.pdf#search='%E5%Bl%88%E6%8A%98+%E7%B3%96+%E5%9B%BA%E5%BD%A2') (乙第7号証)2014年3月25日付け作成(作成者:芳仲幸治)実験報告書 (乙第8号証)「清涼飲料ハンドブック ソフト・ドリンクス」(全国清涼飲料研究会編、昭和43年5月30日、株式会社光琳書院発行)388-389頁 (乙第9号証)「総合食品事典第六版」(桜井芳人編、昭和61年5月5日、同文書院発行)、564-565頁 (乙第10号証)「食品の製造工程図全集」(食品技術士センター編、昭和58年5月10日、三しゅう書房発行)、456頁 (乙第11号証-1)「ソフト・ドリンクス実務便覧」(野村鉄男編著、昭和52年8月10日、株式会社食品資材研究会発行)「オレンジ・ソーダ」(34頁) (乙第11号証-2)「ソフト・ドリンクス実務便覧」(野村鉄男編著、昭和52年8月10日、株式会社食品資材研究会発行)「レモン・ソーダ」(36頁) (乙第12号証)「三訂 総合食料工業」(桜井芳人ら編、昭和53年10月15日、株式会社恒星社厚生閣発行)、401頁 (乙第13号証-1)「JIS Z 8144 官能評価分析-用語」(平成16年3月20日、財団法人日本規格協会発行)、5頁及び16頁 (乙第13号証-2)「JIS Z 9080 官能評価分析-方法」、(平成16年3月20日、財団法人日本規格協会発行)、目次、8-9頁及び18-20頁 (乙第14号証)「新版 官能検査ハンドブック」(日科技連官能評価検査委員会編、1995年3月7日、株式会社日科技連出版社発行、304-307頁、844-845頁) (乙第15号証)2014年7月16日付け芳仲幸治氏作成の実験報告書 (乙第16号証)飲料用語事典49頁「果糖」(平成11年6月25日、株式会社ビバリッジ ジャパン社発行) 第6 証拠の記載事項 本件特許の優先日前に頒布された刊行物である以下の甲号証には、それぞれ以下の事項が記載されている。下線は当審で加えたものである。 1 甲第1号証:国際公開WO00/24273号パンフレット (甲1a)「本発明は、高甘味度甘味料であるスクラロースの新規用途に関する。」(要約書) (甲1b)「本発明は、アルコール飲料に特定量のスクラロースを配合することによって各種アルコール飲料が本来有する風味をより一層引き出し、風味や芳醇に優れたアルコール飲料が得られるという知見に基づくものである。 本発明においてアルコール飲料とは、・・・リキュール(果汁入りリキュールを含む)・・・等が広く含まれる。」(74頁10~16行) (甲1c)「本発明は、嗜好性飲料にスクラロースを配合することによって各種嗜好性飲料が本来有する風味をより一層引き出し、風味に優れた飲料が得られるという知見に基づくものである。 本発明において嗜好性飲料とは、・・・果実飲料・・・も含まれる。 なお、ここで果実飲料には果汁を含む食品一般が広く包含され、例えば・・・果汁入り炭酸・・・が含まれる。」(75頁5~17行) (甲1d)「本発明は、スクラロースを果汁・果実含有食品に添加配合することによってフルーツの風味を引きだたせることができ、フルーツ感やフレッシュ感が一層向上した食品が得られるという知見に基づくものである。 本発明が対象とする果汁含有食品には果汁を含む食品一般が広く包含され・・・果汁入り炭酸飲料・・・等の各種飲料;果汁入りリキュールなどのアルコール類・・・を挙げることができる。」(80頁下から5行~81頁4行) (甲1e)「本発明によれば、スクラロースの配合によって果汁や果実の風味や香りが一層引きだたされ、フルーツ感並びにフレッシュ感の風味よい食品を調製することができる。」(82頁1~3行) (甲1f)「実施例(IV-1-1)  梅フィズ ホワイトリカー     15.00(kg) クエン酸(結晶)*    0.35 スクラロース       0.015 5倍濃縮梅透明果汁    0.10 着色料*         0.02 香料*          0.20 水            残 部 合 計          50.00L 上記処方に従って、水にクエン酸、スクラロース及び5倍濃縮梅透明果汁を加え、撹拌しながら90℃まで加熱後40℃まで冷却し、ホワイトリカー、着色料及び香料を加え5℃まで冷却しシロップを得た。このシロップ100mlを容器にとり炭酸水を加えて200mlとし、70℃で20分間加熱して殺菌し、梅フィズを得た。得られた梅フィズは、アルコールの苦味が抑えられ、良好な甘味と芳醇な梅酒の風味を備えていた。」(150頁8~22行) (甲1g)「実施例(IV-1-2)  カンパリ風オレンジ飲料 5倍濃縮オレンジ果汁   5.00(kg) クエン酸(結晶)*    0.10 スクラロース       0.0125 95%アルコール     5.00 着色料*         0.05 香料*          0.40 水             残 部 合 計         100.00 L 上記処方に従って、水にスクラロース、5倍濃縮オレンジ果汁及びクエン酸を加え、撹拌しながら溶解し、93℃に達したところで着色料、香料及びアルコールを加え、容器に充填してカンパリ風オレンジ飲料を得た。得られたカンパリ風オレンジ飲料は、良好な甘味を備え、アルコールの刺々しい苦味が抑えられ、ビターオレンジとスパイス、ハーブの快い苦味が生かされた飲料であった。」