特許拒絶査定不服審判
2025-002918
スピンドル冷却装置、及びスピンドル冷却方法
- 審判番号
- 2025-002918
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-031853
- 請求日
- 2025年02月25日
- 審決日
- 2026年02月26日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】セイコーグループ株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人仲野・川井国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 田々井 正吾
- 審判官 塩澤 如正
- 分類
- P18 .121-Z (B23Q) / P18 .56 -Z (B23Q) / P18 .575-Z (B23Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021- 31853「スピンドル冷却装置、及びスピンドル冷却方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 9月13日出願公開、特開2022-133043〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年3月1日にされた特許出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 6年 7月17日付け:拒絶の理由の通知
同年 9月18日 :意見書、手続補正書の提出
同年12月 6日付け:拒絶をすべき旨の査定
(拒絶査定、以下「原査定」という。)
令和 7年 2月25日 :本件審判(拒絶査定不服審判)の請求
本件審判の請求と同時:手続補正書の提出
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年2月25日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正がされた。(下線は、補正箇所である。)
「 【請求項1】
スピンドルの外径よりも大きく形成された内周面を有し、前記スピンドルが挿通される胴部貫通孔を有する胴部と、
前記胴部の軸方向の両端側に形成され、前記スピンドルと前記内周面との間を全周にわたって所定間隔に保持し、前記スピンドルの外周面と前記胴部との間を軸方向の両端側で封止する封止手段と、
前記スピンドルと前記内周面との間に形成された包囲空間に冷却液を供給する供給手段と、
前記包囲空間の冷却液を外部に排出する排出手段と、
前記スピンドルに取り付けられた加工工具による加工箇所に、前記排出手段から排出された冷却液を供給する加工液供給部を取り付ける供給部取付手段と、
を具備し、
前記胴部は、外周面に形成された前記冷却液を冷却する冷却フィンを備え、
たことを特徴とするスピンドル冷却装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1及び6
本件補正前の(すなわち、令和6年9月18日提出の手続補正書により補正がされた)特許請求の範囲の請求項1及び6の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】
スピンドルの外径よりも大きく形成された内周面を有し、前記スピンドルが挿通される胴部貫通孔を有する胴部と、
前記胴部の軸方向の両端側に形成され、前記スピンドルと前記内周面との間を全周にわたって所定間隔に保持し、前記スピンドルの外周面と前記胴部との間を軸方向の両端側で封止する封止手段と、
前記スピンドルと前記内周面との間に形成された包囲空間に冷却液を供給する供給手段と、
前記包囲空間の冷却液を外部に排出する排出手段と、
前記スピンドルに取り付けられた加工工具による加工箇所に、前記排出手段から排出された冷却液を供給する加工液供給部を取り付ける供給部取付手段と、
を具備し、
前記胴部は、前記冷却液を冷却する冷却部を備え、
たことを特徴とするスピンドル冷却装置。」
「 【請求項6】
前記胴部の外周面に形成された冷却フィンと、
を備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1の請求項に記載のスピンドル冷却装置。」
2 本件補正の適否(補正の目的要件)
本件補正のうち請求項1に係る発明に対する補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「胴部」に備えられた「前記冷却液を冷却する冷却部」が、本件補正前の請求項6に係る発明の「胴部の外周面に形成された」「冷却フィン」であることを具体的に限定するものであって、補正前の請求項1に係る発明と補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
3 本件補正の適否(独立特許要件)
上記2のとおり、本件補正のうち請求項1に係る発明に対する補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とすることから、当該補正が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、すなわち、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下、検討する。
(1)検討する特許の要件
特許法第29条第2項(進歩性)
・引用する文献(いずれも、原査定の拒絶の理由で引用された文献)
ア 引用文献1
特開2020-28953号公報
イ 引用文献3
中国特許出願公開第107378616号明細書
(公開日:2017年11月24日)
ウ 引用文献4
特開2006-289594号公報
(2)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
(3)引用文献1に記載された発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、次の記載がある。(下線は、当審で付した。以下同様。)
「【0022】
[加工部]
