特許拒絶査定不服審判
2024-013095
加工装置
- 審判番号
- 2024-013095
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-143098
- 請求日
- 2024年08月13日
- 審決日
- 2025年09月17日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ディスコ
- 【請求人代理人】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 本庄 亮太郎
- 審判官 刈間 宏信
- 審判官 山田 康孝
- 分類
- P18 .121-Z (B23Q) / P18 .575-Z (B23Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-143098「加工装置」拒絶査定不服審判事件〔令和4年3月10日出願公開、特開2022-38528〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年8月27日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和6年 2月 8日付け:拒絶理由通知書
令和6年 3月12日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 5月16日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和6年 8月13日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年8月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年8月13日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物に加工を施す加工手段と、撮像手段とを備えた加工装置であって、
該撮像手段は、
主レンズと、該主レンズから取り入れた光を集光する複数のマイクロレンズが配設されたマイクロレンズアレーと、該マイクロレンズアレーによって集光された光を撮像する画像センサーと、から少なくとも構成されるライトフィールドカメラと、
該ライトフィールドカメラが撮像した画像を記録する画像記録部と、
該画像記録部に記録された画像から2次元の多焦点画像を生成する2次元画像処理部と、
該多焦点画像を積層し3次元画像を生成する3次元画像処理部と、
を含み、
該撮像手段の該ライトフィールドカメラは、該加工が施される前後において、被加工物の表面を撮像する、加工装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物に加工を施す加工手段と、撮像手段とを備えた加工装置であって、
該撮像手段は、
主レンズと、該主レンズから取り入れた光を集光する複数のマイクロレンズが配設されたマイクロレンズアレーと、該マイクロレンズアレーによって集光された光を撮像する画像センサーと、から少なくとも構成されるライトフィールドカメラと、
該ライトフィールドカメラが撮像した画像を記録する画像記録部と、
該画像記録部に記録された画像から2次元の多焦点画像を生成する2次元画像処理部と、
該多焦点画像を積層し3次元画像を生成する3次元画像処理部と、
を含む加工装置。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「撮像手段のライトフィールドカメラ」について、上記1(1)のとおり限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載されたとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)この審決で新たに引用する、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2019-166614号公報(令和元年10月3日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。
「【0010】
図1は、工作システム10を示す概略図である。工作システム10は、工作機械12と、3次元形状生成装置14とを備える。工作機械12は、工作機械本体16と、工作機械本体16を制御する制御装置18とを有し、制御装置18と3次元形状生成装置14とは、互いに無線または有線で通信することで各種の情報を授受する。
