2025-700838
術中の外科用スコープ洗浄のシステムと方法
- 審判番号
- 2025-700838
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-570525外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7635159
- 請求日
- 2025年08月25日
- 審決日
- 2025年12月09日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ストライカー コーポレイション
- 【権利者代理人】弁理士法人大塚国際特許事務所
- 【異議申立人】望月 俊一
- 分類
- P1652.121-Y (A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 16項目
第1 手続の経緯
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特許第7635159号の請求項1~23に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)5月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2019年5月29日、米国)を国際出願日とする出願であって、令和7年2月14日にその特許権の設定登録がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行された。
その後、請求項1~7及び9~23に係る特許に対し、令和7年8月25日に特許異議申立人望月俊一(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、同年10月23日に特許異議申立書を補正対象とする手続補正書(方式)が提出されたものである。
なお、手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書を以下「申立書」という。
第2 本件発明及び本件明細書
1 本件発明について
特許第7635159号の請求項1~7及び9~23の特許に係る発明(請求項8は申立対象項とされてないことから、請求項8については記載しないこととする。)は、その特許請求の範囲の請求項1~7及び9~23に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】外科用スコープを洗浄するための装置であって、前記外科用スコープのチューブを着脱可能に受け入れるシースであって、 前記チューブを受け入れるためのチャネルを規定する壁であって、当該壁の遠位部分が、前記チューブの外周周りに部分的にのみ延びるように構成されている壁と、液体流路を規定する第1の導管と、続きを表示(全22行)気体流路を規定する第2の導管と、を有するシースと、前記壁の前記遠位部分の遠位端に位置し、前記第1の導管からの液体の流れを前記外科用スコープのレンズを横切るように向け、前記レンズから前記液体を除去するために、前記第2の導管からの気体の流れを前記外科用スコープの前記レンズを横切るように向けるために構成された少なくとも1つのノズルと、前記外科用スコープのハウジングを受け入れるために、前記シースの近位端に配置されたレシーバと、を有し、前記レシーバは、前記シースの長手方向軸周りの所定の角度配向で前記ハウジングを受け入れるように形成されることを特徴とする装置。【請求項2】前記壁の前記遠位部分が、使用中にトロカール内に配置されるために構成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。【請求項3】液体供給線を前記第1の導管に接続するための第1のポートと、気体供給線を前記第2の導管に接続するための第2のポートと、をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。【請求項4】前記第1のポートから第1のノズルへの液体流路と、前記第2のポートから第2のノズルへの気体流路が、バルブフリーであることを特徴とする請求項3に記載の装置。【請求項5】前記壁の近位部分が、前記外科用スコープの前記チューブの外周の全周囲に延びるように構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。【請求項6】前記壁の前記遠位部分のみが、使用中にトロカール内に配置されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置。【請求項7】前記壁の遠位端は、前記外科用スコープが前記シース内に受け入れられたときに、前記壁の近位端よりも前記外科用スコープの前記チューブの長手軸からさらに離れることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の装置。」
「【請求項9】前記第1の導管が、前記第2の導管に隣接していることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の装置。【請求項10】前記少なくとも1つのノズルが、第2のノズルに隣接する第1のノズルであることを特徴とする請求項9に記載の装置。続きを表示(全44行)【請求項11】前記第1及び第2の導管が、前記壁の厚さに形成されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の装置。【請求項12】前記壁の前記厚さが、前記壁の少なくとも一部の外周周りで不均一であることを特徴とする請求項11に記載の装置。【請求項13】前記少なくとも1つのノズルが、前記外科用スコープが術野を見ている間に、前記外科用スコープを洗浄するために配置されることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の装置。【請求項14】前記少なくとも1つのノズルが、前記外科用スコープの視野が妨げられないように配置されることを特徴とする請求項13に記載の装置。【請求項15】前記少なくとも1つのノズルが、前記シースの遠位端に配置されることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の装置。【請求項16】少なくとも前記シースがプラスチック製であることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の装置。【請求項17】前記装置が使い捨てであることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の装置。