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特許無効審判

2013-800159

容器詰飲料

審判番号
2013-800159
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2012-212900
登録番号
特許第5256370号(P5256370)
請求日
2013年08月29日
審決日
2018年06月13日
公報発行日
2018年10月26日
結論
請求成立(無効)
当事者
  • 【請求人】三栄源エフ・エフ・アイ 株式会社
  • 【請求人代理人】特許業務法人三枝国際特許事務所
  • 【被請求人】花王 株式会社
  • 【被請求人代理人】特許業務法人アルガ特許事務所
  • 【被請求人代理人】高野 登志雄
  • 【被請求人代理人】中嶋 俊夫
  • 【被請求人代理人】村田 正樹
  • 【被請求人代理人】山本 博人
審判長/審判官
  • 審判長 田村 嘉章
  • 審判官 紀本 孝
  • 審判官 山崎 勝司
分類
P1113.113-ZDA(A23L) / P1113.121-ZDA(A23L) / P1113.537-ZDA(A23L) / P1113.536-ZDA(A23L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第134条の2第6項、特許法第167条の2第1号、特許法第134条の2第1項、特許法第134条の2第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項、特許法第29条第2項、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

上記当事者間の特許第5256370号「容器詰飲料」の特許無効審判事件についてされた平成27年8月21日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において請求項6及び8ないし16に係る発明に対する部分の審決取消しの判決(平成27年(行ケ)第10201号、平成29年1月31日)があったので、審決が取り消された部分の請求項及び確定していない請求項4に係る発明についてさらに審理のうえ、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 特許第5256370号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔4、8〕、6、〔9~16〕について訂正することを認める。 特許第5256370号の請求項4、6、8~16に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、その27分の3を請求人の負担とし、27分の24を被請求人の負担とする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 1.一次審決までの経緯 本件特許第5256370号は、平成24年9月26日に出願され(特願2012-212900号、優先権主張平成23年9月27日)、平成25年4月26日に特許権の設定登録がされたもので、以降の一次審決までの手続の経緯は、概略以下のとおりである。 平成25年 8月29日 無効審判請求(請求項1~16に対し) 同年11月18日 被請求人より、訂正請求(第1回)及び答弁書 提出 平成26年 1月17日 請求人より、弁駁書(第1回)提出 同年 7月18日 請求人より、口頭審理陳述要領書提出 同年 7月22日 被請求人より、口頭審理陳述要領書提出 同年 8月 5日 口頭審理、訂正拒絶理由及び無効理由を通知 同年 9月 4日 請求人より、上申書提出 同年 9月 4日 被請求人より、訂正請求(第2回)及び意見書 提出 同年10月 6日 被請求人より、上申書提出 同年12月26日 審決予告 平成27年 3月 9日 被請求人より、訂正請求(第3回)及び上申書 提出 同年 3月10日 請求人より、上申書提出 同年 4月20日 請求人より、弁駁書(第2回)提出 同年 6月 4日 補正許否の決定 同年 7月 8日 被請求人より、答弁書提出 同年 8月21日 一次審決 なお、平成25年11月18日付け訂正請求(第1回)と平成26年9月4日付け訂正請求(第2回)は、平成27年3月9日付け訂正請求(第3回)がなされたため、特許法第134条の2第6項の規定により、取り下げられたものとみなす。 2.一次審決 上記一次審決の結論は、「請求のとおり訂正を認める。特許第5256370号の請求項1、3、4に係る発明についての特許を無効とする。特許第5256370号の請求項2、5ないし16に係る発明についての審判請求は、成り立たない。審判費用は、その16分の13を請求人の負担とし、16分の3を被請求人の負担とする。」というものであった。 3.審決取消訴訟 請求人は、上記一次審決中、請求項9~16について「請求のとおり訂正を認める。」との部分及び「特許第5256370号の請求項2、5ないし16に係る発明についての審判請求は成り立たない。」との部分の取消しを求めて、平成27年9月29日に知的財産高等裁判所に訴えを提起した。 知的財産高等裁判所は、上記訴えを、平成27年(行ケ)第10201号事件として審理し、平成29年1月31日に「特許庁が無効2013-800159号事件について平成27年8月21日にした審決のうち、請求項6及び8ないし16に係る部分を取り消す。原告のその余の請求を棄却する。」との判決を言渡し、該判決はその後確定した(以下、この判決を単に「判決」という。)。 4.差戻し後の審理について 上記経緯より、一次審決のうち、請求項1~3、5、7について訂正を認める部分、請求項1、3に係る発明についての特許を無効とする部分、請求項2、5、7に係る発明についての審判請求は成り立たないとする部分の審決は確定した。 なお、一次審決のうち、請求項4に係る部分について訴えは提起されなかったが、請求項4と請求項8は一群の請求項であるから、請求項4及び8からなる一群の請求項に係る部分の審決は確定していない(特許法第167条の2第1号)。 よって、差戻し後の本件無効審判においてさらに審理すべき請求項は、請求項4、6、8~16である。 そして、平成30年2月22日付けで審決の予告を行い、期間を指定して訂正の機会を与えたが、被請求人から応答はなかった。 第2 平成27年3月9日付け訂正請求による訂正について 1.訂正の内容 (1)請求項4及び8からなる一群の請求項に係る訂正 (1-1)訂正事項B1 請求項4を独立形式の請求項に訂正する。 (1-2)訂正事項B2 独立形式の請求項4における「(B)炭素数3~7の飲用可能な脂肪族アルコール」とあるを、「(B)1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、プロピレングリコール及びグリセリンから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコール」と訂正する。 (1-3)訂正事項B3 独立形式の請求項4における成分(B)に係る含有量「0.0004質量%以上1質量%未満」とあるを、「0.001質量%以上1質量%未満」と訂正する。 (1-4)訂正事項B4 独立形式の請求項4に「(成分(A)及び(B)が、酵素処理イソクエルシトリン15質量部に対してグリセリン20質量部及びエタノール20質量部からなる場合、並びに酵素処理イソクエルシトリン15質量部に対してグリセリン35質量部及びエタノール20質量部からなる場合を除く)」との記載を付加する。 (1-5)訂正事項B5 請求項8の更なる限定要件として「成分(B)が1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール及びプロピレングリコールから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコールであり、」との記載を付加する。 (1-6)訂正事項B6 請求項8における「請求項1~7のいずれか1項に」とあるを、「請求項4」と訂正する。 (2)請求項6に係る訂正 (2-1)訂正事項C1 請求項6を独立形式の請求項に訂正する。 (2-2)訂正事項C2 独立形式の請求項6における「エタノール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、グリセリン及びプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種」とあるを、「イソアミルアルコール、1-ヘキサノール及びプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種」と訂正する。 (2-3)訂正事項C3 独立形式の請求項6における成分(B)に係る含有量「0.0004質量%以上1質量%未満」とあるを、「0.001質量%以上1質量%未満」と訂正する。 (3)請求項9~16からなる一群の請求項に係る訂正 (3-1)訂正事項D1 請求項9における「容器詰飲料」に「加熱殺菌された」との記載を付加する。 (3-2)訂正事項D2 請求項9における「(B)炭素数2~7の飲用可能な脂肪族アルコール」とあるを、「(B)エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、プロピレングリコール及びグリセリンから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコール」と訂正する。 (3-3)訂正事項D3 請求項9における成分(B)に係る配合量「0.0004質量%以上1質量%未満」とあるを、「0.001質量%以上1質量%未満」と訂正する。 (3-4)訂正事項D4 請求項9における「色調変化抑制方法」に「イソクエルシトリン及びその糖付加物の」との記載を付加する。 (3-5)訂正事項D5 請求項11における成分(B)に係る配合量「0.001質量%以上1質量%未満」とあるを、「0.005質量%以上1質量%未満」と訂正する。 (3-6)訂正事項D6 請求項12における「炭素数3~7の飲用可能な脂肪族アルコールを使用する」とあるを、「1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、プロピレングリコール及びグリセリンから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコールを使用し、」と訂正する。 (3-7)訂正事項D7 請求項12の更なる限定要件として「成分(B)を0.01質量%以上1質量%未満配合する」との記載を付加する。 (3-8)訂正事項D8 請求項13における「成分(B)として、下記化合物群αから選ばれる少なくとも1種を使用する」及び「〔化合物群α〕エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、4-ヘプタノール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン」とあるを、「成分(B)として、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール及びプロピレングリコールから選択される少なくとも1種を使用し、」と訂正する。 (3-9)訂正事項D9 請求項13の更なる限定要件として「成分(B)を0.01質量%以上1質量%未満配合する」との記載を付加する。 (3-10)訂正事項D10 請求項14における「エタノール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、グリセリン及びプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種」とあるを、「イソアミルアルコール、1-ヘキサノール及びプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種」と訂正する。 (3-11)訂正事項D11 請求項16における「当該容器詰飲料か加熱殺菌されたものである、請求項9~15のいずれか1項に記載の色調変化抑制方法。」とあるを、「55℃で7日間保存した後の容器詰飲料のL*a*b*表色系におけるb*値から、製造直後の容器詰飲料のL*a*b*表色系におけるb*値を減じた値が2以下であり、前記b*値が前記容器詰飲料を試料として光路長10mmの石英セルに入れて分光光度計により測定されたものである、請求項9~15のいずれか1項に記載の色調変化抑制方法。」と訂正する。 2.訂正の適否 (1)請求項4及び8からなる一群の請求項に係る訂正について (1-1)訂正事項B1について(請求項4に係る訂正) 訂正事項B1は、訂正前の請求項4が請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係解消を目的として、請求項1の記載を引用しない独立形式請求項へ訂正するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (1-2)訂正事項B2について(請求項4に係る訂正) 訂正事項B2は、訂正前の請求項4における「(B)炭素数3~7の飲用可能な脂肪族アルコール」を、その下位概念である「(B)1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、プロピレングリコール及びグリセリンから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコール」へ限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許明細書に「本発明で使用するアルコール類としては、色調安定性の観点から、炭素数1~7の脂肪族アルコールが好ましい。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール等のプロパノール類、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール等のブタノール類、アミルアルコール、イソアミルアルコール、・・、1-ヘキサノール、・・、プロピレングリコール、・・、グリセリン、・・、プロピレングリコール等の多価アルコール等を挙げることができる。」(段落【0026】)と記載され、本件特許の請求項5に「成分(B)が下記化合物群αから選ばれる少なくとも1種である、・・の容器詰飲料。〔化合物群α〕 エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、・・、1-ヘキサノール、・・、プロピレングリコール、・・、グリセリン」と記載されているから、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (1-3)訂正事項B3について(請求項4に係る訂正) 訂正事項B3は、訂正前の請求項4が引用していた請求項1における成分(B)に係る含有量「0.0004質量%以上1質量%未満」を「0.001質量%以上1質量%未満」へ限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、成分(B)の含有量を「0.001質量%以上1質量%未満」とすることは、本件特許の請求項3の「成分(B)の含有量が0.001質量%以上1質量%未満である」、および本件特許明細書の記載(段落【0027】)「成分(B)の含有量の範囲としては、0.001質量%以上1質量%未満、・・が好ましい。」に基づくものであるから、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (1-4)訂正事項B4について(請求項4に係る訂正) 訂正事項B4は、(2-1)訂正事項B1により独立形式となった請求項4に、「(成分(A)及び(B)が、酵素処理イソクエルシトリン15質量部に対してグリセリン20質量部及びエタノール20質量部からなる場合、並びに酵素処理イソクエルシトリン15質量部に対してグリセリン35質量部及びエタノール20質量部からなる場合を除く)。」