図2から図6に示すように、加工部20は、モータ21と、Z軸方向に延出するスピンドル22と、連結部23と、被加工材Cを切削するための先端工具であるミリングバー24と、ジャケット25とを備える。連結部23は、モータ21と移動機構30とを連結する部材である(図3)。連結部23の後部は、移動機構30によって支持される。
【0023】
モータ21はブラシレスモータであり、ケーシング211と、出力軸212と、ロータ213と、ステータ214とを含む(図5及び図6)。モータ21は、スピンドル22を回転駆動する機能を備える。また、モータ21は、図示せぬ制御部と電気的に接続され、制御される。ケーシング211は、本発明における第1筐体の一例である。
【0024】
図5及び図6に示すように、ケーシング211はZ軸方向に延出する略中空円筒形状の部材であり、モータ21の外殻をなす。ケーシング211の上部と下部には、それぞれ、軸受215及び軸受216が設けられる。また、ケーシング211の上部外周面には、円環状のパッキン217が取付けられる。パッキン217は、エラストマなどの弾性体で構成される。」
「【0028】
スピンドル22は、略円柱形状の部材であり、加工空間10aに露出される(図3)。スピンドル22の下端部にはコレット22Aが設けられ、切削加工用のミリングバー24を着脱可能に保持する。
【0029】
ジャケット25は、本体部251と、給水部254A、254Bとを備える(図5及び図6)。本体部251は、Z軸方向に延びる軸を持つ略円筒形状の部材である。ジャケット25は、本発明における第2筐体の一例である。
【0030】
本体部251は、ステンレス製であり、ケーシング211を覆うように固定される(図6)。なお、本体部251を樹脂製としても良い。本体部251は少なくとも一部分において、ケーシング211の外径より大きな内径を有しており、ケーシング211の下方から被せるように同軸に設置され、固定される。図5(b)に示すように、本体部251とケーシング211との間には、上端部から下端部にかけてクーラントが流通するための流路20Aが形成される。流路20Aは、Z軸方向視で略円環形状に形成される。流路20Aは、軸受216及びステータ214の近傍に位置する。詳細には、図5(b)に示すように流路20Aは、軸受216及びステータ214の径方向外方に位置している。
【0031】
図5(b)に示すように、本体部251の上端部は、ケーシング211の外周部と当接する。また、本体部251の上端部の内周は、全周に亘ってパッキン217と当接する。本体部251の下端部はパッキン253を備える。パッキン253は、円環状に形成されたエラストマなどの弾性体からなり、全周に亘ってケーシング211の下端部と当接する。ケーシング211及び本体部251との当接部分は、パッキン217及びパッキン253によって止水される。換言すれば、本体部251は、その上部及び下部において、ケーシング211と水密に当接する。
【0032】
本体部251の下面には、本体部251と一体的に形成されたクーラントノズル252が、4つ設けられる(図6(a))。クーラントノズル252は、スピンドル22を中心に、円周方向に90度毎に配置される。クーラントノズル252には、流路20Aとジャケット25の外部とを連通する開口252aが形成される。クーラントノズル252は、開口252aを介して、クーラントを被加工材Cまたはミリングバー24に向けて射出する機能を備える。
【0033】
給水部254A、254Bは、本体部251の上部に設置される。給水部254A、254Bは、中空の管状に形成され、流路20Aと連通する。給水部254A、254Bは、図示せぬ流路を介して供給部60と連通し、クーラントの供給を受けることができる。」
「【0037】
さらにクーラントは、ポンプ部62によって加工部20に供給される。詳細には、クーラントは、図5(b)中の塗り潰しの矢印に示すように、給水部254A、254Bから流路20Aを略Z軸方向に流れ、クーラントノズル252から射出される。
【0038】
流路20Aを流れる際に、クーラントはモータ21を冷却する。流路20Aがケーシング211上にあるため、クーラントがケーシング211に接触し、モータ21に発生した熱は、ケーシング211を介してクーラントに伝熱する。このようにして、モータ21に発生した熱は除去される。また、モータ21の主な発熱部位として、軸受216やコイルを有するステータ214などが挙げられるが、流路20Aは、軸受216及びステータ214の近傍に位置する。詳細には、図5(b)に示すように流路20Aは、軸受216及びステータ214の径方向外方に位置している。そのため、クーラントは、軸受216及びステータ214に発生した熱を特に効率よく除去することができる。
【0039】
クーラントノズル252は、クーラントを加工部位に向けて射出し、被加工材C及びミリングバー24を冷却する。クーラントが被加工材C及びミリングバー24を冷却することによって、加工部位の損傷や焼き付き、ミリングバー24の劣化等を防止する。冷却を終えたクーラントは、開口部10cに回収され、その後再びタンク50に貯留される。」
「
[図:0001434969000001.jpg]
[図:0001434969000002.jpg]
」
イ 引用文献1に記載されているといえる事項
上記アから、引用文献1には、次の事項が記載されているといえる。
(ア)引用文献1の段落【0023】から、モータ21が有するスピンドル22を回転駆動する機能を発揮することで、スピンドルとしての機能を果たす装置を構成しているものといえるから、引用文献1には、モータ21とスピンドル22からなるスピンドル装置(以下「スピンドル装置」という。)が開示されているものといえる。
(イ)引用文献1の段落【0029】~【0030】及び【0038】の記載から、ジャケット25の本体部251によりクーラントが流通するための流路20Aが形成され、流路20Aをクーラントが流れることでモータ21が冷却されるものといえるから、上記(ア)も考慮すれば、引用文献1には、スピンドル装置を冷却するためのジャケット25についての発明が開示されているものといえる。
(ウ)引用文献1の段落【0029】~【0032】の記載から、上記(イ)のジャケット25は、本体部251、本体部251に備えられたパッキン253、給水部254A及び254B、並びに、本体部251に設けられたクーラントノズル252を備えるものといえる。