【請求項18】内視鏡撮像装置の外科用スコープが手術腔に挿入されている間に前記外科用スコープを洗浄するためのシステムであって、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の外科用スコープを洗浄するための装置と、前記洗浄するための装置に流体を供給するための装置に通信可能に接続された制御システムと、を有し、前記洗浄するための装置は、前記シースに前記外科用スコープが挿入された状態で前記手術腔に挿入され、前記制御システムは、前記内視鏡撮像装置により生成された術野の1以上の画像を受信し、前記1以上の画像を解析することにより、前記外科用スコープのレンズ上の堆積物を検出し、前記レンズ上の堆積物の検出に基づいて、前記外科用スコープを洗浄するために、1以上の流体を前記術野に提供するためのコマンドを前記洗浄するための装置に送信する よう構成され、前記洗浄するための装置は、前記制御システムからの前記コマンドの受信に応答して、前記レンズから前記堆積物を除去するために、前記少なくとも1つのノズルから液体を前記レンズに噴霧し、前記レンズから前記液体を除去するために、前記少なくとも1つのノズルから気体を前記レンズに吹き付けることを特徴とするシステム。【請求項19】前記外科用スコープ及び前記シースは、トロカールを通して前記手術腔に挿入されることを特徴とする請求項18に記載のシステム。【請求項20】前記制御システムはさらに、前記レンズ上の堆積物の検出に基づいて、前記レンズ上の堆積物が検出されたことの通知をユーザに提供し、前記通知を受けて前記ユーザによりなされた前記外科用スコープに接続された前記内視鏡撮像装置へのユーザ入力に応答して、前記洗浄するための装置に前記コマンドを送信することを特徴とする請求項18または19に記載のシステム。【請求項21】前記堆積物が、結露を含むことを特徴とする請求項18乃至20のいずれか1項に記載のシステム。【請求項22】前記堆積物が、体液、組織、及び前記手術腔に導入された1以上の流体のうちの1以上を含むことを特徴とする請求項18乃至21のいずれか1項に記載のシステム。【請求項23】前記洗浄するための装置は、第1の所定期間、前記液体を前記レンズに噴霧し、第2の所定期間、前記気体を前記レンズに吹き付けることを特徴とする請求項18乃至22のいずれか1項に記載のシステム。」
2 本件明細書等について
願書に添付した明細書及び図面(以下「本件明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した。
(本ア)「【0001】
本開示は一般に、内視鏡手術に関し、より詳細には、外科的処置中の外科用スコープの洗浄に関する」
(本イ)「【0117】
図1A及び図1Bは、いくつかの実施形態に係る、外科用スコープ150に取り付けられた外科用スコープクリーナ100を示す。外科用スコープクリーナ100は、標準サイズの外科用スコープに装着し、標準サイズのトロカールのカニューレを通して手術腔内に挿入するように構成され得る。外科用スコープクリーナ100が装着された状態で、外科用スコープ150は、外科的処置中に(取り付けられた内視鏡と共に)手術腔内の撮像に使用することができる。外科用スコープクリーナ100は、外科的処置中に外科用スコープが手術腔内の適所に留まっている間に、外科用スコープの端部でレンズから汚れ及び/または結露を除去するために使用することができる。
【0118】
図示された実施形態では、外科用スコープ150は、トロカールの管腔等を通して等、体腔内に挿入される遠位端153を有する、細長く概ね中空のチューブ152を含む。チューブ152は、接眼レンズ155が装着されるハウジング154から延び、外科医が術野を観察する(例えば、直接、または、ビューイングポート、内視鏡カメラ、及びディスプレイスクリーンの間の接続を介して)ビューイングポートを提供する。光ポート157は、スコープ150を介してターゲットに光を伝送するよう、光ケーブルを介してスコープ150を照明器に接続するために、ハウジング154から延びる。外科用スコープ150は、例えば、腹腔鏡とすることができる。外科用スコープは、例えば、一体型のカメラを有する外科用スコープを含む、任意のタイプの外科用スコープであり得る。
【0119】
外科用スコープクリーナ100は、外科用スコープ150のチューブ152上を摺動するシース102を含む。シース102は、標準サイズのスコープのチューブに適合するように構成され得る、概ね円筒形のボア126を規定してもよい。ボア126は、チューブ152及びボア126が実質的に同一の長手軸124を共有するように、シース102に対して半径方向に位置を固定したまま、チューブ152がシース102の内外に摺動できるようなサイズであってよい。
【0120】
ノズルヘッド110は、シース102の遠位端103に配置され、外科用スコープ150のチューブ152の遠位端153を越えて延びる。以下にさらに説明するように、液体及び気体をノズルヘッド110から噴霧/吹き付けて、チューブ152の端部でレンズを洗浄することができる。スコープクリーナ100は、外科用スコープが外科的処置の間中、外科用スコープ上に取り付けられたままであるように構成される。レンズは、必要に応じて、外科用スコープを手術腔から取り外す必要なしに洗浄することができる。
【0121】
シース102は、外科用スコープ150のハウジング154を受け入れるように構成されたレシーバ104から延びている。レシーバ104は、外科用スコープ150のハウジング154を保持するための1以上の保持構成(不図示)を含み得る。いくつかの実施形態では、保持構成は、シース102に対してスコープを配向してもよく、これは、ノズルが角度付きレンズに正しく向けられることを確実にするために、角度付きスコープ(角度付き遠位端と、スコープの中心軸からある角度、例えば、軸から30度または45度を指すレンズと、を有するスコープ)にとって重要であり得る。いくつかの実施形態では、レシーバ104は、ノズルヘッド110が角度付きスコープに対して適切に配向されることを確実にするために、ハウジング154を正しい角度配向で受け入れるように形成されてもよい。
【0122】
液体ポート106及び気体ポート108は、レシーバ104に設けられ、液体及び気体供給源に接続される、液体供給線130及び気体供給線132にそれぞれ接続されてもよい。いくつかの実施形態では、液体ポート106及び気体ポート108は、シース102から延びる。以下にさらに説明されるように、それぞれのポートを通して供給される液体及び気体は、レンズの汚れ及び/または結露を洗浄するために、外科用スコープ150のチューブ152の遠位端153でレンズ上に液体を噴霧して気体を吹き付けるためのシース102の遠位端103の少なくとも1つのノズルにシース内の少なくとも1つの導管を通して流れる。
【0123】