との構成要件を付加して、甲第1号証及び甲第12~14号証との重複部分を除くものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、特許請求の範囲に公知技術を含む瑕疵があるとして特許無効理由があると解される虞れがある場合の、訂正前の請求項に記載した事項の記載表現を残したままでその重なりのみを除く訂正であり、本件願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものであって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (1-5)訂正事項B5について(請求項8に係る訂正) 訂正事項B5は、訂正前の請求項8に「成分(B)が1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール及びプロピレングリコールから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコールであり」との構成要件を更に付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上述の(1-2)訂正事項B2と同様な理由により、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (1-6)訂正事項B6について(請求項8に係る訂正) 訂正事項B6は、訂正前の請求項8が「請求項1~7のいずれか1項」の記載を引用する記載であったものを、請求項1~3及び5~7の記載を引用しないものとするものであり、引用する請求項を減少するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (2)請求項6に係る訂正について (2-1)訂正事項C1について(請求項6に係る訂正) 訂正事項C1は、訂正前の請求項6が請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係解消を目的として、請求項1を引用しない独立形式請求項へ訂正するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (2-2)訂正事項C2について(請求項6に係る訂正) 訂正事項C2は、訂正前の請求項6における「エタノール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、グリセリン及びプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種」を「イソアミルアルコール、1-ヘキサノール及びプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種」へ限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そしてこの訂正は、択一的に記載された要素の削除であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2-3)訂正事項C3について(請求項6に係る訂正) 訂正事項C3は、訂正前の請求項6が引用していた請求項1における成分(B)に係る含有量「0.0004質量%以上1質量%未満」を「0.001質量%以上1質量%未満」へ限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 上述の(1-3)訂正事項B3と同様な理由により、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)請求項9~16からなる一群の請求項に係る訂正について (3-1)訂正事項D1について(請求項9に係る訂正) 訂正事項D1は、訂正前の請求項9が「イソクエルシトリン及びその糖付加物を含有する容器詰飲料の色調変化抑制方法」であったものを「イソクエルシトリン及びその糖付加物を含有する加熱殺菌された容器詰飲料の色調変化抑制方法」と、「加熱殺菌された」との構成要件を付加して「容器詰飲料」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、「容器詰飲料」を「加熱殺菌された容器詰飲料」とすることは、「加熱殺菌されたものである」(本件特許の【請求項8】、【請求項16】)に基づくものであるから、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3-2)訂正事項D2について(請求項9に係る訂正) 訂正事項D2は、訂正前の請求項9における上位概念である「炭素数2~7の飲用可能な脂肪族アルコール」を、その下位概念である「エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、プロピレングリコール及びグリセリンから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコール」へ限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、上述の(1-2)訂正事項B2と同様な理由により、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3-3)訂正事項D3について(請求項9に係る訂正) 訂正事項D3は、訂正前の請求項9における成分(B)に係る配合量「0.0004質量%以上1質量%未満」を「0.001質量%以上1質量%未満」へ限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 上述の(1-3)訂正事項B3と同様な理由により、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3-4)訂正事項D4について(請求項9に係る訂正) 訂正事項D4は、訂正前の請求項9における「色調変化抑制方法」に「イソクエルシトリン及びその糖付加物の」との記載を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、「色調変化抑制方法」を「イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制方法」とすることは、本件特許明細書段落【0007】に「フラボノール配糖体を始めとするポリフェノールは一般に酸化されやすいため、それを含有する飲料を長期間にわたって保存すると徐々に着色が進んで色調が大きく変化してしまう。本発明者は、酵素処理イソクエルシトリンを飲料に配合し、それを高濃度化するに従い色調変化が顕在化することを見出した。・・したがって、本発明の課題は、長期間保存しても色調変化のし難いイソクエルシトリン及びその糖付加物を含有する容器詰飲料を提供することにある。」と記載され、また実施例7、実施例12には、実施例1の飲料と比較して、サンメリンパウダーC-10の添加量が多いことのみ相違し、△b*値、製造直後と保存後のb*値が実施例1の飲料よりも高い(表1)ことが示されていることに基づくものであるから、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3-5)訂正事項D5について(請求項11に係る訂正) 訂正事項D5は、訂正前の、訂正前の請求項11における成分(B)に係る配合量「0.001質量%以上1質量%未満」を「0.005質量%以上1質量%未満」へ限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、成分(B)の含有量を「0.005質量%以上1質量%未満」とすることは、本件特許明細書の記載(段落【0027】)「本発明の容器詰飲料中の(B)アルコール類の含有量は0.0004質量%以上1質量%未満であるが、より一層の色調変化抑制の観点から、・・、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上」に基づくものであるから、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3-6)訂正事項D6について(請求項12に係る訂正) 訂正事項D6は、訂正前の請求項12における「炭素数3~7の飲用可能な脂肪族アルコール」を、その下位概念である「1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、プロピレングリコール及びグリセリンから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコール」へ限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上述の(1-2)訂正事項B2と同様な理由により、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3-7)訂正事項D7について(請求項12に係る訂正) 訂正事項D7は、訂正前の請求項12における「色調変化抑制方法」について「成分(B)を0.01質量%以上1質量%未満配合する」との構成要件を更に付加して「色調変化抑制方法」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、成分(B)の含有量を「0.01質量%以上1質量%未満」とすることは、本件特許明細書の記載(段落【0027】)「本発明の容器詰飲料中の(B)アルコール類の含有量は0.0004質量%以上1質量%未満であるが、・・、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上」に基づくものであるから、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3-8)訂正事項D8について(請求項13に係る訂正) 訂正事項D8は、訂正前の請求項13に係る〔化合物群α〕に列挙された飲料可能なアルコールを「1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール及びプロピレングリコールから選択される少なくとも1種」へ限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、この訂正は、択一的に記載された要素の削除であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3-9)訂正事項D9について(請求項13に係る訂正) 訂正事項D9は、訂正前の請求項13における「色調変化抑制方法」について「成分(B)を0.01質量%以上1質量%未満配合する」との構成要件を更に付加して「色調変化抑制方法」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 上述の(3-7)訂正事項D7と同様な理由により、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3-10)訂正事項D10について(請求項14に係る訂正) 訂正事項D10は、訂正前の請求項14における「エタノール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、グリセリン及びプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種」を「イソアミルアルコール、1-ヘキサノール及びプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種」へ限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、この訂正は、択一的に記載された要素の削除であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3-11)訂正事項D11について(請求項16に係る訂正) 訂正事項D11は、訂正前の請求項16が請求項9に組み込まれたことに伴い、請求項9を引用する請求項16について、訂正前の請求項16の「当該容器詰飲料が加熱殺菌されたものである」との構成要件を削除した上で、訂正前の請求項16に係る「色調変化抑制方法」について「55℃で7日間保存した後の容器詰飲料のL*a*b*表色系におけるb*値から、製造直後の容器詰飲料のL*a*b*表色系におけるb*値を減じた値が2以下であり、前記b*値が前記容器詰飲料を試料として光路長10mmの石英セルに入れて分光光度計により測定されたものである」との構成要件を更に付加して限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許明細書に「また、本発明の容器詰飲料は、色調安定性の観点から、55℃で7日間保存した後の容器詰飲料のb*値から、製造直後の容器詰飲料のb*値を減じた値(Δb*)が、2以下、・・であることが好ましい。ここで、「b*値」とは、色をL*a*b*表色系で表現したときに色相、彩度を表す座標値の一つであって、黄色方向の彩度を示す座標値である。」(段落【0035】)、及び「分光光度計(形式Color Meter ZE-2000、日本電色工業社製)を使用し、試料を光路長10mmの石英セルに入れてL*a*b*表色系のb*値を測定した。」(段落【0057】)と記載されているから、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3.訂正の可否についての結論 以上のとおり、本件訂正は、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び4号に掲げられた事項を目的とするものである。 そして、本件訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、訂正後の請求項〔4、8〕、6、〔9~16〕について本件訂正を認める。 第3 本件発明 上記第2のとおりであるから、本件の請求項4、6、8~16に係る発明(以下、それぞれ「本件発明4」、「本件発明6」、「本件発明8」~「本件発明16」という。)は、平成27年3月9日付け訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項4、6、8~16に記載された以下のとおりのものである。 【請求項4】 次の成分(A)及び(B): (A)イソクエルシトリン及びその糖付加物  0.03~0.25質量%、 (B)1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、プロピレングリコール及びグリセリンから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコール 0.001質量%以上1質量%未満 を含有し、 pHが2~5である容器詰飲料(成分(A)及び(B)が、酵素処理イソクエルシトリン15質量部に対してグリセリン20質量部及びエタノール20質量部からなる場合、並びに酵素処理イソクエルシトリン15質量部に対してグリセリン35質量部及びエタノール20質量部からなる場合を除く)。 【請求項6】 次の成分(A)及び(B): (A)イソクエルシトリン及びその糖付加物 0.03~0.25質量%、 (B)イソアミルアルコール、1-ヘキサノール及びプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種 0.001質量%以上1質量%未満 を含有し、 pHが2~5である、容器詰飲料。 【請求項8】 成分(B)が1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール及びプロピレングリコールから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコールであり、 加熱殺菌されたものである、請求項4記載の容器詰飲料。 【請求項9】 イソクエルシトリン及びその糖付加物を含有する加熱殺菌された容器詰飲料の色調変化抑制方法であって、 次の成分(A)及び(B)を、 (A)イソクエルシトリン及びその糖付加物 0.03~0.25質量%、 (B)エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、プロピレングリコール及びグリセリンから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコール 0.001質量%以上1質量%未満 となるように配合し、pHを2~5に調整する、イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制方法。 【請求項10】 成分(A)と成分(B)を、成分(A)に対する成分(B)の質量比[(B)/(A)]が0.05~30となるように配合する、請求項9記載の色調変化抑制方法。 【請求項11】 成分(B)を、0.005質量%以上1質量%未満配合する、請求項9又は10記載の色調変化抑制方法。 【請求項12】 成分(B)として、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、プロピレングリコール及びグリセリンから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコールを使用し、成分(B)を0.01質量%以上1質量%未満配合する、請求項9~11のいずれか1項に記載の色調変化抑制方法。 【請求項13】 成分(B)として、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール及びプロピレングリコールから選択される少なくとも1種を使用し、成分(B)を0.01質量%以上1質量%未満配合する、請求項9~11のいずれか1項に記載の色調変化抑制方法。 【請求項14】 成分(B)として、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール及びプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種を使用する、請求項9~11のいずれか1項に記載の色調変化抑制方法。 【請求項15】 pHを3.3~5に調整する、請求項9~14のいずれか1項に記載の色調変化抑制方法。 【請求項16】 55℃で7日間保存した後の容器詰飲料のL*a*b*表色系におけるb*値から、製造直後の容器詰飲料のL*a*b*表色系におけるb*値を減じた値が2以下であり、 前記b*値が前記容器詰飲料を試料として光路長10mmの石英セルに入れて分光光度計により測定されたものである、 請求項9~15のいずれか1項に記載の色調変化抑制方法。 第4 請求人の主張及び証拠方法 1.請求人の主張 請求人は、「特許第5256370号発明の特許請求の範囲の請求項1~16に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」との審決を求め、無効理由1~38を主張していたところ、差戻し後の本件無効審判においてさらに審理すべき請求項4、6、8~16について主張する無効理由は、以下のとおりである。 (無効理由8)請求項4に係る発明は、甲第1及び12~14号証に記載の発明とそれぞれ同一であり、新規性を有しない。 (無効理由9)請求項4に係る発明は、甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第12~14号証より、進歩性を有しない。 (無効理由12)請求項6に係る発明は、甲第1及び12~14号証に記載の発明とそれぞれ同一であり、新規性を有しない。 (無効理由13)請求項6に係る発明は、甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第12~14号証より、進歩性を有しない。 (無効理由16)請求項8に係る発明は、甲第1及び12~14号証に記載の発明とそれぞれ同一であり、新規性を有しない。 (無効理由17)請求項8に係る発明は、甲第1号証、及び甲第7~14及び20~23号証に対し進歩性を有しない。 (無効理由18)請求項9に係る発明は、甲第1及び12~14号証に記載の発明とそれぞれ同一であり、新規性を有しない。 (無効理由19)請求項9に係る発明は、甲第1号証、及び甲第7~14及び20~23号証に対し進歩性を有しない。 (無効理由20)請求項10に係る発明は、甲第1及び12~14号証に記載の発明とそれぞれ同一であり、新規性を有しない。 (無効理由21)請求項11に係る発明は、甲第1及び12~14号証に記載の発明とそれぞれ同一であり、新規性を有しない。 (無効理由22)請求項12に係る発明は、甲第1及び12~14号証に記載の発明とそれぞれ同一であり、新規性を有しない。 (無効理由23)請求項12に係る発明は、甲第1、3、4及び12~14号証に対し進歩性を有しない。 (無効理由24)請求項13に係る発明は、甲第14号証により新規性を有しない。 (無効理由25)請求項13に係る発明は、甲第1号証および甲第12~14号証、甲第26号証に対し進歩性を有しない。 (無効理由26)請求項14に係る発明は、甲第1及び12~14号証に記載の発明とそれぞれ同一であり、新規性を有しない。 (無効理由27)請求項14に係る発明は、甲第1、3、4及び12~14号証に対し進歩性を有しない。 (無効理由28)請求項15に係る発明は、甲第13号証により新規性を有しない。 (無効理由29)請求項15に係る発明は、甲第1、12及び14号証に対し進歩性を有しない。 (無効理由30)請求項16に係る発明は、甲第1及び12~14号証に記載の発明とそれぞれ同一であり、新規性を有しない。 (無効理由31) 本件発明の容器詰飲料は、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、プロピレングリコール及びグリセリンから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコールを含んでいる。 これに対し、本件明細書の実施例には、アルコールとしてエタノール、グリセリン、イソアミルアルコール及び1-ヘキサノールを用いた場合の容器詰飲料の保存前後での△b*値が記載されているにすぎない。本願明細書及び技術常識を参酌しても、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、プロピレングリコールといった脂肪族アルコールにおいても同様の色調変化抑制効果が発揮されるとは認められず、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし、一般化できるとはいえない。 よって、請求項4、6、8~16に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (無効理由32) 本件発明の容器詰飲料は、飲用可能な脂肪族アルコールを0.001質量%以上1質量%未満含んでいる。 これに対し、本件明細書の実施例には、アルコールとしてエタノールを0.01質量%、0.10質量%もしくは0.50質量%、グリセリンを0.10質量%、0.50質量%もしくは0.60質量%、イソアミルアルコールを0.50質量%、1-ヘキサノールを0.50質量%配合した場合の容器詰飲料の保存前後での△b*値が記載されているにすぎない。 出願時の技術常識に照らしても、本件明細書の記載からは、実施例6(0.01質量%)よりもさらに1/10以下の水準である0.001質量%でも同様の色調変化抑制効果が発揮されるとは認められず、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし、一般化できるとはいえない。 よって、請求項4、6、8~16に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (無効理由34) 第1回訂正後の請求項13は、発明の範囲が不明確であるため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (無効理由35) 請求項16は、記載要件を満たしていないものであり、特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (無効理由36) 請求項9~16は、記載要件を満たしていないものであり、特許法第36条第4項第1号ならびに第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。 (無効理由37) 請求項9~16は、記載要件を満たしていないものであり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (無効理由38) 請求項9~16は、記載要件を満たしていないものであり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 2.証拠方法 請求人は、証拠方法として以下の甲第1号証~甲第39号証を提出している。 甲第1号証:嶋林博「Technical Report 酵素処理イソク エルシトリンがFEMA GRASに認可される」(Foods Food Ingredients J.Jpn.,Vol.210, N0.8,2005,800頁~805頁及び奥付) 甲第2号証:試験報告書 甲第3号証:FOOD TECHNOLOGY(257), FEBRUARY 1965、155、157、161、171、174 、176、191頁及び奥付 甲第4号証:特開2005-15686号公報 甲第5号証:犬飼ら「市販飲料の糖分、酸性度」(2011-6 食育フォ ーラム、13頁~14頁及び奥付) 甲第6号証:多田浩子、吉川光一「市販リンゴ果汁飲料の緩衝能、酸度およ び糖含量」(調理科学Vol.24,No.1(1991)、28頁~3 1頁及び奥付) 甲第7号証:特開2000-333653号公報 甲第8号証:特開2008-173109号公報 甲第9号証:特開2010-131008号公報 甲第10号証:厚生労働省ホームページ「食品別の規格基準について」の 「清涼飲料水」の項 (http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/jigyousya/shokuhin_kikaku/dl/01.pdf) 甲第11号証:食品衛生小六法 平成25年版 261頁、 1050~1059頁及び奥付 (以上、審判請求書に添付。) 甲第12号証:国際公開公報WO01/48091号パンフレット 甲第13号証:特開2008-131888 甲第14号証:鷲野 乾「フラボノイド系天然抗酸化剤について」(ニュー フードインダストリー 第30巻 第12号 38~43頁 昭和63年 12月1日発行) 甲第15号証:試験報告書 甲第16号証:試験報告書 甲第17号証:特開2009-280550 甲第18号証:木村 進ら「食品の変色の化学」1頁 平成7年10月30 日発行 甲第19号証:吉村 麻紀子ら「肥満傾向および肥満者に対するエンジュポ リフェノール(酵素処理イソクエルシトリン)配合飲料の体脂肪低減作用 および安全性の検証」(薬理と治療36(10)(2008)919-9 30頁) 甲第20号証:手塚 裕和「缶詰清涼飲料の製造と微生物管理」(環境衛生 と微生物検査の栞「es」 No.41、2006年1月発行) 甲第21号証:「缶・びん詰、レトルト食品のすべて」12、13、156 ~159頁 平成19年5月11日発行 甲第22号証:特開平02-086757 甲第23号証:特開平08-112076 甲第24号証:天然香料基原物質の解説 385~386頁 平成11年8 月25日発行 甲第25号証:試験報告書 甲第26号証:試験報告書 (以上、平成26年1月17日付け弁駁書に添付。) 甲第27号証:福島大学教育実践研究紀要第29号 11~14頁 甲第28号証:特開2006-188672 甲第29号証:株式会社 光琳発行「食品と劣化」 282及び283頁 甲第30号証:株式会社 光琳発行「新・食品殺菌工学」 348~355 頁 甲第31号証:株式会社 光琳発行「新・食品殺菌工学」 412~413 頁 (以上、平成26年9月4日付け上申書に添付。) 甲第32号証:果実飲料入門 98~101頁 昭和62年9月21日発行 甲第33号証:試験報告書 甲第34号証:試験報告書 甲第35号証:KONICAMINOLTA 色を読む話 50~51頁 甲第36号証:ColorMeterZE-2000(日本電色工業社製)のカタログ 甲第37号証:特開2005-143461 甲第38号証:試験報告書 甲第39号証:簡明 食辞林 732~733頁 平成6年5月2日発行 (以上、平成27年4月20日付け弁駁書に添付。) 3.各甲号証の記載内容 請求人の提出した甲号証には、以下の記載がある。また、下線は当審にて付記したものである。 (1)甲第1号証 (甲1-a)「3.製造法 酵素処理イソクエルシトリンは、「「ルチン酵素分解物」とでん粉又はデキストリンの混合物に、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼを用いてグルコースを付加して得られたものである」と既存添加物名簿収載品目リストに記載されている。詳しくは、ルチンに部分加水分解酵素(ラムノシダーゼ)を作用させてルチンの糖鎖部に含まれるラムノース残基を取り除き、ルチン酵素分解物(イソクエルシトリン)とする。ついで、このイソクエルシトリンにデキストリンの存在下、糖転移酵素(シクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ)を作用させ、グルコースがα1,4結合で付加した酵素処理イソクエルシトリンとしたものである(図2)。 」(第800頁左欄下から3行~同頁右欄第11行、図2) (甲1-b)「三栄源エフ・エフ・アイ株式会社では、水溶性を高め、飲食品などの酸化防止に使用しやすくなった酵素処理イソクエルシトリンを主剤とした、3種類の酸化防止剤製剤を開発、製造、販売している。液体製剤として、サンメリン○R(当審注:Rを○で囲んだ記号で、登録商標であることを示すものである。以下同様。)AO-1007及びサンメリン○RAO-3000と、粉末製剤として、酵素処理イソクエルシトリンにL-アスコルビン酸を配合したサンメリン○RパウダーC-10とを取り揃えている(表1)。いずれの製品も、実用使用濃度では飲食品の風味や色合いに影響を与えずに使用することができる。 」(第800頁右欄第13行~第801頁左欄第5行、第801頁表1) (甲1-c)「5-1.色素の変退色防止、安定化 食品が光に暴露されると着色料や素材由来の色素成分が退色し、色素によっては退色と同時にオフフレーバーが生じる。しかし、サンメリン○RAO-1007を添加することにより各種食品の変退色を防止することができる。 図3、図4に天然着色料(赤キャベツ色素、パプリカ色素)及び合成着色料(食用黄色5号、食用青色1号)に対するサンメリン○RAO-1007の退色防止効果を示す。 また、フラボノール化合物である酵素処理イソクエルシトリンをアントシアニン系色素液に添加すると、フラボノールと類似の構造をしたアントシアニン系色素と分子間で会合して安定化し、増色効果や深色効果(コピグメント効果)を示す(図5)。 」(第802頁左欄第6行~19行、図5) (甲1-d)「 」(第801頁 図3) (甲1-e)「 」(第802頁 図4) (2)甲第2号証 (甲2-a) 「サンメリン○RAO-1007添加による飲料のpH変化確認試験 ◆目的 FFIジャーナル(VOL.210、2005)に記載されているモデル飲料(Brix13°、クエン酸0.2%、pH3.0)を調製し、サンメリン○RAO-1007を添加したときのpHの変化を測定する。 ◆試験法 下記処方にてモデル飲料(Brix13°、pH3.0)を調製した。このモデル飲料にサンメリン○RAO-1007(Lot.121112-01)を0.5%添加してpHを測定した。 <モデル飲料処方>     (W/W)% 果糖ブドウ糖液糖     17 クエン酸         0.2 クエン酸3ナトリウム   pH3.0に調整(飽和溶液を用いて) 赤キャベツ色素      0.05 ___________________________ イオン交換水にて     100 ◆pH測定結果 製造直後のpH       3.0 AO-1007添加後のpH 3.0 ◆まとめ 調製したモデル飲料(Brix13°、pH3.0)にサンメリン○RAO-1007を0.5%添加してもpHの変化は観察されなかった。」(第1頁) (3)甲第10号証 (甲10-a)「4. 清涼飲料水は、容器包装に充てんし、密栓若しくは密封した後殺菌するか、又は自記温度計をつけた殺菌器等で殺菌したもの若しくはろ過器等で除菌したものを自動的に容器包装に充てんした後、密栓若しくは密封しなければならない。この場合の殺菌又は除菌は、次の方法で行わなければならない。ただし、容器包装内の二酸化炭素圧力が20°で98kPa以上であって、かつ、植物又は動物の組織成分を含有しないものにあっては、殺菌及び除菌を要しない。 a pH4.0未満のものの殺菌にあっては、その中心部の温度を65°で10分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法で行うこと。」(13頁目、2清涼飲料水の製造基準(1)4) (4)甲第11号証 (甲11-a) 「○食品,添加物の規格基準 (昭和34年12月28日厚生省告示第370号)      最終改正 平成24年8月20日厚生労働省告示第484号 食品衛生法(昭和22年法律第233号)第7条第1項及び第10条の規定に基き,食品,添加物等の規格基準を次のように定め,食品,添加物,器具及び容器包装の規格及び基準(昭和23年7月厚生省告示第54号。以下「旧規格基準」という。)及び食品衛生試験法(昭和23年12月厚生省告示第106号)は廃止する。」(第261頁第1行~8行) (甲11-b)「4. 清涼飲料水は、容器包装に充てんし,密栓若しくは密封した後殺菌するか,又は自記温度計をつけた殺菌器等で殺菌したもの若しくはろ過器等で除菌したものを自動的に容器包装に充てんした後,密栓若しくは密封しなければならない。この場合の殺菌又は除菌は,次の方法で行わなければならない。ただし、容器包装内の二酸化炭素圧力が20°で98kPa以上であって,かつ、植物又は動物の組織成分を含有しないものにあっては、殺菌及び除菌を要しない。 a pH4.0未満のものの殺菌にあっては,その中心部の温度を65°で10分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法で行うこと。 」(第1053頁下から第9行~下から第1行) (5)甲第12号証 (甲12-a)「〔実施例1〕37℃における安定性試験I(安定化剤添加試験) 下記の比較例1で・・このアントシアニン高含有組成物0.567%と異性化糖F-42(加藤化学社製)16.0重量%と安定化剤をそれぞれ0.1Mのクエン酸緩衝液pH3.0に溶解して、飲料形態の試験液を作成し37℃で2週間の安定性試験に供した。それぞれの安定化剤の添加量は、各素材が推奨している量と有効成分の含有量を基準に決定し表1に示した。・・比較に用いた素材は以下の通りである。・・ポリフェノール類としては・・、イソクエルシトリン(商品名サンメリンAO-1007、三栄源FFI社製)、・・、ローズマリー抽出物(商品名color plus、Naturex社製)。 結果は表1に示した。本発明のフィチン酸添加区が市販の安定化剤に比較してもっともアントシアニン残存量が多く、安定性が高いことが判明した。」(第11頁第16行~第12頁第16行) (甲12-b) 「表1 37℃における安定性試験I (表1は、縦に安定化剤名、横に安定化剤の有効とされている成分、安定化剤の添加量(%)、F-42添加量(%)、クエン酸緩衝液添加量(%)、アントシアニン高含有組成物添加量(%)、アントシアニン含量の初発値(%)、アントシアニン含量の37℃/14日目(%)、残存量(%)を記載した表である。サンメリンAO-1007の列には、以下のことが記載されている。 安定化剤       サンメリンAO-1007 有効とされている成分 イソクエルシトリン 添加量(%)     0.3 残存率(%)     41.4)」(第13頁表1) (甲12-c)「[実施例2]37℃における安定性試験II(安定化剤添加試験) 実施例1の37℃における安定性試験で高い残存率を示したフィチン酸、・・サンメリンAO-1007、・・について、添加量を変えて再度37℃で14日間保存試験を行った。添加量は実施例1と同様に、アントシアニン高含有組成物0.567重量%と・・と安定剤をそれぞれ0.1Mのクエン酸緩衝液pH3.0に溶解して、試験液を作成し安定性試験に供した。・・ 安定剤の添加量及び結果を表3に示した。」