特許拒絶査定不服審判
2022-008864
切屑検出装置
- 審判番号
- 2022-008864
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-542668
- 請求日
- 2022年05月23日
- 審決日
- 2024年03月05日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】DMG森精機株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人タス・マイスター
- 審判長/審判官
- 審判長 渋谷 善弘
- 審判官 鈴木 貴雄
- 審判官 田々井 正吾
- 分類
- P18 .537-WYA(B23Q) / P18 .121-WYA(B23Q) / P18 .55 -WYA(B23Q) / P18 .575-WYA(B23Q) / P18 .56 -WYA(B23Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第53条第3項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第153条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-542668「切屑検出装置」拒絶査定不服審判事件〔2020年(令和2年)9月3日国際公開、WO2020/175308、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)2月20日(優先権主張 平成31年2月25日)を国際出願日とする国際特許出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
1 前審における手続
令和2年 8月 6日 :国内書面及び手続補正書の提出
同年 9月17日付け :拒絶理由の通知
同年10月22日 :面接審査
同年11月24日 :意見書及び手続補正書の提出
令和3年 1月25日付け :拒絶理由の通知
同年 6月 3日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 7月28日付け :最後の拒絶理由の通知
同年11月24日 :意見書及び手続補正書の提出
令和4年 2月3~16日 :電話及び電子メールでの応対
同年 2月16日付け :補正の却下の決定、及び、拒絶査定
同年 3月14日 :面接審査
同年 5月10日 :電話及び電子メールでの応対
2 当審における手続
令和4年 5月23日 :拒絶査定不服審判の請求
(審判請求書の提出)
令和5年 4月 5日付け :拒絶理由の通知
同年 6月 9日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 9月26日付け :拒絶理由の通知
同年10月11~17日:電話及び電子メールでの応対
同年11月27日 :電話での応対
同年12月 4日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 令和4年2月16日付けの補正の却下の決定の適否
1 はじめに
審判請求人は、
「補正却下の決定を取り消し、当該補正に基づいて、原査定を取り消す、本願の発明は特許すべきものとする、との審決を求める。」
ことを請求の趣旨とする拒絶査定不服審判を請求し、原査定に対する不服を申し立てたのと合わせて、令和3年11月24日に提出の手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)に対する令和4年2月16日付けの補正の却下の決定(以下「本件決定」という。)に対して、不服を申し立て(特許法第53条第3項ただし書)、そして、この審判の請求と同時に補正はされなかった。
これに対して、当審における令和5年4月5日付け拒絶理由通知書において、本件補正前と補正後のいずれの明細書等に基づいて拒絶理由の通知を行うのかを明示したところ、本審決において、その適否について、再度以下に判断する。
2 本件補正の内容
(1)本件補正により、特許請求の範囲は、以下のとおり補正された。
「 【請求項1】
工作機械によってワークを加工した際に生じる切屑を検出する切屑検出装置であって、
前記切屑を検出する対象エリアを撮影したエリア画像の少なくとも一部を、多数の切屑が堆積して折り重なった状態から個々の前記切屑の外形を構成するエッジを解析することができ背景のエッジ形状の解析が単純化されるメッシュサイズである同一の複数のメッシュ画像に分割処理するメッシュ分割部と、
前記エッジの解析と前記背景の解析とを含む解析を前記メッシュ画像に対して行い、前記メッシュ画像全体に対して1つの特徴量を算出し、前記切屑に関する切屑情報を判定するためにあらかじめ設定された判定用パラメータと前記特徴量とを用いて、前記メッシュ画像のそれぞれについて前記切屑情報を判定する切屑情報判定部と、