【0011】
工作機械本体16は、主軸20に取り付けられた工具22により図示しない加工対象物(ワーク、被加工物)を加工する。・・・。」
「【0016】
・・・。加工対象物は、図示しない固定治具を介してテーブル28に固定される。固定治具は、ロック溝38を利用してテーブル28の上面に加工対象物を固定できるように構成されている。」
「【0020】
工作機械本体16には、カメラ50が設けられている。カメラ50は、主軸20側を撮像するためのものであり、主軸20に対してテーブル28とともに相対移動するように設けられる。本実施の形態では、カメラ50は、テーブル28の上面側に設けられており、工具22、工具ホルダ32、主軸20、クーラントノズル37および主軸頭24を被写体として撮像する。」
「【0031】
図2は、3次元形状生成装置14の構成を示すブロック図である。3次元形状生成装置14は、画像取得部60、形状生成部62、記憶部64、形状比較部66、状態推定部68および報知部70を有する。」
「【0033】
画像取得部60は、加工前または加工後に制御装置18から供給される位置情報に基づいて、カメラ50から画像を取得する。図3は、画像取得の様子を示す概念図である。なお、簡単にするため、図3は、主軸20に対してテーブル28をX-Y方向(水平方向)に沿って相対移動させた場合を示している。
【0034】
画像取得部60は、制御装置18から位置情報を受けた場合、その位置情報に基づいて、主軸20に対するテーブル28の位置(相対位置)が第1の相対位置にあるときにカメラ50から第1の画像を取得する(図3の破線参照)。
【0035】
また、画像取得部60は、位置情報に基づいて、主軸20に対するテーブル28の位置(相対位置)が第1の相対位置とは異なる第2の相対位置にあるときにカメラ50から第2の画像を取得する(図3の実線参照)。画像取得部60は、第1の画像および第2の画像を取得すると、取得した第1の画像および第2の画像と、第1の相対位置および第2の相対位置とを形状生成部62に出力する。・・・。
【0036】
形状生成部62は、主軸20側における少なくとも1つの被写体の3次元形状を生成する。この被写体は、少なくとも工具22を含み、当該工具22の他に、例えば、工具ホルダ32、主軸20、クーラントノズル37および主軸頭24を含む。
【0037】
具体的に形状生成部62は、画像取得部60から第1の画像および第2の画像と、第1の相対位置および第2の相対位置とを受けた場合、被写体の3次元形状を生成する。
【0038】
すなわち、形状生成部62は、第1の相対位置および第2の相対位置との間における第1の相対距離D(図3参照)を求める。この第1の相対距離Dは、第1の相対位置から第2の相対位置まで主軸20に対してテーブル28を相対移動させた移動距離(移動量)ではなく、当該第1の相対位置と第2の相対位置との間の最短の距離である。
【0039】
また、形状生成部62は、第1の画像および第2の画像の一方に含まれる被写体の少なくとも輪郭上の複数の点を特徴点として決定し、決定した特徴点に対応する対応特徴点を、第1の画像および第2の画像の他方から検出する。
【0040】
形状生成部62は、第1の相対距離D、複数の特徴点および対応特徴点を取得すると、これら第1の相対距離D、複数の特徴点および対応特徴点に基づいて、3次元形状(加工前形状または加工後形状)を生成する。なお、具体的な生成手法については、周知の手法を用いることができる。
【0041】
ここで、形状生成部62は、3次元形状(加工前形状または加工後形状)の生成を成功した場合は成功信号を生成し、生成した成功信号を制御装置18に出力する。また、形状生成部62は、3次元形状(加工前形状または加工後形状)の生成を成功した場合は、その成功した3次元形状(加工前形状または加工後形状)を記憶部64に記憶する。
【0042】
これに対し、形状生成部62は、3次元形状(加工前形状または加工後形状)の生成を失敗した場合は失敗信号を生成し、生成した失敗信号を制御装置18に出力する。また、形状生成部62は、3次元形状(加工前形状または加工後形状)の生成を失敗した場合は、3次元形状(加工前形状または加工後形状)の生成をリトライする。」
「【0071】
<変形例1>