(第14頁下から8行~第15頁第2行) (甲12-d) 「表3 37℃における安定性試験II (表3は、縦に安定化剤名、横に安定化剤の有効とされている成分、安定化剤の添加量(%)、F-42添加量(%)、クエン酸緩衝液添加量(%)、アントシアニン高含有組成物添加量(%)、アントシアニン含量の初発値(%)、アントシアニン含量の37℃/14日目(%)、残存量(%)を記載した表である。サンメリンAO-1007の列には、以下のことが記載されている。 安定化剤      サンメリンAO-1007 有効とされている成分  イソクエルシトリン 添加量(%)     0.3 残存率(%)    41.3)」(第16頁表3) (6)甲第13号証 (甲13-a)「ビタミンC並びに、酵素処理イソクエルシトリン、ミリシトリン、クロロゲン酸、ルチン、イソクエルシトリン、ロスマリン酸、ロスマノール、カルノソール、カテキン類、酵素処理ルチン、没食子酸からなる群の1種以上を添加することを特徴とするヘマトコッカス藻色素の耐光性向上方法。」(【請求項1】) (甲13-b)「酵素処理イソクエルシトリンは含量15質量%の三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製サンメリンAO-1007を使用した。」(段落【0021】) (甲13-c)「飲料の処方   (部) 果糖ブドウ糖液糖        8 クエン酸(無水)        0.1 クエン酸三ナトリウム      0.04 ビタミンC           所定量 酵素処理イソクエルシトリン   所定量 ヘマトコッカス藻色素      0.1 イオン交換水にて全量    100」(段落【0022】) (甲13-d)「上記処方により得られた飲料を200ml容ペットボトルに充填し、次の条件に曝してアスタキサンチンの残存率を測定した。」(段落【0023】) (甲13-e)「実験2酵素処理イソクエルシトリンの添加効果 VC添加量:0,100(ppm) 酵素処理イソクエルシトリン添加量:500,1000(ppm)」(段落【0026】) (甲13-f)「表2の結果より、ビタミンCと酵素処理イソクエルシトリンを併用することにより、両者による相乗効果から、飲料中に含まれるアスタキサンチンの残存率を、飛躍的に向上させることが可能となることが明らかとなった。」(段落【0034】) (7)甲第14号証 (甲14-a)「ニンジン色素やパプリカ色素等のカロチノイド色素の退色防止にもフラボノイドは非常に効果を発揮する。しかし、フラボノイドは油に不溶で、水に溶けにくく、かつ容易に結晶が析出する等ハンドリングが悪いため、多くの特徴を有するにもかかわらず利用されることが少なかった。当社ではこの様な欠点を改良する目的で水に対しての溶解度を飛躍的に向上させた抗酸化効果、退色防止効果及び香味変化防止効果の強いフラボノイドの開発に成功し、サンメリン AO-1007の商品名で上市した。サンメリンAO-1007を用いた赤キャベツ色素とパプリカベースの退色防止効果の実例を図1と図2に示す。 この図から明らかのようにこのフラボノイドはカロチノイド色素やアントシアニン色素に対して強力な退色防止効果を発揮した。サンメリンAO-1007はカロチノイドやアントシアニン色素に限らず、ラックやコチニール等のアントラキノン系色素、ベニバナのカルコン系色素、ビートレッドのベタシアニン系色素、紅麹のアザフィロン系色素等広範囲の天然色素の退色、変色防止に有効である。サンメリンAO-1007を飲料、製菓、加工食品、調味料等に使用した場合、退色、変色の防止と同時に酸敗、香味変化防止等種々の有益な効果を発揮した。」(第41頁右欄下から6行~第42頁右欄1行) (甲14-b)「 」(第42頁図1) (甲14-c)「 」(第42頁図2) (8)甲第20号証 (甲20-a)「1.食品衛生法に基づく清涼飲料の殺菌基準 食品衛生法による清涼飲料の製造基準を表1に示す。・・・ 」(1.食品衛生法に基づく清涼飲料の殺菌基準の欄) (甲20-b)「酸性飲料であれば、充分に加熱された内容物そのものの温度で容器内面をも殺菌するホットパック(この際転倒もしくは反転して蓋部分にも充分熱を行き渡らせる)、もしくはパストライザーと呼ばれる熱水シャワーで加熱される。」(3.清涼飲料の製造方法の欄) (9)甲第29号証 (甲29-a)「 」(第282頁表5-11) (甲29-b)「この項では、表5-11に示した数多くの微生物制御技術のうち、最も広く利用されている加熱殺菌、制御技術の発展が切望されている非加熱殺菌、ならびに食品工場の必須技術である洗浄について述べることとするが、」(第283頁第1行~3行) (甲29-c)「加熱殺菌はこのような原理を活用し、有害微生物の殺菌に古くから利用されている技術であり、今日においても液体、固体食品などの食品の種類を問わず、食品の殺菌技術の中心となっている。」(第283頁第9行~12行) 第5 被請求人の主張及び証拠方法 1.被請求人の主張 被請求人は、「本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると主張している。 2.証拠方法 乙第1号証:実験成績証明書(1)写 乙第2号証:実験成績証明書(2)写 (以上、答弁書に添付。) 乙第3号証:実験成績証明書(3)写 (以上、口頭審理陳述要領書に添付。) 乙第4号証:実験成績証明書(4) 乙第5号証:実験成績証明書(5) 乙第6号証:日本醸造協会雑誌 1970年 第65巻 第1号,昭和45年1月15日発行,p.35-40 乙第7号証:特開2009-45003号公報 乙第8号証:特開2007-236232号公報 乙第9号証:特許第3107763号明細書 乙第10号証:特公平8-4457号公報 乙第11号証:特開平6-183985号公報 乙第12号証:特開2006-241287号公報 乙第13号証:特許2904655号明細書 乙第14号証:特開2002-142678号公報 乙第15号証:国際公開第2002/102902号 乙第16号証:特許2013-106590号公報 (以上、平成26年10月6日付け上申書に添付。) 乙第17号証:実験成績証明書(6) 乙第18号証:実験成績証明書(7) 乙第19号証:実験成績証明書(8) (以上、平成27年3月9日付け上申書に添付。) 乙第20号証:化学大辞典編集委員会編,「化学大辞典3」,共立出版株式会社,1960年発行 乙第21号証:化学大辞典編集委員会編,「化学大辞典5」,共立出版株式会社,1961年発行 乙第22号証:日本分析化学会編,「機器分析実技シリーズ吸光光度法一有機編-」,共立出版株式会社,1984年9月1日発行 乙第23号証:日本電色工業株式会社のホームページの「色と光の知識>役に立つ技術情報」(https://www.nippondenshoku.co.jp/web/japanese/column/index.htm) 乙第24号証:測色色差計型番:ZE-2000(日本電色工業株式会社製)のユーザーズガイド (以上、平成27年7月8日付け上申書に添付。) 3.各乙号証の記載内容 被請求人の提出した乙号証には、以下の記載がある。また、下線は当審にて付記したものである。 (1)乙第2号証 (乙2-a)「実験成績証明書(2) 1.目的 (1)イソクエルシトリン及びその糖付加物を0.015質量%と低濃度で含有する容器詰飲料において、保存後の色調変化という課題が存在するかを確認する。 (2)「プロピレングリコール」が「エタノール、グリセリン、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール」と同様の効果を奏するものであるかを確認する。 (3)エタノールを「0.001質量%」含有する容器詰飲料の保存後の色調変化抑制効果を確認する。 (4)「加熱殺菌された容器詰飲料」とすることの意義を確認する。 2.方法 本件特許掲載公報の明細書段落〔0060〕に記載に準じて、下記表A~Dに示す組成で調合し、85℃で2分殺菌を行い、200mLのPETボトルに160mL充填して容器詰飲料を調製した。次いで、本件特許掲載公報の明細書段落〔0057〕の記載に準じて、製造直後の容器詰飲料のL*a*b*表色系におけるb*値、及び55℃で7日間保存後の容器詰飲料のL*a*b*表色系におけるb*値を測定し、△b*(保存後のb*値-保存前のb*値)を求めた。 3.結果 上記(1)の結果を参考例1として表Aに、上記(2)の結果を参考例2として表Bに、上記(3)の結果を参考例3として表Cに、上記(4)の結果を参考例4、5として表Dに、それぞれ示す。 」(第1~3頁) (2)乙第20号証 (乙20-a)「こうろちょう 光路長[英lightpasslength]=セル厚ミ」(第617頁右欄第7行~8行) (3)乙第21号証 (乙21-a)「セルあつみ -厚み,液層長,光路長[英cellthickness,celllength,lightpasslength」被測定溶液を満たした吸収セルにおいて,光が通過する部分の液層の厚さをいう。記号lまたはdが用いられていたが,NBS方式においてはbを用いる。セルの内部光路長は板の光学的オウトツのため全部分が完全に等しくはないが,実際に実験を行う光束を用いた条件下において、実測される平均の内部光路長をさす。(小川欣也)」(第398頁左欄第23行~32行) (4)乙第22号証 (乙22-a)「3・2 光の吸収 光を吸収しない容器(吸収セル)中の溶液を光が通過する場合,図3・2に示すように吸収のほか散乱,屈折およびセル表面での反射などの減少が生じる。 」(第7頁) (乙22-b)「3・4 ランバート-ベールの法則 光が光吸収物質の溶液に照射されると,吸収され,その強さが弱くなる。これは溶液の層の厚さと物質の濃度あるいは溶液の性質に深く関係している。 [ランバートの法則-溶液の吸光度はその溶液中の光路の長さに比例する] 図3・6のように,ある厚さの溶液に単色光を入射したとき,入射光の強さをI0,吸収されずに残った透過光の強さをIとする。液層の厚さ(光路の長さ)をlとする。・・・したがって,透過光の強さは溶液の厚さ(光路長)が増加するにつれて減少することになり,逆に入射光を吸収する度合いは増加することになる。 」(第10頁下から3行~第12頁第1行) (5)乙第23号証 (乙23-a)「COLUMN02 反射物体の照射および受光の幾何条件(JIS Z 8722より) 」(COLUMN 02 反射物体の照射および受光の幾何条件(JIS Z 8722より)) (乙23-b)「COLUMN 03 透過物体の照射および受光の幾何条件(JIS Z 8722より) 」(COLUMN 03 透過物体の照射および受光の幾何条件(JIS Z 8722より)) (6)乙第24号証 (乙24-a)「1 名称及び機能 」(第1頁) (乙24-b)「5○(当審注:5を○で囲んだ記号を示すものである。)透過試料室 透過試料「液体、フィルム、樹脂」などの透過色を測定します。 6○(当審注:6を○で囲んだ記号を示すものである。)反射試料台 反射試料「固体、樹脂」などの測定します。」(第2頁) (乙24-c)「 」(第9頁 4測定4-1「反射測定の場合」) (乙24-d)「 」(第19頁 4-3透過測定) 第6 当審の無効理由通知 1.無効理由の概要 平成26年8月5日の口頭審理において行った当審の職権審理による無効理由通知の概要は、平成25年11月18日付け訂正請求(第1回)後の請求項4は、甲第13号証又は甲第14号証に記載された発明とそれぞれ区別ができず、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないというものである。 2.当審で通知した無効理由に対する被請求人の意見概要 平成26年9月4日付け訂正請求(第2回)において、請求項4の引用請求項から請求項1を削除したことにより、無効理由が解消した旨を、被請求人は主張している。 第7 当審の判断 1.無効理由8、9について(本件発明4の新規性・進歩性) 1-1.甲第1号証を主引例とした場合の新規性・進歩性 (1)引用発明1の認定 甲第1号証(甲1-c)図5には、「図5.アントシアニン系色素の深色・増色効果 pH3.0のモデル飲料(Brix13°、クエン酸0.2%、赤キャベツ色素0.05%)にサンメリン○RAO-1007を添加することによりアントシアニン系色素が深色・増色(コピグメント効果)する。」と記載され、AO-1007を0.5%添加した容器詰溶液の写真が記載されている。 また、(甲1-b)表1の記載から、サンメリン○RAO-1007は、酵素処理イソクエルシトリン15重量%、グリセリン20重量%、エタノール20重量%を含むものであることが明らかである。そこで、図5の容器詰溶液の成分について計算すると、以下のようになる。 容器詰溶液の酵素処理イソクエルシトリンの割合は、 0.5×0.15= 0.075重量%となる。 グリセリンとエタノールの割合は、いずれも 0.5×0.20=0.10重量%である。 これにより、甲第1号証には、 「酵素処理イソクエルシトリン0.075重量%、エタノール0.10重量%、グリセリン0.10重量%を含有する容器詰モデル飲料」 の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 (2)対比 本件発明4と引用発明1とは、 「次の成分(A)及び(B): (A)イソクエルシトリン及びその糖付加物0.075質量%、 (B)グリセリン0.10質量%を含有する容器詰飲料」点で一致し、前者では「pHが2~5である」(相違点1)ことが特定されているのに対し、後者ではそのような特定がなされていない点、前者では、「(B)1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、プロピレングリコール及びグリセリンから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコール 0.001質量%以上1質量%未満を含有し」、「(成分(A)及び(B)が、酵素処理イソクエルシトリン15質量部に対してグリセリン20質量部及びエタノール20質量部からなる場合、並びに酵素処理イソクエルシトリン15質量部に対してグリセリン35質量部及びエタノール20質量部からなる場合を除く)」(相違点7)のに対し、後者では「エタノール0.10重量%、グリセリン0.10重量%を含有する」点で相違する。 (3)判断 (相違点1)「pHが2~5である」について 甲第2号証(甲2-a)には、引用発明1を認定した甲第1号証の図5のモデル溶液を実際に調製し、pHを測定したところ、AO-1007を添加したモデル溶液は、pH3.0であったことが記載されていることから、引用発明1の容器詰モデル飲料は、pH2~5の範囲内であると認められる。したがって、この点は実質的な相違点ではない。 (相違点7)「(B)1-プロパノール、・・及びグリセリンから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコール 0.001質量%以上1質量%未満を含有し」、「(成分(A)及び(B)が、酵素処理イソクエルシトリン15質量部に対してグリセリン20質量部及びエタノール20質量部からなる場合、並びに酵素処理イソクエルシトリン15質量部に対してグリセリン35質量部及びエタノール20質量部からなる場合を除く)」について 引用発明1はサンメリンAO-1007を含有する発明である。一方、本件発明4は、「(成分(A)及び(B)が、酵素処理イソクエルシトリン15重量部に対してグリセリン20質量部及びエタノール20質量部からなる場合、並びに酵素処理イソクエルシトリン15重量部に対してグリセリン35重量部及びエタノール20重量部からなる場合を除く)」の特定によって、サンメリンAO-1007を含有する発明が除かれている。 つまり、本件発明4と引用発明1とは、重複する部分がなく、本件発明4と引用発明1とは、この点で相違する。 相違点7の容易想到性について検討する。 本件発明4では、「(B)1-プロパノール、・・及びグリセリンから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコール 0.001質量%以上1質量%未満を含有し」と、(B)成分の飲用可能な脂肪族アルコールとして、エタノールを含有することは特定されていないものの、「(成分(A)及び(B)が、酵素処理イソクエルシトリン15質量部に対してグリセリン20質量部及びエタノール20質量部からなる場合、並びに酵素処理イソクエルシトリン15質量部に対してグリセリン35質量部及びエタノール20質量部からなる場合を除く)」と、エタノールとグリセリンを特定比で含む場合を除く特定があるから、成分(B)の飲用可能なアルコールとして、特定比以外の比のグリセリンとエタノールを含む場合のような(B)に特定されている種類以外のアルコールである、エタノールを含む態様を妨げないものであると認められる。 そして、甲第1号証には、酵素処理イソクエルシトリンが食品添加物酸化防止剤であることが記載され、酵素処理イソクエルシトリンの製剤として、サンメリンAO-1007の他、サンメリンAO-3000が記載されており、該製剤の酵素処理イソクエルシトリン、エタノール、グリセリンの配合比も記載されている。そうすると、引用発明1の容器詰モデル飲料において、サンメリンAO-1007に代えて、サンメリンAO-1007の酵素処理イソクエルシトリン、エタノール、グリセリンの配合比を多少変更した製剤を添加すること、サンメリンAO-3000の配合比を多少変更した製剤を添加すること、さらに、サンメリンAO-1007とサンメリンAO-3000の配合比の間の値である、酵素処理イソクエルシトリン15重量%、グリセリン25重量%、エタノール20重量%の配合比のような酵素処理イソクエルシトリン製剤を調製して添加することにより、相違点7に係る構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。 (効果について) 酵素処理イソクエルシトリン、エタノール、グリセリンの配合割合をわずかに異ならせても、飲料の色調や、味の厚み(ボディ感)等のこく味において大きな違いが生じるとは認められず、本件発明4の効果は、当業者が予測する程度である。 (4)小括 本件発明4は、相違点7の点で引用発明1と相違するから、新規性がないとはいえない。 本件発明4は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 1-2.甲第12~14号証をそれぞれ主引例とした場合の新規性・進歩性 (1)引用発明12、引用発明13、引用発明14の認定 甲第12号証(甲12-b)に摘記した表1のサンメリンAO-1007の行に示される試験液と、(甲12-d)に摘記した表3のサンメリンAO-1007の行に示される試験液について、それぞれ(甲12-a)「〔実施例1〕・・アントシアニン高含有組成物0.567%と異性化糖F-42(加藤化学社製)16.0重量%と安定化剤をそれぞれ0.1Mのクエン酸緩衝液pH3.0に溶解して、飲料形態の試験液を作成し37℃で2週間の安定性試験に供した。それぞれの安定化剤の添加量は、各素材が推奨している量と有効成分の含有量を基準に決定し表1に示した。・・比較に用いた素材は以下の通りである。・・ポリフェノール類としては・・、イソクエルシトリン(商品名サンメリンAO-1007、三栄源FFI社製)」、(甲12-c)「添加量は実施例1と同様に、アントシアニン高含有組成物0.567重量%と・・と安定剤をそれぞれ0.1Mのクエン酸緩衝液pH3.0に溶解して、試験液を作成し安定性試験に供した。・・ 安定剤の添加量及び結果を表3に示した。」と記載されているから、甲第12号証には、「イソクエルシトリンを有効成分として含むサンメリンAO-1007を安定化剤として0.3%添加した飲料形態の試験液」が記載されていると認められる。 また、甲第1号証(甲1-b)表1の記載から、サンメリンAO-1007は、イソクエルシトリン及びその糖付加物15重量%、グリセリン20重量%、エタノール20重量%を含むことが明らかであるから、甲第12号証の飲料形態の試験液の成分を計算すると、以下のようになる。 イソクエルシトリン及びその糖付加物の割合は、 0.3×0.15=0.045重量% となる。 グリセリンとエタノールの割合は、いずれも 0.3×0.2=0.06重量% である。 これにより、甲第12号証には、 「イソクエルシトリン及びその糖付加物0.045重量%、エタノール0.06重量%、グリセリン0.06重量%を含有する飲料形態の試験液」 の発明(以下「引用発明12」という。)が記載されていると認められる。 甲第13号証は、「酵素処理イソクエルシトリン添加量:500、1000(ppm)」(甲13-e)で添加された(甲13-c)の飲料の処方により得られた飲料を200ml容ペットボトルに充填した飲料(甲13-d)について、(甲13-b)に「酵素処理イソクエルシトリンは含量15質量%の三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製サンメリンAO-1007を使用した。」と記載されていることから、甲第13号証には、「サンメリンAO-1007を用いて、酵素処理イソクエルシトリンを500ppm(0.05質量%)又は1000ppm(0.1質量%)添加するペットボトルに充填された飲料」が記載されていると認められる。 また、甲第1号証の(甲1-b)の記載から、サンメリンAO-1007は、イソクエルシトリン及びその糖付加物15質量%、グリセリン20質量%、エタノール20質量%を含むことが明らかである。そこで、甲第13号証の容器詰飲料の成分を計算すると以下のようになる。 イソクエルシトリン及びその糖付加物が0.05質量%の場合 グリセリンとエタノールの割合はいずれも、 0.05×20/15=0.067質量%(小数点第4位四捨五入)が含有されることになり、また、 イソクエルシトリン及びその糖付加物が0.1質量%の場合 グリセリンとエタノールの割合はいずれも、 0.1×20/15=0.133質量%(小数点第4位四捨五入)含有されることになる。 これにより、甲第13号証には、 「イソクエルシトリン及びその糖付加物0.05質量%、エタノール0.067質量%、グリセリン0.067質量%を含有するか、イソクエルシトリン及びその糖付加物0.1質量%、エタノール0.133質量%、グリセリン0.133質量%を含有する、ペットボトルに充填された飲料」 の発明(以下「引用発明13」という。)が記載されていると認められる。 甲第14号証(甲14-b)図1に、「実験条件:グラニュウ糖6部、・・0.03部を清水にて100部としたモデルジュースにサンレッドRCF(赤キャベツ色素)0.05部またはパプリカベースNB(パプリカ色素製剤)0.1部と抗酸化剤溶液を添加した試料溶液を100ml容量の無色ジュースビンに入れ、フェードメーターで照射する」と記載され、(甲14-b)図1と(甲14-c)図2において、実線としてサンメリンAO-1007の添加量が1/250、1/500、1/1000である場合のグラフが記載されることから、甲第14号証には、「サンメリンAO-1007を1/250(0.4%)、又は1/500(0.2%)添加した、ジュースビンに詰められたモデルジュース」が記載されている。 甲第1号証の(甲1-b)の記載から、サンメリンAO-1007は、イソクエルシトリン及びその糖付加物15重量%、グリセリン20重量%、エタノール20重量%を含むものであることが明らかである。そこで、甲第14号証のジュースビンに詰められたモデルジュースの成分を計算すると以下のようになる。 サンメリンAO-1007の添加量が1/250(0.4%)の場合 イソクエルシトリン及びその糖付加物の割合は、 0.4×0.15=0.06重量% グリセリンとエタノールの割合はいずれも、 0.4×0.2=0.08重量% 含有されることになり、 サンメリンAO-1007の添加量が1/500(0.2%)の場合 イソクエルシトリン及びその糖付加物の割合は、 0.2×0.15=0.03重量% グリセリンとエタノールの割合はいずれも、 0.2×0.2=0.04重量% が含有されることになる。 これにより、甲第14号証には、 「イソクエルシトリン及びその糖付加物0.06重量%、エタノール0.08重量%、グリセリン0.08重量%を含有するか、又はイソクエルシトリン及びその糖付加物0.03重量%、エタノール0.04重量%、グリセリン0.04重量%を含有する、ジュースビンに詰められたモデルジュース」 の発明(以下「引用発明14」という。)が記載されていると認められる。 (2)対比 引用発明12を主引用発明とした場合において、本件発明4は引用発明12と、上記1-1.(2)、(3)で認定した相違点7を有し、本件発明4は「容器詰飲料」(相違点4’)であるのに対し、引用発明12では、「飲料形態の試験液」である点でも相違する。 引用発明13を主引用発明とした場合において、本件発明4は引用発明13と、上記1-1.(2)、(3)で認定した相違点7を有する。 引用発明14を主引用発明とした場合において、本件発明4は引用発明14と、上記1-1.(2)、(3)で認定した相違点7を有する。 (3)判断 (相違点7)「(B)1-プロパノール、・・を含有し」、「(成分(A)及び(B)が、・・場合を除く)」について 上記1-1.(3)と同様に、本件発明4は、成分(B)の飲用可能なアルコールとして、(B)に明記されている種類以外のアルコールである、エタノールを含む態様を妨げないものであるから、この相違点7は、引用発明12~14それぞれから、当業者が容易に想到し得たことである。 (相違点4’)「容器詰飲料」について 引用発明12の飲料形態の試験液を実際の飲料とするに際し、容器詰飲料とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (効果について) 相違点7による発明の効果は、上記1-1.(3)と同様であり、本件発明4の効果は、当業者が予測する程度である。 (4)小括 したがって、本件発明4は、相違点4’、7の点で引用発明12と相違するから、新規性がないとはいえない。 本件発明4は、相違点7の点で引用発明13と相違するから、新規性がないとはいえない。 本件発明4は、相違点7の点で引用発明14と相違するから、新規性がないとはいえない。 本件発明4は、甲第1号証、甲第12~14号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 1-3.まとめ 本件発明4は、甲第1号証、甲第12号証、甲第13号証、甲第14号証、それぞれに記載された発明と同一であるとはいえず、新規性を有する。 本件発明4は、甲第1号証、甲第12~14号証に記載された発明及び周知技術に基いて進歩性を有しない。 以上のとおり、請求人の主張する無効理由8には理由がなく、無効理由9には理由がある。 2.無効理由12、13について(本件発明6の新規性・進歩性) 2-1.甲第1号証を主引例とした場合の新規性・進歩性 (1)対比 本件発明6と引用発明1とは、 「次の成分(A)及び(B): (A)イソクエルシトリン及びその糖付加物0.075質量%、 (B)飲用可能な脂肪族アルコール0.2質量%を含有する容器詰飲料」で一致し、前者では「pHが2~5である」(相違点1)ことが特定されているのに対し、後者ではそのような特定がなされていない点、前者では、(B)の飲用可能な脂肪族アルコールとして「(B)イソアミルアルコール、1-ヘキサノール及びプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種 0.001質量%以上1質量%未満を含有」(相違点9)するのに対し、後者では「エタノール0.10質量%、グリセリン0.10質量%を含有」する点で相違する。 (2)判断 (相違点1)「pHが2~5である」について 上記1-1.(3)のとおり、この点は実質的な相違点ではない。 (相違点9)「(B)イソアミルアルコール、1-ヘキサノール及びプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種 0.001質量%以上1質量%未満を含有」について 判決において、相違点9に関し、「引用発明1において、酵素処理イソクエルシトリンの溶媒であるグリセリンとエタノールに代えて、同様に酵素処理イソクエルシトリンの溶媒として周知であったプロピレングリコールを同量程度使用することは、当業者が容易に想到することができたものと認められる。」(判決書115~118頁「8 取消事由2-3(本件訂正発明6と引用発明1との相違点9の容易想到性についての判断の誤り)について」)と判断されており、この判断は、行政事件訴訟法第33条第1項の規定により、当合議体を拘束する。よって、引用発明1において相違点9に係る構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。 (3)小括 本件発明6は、相違点9の点で引用発明1と相違するから、新規性がないとはいえない。 本件発明6は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2-2.甲第12~14号証をそれぞれ主引例とした場合の新規性・進歩性 (1)対比・判断 本件発明6と引用発明12を対比すると、上記1-2.(2)、(3)で述べた相違点4’に加え、上記2-1.(1)、(2)で認定した相違点9を有する。 本件発明6と引用発明13を対比すると、上記2-1.(1)、(2)で認定した相違点9を有する。 本件発明6と引用発明14を対比すると、上記2-1.(1)、(2)で認定した相違点9を有する。 また、上記2-1.(2)のとおり、この相違点9は、当業者が容易に想到し得たものである。 (2)小括 したがって、本件発明6は、相違点4’、9の点で引用発明12と相違するから、新規性がないとはいえない。 本件発明6は、相違点9の点で引用発明13と相違するから、新規性がないとはいえない。 本件発明6は、相違点9の点で引用発明14と相違するから、新規性がないとはいえない。 本件発明6は、甲第1号証、甲第12~14号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2-3.まとめ 本件発明6は、甲第1号証、甲第12号証、甲第13号証、甲第14号証、それぞれに記載された発明と同一であるとはいえず、新規性を有する。 本件発明6は、甲第1号証、甲第12~14号証に記載された発明及び周知技術に基いて進歩性を有しない。 以上のとおり、請求人の主張する無効理由12には理由がなく、無効理由13には理由がある。 3.無効理由16、17について(本件発明8の新規性・進歩性) 3-1.甲第1号証を主引例とした場合の新規性・進歩性 (1)対比 請求項4を引用する本件発明8と引用発明1を対比すると、 「次の成分(A)及び(B): (A)イソクエルシトリン及びその糖付加物0.075質量%、 (B)飲用可能な脂肪族アルコール0.20質量%を含有する容器詰飲料」点で一致し、前者では「pHが2~5である」(相違点1)ことが特定されているのに対し、後者ではそのような特定がなされていない点、前者では、「成分(B)が1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール及びプロピレングリコールから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコール 0.001質量%以上1質量%未満を含有し」、「(成分(A)及び(B)が、酵素処理イソクエルシトリン15質量部に対してグリセリン20質量部及びエタノール20質量部からなる場合、並びに酵素処理イソクエルシトリン15質量部に対してグリセリン35質量部及びエタノール20質量部からなる場合を除く)」(相違点12)のに対し、後者では「エタノール0.10重量%、グリセリン0.10重量%を含有する」点、前者では、「加熱殺菌されたものである」(相違点13)ことが特定されているのに対し、後者ではそのような特定がなされていない点で相違する。 (2)判断 上記相違点について検討する。 (相違点1)「pHが2~5である」について 上記1-1.(3)のとおり、この点は実質的な相違点ではない。 (相違点13)「加熱殺菌されたものである」ことについて 甲第10号証、甲第11号証には、清涼飲料水の製造基準が記載されており、「清涼飲料水は、容器包装に充てんし、密栓若しくは密封した後殺菌するか、又は自記温度計をつけた殺菌器等で殺菌したもの若しくはろ過器等で除菌したものを自動的に容器包装に充てんした後、密栓若しくは密封しなければならない。この場合の殺菌又は除菌は、次の方法で行わなければならない。・・ a pH4.0未満のものの殺菌にあっては、その中心部の温度を65°で10分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法で行うこと。」(甲10-a)、(甲11-b)と記載され、上記規格基準は、食品、添加物の規格基準として、食品衛生法に基づいて定められていること(甲11-a)が認められる。甲第20号証においても同様に、食品衛生法に基づく清涼飲料殺菌基準が記載されている(甲20-a)。また、甲第29号証には、数多くの微生物制御技術のうち、加熱殺菌が最も広く利用されており、加熱殺菌が液体、固体食品などの食品の種類を問わず、食品の殺菌技術の中心であることが記載されている。 以上のとおり、「加熱殺菌」は食品の殺菌技術の中心であることに加え、清涼飲料水においては、食品衛生法に基づく製造基準にしたがった方法で殺菌処理を当然に行わなければならないことが明らかである。 したがって、引用発明1の容器詰モデル飲料を、実際の飲料とするに際し、保存性を高めるために、加熱殺菌処理を施すことは、当業者が容易になし得たことである。 (相違点12)「成分(B)が1-プロパノール、イソプロパノール、・・及びプロピレングリコールから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコール0.001質量%以上1質量%未満を含有し」、「(成分(A)及び(B)が、・・からなる場合を除く)」について 判決において、相違点12に関し、「引用発明1において,酵素処理イソクエルシトリンの溶媒であるグリセリンとエタノールに代えて,同様に酵素処理イソクエルシトリンの溶媒として周知であったプロピレングリコールを同量程度使用することが,当業者が容易に想到することができたものであることは,前記8の取消事由2-3において検討したとおりである。」(判決書121~122頁「10 取消事由2-5(本件訂正発明8と引用発明1との相違点12の容易想到性についての判断の誤り)について」)と判断されており、この判断は、行政事件訴訟法第33条第1項の規定により、当合議体を拘束する。よって、引用発明1において相違点12に係る構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。 (3)小括 したがって、本件発明8は、相違点12、13の点で引用発明1と相違するから、新規性がないとはいえない。 本件発明8は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3-2.甲第12~14号証をそれぞれ主引例とした場合の新規性・進歩性 (1)対比・判断 本件発明8と引用発明12を対比すると、上記1-2.(2)、(3)で述べた相違点4’に加え、上記3-1.(1)、(2)で認定した相違点12、13を有する。 本件発明8と引用発明13を対比すると、上記3-1.(1)、(2)で認定した相違点12、13を有する。 本件発明8と引用発明14を対比すると、上記3-1.