を有し、
前記判定用パラメータは、前記メッシュ画像と前記切屑情報とのセットからなる教師データを用いた事前学習によって得られる学習パラメータであり、
前記切屑情報判定部は、前記学習パラメータが適用された切屑判定モデルに、前記メッシュ画像を入力することにより、前記メッシュサイズで同一サイズの前記メッシュ画像のそれぞれについて前記切屑情報を出力する、切屑検出装置。」
(2)また、明細書の発明の名称は、以下のとおり補正された。
「切屑検出装置」
3 前審における本件決定の理由の概要
請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
しかし、本件補正後の請求項1には「前記メッシュ画像全体に対して1つの特徴量を算出し、」と記載されているところ、「メッシュ画像全体」との記載は、「1つのメッシュ画像全体」を示すのか、「複数のメッシュ画像全体」を示すのかが不明確である。
したがって、本件補正後の請求項1に係る発明は明確でなく、本件出願は同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないから、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、本件補正は、同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
4 当審の判断
請求項1についての本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件補正後の請求項1の「前記メッシュ画像全体に対して1つの特徴量を算出し、」との発明特定事項について、当該記載のあとに、「前記メッシュ画像のそれぞれについて前記切屑情報を判定する切屑情報判定部」及び「前記切屑情報判定部は、前記学習パラメータが適用された切屑判定モデルに、前記メッシュ画像を入力することにより、前記メッシュサイズで同一サイズの前記メッシュ画像のそれぞれについて前記切屑情報を出力する、」と記載されることからみて、本件補正後の請求項1の記載を全体としてみれば、「メッシュ画像のそれぞれ」について「1つの特徴量」が算出され、判定用パラメータとそれぞれの「1つの特徴量」とを用いてそれぞれ「切屑情報」を判定し、出力するものであると解するのが妥当である。
また、発明の詳細な説明を参酌すると、「メッシュ画像全体」との直接的な記載はないが、例えば、以下の記載:
「【0048】切屑情報判定部46は、メッシュ画像のそれぞれについて切屑情報を判定するものである。本実施形態において、切屑情報判定部46は、メッシュ分割部45によって分割処理されたメッシュ画像のそれぞれについて、判定用パラメータ記憶部32から読み出した判定用パラメータを用いて切屑情報を判定し、判定結果記憶部33に保存するようになっている。
【0049】また、本実施形態において、切屑情報判定部46は、切屑情報として、切屑の洗浄のし易さを示す「クラス」を判定するようになっている。・・・
【0052】・・・例えば、サポートベクターマシン(SVM:support vector machine)等のように、画像ではない入力データを用いる機械学習アルゴリズムを使用する場合、メッシュ画像に対してフィルタ処理等を実行し、各メッシュ画像が有する形状特徴量を算出する。そして、当該形状特徴量を学習済の切屑判定モデルに入力することにより、メッシュ画像のそれぞれについてクラスを判定してもよい。」
からみて、上記発明特定事項における特徴量は、各メッシュ画像に対してそれぞれ算出され、それぞれについて切屑情報の判定に用いられるものであるといえる。
したがって、本件補正後の請求項1における「メッシュ画像全体」との記載は、特許請求の範囲の記載、明細書の記載及び図面並びに出願時の当業者の技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である、とはいえない。
5 本件決定の適否についてのまとめ
以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る発明は、明確であって、本件出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていることから、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反することを前提として本件補正を同法第53条第1項の規定により却下した前審における令和4年2月16日付けの補正の却下の決定は、不適法なものである。
よって、当該補正の却下の決定は取り消されるべきものである。