図8は、変形例1の工作システム10Aを示す概略図である。変形例1の工作システム10Aでは、上記実施の形態のカメラ50に代えてカメラ50Aが設けられる。このカメラ50Aは、テーブル28側を撮像するためのものであり、テーブル28に対して主軸20とともに相対移動するように設けられる。本実施の形態では、カメラ50Aは、主軸頭24の側面側に設けられており、加工対象物、加工対象物をテーブル28に固定する固定冶具、ロック溝38およびテーブル28等を被写体として撮像する。
【0072】
また、変形例1の工作システム10Aの場合、上記実施の形態の3次元形状生成装置14に代えて3次元形状生成装置14Aが設けられる。図9は、3次元形状生成装置14Aの構成を示すブロック図である。3次元形状生成装置14Aでは、上記実施の形態の形状生成部62に代えて形状生成部62Aが設けられ、上記実施の形態の状態推定部68に代えて状態推定部68Aが設けられる。
【0073】
形状生成部62Aは、テーブル28側における少なくとも1つの被写体の3次元形状を生成する。この被写体は、少なくとも加工対象物を含み、当該加工対象物の他に、例えば、固定冶具、ロック溝38およびテーブル28を含む。
【0074】
この形状生成部62Aでは、上記のように3次元形状の生成対象が異なっているが、当該3次元形状の生成手法については上記実施の形態と同じであるため、その説明は省略する。」
「【0098】
主軸(20)に対してテーブル(28)とともに相対移動するカメラ(50)、または、テーブル(28)に対して主軸(20)とともに相対移動するように設けられたカメラ(50A)が用いられるため、当該相対移動しないカメラを用いる場合に比べて被写体の3次元形状を精度よく生成することができる。また、2つのカメラを用いて被写体の3次元形状を生成する場合に比べて簡易に3次元形状を生成することができる。」
(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。なお、括弧内に引用文献1の記載箇所を付記する。
a 工作機械12と、3次元形状生成装置14及び14Aを備え(段落【0010】、【0071】)、工作機械12は、工作機械本体16を有し(段落【0010】)、工作機械本体16は、主軸20に取り付けられた工具22により加工対象物(ワーク、被加工物)を加工する(段落【0011】)。
b 加工対象物は、固定治具を介してテーブル28に固定される(段落【0016】)。
c 工作機械本体16には、カメラ50が設けられている。カメラ50は、テーブル28の上面側に設けられており、工具22、工具ホルダ32、主軸20、クーラントノズル37および主軸頭24を被写体として撮像する(段落【0020】)。
d 3次元形状生成装置14は、画像取得部60、形状生成部62を有する(段落【0031】)。
e 画像取得部60は、加工前または加工後に制御装置18から供給される位置情報に基づいて、主軸20に対するテーブル28の位置(相対位置)が第1の相対位置とは異なる第2の相対位置にあるときにカメラ50から第2の画像を取得し、第1の画像及び第2の画像を取得すると、取得した第1の画像及び第2の画像と、第1の相対位置及び第2の相対位置とを形状生成部62に出力し(段落【0035】)、形状生成部62は、画像取得部60から第1の画像及び第2の画像と、第1の相対位置及び第2の相対位置とを受けた場合、少なくとも工具22を含む被写体の3次元形状を生成する(段落【0036】、【0037】)。
f 工作システム10Aでは、工作システム10の形態のカメラ50に代えてカメラ50Aが設けられ(段落【0071】)、この被写体は、少なくとも加工対象物を含む(段落【0073】)。
g 工作システム10Aは、工作システム10の3次元形状生成装置14に代えて、3次元形状生成装置14Aが設けられ、形状生成部62に代えて、形状生成部62Aが設けられる(段落【0072】)。
h 3次元形状生成装置14Aでの3次元形状の生成対象は、3次元形状生成装置14での3次元形状の生成対象とは異なる(段落【0074】)、すなわち、工具22の3次元形状に代えて、加工対象物の3次元形状を生成対象とするが、3次元形状の生成手法は工作システム10と同じである(段落【0074】)から、上記eと同様の手法により、第1の相対位置における第1の画像と、第1の相対位置とは異なる第2の相対位置における第2の画像を受けて、加工対象物の3次元形状の画像を生成するといえる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「加工対象物を保持する固定治具と、該固定治具に保持された加工対象物に加工を施す工具22と、3次元画像生成装置14Aとを備える工作システム10Aであって、
該3次元画像生成装置14Aは、
カメラ50Aと、