(1)、(2)で認定した相違点12、13を有する。 また、上記3-1.(2)のとおり、この相違点12、13は、当業者が容易に想到し得たものである。 (2)小括 したがって、本件発明8は、相違点12、13の点で引用発明12~14とそれぞれ相違するから、新規性がないとはいえない。 本件発明8は、甲第1号証、甲第12~14号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3-3.まとめ 本件発明8は、甲第1号証、甲第12~14号証に記載された発明とそれぞれ同一であるとはいえず、新規性を有する。 本件発明8は、甲第1号証、甲第12~14号証に記載された発明及び周知技術に基いて進歩性を有しない。 以上のとおり、請求人の主張する無効理由16には理由がなく、無効理由17には理由がある。 4.無効理由18、19について(本件発明9の新規性・進歩性) 4-1.甲第1号証を主引例とした場合の新規性・進歩性 (1)甲第1号証に記載された発明の認定 甲第1号証(甲1-c)には、「また、フラボノール化合物である酵素処理イソクエルシトリンをアントシアニン系色素液に添加すると、フラボノールと類似の構造をしたアントシアニン系色素と分子間で会合して安定化し、増色効果や深色効果(コピグメント効果)を示す(図5)。」、図5には容器詰飲料の写真があり、図5注釈には「pH3.0のモデル飲料(Brix13°、クエン酸0.2%、赤キャベツ色素0.05%)にサンメリン○RAO-1007を0.5%添加することによりアントシアニン系色素が深色・増色(コピグメント効果)する。」と記載されている。 また、(甲1-b)表1の記載から、サンメリン○RAO-1007は、酵素処理イソクエルシトリン15重量%、グリセリン20重量%、エタノール20重量%を含むものであることが明らかである。そこで、上述の1-1.(1)のように、図5の容器詰飲料の成分について計算すると、甲第1号証には、 「酵素処理イソクエルシトリンを含有する容器詰モデル飲料のアントシアニン系色素の深色・増色方法であって、酵素処理イソクエルシトリン0.075重量%、エタノール0.10重量%、グリセリン0.10重量%を添加する、アントシアニン系色素の深色・増色方法」 の発明(以下「引用発明1'''」という。)が記載されていると認められる。 (2)対比 本件発明9と引用発明1'''とを対比する。 上記1-1.(2)のとおり、引用発明1'''の「酵素処理イソクエルシトリン」は、本件発明9の「イソクエルシトリン及びその糖付加物」に相当する。また、引用発明1'''の「添加」とは、本件発明9の「配合」に相当する。 そうすると、両者は、「イソクエルシトリン及びその糖付加物を含有する容器詰飲料に関する方法であって、次の成分(A)及び(B)を、 (A)イソクエルシトリン及びその糖付加物0.075質量%、 (B)エタノール、グリセリンの飲用可能な脂肪族アルコール0.20質量%となるように配合」する点で一致し、前者は、「pHを2~5に調整する、イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制方法」(相違点14)であるのに対し、後者は「アントシアニン系色素の深色・増色方法」である点、前者では、「加熱殺菌された容器詰飲料」(相違点15)であるのに対し、後者では、そのような特定がなされていない容器詰モデル飲料である点で相違する。 (3)判断 上記相違点について検討する。 (相違点14)「pHを2~5に調整する、イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制方法」について 甲第1号証(甲1-c)に、「食品が光に暴露されると着色料や素材由来の色素成分が退色し、・・サンメリンAO-1007を添加することにより各種食品の変退色を防止することができる」と記載され、(甲1-d)、(甲1-e)の図3、図4の容器詰モデル飲料は、赤キャベツ色素やパプリカ色素の食用黄色5号や食用青色1号の天然着色料と合成着色料の退色防止効果を確認しており、退色防止に関与することは記載されるものの、イソクエルシトリン及びその糖付加物自体の色調変化抑制を見ているものではなく、着色料や色素の色調抑制を確認しているのみである。そして、甲第1号証(甲1-c)の図5は、イソクエルシトリン及びその糖付加物による、アントシアニン系色素の深色・増色効果を見ているものにすぎない。したがって、甲第1号証に、イソクエルシトリン及びその糖付加物自体の、色調変化を抑制することが記載されているとは認められない。 また、甲第1号証の図3~5(甲1-c)、(甲1-d)、(甲1-e)には、クエン酸を含有するpH3.0のモデル飲料が記載されているが、pHを調整してイソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制を行うことについては記載されていない。 甲第1号証には、イソクエルシトリン及びその糖付加物を含有する容器詰モデル飲料は記載されるものの、アントシアニン系色素(赤キャベツ色素)の深色・増色(コピグメント効果)について記載されるのみで、いずれの甲号証をみても、イソクエルシトリン及びその糖付加物自体の色調変化を抑制することについては記載も示唆もないから、この点について当業者は容易になし得たとはいえない。 さらに、本件特許明細書には、「本発明者は、イソクエルシトリン及びその糖付加物とともにアルコール類をそれぞれ特定量含有せしめ、更にpHを特定範囲内に調整することで、長期間にわたって保存しても色調が変化し難く、外観が保持される飲料が得られることを見出した。」(段落【0008】)と記載され、pHを調整する工程が、イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制に関与することも考慮すると、引用発明1'''に、pHを調整する工程の記載がなく、また、pHを調整することによってイソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制作用を奏する旨の記載がない以上、イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制のためにpHを2~5に調整する動機付けは存在しないから、引用発明1'''のイソクエルシトリン及びその糖付加物を含有する容器詰モデル飲料のpHを2~5に調整することを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (相違点15)「加熱殺菌された容器詰飲料」について 3-1.(2)で述べたとおり、引用発明1'''の容器詰モデル飲料において、保存性を高めるために、加熱殺菌処理を施すことは、当業者が容易になし得たことである。 (4)小括 したがって、本件発明9は、相違点14、相違点15において引用発明1'''と相違するから、新規性がないとはいえない。 本件発明9は、甲第1号証、甲第12~14号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 4-2.甲第12号証を主引例とした場合の新規性・進歩性 (1)甲第12号証に記載された発明の認定 甲第12号証(甲12-b)に摘記した表1のサンメリンAO-1007の行に示される試験液と、(甲12-d)に摘記した表3のサンメリンAO-1007の行に示される試験液は、それぞれ(甲12-a)「〔実施例1〕・・アントシアニン高含有組成物0.567%と異性化糖F-42(加藤化学社製)16.0重量%と安定化剤をそれぞれ0.1Mのクエン酸緩衝液pH3.0に溶解して、飲料形態の試験液を作成し37℃で2週間の安定性試験に供した。それぞれの安定化剤の添加量は、各素材が推奨している量と有効成分の含有量を基準に決定し表1に示した。・・比較に用いた素材は以下の通りである。・・ポリフェノール類としては・・、イソクエルシトリン(商品名サンメリンAO-1007、三栄源FFI社製)」、(甲12-c)「添加量は実施例1と同様に、アントシアニン高含有組成物0.567重量%と・・と安定剤をそれぞれ0.1Mのクエン酸緩衝液pH3.0に溶解して、試験液を作成し安定性試験に供した。・・ 安定剤の添加量及び結果を表3に示した。」と記載されるから、甲第12号証には、「アントシアニン高含有組成物と異性化糖F-42と、イソクエルシトリンを有効成分として含むサンメリンAO-1007を安定化剤として0.3%を0.1Mのクエン酸緩衝液pH3.0に溶解して、試験液を作成し、安定性試験に供したこと」が記載されていると認められる。そして、(甲12-b)の表1、(甲12-d)の表3では、安定性試験の結果として、イソクエルシトリンを安定剤として添加したアントシアニンの残存量は、41.4%と41.3%であったことが記載されている。 また、甲第1号証(甲1-b)表1の記載から、サンメリンAO-1007は、イソクエルシトリン及びその糖付加物15重量%、グリセリン20重量%、エタノール20重量%を含むことが明らかであるから、上述の1-2.(1)のように、甲第12号証の飲料形態の試験液の成分を計算すると、甲第12号証には、 「イソクエルシトリン及びその糖付加物を含有する飲料形態の試験液のアントシアニンの安定化方法であって、イソクエルシトリン及びその糖付加物0.045重量%、エタノール0.06重量%、グリセリン0.06重量%を添加する、アントシアニンの安定化方法」 の発明(以下「引用発明12'''」という。)が記載されていると認められる。 (2)対比 本件発明9と引用発明12'''とを対比する。 引用発明12'''の「添加」とは、本件発明9の「配合」に相当する。 そうすると、両者は、「イソクエルシトリン及びその糖付加物を含有する飲料形態の試験液に関する方法であって、次の成分(A)及び(B)を、 (A)イソクエルシトリン及びその糖付加物0.045質量%、 (B)エタノール、グリセリンの飲用可能な脂肪族アルコール0.12質量%となるように配合」する点で一致し、前者は、「pHを2~5に調整する、イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制方法」(相違点14)であるのに対し、後者は「アントシアニンの安定化方法」である点、前者では、「加熱殺菌された容器詰飲料」(相違点15)であるのに対し、後者では「飲料形態の試験液」である点で相違する。 (3)判断 上記相違点について検討する。 (相違点14)「pHが2~5に調整する、イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制方法」について 甲第12号証(甲12-b)の表1、(甲12-d)の表3では、安定性試験の結果として、イソクエルシトリンを安定剤として添加したアントシアニンの残存量は、41.4%と41.3%であったことが記載されていることから、甲第12号証には、イソクエルシトリン及びその糖付加物による、アントシアニンの安定性効果を見ているものにすぎない。 したがって、甲第12号証に、イソクエルシトリン及びその糖付加物自体の、色調変化を抑制することが記載されているとは認められない。 また、甲第12号証(甲12-a)、(甲12-c)には、0.1Mのクエン酸緩衝液pH3.0に溶解して、飲料形態の試験液を作成することが記載されているが、pHを調整してイソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制を行うことについては記載されていない。 甲第12号証には、アントシアニンの安定性効果について記載されるのみで、いずれの甲号証をみても、イソクエルシトリン及びその糖付加物自体の色調変化を抑制することについては記載も示唆もないから、上記4-1.(3)と同様に、この相違点14は、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (相違点15)「加熱殺菌された容器詰飲料」について 甲第12号証には、飲料形態の試験液を加熱殺菌したことは記載されておらず、甲第12号証の飲料形態の試験液が加熱殺菌されたものとは認められない。 また、甲第12号証には、飲料形態の試験液を作成したことは記載されており、飲料形態の試験液とは、飲料に相当するが、飲料を容器に詰めることは記載されていない。 しかしながら、3-1.(2)で述べたとおり、引用発明12'''の飲料形態の試験液を実際の飲料とするに際し、保存性を高めるために、加熱殺菌処理を施し、容器詰飲料とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (4)小括 したがって、本件発明9は、相違点14、相違点15において引用発明12'''と相違するから、新規性がないとはいえない。 本件発明9は、甲第1号証、甲第12~14号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 4-3.甲第13号証を主引例とした場合の新規性・進歩性 (1)甲第13号証に記載された発明の認定 甲第13号証は、「酵素処理イソクエルシトリン添加量:500、1000(ppm)」(甲13-e)で添加された(甲13-c)の飲料の処方により得られた飲料を200ml容ペットボトルに充填した飲料(甲13-d)について、(甲13-b)に「酵素処理イソクエルシトリンは含量15質量%の三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製サンメリンAO-1007を使用した。」と記載されていることから、甲第13号証には、「サンメリンAO-1007を用いて、酵素処理イソクエルシトリンを500ppm(0.05質量%)又は1000ppm(0.1質量%)添加する容器詰飲料」が記載されていると認められる。 また、(甲13-a)、(甲13-f)の記載から、甲第13号証には、ビタミンCと酵素処理イソクエルシトリンを添加することによる、飲料中に含まれるヘマトコッカス藻色素の耐光性向上方法が記載され、アスタキサンチン残存率向上が確認されている。 そして、甲第1号証(甲1-b)表1の記載から、サンメリン○RAO-1007は、イソクエルシトリン及びその糖付加物15重量%、グリセリン20重量%、エタノール20重量%を含むものであることが明らかである。そこで、上述の1-3.(1)のように、甲第13号証の容器詰飲料の成分について計算すると、甲第13号証には、 「イソクエルシトリン及びその糖付加物を含有する容器詰飲料のヘマトコッカス藻色素の耐光性向上方法であって、イソクエルシトリン及びその糖付加物0.05質量%、エタノール0.067質量%、グリセリン0.067質量%を添加するか、イソクエルシトリン及びその糖付加物0.1質量%、エタノール0.133質量%、グリセリン0.133質量%を添加する、ヘマトコッカス藻色素の耐光性向上方法」 の発明(以下「引用発明13'''」という。)が記載されていると認められる。 (2)対比 本件発明9と引用発明13'''とを対比する。 引用発明13'''の「添加」とは、本件発明9の「配合」に相当する。 そうすると、両者は、「イソクエルシトリン及びその糖付加物を含有する容器詰飲料に関する方法であって、次の成分(A)及び(B)を、 (A)イソクエルシトリン及びその糖付加物0.05質量%、(B)エタノール、グリセリンの飲用可能な脂肪族アルコール0.134質量%を配合するか、(A)イソクエルシトリン及びその糖付加物0.1質量%、(B)エタノール、グリセリンの飲用可能な脂肪族アルコール0.266質量%を配合」する点で一致し、前者は、「pHが2~5に調整する、イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制方法」(相違点14)であるのに対し、後者は「ヘマトコッカス藻色素の耐光性向上方法」である点、前者では、「加熱殺菌された容器詰飲料」(相違点15)であるのに対し、後者では、そのような特定がなされていない点で相違する。 (3)判断 上記相違点について検討する。 (相違点14)「pHが2~5に調整する、イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制方法」について 甲第13号証(甲13-a)、(甲13-f)には、ヘマトコッカス藻色素の耐光性向上方法について記載され、飲料中に含まれるアスタキサンチン残存量を向上させる効果を有することが記載されているが、イソクエルシトリン及びその糖付加物自体の色調変化抑制を見ているものではない。また、甲第13号証には、クエン酸、クエン酸三ナトリウムを含有させることは記載されるものの、飲料を特定のpHにすることは記載されておらず、pHを調整してイソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制を行うことについては記載されていない。 したがって、甲第13号証に、pHが2~5に調整する、イソクエルシトリン及びその糖付加物自体の、色調変化を抑制することが記載されているとは認められない。 甲第13号証にはアスタキサンチン残存量を向上させる、ヘマトコッカス藻色素の耐光性向上方法について記載されるのみで、いずれの甲号証をみても、イソクエルシトリン及びその糖付加物自体の色調変化を抑制することについては記載も示唆もないから、上記4-1.(3)と同様に、この相違点14は、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (相違点15)「加熱殺菌された容器詰飲料」について 上記3-1.(2)と同様に、引用発明13'''の容器詰飲料の保存性を高めるために、加熱殺菌処理を行った後に、容器に充填することは、当業者が容易になし得たことである。 (4)小括 したがって、本件発明9は、相違点14において引用発明13'''と相違するから、新規性がないとはいえない。 