第3 本件発明
上述のように、本件補正の却下の決定は取り消されるべきものであって、その旨を令和5年4月5日付け拒絶理由通知にて明示したうえで、本件補正後の請求項1に係る発明に基づいて、上記第1の2に示した審理を進めたところ、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、令和5年12月4日に提出の手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
工作機械によってワ-クを加工した際に生じる切屑を検出する切屑検出装置であって、
前記切屑を検出する対象エリアを撮影したエリア画像の少なくとも一部を、多数の切屑が堆積して折り重なった状態から個々の前記切屑の外形を構成するエッジを解析することができ背景のエッジ形状の解析が単純化されるメッシュサイズである同一の複数のメッシュ画像に分割処理するメッシュ分割部と、
前記エッジの解析と前記背景の解析とを含む解析を前記メッシュ画像に対して行い、前記メッシュ画像全体に対して1つの特徴量を算出し、前記切屑に関する切屑情報を判定するためにあらかじめ設定された判定用パラメ-タと前記特徴量とに基づいて、前記メッシュ画像の前記切屑情報を判定する切屑情報判定部と、
を有し、
前記判定用パラメ-タは、メッシュ画像と前記切屑情報とのセットからなる教師デ-タを用いて事前の機械学習から得られる、メッシュ画像から算出された特徴量を前記切屑情報のクラスに分類するための学習パラメ-タであり、
前記切屑情報判定部は、前記判定用パラメ-タが適用された切屑判定モデルに、メッシュ画像を入力することにより、前記メッシュサイズで同一サイズのメッシュ画像のそれぞれについて、入力されたメッシュ画像から算出された特徴量に基づいて分類されたクラスに対応した切屑情報を判定する、切屑検出装置。」
第4 拒絶査定の理由に対する当審の判断
1 原査定の理由
原査定である令和4年2月16日付け拒絶査定は、本件決定により本件補正が却下されたため、令和3年6月3日に提出の手続補正書にて補正された特許請求の範囲の請求項1~4を対象として、令和3年7月28日付け拒絶理由通知書に記載した以下の理由1~3によって、拒絶をすべきものである旨、判断したものである。
(1)理由1(新規事項)
令和3年6月3日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(2)理由2(明確性)
この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(3)理由3(進歩性)
この出願の請求項1~4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(引用文献1~5に記載された発明)に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献>
引用文献1 :特開2017-094420号公報
引用文献2 :特開2004-265252号公報
引用文献3 :特開2019-016249号公報
引用文献4 :特開2017-107455号公報
引用文献5 :特開2007-114994号公報
2 理由1(新規事項)及び理由2(明確性)に対する当審の判断
上記理由1~2は、いずれも、令和3年6月3日付け手続補正書にて補正された特許請求の範囲の請求項4における「ワークを加工した際に機内に切屑が生じる工作機械の機内を撮影する撮像手段と、洗浄液を噴射し機内を洗浄する洗浄手段と、を備え、前記撮像手段で撮影された画像を処理する画像処理装置であって、」と記載された事項に対するものであるところ、本件発明は、当該事項により発明を特定するものではないから、原査定の上記理由1~2によっては、本願を拒絶することはできない。
3 理由3(進歩性)に対する当審の判断
(1)引用文献1に記載された発明
引用文献1に記載された事項を本件発明に合わせて整理すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる(括弧内に、相当する本件発明の発明特定事項、又は、引用文献1の参照箇所を示す。)。
「工作機械1(工作機械)によってワークを加工した際に生じる切粉(切屑)を検出する制御装置20(切屑検出装置)であって(段落【0016】~【0017】、図1)、
切粉(切屑)を検出するカバー8の内部の各位置(対象エリア)をカメラ等の検出装置14により撮影した加工後のデータ(エリア画像)を加工後記憶部23に記憶する検出制御部21(段落【0018】~【0019】)と、
