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特許無効審判

2013-800113

減塩醤油類

審判番号
2013-800113
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2004-122603
登録番号
特許第4340581号(P4340581)
請求日
2013年06月27日
審決日
2017年11月08日
公報発行日
2018年03月30日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】キッコーマン 株式会社
  • 【請求人代理人】塚原 朋一
  • 【請求人代理人】鰺坂 和浩
  • 【請求人代理人】寺下 雄介
  • 【請求人代理人】▲柳▼本 高廣
  • 【請求人代理人】水野 秀一
  • 【請求人代理人】長谷川 芳樹
  • 【請求人代理人】池田 正人
  • 【請求人代理人】坂西 俊明
  • 【請求人代理人】中塚 岳
  • 【請求人代理人】阿部 寛
  • 【請求人代理人】木元 克輔
  • 【被請求人】花王 株式会社
  • 【被請求人代理人】花田 吉秋
  • 【被請求人代理人】中田 聖士
審判長/審判官
  • 審判長 田村 嘉章
  • 審判官 山崎 勝司
  • 審判官 紀本 孝
分類
P1113.121-ZDA(A23L) / P1113.537-ZDA(A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項1号特許法123条1項4号民事訴訟法64条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第123条第1項第4号、特許法第134条の2第6項、特許法第134条の2第1項、特許法第126条第5項、特許法第123条第1項第2号、特許法第131条の2第2項、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

上記当事者間の特許第4340581号「減塩醤油類」の特許無効審判事件についてされた平成26年 5月19日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成26年(行ケ)第10155号、平成28年10月19日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 特許第4340581号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、4、5、6について訂正することを認める。 特許第4340581号の請求項5、6に係る発明についての特許を無効とする。 特許第4340581号の請求項1ないし4に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その6分の4を請求人の負担とし、6分の2を被請求人の負担とする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本件特許無効審判被請求人花王株式会社は、下記の特許権者である。 1 特許第4340581号「減塩醤油類」 平成16年 4月19日   出願(優先権主張平成15年5月12日) 平成21年 7月10日   特許権の設定登録 2 その後の主な手続の経緯 なお、甲各号証及び乙各号証は、甲又は乙と番号の組み合わせの省略表記とする。 平成22年12月10日   無効審判請求(無効2010-800228 号:本件とは別の無効審判) 平成23年 3月 4日   無効2010-800228号における訂正 請求書 平成23年 7月 5日付け 無効2010-800228号の審決(訂正 を認める。本件審判の請求は成り立たない。 ) 平成23年 8月 3日   知財高裁出訴(平成23年(行ケ)1025 4号) 平成24年 6月 6日   判決言渡(原告の請求棄却) 平成24年 7月11日   確定登録 平成25年 6月27日   本件無効審判請求(請求人)(甲1~甲14 ) 平成25年 9月30日   答弁書(被請求人)(乙1~乙6) 平成25年10月23日付け 審尋(当審) 平成25年11月25日   回答書(請求人)(甲15~甲23) 平成25年11月25日   回答書(被請求人)(乙7) 平成26年 2月19日   口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成26年 2月19日   口頭審理陳述要領書(請求人)(甲24~2 7) 平成26年 3月 5日   口頭審理 平成26年 5月19日付け 無効2013-800113号の審決(本件 審判の請求は、成り立たない。) 平成26年 6月26日   知財高裁出訴(平成26年(行ケ)1015 5号) 平成28年10月19日   判決言渡(特許庁が無効2013-8001 13号事件について平成26年5月19日に した審決を取り消す。原告の請求認容。以下 、平成26年(行ケ)10155号判決を 単に「判決」という。) 平成28年11月 2日   判決確定 平成28年11月 7日   訂正請求申立書 平成28年11月18日付け 訂正請求のための期間指定通知 平成28年12月 5日   訂正請求書(乙8~12) 平成29年 1月30日   弁駁書(請求人)(甲28~47) 平成29年 4月 3日   審決の予告 平成29年 6月 9日   訂正請求書 平成29年 6月 9日   上申書(被請求人) 平成29年 6月 9日   営業秘密に関する申出書(被請求人) 平成29年 7月20日   弁駁書 なお、平成28年12月5日の訂正の請求は、平成29年6月9日の訂正の請求がされたため、特許法第134条の2第6項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 訂正請求の内容 1 訂正事項 平成29年6月9日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求めるものであり、次の訂正事項1~4をその内容とするものである。 (1-1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の「食塩濃度7~9w/w%」を、「食塩濃度9w/w%」に訂正する。 (1-2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4の「更に、核酸系調味料、アミノ酸系調味料、有機酸塩系調味料及び酸味料から選ばれる1又は2以上の添加剤を含有する請求項1~3のいずれか1項記載の減塩醤油。」を、請求項1を引用するものについて独立形式に改めて「食塩濃度9w/w%、カリウム濃度1~3.7w/w%、窒素濃度1.9~2.2w/v%であり、かつ窒素/カリウムの重量比が0.44~1.62であり、更に、核酸系調味料、アミノ酸系調味料、有機酸塩系調味料及び酸味料から選ばれる1又は2以上の添加剤を含有する減塩醤油。」と訂正する。 (1-3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項5の「濃縮及び脱塩により窒素濃度を1.9~2.2w/v%としたものである請求項1~4のいずれか1項記載の減塩醤油。」を、請求項1を引用する請求項4を引用するものについて、独立形式に改めて「食塩濃度8.32~9w/w%、カリウム濃度1.06~3.7w/w%、窒素濃度1.9~2.2w/v%であり、かつ窒素/カリウムの重量比が0.44~1.62であり、更に、核酸系調味料、アミノ酸系調味料、有機酸塩系調味料及び酸味料から選ばれる1又は2以上の添加剤を含有し、濃縮及び脱塩により窒素濃度を1.9~2.2w/v%としたものである減塩醤油。」と訂正する。 (1-4) 訂正事項4 訂正前特許請求の範囲の請求項4の「更に、核酸系調味料、アミノ酸系調味料、有機酸塩系調味料及び酸味料から選ばれる1又は2以上の添加剤を含有する請求項1~3のいずれか1項記載の減塩醤油。」を、請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、独立形式に改めて「食塩濃度8.32~9w/w%、カリウム濃度1.06~3.7w/w%、窒素濃度1.9~2.2w/v%であり、かつ窒素/カリウムの重量比が0.44~1.62であり、塩化カリウム濃度が2~7w/w%であり、更に、核酸系調味料、アミノ酸系調味料、有機酸塩系調味料及び酸味料から選ばれる1又は2以上の添加剤を含有する減塩醤油。」と改め、新たに請求項6とする。 第3 訂正の適否 1 訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1で、「食塩濃度7~9w/w%」と特定しているところ、訂正後の請求項1で、「食塩濃度9w/w%」と更に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 この訂正後の「食塩濃度9w/w%」は、明細書(特許公報)の段落【0007】の「すなわち、本発明は、食塩濃度9w/w%以下、カリウム濃度0.5~3.7w/w%かつ窒素濃度1.9w/v%以上である減塩醤油類を提供するものである。」、段落【0008】の「本発明によれば、食塩濃度が9w/w%以下であるにもかかわらず、塩味を十分に感じることのできる減塩醤油類が得られる。」との記載に基づくものである。 よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものでもない。 2 訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項4が請求項1~3のいずれか1項の記載を引用するものであるところ、請求項2及び3を引用しないものとした上で、食塩濃度を「9w/w%」と限定し、さらに、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式に改めるための訂正であって、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 この訂正後の「食塩濃度9w/w%」であることは、明細書(特許公報)の、段落【0006】の「更に食塩濃度を9w/w%以下、カリウム濃度0.5~3.7w/w%かつ窒素濃度を1.9w/v%以上とした減塩醤油類に核酸系調味料、アミノ酸系調味料、有機酸塩系調味料、酸味料等を添加することによって、相乗的に塩味を増強でき、また醤油としての完成度もより高くなることも見出した。」、段落【0007】の「すなわち、本発明は、食塩濃度9w/w%以下、カリウム濃度0.5~3.7w/w%かつ窒素濃度1.9w/v%以上である減塩醤油類を提供するものである。」