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特許異議申立

2025-700555

プレス成形品の製造方法

審判番号
2025-700555
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-188001
登録番号
7590700
請求日
2025年05月26日
審決日
2025年09月17日
公報発行日
2025年10月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】JFEスチール株式会社
  • 【権利者代理人】石川 壽彦
  • 【異議申立人】荒木 博之
審判長/審判官
  • 審判長 刈間 宏信
  • 審判官 山田 康孝
  • 審判官 田々井 正吾
分類
P1651.161-Y (B21D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条の2
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7590700号発明「プレス成形品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7590700号の請求項1~2に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7590700号の請求項1~2に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和4年11月25日(優先権主張 令和4年1月12日(以下、この日付を「優先日」という。))に出願された特願2022-188001であって、令和6年11月19日にその特許権の設定登録がされ、同月27日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1~2に係る特許に対し、令和7年5月26日に特許異議申立人荒木博之(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 鋼板からなる本体部品の一部に鋼板からなる補強部品を付与したコの字断面形状またはハット形断面形状を有する目標形状のプレス成形品を製造するプレス成形品の製造方法であって、 前記プレス成形において曲げ部における曲げの外側に配置され、前記本体部品となる本体ブランクにおける曲げ稜線部となる部位に、曲げの稜線方向に延びる凸形状を付与した予成形ブランクを成形する第1成形工程と、 前記予成形ブランクにおける凸形状が形成された面と反対側の面に、前記プレス成形において曲げ部における曲げの内側に配置され、前記補強部品となる補強ブランクを接合し、接合ブランクを作成する接合ブランク作成工程と、 前記接合ブランクの凸形状を曲げの外側になるように金型に配置して、目標形状にフォーム成形でプレス成形する第2成形工程と、を有し、 前記予成形ブランクにおける凸形状が、前記目標形状のプレス成形品における曲げ稜線部より短いこと、及び、 前記目標形状における曲げ稜線部における天板部と縦壁部との曲げ角度をθ、前記予成形ブランクの板厚をt1、前記予成形ブランクに接合される補強ブランクの板厚をt2とし、前記予成形ブランクにおける前記凸形状の断面において凸の始点と終点とを直線で結んだ板厚中心の長さと、凸に沿って曲線で結んだ板厚中心の長さとの断面線長差ΔLが下式を満たすこと、を特徴とするプレス成形品の製造方法。 0.33(t1+t2)θ≦ΔL≦0.69(t1+t2)θ 【請求項2】 前記予成形ブランクにおける凸形状を、前記目標形状のプレス成形品における曲げ稜線部と平行となるように形成することを特徴とする請求項1に記載のプレス成形品の製造方法。」 第3 申立ての理由 1 申立人が特許異議申立書で主張する申立ての理由の概要 (拡大先願)本件特許発明1~2は、本件特許出願の優先日前の特許出願であって、本件特許出願後に特許掲載公報(甲第1号証)の発行がされた下記の特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願の優先日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、本件の請求項1~2に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。 