加工後記憶部23に記憶された加工後のカバー内部の形状を示すデータと、加工開始前のカバー内部の形状を示すデータ又はカバー内部の輝度や色域を示すテンプレート画像とを比較して、予め設定した形状誤差を超えて増加した形状を切粉の付着・堆積と判定し、又は予め設定された閾値以上の輝度差の箇所を洗浄の必要な箇所と判定し、カバー8内部のどの位置に、どのくらいの範囲で、どのくらいの厚みで切粉が付着、堆積しているか(切屑情報)を算出してメモリ上に記録する切粉状態判定部24(段落【0020】、【0027】)と、
を有する切屑検出装置。」
(2)引用文献2に記載された技術的事項
引用文献2に記載された事項を本件発明に合わせて整理すると、引用文献2には次の技術的事項(以下「引用文献2記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる(括弧内に引用文献2の参照箇所を示す。)。
「移動する対象を追跡するための画像処理装置であって(段落【0001】)、
対象Xを撮像手段1で撮像したT-ΔT2、T-ΔT1、T、T+ΔT1及びT+ΔT2の各時刻における輪郭画像E(T)の生成後、輪郭画像の論理積から、対象Xの輪郭と背景Yの輪郭とを抽出する(段落【0016】~【0019】)ことで、移動輪郭画像Fを抽出する(段落【0020】)移動輪郭抽出手段5(図2)と、
抽出した移動輪郭を対象Xの外形を構成する輪郭の結合が精度良く行われるブロックサイズで複数のブロックに分割処理するブロック化手段622と(段落【0029】~【0031】、図7)、
輪郭の解析を各ブロックに対して行い、各ブロック内に存在する移動輪郭をカウントしてカウント値を算出し、しきい値633とカウント値とに基づいて、各ブロックが移動ブロックか非移動ブロックかを判定する移動ブロック判定手段63と(段落【0022】~【0024】、図1)、
を有すること。」
(3)引用文献3に記載された技術的事項
引用文献3に記載された事項を本件発明に合わせて整理すると、引用文献2には次の技術的事項(以下「引用文献3記載の技術的事項」という。)が記載されているといえる(括弧内に引用文献3の参照箇所を示す。)。
「例えば対象物におけるキズまたはひび等の異常部分の有無をより正確に判定するための判定装置であって(段落【0004】)、
キズ部Df2の有無を検出する焼結物Tgtを撮影した画像(段落【0115】~【0117】、図12)を、同一の複数の部分画像に分割する判定部22の機能(段落【0118】~【0119】)と、
キズ部Df2の有無の解析を部分画像に対して行い、キズ部の有無を判定するために予め設定された分類モデルCM1、CM2、CM3と部分画像に基づいて、部分画像のキズ部の有無を判定する判定部22の機能(段落【0124】~【0134】)と、
を有し、
分類モデルCM1、CM2、CM3は、部分画像とキズ部の有無とのセットからなる教師データ(段落【0058】~【0087】、図6~8)を用いて事前の機械学習から得られる、部分画像からキズが含まれるか否かのクラスに分類するためのモデルであり(段落【0088】~【0096】)、
部分画像のキズ部の有無を判定する判定部22の機能は、分類モデルCM1、CM2、CM3に、部分画像を入力することにより(段落【0128】)、同一サイズの部分画像のそれぞれについて(段落【0135】~【0136】、入力された部分画像から分類されたキズ部が含まれるか否かのクラスに対応した「真」「偽」を判定する、判定装置。」
(4)例えば引用文献4及び引用文献5に記載された周知技術
引用文献4の段落【0065】の記載、及び、引用文献5の段落【0038】の記載から、次の技術的事項は、本件優先日前において周知であったといえる(ただし、当該周知技術は、本件補正後の請求項2に対する容易想到性の判断のために前審にて示されたものであって、本件発明の発明特定事項とは関係がない。)。
「複数の異なるメッシュサイズごとに用意された複数のパラメータから、メッシュ分割部で分割処理を行ったメッシュサイズに応じたパラメータを選択して、判定モデルに適用すること。」
(5)本件発明と引用発明との対比
本件発明と引用発明とを対比すると、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
「工作機械によってワ-クを加工した際に生じる切屑を検出する切屑検出装置であって、
前記切屑を検出する対象エリアを撮影したエリア画像に基づいて、前記切屑に関する切屑情報を判定する判定部を有し、
前記判定部は、クラスに対応した切屑情報を判定する、切屑検出装置。」
<相違点>
本件発明においては、
「前記切屑を検出する対象エリアを撮影したエリア画像の少なくとも一部を、多数の切屑が堆積して折り重なった状態から個々の前記切屑の外形を構成するエッジを解析することができ背景のエッジ形状の解析が単純化されるメッシュサイズである同一の複数のメッシュ画像に分割処理するメッシュ分割部と、