及び段落【0015】の「更に、本発明によれば、食塩濃度9w/w%以下、カリウム濃度0.5~3.7w/w%かつ窒素濃度1.9w/v%以上である減塩醤油類に、核酸系調味料、アミノ酸系調味料、有機酸塩系調味料、酸味料等を添加することによって、相乗的に塩味を増強できる。また、塩味のみならず、苦味の低減、醤油感の増強などの効果もある。」に基づくものである。 よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものでもない。 3 訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項5が請求項1~4のいずれか1項の記載を引用するものであるところ、請求項1を引用する請求項4を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式に改め、食塩濃度を「7~9w/w%」から「8.32~9w/w%」へと限定し、カリウム濃度を「1~3.7w/w%」から「1.06~3.7w/w%」へと限定する訂正であって、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 この訂正後の「食塩濃度8.32~9w/w%」であることは、明細書(特許公報)の段落【0009】の「本発明の減塩醤油類の食塩濃度は9w/w%以下であるが、7~9w/w%であることが好ましく、8~9w/w%であることが特に好ましい。」、及び同じく段落【0035】の表3の実施例25における食塩濃度(w/w%)が「8.32」であることに基づくものである。 また、「カリウム濃度1.06~3.7w/w%」であることは、段落【0010】の「本発明の減塩醤油類のカリウム濃度は、食塩濃度を低下させる点及び味の点から0.5~3.7w/w%であるが、1~3.7w/w%であることが好ましく、1~2.7w/w%であることがより好ましく、1~2.2w/w%であることが特に好ましい。また、カリウムは塩味があり、かつ異味が少ない点から塩化カリウムであることが好ましい。塩化カリウムの場合の配合量は1~7w/w%であることが好ましく、2~7w/w%であることがより好ましく、2~5w/w%であることが更に好ましく、2~4w/w%であることが特に好ましい。」及び段落【0035】の表3の実施例20、21のカリウム濃度(w/w%)が「1.06」であることに基づくものである。 よって、訂正事項3は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものでもない。 4 訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項1~3のいずれか1項の記載を引用するものであるところ、請求項1を引用する請求項2を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式に改めて新たな請求項6とし、食塩濃度を「7~9w/w%」から「8.32~9w/w%」へと限定し、カリウム濃度を「1~3.7w/w%」から「1.06~3.7w/w%」へと限定する訂正であって、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 この訂正後の「食塩濃度8.32~9w/w%」であること、及び「カリウム濃度1.06~3.7w/w%」とする訂正の根拠については、上記「3 訂正事項3について」において検討したことと同様である。 よって、訂正事項4は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものでもない。 5 小括 したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。 第4 訂正後の特許発明 以上のとおり、本件訂正が認められることから、本件特許の請求項1~6に係る発明(以下「訂正発明1~6」といい、これらをまとめて、「本件訂正発明」ともいう。)は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~6に特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 食塩濃度9w/w%、カリウム濃度1~3.7w/w%、窒素濃度1.9~2.2w/v%であり、かつ窒素/カリウムの重量比が0.44~1.62である減塩醤油。 【請求項2】 塩化カリウム濃度が2~7w/w%である請求項1記載の減塩醤油。 【請求項3】 窒素濃度が1.9~2.2w/v%である請求項1又は2記載の減塩醤油。 【請求項4】 食塩濃度9w/w%、カリウム濃度1~3.7w/w%、窒素濃度1.9~2.2w/v%であり、かつ窒素/カリウムの重量比が0.44~1.62であり、更に、核酸系調味料、アミノ酸系調味料、有機酸塩系調味料及び酸味料から選ばれる1又は2以上の添加剤を含有する減塩醤油。 【請求項5】 食塩濃度8.32~9w/w%、カリウム濃度1.06~3.7w/w%、窒素濃度1.9~2.2w/v%であり、かつ窒素/カリウムの重量比が0.44~1.62であり、更に、核酸系調味料、アミノ酸系調味料、有機酸塩系調味料及び酸味料から選ばれる1又は2以上の添加剤を含有し、濃縮及び脱塩により窒素濃度を1.9~2.2w/v%としたものである減塩醤油。 【請求項6】 食塩濃度8.32~9w/w%、カリウム濃度1.06~3.7w/w%、窒素濃度1.9~2.2w/v%であり、かつ窒素/カリウムの重量比が0.44~1.62であり、塩化カリウム濃度が2~7w/w%であり、更に、核酸系調味料、アミノ酸系調味料、有機酸塩系調味料及び酸味料から選ばれる1又は2以上の添加剤を含有する減塩醤油。」 第5 当事者の主張及び提出した証拠 1 請求人の主張の概要 「特許第4340581号の特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された各発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、」との審決を求め、下記2に示した証拠方法を提出するとともに、次に示す無効理由を主張している。なお、訂正前の請求項4に対して主張する無効理由は、訂正後の請求項6に対しても主張するものと認める。 1-1 無効理由1(特許法第123条第1項第2号) 本件特許の請求項1乃至5に係る各特許発明は、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、甲1乃至甲3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 1-2 無効理由2(特許法第123条第1項第4号) 本件特許の請求項1乃至5に係る各特許発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、その特許は、同法123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 2 請求人の証拠方法 甲1  特公昭62-39978号公報 甲2  特開昭59-55165号公報 甲3  特公昭62-62143号公報 甲4  志村保彦、「減塩醤油の成分分析値について」、醤研、Vol.2 2、No.5、1996年、241~244頁 甲5  「醸造物の成分」、財団法人日本醸造協会、平成11年12月10 日、449頁 甲6  特開2002-325554号公報 甲7  特開平11-187841号公報 甲8  「日本の醤油 その源流と近代工業化の研究」、ライフリサーチプ レス、 初版、2004年2月24日、172~175頁 甲9  J.Ferment.Technol.、Vol.47、No.2 、1968年、137~145頁 甲10 平成23年(行ケ)10254号における乙第8号証の試験結果報 告書 甲11 平成24年9月6日、小幡明雄作成の減塩醤油の調製試験結果報告 書 甲12 2012年9月6日、社団法人おいしさ科学研究所作成の減塩醤油 の官能評価報告書 甲13 朝倉康夫、「官能検査4 官能評価に用いられる統計手法」、J. ASEV Jpn.、Vol.8、No.2、1997年、105 ~111頁 甲14 平成23年3月4日付け訂正請求書に添付された訂正明細書 甲15 ネオセプタ膜のカタログ 甲16 平成25年11月25日、山崎達也作成の実験成績証明書(脱塩条 件) 甲17 増補 醤油の科学と技術、財団法人日本醸造協会、増補、平成6年 3月31日、282~283頁、480~483頁 甲18 一般財団法人日本醤油技術センター作成、しょうゆのJAS規格の 解説、URL:https://www.soysauce.or.jp/gijutsu/jas/top.html 甲19 しょうゆの表示に関する公正競争規約及び施行規則、1~15頁 甲20 しょうゆの日本農林規格、最終改訂、平成21年8月31日農林水 産省告示第1218号、1~10頁 甲21 しょうゆ品質表示基準、最終改訂、平成21年8月31日農林水産 省告示第1219号、1~4頁 甲22 特別用途食品制度の対象食品の見直しに伴うしょうゆ品質表示基準 の改正について(案)、平成20年10月2日、農林水産省 甲23 平成25年11月25日、山崎達也作成の実験成績証明書(官能評 価) 甲24 比重とボーメ度の換算表 甲25 特開昭53-142598号公報 甲26 特開昭53-81695号公報 甲27 特開昭54-8796号公報 甲28 平成26年(行ケ)第10155号判決 甲29 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●● 甲30 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●● 甲31 栃倉辰六郎、「増補 醤油の科学と技術」、財団法人日本醸造協会 、平成6年3月31日、24~25頁 甲32 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●● 甲33 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●● 甲34 Physiology & Behavior、Vol.58、N o.2、1995年、295~306頁 甲34の2 甲34の抄訳 甲35 和田拓郎外2名、「塩化カリウムを利用した減塩しょうゆに対する 官能検査及び味覚センサーによる評価の相関性」、日本調理科学会 誌、Vol.40、No.6、2007年、405~410頁 甲36 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●● 