2 証拠方法 申立人が特許異議申立書に添付して提出した証拠は、次の(1)~(5)のとおりである。 (1)甲第1号証:特許第7572935号公報 甲第1号証の特許掲載公報の出願: 特願2021-190423(特開2023-77210) (2)甲第2号証:特開2019-104054号公報 (3)甲第3号証:国際公開第2019/167792号 (4)甲第4号証:特開2021-176646号公報 (5)甲第5号証:国際公開第2015/098871号 以下、甲第○号証を「甲○」という。 第4 証拠の記載について 1 甲1について (1)甲1の記載事項 ア 発明の詳細な説明 「【技術分野】 【0001】 本発明は、重ね合わせブランク及びその成形方法に関する。 ・・・ 【0006】 本発明は、重ね合わせブランク及びその成形方法において、重ね合わせて接合された複数の金属板からなる重ね合わせブランクを曲げ加工するプレス成形時に、接合部の破断の回避と、スプリングバックの抑制を課題とする。 ・・・ 【発明を実施するための形態】 ・・・ 【0029】 本発明の実施形態に係る重ね合わせブランクの成形方法は、第1金属板と、第2金属板とを重ね合わせて接合した重ね合わせブランクをプレス成形して所望の形状のプレス成形品を得るものである。本方法は、特に自動車の車体骨格を構成する車体構成部材を形成するために使用されることができる。以下では、本方法を使用して断面ハット状の車体構成部材を成形する方法について説明する。 【0030】 図1から図3は、本発明の実施形態に係る重ね合わせブランク1を示す。図1を参照すると、この重ね合わせブランク1は、板厚一定の金属板からなる本体部材2(第1金属板)と、同様に板厚一定の金属板からなる補強部材3(第2金属板)とを備える。本実施形態では、本体部材2及び補強部材3は、例えば、引張強度が590MPa以上のいわゆる高張力鋼板である。 【0031】 図1を参照すると、本体部材2は、幅方向の中心線C1を挟んで両側にそれぞれ、膨らんだ余肉部2aと、余肉部2aに隣接して設けられた第1平坦部2bと、第1平坦部2bとは反対側で余肉部2aに隣接して設けられた第2平坦部2cとを備える。補強部材3は、第1平坦部2bと第2平坦部2cとにおいて重ね合わされている。余肉部2aは、本体部材2を曲げの外側に突出するように撓ませることで形成され、長手方向に延びている。具体的には、余肉部2aは、本体部材2の長手方向の一端から他端まで連続して延びている。 【0032】 補強部材3は、本体部材2の内側(重ね合わせブランク1のプレス成形時における曲げの内側)に必要に応じて部分的に補強部材3を重ね合わせて接合することで、重ね合わせブランク1を形成する。本実施形態の重ね合わせブランク1は、補強部材3の幅方向の中央部と本体部材2の幅方向の中央部との位置が一致している。 ・・・ 【0040】 長手方向に直交する断面における余肉部2aの断面長さL1と直線長さL0との差異(L1-L0)は、余肉を設けなかった場合の本体部材2の曲げ加工前後の線長変化代と補強部材3の曲げ加工前後の線長変化代の差異ΔLより大きい。ここで、断面長さL1は、余肉部2aの第1立ち上がり部2dの幅方向内端から第2立ち上がり部2eの幅方向外端までの長さである。線長変化代ΔLは、曲げ加工後の本体部材2の第1接合部11の接合打点11aと第2接合部12の接合打点12aとの距離L12(図6参照)と曲げ加工後の補強部材3の第1接合部11の接合打点11aと第2接合部の接合打点12aとの距離L13(図6参照)の差としてもよい。 【0041】 より詳しくは、余肉部2aの長手方向に直交する断面における長さ(断面長さ)は、以下の関係を満足する。 【数2】 L0+0.65(t1+t2)≦L1≦L0+1.35(t1+t2) L0:余肉部の直線距離 L1:余肉部の長さ t1:第1金属板の板厚 t2:第2金属板の板厚 本実施形態において、本体部材2の板厚t1は、例えば、1.4mmである。補強部材3の板厚t2は、例えば、1.4mmである。 ・・・ 【0049】 第1ダイ33は、正面視において矩形状を有し、上下方向に延びている。