前記エッジの解析と前記背景の解析とを含む解析を前記メッシュ画像に対して行い、前記メッシュ画像全体に対して1つの特徴量を算出し、前記切屑に関する切屑情報を判定するためにあらかじめ設定された判定用パラメ-タと前記特徴量とに基づいて、前記メッシュ画像の前記切屑情報を判定する切屑情報判定部と、
を有し、
前記判定用パラメ-タは、メッシュ画像と前記切屑情報とのセットからなる教師デ-タを用いて事前の機械学習から得られる、メッシュ画像から算出された特徴量を前記切屑情報のクラスに分類するための学習パラメ-タであり、
前記切屑情報判定部は、前記判定用パラメ-タが適用された切屑判定モデルに、メッシュ画像を入力することにより、前記メッシュサイズで同一サイズのメッシュ画像のそれぞれについて、入力されたメッシュ画像から算出された特徴量に基づいて分類されたクラスに対応した切屑情報を判定する」のに対し、
引用発明においては、本件発明にて特定されるメッシュサイズである同一の複数のメッシュ画像に分割処理する「メッシュ分割部」と、判定用パラメ-タが適用された切屑判定モデルに、当該メッシュ画像を入力することにより、メッシュサイズで同一サイズのメッシュ画像のそれぞれについて、前記メッシュ画像全体に対して1つの特徴量を算出し、算出された特徴量に基づいて分類されたクラスに対応した切屑情報を判定する「切屑情報判定部」とを有しておらず、また、当該「判定用パラメータ」がメッシュ画像と前記切屑情報とのセットからなる教師デ-タを用いて事前の機械学習から得られる、メッシュ画像から算出された特徴量を前記切屑情報のクラスに分類するための学習パラメ-タであるともいえない点。
(6)相違点に対する判断
ア 引用発明と引用文献2記載の技術的事項に基づく容易想到性について
上記(2)のとおり、引用文献2には、所定のメッシュサイズである同一の複数のメッシュ画像に分割処理し、対象X(例:人)の移動輪郭が存在するメッシュ画像か否かを分類する点が記載されているといえるものの、対象Xは、対象の領域を移動する物体であり、引用発明と引用文献2記載の技術的事項とは、その検出対象が大きく異なる。また、引用発明は、複数のメッシュ画像に分割しなくとも切粉の検出が可能なものであるところ、あえて引用文献2記載の技術的事項を適用する必要性が認められない。
また仮に、引用発明に引用文献2記載の技術的事項を適用することを当業者が想到し得たとしても、本件発明にて特定される切屑のエッジの解析に好適なメッシュサイズを想到することが容易であったとはいえず、また、メッシュ画像と切屑情報とのセットからなる教師デ-タを用いて事前の機械学習から得られる、メッシュ画像から算出された特徴量を切屑情報のクラスに分類するための学習パラメ-タである「判定用パラメータ」を採用し、当該判定用パラメ-タが適用された切屑判定モデルに、メッシュ画像を入力することにより、メッシュサイズで同一サイズのメッシュ画像のそれぞれについて、入力されたメッシュ画像から算出された特徴量に基づいて分類されたクラスに対応した切屑情報を判定することまで、当業者が容易になし得たとは、到底いうことができない。
イ 引用発明と引用文献3記載の技術的事項に基づく容易想到性について
また、上記(3)のとおり、引用文献3には、所定のメッシュサイズである同一の複数のメッシュ画像(部分画像)に分割処理し、メッシュ画像と分類情報(キズ部の有無)とのセットからなる教師デ-タを用いて事前の機械学習から得られる、メッシュ画像から分類情報のクラスに分類するための学習パラメ-タである判定用パラメータが適用された「モデル」にメッシュ画像(部分画像)を入力することにより、メッシュサイズで同一サイズのメッシュ画像のそれぞれについて、入力されたメッシュ画像に基づいて分類されたクラスに対応した分類情報を判定する点が記載されているといえるものの、引用文献3記載の技術的事項における検知対象はキズ部であって、引用発明と引用文献3記載の技術的事項とは、その検出対象が大きく異なる。また、上記アで述べたように、引用発明は、複数のメッシュ画像に分割しなくとも切粉の検出が可能なものであるところ、あえて引用文献3記載の技術的事項を適用する必要性が認められない。
また仮に、引用発明に引用文献3記載の技術的事項を適用することを当業者が想到し得たとしても、上記アと同様に本件発明にて特定されるメッシュサイズを想到することが容易であったとはいえず、また、切屑の外形を構成するエッジの解析と背景の解析とを含む解析をメッシュ画像に対して行うことも想到し得たとはいい難く、さらに、メッシュ画像のそれぞれについて、入力されたメッシュ画像全体から1つの特徴量を算出し、算出された特徴量に基づいて分類されたクラスに対応した切屑情報を判定することの記載も示唆もない。