甲37 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●● 甲38 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●● 甲39 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●● 甲40 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●● 甲41 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●● 甲42 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●● 甲43 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●● 甲44 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●● 甲45 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●● 甲46 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●● 甲47 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●● なお、被請求人は、甲29、甲30、甲32、甲33、甲36~47により立証しようとする事実に基づく請求の理由の補正は、請求の要旨を変更するものであるから、甲29、甲30、甲32、甲33、甲36~47については、特許法第131条の2第2項の規定により不許可にすべきであると主張しているが(平成29年6月9日訂正請求書20ページ8~13行、33ページ下から2行~34ページ4行、36ページ1~17行)、甲29、甲30、甲32、甲33、甲36~47は、上記無効理由1、2の根拠となる事実を実質的に変更するものではないから、審判請求書の要旨を変更するものではない。 3 被請求人の主張の概要 本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、下記4の証拠方法を提出する。 4 被請求人の証拠方法 乙1  野白喜久雄 等編、「改訂 醸造学」、株式会社講談社、第1刷、 1993年3月10日、186~187頁 乙2  栃倉辰六郎編著、「増補 醤油の科学と技術」、財団法人日本醸造 協会、増補、平成6年3月31日、253~255頁、480~4 83頁 乙3  平成23年10月13日、貝田 純作成の陳述書「本発明品の窒素 濃度の効果(1)」(平成23年(行ケ)第10254号審決取消 請求事件において本件被請求人が提出した乙第6号証を援用) 乙4  平成20年5月23日、中田聖士作成の陳述書「本発明品の窒素濃 度の効果(2)」(無効2010-800228において本件被請 求人が乙第3号証として提出し、平成23年(行ケ)第10254 号審決取消請求事件において原告が提出した甲第8号証を援用) 乙5  平成23年11月15日、瀧澤 稔作成の陳述書「K濃度と塩味の 関係」(平成23年(行ケ)第10254号審決取消請求事件にお いて本件被請求人が提出した乙第7号証を援用) 乙6  「油化学」、第35巻第6号、1986年、419~425頁 乙7  平成25年11月22日、小池 真作成の陳述書「甲第10号証の 実験に関する試験品の具体的な製造条件」 乙8  広辞苑第六版、「少なくとも」の項目、1494頁 乙9  特許庁総務部総務課工業所有権制度改正審議室編、「平成6年改正 工業所有権法の解説」、社団法人発明協会、1995年4月26日 、99~116頁 乙10 平成26年(行ケ)第10155号審決取消請求事件における平成 26年11月10日付け被告第1準備書面、1~3頁、29~48 頁 乙11 ヤマサ醤油株式会社、「しょうゆの本」、平成2年11月1日、3     2~33頁、112~113頁 乙12 キッコーマン株式会社、「おいしさは「味」「香り」「色」の三位 一体から生まれる」、2014年10月28日にプリントアウト、 インターネット、http://www.kikkoman.co.jp/trinity.html 第6 当審の無効理由に対する判断 先ず、無効理由2(特許法第123条第1項第4号:サポート要件)について検討する。 1 無効理由2について (1) 訂正発明1について 上記判決では、サポート要件に関して、以下のとおり判示された。 なお、各判示における「本件発明1」は、本件訂正前の請求項1に係る発明である「食塩濃度7~9w/w%、カリウム濃度1~3.7w/w%、窒素濃度1.9~2.2w/v%であり、かつ窒素/カリウムの重量比が0.44~1.62である減塩醤油。」である。 <本件発明1の課題> (判示1)「本件発明1が解決しようとする課題は、食塩濃度が7~9w/w%と低いにもかかわらず塩味があり、カリウム含量が増加した場合の苦みが低減でき、従来の減塩醤油の風味を改良した減塩醤油を提供することであると認められる。」 <課題と官能評価との関係> (判示2)「(ア)本件発明1に相当する実施例(実施例1~11)は全て、塩味が3以上、苦みが3以下、総合評価が○以上であり、他方、本件発明1から外れるもの(比較例1~25、実施例26、27)は、塩味、苦み、総合評価のいずれかが前記の官能評価を下回っている。 そうすると、本件発明1の課題における『食塩濃度が低い(7~9w/w%)にもかかわらず塩味があり、カリウム含量が増加した場合の苦みが低減でき、従来の減塩醤油の風味を改良した』とは、具体的には、『官能評価により、食塩14w/w%相当のレギュラー品(通常品)に比べ若干弱いかそれ以上の塩味であり(塩味3以上)、苦みはあったとしてもわずかに感じる程度であり(苦み3以下)、かつ、異味が少ないという評価(総合評価○以上)がされること』を意味するものと解される。」 (判示3)「本件発明1が当該発明の課題を解決できることを、認識できるというためには、本件発明1に係る減塩醤油が、官能評価の結果、塩味と苦みについて上記値を満たし、総合評価においても上記評価をされるものと認識できることが必要である。」 (判示4)「b 食塩濃度が9.0w/w%の場合について(本件発明1に含まれる実施例1~11、本件発明1に含まれない実施例26、27、比較例1~25) 本件明細書の表1には、食塩濃度が9.0w/w%の場合について、多数の実施例と比較例が記載され、カリウム濃度が1.1~3.7w/w%、窒素濃度1.93~2.15w/v%、窒素/カリウムの重量比0.44~1.62の範囲内とすれば、塩味が3以上、苦みが3以下で、総合評価が○となることが記載されているから、本件発明1のうち食塩濃度が9.0w/w%の場合は、課題が解決できると認識できる。」 (判示5)「e 以上によれば、本件発明1に関し、本件明細書の実施例・比較例から、課題を解決できることが認識できることが直接示されているのは、食塩濃度が9.0w/w%の場合のみである。」 すなわち、上記判決は、「食塩濃度7~9w/w%、カリウム濃度1~3.7w/w%、窒素濃度1.9~2.2w/v%であり、かつ窒素/カリウムの重量比が0.44~1.62である減塩醤油。」の発明のうち、食塩濃度が9.0w/w%の場合は、課題を解決できることが認識できる旨を判示しており、この判決の判断は、行政事件訴訟法第33条第1項の規定により、本件特許無効審判事件について、当合議体を拘束する。 よって、「食塩濃度9w/w%、カリウム濃度1~3.7w/w%、窒素濃度1.9~2.2w/v%であり、かつ窒素/カリウムの重量比が0.44~1.62である減塩醤油。」の発明である訂正発明1は、当該発明の課題を解決できることが認識できるから、特許法第36条第6項第1号のサポート要件を満たしている。 (2) 訂正発明2について 訂正発明2は、訂正発明1を引用するものであり、訂正発明1の発明を特定するための事項に加えて、「塩化カリウム濃度が2~7w/w%である」ことを特定するものである。 そして、塩化カリウム濃度を調整することについて、明細書(特許公報)の段落【0011】には、「食塩濃度とカリウム濃度を前記範囲に調整するには、例えば仕込水として食塩と例えば塩化カリウムの混合溶液を用いて醤油を製造する方法;塩化カリウム単独の溶液を仕込水として用いて得た醤油と食塩水を単独で仕込水として用いて得た醤油とを混合する方法;食塩水を仕込水として用いた通常の醤油を電気透析、膜処理等によって食塩を除去した脱塩醤油に塩化カリウムを添加する方法等が挙げられる。」と記載され、当該記載によると、塩化カリウムは、食塩濃度とカリウム濃度とを調整する際に用いられるものと認められる。 そうすると、訂正発明2は、「塩化カリウム濃度が2~7w/w%」とすることにより、訂正発明1の「食塩濃度9w/w%、カリウム濃度1~3.7w/w%」となることをさらに特定するものであるから、上記(1)で検討した訂正発明1と同様に、訂正発明2も、当該発明の課題を解決できることが認識できるものであり、特許法第36条第6項第1号のサポート要件を満たしている。 (3) 訂正発明3について 訂正発明3は、訂正発明1又は2を引用するものであり、「窒素濃度が1.9~2.2w/v%である」との事項を特定するものである。 そうすると、上記(1)又は(2)のとおり、訂正発明1又は2は、サポート要件を満たすものであるから、「窒素濃度が1.9~2.2w/v%である」ことを特定する訂正発明3も、当該発明の課題を解決できることが認識できるものであり、特許法第36条第6項第1号のサポート要件を満たしている。 (4) 訂正発明4について 訂正発明4は、訂正発明1の発明を特定するための事項を全て含み、訂正発明1を特定するための事項に加えて、「更に、核酸系調味料、アミノ酸系調味料、有機酸塩系調味料及び酸味料から選ばれる1又は2以上の添加剤を含有する」ことを特定するものである。 そして、核酸系調味料、アミノ酸系調味料、有機酸塩系調味料及び酸味料について、明細書(特許公報)の段落【0015】には、「更に、本発明によれば、食塩濃度9w/w%以下、カリウム濃度0.5~3.7w/w%かつ窒素濃度1.9w/v%以上である減塩醤油類に、核酸系調味料、アミノ酸系調味料、有機酸塩系調味料、酸味料等を添加することによって、相乗的に塩味を増強できる。また、塩味のみならず、苦味の低減、醤油感の増強などの効果もある。」と記載されている。 そうすると、上記(1)又は(2)で検討したとおり、サポート要件を満たす訂正発明1又は訂正発明2において、さらに、塩味を増強し、又は、苦味を低減する訂正発明4も、当該発明の課題を解決できることが認識できることは明らかであり、特許法第36条第6項第1号のサポート要件を満たしている。 (5) 訂正発明5及び6について 訂正発明5及び6は、「食塩濃度8.32~9w/w%、カリウム濃度1.06~3.7w/w%、窒素濃度1.9~2.2w/v%であり、かつ窒素/カリウムの重量比が0.44~1.62であり」と特定し、食塩濃度について、「8.32~9w/w%」としている。 そこで、「食塩濃度8.32~9w/w%」とする特定事項を含む訂正発明5及び6が、サポート要件を満たすものであるか否かについて、以下に検討する。 ア 訂正発明5及び6が、上記(判示1)で示された課題を解決できるといえるためには、上記(判示2)で示されたとおり、「官能評価により、食塩14w/w%相当のレギュラー品(通常品)に比べ若干弱いかそれ以上の塩味であり(塩味3以上)、苦みはあったとしてもわずかに感じる程度であり(苦み3以下)、かつ、異味が少ないという評価(総合評価○以上)がされること」の条件を満たす必要がある。 すなわち、訂正発明5及び6は、訂正発明5及び6で特定される「核酸系調味料、アミノ酸系調味料、有機酸塩系調味料及び酸味料から選ばれる1又は2以上の添加剤」の全ての組み合わせについて、上記条件を満たすことが発明の詳細な説明から明らかであることが必要である。 イ 各添加剤の添加効果は、本件特許明細書の実施例12~19の評価を参酌すると(【0032】、【0033】表2)、実施例14の「クエン酸」で「塩味感の向上(先味)、苦味減少」、実施例15の「DL-リンゴ酸」で「塩味感の持続、苦味減少」とある。一方、実施例13の「90%乳酸」では「塩味感の向上」、実施例16の「コハク酸二ナトリウム」では「塩味感の向上(先味)、醤油感向上」、実施例17の「5’-イノシン酸二ナトリウム」では「塩味感の向上、旨みの増強、醤油感向上」とあるものの、それぞれ苦味減少については不明である。また、実施例18の「グルコン酸ナトリウム」では「味のまとまり感向上、苦味減少」とあるものの、塩味感の向上については不明であり、実施例19の「グリシン」では、「旨み増強」とあるものの、塩味感の向上、苦味減少については不明である。 また、「グルコン酸ナトリウム」、「90%乳酸」、「コハク酸二ナトリウム」、「5’-イノシン酸二ナトリウム」及び「グリシン」の各添加剤が、どの程度、塩味向上や苦味減少に寄与しているのかを推認できる具体的な根拠もない。このことは、判決においても判示されている(判決47ページ12~13行)。 そうすると、塩味感の向上への効果が不明な「グルコン酸ナトリウム」、又は、苦味減少への効果が不明な「90%乳酸」、「コハク酸二ナトリウム」、及び「5’-イノシン酸二ナトリウム」、又は、塩味感の向上及び苦味減少への効果が不明な「グリシン」を、それぞれ添加剤として単独に選択して添加した場合に、「食塩濃度8.32~9w/w%」の「減塩醤油」が、訂正発明5及び6において特定されるすべての範囲で、塩味3以上、苦み3以下、かつ、総合評価○以上という上記条件を満たし得る根拠はない。 例えば、食塩濃度8.32w/w%の実施例25において、クエン酸及びリンゴ酸を、それぞれ単独でも塩味向上あるいは苦味減少効果が得られる量を添加しているが、これらを添加せず、塩味感向上、苦味減少効果の認められないグリシン(アミノ酸系調味料)のみを添加した場合にも、「官能評価により、食塩14w/w%相当のレギュラー品(通常品)に比べ若干弱いかそれ以上の塩味であり(塩味3以上)、苦みはあったとしてもわずかに感じる程度であり(苦み3以下)、かつ、異味が少ないという評価(総合評価○以上)がされること」の評価が得られるかは明らかでない。 ウ 以上のとおりであるから、本件出願日当時の技術常識及び本件明細書の記載から、当業者は、訂正発明5及び6が、特定される全てのものにおいて、上記条件を満たしているとは認識できないから、サポート要件を満たしているとはいえない。 エ なお、訂正発明5及び6が、サポート要件を満たすことについて、被請求人(特許権者)は、次のとおり主張している。 「実施例20~25(表3)には、食塩濃度8.32~8.50w/w%の減塩醤油が当該発明の課題を解決できることが直接示されている。そこで、実施例25(食塩濃度8.32w/w%)をみると、実施例21及び23と比べて、乳酸、コハク酸二ナトリウム及び5’-イノシン酸二ナトリウムの添加量を徐々に少なくしても、塩化ナトリウムに代えて塩化カリウムを加えることで、塩味を増やしつつ苦みを抑えることができることを認識できる。 してみると、食塩濃度8.32~9w/w%の減塩醤油において、食塩濃度9w/w%で、調味調・酸味料を添加しない場合について、本件明細書の実施例・比較例(表1)の記載から、当該発明の課題を解決できることが直接示されているところ、食塩濃度9w/w%の減塩醤油に、更に調味料・酸味料を少なくとも単独でも添加すれば、塩味は一層向上し、苦みはより減少していると理解できるものであり、さらに食塩濃度8.32~9未満w/w%の場合、調味料・酸味料を単独又は複数添加することにより、または必要に応じて塩化ナトリウムに代えて塩化カリウムを加えることにより、当該発明の課題を解決できることを本件優先日時の技術常識を考慮すれば当業者が認識できるものである。」(平成29年6月9日付け訂正請求書18ページ8行~19ページ3行)」 オ しかしながら、調味料・酸味料の添加剤の添加については、上記イで述べたとおりであるから、上記被請求人の主張は採用できない。 (6) 小括 上記(1)のとおり、食塩濃度が9w/w%であることを特定する訂正発明1~4は、発明の詳細な説明の記載から、当該発明の課題を解決できることを当業者が認識でき、サポート要件を満たしているから、その特許は特許法第123条第1項第4号の規定に該当しない。 一方、上記(5)のとおり、訂正発明5及び6は、発明の詳細な説明の記載から、その全ての範囲において、上記条件を満たしており、当該発明の課題を解決できることを、当業者は認識することはできないので、サポート要件を満たさず、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号の規定に該当するので、訂正発明5及び6についての特許は無効とするべきものである。 2  無効理由1について (1) 主な甲号証記載の事項 なお、下線は当審にて付記したものである。 ア 甲1記載の事項 (ア) 特許請求の範囲 (甲1-1)「特許請求の範囲 1 醸造法による含塩調味料の製造に際し、塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総濃度が7~20%(W/V)で、かつそのうち塩化カリウムの量が塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総重量の5~50%であるような量の塩化カリウムと塩化ナトリウムの存在下に、仕込みを行なうか、または発酵、熟成を行なうことを特徴とする含塩調味料の製造法。」(1欄1~9行) (イ) 技術分野 (甲1-2)「本発明は含塩調味料の製造法に関する。」(1欄11行) (ウ) 含塩調味料の対象 (甲1-3)「先ず、本発明にいう含塩調味料としては、例えば通常の醤油醸造法に従つて製造される濃口醤油、淡口醤油、白醤油、溜醤油、新式2号醤油(半化学半酸造醤油)等の醤油;澱粉質原料および蛋白質原料を酵素剤または酸で加水分解したのち、発酵、熟成させて得られる醤油様調味液;または通常の味噌醸造法に従つて製造される白味噌、江戸味噌、仙台味噌、信州味噌、麦味噌、豆味噌等の味噌等が挙げられる。」(3欄9~17行) (エ) 技術的背景 (甲1-4)「従来、該食品は、蒸煮変性、加熱殺菌等の加熱処理を行なつた大豆、脱脂大豆、小麦、米等の穀類に、麹菌を生育、増殖させて麹を製造し、このようにして製造された麹をそのままか、もしくはこれに蒸煮変性、加熱殺菌等の加熱処理を行なつた穀類を配合し、ついで食塩水と共に仕込みを行なつたのち、発酵、熟成させて製造されている。 そして、前記食品の製造工程中における醤油諸味、味噌等は、そのままでは腐敗してしまうため、常に10~20%程度の食塩の存在において腐敗を防止して発酵、熟成が行なわれている。」(1欄15行~2欄2行) (オ) 発明が解決しようとする課題 (甲1-5)「しかしながら、このような高濃度食塩の存在下では、防腐等の目的は達成されても、発酵、熟成に関与する耐塩性乳酸菌および耐塩性酵母等の生育、増殖は抑制され、したがつて芳醇な風味も醸成され難く、さらに麹菌の生産した酵素類も阻害され、物料中の有用成分の分解および溶出等が不充分となる欠点がある。 一方、醤油諸味もしくは味噌等の食塩濃度が比較的低濃度の場合には、有害な腐敗菌等が生育、増植するため、順調な発酵、熟成は行なわれ難い欠点がある。」(2欄3行~2欄13行) (カ) 課題を解決するための手段 (甲1-6)「そこで、本発明者等は、上記欠点を解消すべく種々検討した結果、醸造法による含塩調味料の製造に際し、塩化カリウムと塩化ナトリウムの存在下に、仕込みを行なうか、または発酵、熟成を行なえば、塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総濃度が従来の塩濃度と変りがなく、物料中の有用成分の分解および溶出等も良好となり、芳醇な風味も醸成されること等の知見を得、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、醸造法による含塩調味料の製造に際し、塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総濃度が7~20%(W/V)で、かつそのうち塩化カリウムの量が塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総重量の5~50%であるような量の塩化カリウムと塩化ナトリウムの存在下に、仕込みを行なうか、または発酵、熟成を行なうことを特徴とする含塩調味料の製造法である。」(2欄14行~3欄7行) (甲1-7)「そして本発明においては、上述の如くして得られた変性もしくはα化処理した含塩調味料原料に例えばプロテアーゼ、ペプチダーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ等の酵素剤もしくは塩酸等の酸類を添加し、常法により加水分解を行なう際、または上記原料より麹をつくり、この麹を用いて仕込みを行なう際、塩化カリウムと塩化ナトリウムの存在下に仕込みを行なうか、または仕込みを行なつた諸味、諸味様物、味噌などを塩化カリウムと塩化ナトリウムの存在下に、発酵、熟成させる。なお、この場合、塩化カリウムと塩化ナトリウムを存在させる以外は、仕込み、発酵、熟成の手段は常法によつて行なうことができる。 