図1Cは、外科用スコープ150のチューブ152の遠位端153を受け入れる、シース102の遠位端103を示している。遠位端103は、外科用スコープ150の遠位端153を越えて延びるノズルヘッド110を有する。図示された実施形態では、ノズルヘッド110は、並んで配置された2つのノズル-液体ノズル112及び気体ノズル114を含む。他の実施形態では、ノズルは、外周方向ではなく、長手方向に間隔をあけて配置される。ノズルは、外科用スコープ150のチューブ152の遠位端でレンズ156上にそれぞれの流れを向けるように構成される。いくつかの実施形態では、単一のノズルが提供され、液体導管及び気体導管の両方が、単一のノズルに提供される。
【0124】
図1Dは、いくつかの実施形態に係る、クリーナ100のシース102を通って長手方向に延び、液体及び気体ポート106、108からシース102の遠位端103の液体及び気体ノズル112、114への流路を提供する液体導管118及び気体導管120を示したシース102の断面図である。シース102は、壁116を含み、導管118、120は、導管がそれらの長手方向周囲を完全に囲まれるように、壁116内に形成される。図示の実施形態では、導管118、120は、断面が非円形であり、壁の外周の一部を通って縦軸124を中心とする外周方向に湾曲している。湾曲した導管は、導管を通る十分な流量を提供しながらも、壁の外径を最小にできる。他の実施形態では、導管は、壁の厚さ及び導管を通る所望の流量及び圧力降下に依存して、円形または他の任意の適切な形状であってもよい。導管118、120は、液体及び気体ポート106、108からノズルヘッド110まで壁を通って長手方向に延び得る。いくつかの実施形態では、液体及び気体導管は、2つの導管の合流部からノズルヘッド110に単一の導管が延びるように、ノズルヘッドに到達する前に合流する。いくつかの実施形態では、液体及び気体流路は、単一の導管が実質的にシース102の長手方向の範囲全体に延びるように、液体及び気体ポート106、108で、またはその近傍で合流する。」
(本ウ)図1A~図1Dとして、以下の図面が記載されている。
「【図1A】[図:0001431164000001.jpg]【図1B】[図:0001431164000002.jpg]【図1C】[図:0001431164000003.jpg]【図1D】[図:0001431164000004.jpg]」
第3 特許異議申立書における申立理由
1 申立理由の概要
申立人が、申立書において主張している申立理由の概要は、以下のとおりである。なお、申立人が証拠方法として提示した甲第○号証は、以下「甲○」という。
本件特許の請求項1、3~5、7、9~17に係る発明は、甲1に記載された発明、並びに甲2、甲3及び甲4に記載された事項に基づいて、
本件特許の請求項2及び6に係る発明は、甲1に記載された発明、並びに甲2、甲3、甲4及び甲5に記載された事項に基づいて、
本件特許の請求項18、20~23に係る発明は、甲1に記載された発明、並びに甲2、甲3、甲4及び甲6に記載された事項に基づいて、
本件特許の請求項19に係る発明は、甲1に記載された発明、並びに甲2、甲3、甲4、甲5及び甲6に記載された事項に基づいて、
当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~7及び9~23に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
<甲号証一覧>
2 本件発明に対する具体的主張
申立人は、申立書において、上記甲1に記載された発明について以下の認定をし、そして請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)について、以下の主張をしている。
「イ 引用発明の説明(i)甲第1号証甲第1号証( 国際公開第2019/026206号) には、カバー120(壁に相当、段落0039、図7等を参照)と、洗浄水供給源40が接続された流体供給管128(第1の導管に相当、段落0025,0040、図7,8等を参照)と、気体供給源42が接続された流体供給管130(第2の導管に相当、段落0025,0040、図7,8等を参照)とを有するシースと、流体向き変更部134 (ノズルに相当、段落0040、図7,8等を参照)とを有する、外科用スコープを洗浄するための装置が記載されている(特に、段落0021-0059、図7-18等を参照)。」(21頁11~20行)
「ウ 本件特許発明と証拠に記載された発明との対比(i)本件特許発明1は、特許法第29条第2項(同法第113条第2号)の規定を満たさないと思料する。本件特許発明1と甲第1号証記載の発明との差異点は下記の技術的事項である。・外科用スコープを洗浄するための装置は、外科用スコープのハウジングを受け入れるために、シースの近位端に配置されたレシーバを有し、レシーバは、所定の角度配向でハウジングを受け入れるように形成されることこのような差異点について、甲第2号証記載の発明には、・・・本件特許発明1のレシーバに該当すると思料する。また、甲第3号証記載の発明には、・・・本件特許発明1のレシーバに該当すると思料する。また、甲第4号証記載の発明には、・・・本件特許発明1のレシーバに該当すると思料する。以上より、甲第2号証記載の発明、甲第3号証記載の発明及び甲第4号証記載の発明のうち何れかの発明を甲第1号証記載の発明に組み合わせることにより当業者は本件特許発明1を容易に想到することができると思料する。」(23頁11行~24頁14行)
第4 甲号証の記載
1 甲1について
(1)記載事項
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甲1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した(以下同様)。
(甲1ア)「技術分野
[0001] 本発明は、患部を撮像するための対物レンズを保護する観察窓部が先端に設けられた硬性内視鏡の外周面を覆うための中空のカバー、ならびに硬性内視鏡およびカバーからなる内視鏡ユニットに関する。
背景技術
[0002] 近年、医療分野では、胃の検査や、その手術において胃カメラに代表される内視鏡(軟性内視鏡)が使用されるようになっている。また、胸部を開口して行う手術で胸腔鏡が使用され、腹部を開口して行う手術で腹腔鏡が使用される場合が多い(以下、腹腔鏡下手術という)。腹腔鏡下手術は、その低侵襲性、良好な整容性により急速に普及しており、胃癌、大腸癌手術を主な対象として外科手術全体に占める割合が年々増加している。ところで、上述した胸腔鏡や腹腔鏡等は硬性内視鏡と呼ばれ、硬性内視鏡や軟性内視鏡等の先端には、患部を撮像するための対物レンズが設けられるとともに、対物レンズを保護する観察窓部が設けられている。」