なお、機械学習一般において、入力された画像から特徴量を算出し、算出された特徴量に基づいて分類されたクラスに対応した情報を判定することが、例えば引用文献4の段落【0031】~【0039】、【0040】~【0048】、新たに提示する特開2013-52490号公報(以下「参考文献」という。)の段落【0021】~【0023】に記載されるように、本件優先日前において周知技術であったとしても、引用発明に引用文献3記載の技術的事項を適用し、さらに当該周知技術を動機もなく適用することは、多段階の改変にあたるため、当業者が容易になし得たこととはいえないし、依然として、切屑検出装置に求められる切屑の外形を構成するエッジの解析と背景の解析が単純化される最適なメッシュサイズを想到することも、容易にはなし得ない。
(7)進歩性についてのまとめ
したがって、本件発明は、引用文献1に記載された発明、並びに、引用文献2~5及び参考文献に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第5 当審より通知した拒絶理由に対する当審の判断
1 当審による拒絶理由通知
令和5年9月26日付け拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)では、令和5年6月9日に提出の手続補正書にて補正された特許請求の範囲の請求項1に対し、以下の理由1~2を通知した。
(1)理由1(明確性)
本件出願は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(2)理由2(サポート要件)
本件出願は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
2 当審拒絶理由通知に対する判断
令和5年12月4日に提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載により、上記1(1)~(2)の理由1~2を解消しているかについて、以下検討する。
(1)理由1(明確性)について
ア 当審拒絶理由通知では、以下の点で特許請求の範囲の記載が不備である旨、通知した。
(ア)請求項1において、「前記判定用パラメ-タは、メッシュ画像と前記切屑情報とのセットからなる教師デ-タを用いた事前の機械学習によって、メッシュ画像から算出された特徴量を前記切屑情報のクラスに分類するための学習パラメ-タであり、」と記載される。
(イ)ここで、「学習パラメータ」である「判定用パラメータ」は、
事前の機械学習にて「判定用パラメータ」を得る段階では、「メッシュ画像」と「切屑情報」とのセットからなる教師データを用いているのに対し、
切屑情報を判定する段階では、「メッシュ画像から算出された特徴量」に基づいて「切屑情報」を判定しており、
事前の機械学習の段階での入力情報である「メッシュ画像」と、判定の段階での入力情報である「メッシュ画像から算出された特徴量」とが、一致しておらず、「判定用パラメータ」が如何なるものであるのか、明確に理解することができない。
イ 当審による意見書での主張を踏まえた判断
(ア)上記ア(ア)の記載は補正され、本件発明では、「前記判定用パラメ-タは、メッシュ画像と前記切屑情報とのセットからなる教師デ-タを用いて事前の機械学習から得られる、メッシュ画像から算出された特徴量を前記切屑情報のクラスに分類するための学習パラメ-タであり、」と特定されるところ、依然として、「判定用パラメータ」の事前の機械学習の段階での入力情報である「メッシュ画像」と、「判定用パラメータ」による判定の段階での入力情報であるメッシュ画像から算出された「特徴量」とは、完全に一致していない。
(イ)これに関し、請求人が令和5年12月4日に提出の意見書(以下単に「意見書」という。)の3.のB.のB-2にて、
「請求項1自体の記載からして、「切屑情報判定部は、メッシュサイズで同一サイズのメッシュ画像を、判定用パラメ-タが適用された切屑判定モデルに入力することにより、入力されたメッシュ画像から、当該切屑判定モデルにおいて、算出された特徴量に基づき、分類されたクラスに対応した切屑情報を判定する」ものであり、「判定用パラメ-タは、メッシュ画像と前記切屑情報とのセットからなる教師デ-タを用いた事前の機械学習によって(得られる学習パラメータであって)、(機械学習の中で)メッシュ画像から算出された特徴量を前記切屑情報のクラスに分類するための学習パラメ-タである」ことは、出願時の当業者の技術常識を基礎にして、十分に素直に理解することができる。」
と主張するところ、「機械学習の中」で「メッシュ画像と切屑情報とのセットからなる教師デ-タ」を用いて「判定用パラメータ(学習パラメータ)」を得て、当該「判定用パラメータが適用された切屑判定モデルにメッシュ画像を入力する」ことにより、この「メッシュ画像から算出された特徴量」を「切屑情報のクラスに分類する」ものと一応解釈することで、当該記載が、特許請求の範囲の記載、明細書の記載及び図面並びに出願時の当業者の技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である、とまではいえない。