前記塩化カリウムと塩化ナトリウムの総濃度は、従来用いられている塩化ナトリウム濃度例えば7~20%(W/V)であれば良く、醤油の場合は例えば諸味中の含有量として15~20%(W/V)が好ましく、また醤油様調味料の場合は例えば15~20%(W/V)が好ましく、さらに味噌の場合は例えば7~15%(W/V)が好ましい。」(3欄34行~4欄9行) (甲1-8)「そして、塩化カリウムの量は、塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総重量の5~50%、好ましくは10~30%であり、塩化カリウムの量が総重量の5%未満の場合には、有用成分の分解および溶出等が不充分となり、芳醇な風味も醸成され難く、一方総重量の50%を越える場合には、苦みが感じられる等のため、好ましくない。」(4欄10~16行) (キ) 発明の適用対象の例 (甲1-9)「また、本発明で得られる含塩調味料は、通常の含塩調味料に比べナトリウム含量が著しく少ないため、特にナトリウム制限食を必要とする心臓病、血管疾患または腎炎等の患者に好適に用いることが出来る。」(5欄7~11行) (ク) 実施例 (甲1-10)「実施例 1 脱脂大豆3500gに、80℃の温水470mlを添加して加水させた脱脂大豆に、圧力2kg/cm2(ゲージ圧力)で温度133℃の飽和水蒸気を10分間作用させて加圧、加熱蒸煮処理したものに、別に小麦3500gを温度180℃で40秒間炒熬し、さらに割砕して得た炒熬割砕小麦を混合して得た配合物に、アスペルギンス・オリーゼ(ATCC No.14895)のふすま(当審注:「ふすま」は、ばくにょう部首に皮の漢字である。)種麹(有効胞子数:1×109個/g)0.5gを接種し、温度30℃に調整した恒温恒湿室中で45時間常法により製麹して醤油麹を得た。 ついで、このようにして得られた1区あたり800gの麹9区分を、夫々第1表記載の配合比の塩化カリウムおよび塩化ナトリウムを22%(W/V)となる如く溶解した水溶液1300mlと混合して仕込みを行なつたのち、温度30℃で150日間常法により諸味管理を行ない、さらに圧搾を行なつて1600mlの醤油諸味液汁(製品1~6および対照1~3)を夫々得た。 前記醤油諸味液汁について各成分分析値および窒素利用率の測定を行なつたのち官能検査を行なつた結果を第1表に示す。 なお第1表中、醤油諸味液汁の分析値の欄におけるT.N.、Glu.、R.S.、Alc.およびL.A.は、夫々全窒素、グルタミン酸、還元糖、アルコールおよび乳酸を表し、分析法はT.N.、Glu.、R.S.およびAlc.についての分析法は、「醸造分析法」〔山田正一著、産業図書(株)出版〕記載の方法に準拠し、また乳酸は、カルボン酸分析計〔盛進製膜(株)製〕を使用して測定したものであり、さらに窒素利用率は、醤油原料中の全窒素に対する溶解窒素の割合を%で表したものである。 また、官能検査は、評点法によつて行ない、前記麹を22%(W/V)の塩化ナトリウム水溶液で仕込む以外は、前記と同様にして得た醤油諸味液汁(対照1)と夫々比較し、差なしを0、差有りを1、大きな差有りを2、極めて大きな差有りを3と評価し、対照1よりも優れた風味を有している場合には「+」、反対に劣つている場合には「-」の符号を付して示した。 そしてまた、第1表中の評点は、識別能力を有する訓練されたパネル20名の平均値を示す。そしてまた、検定の欄における記号は、※:5%危険率で有意差有り、※※:1%危険率で有意差有り、-:有意差なしを夫々意味する。 さらに、第1表中の苦みの程度は、下記基準に従つて、識別能力を有する訓練されたパネル20名により判定を行なつて得た平均値を示す。 0:苦み無し +2:苦み有り +1:僅かに苦み有り +3:著しく苦み有り 第1表より明らかな如く、塩組成において、諸味中の塩化カリウム割合が、5~50%(好ましくは10~30%)の範囲にあるとき、対照1に比し、各成分分析値および窒素利用率は優れ、また、官能検査においても著しく優れ、特に苦みが感じられないことが判明した。」(5欄13行~7欄6行) (甲1-11)「 」(3~4頁 第1表) (ケ) 発明の効果 (甲1-12)「本発明によれば、塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総濃度が従来の塩濃度と変りがなく、また熟成に開与する耐塩性乳酸菌および耐塩性酵母等の生育、増殖を抑制することがないので、芳醇な風味が醸成され、さらに物料中の有用成分の分解および溶出等も良好となり、したがつて高品質な含塩調味料を得ることが出来る。」(4欄末行~5欄6行) イ 甲2記載の事項 (甲2-1)「2.特許請求の範囲 塩化カリウムを含有する醤油に核酸系調味料及び/又はアミノ酸系調味料を添加し、塩化カリウムの苦味を消失させることを特徴とする醤油の製造法。」(1頁左下欄3~6行) (甲2-2)「本発明者等は、KCl独特の苦みを除去ないし消失させることが可能であるならば、食塩の一部をKClで置換する方法は、低食塩醤油を製造する方法として有利に利用できるものと考え種々検討した結果、驚くべきことにKCl含有醤油に核酸系調味料及び/又はアミノ酸系調味料を添加することにより、全く苦味を感じさせない醤油を得ることができるという知見を得た。」(2頁左上欄17行~同頁右上欄4行) (甲2-3)「そしてこの様なKCl含有醤油に添加する核酸系調味料とは、5'-グアニル酸、5'-イノシン酸等のナトリウム、カリウムあるいはカルシウム塩等をいい、またアミノ酸系調味料としてはグルタミン酸あるいはこれのナトリウム又はカリウム塩等、アラニン、グリシン等を指す。」(2頁左下欄6~11行) (甲2-4)「これらの調味料の添加量は、核酸系調味料の場合醤油に対して0.01~0.1W/V%、好ましくは0.02~0.06W/V%であり、またアミノ酸系調味料の場合には0.1~1W/V%、好ましくは0.2~0.6W/V%である。」(2頁左下欄12~16行) ウ 甲3記載の事項 (甲3-1)「低食塩醤油を製造する方法については従来からいろいろと試みられており、例えば醤油を濃縮して脱塩する方法、イオン交換膜により脱塩する方法、エタノール添加による減塩仕込醸造法、生醤油を仕込水として使用し濃厚醤油としこれを水で稀釈する方法、あるいは特殊な樹脂により脱塩する方法などが挙げられる。」(1欄15~21行) (甲3-2)「即ち本発明は、食塩10~16W/V%、エタノール1~5V/V%の仕込水に醤油麹と変性処理した大豆を8:2~2:8の割合(生原料重量換算)で仕込み、以下常法により発酵熟成させることを特徴とする低食塩醤油の製造法である。 以下本発明を具体的に説明する。 醤油は通常17~18%の食塩を含有しており、うす塩と称する醤油でも食塩濃度は15%前後である。本発明はこれよりも更に低い7~12%の食塩濃度の醤油を目的とするものであり、それ故仕込食塩水の濃度は10~16%に調整する。この食塩濃度は汲水量、麹水分、あるいは麹量等により若干のずれは生ずるが、上記した塩水濃度で仕込を行えば諸味の食塩濃度はほぼ7~12%の範囲内に入る。」(2欄5~19行) (甲3-3)「実施例 1 蒸煮変性処理した脱脂大豆と、炒熬割砕した小麦の混合物に市販の醤油種麹を接種し、42時間の通風製麹を行ない醤油麹を得た。この醤油麹780Kg(生原料重量大豆350Kg、小麦350Kg)と、蒸煮変性処理した脱脂大豆820Kg(生原料重量700Kg)とを食塩濃度13.0W/V%、エタノール濃度3V/V%、15℃の仕込水2400に仕込み、時々撹拌しながら仕込後1ケ月後に30℃になる様に加温し、仕込後40日目に醤油酵母を添加し、以後28~30℃で6ケ月間発酵熟成させ、その後圧搾過して生醤油を得た。一方対照として上記と同様にして得た醤油麹780Kgを食塩濃度13.0W/V%、エタノール濃度6V/V%、15℃の仕込水1200に仕込み、以下上記と同様にして発酵熟成圧搾して生醤油を得た。 それぞれの生醤油の分析値を第1表に示す。 第     1     表 NaCL  T.N.  R.S.  Alc.  pH  色沢  T.N.U.R. 本発明    10.10   2.35  3.20  3.2  4.75  21番  88.5 対 照    10.00   1.85  5.40  4.5  4.70  23番  86.5 」 (甲3-4)「実施例 2 高圧過熱水蒸気で短時間加圧加熱後膨化変性処理した脱脂大豆と炒熬割砕小麦とを、生原料重量で脱脂大豆420Kg、小麦280Kgの割合で混合し、これに市販醤油種麹を接種し42時間の通風製麹を行ない醤油麹を得た。 この醤油麹と、上記と同様の方法で膨化変性処理した脱脂大豆330Kg(生原料重量350Kg)とを食塩濃度16W/W%、エタノール濃度1V/V%、15℃の仕込水1880に仕込み以下実施例1と同様にして発酵熟成させたのち圧搾過して生醤油を得た。 一方対照として高圧飽和水蒸気で短時間加圧加熱後膨化変性処理した脱脂大豆と炒熬割砕小麦とを主原料重量で脱脂大豆630Kg小麦420Kgの割合で混合し、これに市販の醤油種麹を接種し、42時間の製麹を行つて得た醤油麹を、食塩濃度16W/V%、エタノール濃度6V/V%、15℃の仕込水1880に仕込み、以下上記と同様にして発酵熟成させたのち圧搾過して生醤油を得た。 これらの生醤油の分析値を第2表に示す。 第     2     表 NaCL  T.N.  R.S.  Alc.   pH  色沢  T.N.U.R. 本発明    12.50  2.42  3.80  3.50  4.85  22番  89.5 対 照    12.80  1.70  5.05  4.20  5.10  23番  81.5」 エ 甲5記載の事項 (甲5-1)「はじめに しょう油は、濃口、淡口、溜、再仕込、及び白しょう油の5品目がJAS規格(日本農林規格)の適用を受けており、それぞれのしょう油の品目ごとに定義が決められ、品質及び表示の基準が定められている。 品質の基準は、特級、上級、標準の3等級別に性状、成分(色度、全窒素分、無塩可溶性固形分、アルコール分、直接還元糖)、異物、内容量が規定されている。 1 製品の一般成分 第1表に各種市販しょう油(JAS特級)の一般成分の分析値1)を示す。 分析方法はしょうゆ試験法2)に詳しく記載されているので省略する。 イ 全窒素 しょう油醸造工程で、麹菌のタンパク質分解酵素により原料中のタンパク質が、ペプチド、アミノ酸に分解され、旨味が出てきているので、窒素分を測定することにより味の強さを評価する基準の一つとして取り扱われている。 濃口しょう油のJAS特級規格は1.50%(w/v)以上であるが、各社の窒素分は1.57~1.60%と大きく上まわった値を示し、より旨味を重視している傾向が窺われる。 淡口しょう油は1.19%(特級規格1.15%以上)にほぼ一定しており各社ほとんど差は認められなく、また濃口しょう油ほど規格値を上回っていない。 