該カメラ50Aから画像を取得する画像取得部60と、
画像取得部60から出力された画像を受けて3次元形状の画像を生成する形状生成部62Aと、
を含み、
該3次元画像生成装置14Aのカメラ50Aは、該加工が施される前後において、加工対象物を撮像する、工作システム10A。」
イ 引用文献2
(ア)原査定で引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2010-54320号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【0002】
対物レンズの光軸に沿って被検物を移動させながら焦点位置の異なる複数の画像を得て、被検物上の点各々について、それら複数の画像より合焦測度が最大となる画像を選択し、その画像での焦点位置をその点についての高さとし、これらの情報から被検物の形状測定を行うものが知られている。」
「【0004】
しかしながら、このような従来の技術では、対物レンズの光軸に沿って被検物を移動させながら画像を取得する必要があり、測定に時間がかかっていた。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、対物レンズの光軸に沿って、被検物を移動することなく、被検物の形状を測定できるようにするものである。」
「【0023】
本発明による測定では、上記の機構的に決まるレンズ位置aとは別に、マイクロレンズアレイ(以下、MLAという)を通した撮像素子上の画素信号を組み換え、加算することにより、仮想的にレンズと撮像面の間隔a1,a2,a3,・・・,anを構築する。・・・。」
「【0028】
図1に示すように、光学系は、対物レンズ11、MLA12、及び撮像素子13を含むようにして構成される。
【0029】
図1には、図1aと図1bの2つの光学系の構成が図示されているが、図1aの構成では、被検物(物体面(P面))の像を捕らえる対物レンズ11の焦点距離だけ離れた位置にMLA12を置き、MLA12の焦点距離だけ離れた位置に撮像素子13が置かれている。図1aでは、この撮像素子13の撮像面が、物体面(P面)と共役になっており、被検物の像が結像している。
【0030】
MLA12は、先述したMLAと同様に、例えば7×7個などの、複数のマイクロレンズ(以下、MLという)を2次元状に並べてなる光学素子である(図1では、縦方向の7個を図示している)。各MLで結像した像のできる領域、すなわち、ML領域13MLから得られる画像信号は、それぞれのML領域の位置に応じて被検物の異なる視点の画像、つまり、視差のある像となっている。」
「【0108】
[5.形状測定装置]
次に、上述した距離測定の処理を行って、被検物の3次元形状を測定する、本実施の形態に係る形状測定装置の構成について、図11を参照して説明する。
【0109】
図11に示すように、形状測定装置は、対物レンズ11、MLA12、撮像素子13、制御回路31、ユーザインターフェース32、駆動回路33、演算処理回路34、及び、メモリ35を含むようにして構成される。なお、図11において、対物レンズ11ないし撮像素子13は、先述した図1等の対物レンズ11ないし撮像素子13に対応している。」
「【0115】
次に、図12のフローチャートを参照して、図11の演算処理回路34により行われる3次元形状測定処理について説明する。
【0116】
演算処理回路34は、ステップS11において、駆動回路33からの画像信号を取得し、ステップS12において、焦点画像を生成する。具体的には、上記の[2.焦点画像生成の手順]で述べたように、演算処理回路34は、図1aの構成の場合には、(2-1)の方法によって、図1bの構成の場合には、(2-2)の方法によって、異なる角度からの光線を再構成して、焦点面の異なる複数の画像を生成する。
【0117】
ステップS13において、演算処理回路34は、測定の信号処理を行う。具体的には、上記の[3.測定の信号処理手順]で述べたように、演算処理回路34は、(3-1)の「多焦点逐次処理法」又は(3-2)の「全焦点エッジ抽出法」などのエッジ処理によって、常に焦点の合った全焦点画像を用いて、物体の各エッジ座標(Xi,Yi)位置でのZを求める。
【0118】
そして、演算処理回路34は、ステップS14において、距離測定の処理を行い、ステップS15において、物体の3次元形状を測定し、処理は終了する。具体的には、上記の[4.距離測定手順]で述べたように、演算処理回路34は、(4-1)の「多数のフォーカス画像から物体位置を求める方法」又は(4-2)の「2つの異なる焦点面の画像情報から物体位置を求める方法」によって、被検物の表面の座標(X,Y,Z)が求められ、3次元形状が測定される。