第1ダイ33は、ダイ32の凹形状のダイ底面32aを構成し、パンチ頂部31aに対向する水平な平坦面を有する。プレス成形の際には、二点鎖線で示すように最初に第1ダイ33が下降して、重ね合わせブランク1に接触するようにされている。ダイ底面32aの幅は、余肉部2a間の幅よりも小さい。したがって、プレス成形の際に、ダイ底面32aとパンチ頂部31aとによって重ね合わせブランク1が挟持される段階では、余肉部2aが変形されない。 【0050】 図5に示すように、ダイ底面32aの幅は、幅方向一対の第1溶接打点11aと幅方向位置がオーバラップするように設定されている。したがって、プレス成形の際に、幅方向一対の第1溶接打点11a間が第1ダイ33とパンチ頂部31aによって拘束されて、幅方向一対の第1溶接打点11a間の変形が抑制される。これにより、プレス成形の際に、第1溶接打点11aと第2溶接打点12aとの間の本体部材2と補強部材3との間の線長変化代ΔLを余肉部2aで吸収しやすい。 ・・・ 【0054】 次に、図4~図7を参照しながら、重ね合わせブランク1の成形方法について説明する。図4~図7は、本実施形態に係る重ね合わせブランク1の成形方法の各工程を順に示している。なお、図5~図7では、図示を明瞭にするため、重ね合わせブランク1と金型30の幅方向一方側の断面のみが示されている。 【0055】 まず、上方に突出する余肉部を備えた本体部材2と、平坦な補強部材3とを互いに重ね合わせて接合した重ね合わせブランク1を準備し、本体部材2を重ね合わせブランク1の曲げの外側に位置させた状態で、重ね合わせブランク1を曲げ加工する。プレス成形は室温等で実施されるいわゆる冷間で行っても、ホットスタンプ等の熱間で行ってもよい。 【0056】 図4は、準備工程を示している。準備工程では、重ね合わせブランク1を金型30にセットする。このとき、重ね合わせブランク1は、本体部材2が上側に位置して配置されている。このように配置されると、余肉部2aが線長変化の大きい曲げの上側に配置されることになる。 【0057】 図5及び図6は、曲げ加工を実行する曲げ工程を示している。図5は、曲げ加工前を示しており、図6は曲げ加工後を示している。 【0058】 図5に示すように、曲げ加工前の状態では、駆動機構22(図4参照)によって第1ダイ33が下降され、第1ダイ33のダイ底面32aが重ね合わせブランク1の重合部4に接触する。パンチ31のパンチ頂部31aとダイ32のダイ底面32aとによって重合部4を挟み込んだ状態となる。このとき、重ね合わせブランク1は、余肉部2aの少なくとも一部がパンチ31のパンチ肩部31bにオーバラップするように配置される。 【0059】 具体的には、余肉部2aの幅方向の中心線C2よりも幅方向内側の領域Z1が、パンチ肩部31bよりも幅方向位内側となるように配置される。より好ましくは、余肉部2aの第1立ち上がり部2dは、パンチ肩部31bの幅方向外側のR止まりを通る図5の破線で示す直線Xよりも幅方向内側の領域Z2に位置する。重ね合わせブランク1を曲げ加工する際に、重ね合わせブランク1の幅方向中央部、より詳しくは、幅方向一対の余肉部2a間が、パンチ31のパンチ頂部31aと第1ダイ33のダイ底面32aによって拘束される。 【0060】 そして、曲げ加工前の状態では、駆動機構22(図4参照)によって第2ダイ34及び第3ダイ35が下降されて、第2ダイ34及び第3ダイ35の肩R部32dが重ね合わせブランク1に接触する。具体的には、第2ダイ34及び第3ダイ35の肩R部32dが、余肉部2aの幅方向の中心線C2よりも幅方向外側の領域Z3に当接する。より好ましくは、肩R部32dは、余肉部2aの中央部2fのうち第2立ち上がり部2e側の部位と当接する。 【0061】 その後、図6に示すように第2ダイ34及び第3ダイ35を下死点(曲げ加工完了となるダイ32の下端位置)まで下降させて、重ね合わせブランク1を曲げ加工する。曲げ加工中の重ね合わせブランク1の変形及び重ね合わせブランク1に発生する応力分布の変化について詳細を後述する。 【0062】 このようにして、図7に示すようなハット状のプレス成形品5を製造することができる。プレス成形品5は、頂面部5aと、頂面部5aの幅方向両側の肩部5bと、肩部5bから下方に向かって幅方向外側に傾斜する縦壁部5cと、縦壁部5cの下端から幅方向外側へ延びるフランジ部5dとを有する。 