(150頁23行~151頁9行) (甲1h)「実施例(IV-1-3)  果汁入りワイン炭酸飲料 <シロップ> 果糖ブドウ糖液糖        20.00(kg) レモン果汁            3.00 5倍濃縮ホワイトグレープ果汁   1.50 5倍濃縮ライム果汁        1.00 5倍濃縮リンゴ果汁        1.50 スクラロース           0.0006 ソーマチン            0.10 クエン酸(結晶)         0.20 着色料(ホモゲン1249)*   0.10 香料*              0.80 メイケンシャトーワイン     80.00 水                 残 部 合 計             100.00 L 上記処方に従って、水にスクラロース、各種果汁、クエン酸、果糖ブドウ糖液糖及びソーマチンを加えて撹拌しながら溶解し、93℃に達したところで着色料、香料及びシャトーワインを加え、混合してシロップを得た。このシロップ100mlを容器にとり、炭酸水で200mlに調製して果汁入りワイン炭酸飲料を得た。得られた果汁入りワイン炭酸飲料は、スクラロース無添加の炭酸飲料に比べ、ワインの芳醇なフレーバーと特有のさわやかな渋味が増強されていた。」(151頁10行~152頁1行) (甲1i)「実施例(IV-2-8)ミント風味スパークリングウォーター <シロップ> スクラロース          0.0003(kg) 砂糖              0.60 クエン酸(結晶)        0.01 食塩              0.012 乳酸カルシウム         0.008 塩化カリウム          0.005 ペパーミントエキストラクト*  0.03 ペパーミントフレーバー*    0.20 水                残 部 合 計              100.00 L 上記処方に従って、水にペパーミントエキストラクト及びペパーミントフレーバー以外の原料を加えて撹拌しながら加熱して溶解し、93℃に達したところでペパーミントエキストラクト及びペパーミントフレーバーを加え、室温まで冷却してシロップを得た。このシロップ150mlを容器に入れ、炭酸水を加えて200mlとし、ミント風味スパークリングウォーターを得た。得られたミント風味スパークリングウォーターは、スクラロース無添加のものに比べ、ミントのさわやかさと炭酸の刺激感のバランスが向上したものであった。」(156頁4~22行) (甲1j)「実施例(IV-2-11) アップル炭酸飲料 <シロップ> スクラロース      0.0006(kg) 果糖ブドウ糖液糖    5.00 5倍濃縮リンゴ果汁  11.00 クエン酸(結晶)    0.10 着色料*        0.05 香料*         0.10 水            残 部 合 計         65.00 L 上記処方に従って、水に香料以外の成分を加えて撹拌しながら加熱して溶解し、93℃に達したところで香料を加え、室温まで冷却してシロップを得た。このシロップ130mlを容器に入れ、炭酸水を加えて200mlとし、70℃で20分間加熱殺菌して、アップル炭酸飲料を得た。得られた炭酸飲料は、スクラロース無添加のものに比べ、良好な甘味とアップルのみずみずしい果汁感が増強したアップル炭酸飲料であった。」(157頁下から5行~158頁11行) (甲1k)「実施例(IV-2-12) グレープ果汁入り炭酸飲料 <シロップ> スクラロース        0.014(kg) 5倍濃縮グレープ透明果汁  4.40 クエン酸(結晶)      0.25 着色料*          0.05 香料*           0.20 水               残 部 合 計           45.00 L 上記処方に従って、水にスクラロース、5倍濃縮グレープ透明果汁及びクエン酸を加え、撹拌しながら加熱して溶解し、93℃に達したところで着色料及び香料を加え、室温まで冷却してシロップを得た。このシロップ90mlを容器に入れ、炭酸水を加えて200mlとし、70℃で20分間加熱して殺菌し、グレープ果汁入り炭酸飲料を得た。得られた炭酸飲料は、良好な甘味とグレープのみずみずしい果汁感が増強したグレープ果汁入り炭酸飲料であった。」(158頁12~26行) 2 甲第2号証:特開平10-136953号公報 (甲2a)「炭酸飲料は従来、甘味料として主に蔗糖や異性化糖などのを用い、これらの糖類水溶液に果汁、植物の抽出物、乳製品、フレーバーを加え炭酸ガスを圧入し容器に充填したもので、その爽快な刺激感、あっさりした風味とさわやかな清涼感から嗜好性の高い飲料として大変好まれる飲料である。」(段落【0002】) (甲2b)「本発明の炭酸飲料は微炭酸飲料のガス圧に比し1.5~3.0kg/cm2と高く、刺激味、炭酸味が強くなっているので、酸味と甘味のバランスから甘味料を増加した方が好ましい。」(段落【0007】) (甲2c)「高甘味度甘味料の含有量は、炭酸飲料の低カロリー性及び甘味を向上し、「しつこさ」を抑制するために炭酸飲料の0.005~0.033重量%・・・とする。」(段落【0009】) (甲2d)「本発明の炭酸飲料においては、甘味料の他に各種フレーバーや果汁等の着色料を添加しても良い。フレーバーや果汁としては、柑橘、その他果実からの抽出フレーバー、レモン、レモンライム、シトロン、ラムネ、オレンジ、グレープ、アップル等果汁や植物の種実、根茎、木皮、葉花またはこれからの抽出物が挙げられる。」(段落【0012】) (甲2e)「容器内ガス圧が1.5kg/cm2未満の場合は炭酸飲料と風味上刺激味が弱くパンチがない。3.0kg/cm2を超えると、飲食した際に口腔内における甘味よりも炭酸による刺激が著しく強いので嗜好性が落ち、また炭酸ガスの強い発泡で飲食しにくい。」(段落【0015】) 3 甲第3号証:特開2000-4852号公報 (甲3a)「本発明者らは、かかる課題を解消すべく検討を重ねた結果、これら呈苦味性低カロリー甘味料を使用した飲料に対して特定容量の炭酸ガスを加えることにより、独特の苦味等を改善し、柔らかい口当たりとキレのある後味を与えることができることを見出して、本発明を完成するに到った。」