「[0008] 本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、患者の体内で観察窓部の洗浄を行うことができ、しかも硬性内視鏡の外周面に対して容易に着脱することができるとともに製造コストを低減することができる硬性内視鏡のカバーおよび内視鏡ユニットを提供することを目的とする。」
(甲1イ)「[0022] まず、本実施の形態に係る硬性内視鏡10について図1を用いて説明する。図1に示すように、硬性内視鏡10は細長い略円柱形状の本体部分12を有しており、この本体部分12の先端には患部を撮像するための対物レンズ(図示せず)および当該対物レンズを保護するガラス板等の観察窓部14が設けられている。」
「[0025] また、図3および図5に示すように、カバー20の本体部分22において各溝24、26の基端側(すなわち、図3における奥側)には流体供給管28、30がそれぞれ接続されており、これらの流体供給管28、30から各溝24、26の内部に洗浄水や気体を供給することができるようになっている。また、図2に示すように、流体供給管28には洗浄水供給路44を介して洗浄水供給源40が接続されており、洗浄水供給源40から洗浄水供給路44に供給された洗浄水が流体供給管28に送られるようになっている。このことにより、硬性内視鏡10にカバー20が被せられたときに、硬性内視鏡10の本体部分12の外周面とカバー20の溝24の内面との間に区画される流路に流体供給管28から洗浄水を供給することができるようになる。また、図2に示すように、流体供給管30には気体供給路46を介して気体供給源42が接続されており、気体供給源42から気体供給路46に供給された気体が流体供給管30に送られるようになっている。このことにより、硬性内視鏡10にカバー20が被せられたときに、硬性内視鏡10の本体部分12の外周面とカバー20の溝26の内面との間に区画される流路に流体供給管30から気体を供給することができるようになる。[0026] 次に、このような構成からなる内視鏡ユニットの使用方法について説明する。まず、患者の体内に内視鏡ユニットを差し込むような手術を行う際に、図1に示す硬性内視鏡10の外周面に図2に示すカバー20を被せる。具体的には、カバー20の本体部分22の根元側(すなわち、図2における奥側)の中空部分に硬性内視鏡10の先端を入れ、この硬性内視鏡10の先端がカバー20の先端側の流体向き変更部34に引っ掛かるまで当該硬性内視鏡10をカバー20の中空部分に差し込む。このことにより、図3に示すような、硬性内視鏡10にカバー20が被せられた内視鏡ユニットが形成されるようになる。そして、図3に示すような内視鏡ユニットを患者の体内に挿入することにより手術を行う。[0027] 手術中に硬性内視鏡10の観察窓部14が血液や脂肪等により汚れたり、曇りが生じたりした場合には、患者の体内に内視鏡ユニットを差し込んだ状態で当該観察窓部14の洗浄を行う。より詳細には、洗浄水供給源40から洗浄水供給路44を介して流体供給管28に洗浄水を供給することにより、硬性内視鏡10の本体部分12の外周面とカバー20の溝24の内面との間に区画される流路において図5における左方向に洗浄水が流れるようにする。そして、このような図5における左方向に流れる洗浄水はカバー20の先端において流体向き変更部34によりその向きが観察窓部14に向かう方向に変えられる。より詳細には、硬性内視鏡10の本体部分12の外周面とカバー20の溝24の内面との間に区画される流路に沿って図5における左方向に流れる洗浄水の向きは、流体向き変更部34の湾曲部分36によって図5における左方向から右下方向に変えられる。このことにより観察窓部14を洗浄水により洗浄することができるようになる。その後、気体供給源42から気体供給路46を介して流体供給管30に気体を供給することにより、硬性内視鏡10の本体部分12の外周面とカバー20の溝26の内面との間に区画される流路において図5における左方向に気体が流れるようになる。そして、このような図5における左方向に流れる気体はカバー20の先端において流体向き変更部34によりその向きが観察窓部14に向かう方向に変えられる。より詳細には、硬性内視鏡10の本体部分12の外周面とカバー20の溝26の内面との間に区画される流路に沿って図5における左方向に流れる気体の向きは、流体向き変更部34の湾曲部分36によって図5における左方向から右下方向に変えられる。このことにより観察窓部14に付着した洗浄水を気体により吹き飛ばすことができるようになる。」
(甲1ウ)図3、図4及び図5として、以下の図面が記載されている。
「[図3][図:0001431164000005.jpg][図4][図:0001431164000006.jpg][図5][図:0001431164000007.jpg]」
(甲1エ)「[0039] 図7および図8に示すように、別の変形例に係る内視鏡ユニットのカバー120は、当該カバー120を長手方向に沿って見たときに略C字形状となっており、当該C字形状部分の間の空間に硬性内視鏡10が嵌められるようになっている。このようなカバー120は軟質プラスチック等のプラスチックから構成されており、当該カバー120は可塑性を有するものとなっている。このため、硬性内視鏡10にカバー120を取り付ける際に、当該硬性内視鏡10の外周面にカバー120のC字形状部分の隙間を押し当て、このカバー120を硬性内視鏡10に向かって押し付ける。このことによりカバー120のC字形状部分の隙間が広がるように変形するため、硬性内視鏡10にカバー120が取り付けられるようになる。
[0040] 図7および図8に示すように、カバー120は細長い本体部分122を有しており、この本体部分122の内周面には2本の溝124、126が当該本体部分122の長手方向に沿って延びるよう形成されている。そして、硬性内視鏡10の本体部分12の外周面および各溝124、126の内面によって硬性内視鏡10の観察窓部14に供給される洗浄用流体の流路が区画されるようになっている。ここで、2本の溝124、126のうち一方の溝124は、硬性内視鏡10の観察窓部14に供給される生理食塩水等の洗浄水の流路として用いられるようになっており、他方の溝126は、観察窓部14に付着した洗浄水を吹き飛ばすための気体の流路として用いられるようになっている。また、カバー120の本体部分122において各溝124、126の基端側(すなわち、図7における奥側)には流体供給管128、130がそれぞれ接続されており、これらの流体供給管128、130から各溝124、126の内部に洗浄水や気体を供給することができるようになっている。また、カバー120の先端の近傍には、各溝124、126に沿って(すなわち、カバー120の本体部分122の長手方向に沿って)流れる洗浄用流体の向きを観察窓部14に向かう方向に変える流体向き変更部134が設けられている。このような流体向き変更部134によって、硬性内視鏡10の本体部分12の外周面に沿って流れる洗浄用流体の向きを、当該硬性内視鏡10の観察窓部14に向かう方向に変えることができるため、洗浄用流体によって観察窓部14を確実に洗浄することができるようになる。