(エ)引用文献1の段落【0030】における、本体部251は少なくとも一部分において、モータ21のケーシング211の外径より大きな内径を有しており、ケーシング211の下方から被せるように同軸に設置されるとの記載及び上記(ア)を考慮すると、引用文献1の図5(b)には、上記(ウ)の本体部251は、スピンドル装置の外径より大きな内径からなる内周面を有し、スピンドル装置が挿通される貫通孔を有することが開示されているものといえる。また、引用文献1の段落【0030】から、本体部251はステンレス製であるものといえる。
(オ)引用文献1の段落【0029】、【0031】及び図5(b)の記載、並びに、上記(ア)から、上記(ウ)のパッキン253は、本体部251が持つZ軸方向に延びる軸の方向の下端部に備えられ、スピンドル装置の外周面及び本体部251との間の軸の方向の下端の当接部分を止水するものといえる。また、引用文献1の段落【0030】の「本体部251とケーシング211との間には、・・・クーラントが流通するための流路20Aが形成される。流路20Aは、Z軸方向視で略円環形状に形成される。」との記載、段落【0031】の「パッキン253は、円環状に形成され・・・全周に亘ってケーシング211の下端部と当接する」との記載及び図5(b)の記載、上記(ア)、並びに、円環形状とは、円の全周にわたって所定間隔を有する形状であることから、パッキン253は、ケーシング211との当接により、スピンドル装置と、内周面との間を全周にわたって所定間隔に保持するものといえる。
(カ)引用文献1の段落【0023】~【0024】、【0031】及び図5(b)の記載、並びに、上記(ア)から、スピンドル装置の上部外周面には、パッキン217が取り付けられ、パッキン217は、本体部251が持つZ軸方向に延びる軸の方向の上端部の内周と全周に亘って当接し、スピンドル装置の外周面及び本体部251との間の軸の方向の上端の当接部分を止水するものといえる。また、上記(オ)のパッキン253と同様に、パッキン217は、本体部251との当接により、スピンドル装置と、内周面との間を全周にわたって所定間隔に保持するものといえる。
(キ)引用文献1の段落【0030】及び図5(b)の記載、並びに、上記(ア)、(エ)から、スピンドル装置と本体部251の内周面との間に流路20Aが形成されることが開示されているものといえる。また、段落【0037】の「クーラントは、図5(b)中の塗り潰しの矢印に示すように、給水部254A、254Bから流路20Aを略Z軸方向に流れ、クーラントノズル252から射出される。」との記載及び図5(b)より、流路20Aは給水部254A、254B及びクーラントノズル252のそれぞれとの接続部分を除き包囲された空間であるものといえる。また、引用文献1の段落【0029】~【0030】、【0033】、【0037】の記載から、上記(ウ)の給水部254A及び254Bは、流路20Aと連通し、クーラントの供給を受けること、すなわち、流路20Aにクーラントを供給することが開示されているものといえる。
(ク)引用文献1の段落【0028】及び【0037】の記載、並びに、上記(ア)から、上記(ウ)のクーラントノズル252は、流路20Aから流れてくるクーラントをモータ21とスピンドル22からなるスピンドル装置に着脱可能に保持されたミリングバー24による加工部位に向けて射出することが開示されているものといえる。また、図5(b)から、クーラントノズル252は、流路20Aと接続しており、その接続位置は、流路20Aの外部といえる。
ウ 引用文献1に記載された発明
上記ア、イから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「 モータ21とスピンドル22からなるスピンドル装置の外径より大きな内径からなる内周面を有し、前記スピンドル装置が挿通される貫通孔を有するステンレス製の本体部251と、
前記本体部251が持つZ軸方向に延びる軸の方向の下端部に備えられ、前記スピンドル装置と、前記内周面との間を全周にわたって所定間隔に保持し、前記スピンドル装置の外周面及び前記本体部251との間の軸の方向の下端の当接部分を止水するパッキン253と、
前記スピンドル装置と前記内周面との間に形成され、給水部254A、254B及びクーラントノズル252のそれぞれとの接続部分を除き包囲された空間である流路20Aにクーラントを供給する給水部254A及び254Bと、
前記流路20Aから流れてくるクーラントを流路20Aの外部であり、前記スピンドル装置に着脱可能に保持されたミリングバー24による加工部位に向けて射出するクーラントノズル252と、
を具備する、
前記スピンドル装置を冷却するためのジャケット25であって、
前記スピンドル装置の上部外周面にはパッキン217が取り付けられ、パッキン217は、本体部251が持つZ軸方向に延びる軸の方向の上端部の内周と全周に亘って当接し、前記スピンドル装置と、前記内周面との間を全周にわたって所定間隔に保持し、前記スピンドル装置の外周面及び前記本体部251との間の軸の方向の上端の当接部分を止水するジャケット25。」
(4)引用文献3に記載された技術的事項の認定
ア 引用文献3に記載された事項
引用文献3には、次の記載がある(括弧内に当審での翻訳文を付記する。)。
「
[図:0001434969000003.jpg]
」
(図1に示すように、本発明は、高効率冷却・低騒音彫刻機の構造概略図を提供する。図2は、本発明の彫刻機における冷却管スリーブの構造概略図である。図示の高効率冷却・低騒音彫刻機は、ベッド本体10、ガントリーフレーム20、駆動装置30、主軸装置40を備える。ベッド本体10には、ベッド本体10の両端を横断するガントリーフレーム20が設置されている。ガントリーフレーム20には駆動装置30が設置され、駆動装置30の下方には横梁60と主軸装置40が設置されている。主軸装置40の外側には冷却管スリーブ41が設置され、冷却管スリーブ41の上方には給水口42と排水口43が設けられている。冷却管スリーブ41は中空状の二重構造冷却管スリーブ41であり、冷却内層44と冷却外層45を含む。冷却内層44の入口は給水口42と連通しており、冷却内層44の出口は冷却管スリーブ41の内部底面の上方に設置されている。冷却内層44内には下向きに傾斜した螺旋状ディスクプレート46が設置され、螺旋状ディスクプレート46は冷却内層44の側壁に固定接続され、冷却外層45の内壁にはハニカム孔状の消音壁47が設けられ、消音壁47は冷却外層45の内壁に固定接続されている。冷却管スリーブ41は着脱可能な固定部品50に固定され、冷却管スリーブ41と横梁60は固定部品50を介して固定接続されている。)