(段落【0005】) (甲3b)「【発明の実施の形態】本発明の炭酸飲料の組成等については特に制限はなく、例えば果汁、甘味料、酸味調整剤、ビタミン類、香料等を水に含有させ、これに炭酸ガスを加えたものである。これらの原料については日本農林規格に適合するものであればよく、用途などを考慮して種類や量などを適宜選択して用いればよい。また、製造法についても特別の条件はない。」(段落【0007】) 4 甲第5号証:特開平10-136952号公報 (甲5a)「炭酸飲料は従来、甘味料として主に蔗糖や異性化糖などのを用い、これらの糖類水溶液に果汁、植物の抽出物、乳製品、フレーバーを加え炭酸ガスを圧入し容器に充填したもので、その爽快な刺激感、あっさりした風味とさわやかな清涼感から嗜好性の高い飲料として大変好まれる飲料である。」(段落【0002】) (甲5b)「本発明の炭酸飲料においては、甘味料の他に各種フレーバーや果汁等や着色料を添加しても良い。フレーバーや果汁としては、柑橘、その他果実からの抽出フレーバー、レモン、レモンライム、シトロン、ラムネ、オレンジ、グレープ、アップル等果汁や植物の種実、根茎、木皮、葉花またはこれからの抽出物が挙げられる。」(段落【0011】) (甲5c)「容器内ガス圧が0.5kg/cm2未満の場合は炭酸飲料として製造することが困難であり、1.5kg/cm2以上では、飲食した際に口腔内における甘味よりも炭酸による刺激が強いので嗜好性が落ち好ましくない。又この範囲内に於いてガス圧が低い場合には、炭酸の刺激味と炭酸味が弱くなるので、酸と甘味のバランスから、甘味を低減することが出来る。」(段落【0014】) 5 甲第6号証:特開昭53-69860号公報 (甲6a)「本発明者は上述の如き果肉入炭酸飲料の困難性を克服し、果肉を多量に含みながら炭酸飲料の特性を維持しながら、健康飲料としての内容も充分保持した風味良好な果汁入炭酸飲料を製造せんと研究し、」(1頁右下欄13~17行) (甲6b)「 」(2頁右上欄第1表) (甲6c)「 」(3頁右下欄第4表) (甲6d)「実施例1 オレンジピューレー90kg、砂糖68kg、クエン酸0.87kg、香料0.6kgに水190Lを加えて調合し、Bx34度、酸度0.68%のオレンジシラツプを調製する。次いで、92℃30秒間のプレート殺菌を行い、3倍容量の水で稀釈し、Bx12.5に調製する。続いて炭酸ガス吸収及び缶詰充填を行い、巻締密封してウオーマー殺菌機により76℃10分の条件で殺菌を行う。 この方法によつてBx12.5度、酸度0.25%、パルプ量2.5%、ガス圧2.1Volの内容を持つオレンジ果汁率15%含有の果肉(パルプ質)含有炭酸飲料を得た。得られた製品は3ヶ月室温に放置し試験を行った結果第4表の(1)に示すように長期間良好な品質を保つた。 実施例2 グレープピューレー90kg、砂糖61kg、クエン酸0.3kg、香料0.4kgに水190Lを加えて調合し、Bx33度、酸度0.54%のグレープシラツプを得た。このグレープシラツプを92℃、30秒間プレート殺菌を行つた後3倍容量の水で稀釈し、Bx12.0度に調製後、炭酸ガスを吸収させ缶詰充填を行い巻締密封後ウオーマー殺菌機により76℃、10分間殺菌した。 上記方法でBx12度、酸度0.2%、パルプ量4%、ガス圧21Vol(当審注:「2.1Vol」の誤記)の内容を持つグレープ果汁率15%含有の果肉(パルプ質)入炭酸飲料を得た。この製品は3ヶ月間室温で保存して第4表(2)に示すように良好な品質を保つた。 実施例3 レモンパルプサツクス(Bx1度、酸度0.35%、パルプ量50%)13.5kgに加水量の一部を加えてミクログレーダー(パルプカッター)処理によつてパルプの大きさ約2m/mとなし、これにレモンコンクジュース8.2kg、ビタミンC 0.15kgを加えて原液となし、この原液に砂糖60kg、香料0.7kg及び水を加えて、Bx38.4度、酸度1.47%のレモンシラツプを得た。これを92℃、30秒間のプレート殺菌を行つた後、加水してBx12.8度に稀釈した。次いで炭酸ガス吸収及び缶詰充填を行い巻締後密封し、ウオーマー殺菌機により76℃、10分の殺菌を行つた。 この方法により得た製品はBx12.8度、酸度0.49%、パルプ量2.5%、ガス圧2.1Volを有し、レモン果汁率12%の果肉(パルプ質)入炭酸飲料を得た。 この製品は3ヶ月常温で保存後第4表(3)に示す如く長期間良好な品質を保つた。」(3頁右上欄15行~4頁右上欄13行) 6 甲第7号証:特開昭58-51880号公報 (甲7a)「実施例3 果汁入り炭酸飲料(果汁分30%) ・・・1/5りんご透明果汁を得た。この果汁を用い、以下の配合で果汁入り炭酸飲料(果汁分30%)を製造した。 上記1/5りんご透明果汁    6  w/w% 砂糖             4   〃 ブドウ糖果糖液糖(Bx75°)  5.5 〃 dl-リンゴ酸        0.2 〃 クエン酸ナトリウム      0.03〃 着香料            0.1 〃 処理水            9.17〃 小計(シロツプ)     25   〃 炭酸水          75   〃 合計          100.0 w/w% 上記配合物を80℃で30分殺菌した。製品のガス圧は2.0kg/cm2(20℃)であつた。」(4頁左下欄5行~右下欄12行) 7 甲第10号証:特開2000-312580号公報 (甲10a)「果汁及び炭酸を含有するアルコール飲料であって、有機酸含量〔クエン酸換算〕が0.1w/v%以上、アルコール濃度が1v/v%以上~10v/v%以下、pHが3.0以上~4.5以下、ガスボリュームが1.3以上~3.5以下の成分組成を有する果汁及び炭酸含有アルコール飲料。」