【0063】 補強部材3は、頂面部5aと縦壁部5cに跨るようにプレス成形品5の内面側に設けられている。言い換えると、重合部4が頂面部5aと縦壁部5cに跨って形成されている。プレス成形品5の状態では、第1接合部11の接合打点11aは頂面部5aに位置し、第2接合部12の接合打点12aは縦壁部5cに位置し、余肉部2aによって形成された隙間S1が消失する。 ・・・ 【0077】 余肉部2aの断面長さL1と直線長さL0との差異(L1-L0)は、余肉を設けなかった場合の本体部材2の曲げ加工前後の線長変化代と補強部材3の曲げ加工前後の線長変化代の差異ΔLよりも大きく設定されているので、線長変化後に残った余肉部2aが金型30によって圧縮変形される。これにより、本体部材2には、曲げ加工によって生じる引張応力に加えて圧縮応力(図9矢印a2参照)が生じるので、スプリングバックを生じさせる本体部材2の引張応力(図9矢印a3参照)の一部が圧縮応力によってキャンセルされて、重ね合わせブランク1のスプリングバックが抑制される。 【0078】 余肉部2aの長さL1は、本体部材2の板厚をt1とし、補強部材の板厚をt2としたときに、L0+0.65(t1+t2)以上、L0+1.35(t1+t2)以下に設定されるので、接合部11,12の破断を回避しつつ、重ね合わせブランク1のスプリングバックを抑制できる。 【0079】 具体的には、余肉部の長さがL0+0.65(t1+t2)未満である場合、良好な接合部の破断及びスプリングバックの抑制効果が得られにくい。余肉部の長さがL0+1.35(t1+t2)よりも大きい場合、第1金属板の余肉部が過剰に余ってしまい,その余肉部を所定の形状まで変形させた際に第1金属板と第2金属板の接合部にせん断応力を生じ,接合部が破断する可能性がある。 【0080】 本体部材2及び補強部材3は、鋼板、例えば高張力鋼板で形成されているので、スプリングバックが大きくなりやすい強度の高い鋼板に適用することで、好適に効果を発揮する。 イ 図面 「【図1】 [図:0001428012000001.jpg] ・・・ 【図3】 [図:0001428012000002.jpg] 【図4】 [図:0001428012000003.jpg] (当審注:甲1に係る特許公報の図4は、甲1に係る出願の願書に最初に添付した図面を令和6年8月13日に手続補正したものであるが、その補正は、補正前の符号「31d」、「31e」が誤記であったものを、「31e」、「31f」に正しく改めるものであって、図面の内容を変更するものではないため、甲1に係る特許公報の図4は、甲1に係る出願の願書に最初に添付した図面と実質的に同一であると認定する。) 【図5】 [図:0001428012000004.jpg] 【図6】 [図:0001428012000005.jpg] 【図7】 [図:0001428012000006.jpg] 」 (2)甲1の記載事項の整理 ア 甲1の段落【0029】~【0030】、【0062】~【0063】、図7の記載からみて、甲1には、高張力鋼板からなる本体部材2の一部に高張力鋼板からなる補強部材3を接合したハット状を有する所望の形状のプレス成形品5を製造するプレス成形品5の製造方法について記載されている。 イ 甲1の段落【0030】~【0031】、【0055】~【0056】、【0058】~【0059】、【0062】~【0063】、図1、3~5、7の記載からみて、第1金属板は本体部材2となるものであって、プレス成形品5の肩部5bにおける曲げの外側に配置され、本体部材2となるこの第1金属板において、プレス成形品の肩部5bとなる長手方向の一端から他端に延びている部位に、長手方向に連続して延びていて曲げの外側の上方に突出する余肉部2aを、曲げの外側に撓ませることで形成する。 したがって、上記アのプレス成形品の製造方法においては、プレス成形においてプレス成形品5の肩部5bにおける曲げの外側に配置され、本体部材2となる第1金属板における前記肩部5bとなる長手方向の一端から他端まで延びている部位に、長手方向に延びる曲げの外側で上方に突出する余肉部2aを備えた第1金属板を成形する、本体部材2に余肉部2aを形成する工程を有するといえる。 