「
[図:0001434969000004.jpg]
」
(主軸装置40は少なくとも2つ設置され、彫刻要求を満たし、同時彫刻が可能で時間を節約し効率を向上させる。主軸装置40が彫刻作業を行う際、大量の熱が発生し、機体共振を引き起こして騒音を発生させる。同時に回転速度が上がるとトルクが低下し、長時間稼働するとステップロスが発生しやすい。主軸装置40の寿命を延ばすため、熱を速やかに放散する必要がある。冷水は給水口42から冷却内層44に流入し、冷却内層44内の冷水は螺旋状ディスクプレート46に沿って流れ、螺旋状ディスクプレート46は導流の役割を果たし、冷却内層44の出口から冷却管スリーブ41の底部へ流出する。水量が増加するにつれ、冷水は徐々に冷却外層45を満たし、最終的に出水口43から冷却管スリーブ41を流出する。高温の水は先行して流出するため、流出した水を回収または循環利用することで、浪費を削減し、環境保護、汚染低減、コスト削減を実現する。冷却内層44は主軸装置40の外周に密着しているため、主軸装置40で発生した熱は速やかに冷却内層44に伝導され、冷却内層44内の冷水が熱を吸収して熱交換を行う。伝熱効率をさらに高めるため、冷却内層44の内表面には高分子熱伝導材料が塗布され、冷却外層45の外壁には放熱フィン48が設置されている。螺旋状ディスク46の存在により、冷却内層44内の冷水はS字状の渦巻運動軌跡を描き、軌道の勾配が緩和されることで水流速度が低下。これにより主軸装置40と冷水の接触時間が増加し、主軸装置40の伝熱時間が延長されることで水温の熱交換効率が向上する。冷却管スリーブ41は中空構造であり、主軸装置40の中間部を完全に包み込む。冷水は上から下へ冷却内層44の螺旋状ディスクプレート46に沿って流れ、水温が徐々に上昇する。温度上昇した水は冷却内層44の出口から冷却外層45へ流れ、水量増加に伴い高温水が最終的に排水口43から冷却管スリーブ41外へ排出される。これにより冷却内層44の水温は上から下へ、冷却外層45の水温は下から上へと段階的に上昇し、熱交換効果をさらに向上させる。また主軸装置40は大量の熱を発生するため、水冷主軸の他に空冷主軸も使用可能である。冷却管套41の冷却内層44に窒素・水素などの冷却ガスを注入することで、亜臨界循環条件下における熱源温度過昇によるシステム性能低下を回避できる。さらに流体が超臨界条件下で示す特殊な物理特性により、流動性と熱交換において極めて大きな優位性を発揮する。冷却ガスは熱伝達により高温ガスへと昇温され、最終的に出水口43から冷却管スリーブ41を流出する。ここで流出ガスを回収再利用することも可能であり、冷気による冷却を採用することで冷却管スリーブ41の閉塞を防止できる;冷却外層45の内壁にはハニカム孔状の消音壁47が設置され、騒音を低減する。さらに横梁60には配重ブロック61が設置され、重量を増すことで固有振動数を低下させ、共振を解消し騒音をさらに低減する。好ましい実施形態として、ハニカム状の消音壁47は優れた消音効果を持ち、騒音低減効果が高い。本方法は環境保護と騒音低減を実現するだけでなく、使用寿命を大幅に延長する。)
「図2
[図:0001434969000005.jpg]
」
イ 引用文献3に記載されているといえる事項
上記アから、引用文献3には、次の事項が記載されているといえる。
(ア)引用文献3の、段落[0012]、[0014]の記載、及び、図2の図示内容から、引用文献2には、高効率冷却・低騒音彫刻機に備えられる主軸装置40の外側に設置される冷却管スリーブ41についての技術的事項が記載されているといえる。
(イ)引用文献3の、段落[0012]、[0014]の記載、及び、図2の図示内容から、上記(ア)の冷却管スリーブ41は、主軸装置の外側に設置される冷却内層44と冷却外層45を含み、冷水は冷却管スリーブ41の冷却内層44に流入し、冷却外層45から冷却管スリーブ41を流出し、主軸装置40で発生した熱は速やかに冷却層内44に伝導され、冷却内層44内の冷水が熱を吸収して熱交換を行うものであり、伝熱効率をさらに高めるため、冷却外層45の外壁に放熱フィンが設置されていることが開示されているといえる。
ウ 引用文献3に記載された技術的事項
上記ア、イから、引用文献3には、冷却管スリーブ41に関する、次の技術的事項(以下「引用文献3記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「冷却管スリーブ41において、
主軸装置40の外側に設置される冷却内層44と冷却外層45を含み、冷水は冷却管スリーブ41の冷却内層44に流入し、冷却外層45から冷却管スリーブ41を流出し、主軸装置40で発生した熱は速やかに冷却層内44に伝導され、冷却内層44内の冷水が熱を吸収して熱交換を行い、伝熱効率をさらに高めるため、冷却外層45の外壁に放熱フィンが設置されていること。」
(5)引用文献4に記載された技術的事項の認定
ア 引用文献4に記載された事項
引用文献4には、次の記載がある。
「【0002】
従来、この種のスピンドル装置としては、例えば図3及び図4に示すものが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
図3に示すように、特許文献1に記載のスピンドル装置100は、主に、主軸ヘッド本体102と、主軸ベアリングケース103と、フロントキャップ104と、主軸105とから構成される主軸ヘッド101と、主軸ヘッド101にクーラントを供給するポンプユニット106とを備え、主軸ヘッド101には、フロントキャップ104に形成される環状供給通路104aにクーラントを供給するクーラント供給通路101aが形成される。また、フロントキャップ104には、環状供給通路104aに連通するノズル取付穴104bが形成され、このノズル取付穴104bにはクーラントノズル104cが取り付けられる。
【0004】