(【請求項2】) (甲10b)「以上のようにして得られたアルコール飲料、すなわち有機酸含量〔クエン酸換算〕0.1~0.6%(w/v)、アミノ態窒素1.0~5.0mg%(w/v)、ブリックス1.0~5.0、ビタミンC1.0~5.0mg%(w/v)及びアルコール濃度10%(v/v)以下であり、改質果汁を含有するアルコール飲料は、対照の果汁を用いたものと比較した場合、原料由来の好ましい成分を多く含んでアルコールとも良くなじみ、更に官能検査においてもマイルドな味に仕上がり、果汁の旨味が生かされるとの結果が得られた。」(段落【0021】) 8 甲第11号証:特開平8-149967号公報 (甲11a)「本発明では、食品添加物である精製又は濃縮されたナリンジンを使用することもできるが、ナリンジンを多く含む柑橘類の果実や果皮の搾汁を所望の含有量となるように、ベースとなる飲料に加えてもよい。このナリンジンは、カフェイン強化飲料を製造するどの段階で加えてもよい。なお、本発明のカフェイン強化飲料に炭酸を加えてもよく、これにより口内に刺激味を与え、爽快感がプラスされることから、カフェインの眠気抑制効果を助長することができる。しかし苦味抑制にはマイナス効果であり、炭酸の添加量を増すに従いカフェイン強化飲料の苦味は増大する。したがって、本発明のカフェイン強化飲料に炭酸を加える場合、ナリンジンの苦味抑制効果を阻害しないように、炭酸の添加量を調節することが望ましい。」(段落【0007】) (甲11b)「本発明のベースとなる飲料のブリックスは、前記のように6~20、好ましくは10~18、より好ましくは12~16とするのが適当である。このようにブリックスを限定するのは、6よりも小さいと嗜好飲料として無味でおいしさに欠けるからであり、20よりも大きいと甘味が口内に残存し、くどい味覚となり飲料として適さないからである。」(段落【0010】) 9 甲第12号証:特開平7-48267号公報 (甲12a)「イチョウ葉エキスと烏梅エキスの比率は、イチョウ葉エキスの原生薬換算量1に対しての烏梅エキスの原生薬換算が1.0×10-4~100、好ましくは0.01~10の範囲である。また、前記エキスを含有する健康飲料は、前記エキスの外に、甘味料、酸味料、香料、その他の成分を必要に応じて添加し調製する。このようにして調製された健康飲料は嗜好性等の点を考慮すると、全固形分濃度がBrix0.1~30.0、好ましくは1.0~20.0、酸度が1.0×10-4~1.0、好ましくは0.05~0.5であることが好ましい。」(段落【0007】) (甲12b)「・・・更に必要に応じて、嗜好性の向上及び商品価値の付与の目的で、モモ、ウメ、プルーン、アンズ、グレープフルーツ、リンゴなどの果汁を添加することができる。・・・」(段落【0008】) 10 甲第13号証:特開平5-49456号公報 (甲13a)「調合した濃厚液を6℃以下に冷却し缶に充填した。一方、処理水をカーボネータにてガス水とし、これを前記缶に封入し、炭酸ガスフロー下で巻締めを行なった。上記調合液はBrix8.0、pH2.6、ガスボリューム2.4であった。200ml缶に充填し規定の殺菌を処し炭酸ガス入り紫蘇飲料を製造した。又、Brix、pH、ガスボリューム、使用紫蘇葉重量を色々と変化させたサンプル缶詰を製造し、若者層のパネルによる嗜好性テストを行った。その結果嗜好性の良好な範囲は次の表4の通りであった。」(段落【0021】) (甲13b)「【表4】 」(段落【0022】) 第7 当審の判断 平成26年12月4日付け弁駁書(第2回目)において、請求人が審決予告に基づく訂正請求(第2回目)によっても依然として解消されていないと主張する無効理由2-1、無効理由2-2、無効理由4から先に順次、以下に当審の判断を示すこととする。 1 無効理由2-1について 上記「第2」に示すように訂正請求(第2回目)が認められることから、無効理由2-1は、本件訂正発明1、3、5、7ないし9が、甲第1号証に記載された発明及び周知・慣用技術に基づいて、当業者において容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 (1)本件訂正発明1について ア 甲第1号証(甲1k)に記載された発明 甲第1号証の実施例(IV-2-12)に記載された「グレープ果汁入り炭酸飲料」の各成分の含有量について本件訂正発明の観点で計算すると以下のようになる。 (ア)果物の搾汁(果汁) 「グレープ果汁入り炭酸飲料」の果汁は、5倍濃縮グレープ透明果汁だけであるから、5倍濃縮液であることを考慮して算出すると、22.0w/v%となる。 (計算式:4.4kg(5倍濃縮グレープ透明果汁)×5(倍濃縮)÷45L×90ml/200ml×100=22.0w/v%) 上記のw/v%を飲料の密度で除することにより重量%に換算できる。そこで甲第1号証の飲料の密度について検討する。 グレープ果汁入り炭酸飲料の作製において、スクラロース、5倍濃縮グレープ透明果汁等の成分に水を加えて45Lのシロップを作製している。ここで45L(45kg)の水を加えたと仮定した場合、シロップの密度は1.11kg/Lとなる(計算式:(0.014+4.40+0.25+0.05+0.20+45)÷45=1.11)。実際には、5倍濃縮グレープ透明果汁等の容積もあることから、加える水の量は45L(45kg)未満となり、実際のシロップの密度は1.11kg/L未満となる。 甲第1号証では、このシロップ90mlに炭酸水110mlを加えて200mlのグレープ果汁入り炭酸飲料を作製している。炭酸ガスの密度は1.976g/L(0℃、1atm)(化学大辞典編集委員会(1997)『化学大辞典』共立出版)であり、炭酸ガスの密度は液体の水に比べて極めて小さい。200m1のグレープ果汁入り炭酸飲料の炭酸ガスの含有量が4容量の場合であっても、炭酸ガスの重量は0.788g程度である(0℃、1atm)。0.788gの炭酸ガスが炭酸水100m1中に含まれていると仮定しても、炭酸水の密度は、1.01g/mlである。