[0041] 図7および図8に示すような別の変形例に係るカバー120を用いた場合でも、硬性内視鏡10の外周面の周方向における一部を覆うカバー120の内周面に洗浄用流体の流路としての溝124、126を設けることにより、患者の体内で観察窓部14の洗浄を行うことができる。しかも、カバー120の内周面に溝124、126を設けているため、カバー120が被せられた硬性内視鏡10(すなわち、内視鏡ユニット)の外径を比較的小さなものとすることができ、よって手術効率を向上させるとともに患者の体内が傷つけられてしまうことを抑制することができる。」
(甲1オ)図7及び図8として、以下の図面が記載されている。
「[図7][図:0001431164000008.jpg][図8][図:0001431164000009.jpg]」
(2)甲1発明
甲1に記載されている発明を認定するにあたり、上記第3の2で記載した申立人の主張を考慮し、上記(甲1エ)並びに(甲1オ)で摘記した図7及び図8に記載されている「別の変形例」に基づいて(特に下線部参照)、内視鏡ユニットを認定すると以下のとおりである。
「患者の体内で観察窓部の洗浄を行うことができ、しかも硬性内視鏡の外周面に対して容易に着脱することができるとともに製造コストを低減することができる硬性内視鏡のカバーおよび内視鏡ユニットであって、内視鏡ユニットのカバー120は、当該カバー120を長手方向に沿って見たときに略C字形状となっており、当該C字形状部分の間の空間に硬性内視鏡10が嵌められるようになっており、カバー120は細長い本体部分122を有しており、この本体部分122の内周面には2本の溝124、126が当該本体部分122の長手方向に沿って延びるよう形成され、そして、硬性内視鏡10の本体部分12の外周面および各溝124、126の内面によって硬性内視鏡10の観察窓部14に供給される洗浄用流体の流路が区画されるようになっており、ここで、2本の溝124、126のうち一方の溝124は、硬性内視鏡10の観察窓部14に供給される生理食塩水等の洗浄水の流路として用いられるようになっており、他方の溝126は、観察窓部14に付着した洗浄水を吹き飛ばすための気体の流路として用いられるようになっており、カバー120の先端の近傍には、各溝124、126に沿って(すなわち、カバー120の本体部分122の長手方向に沿って)流れる洗浄用流体の向きを観察窓部14に向かう方向に変える流体向き変更部134が設けられ、このような流体向き変更部134によって、硬性内視鏡10の本体部分12の外周面に沿って流れる洗浄用流体の向きを、当該硬性内視鏡10の観察窓部14に向かう方向に変えることができる、硬性内視鏡のカバーおよび内視鏡ユニット。」(以下「甲1発明」という。)
2 甲2について
甲2には、以下の事項が記載されている。
(甲2ア)「【0021】
図1、図2に示すように、概説すると、洗浄装置100は、内視鏡10の挿入部20が配置される内腔111を備える洗浄用シース110と、洗浄用シース110へ所定の洗浄用の液体(以下、洗浄液とする)を供給する洗浄液供給部150と、洗浄液を洗浄用シース110の外部へ排出させる洗浄液吸引部160とを有している。」
「【0028】洗浄液吸引部160は、例えば、吸引圧(負圧)を発生させる公知の吸引ポンプにより構成することができる。洗浄液吸引部160により吸引した洗浄液は、図1に簡略化して示す排液収容部161に保管される。排液収容部161は、所定の容積を備える容器によって構成されている。図2に示すように、洗浄液吸引部160は、液体等の流体が流通可能な所定の流体チューブ162を介して、シール部材116に形成された流出部115に液密に接続されている。」
「【0032】図2に示すように、洗浄用シース110に備えられたシール部材116には、内視鏡10の挿入部20が挿入配置される挿通孔117が形成されている。内視鏡10の挿入部20を挿通孔117に挿通させると、挿入部20の外面が挿通孔117の内面に圧接される。これにより、内視鏡10は軸方向の位置が位置決めされた状態で洗浄用シース110に装着される。なお、洗浄用シース110に対して内視鏡10を装着および固定する方法は、シール部材116を使用した方法に限定されず、例えば、嵌合やねじ込み等の機械的な固定機構を洗浄用シース110および内視鏡10に設けて、このような固定機構により行ってもよい。」
(甲2イ)図2として、以下の図面が記載されている。
「[図:0001431164000010.jpg]」
(3)甲3について
甲3には、以下の事項が記載されている。
(甲3ア)「【0049】
図1を参照すると、全体的に円筒形またはロッド形状である腹腔鏡6にフローガイド2が取り付けられている。フローガイド2は、腹腔鏡6に沿って流体流を長手方向に導き、腹腔鏡6の実質的に平坦な遠位端面4を横切るように流体流の向きを変えるためのものである。フローガイド2は、腹腔鏡6の端面4を横切って流体の層流が流れるように構成される。フローガイド2は、腹腔鏡6のシャフトに沿って長手方向に流体流を導くための長手部3と、端面4を横切るように流体流の向きを変えて端面4を清浄するための遠位端部1と、反対側の注入口5とを備える。端面4(図2により詳細に示す)は、全体として横断面(すなわち、長手方向と直交する、フローガイド2に対して固定された平面)に配置され、光源として機能する光ファイバー束4bに囲まれたレンズ4a、光学ウインドウ、または腹腔鏡6の他の表面を備える。
【0050】
フローガイド2は、その中を流体が流れることができる流路8(図6を参照)を備える。流路8は、フローガイド2の遠位端部1に、流体が流路8から流出する排出口10を有する。使用時、フローガイド2は、腹腔鏡6に対して固定位置に配置される。フローガイド2は、排出口10を通って流路8から離れる流体流を、腹腔鏡6の端面4を横切る方向に向かわせるように、腹腔鏡6に取り付け可能である。
(甲3イ)図1には、以下の図面が記載されている。
「[図:0001431164000011.jpg]」
4 甲4について
甲4は、「Hysteroscope」(子宮鏡)についての「Instruction for Use」(使用説明書)であり、以下の事項が記載されている。
(甲4ア)FIGURE2.SECURE SHEATH(図2.シースの固定)には、以下の図面とその説明が記載されている。
「[図:0001431164000012.jpg]」
(当審訳:子宮鏡ベース部への適合シースの配置
向きを示す矢印を目印に、シースの先端がスコープのベース部とかみ合い、図2のようにしっかりと固定されるまで、露出したロッドレンズにシースをスライドさせてかぶせる。シースを取り外すには、スコープのベース部にあるロック機構のピンを押す。)