このスピンドル装置100では、ポンプユニット106より供給されたクーラントは、主軸ヘッド101内のクーラント供給通路101aに供給され、このクーラント供給通路101aを経て、フロントキャップ104内の環状供給通路104aに供給されて、この環状供給通路104aに接続されたクーラントノズル104cからワークに向けて射出される。」
「【0007】
【特許文献1】特開平9-103933号公報(第3-4頁、第3図)
【特許文献2】特開2002-263982号公報(第4-5頁、第3図)
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載のスピンドル装置100では、フロントキャップ104の端面から切削液を射出するため、切削液がフロントキャップ104の端面に沿って流れ、フロントキャップ104と主軸105との隙間から主軸ヘッド101内に浸入し易く、軸受が潤滑不良になる。また、フロントキャップ104と主軸105との隙間が外部に開口しているため、切削液の他に、加工の際に発生する切削屑等の異物が主軸ヘッド101内に浸入し易い。
【0009】
また、上記特許文献2に記載のスピンドル装置200では、蓋体203の先端面にスカート部209が設けられるため、遮蔽板(フリンガ)205の外径がハウジング201及び蓋体203の外径より小さく制限される。これにより、蓋体203の先端面に隙間が開口することになるので、切削液のしぶき等がスピンドル装置200内に浸入し易くなると共に、遮蔽板205の直径が小さいため、遮蔽板205の振り切り効果が低下してしまう。
【0010】
本発明はこのような不都合を解消するためになされたものであり、その目的は、装置内への切削液や切削屑等の異物の浸入を確実に防止できるスピンドル装置を提供することにある。」
「【0015】
図1に示すように、スピンドル装置10は、ハウジング11と、ハウジング11に複数の軸受17を介して相対回転可能に支持される回転軸20と、ハウジング11を固定するブラケット2が一体に形成される機台1と、を備える。ハウジング11は、軸方向に順に、フロントカバー12と、前蓋13と、外筒14と、ハウジング本体16と、を有し、ハウジング本体16をブラケット2に嵌合し、ボルト4で締結することでブラケット2に固定される。軸受17は、複数の間座18及びナット19を介してそれぞれ配置されており、外輪を外筒14に、内輪を回転軸20にそれぞれ嵌合させている。なお、軸受17としては、アンギュラ玉軸受を使用しているが、種々の軸受を使用してもよい。また、軸受17には、転がり軸受を使用することが好ましく、その種類については任意である。さらに、軸受17が配置される場所には、任意の組み合わせが適用できる。」
「【0018】
ドローバ22の先端には、ボール24aを保持して工具ホルダ21のプルスタッド21aをクランプするコレット24がねじ締結されている。また、また、コレット24及びドローバ22の内部には、切削液やエアが供給される貫通孔29a,29bがそれぞれ形成される。なお、本実施形態では、ドローバ22の先端にコレット24をネジ締結する形式のドローバを使用するが、これに限定されず、コレットとドローバを一体化して、後端にドローバナットをねじ締結する形式のドローバを使用してもよい。」
「【0021】
そして、図1及び図2に示すように、前蓋13及び外筒14には、切削液供給ポンプ7を接続する切削液供給路35,36がそれぞれ形成され、前蓋13の外周部には、切削液供給路36と連通する切削液の吐出口37が形成される。また、切削液供給通路35,36は、前蓋13と外筒14との接合面に配置されるOリング38により水密に接続される。さらに、フロントカバー12、前蓋13及び外筒14の接合面もOリング39a,39bによりそれぞれ水密にシールされている。なお、吐出口37は、ハウジング11の外周部に形成されていればよく、その形成位置、個数は任意である。
【0022】
また、吐出口37には、工具ホルダ21に固定される工具6の先端に切削液を射出するホース40が接続されており、ホース40は、基部40aを吐出口37に螺着することによって前蓋13に固定される。なお、ホース40としては、所望の位置に切削液を射出することができるホースであればよく、種々のホースを任意に使用できるが、長さ及び角度を可変自在なフレキシブルホースを使用した方がより好ましい。また、図中40bはホース40の先端に接続されるノズルである。」
「【図2】
[図:0001434969000006.jpg]
」
イ 引用文献4に記載されているといえる事項
上記アから、引用文献4には、次の事項が記載されているといえる。
(ア)引用文献4の、段落【0015】、【0018】、【0021】~【0022】の記載、及び、図2の図示内容から、引用文献4には、工具ホルダ21に固定される工具6の先端に切削液を射出するスピンドル装置10についての技術的事項が記載されているといえる。
(イ)引用文献4の、段落【0021】~【0022】の記載、及び、図2の図示内容から、引用文献4には、上記(ア)のスピンドル装置10において、スピンドル装置10の工具ホルダ21に固定される工具6の先端に切削液を射出するホース40が、吐出口37に螺着することによって固定されることが開示されている。
ウ 引用文献4に記載された技術的事項
上記ア、イから、引用文献4には、スピンドル装置10に関する、次の技術的事項(以下「引用文献4記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「スピンドル装置10において、
スピンドル装置10の工具ホルダ21に固定される工具6の先端に切削液を射出するホース40が、吐出口37に螺着することによって固定されること。」
(6)本件補正発明と引用発明1との対比
ア 本件補正発明と引用発明1とを対比すると、以下のことがいえる。
(ア)引用発明1における「モータ21とスピンドル22からなるスピンドル装置」は、本件補正発明における「スピンドル」に相当し、以下同様に、「スピンドル装置の外径より大きな内径からなる内周面」は「スピンドルの外径よりも大きく形成された内周面」に、「前記スピンドル装置が挿通される貫通孔」は「前記スピンドルが挿通される胴部貫通孔」に、「本体部251」は「胴部」にそれぞれ相当するから、両者は、「スピンドルの外径よりも大きく形成された内周面を有し、前記スピンドルが挿通される胴部貫通孔を有する胴部」を具備する点で一致する。
(イ)引用発明1における「前記スピンドル装置を冷却するためのジャケット25」は、本件補正発明における「スピンドル冷却装置」に相当する。