ウ 甲1の段落【0030】~【0032】、図1の記載からみて、第2金属板は補強部材3となるものであって、第1金属板における曲げの外側である余肉部2aが形成された面の反対側の曲げの内側の面に、プレス成形品5の肩部5bにおける曲げの内側にこの第2金属板が配置されて接合し、重ね合わせブランク1を作成する。 したがって、上記アのプレス成形品の製造方法においては、第1金属板における前記余肉部2aが形成された面と反対側の面に、プレス成形においてプレス成形品5の肩部5bにおける曲げの内側に配置され、補強部材3となる第2金属板を接合する、重ね合わせブランク1を作成する工程を有するといえる。 エ 甲1の段落【0049】~【0050】、【0054】~【0062】、図4~6の記載からみて、重ね合わせブランク1を、余肉部2aを曲げの外側になるように金型30に配置する。そして、この重ね合わせブランク1を、所望の形状に、金型30のダイ底面32aとパンチ頂部31aとによって重ね合わせブランク1が挟持される段階を含む成形によってプレス成形する。 したがって、上記アのプレス成形品の製造方法においては、重ね合わせブランク1の余肉部2aを曲げの外側になるように金型30に配置して、所望の形状に前記金型30のダイ底面32aとパンチ頂部31aとによって重ね合わせブランク1が挟持される段階を含む成形によってプレス成形する、重ね合わせブランク1を曲げ加工する工程を有するといえる。 オ 甲1の段落【0030】~【0031】、図1の記載からみて、上記アのプレス成形品の製造方法においては、本体部材2となる第1金属板の余肉部2aが、所望の形状のプレス成形品5における肩部5bの長手方向の一端から他端まで連続して延びている。 カ 甲1の段落【0040】~【0041】、図3の記載からみて、上記アのプレス成形品の製造方法においては、前記第1金属板の板厚をt1、前記第1金属板に接合される第2金属板の板厚をt2とし、長手方向に直交する断面における余肉部2aの断面長さをL1、直線長さL0とすると、 断面長さL1は、 L0+0.65(t1+t2)≦L1≦L0+1.35(t1+t2) の式を満たし、 したがって、断面長さL1と直線長さL0の差異(L1-L0)は、 0.65(t1+t2)≦L1-L0≦1.35(t1+t2) の式を満たす。 (3)甲1先願発明 上記(1)~(2)より、甲1には次の発明(以下「甲1先願発明」という。)が記載されているといえる。 「 高張力鋼板からなる本体部材2の一部に高張力鋼板からなる補強部材3を接合したハット状を有する所望の形状のプレス成形品5を製造するプレス成形品5の製造方法であって、 前記プレス成形においてプレス成形品5の肩部5bにおける曲げの外側に配置され、前記本体部材2となる第1金属板における前記肩部5bとなる長手方向の一端から他端まで延びている部位に、長手方向に延びる曲げの外側で上方に突出する余肉部2aを備えた第1金属板を成形する、前記本体部材2に前記余肉部2aを形成する工程と、 前記第1金属板における前記余肉部2aが形成された面と反対側の面に、前記プレス成形において前記プレス成形品5の肩部5bにおける曲げの内側に配置され、前記補強部材3となる第2金属板を接合し、重ね合わせブランク1を作成する工程と、 前記重ね合わせブランク1の前記余肉部2aを曲げの外側になるように金型30に配置して、所望の形状に前記金型30のダイ底面32aとパンチ頂部31aとによって重ね合わせブランク1が挟持される段階を含む成形によってプレス成形する、重ね合わせブランク1を曲げ加工する工程と、を有し、 前記第1金属板における前記余肉部2aが、前記所望の形状のプレス成形品5の肩部5bにおける長手方向の一端から他端まで連続して延びていること、及び、 前記第1金属板の板厚をt1、前記第1金属板に接合される第2金属板の板厚をt2とし、長手方向に直交する断面における余肉部2aの断面長さをL1、直線長さL0とすると、 断面長さL1は、 L0+0.65(t1+t2)≦L1≦L0+1.35(t1+t2) の式を満たし、 したがって、断面長さL1と直線長さL0の差異(L1-L0)は、 0.65(t1+t2)≦L1-L0≦1.35(t1+t2) の式を満たす プレス成形品の製造方法。」 