(5)甲5について
甲5には、以下の事項が記載されている。
「[0028] 次に、固定部10によって一体化されたシース本体6および挿入部3を、体外から心膜腔内まで予め配置された筒状のトロッカーを介して心膜腔内へ挿入する。心膜腔内において、図5に示されるように、突出部7が心膜B側に配置されるようにシース本体6を配置することで、高い剛性を有する突出部7によって心膜Bが持ち上げられて心膜Bが心臓Aから離れた位置に保持され、挿入部3の先端面3aの周囲に空間Sが確保される。この状態で湾曲部4を切欠7a側へ湾曲させることで、挿入部3の先端面3aの観察窓5を観察対象組織である心臓Aと対向するように配置して心臓Aを俯瞰観察することができる。」
(6)甲6について
甲6には、以下の事項が記載されている。
「【0043】図3は、内視鏡、気管支鏡、フレキシブルなカテーテル器具200、又は剛的な撮像器具のような、細長い医療器具301の正面図300である。本実施例によれば、医療器具301は、通路303を備えるカテーテル302を含み、細長い撮像器具305は、通路303を通じて延びる。撮像器具305は、レンズ306を含む。レンズ306は、その上に障害物308を有することがある。障害物308は、曇った物質又は視覚化システムを通じる視野(vision)を遮る物体を含むことがある。例えば、血液又は粘液のような患者流体又は患者組織が、レンズ306の表面に粘着して、レンズ306の表面を曇らせることがある。レンズ306の上の障害物308は、撮像器具305によって受信される且つ使用者に送られる画像中に見える。ノズル304が、レンズの表面に亘って流体310を吹き付けて、レンズ308から障害物308を除去するよう、構成される。流体は、例えば、生理食塩水、二酸化炭素、又は空気であってよい。ノズル304は、流体310を所望の出力場所/構成に誘導する任意の構造であり得ることに留意のこと。」
第5 当審の判断
1 本件発明について
(1)対比
本件発明と甲1発明とを対比する。
ア 外科用スコープについて
甲1発明の「硬性内視鏡」は、(甲1ア)の[0002]の記載によれば、外科手術に用いられるものであるから、本件発明の「外科用スコープ」に相当する。
そして、甲1発明の「硬性内視鏡10の本体部分12」は、「観察窓14」に通ずるものであり、(甲1イ)の[0022]によれば「細長い略円柱形状」のものであるから、本件発明の「外科用スコープのチューブ」に相当する。
イ シースについて
シースとは、医療機器分野では、一般に、カテーテルやガイドワイヤーなどを血管内へスムーズに挿入・交換するための筒状の管のこと(例えば、JIS工業技術用語[第5版]には「シース(sheath)通常、押し出しで作られた金属又は非金属の、均一で連続した管状の外被」と記載されている。)であり、本件明細書及び図面においても、筒状の管以外の形状について記載されていないことから、甲1発明の「長手方向に沿って見たときに略C字形状」のものは、その形状において「シース」とはいえない。
そうすると、甲1発明の「硬性内視鏡10の本体部分12の外周面」「に対して容易に着脱することができる」「長手方向に沿って見たときに略C字形状」の「硬性内視鏡のカバー」と、本件発明の「外科用スコープのチューブを着脱可能に受け入れるシース」とは、「外科用スコープのチューブを着脱可能に受け入れる部材」という点で共通する。
(ア)壁について
甲1発明の「長手方向に沿って見たときに略C字形状」の「硬性内視鏡のカバー120」が「有」する「細長い本体部分122」は、「C字形状部分の間の空間に硬性内視鏡10が嵌められるようになって」いることから、「硬性内視鏡10の本体部分12」を受け入れるためのチャネルを規定しているといえる。
そうすると、甲1発明の「長手方向に沿って見たときに略C字形状」の「硬性内視鏡のカバー120」が「有」する「細長い本体部分122」と、本件発明の「チューブを受け入れるためのチャネルを規定する壁であって、当該壁の遠位部分が、前記チューブの外周周りに部分的にのみ延びるように構成されている壁」とは、「チューブを受け入れるためのチャネルを規定する壁」という点で共通する。
(イ)導管について
甲1発明の「カバー120」が「有」する「本体部分122の内周面には2本の溝124、126が当該本体部分122の長手方向に沿って延びるよう形成され」、「硬性内視鏡10の観察窓部14に供給される生理食塩水等の洗浄水の流路として用いられる」「一方の溝124」及び「観察窓部14に付着した洗浄水を吹き飛ばすための気体の流路として用いられる」「他方の溝126」は、「硬性内視鏡10の本体部分12の外周面および各溝124、126の内面によって硬性内視鏡10の観察窓部14に供給される洗浄用流体の流路が区画されるようになって」いるものの、「溝」自体は「管」とはいえない。
そうすると、甲1発明の「硬性内視鏡10の観察窓部14に供給される生理食塩水等の洗浄水の流路として用いられる」「一方の溝124」及び「観察窓部14に付着した洗浄水を吹き飛ばすための気体の流路として用いられる」「他方の溝126」と、本件発明の「液体流路を規定する第1の導管」及び「気体流路を規定する第2の導管」とは、「液体流路を規定する第1の流路」及び「気体流路を規定する第2の流路」の点で共通する。
ウ ノズルについて
甲1発明の「流体向き変更部134」によって「各溝124、126に沿って(すなわち、カバー120の本体部分122の長手方向に沿って)流れる洗浄用流体の向きを観察窓部14に向かう方向に変える」ことは、(甲1ウ)の[図5]において矢印で示される流体の向きを参照するに、「硬性内視鏡10の観察窓部14に供給される生理食塩水等の洗浄水の流路として用いられる」「一方の溝124」及び「観察窓部14に付着した洗浄水を吹き飛ばすための気体の流路として用いられる」「他方の溝126」からの「流体の向き」を「硬性内視鏡10」の「観察窓部14」を横切るように向けられているといえる。
そして、「流体向き変更部134」によって「観察窓部14に向かう方向に変え」られた「洗浄用流体」は、「観察窓部14に付着した」ものを「吹き飛ばす」ほどのものであるから、技術的にノズル(例えば、JIS工業技術用語[第5版]には「ノズル(nozzle)流体を噴出させるための、断面積縮小部を含む流路端部」と記載されている)ともいえる。
ただし、甲1発明の「観察窓」は、(甲1ア)の[0001]によれば「患部を撮像するための対物レンズを保護する観察窓部」であるから、本件発明の「レンズ」とは、「観察部材」という点で共通するものである。