このように、炭酸水の密度は水に近く、シロップの密度を超えることはないものと考えられる。従って、シロップを炭酸水で薄めて作製されたグレープ入り炭酸飲料の密度は、シロップの密度を超えることはない。 このように甲第1号証に記載されたグレープ果汁入り炭酸飲料の密度は、少なくとも水の密度とシロップの密度の間にあるといえ、シロップの密度を高めにみなして1.11kg/Lとしても、1.0~1.11の間にあると認められる。 したがって、「グレープ果汁入り炭酸飲料」中の果汁の重量%は、19.8~22.0w/w%(重量%)の間にあるといえる。 (イ)炭酸ガス 「炭酸水」と記載されているだけであるから、炭酸ガスの含有量は不明である。 (ウ)可溶性固形分含量 乙第3号証に記載された計算式に基づいて「グレープ果汁入り炭酸飲料」の可溶性固形分含量を算出した。 ・「グレープ果汁入り炭酸飲料」の可溶性固形分含量:2.53度 (計算式:0.014(スクラロース)+4.4(5倍濃縮グレープ透明果汁)×0.504(明細書の実施例1からの換算値)+0.25(クエン酸)+0.05(着色料)+0(香料)+0(炭酸水)=2.53) (エ)甘味量の砂糖甘味換算 明細書の実施例1に記載された「5倍濃縮グレープ果汁(果糖50重量%含有)」の換算方法および明細書(本件特許公報9頁24行~10頁24行)に記載された砂糖甘味換算表を用いて、「グレープ果汁入り炭酸飲料」の甘味量の砂糖甘味換算を行うと以下のようになる。 ・5倍濃縮グレープ透明果汁:2.86w/v% (計算式:4.40÷45×90/200×100×0.5(果糖50重量%含有)×1.3(相対比)=2.86) ・スクラロース:8.4w/v% (計算式:0.014÷45×90/200×100×600(相対比)=8.4) ・全甘味量:11.26w/v% (計算式:2.86w/v%+8.4w/v%=11.26w/v%) ・全甘味量における高甘味度甘味料(スクラロース)の割合:74.6% (計算式:8.4w/v%÷11.26w/v%×100=74.6%) ・高甘味度甘味料におけるスクラロースの割合:100% 上記(ア)に記載したように、甲第1号証に記載された「グレープ果汁入り炭酸飲料」の密度は、少なくとも1.0~1.11の間にあるといえることから、全甘味量のw/v%を重量%(w/w%)に換算すると、全甘味量は、10.14~11.26重量%の間にあるといえる。 (オ)まとめ 以上の結果をまとめると、甲第1号証の実施例(IV-2-12)に記載された「グレープ果汁入り炭酸飲料」(甲1k)の成分含有量は以下のようになり、甲第1号証には、下記の成分含量を有するグレープ果汁入り炭酸飲料に係る発明(以下、「甲第1号証発明」という。)が記載されていると認められる。 果物の搾汁        19.8~22.0重量% 炭酸ガス                 不明 可溶性固形分含量            2.53度 全甘味量       10.14~11.26重量% 全甘味量における高甘味度甘味料の割合  74.6% 高甘味度甘味料におけるスクラロースの割合 100% イ 本件訂正発明1と甲第1号証発明の対比 そこでまず、本件訂正発明1と甲第1号証発明を対比する。 (ア)果物の搾汁(果汁) 「果物の搾汁」について、前者の「10~80重量%」には、後者の「19.8~22.0重量%」が含まれているので、両者は「10~80重量%」の範囲内である点で一致する。 (イ)甘味量(砂糖甘味換算による分量表示) 「全甘味量の砂糖甘味換算」について、前者の「8~14重量%」には、後者の「10.14~11.26重量%」が含まれているので、両者は「8~14重量%」の範囲内である点で一致する。 また、両者は「高甘味度甘味料」として「スクラロース」を含む点で一致しており、全甘味量における高甘味度甘味料の割合について、前者の「砂糖甘味換算で25重量%以上」には、後者の「74.6%」が含まれているので、両者は「25重量%以上」の範囲内である点で一致する。 さらに、高甘味度甘味料におけるスクラロースの割合について、前者の「砂糖甘味換算量で50重量%以上」には、後者の「100%」が含まれるので、両者は、「砂糖甘味換算量で50重量%以上」の範囲内である点で一致する。 (ウ)まとめ 以上、本件訂正発明1と甲第1号証発明を対比すると、両者は、以下の一致点および相違点を有する。 (一致点) 下記の処方を有することを特徴とする炭酸飲料: (1)果物又は野菜の搾汁を10~80重量%の割合で含む、 (2)炭酸ガスを含む、 (3)可溶性固形分を含む、 (4)全甘味量が砂糖甘味換算で8~14重量%である (5)スクラロースを含む高甘味度甘味料を含む、 (6)スクラロースを含む高甘味度甘味料によって付与される甘味の全量が、全甘味量100重量%あたり、砂糖甘味換算で25重量%以上を占める、 (7)全ての高甘味度甘味料によって付与される甘味の全量100重量%のうち、スクラロースによって付与される甘味量が、砂糖甘味換算量で50重量%以上である。 (相違点1) 前者が「炭酸ガスを2ガスボリュームより多く含む」のに対して、後者の炭酸ガスの含有量が不明である点。 (相違点2) 前者が「可溶性固形分含量が屈折糖度計示度で4~8度である」のに対して、後者の可溶性固形分含量が「2.53度」である点 ウ 相違点に対する判断 相違点1と相違点2を併せて検討する。 (ア)課題の容易想到性について 本体訂正発明1は、「植物成分の豊かな味わいと炭酸ガスの爽やかな刺激感(爽快感)をバランス良く備えた植物成分含有炭酸飲料を提供すること」を課題としているものの(本件特許公報3頁13~14行)、植物成分を含む炭酸飲料において、植物成分の風味と炭酸の刺激感(爽快感)をバランス良く備えた炭酸飲料を提供することは、周知の課題であると認められる。 