(ウ)引用発明1における「前記本体部251が持つZ軸方向に延びる軸の方向」は、本件補正発明における「前記胴部の軸方向」に相当し、以下同様に、「前記スピンドル装置と、前記内周面との間を全周にわたって所定間隔に保持」することは「前記スピンドルと前記内周面との間を全周にわたって所定間隔に保持」することに、「前記スピンドル装置の外周面」は「前記スピンドルの外周面」に、「軸の方向」は「軸方向」に、「パッキン253」は「封止手段」にそれぞれ相当する。また、引用発明1における「下端部に備えられ」ることと本件補正発明における「両端側に形成され」ることとは、「下端側に形成され」る点において一致する。また、引用発明1における「下端の当接部分を止水する」ことと本件補正発明における「両端側で封止する」こととは、「下端側で封止する」点において一致する。
したがって、両者は、「前記胴部の軸方向の下端側に形成され、前記スピンドルと前記内周面との間を全周にわたって所定間隔に保持し、前記スピンドルの外周面と前記胴部との間を軸方向の下端側で封止する封止手段」を具備する点で一致する。
(エ)引用発明1における「給水部254A、254B及びクーラントノズル252のそれぞれとの接続部分を除き包囲された空間である流路20A」は、本件補正発明における「包囲空間」に相当し、以下同様に、「クーラント」は「冷却液」に、「給水部254A及び254B」は「供給手段」にそれぞれ相当するから、両者は、「前記スピンドルと前記内周面との間に形成された包囲空間に冷却液を供給する供給手段」を具備する点で一致する。
(オ)引用発明1の「前記流路20Aから流れてくるクーラント」は、前記流路20Aを冷却するクーラントであるものといえるから、引用発明1の「前記流路20Aから流れてくるクーラント」は本件補正発明の「前記包囲空間の冷却液」に相当する。以下同様に、「流路20Aの外部」は「外部」に、「前記スピンドル装置に着脱可能に保持されたミリングバー24」は「前記スピンドルに取り付けられた加工工具」に、「加工部位」は「加工箇所」にそれぞれ相当する。
したがって、引用発明1の「前記流路20Aから流れてくるクーラントを流路20Aの外部であり、スピンドル装置に着脱可能に保持されたミリングバー24による加工部位に向けて射出するクーラントノズル252」は、本件補正発明の「前記包囲空間の冷却液を外部に排出する排出手段」に相当し、さらに、「前記スピンドルに取り付けられた加工工具による加工箇所に、前記排出手段から排出された冷却液を供給する加工液供給部」にも相当する。
イ 一致点
上記アから、本件補正発明と引用発明1とは、次の点で一致する。
「スピンドルの外径よりも大きく形成された内周面を有し、前記スピンドルが挿通される胴部貫通孔を有する胴部と、
前記胴部の軸方向の下端側に形成され、前記スピンドルと前記内周面との間を全周にわたって所定間隔に保持し、前記スピンドルの外周面と前記胴部との間を軸方向の下端側で封止する封止手段と、
前記スピンドルと前記内周面との間に形成された包囲空間に冷却液を供給する供給手段と、
前記包囲空間の冷却液を外部に排出する排出手段と、
前記スピンドルに取り付けられた加工工具による加工箇所に、前記排出手段から排出された冷却液を供給する加工液供給部
を具備する、
スピンドル冷却装置。」
ウ 相違点
他方、本件補正発明と引用発明1とは、次の点で相違する。
(ア)相違点1
封止手段に関し、
本件補正発明においては、スピンドル冷却装置の具備する封止手段の形成が「軸方向の両端側」になされるのに対し、
引用発明1においては、ジャケット25の具備するパッキン253の形成は「軸の方向の下端部」のみになされ、上端側の封止は、スピンドル装置に取り付けられたパッキン217によりなされる点。
(イ)相違点2
スピンドル冷却装置に関し、
本件補正発明においては、「加工液供給部を取り付ける供給部取付手段」を具備するのに対し、
引用発明1においては、クーラントノズル252を具備するものの、それを取り付けるための供給部取付手段を具備するか明記されていない点。
(ウ)相違点3
胴部に関し、
本件補正発明においては、胴部の「外周面に形成された前記冷却液を冷却する冷却フィンを備え」るのに対し、
引用発明1においては、本体部251の外周面に冷却液を冷却する冷却フィンを備えていない点。
(7)相違点についての判断
ア 上記相違点1について
引用文献1の段落【0031】の「ケーシング211及び本体部251との当接部分は、パッキン217及びパッキン253によって止水される。換言すれば、本体部251は、その上部及び下部において、ケーシング211と水密に当接する。」との記載からも読み取れるように、引用発明1におけるパッキン217とパッキン253とはいずれもケーシング211及び本体部251との当接部分を止水する機能を果たすものである。そして、止水する機能を果たすにあたって、そのパッキンをケーシング211側に設けるか本体部251側のいずれに設けるかは当業者が適宜設計すべきものであり、引用発明1において、パッキン217を、パッキン253と同様にジャケット25に具備するように構成することで、上記相違点1に係る本件補正発明の構成を想到することは当業者が容易になし得たことである。
イ 上記相違点2について
(ア)引用文献4に記載された技術的事項の整理
引用文献4には、上記(5)ウに示した、次の引用文献4記載の技術的事項が記載されている(再掲)。
「スピンドル装置10において、
スピンドル装置10の工具ホルダ21に固定される工具6の先端に切削液を射出するホース40が、吐出口37に螺着することによって固定されること。」
ここで、引用文献4記載の技術的事項の「スピンドル装置10の工具ホルダ21に固定される工具6の先端」について、スピンドルに装着される工具は回転による加工を行うものであり、工具6の先端により加工がなされることが技術常識であることから、引用文献4記載の技術的事項の「スピンドル装置10の工具ホルダ21に固定される工具6の先端」に「液を射出する」ことは本件補正発明の「スピンドルに取り付けられた加工工具による加工箇所」に「液を供給する」ことに相当する。
また、引用文献4記載の技術的事項の「切削液を射出するホース40」は、射出により液を供給しているから、本件補正発明の「液を供給する加工液供給部」に相当する。