本件発明9は、甲第1号証、甲第12~14号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 4-4.甲第14号証を主引例とした場合の新規性・進歩性 (1)甲第14号証に記載された発明の認定 甲第14号証(甲14-a)には、「サンメリンAO-1007を用いた赤キャベツ色素とパプリカベースの退色防止効果の実例を図1と図2に示す。この図から明らかのようにこのフラボノイドはカロチノイド色素やアントシアニン色素に対して強力な退色防止効果を発揮した。サンメリンAO-1007はカロチノイドやアントシアニン色素に限らず、ラックやコチニール等のアントラキノン系色素、ベニバナのカルコン系色素、ビートレッドのベタシアニン系色素、紅麹のアザフィロン系色素等広範囲の天然色素の退色、変色防止に有効である。」、(甲14-b)図1には、「実験条件:グラニュウ糖6部、・・0.03部を清水にて100部としたモデルジュースにサンレッドRCF(赤キャベツ色素)0.05部またはパプリカベースNB(パプリカ色素製剤)0.1部と抗酸化剤溶液を添加した試料溶液を100ml容量の無色ジュースビンに入れ、フェードメーターで照射する」と記載され、(甲14-b)図1と(甲14-c)図2において、実線としてサンメリンAO-1007の添加量が1/250、1/500、1/1000である場合のグラフが記載される。 また、(甲1-b)表1の記載から、サンメリン○RAO-1007は、イソクエルシトリン及びその糖付加物15重量%、グリセリン20重量%、エタノール20重量%を含むものであることが明らかである。そこで、上述の1-4.(1)のように、図1、図2の試料溶液の成分について計算すると、甲第14号証には、 「イソクエルシトリン及びその糖付加物を含有するジュースビンに詰められたモデルジュースの赤キャベツ色素とパプリカベースの退色防止方法であって、イソクエルシトリン及びその糖付加物0.06重量%、エタノール0.08重量%、グリセリン0.08重量%を添加するか又はイソクエルシトリン及びその糖付加物0.03重量%、エタノール0.04重量%、グリセリン0.04重量%を添加する、赤キャベツ色素とパプリカベースの退色防止方法」 の発明(以下「引用発明14'''」という。)が記載されていると認められる。 (2)対比 本件発明9と引用発明14'''とを対比する。 引用発明14'''の「添加」とは、本件発明9の「配合」に相当する。 そうすると、両者は、「イソクエルシトリン及びその糖付加物を含有する容器詰飲料に関する方法であって、次の成分(A)及び(B)を、 (A)イソクエルシトリン及びその糖付加物0.06質量%、(B)エタノール、グリセリンの飲用可能な脂肪族アルコール0.16質量%を配合するか又は(A)イソクエルシトリン及びその糖付加物0.03質量%、(B)エタノール、グリセリンの飲用可能な脂肪族アルコール0.08質量%を配合」する点で一致し、前者は、「pHを2~5に調整する、イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制方法」(相違点14)であるのに対し、後者は「赤キャベツ色素とパプリカベースの退色防止方法」である点、前者では、「加熱殺菌された容器詰飲料」(相違点15)であるのに対し、後者では、「ジュースビンに詰められたモデルジュース」である点で相違する。 (3)判断 上記相違点について検討する。 (相違点14)「pHが2~5に調整する、イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制方法」について 甲第14号証(甲14-a)に「サンメリンAO-1007を用いた赤キャベツ色素とパプリカベースの退色防止効果の実例を図1と図2に示す。この図から明らかのようにこのフラボノイドはカロチノイド色素やアントシアニン色素に対して強力な退色防止効果を発揮した。」と記載され、イソクエルシトリン及びその糖付加物を含むサンメリンAO-1007を添加することにより、赤キャベツ色素とパプリカ色素の退色防止することができることは記載されるものの、イソクエルシトリン及びその糖付加物自体の色調変化抑制については確認されていない。したがって、甲第14号証に、イソクエルシトリン及びその糖付加物自体の、色調変化を抑制することが記載されているとは認められない。 また、引用発明14'''の方法は、クエン酸、クエン酸ソーダを配合することは記載されているが、飲料を特定のpHにすることは記載されておらず、pHを調整してイソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制を行うことについては記載されていない。 甲第14号証には赤キャベツ色素とパプリカベースの退色防止方法について記載されるのみで、いずれの甲号証をみても、イソクエルシトリン及びその糖付加物自体の色調変化を抑制することについては記載も示唆もないから、上記4-1.(3)と同様に、この相違点14は、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (相違点15)「加熱殺菌された容器詰飲料」について 上記3-1.(2)で述べたとおり、引用発明14'''の飲料形態の試験液を実際の飲料とするに際し、保存性を高めるために、加熱殺菌処理を施し、容器詰飲料とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (4)小括 したがって、本件発明9は、相違点14、15において引用発明14'''と相違するから、新規性がないとはいえない。 本件発明9は、甲第1号証、甲第12~14号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 4-5.請求人の主張に対し 請求人は以下のとおり主張する。 (i)イソクエルシトリン及びその糖付加物を高濃度で用いた場合に色調変化の問題があるという課題は、本件優先日当時、知られており、かつ、甲第1、12~14号証に記載の飲料において、既に解決していた課題にすぎず、イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化という問題は生じないため、これらの文献にかかる課題があえて記載されていないことは当然である。 したがって、請求項9に係る発明は、公知の飲料が当然に有する作用について、方法の形式で示したものにすぎない。 (ii)甲第1号証802頁には、酵素処理イソクエルシトリン添加によるアントシアニン系色素の深色、増色効果について測定したことが記載され、色素の深色、増色効果は、単波長の吸光度だけでなく、吸光スペクトルにより評価することは周知の技術的事項である。従って、甲第1号証図5に記載の飲料の吸光スペクトル測定により、酵素処理イソクエルシトリンに起因する比較的短波長側の吸収スペクトルも確認されているため、甲第1号証において、酵素処理イソクエルシトリンの色調が確認されていることは明らかである。 と主張している。 上記主張について検討する。 (i)本件発明9は、 「(A)イソクエルシトリン及びその糖付加物0.03~0.25質量%、 (B)エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール及びアミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、プロピレングリコール及びグリセリンから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコール0.001質量%以上1質量%未満となるように配合し、pHを2~5に調整する」ことによって、イソクエルシトリン及びその糖付加物自体の色調変化を抑制できることを見い出したことに基づく発明であって、請求項9に特定された「イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化を抑制方法」という用途は甲第1、12~14号証に記載の方法の用途と明確に区別できる。 本件発明9の「イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化を抑制方法」は、請求人が示すいずれの文献にも記載も示唆もされておらず、イソクエルシトリン及びその糖付加物が褐変するという課題が本件優先日当時既に知られていた事項であったとしても、甲第1号証、甲第12~14号証に、その課題の解決手段は記載されていないから、当業者が容易に想到し得たものではない。 (ii)甲第1号証図5には「サンメリンAO-1007を添加することによりアントシアニン系色素が深色・増殖(コピグメント効果)する」と記載されるとともに、赤色の溶液が入った容器の写真が記載されるのみで、酵素処理イソクエルシトリンの色調変化は認識していないから、イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制方法が記載されているとは認められない。 4-6.まとめ 本件発明9は、甲第1号証、甲第12~14号証に記載された発明とそれぞれ同一であるとはいえず、新規性を有する。 本件発明9は、甲第1号証、甲第12~14号証に記載された発明及び周知技術に基いて進歩性を有しないとはいえない。 以上のとおり、請求人の主張する無効理由18、19には理由がない。 5.無効理由20~30について(本件発明10~16の新規性・進歩性) 無効理由20~30の対象である、本件発明10~16は、請求項9を直接又は間接的に引用する下位概念の発明である。 上記「4.無効理由18、19について」で述べたように、請求人の提出した証拠方法と理由によって、本件発明9は新規性がないとも、進歩性がないともいえないのであるから、本件発明9をさらに限定した下位概念の発明である本件発明10~16についても、新規性がないとも、進歩性がないともいえない。 以上のとおり、請求人の主張する無効理由20~30には理由がない。 6.無効理由31について(請求項4、6、8~16についてのサポート要件) (1)請求人の主張 請求人は、「訂正後の本件発明の容器詰飲料は、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、プロピレングリコール及びグリセリンから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコールを含んでいる。 これに対し、本件特許明細書の実施例には、アルコールとしてエタノール、グリセリン、イソアミルアルコール及び1-ヘキサノールを用いた場合の容器詰飲料の保存前後での△b*値が記載されているにすぎない。本願明細書及び技術常識を参酌しても、実施例に記載のアルコールと構造が異なる1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、プロピレングリコールといった脂肪族アルコールにおいても同様の色調変化抑制効果が発揮されるとは認められず、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし、一般化できるとはいえない。 尚、被請求人が乙第2号証としてプロピレングリコールを用いた実験成績証明書を提出しているが、本件の場合、出願時の技術常識に照らしても、本件明細書の記載からこれらのアルコールを配合した場合に実施例同様の色調変化抑制効果が発揮されるとは認められないため、出願後に実験成績証明書を提出しても、拒絶理由は解消しないことは明らかである。 よって、請求項1-16に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」と主張している。 (2)判断 請求項4、6、8~16に対する無効理由31について検討する。 本件特許明細書の実施例1~12において、1価の脂肪族アルコールであるエタノール(直鎖型、炭素数2)、イソアミルアルコール(分岐型、炭素数5)、1-ヘキサノール(直鎖型、炭素数6)を含む容器詰飲料を作成し、色調変化抑制効果が確認されている。これらの例の記載から、炭素数2~6の範囲の直鎖及び分岐型の1価脂肪族アルコールを用いた場合の効果を推認できる。 さらにグリセリンの例も示されていることから、1~3価の脂肪族アルコールを用いた場合についての効果も推認できる。 一方、「1-プロパノール」、「1-ブタノール」、「アミルアルコール」は、それぞれ直鎖型の炭素数3、4、5の1価のアルコールであり、「イソプロパノール」、「イソブタノール」はそれぞれ分岐型の炭素数3又は4の1価のアルコールであり、「プロピレングリコール」は直鎖型の炭素数3の2価のアルコールであるから、実施例で効果を確認していない「1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、プロピレングリコール」は、実施例において用いられた特定の飲用脂肪族アルコールと、炭素数、価数、化学構造が類似するものであって、実施例で確認した飲用脂肪族アルコールと同様の効果を有すると推認できるものである。 なお、被請求人より答弁書において提出された乙第2号証参考例2によると、「プロピレングリコール」を含有する容器詰飲料の保存前後の△b*値は1.5であり、実施例2の「グリセリン」と同じ値であることが示されており、上記推認に沿うものである。 したがって、本件特許明細書、発明の詳細な説明に「飲用可能な脂肪族アルコール」の具体例として「1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、プロピレングリコール」の実施例が記載されていなくても、請求項4、6、8~16に係る発明が、発明の詳細な説明において色調変化抑制という発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているとはいえない。 よって、本件発明4、6、8~16に係る特許が、請求人のいう理由により、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものであるとすることはできない。 以上のとおり、請求人の主張する無効理由31には理由がない。 7.無効理由32について(請求項4、6、8~16についてのサポート要件) (1)請求人の主張 請求人は、「訂正後の本件発明の容器詰飲料は、飲用可能な脂肪族アルコールを0.001質量%以上1質量%未満含んでいる。 これに対し、本件特許明細書の実施例には、アルコールとしてエタノールを0.01質量%、0.10質量%もしくは0.50質量%、グリセリンを0.10質量%、0.50質量%もしくは0.60質量%、イソアミルアルコールを0.50質量%、1-ヘキサノールを0.50質量%配合した場合の容器詰飲料の保存前後での△b*値が記載されているにすぎない。 本件特許明細書、表1における、実施例5(エタノール0.1質量%、△b*1.3)及び実施例6(エタノール0.01質量%、△b*2.0)の記載から、当業者は、エタノール配合量を実施例6から更に1/10として0.001質量%とすると△b*は更に0.7増加し、2.7程度となるものと把握するものと考えられる。2.7という△b*の値は、本件明細書中、比較例3(△b*2.5)よりも大きい値である。 従って、出願時の技術常識に照らしても、本件特許明細書の記載からは、実施例6(0.01質量%)よりもさらに1/10以下の水準である0.001質量%でも同様の色調変化抑制効果が発揮されるとは認められず、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし、一般化できるとはいえない。 また、被請求人は、乙第2号証として、エタノールを「0.001質量%」含有する容器詰飲料の保存後の色調変化抑制効果について実験成績証明書を提出している。 しかし、明細書及び特許請求の範囲の記載要件についての審査基準(審査基準第1部 第1章)では、その2.2.1.5(1)ただし書に「発明の詳細な説明の記載が不足しているために、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができるといえない場合には、出願後に実験成績証明書を提出して、発明の詳細な説明の記載不足を補うことによって、請求項に係る発明の範囲まで、拡張ないし一般化できると主張したとしても、拒絶理由は解消しない」とされている。 よって、請求項1-16に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」と主張する。 (2)判断 請求項4、6、8~16に対する無効理由32について検討する。 脂肪族アルコールの配合割合が特定されている請求項は4、6、9、11、12、13であるところ、請求項9には、「(B)エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、プロピレングリコール及びグリセリンから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコール0.001質量%以上1質量%未満」、請求項4には、「(B)1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、プロピレングリコール及びグリセリンから選択される1種又は2種以上の飲用可能な脂肪族アルコール0.001質量%以上1質量%未満」、請求項6には、「(B)イソアミルアルコール、1-ヘキサノール及びプロピレングリコールから選択される1種 0.001質量%以上1質量%未満」、請求項11には「成分(B)を、0.005質量%以上1質量%未満配合する」、請求項12、請求項13には「成分(B)を0.01質量%以上1質量%未満配合する」と記載されている。 