例えば、甲第1号証には、スクラロースを添加した「ミント風味スパークリングウォーター」において、「スクラロース無添加のものに比べ、ミントのさわやかさと炭酸の刺激感のバランスが向上した」(甲1i)ことが記載されており、甲第2号証には、「炭酸飲料は従来、甘味料として主に蔗糖や異性化糖などのを用い、これらの糖類水溶液に果汁、植物の抽出物、乳製品、フレーバーを加え炭酸ガスを圧入し容器に充填したもので、その爽快な刺激感、あっさりした風味とさわやかな清涼感から嗜好性の高い飲料として大変好まれる飲料である。」(甲2a)と記載され、甲第5号証にも同様の記載がある(甲5a)。 したがって、甲第1号証の「グレープ果汁入り炭酸飲料」において、植物成分の風味と炭酸の刺激感(爽快感)とのバランスを改善しようと試みることは、当業者であれば容易に着想できることである。 (イ)課題解決手段の容易想到性について 10~80重量%の割合で果汁を含む炭酸飲料において、上記(ア)に記載した周知の課題(植物成分の風味と炭酸の刺激感<爽快感>をバランス良く備えた炭酸飲料を提供すること)を達成するために、本件訂正発明1における相違点1(炭酸ガスを2ガスボリュームより多く含む)および相違点2(可溶性固形分含量が屈折糖度計示度で4~8度である)に係る課題解決手段を当業者が容易に想到し得るか否かを以下に検討する。 a 可溶性固形分含量 請求人が指摘するように、乙第3号証の4頁によれば、甲第2、3、5号証には可溶性固形分含量が屈折糖度計示度で4~8度の炭酸飲料が記載されている。 しかしながら、甲第2および5号証において、実施例1~8に記載されているのはレモン果汁2重量%の炭酸飲料であり、実施例9~12に記載されているのはレモン果汁1.6重量%の炭酸飲料であるから、本件訂正発明1のように「10~80重量%の割合で果汁を含む炭酸飲料」ではなく、周知の課題(植物成分の風味と炭酸の刺激感<爽快感>をバランス良く備えた炭酸飲料を提供すること)を当業者が意識するとは直ちには判断できず、少なくとも当該課題に基づいて可溶性固形分含量を操作したことは記載されていない。 また、請求人が提出した甲第10~13号証には、本件訂正発明1の「可溶性固形分含量が屈折糖度計示度で4~8度」の数値範囲を形式上包含する炭酸飲料が記載されている。 しかしながら、甲第10号証において本件訂正発明1の可溶性固形分含量の数値範囲を満たす実施例1にはレモン果汁0.5重量%のアルコール飲料しか記載されておらず、甲第11号証には「本発明のベースとなる飲料のブリックスは、・・・好ましくは10~18、より好ましくは12~16とするのが適当である。」(甲11b)と記載され、実施例に本件訂正発明1の数値範囲を満たすものはなく、甲第12号証の実施例では果汁が添加されておらず、本件訂正発明1の数値範囲ではない。そして、甲第10~13号証のいずれにも上記周知の課題のために可溶性固形分含量を操作したことは記載されていない。 してみると、請求人が提出した証拠を参酌しても、周知の課題(植物成分の風味と炭酸の刺激感<爽快感>をバランス良く備えた炭酸飲料を提供すること)を解決するために、可溶性固形分含量を操作することは当業者が容易に想到し得ることとは言えない。 b 炭酸ガス 甲第2号証(甲2d、甲2e)、甲第3号証(甲3a、甲3b)、甲第5号証(甲5b、甲5c)に記載されるように、果汁入り炭酸飲料において、炭酸の刺激感を調整するために、炭酸飲料中における炭酸ガスの含有量を調整することは、当業者における周知・慣用技術に過ぎない。また、甲第6号証(甲6a、甲6b、甲6d)、甲第7号証(甲7a)に記載されるように、果汁と炭酸ガスの両方とも多く含む炭酸飲料は公知である。 しかしながら、10~80重量%の割合で果汁を含む炭酸飲料において、上記(ア)に記載した周知の課題(植物成分の風味と炭酸の刺激感<爽快感>をバランス良く備えた炭酸飲料を提供すること)を達成するために、相違点2(可溶性固形分含量)と併せて、相違点1(炭酸ガス)を操作することは当業者が容易に想到し得ることとは言えない。 c まとめ したがって、10~80重量%の割合で果汁を含む炭酸飲料において、上記(ア)に記載した周知の課題(植物成分の風味と炭酸の刺激感<爽快感>をバランス良く備えた炭酸飲料を提供すること)を達成するために、本件訂正発明1における相違点1(炭酸ガスを2ガスボリュームより多く含む)および相違点2(可溶性固形分含量が屈折糖度計示度で4~8度である)に係る課題解決手段を当業者が容易に想到し得るとは言えない。 (ウ)本件訂正発明1の効果 訂正明細書の発明の詳細な説明の実施例1~4おいては、本件訂正発明1の数値範囲を満たす果汁入り炭酸飲料が「口当たり」「爽快感」「フルーツの風味感」において優れていることが確認されている。 相違点1(炭酸ガスを2ガスボリュームより多く含む)および相違点2(可溶性固形分含量が屈折糖度計示度で4~8度である)に注目すると、実施例1(50%ブドウ果汁)では3.0ガスボリュームと5.1度であり、実施例2(20%リンゴ果汁+1%レモン果汁+10%人参搾汁)では2.5ガスボリュームと4.5度であり、実施例3(20%リンゴ果汁を含むティーソーダ飲料)では2.2ガスボリュームと4.6度であり、実施例4(33%リンゴ果汁を含む炭酸アルコール飲料)では2.6ガスボリュームと6.0度である。 一方、訂正明細書の発明の詳細な説明の比較例1~3においては、本件訂正発明1の数値範囲を満たさない果汁入り炭酸飲料が「口当たり」「爽快感」「フルーツの風味感」において劣ることが確認されている。具体的には、比較例1ではスクラロースを含まず相違点2(可溶性固形分含量)が9.0度であり、比較例2では果汁が5%であり、比較例3では相違点1(炭酸ガス)が1.5ガスボリュームである。 