溜、再仕込しょう油は濃厚な味が特徴であり、その用途としてさしみの他、鮨、鰻、米菓用のたれなどの調味料として使用されている。従って全窒素分も高く、特級規格ではそれぞれ1.6%、1.65%以上であるにもかかわらず、4品目ともこれを大きく回っている。」(449頁左欄1行~同頁右欄10行) (甲5-2)「 」(449頁 第1表) オ 甲6記載の事項 (甲6-1)「【0005】塩化ナトリウムと同様な塩分の一種である塩化カリウムは、塩化ナトリウムのように高血圧に与える影響が少ないとされており、このことから、塩化ナトリウム含量の低減化による塩味の低減を改善する方法として、塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムに置き換えた液体調味料が提案されている。しかしながら、塩化カリウムは独特な異味を呈することが知られており、それ故、塩化カリウムの異味を消去すべく種々の添加物の使用が検討されているが(特開平6-189709号公報)、満足できるものではなく、普及するには至っていない。」 カ 甲7記載の事項 (甲7-1)「【0002】 【従来の技術】近年、ナトリウムの取りすぎが高血圧、心臓疾患を招きやすいと言うことが知られるようになった。また、一部の食品では栄養表示成分が記載されナトリウム含量が明記されるようになり、一般消費者の関心も高くなっている。これに対応して、食塩の取りすぎの予防を目的とし、食塩を10~30%低減したいわゆる「うすじお」、「あっさり塩」と言ったスナックや、「塩分30%カット」と言ったスナック麺などの低塩分食品が市場にみられるようになった。しかしながら、味の方は低減前に比べて塩味、こく味が弱く、シャープさに欠け、嗜好性が低い。一方、食卓で調味料として用いられる食卓塩については、塩化カリウムを主体とした代替塩がみられるが、塩化カリウムは特有の刺激味、えぐ味、苦味、不快味を有するために、食塩代替品としては満足すべきものでなく、特に食卓塩のようにそのまま料理にかけたり、つけたりするものでは一層塩化カリウムの刺激味、えぐ味、苦味、不快味が目立つことになる。」 キ 甲8記載の事項 (甲8-1)「市場の59銘柄の醤油の19項目の化学、物理分析と嗜好との関係の研究では、醸造醤油の芳香と、アルコール及びエキス含量はほぼ比例した(r=+0.700及び+0.425)。・・・ T.N1.5、1.6、1.7%、食塩14、15、16%の組合せの9種の醤油の官能検査では、塩味はT.Nの上昇とともに増加し、旨味は食塩の減少とともに増加した。」(174頁9~24行) ク 甲9記載の事項 (甲9-1)「1.食塩、窒素濃度と嗜好性 Table 1に示した醤油をベースにして、食塩水で調整し、食塩の窒素濃度をTable 2のごとく2元配置法にて、試料9個作った。他の成分は窒素濃度に比例して変わってくる。この試料をつぎの4項目について官能検査を行った。 1).塩から味の強さ、2).旨味の強さ、3).味の良さ(原液)、4).味の良さ(カマボコにて試食) これらの結果を図示したのが、Fig.1~4である。 ・・・ 塩から味の強さについては食塩濃度とは当然比例的であるが、窒素濃度が高いと塩からさも増して感じられている(次節において考察する)。・・・」(138頁~139頁の「1.食塩、窒素濃度と嗜好性」の項) ケ 甲10記載の事項 (甲10-1)「3-1 減塩醤油の調製法 食塩濃度8.5w/w%、窒素濃度2.01w/v%の有機丸大豆由来の減塩醤油に、食塩及び塩化カリウムを添加し、食塩濃度9w/w%で塩化カリウム濃度の異なる減塩醤油を調製した(試験品A~C)。 前記有機丸大豆由来の減塩醤油を電気透析装置により脱塩処理を行い、食塩濃度を6.9w/w%まで低下させた減塩醤油に食塩及び塩化カリウムを添加し、食塩濃度が7w/w%で塩化カリウム濃度の異なる減塩醤油を調製した(試験品D~F)。 また、市販の食塩濃度7w/w%の丸大豆由来の減塩醤油と市販の食塩濃度14w/w%の丸大豆由来の通常醤油とを混合することにより、食塩濃度9w/w%及び14w/w%の対照品を調製した。」(1頁「3-1 減塩醤油の調製法」の項) (甲10-2)「 」(2頁 表1) (甲10-3)「6-1 対照品の調製法 前記3-1で用いた市販の食塩濃度7w/w%の丸大豆由来の減塩醤油と前記3-1で用いた市販の食塩濃度14w/w%の丸大豆由来の通常醤油とを混合して、食塩濃度7w/w%~14w/w%の下記の対照品を調製した。また、前記市販の食塩濃度14w/w%の丸大豆由来の通常醤油に食塩を添加して、食塩濃度約15w/w%の対照品を調製した。」(3頁「6-1対照品の調製法」の項) (甲10-4)「6-3 試験結果 試験品A~Fの塩味評価の結果を表2に示す。 」(3頁「6-3 試験結果」の項) コ 甲11記載の事項 (甲11-1)「6-3. 減塩醤油サンプルの調製方法 キッコーマン社製有機丸大豆濃口しょうゆ(商品名:特選有機丸大豆しょうゆ)を、電気透析(装置名:アストム製イオン交換膜装置 TS3B-2-5型)により脱塩し、食塩濃度1.0w/w%、窒素濃度2.13w/v%の脱塩醤油を得た。 この脱塩醤油をベースとし、食塩及び塩化カリウムを添加し、随時食塩濃度、カリウム濃度及び窒素濃度を測定しながら減塩醤油サンプルを調製した。窒素濃度は水での希釈により調整した。」(2頁「6-3. 減塩醤油サンプルの調製方法」の項) (甲11-2)「7. 試験結果 ・・・(略)・・・ 」(2頁「7. 試験結果」の項) サ 甲12記載の事項 (甲12-1)「2-3 評価法 表2の通り、二点識別試験を4回実施した。評価試料の温度は常温とした。」(2頁8~9行) (甲12-2) 「 」(3頁 表3~6) シ 甲16記載の事項 (甲16-1)「6-1. 減塩醤油サンプルの調製方法 キッコーマン社製有機丸大豆濃口しょうゆ(商品名:特選有機丸大豆しょうゆ)に食塩を10%w/v添加したものを、電気透析(装置名:アストム製イオン交換膜装置 TS3B-2-5型)により脱塩した。なお、脱塩条件は、甲第11号証の6-3に記載の調製方法と同じである。」(1頁「6-1.減塩醤油サンプルの調製方法」の項) (甲16-2)「6-3. 電流値及びしょうゆ温度 電気透析の間、定期的に電流値及びしょうゆ温度を測定した。 電流値は直流安定化電源(菊水電子工業社製 PAN35-10)により測定した。 しょうゆ温度は白金測温抵抗体(Pt100)により測定した。 7. 試験結果 得られた測定値を下記表1~3に示す。 」(2頁「6-3. 電流値及びしょうゆ温度」の項及び「7. 試験結果」の項) ス 甲17記載の事項 (甲17-1)「(3) ED法の利点と欠点 i 利点 (i) 醤油中の他の成分にほとんど影響を与えず食塩のみを除去できる。表15・10に示すようにCl-やNa+などの陰陽イオンのみを選択的に除去するから、醤油中の食塩以外の有効成分、すなわち、アミノ酸、グルコース、有機酸などは比較的そのまま残る。T.N.の損失は大きいようにみえるが、大部分はアンモニアの損失に起因し、アミノ酸の損失は非常に少ない。 (ii) 脱塩時間を調節することにより任意の食塩濃度にまで脱塩できる。90%脱塩して食塩濃度2%以下の醤油の製造も可能である。 ii 欠点 (i) 装置に費用がかかるので少量生産には不向きである。 (ii) 電気代がかかる。1lの醤油を脱塩するのに約1円電気代が必要である。 (iii) T.N.の損失が大きい。もっとも、前述したようにT.N.の損失の大部分はアンモニアであり(アンモニアは、NH4+としてNa+などの1価のカチオンと同じ挙動をとり除去される)、品質的には問題ないともいえるが、数字上では、アンモニアの損失はそのままT.N.の損失となり、コストに影響してくる。 (iv) 脱塩中に品質の劣化が生ずる。すなわち、30~40℃で一昼夜連続脱塩運転するのでその間に香気や色が劣化する。」(482頁15行~483頁6行) (甲17-2)「 」(482頁 表15・10) セ 甲23記載の事項 (甲23-1)「6-3. 対照品の調製方法 特選丸大豆しょう油(食塩濃度14w/w%)と特選丸大豆減塩しょう油(食塩濃度7w/w%)を混合して、食塩濃度7w/w%~14w/w%の対照品を調製した。また、特選丸大豆しょう油に食塩を添加して、食塩濃度約15w/w%の対照品を調製した。 対照品1:食塩濃度7w/w% 対照品2:食塩濃度8w/w% ・・・(略)・・・ 対照品8:食塩濃度14w/w% 対照品9:食塩濃度14.9w/w%」(1~2頁「6-3.対照品の調製方法」の項) (甲23-2)「6-4. 官能評価(塩味評価) 試験品Fに相当する減塩醤油について、塩味の強さが対照品のいずれに最も近いかについて、10名のパネル(キッコーマン食品株式会社 商品開発本部 しょうゆ開発部員)に選択させた。選択された対照品の食塩濃度の10名の平均値(少数第2位を四捨五入)を求め、「塩味評価(対照品の食塩濃度w/w%)」とした。」(2頁「6-4.官能評価(塩味評価)」の項) (甲23-3)「7.試験結果 得られた減塩醤油サンプルの食塩濃度、カリウム濃度、塩化カリウム濃度及び窒素濃度の測定値、及び塩味評価の結果を下記表に示す。 」(2頁 「7.試験結果」の項) (2) 主な乙号証記載の事項 ア 乙7記載の事項 (乙7-1)「(1)原料醤油 原料醤油として、有機丸大豆由来の減塩醤油(食塩濃度8.5w/w%、窒素濃度2.01w/v%)を用いた。」(1 頁「(1)原料醤油」の項) (乙7-2)「(2)電気透析 下記の装置を用いて、原料醤油について電気透析による脱塩、食塩添加による加塩を繰り返した。電気透析中のサンプルについて、塩素イオン濃度を指標とした塩分分析計(東亜電波工業SAT-210塩分分析計)を用いて、簡易的に食塩濃度を測定し、食塩濃度6%台を目安に脱塩を行った。運転条件を表1に示す。 装置:マイクロアシライザーS3  (株)アストム製 膜:ネオセプターカートリッジAC-110-550 電極液:4w/w%硫酸ナトリウム水溶液 500mL 塩廃液:3w/w%塩化ナトリウム水溶液 800g 醤油量:1000g (周囲を氷水で冷却) 」(1~2頁「(2)電気透析」の項) (乙7-3)「 」(2頁 表2) (3) 甲1記載の発明 甲1の請求項1(甲1-1)の「含塩調味料」は、甲1によれば、「味噌」と共に「通常の醤油醸造法に従つて製造される濃口醤油、淡口醤油、白醤油、溜醤油、新式2号醤油(半化学半酸造醤油)等の醤油」(甲1-3)が含まれ、実施例(甲1-10)においても醤油が示されていることからみて、甲1の請求項1記載の「含塩調味料」に醤油が含まれることは明白である。 