そうすると、甲1発明の「カバー120の先端の近傍には、各溝124、126に沿って(すなわち、カバー120の本体部分122の長手方向に沿って)流れる洗浄用流体の向きを観察窓部14に向かう方向に変える流体向き変更部134」と、本件発明の「前記壁の前記遠位部分の遠位端に位置し、前記第1の導管からの液体の流れを前記外科用スコープのレンズを横切るように向け、前記レンズから前記液体を除去するために、前記第2の導管からの気体の流れを前記外科用スコープの前記レンズを横切るように向けるために構成された少なくとも1つのノズル」とは、「前記壁の前記遠位部分の遠位端に位置し、前記第1の流路からの液体の流れを前記外科用スコープの観察部材を横切るように向け、前記観察部材から前記液体を除去するために、前記第2の流路からの気体の流れを前記外科用スコープの前記観察部材を横切るように向けるために構成された少なくとも1つのノズル」という点で共通する。
エ 外科用スコープを洗浄するための装置について
甲1発明の「硬性内視鏡のカバーおよび内視鏡ユニット」は、「患者の体内で」「硬性内視鏡」の「観察窓部の洗浄を行うことができ」るものであるから、本件発明の「外科用スコープを洗浄するための装置」ともいえる。
オ 一致点・相違点
そうすると、本件発明と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
(一致点)
「外科用スコープを洗浄するための装置であって、前記外科用スコープのチューブを着脱可能に受け入れる部材であって、前記チューブを受け入れるためのチャネルを規定する壁と、液体流路を規定する第1の流路と、気体流路を規定する第2の流路と、を有する部材と、前記壁の前記遠位部分の遠位端に位置し、前記第1の流路からの液体の流れを前記外科用スコープの観察部材を横切るように向け、前記観察部材から前記液体を除去するために、前記第2の流路からの気体の流れを前記外科用スコープの前記観察部材を横切るように向けるために構成された少なくとも1つのノズルと、を有する、装置。」
(相違点1)
外科用スコープのチューブを着脱可能に受け入れる部材が、本件発明では、「シース」であるのに対し、甲1発明では、「長手方向に沿って見たときに略C字形状」の「カバー120」である点。
(相違点2)
外科用スコープのチューブを受け入れるためのチャネルを規定する壁が、本件発明では、「壁の遠位部分が、前記チューブの外周周りに部分的にのみ延びるように構成されている壁」であるのに対し、甲1発明では、そもそも「カバー120」が「シース」ではないことから、「カバー120」の「細長い本体部分122」がそのような構成とはなっていない点。
(相違点3)
外科用スコープのチューブを着脱可能に受け入れる部材が有する、液体流路を規定する第1の流路及び気体流路を規定する第2の流路が、本件発明では、「導管」であるのに対し、甲1発明では、「カバー120」の「本体部分122の内周面に」「形成され」た「2本の溝124、126」である点。
(相違点4)
洗浄する観察部材が、本件発明では「レンズ」であるのに対し、甲1発明では「観察窓」である点。
(相違点5)
外科用スコープを洗浄するための装置が、本件発明では、「外科用スコープのハウジングを受け入れるために、前記シースの近位端に配置されたレシーバ」を有し、「前記レシーバは、前記シースの長手方向軸周りの所定の角度配向で前記ハウジングを受け入れるように形成される」ものであるの対し、甲1発明では、「カバー120」が「シース」ではなく、そして、上記「レシーバ」を有していない点。
(2)相違点の判断
事案に鑑み、相違点5について検討する。
相違点5に係る発明特定事項には、上記相違点1に係る「シース」が発明特定事項となっていることから、ここでは、相違点5に係る発明特定事項における「シース」を、外科用スコープのチューブを着脱可能に受け入れる「部材」に置き換えて検討することとする。
ア まず、(甲1エ)の[0039]には、「カバー120」について「カバー120は軟質プラスチック等のプラスチックから構成されており、当該カバー120は可塑性を有するものとなっている。このため、硬性内視鏡10にカバー120を取り付ける際に、当該硬性内視鏡10の外周面にカバー120のC字形状部分の隙間を押し当て、このカバー120を硬性内視鏡10に向かって押し付ける。このことによりカバー120のC字形状部分の隙間が広がるように変形するため、硬性内視鏡10にカバー120が取り付けられるようになる。」と記載されているから、硬性内視鏡10にハウジングがあるかどうかにかかわらず、硬性内視鏡10(のハウジング)を受け入れるために、カバー120の近位端に「レシーバ」を配置する動機はなく、ましてや、カバー120の「長手方向軸周りの所定の角度配向で前記ハウジングを受け入れるように形成される」「レシーバ」を配置する動機は全くない。
イ 次に、甲2~4について検討する。
(ア)甲2について
甲2には、「シール部材」について記載されているが、(甲2ア)に記載されているとおり「液密に接続」する機能を有する部材であり、「外科用スコープのハウジングを受け入れるために」外科用スコープのチューブを着脱可能に受け入れる「部材の近位端に配置されたレシーバ」と同一視できる部材ではない。
また、(甲2ア)には「シール部材116を使用した方法に限定されず、例えば、嵌合やねじ込み等の機械的な固定機構を洗浄用シース110および内視鏡10に設けて、このような固定機構により行ってもよい」との記載もあるものの、固定機構に「シール部材」としての機能を持たせることを示したものであり、外科用スコープのチューブを着脱可能に受け入れる「部材の長手方向軸周りの所定の角度配向で前記ハウジングを受け入れるように形成される」「レシーバ」を示すものではない。
そうすると、甲2には、「外科用スコープのハウジングを受け入れるために、前記部材(シース)の近位端に配置されたレシーバ」であって、「前記レシーバは、前記部材(シース)の長手方向軸周りの所定の角度配向で前記ハウジングを受け入れるように形成される」ものは、記載されていない。
(イ)甲3について
甲3には、「フローガイド」について記載されているが、(甲3ア)に「フローガイド2は、その中を流体が流れることができる流路8(図6を参照)を備える。流路8は、フローガイド2の遠位端部1に、流体が流路8から流出する排出口10を有する。使用時、フローガイド2は、腹腔鏡6に対して固定位置に配置される。」と記載されているだけであり、フローガイド2の「近位端に」「外科用スコープのハウジングを受け入れるため」の「レシーバ」を「配置」することについて記載されておらず、ましてや、その「レシーバ」がフローガイド2の「長手方向軸周りの所定の角度配向で前記ハウジングを受け入れるように形成される」ものであることについて一切記載されていない。
そうすると、甲3には、「外科用スコープのハウジングを受け入れるために、前記部材(シース)の近位端に配置されたレシーバ」であって、「前記レシーバは、前記部材(シース)の長手方向軸周りの所定の角度配向で前記ハウジングを受け入れるように形成される」ものは、記載されていない。
(ウ)甲4について