【0119】
以上のように、図11の形状測定装置においては、演算処理回路34によって、先述した、[2.焦点画像生成の手順]、[3.測定の信号処理手順]、[4.距離測定手順]が順に実行されることで、MLA12の中央のMLによって結像された像から得られる全焦点画像を用いた信号処理が行われ、それにより得られる物体の各エッジ座標(Xi,Yi)位置でのZから、被検物の表面の座標(X,Y,Z)、すなわち、3次元形状が測定される。」
(イ)上記(ア)の記載から、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる。(以下「引用文献2記載の技術的事項」という。)
「光学系は、対物レンズ11と、該対物レンズで結像する面に配置された複数のマイクロレンズ(ML)を並べてなるMLA12と、MLA12の焦点距離だけ離れた位置に置かれた撮像素子13とから構成され、演算処理回路は、駆動回路からの画像信号を取得し、焦点面の異なる複数の画像を生成し、エッジ処理により、常に焦点の合った全焦点画像を用いて、3次元形状を測定する技術。」
(3)本件補正発明と引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「加工対象物」は本件補正発明における「被加工物」に相当する。以下同様に「固定治具」は「保持手段」に、「工具22」は「加工手段」に、「3次元画像生成装置14A」は「撮像手段」に、「工作システム10A」は「加工装置」にそれぞれ相当する。
(イ)引用発明の「カメラ50A」と、本件補正発明の「主レンズと、該主レンズから取り入れた光を集光する複数のマイクロレンズが配設されたマイクロレンズアレーと、該マイクロレンズアレーによって集光された光を撮像する画像センサーと、から少なくとも構成されるライトフィールドカメラ」を対比すると、「カメラ」という点で一致する。
(ウ)引用発明の「画像取得部60」は、異なる位置の2つの画像を取得して、2つの画像を出力する(段落【0035】)から、少なくとも2つの画像を出力するまでは、画像を記録しているといえる。
したがって、引用発明の「該カメラ50Aから画像を取得する画像取得部60」と、本件補正発明の「該ライトフィールドカメラが撮像した画像を記録する画像記録部」を対比すると、「該カメラが撮像した画像を記録する画像記録手段」という点で一致する。
(エ)引用発明の「画像取得部60から出力された画像を受けて3次元形状の画像を生成する形状生成部62A」は、3次元形状の画像を生成するための処理を行う手段であるから、本件補正発明の「該多焦点画像を積層し3次元画像を生成する3次元画像処理部」を対比すると、「3次元画像を生成する3次元画像処理手段」という点で一致する。
(オ)引用発明において「加工対象物を撮像する」ことは、当然に、加工対象物の表面を撮像することを意味するから、引用発明の「該加工が施される前後において、加工対象物を撮像する」ことは、本件補正発明の「該加工が施される前後において、被加工物の表面を撮像する」ことに相当する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物に加工を施す加工手段と、撮像手段とを備えた加工装置であって、
該撮像手段は、
カメラと、
該カメラが撮像した画像を記録する画像記録手段と、
3次元画像を生成する3次元画像処理手段と、
を含み、
該撮像手段の該カメラは、該加工が施される前後において、被加工物の表面を撮像する、加工装置。」
【相違点】
「撮像手段」について、本件補正発明は、
「主レンズと、該主レンズから取り入れた光を集光する複数のマイクロレンズが配設されたマイクロレンズアレーと、該マイクロレンズアレーによって集光された光を撮像する画像センサーと、から少なくとも構成されるライトフィールドカメラと、
該ライトフィールドカメラが撮像した画像を記録する画像記録部と、
該画像記録部に記録された画像から2次元の多焦点画像を生成する2次元画像処理部と、
該多焦点画像を積層し3次元画像を生成する3次元画像処理部と、
を含」むものであるのに対し、
引用発明は、
「カメラ50Aと、
該カメラ50Aから画像を取得する画像取得部60と、
画像取得部60から出力された画像を受けて3次元形状の画像を生成する形状生成部62Aと、
を含」むものである点。
(4)判断
以下、相違点について検討する。