また、螺着とは、螺子を使って部品同士を固定することを意味する用語であるから、引用文献4記載の技術的事項において、吐出口37には螺子穴などの螺着するための手段が設けられることは明らかであり、当該「螺着するための手段」は、本件補正発明の「供給部取付手段」に相当する。
(イ)引用発明1に引用文献4記載の技術的事項を適用することの容易想到性について
引用発明1と引用文献4記載の技術的事項とは、いずれも、スピンドル装置による加工箇所に液体を供給する点で技術分野が共通している。
また、引用発明1のクーラントノズル252と、引用文献4記載の技術的事項におけるホース40とは、いずれも、加工箇所に液体を供給する点で機能・作用が共通している。
してみると、引用発明1のクーラントノズル252を具備するに際し、引用文献4記載の技術的事項におけるホース40と同様に、螺着により固定する構成を採用し、そのために引用発明1において螺着するための手段を設けることで、上記相違点2に係る本件補正発明の構成を想到することは当業者であれば容易になし得たことである。
ウ 上記相違点3について
(ア)引用文献3に記載された技術的事項の整理
引用文献3には、上記(4)ウに示した、次の引用文献3記載の技術的事項が記載されている(再掲)。
「冷却管スリーブ41において、
主軸装置40が挿通される冷却内層44と冷却外層45を含み、冷水は冷却管スリーブ41の冷却内層44に流入し、冷却外層45から冷却管スリーブ41を流出し、主軸装置40で発生した熱は速やかに冷却層内44に伝導され、冷却内層44内の冷水が熱を吸収して熱交換を行い、伝熱効率をさらに高めるため、冷却外層45の外壁に放熱フィンが設置されていること。」
ここで、引用文献3記載の技術的事項における冷却管スリーブ41は、主軸装置40で発生した熱を冷却内層44に伝導することで主軸装置40を冷却しているものといえる。また、主軸装置40は、加工や切削を行うために回転駆動するものであることもいえる。してみると、引用文献3記載の技術的事項における冷却管スリーブ41は、本件補正発明のスピンドル冷却装置と、回転駆動する機能を有する装置を冷却する装置である点で共通する。
また、引用文献3記載の技術的事項における冷却管スリーブ41の冷却内層44及び冷却外層45は、当該冷却内層44及び冷却外層45により形成される空間に冷水が供給されるから、本件補正発明の胴部と、冷却液が供給される包囲空間を形成する点で共通する。
また、引用文献3記載の技術的事項における冷却外層45の外壁に設置される放熱フィンは、伝熱効率をさらに高めることを目的として設置されているところ、放熱フィンにより冷却外層からの放熱が行われれば放熱フィンを有しない場合と比して冷却外層が冷却され、冷却外層が冷却されれば冷却外層内を流れる冷却水も放熱フィンを有しない場合と比して冷却され、それにより伝熱効率が高まることで主軸40の冷却効果が高まるものといえる。そうすると、引用文献3記載の技術的事項における冷却外層45の外壁に設置される放熱フィンは、外周面に形成された冷却液を冷却する冷却フィンに相当するものといえる。
(イ)引用発明1に引用文献3記載の技術的事項を適用することの容易想到性について
引用発明1と引用文献3記載の技術的事項とは、いずれも、回転する装置により発生した熱を冷却する技術である点で技術分野が関連する。
また、引用発明1のジャケット25の本体部251と、引用文献3記載の技術的事項における冷却内層及び冷却外層とは、冷却液が供給される包囲空間を形成する点で機能・作用が共通している。
また、引用発明1はクーラントによりモータ21を冷却する発明であるところ、クーラントの温度が上昇すれば伝熱効率が低下し、冷却効果が低下することが技術常識であることを考慮すれば、クーラントによる冷却効果を高めるために冷却液の温度上昇を防ぐこと、すなわち冷却液を冷却することは自明な課題であるものといえ、引用発明1は当該課題を内在するものといえる。
してみると、引用発明1において、冷却液を冷却するという課題を解決するために、引用文献3記載の技術的事項を適用することで、引用発明1のジャケット25の本体部251の外壁にクーラントを冷却する冷却フィンを設けることで、上記相違点3に係る本件補正発明の構成を想到することは当業者であれば容易になし得たことである。
エ 審判請求書での主張について
(ア)請求人は、審判請求書において、概略、次の点を主張する。
a 引用文献1、3~4は共に、本願発明の冷却液に相当するクーラント(冷水、切削液)そのものを冷やすという課題、すなわち、スピンドルを冷却した後の冷却液が、加工工具による加工箇所を冷却する機能を発揮できるようにする、という本願発明の課題についての記載も示唆もない。
したがって、引用文献1における、放熱性の良くない材料で形成された本体部251の外周面に、消音機能が必須である引用文献3からフィンだけを取り出して適用する、という動機付けは存在しない(審判請求書9ページ)。
b 仮に、引用文献1に引用文献3、4を適用したとしても、引用文献1における放熱性の良くない本体部251の外周に、ハニカム孔状の消音室を形成し、更にその外周面にフィンを形成する構成が導かれるにすぎず、フィンによるクーラント(冷却液)そのものの冷却効果を得ることはできない(同9ページ)。
(イ)しかしながら、当審は、次のとおり、上記(ア)の主張には首肯できない。
上記(ア)aの主張について、既に上記ウ(イ)でも検討したとおり、引用発明1と引用文献3記載の技術的事項とは技術分野が関連し、機能・作用が共通し、引用発明1は、冷却液を冷却するという課題を内在するものといえ、引用発明1には、引用文献3記載の技術的事項を適用しようとする動機があるといえる。
当該主張の引用文献1における上記「本体部251」の外周面の「放熱性の良くない材料」とは、同文献の段落【0030】の「本体部251は、ステンレス製であり、ケーシング211を覆うように固定される・・・。なお、本体部251を樹脂製としても良い。」の記載に関わるものであるが、樹脂製であることは選択的な記載であり、樹脂と比して放熱性が高い素材である金属のステンレス製とすることも記載されているから、引用発明1の本体部251に、放熱性の良くない材料を積極的に採用するという内容ではない。