そこで、含塩調味料の製造法に係る甲1の請求項1(甲1-1)記載の発明を、該製造法で製造された醤油に係る「物のカテゴリーの発明」として整理すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「醸造法による醤油の製造に際し、塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総濃度が7~20%(W/V)で、かつそのうち塩化カリウムの量が塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総重量の5~50%であるような量の塩化カリウムと塩化ナトリウムの存在下に、仕込みを行なうか、または発酵、熟成を行なうことで製造された醤油。」 (4) 訂正発明1について ア 訂正発明1と甲1発明との対比 (ア) 減塩醤油について 甲1には「また、本発明で得られる含塩調味料は、通常の含塩調味料に比べナトリウム含量が著しく少ないため、特にナトリウム制限食を必要とする心臓病、血管疾患または腎炎等の患者に好適に用いることが出来る。」(甲1-9)と記載されているから減塩を目的としていることは明白である。 そうすると、甲1発明の「醤油」はナトリウム制限食にも用いられるものであって、訂正発明1の「減塩醤油」に相当する。 (イ) 食塩濃度及びカリウム濃度について 甲1発明は、「塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総濃度が7~20%(W/V)で、かつそのうち塩化カリウムの量が塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総重量の5~50%であるような量の塩化カリウムと塩化ナトリウムの存在下に、仕込みを行なうか、または発酵、熟成を行なう」ものである。 そうすると、甲1発明で特定している「塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総濃度が7~20%(W/V)で、かつそのうち塩化カリウムの量が塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総重量の5~50%であるような量」とは、製品となる前の仕込みの段階の量を特定するものの、甲1には、製品となった醤油の食塩濃度、カリウム濃度については記載されていない。そして、甲1において、熟成は、例えば、150日間行われていて、諸味を圧搾して醤油諸味液汁を得ており、仕込みの後に他の処理(圧搾)が施されていること(甲1-10)、醤油の製造において熟成の前後で食塩濃度は異なっているものであること(甲3-2~甲3-3)を考慮すると、塩化カリウム及び塩化ナトリウムの総濃度は、仕込みの段階と製品となった段階では、必ずしも一致しているということはできないので、甲1発明において、最終的な含塩調味料に含まれる塩化ナトリウム、すなわち、食塩濃度(w/w%)は不明であるし、カリウム濃度(w/w%)も不明である。 よって、甲1発明には食塩とカリウムが含まれていることは明らかであるから、訂正発明1と甲1発明とは、「食塩、カリウムを含む」という点で共通する。 (ウ) 窒素濃度について 訂正発明1でいう「窒素濃度」とは、本件特許明細書の段落【0025】に 「(4)窒素濃度の測定法 窒素濃度は全窒素分析装置(三菱化成TN-05型)により測定した。」と記載されており、全窒素分析装置で分析された窒素濃度、すなわち、全窒素をいうものと解される。 一般的に全窒素とは、甲5に 「イ 全窒素 しょう油醸造工程で、麹菌のタンパク質分解酵素により原料中のタンパク質が、ペプチド、アミノ酸に分解され、旨味が出てきているので、窒素分を測定することにより味の強さを評価する基準の一つとして取り扱われている。 濃口しょう油のJAS特級規格は1.50%(w/v)以上である・・・(略)・・・」(甲5-1) と記載されているように、JASにおいて規格として決められているものである。 他方、甲1発明においては、窒素濃度についての規定はないが、醤油である以上、窒素濃度、すなわち、全窒素を含むことは自明なことといえる。 また、甲1の実施例1(甲1-10)において、「第1表中、醤油諸味液汁の分析値の欄におけるT.N.・・・(略)・・・.は、夫々全窒素を表し」と記載され、第1表(甲1-11)に、「T.N.」が実施例1の製品1~6において、1.75~1.81の値を示すデータが示されている。 しかしながら、前記甲1の第1表(甲1-11)における「T.N.」のデータは、実施例1(甲1-10)の仕込み等の醸造条件でなされた醤油の「T.N.」である。甲1発明に含まれるあらゆる条件、特に、「塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総濃度が7~20%(W/V)」の上限と下限において「仕込みを行なうか、または発酵、熟成を行なうことで製造された醤油」の「T.N.」がどの程度になるか不明である。 そうすると、甲1発明の「醤油」が何らかの窒素濃度を含むことは自明であるとしても、その程度は不明であって、訂正発明1の「窒素濃度1.9~2.2w/v%」であることとは、「窒素」を含むという限りで共通する。 (エ) 窒素/カリウムの重量比について 甲1の実施例1の第1表(甲1-11)において、「T.N.」、すなわち、全窒素のデータが「T.N.」として示され、塩化カリウムと塩化ナトリウムの総量に対する塩化カリウムの割合についてのデータも示されているが、「窒素/カリウムの重量比」について全く言及されておらず、注目もしていない。 (オ) 小括 以上のことを総合すると、両発明の間には次の(一致点)及び(相違点)がある。 (一致点) 「食塩、カリウム、窒素を含む減塩醤油。」 (相違点) 食塩、カリウム、窒素の濃度等が訂正発明1では、「食塩濃度9w/w%」、「カリウム濃度1~3.7w/w%」、「窒素濃度1.9~2.2w/v%」であり、かつ「窒素/カリウムの重量比が0.44~1.62」であるのに対して、甲1発明では、発酵前の状態の食塩濃度及びカリウム濃度を導くことはできるが、発酵後、すなわち、醤油に含まれる食塩濃度及びカリウム濃度は不明であり、また、窒素濃度及び窒素/カリウムの重量比も不明である点。 イ 相違点についての判断 (ア) 甲1における窒素濃度について 甲1発明は、「醤油諸味、味噌等は、そのままでは腐敗してしまうため、常に10~20%程度の食塩の存在において腐敗を防止して発酵、熟成が行なわれている。」(甲1-4) という技術的背景の下で、 「このような高濃度食塩の存在下では、防腐等の目的は達成されても、発酵、熟成に関与する耐塩性乳酸菌および耐塩性酵母等の生育、増殖は抑制され、したがつて芳醇な風味も醸成され難く、さらに麹菌の生産した酵素類も阻害され、物料中の有用成分の分解および溶出等が不充分となる欠点がある。」(甲1-5) 及び、 「醤油諸味もしくは味噌等の食塩濃度が比較的低濃度の場合には、有害な腐敗菌等が生育、増植するため、順調な発酵、熟成は行なわれ難い欠点がある。」(甲1-5) という課題を解決しようとするものである。 そのために、甲1発明は、「塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総濃度が7~20%(W/V)で、かつそのうち塩化カリウムの量が塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総重量の5~50%であるような量の塩化カリウムと塩化ナトリウムの存在下に、仕込みを行なうか、または発酵、熟成を行なう」(甲1-1)という手段を採用することで、「塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総濃度が従来の塩濃度と変りがなく、物料中の有用成分の分解および溶出等も良好となり、芳醇な風味も醸成されること等の知見を得、本発明を完成した」(甲1-6) ものである。 そして、甲1において、「対照1に比し、各成分分析値および窒素利用率は優れ、また、官能検査においても著しく優れ、特に苦味が感じられないことが判明した。」(甲1-10)と記載されているが、当該記載は、塩化ナトリウムと塩化カリウムの濃度が甲1発明の範囲と異なる対照1と比較して、甲1発明の実施例では「T.N.」が高く、「醤油原料中の全窒素に対する溶解窒素の割合を%で表」(甲1-10)わされる「窒素利用率」が高いことを示すものであって、全窒素が、醤油のJAS規格として旨味や味の強さを評価する基準の一つとして扱われているという技術常識(甲5-1)に照らし、「芳醇な風味が醸成され、さらに物料中の有用成分の分解および溶出等も良好となり、したがつて高品質な含塩調味料を得ることが出来る。」(甲1-12)とのことを確かめたものと解される。 第1表(甲1-11)において、苦味の程度も調べられているのに対して、苦味と「T.N.」、すなわち、窒素濃度との関連は記載されておらず、注目もしていない。第1表記載の甲1発明の実施例である製品1~6の「T.N.」は、訂正発明1の窒素濃度の下限より低い1.75~1.81の範囲であるが、「苦みの程度」は、いずれも「0」すなわち「0:苦み無し」であり、塩化カリウムの割合が、甲1発明の範囲を超える塩化カリウムの量が塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総重量の60%となる対照3では、苦味が「+1」すなわち「+1:僅かに苦み有り」となっている。 以上のことを総合すると、苦味のない醤油に寄与しているのは、甲1発明の「塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総濃度が7~20%(W/V)で、かつそのうち塩化カリウムの量が塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総重量の5~50%であるような量の塩化カリウムと塩化ナトリウムの存在下」(甲1-1)という特定事項であって、甲1発明において、窒素濃度を変化させようとする技術思想を、甲1から導くことはできない。 そうすると、食塩濃度を下げて減塩醤油を作ろうとする課題は周知であり、甲1発明において、減塩醤油を作成するために、塩化カリウムと塩化ナトリウムの濃度を変化させようとすることはあるとしても、窒素濃度を変化させ、訂正発明1の「窒素濃度1.9~2.2w/v%であり、かつ窒素/カリウムの重量比が0.44~1.62である減塩醤油」とすることは困難である。 (イ) 甲2記載の技術事項の適用について 甲2の特許請求の範囲からみて、 「塩化カリウムを含有する醤油に核酸系調味料及び/又はアミノ酸系調味料を添加し、塩化カリウムの苦味を消失させることを特徴とする醤油の製造法。」