ウ 理由1のまとめ
よって、本件発明は明確であるから、本件出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている
(2)理由2(サポート要件)について
ア 当審拒絶理由通知では、以下の点で特許請求の範囲の記載に不備がある旨、通知した。
(ア)請求項1において特定される、切屑判定モデルにメッシュ画像が入力されるものであって、切屑モデルは事前の機械学習によって得られる判定用パラメータが適用されており、メッシュ画像から算出される特徴量に基づいて切屑情報を判定する技術は、発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。
(イ)発明の詳細な説明において「機械学習アルゴリズム」と「特徴量」とを用いた実施例は、段落【0052】に記載されるのみであるものの、当該段落には「画像ではない入力データを用いる機械学習アルゴリズムを使用する場合」と記載されている。
(ウ)また、段落【0051】及び図6には、メッシュ画像を入力データとする機械学習アルゴリズムを用いた処理の流れが示されており、学習済みの切屑判定モデルにメッシュ画像を入力すると切屑情報であるクラスが判定されることが説明されているものの、この処理のいずれにメッシュ画像の「特徴量」が関係するのかが不明である。
イ 当審による意見書での主張を踏まえた判断
(ア)請求人が意見書の3.のC.のC-1にて主張するように、審査基準では、「発明の詳細な説明に記載された特定の具体例にとらわれて、必要以上に特許請求の範囲の減縮を求めることにならないようにする。」と記載されるとともに、「実質的な対応関係についての検討は、請求項に係る発明が、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものであるか否かを調べることによりなされる。」と記載される。
(イ)発明の詳細な説明の段落【0052】には、上記ア(イ)の記載とともに「当該形状特徴量を学習済の切屑判定モデルに入力することにより、メッシュ画像のそれぞれについてクラスを判定してもよい。」とも記載される。さらに上記ア(ウ)に示した段落【0051】及び図6には、「機械学習」アルゴリズムとしてディープラーニング手法のうち畳み込みニューラルネットワークを用いた切り屑判定モデルに「メッシュ画像」を入力して切り屑判定を行うことが記載されていることが理解でき、これらの記載を併せてみれば、判定用パラメータが適用された切屑判定モデルが、メッシュ画像から特徴量を算出し、さらに算出された特徴量から切屑情報を判定するような本件発明は、発明の詳細な説明に直接的な記載や示唆がないとしても、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できるように記載された範囲内のものであるということができる。
ウ 理由2のまとめ
よって、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものであるから、本件出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
第6 意見書における審判請求人のその他の主張について
請求人が令和5年12月4日に提出の意見書にて主張する、その他の点(2.のA.~C.)について、以下のとおり付言する。
拒絶査定不服審判においては、最終的には、特許権を付与するか否かを決定する手続であるから、その審理においては、審査官の査定の当否の判断だけでなく、特許権の対世的効力を考慮し、無効理由を含んだ特許権の付与の回避が求められている。
そして特許法第153条第1項には、「審判においては、当事者又は参加人が申し立てない理由についても、審理することができる。」と規定されており、職権による審理を可能とした上で、同法第159条第2項に「第50条及び第50条の2の規定は、拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用する。」と規定されており、原査定の理由とは異なる拒絶の理由の有無を合議体が職権で判断することを前提とした特則が規定されている。
また、審判便覧の「職権探知主義の制限」は、職権審理の際には審理の結果を当事者等に通知して意見を申し立てる機会を与えなければならないことを趣旨とするものである。
本件も、上記法令等遵守のもと、審理したものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願については、原査定の拒絶理由、及び、当審より通知した拒絶理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-008864