2 甲2~甲5について (1)甲2の記載事項 「【図8】 [図:0001428012000007.jpg] 」 (2)甲3の記載事項 「[図1] [図:0001428012000008.jpg] 」 (3)甲4の記載事項 「【図1】 [図:0001428012000009.jpg] 」 (4)甲5の記載事項 「[図36D] [図:0001428012000010.jpg] 」 (5)甲2~甲5の記載事項が例示する周知技術 上記(1)~(4)から、次の技術的事項が、甲2~甲5の記載事項が例示する周知技術(以下「ハット形断面形状プレス成形品の曲げ角度に関する周知技術」という。)であるといえる。 「ハット形断面形状を有するプレス成形品の曲げ稜線部における天板部と縦壁部の曲げ角度が70~90度の程度の範囲であること。」 第5 当審の判断 1 本件特許発明1と甲1先願発明の同一性 (1)本件特許発明1と甲1先願発明の対比 ア 甲1先願発明の「高張力鋼板」は本件特許発明1の「鋼板」に相当し、以下同様に、「本体部材2」は「本体部品」に、「補強部材3」は「補強部品」に、「接合した」は「付与した」に、「ハット状」は「コの字断面形状またはハット形断面形状」に、「所望の形状」は「目標形状」に、「プレス成形品5」は「プレス成形品」に、それぞれ相当する。 イ 甲1先願発明の「プレス成形品5の肩部5b」は本件特許発明1の「曲げ部」に相当し、以下同様に、「第1金属板」は「本体ブランク」又は「予成形ブランク」に、「前記肩部5bとなる長手方向の一端から他端まで延びている部位」は「曲げ稜線部となる部位」に、「余肉部2a」は「凸形状」に、「長手方向に延びる曲げの外側で上方に突出する余肉部2aを備えた」は「曲げの稜線方向に延びる凸形状を付与した」に、「本体部材2に前記余肉部2aを形成する工程」は「第1成形工程」に、それぞれ相当する。 ウ 甲1先願発明の「第2金属板」は「補強ブランク」に相当し、以下同様に、「重ね合わせブランク1」は「接合ブランク」に、「重ね合わせブランク1を作成する工程」は「接合ブランク作成工程」に、それぞれ相当する。 エ 甲1先願発明の「金型30」は本件特許発明1の「金型」に相当し、そして、甲1先願発明の「前記金型30のダイ底面32aとパンチ頂部31aとによって重ね合わせブランク1が挟持される段階を含む成形」は、プレス成形の際に、金属板の中央部を固定し、外周部を固定していないから、本件特許発明1の「フォーム成形」に相当し、さらに、甲1先願発明の「重ね合わせブランク1を曲げ加工する工程」は本件特許発明1の「第2成形工程」に相当する。 オ 甲1先願発明の「前記第1金属板における前記余肉部2aが、前記所望の形状のプレス成形品5の肩部5bにおける長手方向の一端から他端まで連続して延びていること」と、本件特許発明1の「前記予成形ブランクにおける凸形状が、前記目標形状のプレス成形品における曲げ稜線部より短いこと」を対比すると、両者は、「前記予成形ブランクにおける凸形状が、前記目標形状のプレス成形品における曲げ稜線の方向に延びること」という点に限り一致する。 カ 甲1先願発明の「前記第1金属板の板厚をt1、前記第1金属板に接合される第2金属板の板厚をt2とし」は、本件特許発明1の「前記予成形ブランクの板厚をt1、前記予成形ブランクに接合される補強ブランクの板厚をt2とし」に相当する。そして、甲1先願発明において「長手方向に直交する断面における余肉部2aの断面長さをL1、直線長さL0とする」ときに、断面長さL1と直線長さL0の差異(L1-L0)は、本件特許発明1の「前記予成形ブランクにおける前記凸形状の断面において凸の始点と終点とを直線で結んだ板厚中心の長さと、凸に沿って曲線で結んだ板厚中心の長さとの断面線長差ΔL」に相当する。 キ 甲1先願発明の「0.65(t1+t2)≦L1-L0≦1.35(t1+t2)」と、本件特許発明1の「0.33(t1+t2)θ≦ΔL≦0.69(t1+t2)θ」を対比すると、両者は、「ΔLが所定の下限値及び上限値を有する」という点に限り一致する。 (2)本件特許発明1と甲1先願発明の一致点 上記(1)より、本件特許発明1と甲1発明とは、次の点で一致する。 