また、相違点2(可溶性固形分含量)に関しては、甲第1号証発明と比較するため、乙第7号証に係る実験報告書において、甲第1号証発明の可溶性固形分含量2.6度に比べて、本件訂正発明の数値範囲(4~8度)に含まれる可溶性固形分含量4.2度、6.1度、7.7度の配合のほうが「口当たり」「爽快感」「フルーツの風味感」において優れていることも確認されている。 したがって、本件訂正発明1の数値範囲において、甲各号証からは得られない格別顕著な効果が奏されるものと認められる。 エ 本件訂正発明1のまとめ よって、本件訂正発明1が、甲第1号証に記載された発明及び周知・慣用技術に基づいて、当業者において容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とすることはできない。 (2)本件訂正発明3、5、7ないし9について 本件訂正発明3、5、7ないし9は、本件訂正発明1の発明特定事項のすべて含むものである。 したがって、上記(1)に記載したように、本件訂正発明1が甲第1号証に記載された発明及び周知・慣用技術に基づいて当業者において容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とすることはできない以上、本件訂正発明3、5、7ないし9も甲第1号証に記載された発明及び周知・慣用技術に基づいて当業者において容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とすることはできない。 (3)無効理由2-1のまとめ 本件訂正発明1、3、5、7ないし9は、甲第1号証に記載された発明及び周知・慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とすることはできない。 よって、請求人の主張する無効理由2-1には理由がない。 2 無効理由2-2について 上記「第2」に示すように訂正請求(第2回目)が認められることから、無効理由2-2は、本件訂正発明1、3、5、7ないし9が、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 上記「1」では、甲第1号証に記載された発明に加えて、甲第2号証に記載された発明を含めた周知・慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである、とすることはできない、と判断している。 具体的には、乙第3号証の4頁によれば、甲第2号証には可溶性固形分含量が屈折糖度計示度で4~8度の炭酸飲料が記載されているが、甲第2号証において、実施例1~8に記載されているのはレモン果汁2重量%の炭酸飲料であり、実施例9~12に記載されているのはレモン果汁1.6重量%の炭酸飲料であるから、本件訂正発明1、3、5、7ないし9のように「10~80重量%の割合で果汁を含む炭酸飲料」ではなく、周知の課題(植物成分の風味と炭酸の刺激感<爽快感>をバランス良く備えた炭酸飲料を提供すること)を当業者が意識するかは必ずしも明らかではなく、当該課題に基づいて可溶性固形分含量を操作したことも記載されていない。 してみると、上記「1」に記載したように、本件訂正発明1、3、5、7ないし9が、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、とすることはできない。 3 無効理由4について 無効理由4は、訂正明細書の記載内容及び出願時の技術常識を考慮しても、実施例の内容を本件訂正発明において規定された数値及び/又は材料の全範囲に拡張乃至一般化できるものではないから、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていないというものである。 具体的には、請求人は、(1)スクラロースを少量だけ含み、他の高甘味度甘味量を主として使用する場合も特許明細書等の特許請求の範囲に含まれるにもかかわらず、訂正明細書の実施例において効果が確認されていないこと、(2)本件訂正発明が甲第1号証発明とは数値のみが相違する数値限定発明であるにもかかわらず、その数値の技術的意義が実験データにより示されていないことを主張している。 (1)に関しては、上記「第2」に示すように訂正請求(第2回目)が認められることから、本件訂正発明は「全ての高甘味度甘味料によって付与される甘味の全量100重量%のうち、スクラロースによって付与される甘味量が、砂糖甘味換算量で50重量%以上である」ことが規定され、「スクラロースを含む高甘味度甘味料によって付与される甘味の全量が、全甘味量100重量%あたり、砂糖甘味換算で25重量%以上を占める」ことと併せると、「スクラロースを少量だけ含み、他の高甘味度甘味量を主として使用する場合」は本件訂正発明に含まれない。 (2)に関して、訂正明細書の発明の詳細な説明の実施例1~4おいては、本件訂正発明1の数値範囲を満たす果汁入り炭酸飲料が「口当たり」「爽快感」「フルーツの風味感」において優れていることが充分に確認されている。 特に、本件訂正発明1と甲第1号証発明の相違点1(炭酸ガスを2ガスボリュームより多く含む)および相違点2(可溶性固形分含量が屈折糖度計示度で4~8度である)に注目して訂正明細書の実施例の数値を摘記すると、実施例1(50%ブドウ果汁)では炭酸ガス3.0ガスボリュームと可溶性固形分含量5.1度であり、実施例2(20%リンゴ果汁+1%レモン果汁+10%人参搾汁)では炭酸ガス2.5ガスボリュームと可溶性固形分含量4.5度であり、実施例3(20%リンゴ果汁を含むティーソーダ飲料)では炭酸ガス2.2ガスボリュームと可溶性固形分含量4.6度であり、実施例4(33%リンゴ果汁を含む炭酸アルコール飲料)では炭酸ガス2.6ガスボリュームと可溶性固形分含量6.0度である場合に、「口当たり」「爽快感」「フルーツの風味感」において優れていることが確認されている。 