(甲2-1) という発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 しかしながら、甲1発明においては、第1表(甲1-11)に記載のように、すでに苦味が取れており、さらに、苦味を低減させようとする動機がない。 しかも、甲1発明において、甲2発明を適用して「核酸系調味料及び/又はアミノ酸系調味料」を所定量添加することはできたとしても、添加した「核酸系調味料及び/又はアミノ酸系調味料」を窒素濃度に変換して、甲1発明の醤油に含まれる窒素濃度に加えるように構成しないと、訂正発明1の窒素濃度とならない。しかしながら、甲1発明及び甲2発明には、窒素濃度に注目する動機がなく、訂正発明1のごとく構成することは困難である。 そして、訂正発明1において、窒素濃度を1.94~2.15w/v%とすることで、塩味が向上することは、以下の「(窒素濃度と塩味との関係)」で述べるとおり、本件特許明細書の実施例から裏付けられた効果である。 (窒素濃度と塩味との関係) 本件特許明細書に記載された、ベース醤油が市販有機丸大豆醤油で、食塩濃度9.0w/w%、カリウム濃度2.1w/w%の実施例及び比較例を、窒素濃度の低いものから順に並べると、次のとおりである。 窒素濃度    窒素/カリウム 塩味 苦み 総合評価 比較例12 1.86w/v%  0.75    2  2   × 実施例5  1.97w/v%  0.80    4  2   ○ 実施例8  2.06w/v%  0.82    4  2   ○ 実施例10 2.15w/v%  0.86    4  2   ○ 実施例26 2.34w/v%  0.86    3  2   △ なお、当審で下線を付記した比較例12、実施例26の窒素濃度は、訂正発明1の数値範囲外である。 また、ベース醤油が市販有機丸大豆醤油で、食塩濃度9.0w/w%、カリウム濃度3.7w/w%の実施例及び比較例を、窒素濃度の低いものから順に並べると、次のとおりである。 窒素濃度    窒素/カリウム 塩味  苦み 総合評価 比較例13 1.82w/v% 0.42    3   4   × 実施例7  1.94w/v% 0.44    5   3   ○ 実施例9  2.02w/v% 0.46    5   3   ○ 実施例11 2.11w/v% 0.47    5   3   ○ 実施例27 2.28w/v% 0.47    4   3   △ なお、当審で下線を付記した比較例13、実施例27の窒素濃度、比較例13の窒素/カリウムは、訂正発明1の数値範囲外である。 上記の実施例と比較例によれば、食塩濃度9.0w/w%の場合には、窒素濃度が訂正発明1の範囲に含まれる1.94~2.15w/v%の範囲であれば、訂正発明1の範囲から外れるものに比べて、塩味が向上することが理解できる。 これに対して、甲1及び甲2には、窒素濃度を調節して塩味が向上することは記載されておらず、訂正発明1の「食塩濃度9w/w%で」、「カリウム濃度1~3.7w/w%」である減塩醤油において、「窒素濃度1.9~2.2w/v%であり、かつ窒素/カリウムの重量比が0.44~1.62」とすることで、前記塩味が向上する効果があることを、当業者が予測することは困難である。 (ウ) 甲3記載の技術事項の適用について 甲3には、イオン交換膜により醤油を脱塩した低食塩醤油(甲3-1)が記載されている。 しかしながら、甲1発明は、「醸造法による醤油の製造に際し、塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総濃度が7~20%(W/V)で、かつそのうち塩化カリウムの量が塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総重量の5~50%であるような量の塩化カリウムと塩化ナトリウムの存在下に、仕込みを行なうか、または発酵、熟成を行なう仕込みを行なう」ことで、塩化ナトリウムの濃度の低い、すなわち、減塩を達成しようとするものであって、甲1発明の醤油において、さらに、イオン交換膜による脱塩を行う動機がない。 仮に、適用できたとしても窒素濃度とカリウムによる苦味の関係、窒素濃度による塩味が向上する作用、及び、窒素/カリウムの重量比については甲3に何ら記載が無く、訂正発明1の発明特定事項のごとくすることは困難である。 (エ) 上記(ア)~(ウ)で述べた証拠以外の他の甲各号証について 甲8及び甲9のように、カリウムを含むことを前提とせず、しかも食塩濃度が14%以上ある醤油において、全窒素(T.N)の増加に伴い、塩味が増加することがあるとしても、訂正発明1の「食塩濃度9w/w%で」、「カリウム濃度1~3.7w/w%」である減塩醤油において、「窒素濃度1.9~2.2w/v%であり、かつ窒素/カリウムの重量比が0.44~1.62」とすることで、前記塩味が向上する効果があることを、当業者が予測することは困難である。 よって、カリウムを含む甲1発明に、甲8、9記載の事項を適用する動機付けはない。また、請求人の提出する他の甲各号証にも、カリウムによる苦味と窒素濃度の関係及び窒素濃度による塩味が向上する作用、及び、窒素/カリウムの重量比について記載されていない。 (オ) したがって、甲1発明において、上記相違点に係る訂正発明1の「食塩濃度9w/w%、カリウム濃度1~3.7w/w%、窒素濃度1.9~2.2w/v%であり、かつ窒素/カリウムの重量比が0.44~1.62」とすることは、当業者が容易になし得たものではない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、訂正発明1を特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとすることはできない。 (5) 訂正発明2~4について ア 訂正発明2及び3は、訂正発明1を引用するものであり、訂正発明1が特定する事項を全て含むものであるので、上記(4)で検討したとのと同様に、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、訂正発明1を特定するための事項を全て含み、さらに他の事項を付加した訂正発明4も、上記(4)で検討したのと同様に、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 小括 以上のとおりであるから、訂正発明2~4を特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとすることはできない。 (6) 訂正発明5及び6について ア 訂正発明5及び6は、訂正発明1と同様に、「窒素濃度1.9~2.2w/v%であり、かつ窒素/カリウムの重量比が0.44~1.62であ」ることを特定し、カリウム濃度について訂正発明1より減縮された「カリウム濃度1.06~3.7w/w%」であることを特定するものであるところ、上記(4)イで検討したのと同様に、甲1発明において、「窒素濃度1.9~2.2w/v%であり、かつ窒素/カリウムの重量比が0.44~1.62」である減塩醤油とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 イ 小括 以上のとおりであるから、訂正発明5及び6を特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとすることはできない。 (7) 請求人の主張について 請求人は、甲1の記載及び技術常識から、甲1には、次のような発明(以下「請求人認定の甲1発明」という。)が記載されていると主張する。 「塩化ナトリウム(食塩)、塩化カリウム及び窒素を含む減塩醤油であって、塩化ナトリウム濃度及び塩化カリウム濃度が、下記式(I)、(II)、(III)かつ(IV)を満たし、 (I)Y≧-X+6.25 (II)Y≦-X+17.86 (III)Y≧(5/95)X (IV)Y≦X 〔上記式中、「Y」は塩化カリウム濃度(w/w%)を表し、「X」は塩化ナトリウム濃度(w/w%)を表す。〕 窒素濃度が0.49~2.21w/v%であり、窒素/カリウムの重量比が0.093~12.04である減塩醤油。」(審判請求書15頁下から3行~16頁8行、平成29年1月30日付け弁駁書17頁「ア.甲1発明」) 上記発明を認定するにあたり、請求人は前提として次のi)及びii)を置いている。 i)甲1の請求項1(甲1-1)の塩化カリウム及び塩化ナトリウムの総濃度の単位を「%(w/v)」から本件特許に合わせて「w/w%」に換算するために、甲4記載の比重1.12という減塩醤油の平均比重を用いた(審判請求書12頁「(ウ)」の項) 。 ii)甲1発明の醤油が、「通常の醤油醸造法に従つて製造される濃口醤油、淡口醤油、白醤油、溜醤油、新式2号醤油(半化学半酸造醤油)等の醤油」(甲1-3)の記載に照らし、甲5に記載の濃口、淡口、溜、再仕込、白の醤油の全窒素(g/dl)のデータからみて、窒素濃度が0.49~2.21w/v%の範囲であるから、甲1記載の醤油も、窒素濃度が0.49~2.21w/v%の範囲にある(審判請求書14頁「(エ)」の項)。 しかしながら、甲5の第1表(甲5-2)の醤油は、通常の醤油(13.22~18.93%の食塩濃度)に関するデータであって、甲1の請求項1(甲1- 1)の塩化カリウム及び塩化ナトリウムの総濃度の下限である7%(W/V)付近で、しかも、請求項1(甲1-1)の塩化カリウムを「塩化カリウムおよび塩化ナトリウムの総重量の5~50%」としたものにおいても、醸造後の窒素濃度が甲5で示された特級醤油の濃度範囲と同じ0.49~2.21w/v%となるかは不明であるから、前提ii)を採用することはできない。 しかも、甲5の第1表(甲5-2)の醤油は、市販の特級醤油の一部であって、この他にも、JAS規定上、特級より窒素濃度が低い上級や標準の醤油もあるから前提ii)を採用する根拠がない。 そうすると、甲1に請求人認定の甲1発明が記載されているとはいえない。 第7 むすび 1 以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由及び証拠方法によっては、訂正発明1~4に係る特許を無効とすることはできない。 2 また、訂正発明5及び6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第4号の規定に該当し、無効とすべきものである。 3 審判に関する費用については、特許法169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、その6分の4を請求人の負担とし、6分の2を被請求人の負担とすべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2013-800113

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