鋼板からなる本体部品の一部に鋼板からなる補強部品を付与したコの字断面形状またはハット形断面形状を有する目標形状のプレス成形品を製造するプレス成形品の製造方法であって、 前記プレス成形において曲げ部における曲げの外側に配置され、前記本体部品となる本体ブランクにおける曲げ稜線部となる部位に、曲げの稜線方向に延びる凸形状を付与した予成形ブランクを成形する第1成形工程と、 前記予成形ブランクにおける凸形状が形成された面と反対側の面に、前記プレス成形において曲げ部における曲げの内側に配置され、前記補強部品となる補強ブランクを接合し、接合ブランクを作成する接合ブランク作成工程と、 前記接合ブランクの凸形状を曲げの外側になるように金型に配置して、目標形状にフォーム成形でプレス成形する第2成形工程と、を有し、 前記予成形ブランクにおける凸形状が、前記目標形状のプレス成形品における曲げ稜線の方向に延びること、及び、 前記予成形ブランクの板厚をt1、前記予成形ブランクに接合される補強ブランクの板厚をt2とし、前記予成形ブランクにおける前記凸形状の断面において凸の始点と終点とを直線で結んだ板厚中心の長さと、凸に沿って曲線で結んだ板厚中心の長さとの断面線長差ΔLが所定の下限値及び上限値を有する、 プレス成形品の製造方法。 (3)本件特許発明1と甲1先願発明の相違点 ア 相違点1 予成形ブランクにおける凸形状と、目標形状のプレス成形品における曲げ稜線の長さについて、本件特許発明1においては、前者の長さが後者の長さより短いのに対して、甲1先願発明においては同じである点。 イ 相違点2 本件特許発明1のプレス成形品の製造方法が、目標形状における曲げ稜線部における天板部と縦壁部との曲げ角度をθ、予成形ブランクの板厚をt1、予成形ブランクに接合される補強ブランクの板厚をt2とし、予成形ブランクにおける凸形状の断面において凸の始点と終点とを直線で結んだ板厚中心の長さと、凸に沿って曲線で結んだ板厚中心の長さとの断面線長差ΔLについて、 「0.33(t1+t2)θ≦ΔL≦0.69(t1+t2)θ」 の式(以下「式(A)」という。)を満たすのに対して、 甲1先願発明のプレス成形品の製造方法は、予成形ブランク(第1金属板)の板厚をt1、予成形ブランクに接合される補強ブランク(第2金属板)の板厚をt2とし、予成形ブランクにおける凸形状(余肉部2a)の断面において凸の始点と終点とを直線で結んだ板厚中心の長さ(L0)と、凸に沿って曲線で結んだ板厚中心の長さ(L1)との断面線長差ΔL(L1-L0)は、 0.65(t1+t2)≦L1-L0≦1.35(t1+t2) の式(以下「式(B)」という。)を満たす点。 (4)相違点の検討 事案に鑑み、相違点2から検討する。 ア 相違点2における式(A)及び式(B)の検討 上記(3)イの本件特許発明1の式(A)と甲1先願発明の式(B)は、予成形ブランクにおける前記凸形状の断面において凸の始点と終点とを直線で結んだ板厚中心の長さと、凸に沿って曲線で結んだ板厚中心の長さとの断面線長差ΔLが満たすものであって、予成形ブランクの板厚t1と、予成形ブランクに接合される補強ブランクの板厚t2の和の(t1+t2)を含む点で共通であるが、式(A)は目標形状における曲げ稜線部における天板部と縦壁部との曲げ角度θを含み、式(B)は含まない。 これにより、ΔLの範囲が、式(A)においては幾何学的な断面線長差ΔL*=(t1+t2)θ/2(本件の明細書の段落【0016】)に基づいて規定されるのに対して、式(B)においては予成形ブランクの板厚t1と補強ブランクの板厚t2の和(t1+t2)に基づいて規定される。 そして、本件特許発明1においては、本件の明細書の段落【0031】記載のように、ΔL*は、プレス成形時にブランクに外力が加わることで変形しても割れが生じない断面線長差ΔLが、幾何学的な断面線長差ΔL*の値の±40%、すなわち0.6倍から1.4倍の範囲であればよいことを見出したという知見に基づいて、段落【0045】の表1の本発明例2~5を基に、誤差が-34%~+38%の範囲、すなわちΔL*の値の0.66倍(0.66/2=0.33)から1.38倍(1.38/2=0.69)の範囲を選択して、式(A)に反映させたものである。 これに対して、甲1先願発明においては、甲1の段落【0079】記載の「具体的には、余肉部の長さがL0+0.65(t1+t2)未満である場合、良好な接合部の破断及びスプリングバックの抑制効果が得られにくい。余肉部の長さがL0+1.35(t1+t2)よりも大きい場合、第1金属板の余肉部が過剰に余ってしまい,その余肉部を所定の形状まで変形させた際に第1金属板と第2金属板の接合部にせん断応力を生じ,接合部が破断する可能性がある。」