本件特許明細書の実施例6で、エタノール0.01質量%を添加した場合の△b*が確認されているが、このアルコール添加量は請求項12、13で特定された(B)の脂肪族アルコール添加量の範囲の下限値(0.01質量%)に一致し、請求項11の下限値(0.005質量%)の2倍、請求項4、6、9の下限値(0.001質量%)の10倍に相当する。 本件特許明細書表1における実施例1(エタノール0.50%、△b*1.3)は、実施例5(エタノール0.1質量%、△b*1.3)のエタノール添加量の5倍量を添加しているが、実施例5と同じ△b*1.3であり、実施例5のエタノール添加量の1/10である実施例6(エタノール0.01質量%、△b*2.0)の△b*が0.7増加したことをもって、エタノールを0.001%添加したときの△b*が2.7になるとは認められない。さらに、被請求人が乙第2号証として、エタノールを0.001%含有する容器詰飲料を作成し、測定した△b*値も、2.7ではなく、2.2である。 請求人が主張するように、エタノール添加量0.001%の容器詰飲料の△b*値が2.7だったとしても、被請求人が実験成績証明書(乙第2号証)で行った△b*値が2.2だとしても、どちらも、(B)成分を添加していない比較例2のb*値(3.0)よりも色調変化は僅かながら抑制されている。また、エタノール0.01質量%を添加した容器詰飲料で色調変化抑制効果があれば、飲食品分野における当業者であれば、0.01%より多少少ない添加量であっても、容器詰飲料の色調変化抑制効果を有すると考えるのが自然である。 とすれば、実施例6で確認された、(B)の添加量0.01%に対し、1/2、1/10程度の添加量でも、効果は0.01質量%(実施例6)添加の容器詰飲料より減少するものの、色調変化抑制効果を有するといえる。 したがって、本件特許明細書、発明の詳細な説明に(B)を「0.001質量%」配合し、色調変化抑制効果を確認する実施例が記載されていなくても、請求項4、6、8~16に係る発明が、発明の詳細な説明において色調変化抑制という発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているとはいえない。 よって、本件発明4、6、8~16に係る特許が、請求人のいう理由により、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものであるとすることはできない。 以上のとおり、請求人の主張する無効理由32には理由がない。 8.無効理由34について(請求項13についての明確性要件) 請求人は、平成25年11月18日付け訂正請求後の請求項5及び13は、「L*a*b*表色系におけるb*値が2.3~17.4」との記載が不明確であり、発明の範囲が不明確であるため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないと主張している。 しかし、上記「第2」のとおり請求項13の訂正が認められるから、上記記載の不備は解消した。 したがって、請求人の主張する無効理由34には理由がない。 9.無効理由35について(請求項16についての実施可能要件、明確性要件) (1)請求人の主張 「訂正後の請求項2は、「製造直後の容器詰飲料のL*a*b*表色系におけるb*値が2.3、4.4、4.6、4.8、4.9、10.1、15.1又は15.6であり、 前記b*値が前記容器詰飲料を試料として光路長10mmの石英セルに入れて分光光度計により測定されたものであ」ると規定している。 「光路長10mmの石英セルに入れて分光光度計により測定」によって、反射測定と透過測定との両方の測定を行うことができる。そして、被請求人上申書2の8~9頁で被請求人も主張しているように、L*a*b*表色系のb*値の測定方法には、「透過測定」と「反射測定」との少なくとも2種類の方法が存在し、同じサンプルを測定した場合であっても、いずれの方法で測定するかによってb*値は異なる数値となる。 しかし訂正後の請求項2には、b*値を反射測定と透過測定とのいずれの方法で測定したものか一切規定されておらず、本件特許明細書の記載を参酌しても不明である。従って訂正後の請求項2にかかる飲料を実施しようとしても、どのような測定方法を採用した場合のb*値が上記規定の数値となるようにすればよいか当業者は理解できない。本件特許は、その訂正後の特許請求項2の記載に関し、特許法第36条第4項第1号に規定された記載要件を満たしていない」、 「また、上記と同様の理由により、訂正後の請求項2にかかる発明に包含されるのが反射測定と透過測定とのいずれの方法で測定したb*値が上限値となった飲料であるのかが明らかでなく、当該請求項の外縁が不明瞭である。 従って、本件特許は、その訂正後の請求項2の記載が特許法第36条第6項第2号に規定された記載要件を満たしていないものである。 訂正後の請求項5、16についても同様に、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第2号に規定された要件を満たしていないものである。 」と主張する。 (2)判断 乙第24号証は、本件特許明細書実施例で用いた「ColorMeter(測色色差計)ZE-2000(日本電色工業株式会社製)」のユーザーズガイドであって、ZE-2000は、液体、フィルム、樹脂などの透過試料の透過色を測定する、「透過試料室」と、固体、樹脂などの反射試料を測定する「反射試料台」があることが記載されている。 また、乙第20~23号証の記載より、「光路長」とは、溶液中に光を透過させる測定方法、すなわち「透過測定」における概念であり、反射光はセル表面で反射する光であり、「反射測定」には光路長という概念が存在しないという、技術常識がある。 これらを考慮すれば、請求項16の「光路長10mmの石英セルに入れて分光光度計により測定されたもの」である「L*a*b*表色系におけるb*値」とは、「透過測定」により得られる値であるという意味であることは、当業者であれば直ちに理解できる。 したがって、「光路長10mmの石英セルに入れて分光光度計により測定された」、「L*a*b*表色系におけるb*値」の記載がある、請求項16は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。 また、請求項16について、本発明明細書の発明の詳細な説明には、当業者が実施をすることができる程度に発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されており、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。 以上のとおり、請求人の主張する無効理由35には理由がない。 10.無効理由36(請求項9~16についての実施可能要件、サポート要件、明確性要件) (1)請求人の主張 「訂正後の請求項9はイソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制方法に関するものである。 しかし、本件特許明細書実施例には、イソクエルシトリン糖付加物等の製剤に加えてアルコール、クエン酸が配合された飲料全体の△b*値が示されているにすぎない。ここで、甲第1号証に記載のように実施例において用いているイソクエルシトリン糖付加物等の製剤サンメリンパウダーC-10にはアスコルビン酸が配合されておりアスコルビン酸が酸化により黄色となることは周知の技術的事項である。しかしながら、本件特許明細書には、かかる飲料中においてイソクエルシトリン及びその糖付加物のみの色調変化をいかなる方法で測定し、色調変化が抑制されているか否かをいかなる基準で判定するかについてについても一切記載されていない。 従って、いかなる方法で飲料中のイソクエルシトリン及びその糖付加物のみの色調の変化を測定するのか記載されていない以上、当業者は訂正後の請求項9に係る発明を実施することはできず、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定された要件を満たしていない。訂正後の請求項9に係る発明は飲料全体の色調から飲料中のイソクエルシトリン及びその糖付加物のみの色調の変化を測定し得るような飲料についての方法に限られていないのに対し、飲料中のイソクエルシトリン及びその糖付加物のみの色調の変化の測定方法について記載されていないため、訂正後の請求項9全体にかかる発明が、本件明細書に裏付けられたものともいえず、特許法第36条第6項第1号に規定された要件を満たしていない。さらに、いかなる方法で測定した結果からイソクエルシトリン及びその糖付加物のみの色調変化抑制を判定すべきかについて記載されていない以上、訂正後の請求項9当該請求項の外縁が不明瞭であるため、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定された要件を満たしていない。」と主張する。 (2)判断 判決において、請求項9~16についてのサポート要件に関し、「本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件出願日当時の技術常識に照らして,本件訂正発明9~16は,容器詰飲料に含まれるイソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化を抑制することにより,当該容器詰飲料の色調変化を抑制する方法を提供するという課題を解決できるものと,当業者が認識することができるとはいえない。」(判決書77~91頁「3 取消事由3-4(請求項9~16に係る実施可能要件及びサポート要件の判断の誤り)について」)と判断されており、この判断は、行政事件訴訟法第33条第1項の規定により、当合議体を拘束する。 よって、請求項9~16の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、無効理由36には理由がある。 11.無効理由37(請求項9~16についての明確性要件) (1)請求人の主張 「訂正後の請求項9は「イソクエルシトリン及びその糖付加物を含有する加熱殺菌された容器詰飲料の色調変化抑制方法であって、・・・イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制方法」と規定されている(下線付加)。 上記記載では、訂正後の請求項9にかかる発明が、容器詰飲料の色調変化を抑制し、かつイソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化も抑制する方法なのか、容器詰飲料の色調変化を抑制するしないにかかわらずイソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化も抑制する方法なのか、それ以外を意味するものなのか不明である。 従って、訂正後の請求項9の外縁が不明瞭であるため、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定された要件を満たしていない。 訂正後の請求項10~16についても同様に、特許法第36条第6項第2号に規定された記載要件を満たしていない。」 と主張する。 (2)判断 本件特許明細書には、「本発明者は、イソクエルシトリン及びその糖付加物とともにアルコール類をそれぞれ特定量含有せしめ、更にpHを特定範囲内に調整することで、長期間にわたって保存しても色調が変化し難く、外観が保持される飲料が得られることを見出した。」(段落【0008】)、及び「フラボノール配糖体を始めとするポリフェノールは一般に酸化されやすいため、それを含有する飲料を長期間にわたって保存すると徐々に着色が進んで色調が大きく変化してしまう。本発明者は、酵素処理イソクエルシトリンを飲料に配合し、それを高濃度化するに従い色調変化が顕在化することを見出した。・・・また、本発明の課題は、イソクエルシトリン及びその糖付加物を含有する容器詰飲料の色調変化抑制方法を提供することにある。」(段落【0007】)なる記載がある。これらを考慮すれば、訂正後の請求項9に係る発明が「イソクエルシトリン及びその糖付加物を含有する加熱殺菌された容器詰飲料の色調変化抑制方法であって、イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化に起因する容器詰飲料の色調変化抑制方法」であることを、当業者であれば理解できる。 したがって、訂正後の請求項9に係る発明は、イクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化に起因する容器詰飲料の色調変化抑制方法であることは明らかであり、請求項9に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定された要件を満たす特許出願に対してなされたものである。 また、請求項10~16に係る発明も前述と同様の理由により、特許法第36条第6項第2号に規定された要件を満たす特許出願に対してなされたものである。 以上のとおり、請求人の主張する無効理由37には理由がない。 12.無効理由38(請求項9~16についての明確性要件) (1)請求人の主張 「訂正後の請求項9は「イソクエルシトリン及びその糖付加物を含有する加熱殺菌された容器詰飲料の色調変化抑制方法であって、次の成分(A)及び(B)を、・・・配合し、pHを2~5に調整する、イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制方法」と規定されている(下線付加)。 しかし、上記のように訂正後の請求項9にかかる発明は加熱殺菌された容器詰飲料の色調変化抑制方法に関するものであるにも関わらず、加熱工程について規定されておらず、加熱工程を(A)(B)成分の配合工程及びpH調整工程の前にするのか、これらの間にするのかこれらの後にするのか、それ以外なのかについて不明である。 ここで、本件特許明細書比較例1には、クエン酸を配合しない、すなわちpHを調整していない飲料について製造直後の容器詰飲料のb*値が8.0と、pH調整している実施例1よりもb*値が上昇している。加熱殺菌などにより一旦変質したイソクエルシトリン及びその糖付加物に対しpH調整をしてもイソクエルシトリン及びその糖付加物が通常は元には戻らないため、製造直後の比較例1に対しクエン酸を0.165%配合しても実施例1とは異なるb*となることが当然に予想される。従って、加熱殺菌をどのタイミングで行うかは、飲料のb*に影響を与えることは明らかである。従って、飲料の加熱殺菌工程及びそのタイミングについて規定されていない訂正後の請求項9は、発明の必須の要件を規定していないため、本件特許は、特許法第36条第6項第2項に規定された要件を満たしておらず、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。」と主張している。 (2)判断 そもそも、発明の必須の要件を規定していないことは、特許法第36条第6項第2号違反の理由にならず、請求人の主張自体が誤りである。 本件特許明細書には、「本発明者は、イソクエルシトリン及びその糖付加物とともにアルコール類をそれぞれ特定量含有せしめ、更にpHを特定範囲内に調整することで、長期間にわたって保存しても色調が変化し難く、外観が保持される飲料が得られることを見出した。」(【0008】段落)、「また、本発明は、イソクエルシトリン及びその糖付加物を含有する容器詰飲料の色調変化抑制方法であって、次の成分(A)及び(B)を、 (A)イソクエルシトリン及びその糖付加物0.03~0.25質量%、 (B)アルコール類0.0004質量%以上1質量%未満 となるように配合し、pHを2~5に調整する、色調変化抑制方法を提供するものである。」(【0009】段落)と記載されているように、請求項9の「イソクエルシトリン及びその糖付加物を含有する加熱殺菌された容器詰飲料の色調変化抑制方法であって、次の成分(A)及び(B)を、・・・配合し、pHを2~5に調整する、イソクエルシトリン及びその糖付加物の色調変化抑制方法」に係る発明とは、(B)のアルコール類を特定量含有し、pHを調整することで、長期間にわたって保存しても色調が変化し難く、外観が保持される加熱殺菌された飲料が得られる発明であることが理解できる。 したがって、請求項9に係る発明は、明確である。 よって、請求項9~16の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないということはできない。 以上のとおり、請求人の主張する無効理由38には理由がない。 13.当審で通知した無効理由についての判断 平成27年3月9日付け訂正請求により、請求項4は、「(成分(A)及び(B)が、酵素処理イソクエルシトリン15質量部に対してグリセリン20質量部及びエタノール20質量部からなる場合、並びに酵素処理イソクエルシトリン15質量部に対してグリセリン35質量部及びエタノール20質量部からなる場合を除く)。」と、サンメリンAO-1007の、酵素処理イソクエルシトリン、グリセリン、エタノールの配合比のものが除かれたことにより、上述した、「1.無効理由8、9について」の理由と同様の理由により、本件発明4は新規性を有するものである。 第8 結び 以上のとおり、本件発明4、6、8についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 また、本件発明9~16についての特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法64条の規定により、その27分の3を請求人の負担とし、27分の24を被請求人の負担とする。 よって、結論のとおり審決する。

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2013-800159

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