上記(2)イ(イ)に示す引用文献2記載の技術的事項は、「光学系は、対物レンズ11と、該対物レンズで結像する面に配置された複数のマイクロレンズ(ML)を並べてなるMLA12と、MLA12の焦点距離だけ離れた位置に置かれた撮像素子13とから構成され、演算処理回路は、駆動回路からの画像信号を取得し、焦点面の異なる複数の画像を生成し、エッジ処理により、常に焦点の合った全焦点画像を用いて、3次元形状を測定する技術。」であり、当該「光学系」は、複数のマイクロレンズを並べてなるマイクロレンズアレー、撮像素子で構成されるから、本件補正発明の「ライトフィールドカメラ」に相当する。
また、引用文献2記載の技術的事項の「演算処理回路」は、画像信号を取得して、焦点面の異なる複数の画像、すなわち、2次元の多焦点画像を生成する機能を実現し、さらに、3次元形状を測定する機能を実現するから、本件補正発明の「画像記録部」、「2次元画像処理部」及び「3次元画像処理部」に相当するといえる。
これに対して、引用発明は、引用文献2記載の技術的事項と同様に、対象物の3次元形状を生成するものであるが、その生成の手段は、移動前後の対象物の相対距離Dと、移動前後の対象物の輪郭の特徴点に基づくものであり(引用文献1の段落【0038】~【0040】)、3次元形状の生成に失敗する場合がある(同【0042】)ように、2つのカメラを用いる場合よりも簡易な手段として3次元形状を生成するものである(同【0098】)。
引用発明において、引用文献2記載の技術的事項のように、2つのカメラを用いることなく、確実に3次元形状を測定及び生成できることが、より望ましいことは、加工装置の技術分野において当然要請されることであるから、引用発明における撮像手段として、引用文献2記載の技術的事項を採用して、相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(5)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下しなければならないものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和6年8月13日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~4に係る発明は、令和2年8月27日にされた出願時の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、請求項1に係る発明に対する理由は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献3に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献3:特開2015-99026号公報
引用文献2:特開2010-54320号公報
なお、上記の引用文献3は、原査定の拒絶の理由では「引用文献1」と表記されていたが、上記第2の[理由]2(2)アで示した「引用文献1」との混同を避けるために、上記のとおり「引用文献3」と表記する。
3 引用文献の記載事項
(1)引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2及びその記載事項は、上記第2の[理由]2(2)イに記載したとおりである。
(2)引用文献3
ア 原査定の拒絶の理由で引用された、特開2015-99026号公報(平成27年5月28日出願公開)には、次の記載がある。
「【0015】
図1には、本発明によって構成された検出装置が装備された加工機としてのレーザー加工機の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工機1は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物を保持する被加工物保持機構3と、静止基台2上に配設された加工手段であるレーザー光線照射手段としてのレーザー光線照射ユニット4とを具備している。」
「【0023】
図示の実施形態におけるレーザー加工機1には、チャックテーブル36に保持された被加工物に加工が施された加工状態を検出するための検出装置7が配設されている。検出装置7は、上記機体ケーシング42に配設されたX軸方向、X軸方向と直交するY軸方向、X軸方向およびY軸方向と直交するZ軸方向において3次元でチャックテーブル36に保持された被加工物を撮像し、撮像した画像信号を出力する干渉式撮像機構70を具備している。干渉式撮像機構70は、機体ケーシング42に配設された第1のZ軸移動手段8によってZ軸方向に移動可能に支持されている。干渉式撮像機構70および第1のZ軸移動手段8について、図2乃至図4を参照して説明する。」