という知見に基づいて、0.65及び1.35という係数を、式(B)に反映させたものである。 そうすると、式(A)と式(B)の予成形ブランクの断面線長差ΔLについて、いずれも(t1+t2)を含む点で共通するが、式(A)は、板厚の和が(t1+t2)である予成形ブランクと補強ブランクの曲げ角度がθの場合の幾何学的な断面線長差ΔL*を基準に範囲を規定しているのに対して、式(B)は、予成形ブランクと補強ブランクの板厚の和の(t1+t2)のみを基準に範囲が規定されており、式(A)と式(B)は、異なる技術的思想により規定されたものである。 さらに、式(A)と式(B)は、曲げ角度θが考慮されるか否かについて、その技術的な内容が明らかに異なるものであり、曲げ角度θを伴うハット型プレス成形のための断面線長差の範囲を求めるにあたって、式(A)は曲げ角度θの値を直接代入するのに対して、式(B)は、(t1+t2)の係数を別途決定することが記載されているにすぎず、その係数を決定する際に、曲げ角度θを考慮することの示唆はない。 そして、予成形ブランクの断面線長差ΔLを、予成形ブランクと補強ブランクの板厚の和の(t1+t2)だけでなく、曲げ角度θに基づいて算出することについて、申立人が申立書に添付した甲1以外の甲号証である甲2~5の記載事項、あるいは甲2~甲5の記載事項による、第4の2(5)の「ハット形断面形状プレス成形品の曲げ角度に関する周知技術」を検討しても、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの。)とはいえないし、他にそれを覆すような証拠や技術的常識が存在する旨の事情も見いだすことができない。 したがって、相違点2における式(A)及び式(B)は同一でも実質同一でもない。 イ 特許異議申立書における主張 特許異議申立書(以下「申立書」という。)3(4)ウ(ア)f「構成A6について」(申立書18ページ)において、申立人は、甲1先願発明の式(B)に曲げ角度θが含まれていないことに関し、式(B)の上下限において、曲げ角度θは定数(0.65及び1.35)に含まれていることを主張する。 さらに、甲1先願発明において、パンチ31と第2及び第3ダイ34、35の動作からみて、曲げ角度θとして70~90度の範囲が想定されていること、甲2~甲5には、曲げ角度θとして70~90度程度の範囲であることが示されていることを主張する。 しかしながら、甲1には、式(B)の上下限の定数に曲げ角度θを導入すること、あるいは断面線長差ΔL*に基づいて式(B)の範囲を規定することについて、記載も示唆もない。本件特許発明1の曲げ角度θに具体的な値を代入して算出した式(A)の範囲が、甲1先願発明の式(B)の範囲と一致する部分があるとしても、異なる技術的思想により規定されたものが計算上一致したに過ぎず、式(A)と式(B)が同一あるいは実質同一であるとはいえない。 したがって、甲1先願発明において、曲げ角度θとして70~90度の範囲が想定されており、あるいは、甲2~甲5に曲げ角度θとして70~90度程度の範囲であることが示されていて、第4の2(5)の「ハット形断面形状プレス成形品の曲げ角度に関する周知技術」であるといえるとしても、式(A)と式(B)が同一あるいは実質同一であるとはいえないから、それらの式をそれぞれ含む本件特許発明1と甲1先願発明が同一あるいは実質同一であるという申立人の主張を採用することはできない。 (5)本件特許発明1と甲1先願発明の同一性についてのまとめ 相違点2について、上記(4)のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1先願発明と同一であるとも、実質同一であるともいえない。 2 本件特許発明2と甲1先願発明の同一性 本件特許発明2は、本件特許発明1を引用する発明であり、本件特許発明1に対してさらに発明特定事項を追加したものであるから、上記1で本件特許発明1について検討したのと同様に、本件特許発明2は、甲1先願発明と同一であるとも、実質同一であるともいえない。 3 小括 したがって、請求項1~2に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700555

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