一方、訂正明細書の発明の詳細な説明の比較例1~3においては、本件訂正発明1の数値範囲を満たさない果汁入り炭酸飲料が「口当たり」「爽快感」「フルーツの風味感」において劣ることが確認されている。具体的には、比較例1ではスクラロースを含まず相違点2(可溶性固形分含量)が9.0度であり、比較例2では果汁が5%であり、比較例3では相違点1(炭酸ガス)が1.5ガスボリュームである。 なお、相違点2(可溶性固形分含量)に関しては、甲第1号証発明と比較するため、乙第7号証に係る実験報告書において、甲第1号証発明の可溶性固形分含量2.6度に対して、本件訂正発明の数値範囲(4~8度)に含まれる可溶性固形分含量4.2度、6.1度、7.7度の配合のほうが「口当たり」「爽快感」「フルーツの風味感」において優れていることも確認されている。 してみると、本件訂正発明が甲第1号証発明とは数値のみが相違する数値限定発明であるにもかかわらず、その数値の技術的意義が実験データにより示されていないとも言えない。 したがって、訂正明細書の発明の詳細な説明の記載内容及び出願時の技術常識を考慮しても、実施例の内容を本件訂正発明において規定された数値及び/又は材料の全範囲に拡張乃至一般化できるものではないから、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていない、とすることはできない。 4 無効理由1について 上記「第2」に示すように訂正請求(第2回目)が認められることから、無効理由1は、本件訂正発明1、3、5、7ないし9が、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないというものである。 上記1(1)イ(ウ)に記載したように、本件訂正発明1と甲第1号証発明を対比すると、以下の相違点を有する。 (相違点1) 前者が「炭酸ガスを2ガスボリュームより多く含む」のに対して、後者の炭酸ガスの含有量が不明である点。 (相違点2) 前者が「可溶性固形分含量が屈折糖度計示度で4~8度である」のに対して、後者の可溶性固形分含量が「2.53度」である点 したがって、本件訂正発明1が、甲第1号証発明であるとはいえない。 また、甲第1号証に記載されたその他の実施例においても、炭酸ガスの含有量は記載されていないことから、本件訂正発明1が、甲第1号証に記載された発明であるとは言えない。 そして、本件訂正発明3、5、7ないし9は、本件訂正発明1と同様に、「炭酸ガスを2ガスボリュームより多く」含むことから、甲第1号証に記載された発明であるとは言えない。 よって、請求人の主張する無効理由1には理由がない。 5 無効理由3について 上記3に記載したように、本件訂正発明が甲第1号証発明とは数値のみが相違する数値限定発明であるにもかかわらず、その数値の技術的意義が実験データにより示されていないとも言えない。 したがって、訂正明細書の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないから、特許法第36条第4項第1号の要件を満たしていない、とすることはできない。 6 無効理由5-1について 訂正明細書等において、抽出液等を含まない「果物又は野菜の搾汁」が本件訂正発明の対象となったことから、「植物成分」として抽出液を含む場合、その抽出液の含有量を特定することは不可能であるから、特許請求の範囲の「植物成分を10~80重量%の割合で含む」という記載は、不明確であり、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない、とすることはできない。 7 無効理由5-2について 無効理由5-2は、甘味相対比は、一般に人の味覚で決める甘さの指標であり、測定条件によって変動するため、一義的に決まるものではないから、特許請求の範囲の「砂糖甘味換算」という記載は、不明確であり、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない、というものである。 しかしながら、砂糖の甘味1に対する各種甘味成分の甘味の相対比(砂糖甘味換算値)は、訂正明細書(本件特許公報9頁19~20行)に記載の通り、公知の砂糖甘味換算表などから求めることができ、また訂正明細書(本件特許公報9頁24行~10頁24行)に掲載する表は、本件優先日当時の当業界における技術常識を示す文献(ビバリッジ ジャパン社「飲料用語事典」平成11年6月25日発行)に記載されている公知の「砂糖甘味換算表」から抜粋したものであるから、砂糖甘味換算量は、訂正明細書に記載する「砂糖甘味換算表」を始め、公知の「砂糖甘味換算表」を利用することで算出することが可能であると認められる。 したがって、請求人の主張する無効理由5-2には理由がない。 8 無効理由5-3について 無効理由5-3は、炭酸ガスの含有量を示す単位として「容量%」は一般的ではなく、発明の詳細な説明中にも特段定義されていないから、特許請求の範囲の「炭酸ガス」の「容量%」という記載は、不明確であり、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない、というものである。 しかしながら、上記「第2」に記載したように、訂正明細書等において「容量%」や「V/V%」という記載が「ガスボリューム」に訂正されたことから、請求人の主張する無効理由5-3には理由がない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張するいずれの無効理由にも理由がない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2013-800191

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