「【0025】
干渉式撮像機構70を構成する集光器73は、集光器ケース731と、該集光器ケース731内に配設された対物レンズ732とからなっている。対物レンズ732は、図4に示すように後述する光照射手段74からの光を集光点P(撮像位置)に集光する。なお、図示の実施形態においては、集光点Pの集光スポットはφ100μmに設定されている。このように構成された集光器73の集光器ケース731には、チャックテーブル36の保持面に保持された被加工物で反射した戻り光と干渉光を生成する干渉光生成手段75が配設されている。干渉光生成手段75は、該対物レンズ732からチャックテーブル36側に配設されたガラスプレート751と、該ガラスプレート751からチャックテーブル36側に配設された第1のビームスプリッター752とからなっている。ガラスプレート751は、中央に径が例えばφ0.5mmの微細なミラー751aを備えている。上記第1のビームスプリッター752は、光照射手段74から照射され対物レンズ732によって集光された光を透過してチャックテーブル36の保持面に保持された被加工物に照射するとともにガラスプレート751のミラー751aに向けて光を反射する。このように構成された集光器73および干渉光生成手段75は、集光点P(撮像位置)で反射した戻り光と第1のビームスプリッター752で反射した光がガラスプレート751において干渉したとき光強度の高い干渉光を生成し、上記撮像素子手段72に向けて導く。」
「【0039】
次に、制御手段9は干渉式撮像機構70を構成する撮像素子手段72、光照射手段74の光源741を作動するとともに、ピエゾモータからなるアクチュエータ76に印加する電圧を60Vから1Vずつ下げていく。この結果、図示の実施形態においては、図6に示すようにピエゾモータからなるアクチュエータ76は電圧を1V下げる毎に1μm短縮するので、集光器73が1μmずつZ軸方向に下降する。このようにして集光器73が1μmずつ下降する毎に、撮像素子手段72で受光した画像が制御手段9に送られる。制御手段9は撮像素子手段72から送られた画像信号に基づいて、図10の(a)に示すように上述した光強度の高い干渉光を受光した画素のXY座標をZ軸方向位置毎(Z1、Z2、Z3・・・・)に求め、ランダムアクセスメモリ(RAM)93のXYZ座標記憶領域93cに格納する。なお、Z軸方向位置(Z1、Z2、Z3・・・・)は、Z軸方向位置検出手段80の読み取りヘッド80bからの検出信号またはピエゾモータからなるアクチュエータ76に印加する電圧信号から求められる。なお、ピエゾモータは高速で作動できるので、短時間に画像情報を取得できる。従って、Z軸方向位置検出手段80およびピエゾモータからなるアクチュエータ76に印加する電圧を制御する制御手段9自身も集光器73のZ軸方向位置を検出するZ軸方向位置検出手段として機能する。そして、制御手段9は、ランダムアクセスメモリ(RAM)93に格納されたZ軸方向位置毎(Z1、Z2、Z3・・・・)の光強度の高い干渉光を受光した画素のXY座標に基づいて図10の(b)に示すように半導体ウエーハ10に形成されたレーザー加工溝110のX3位置における3次元画像を作成し、ランダムアクセスメモリ(RAM)93に格納するとともに出力手段90に出力し、モニター等の表示手段に表示させたりプリンターによってプリントアウトさせる。このようにしてレーザー加工溝110の上記2次元画像での加工状態の検証において特に気になる個所(図示の実施形態においてはX3位置)の3次元画像を取得することにより、加工状態を詳細に検証することができるので、加工条件を調整して適正な加工条件を設定することができる。」
イ 上記記載から、引用文献3には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。なお、括弧内に引用文献3の記載箇所を付記する。
(ア)引用文献3に記載された技術は、レーザー加工機に関するものでありレーザー光線照射ユニット4により被加工物を加工する(段落【0015】)。
(イ)チャックテーブル36により被加工物を保持するように構成されている(段落【0023】)。
(ウ)レーザー加工機に干渉式撮像機構70が設けられており、制御手段9が、干渉式撮像機構70から出力される画像信号に基づいて3次元画像を生成する(段落【0039】)。