次に、引用文献3の段落[0014]には、「冷却内層44は主軸装置40の外周に密着しているため、主軸装置40で発生した熱は速やかに冷却内層44に伝導され、冷却内層44内の冷水が熱を吸収して熱交換を行う。伝熱効率をさらに高めるため、冷却内層44の内表面には高分子熱伝導材料が塗布され、冷却外層45の外壁には放熱フィン48が設置されている。」と記載され、主軸装置40で発生した熱を冷却内層44に伝導し、冷却内層44内の冷水が熱を吸収して熱交換を行う際の伝熱効率を高めるという課題を解決するために、冷却外層45の外壁に放熱フィン48を設置するという技術思想が開示されているが、当該効果の発生に、消音と騒音低減のために設置されるハニカム孔状の消音室47が寄与するものとは認識されない。
したがって、ハニカム孔状の消音室47が、引用文献3の高効率冷却低騒音彫刻機における、石材彫刻機運転時に発生する騒音を低下させて環境を保護するという課題を解決するために必須であったとしても、伝熱効率を高めるために必須でないことは明らかである。
そうすると、当業者であれば、引用発明1に引用文献3記載の技術的事項を適用するにあたり、引用文献3の消音室47を必須であると認識することはなく、放熱フィン48の方を適用して伝熱効率を高め、冷却液の冷却効果を得ようとすることが不自然とはいえないから、上記(ア)aの動機付けは存在するといえる。
また、上記(ア)bの主張について、このように放熱フィン48を適用した場合に、引用発明1の本体部251の外周に、ハニカム孔状の消音室を形成し、更にその外周面にフィンを形成するという上記(ア)bの構成が生じることはない。
したがって、請求人の上記(ア)の主張は採用することができない。
(8)本件補正の適否(独立特許要件)の小括
したがって、本件補正発明は、引用発明1、引用文献3記載の技術的事項、及び、引用文献4記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 本件補正についてのむすび
上記3のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。
第3 本件発明について
1 本件発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本件出願の請求項1~11に係る発明は、令和6年9月18日提出の手続補正書により補正がされた特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、上記第2[理由]1(2)に記載の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、本件発明に対する拒絶の理由は、概略、次のとおりである。
(1)理由1(特許法第29条第2項:進歩性)
本件発明は、本件出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、引用文献1に記載された発明、及び、引用文献4に記載された技術的事項に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)引用文献
ア 引用文献1
特開2020-28953号公報
イ 引用文献4
特開2006-289594号公報
(なお、引用文献1、4は、上記第2[理由]3(1)ア、ウに示した文献と同じである。)
3 引用文献1、4に記載された発明、技術的事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献のうち、引用文献1に記載された事項、引用文献1に記載された発明(引用発明1)及び引用文献4に記載された技術的事項(引用文献4記載の技術的事項)は、上記第2の[理由]3(3)及び(5)に示したとおりである。
4 対比
(1)本件発明と引用発明1とを対比すると、以下のことがいえる。
上記第2の[理由]3(6)アで示した点に加え、引用発明1の本体部251はステンレス製であり、ケーシング211との間に形成された流路20Aを流通するクーラントの熱を放出して冷却する冷却部を備えるものといえる。
したがって、両者は、「前記胴部は、前記冷却液を冷却する冷却部」を備える点で一致する。
(2)一致点
上記(1)から、本件発明と引用発明1とは、次の点で一致する。
「スピンドルの外径よりも大きく形成された内周面を有し、前記スピンドルが挿通される胴部貫通孔を有する胴部と、
前記胴部の軸方向の下端側に形成され、前記スピンドルと前記内周面との間を全周にわたって所定間隔に保持し、前記スピンドルの外周面と前記胴部との間を軸方向の下端側で封止する封止手段と、
前記スピンドルと前記内周面との間に形成された包囲空間に冷却液を供給する供給手段と、
前記包囲空間の冷却液を外部に排出する排出手段と、
前記スピンドルに取り付けられた加工工具による加工箇所に、前記排出手段から排出された冷却液を供給する加工液供給部
を具備し、
前記胴部は、前記冷却液を冷却する冷却部を備え
たスピンドル冷却装置。」
(3)相違点
他方、本件発明と引用発明1とは、次の点で相違する。
ア 相違点1A(上記第2の[理由]3(6)ウ(ア)の相違点1と同じ。)
封止手段に関し、
本件補正発明においては、スピンドル冷却装置の具備する封止手段の形成が「軸方向の両端側」になされるのに対し、
引用発明1においては、ジャケット25の具備するパッキン253の形成は「軸の方向の下端部」のみになされ、上端側の封止は、スピンドル装置に取り付けられたパッキン217によりなされる点。
イ 相違点2A(上記第2の[理由]3(6)ウ(イ)の相違点2と同じ。)
スピンドル冷却装置に関し、
本件補正発明においては、「加工液供給部を取り付ける供給部取付手段」を具備するのに対し、
引用発明1においては、クーラントノズル252を具備するものの、それを取り付けるための供給部取付手段を具備するか明記されていない点。
5 判断
上記4(3)アの相違点1A、上記4(3)イの相違点2Aは、上記第2の[理由]3(6)ウ(ア)の相違点1、上記第2の[理由]3(6)ウ(イ)の相違点2とそれぞれ同じであるから、前記第2の[理由]3(7)で示したとおり、引用発明1、及び、引用文献4記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明も、引用発明1、及び、引用文献4記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-002918