甲4は、子宮鏡の使用説明書であり、シースを子宮鏡に取り付ける際には、向きを示す矢印を目印に、シースの先端がスコープのベース部とかみ合いしっかりと固定されるまで、露出したロッドレンズにシースをスライドさせてかぶせ、シースを取り外す際には、スコープのベース部にあるロック機構のピンを押すという使用方法を説明しているだけであり、「外科用スコープのハウジングを受け入れるために、前記部材(シース)の近位端に配置されたレシーバ」であって、「前記レシーバは、前記部材(シース)の長手方向軸周りの所定の角度配向で前記ハウジングを受け入れるように形成される」ものは、記載されていない。
(エ)したがって、甲2~4には、上記相違点5に係る「外科用スコープのハウジングを受け入れるために、前記部材(シース)の近位端に配置されたレシーバ」であって、「前記レシーバは、前記部材(シース)の長手方向軸周りの所定の角度配向で前記ハウジングを受け入れるように形成される」ものは記載されていない。
また、上記甲5及び甲6にも、「外科用スコープのハウジングを受け入れるために、前記部材(シース)の近位端に配置されたレシーバ」であって、「前記レシーバは、前記部材(シース)の長手方向軸周りの所定の角度配向で前記ハウジングを受け入れるように形成される」ものは記載されていない。
ウ 小括
よって、甲1発明の「カバー120」が「シース」ではない点を措き、甲1発明の「硬性内視鏡10」に「ハウジング」があるかどうかにかかわらず、相違点5に係る「外科用スコープのハウジングを受け入れるために、前記部材(シース)の近位端に配置されたレシーバ」であって「前記レシーバは、前記部材(シース)の長手方向軸周りの所定の角度配向で前記ハウジングを受け入れるように形成される」ものは、そもそも甲2~6には記載されておらず、そして、甲1発明の「カバー120」の近位端にそのような「レシーバ」を配置する動機はなことから、相違点5は、当業者が容易になし得たことではない。
(3)小結
以上のことから、本件発明は、相違点1~4について検討するまでもなく、甲1発明及び甲2~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)申立人の主張について
上記第3の2において、申立人の本件発明に対する具体的主張を記載したが、以下のア~ウの点において適切ではない。また、以下のエとして、甲1に記載された発明を別の態様から認定した場合についての検討も加えておく。
ア 申立人は、甲1において、洗浄水供給源40が接続された流体供給管128が「第1の導管」に、気体供給源42が接続された流体供給管130が「第2の導管」に各々相当しているとしているが、本件発明では「液体流路を規定する第1の導管と、気体流路を規定する第2の導管と、を有するシース」と特定され、上記第3の2で摘記した(本ウ)の【図1D】及びその説明である(本イ)の【0124】に「シース102は、壁116を含み、導管118、120は、導管がそれらの長手方向周囲を完全に囲まれるように、壁116内に形成される。」と記載されていることから、シースの壁の中にある導管118及び導管120をそれぞれ「第1の導管」及び「第2の導管」としたものであり、甲1の洗浄水供給源40が接続された「流体供給管128」及び気体供給源42が接続された「流体供給管130」は、本件明細書等において(本ウ)の【図1D】及びその説明である(本イ)の【0122】に記載されている「液体ポート106」及び「気体ポート108」に相当するものである。
そうすると、上記(1)対比の(イ)で述べたとおり、本件発明における「第1の導管」及び「第2の導管」に対応するものは「溝124」及び「溝126」が正解であり、甲1における洗浄水供給源40が接続された「流体供給管128」及び気体供給源42が接続された「流体供給管130」が、各々「第1の導管」及び「第2の導管」に相当しているとの主張は誤りである。
イ 申立人は、本件発明と甲1発明との差異点(相違点)は、「・外科用スコープを洗浄するための装置は、外科用スコープのハウジングを受け入れるために、シースの近位端に配置されたレシーバを有し、レシーバは、所定の角度配向でハウジングを受け入れるように形成されること」のみとしているが、上記(1)で述べたとおり、上記差異点に相当する相違点5以外にも相違点1~4が存在することから、本件発明と甲1発明との相違点を看過している。
ウ 申立人の結論づけた「甲第2号証記載の発明、甲第3号証記載の発明及び甲第4号証記載の発明のうち何れかの発明を甲第1号証記載の発明に組み合わせることにより当業者は本件特許発明1を容易に想到することができると思料する」との主張は、上記(2)で述べたとおり、受け入れられるものではない。
エ 甲1に記載された発明を認定するにあたっては、上記第4の1(2)で記載したとおり、申立人の主張を考慮し、上記(甲1エ)並びに(甲1オ)で摘記した図7及び図8に記載されている「別の変形例」に基づいて認定を行ったが、甲1に記載された発明を、図3、図4及び図5並びにそれらについての(甲1イ)の記載に基づいて認定することもできることから、この場合についても検討しておく。
この場合、「カバー20」の形状は「長手方向に沿って見たときに略C字形状」ではなく、図3、図4及び図5の記載によれば細長い円筒形状であることから、「シース」形状といえるものである。しかしながら、上記(1)で記載した相違点2~5については、同様に相違点となることから、甲1に記載された発明を、図3、図4及び図5並びにそれらについての(甲1イ)の記載に基づいて認定したとしても、少なくとも相違点5の点において当業者が容易になし得たこととはいえない。
そうすると、本件発明は、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないとの結論(小結)に変わりはない。
2 請求項2~7及び9~23に係る発明について
請求項2~7及び9~23に係る発明は、上記第2に記載したとおり、すべて本件発明を直接的又は間接的に引用する発明であるから、本件発明と同様に、甲1発明及び甲2~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 まとめ
したがって、本件発明並びに請求項2~7及び9~23に係る発明は、甲1発明及び甲2~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由によって、本件発明並びに請求項2~7及び9~23に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1~7及び9~23に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に、本件請求項1~7及び9~23に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700838