(3)上記(2)ア及びイから、引用文献3には、次の発明(以下「引用文献3発明」という。)が記載されていると認められる。
「被加工物を保持するチャックテーブル36と、該チャックテーブル36に保持された被加工物にレーザー加工を施すレーザー光線照射ユニット4と、干渉式撮像機構70とを備えたレーザー加工機であって、
干渉式撮像機構70から出力される画像信号に基づいて3次元画像を生成する制御手段9を含むレーザー加工機。」
4 対比・判断
(1)対比
ア 本願発明と引用文献3発明とを対比する。
(ア)引用文献3発明の「被加工物」は本願発明の「被加工物」に相当する。以下同様に「チャックテーブル36」は「保持手段」に、「被加工物にレーザー加工を施すレーザー光線照射ユニット4」は「被加工物に加工を施す加工手段」に、「干渉式撮像機構70」及び「制御手段9」は「撮像手段」に、「レーザー加工機」は「加工装置」にそれぞれ相当する。
(イ)引用文献3発明の「干渉式撮像機構70から出力される画像信号に基づいて3次元画像を生成する制御手段9」と、本願発明の「該多焦点画像を積層し3次元画像を生成する3次元画像処理部」を対比すると、「画像に基づいて3次元画像を生成する手段」という点で一致する。
イ 以上のことから、本願発明と引用文献3発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物に加工を施す加工手段と、撮像手段とを備えた加工装置であって、
撮像手段は、
画像に基づいて3次元画像を生成する手段
を含む加工装置。」
【相違点】
「撮像手段」について、本願発明は、
「主レンズと、該主レンズから取り入れた光を集光する複数のマイクロレンズが配設されたマイクロレンズアレーと、該マイクロレンズアレーによって集光された光を撮像する画像センサーと、から少なくとも構成されるライトフィールドカメラと、
該ライトフィールドカメラが撮像した画像を記録する画像記録部と、
該画像記録部に記録された画像から2次元の多焦点画像を生成する2次元画像処理部と、
該多焦点画像を積層し3次元画像を生成する3次元画像処理部と、
を含む」のに対し、引用文献3発明は、当該構成について特定されていない点。
(2)判断
以下、相違点について検討する。
引用文献2記載の技術的事項は、「光学系は、対物レンズ11と、該対物レンズで結像する面に配置された複数のマイクロレンズ(ML)を並べてなるMLA12と、MLA12の焦点距離だけ離れた位置に置かれた撮像素子13とから構成され、演算処理回路は、駆動回路からの画像信号を取得し、焦点面の異なる複数の画像を生成し、エッジ処理により、常に焦点の合った全焦点画像を用いて、3次元形状を測定する技術。」であり、当該「光学系」は、複数のマイクロレンズを並べてなるマイクロレンズアレー、撮像素子で構成されるから、本願発明の「ライトフィールドカメラ」に相当する。
また、引用文献2記載の技術的事項の「演算処理回路」は、画像信号を取得して、焦点面の異なる複数の画像、すなわち、2次元の多焦点画像を生成する機能を実現し、さらに、3次元形状を測定する機能を実現するから、本願発明の「画像記録部」、「2次元画像処理部」及び「3次元画像処理部」に相当するといえる。
そして、引用文献2記載の技術的事項は、従来の3次元形状の測定では、対物レンズの光軸に沿って被検物を移動させながら画像を取得する必要があり、測定に時間がかかっていたこと(引用文献2の段落【0002】、【0004】)を課題とするものであるところ、引用文献3発明における3次元画像の生成は、ピエゾモータで集光器73のZ軸方向位置を移動させながら画像を取得することにより行われる(引用文献3の段落【0039】)、すなわち、集光器73の対物レンズ732(同【0025】)の光軸に沿って対物レンズ732を移動させながら画像を取得することにより行われるから、引用文献3発明は、引用文献2記載の技術的事項と同様に、3次元形状の測定、すなわち、3次元形状の画像の生成に時間がかかるという課題を内在しているといえる。
そうすると、当該課題を解決するように、引用文献3発明における撮像手段として、引用文献2記載の技術的事項を採用して、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本願発明は、引用文献3発明及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、ほかの請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-013095