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特許拒絶査定不服審判

2022-013021

生体情報検出装置およびその製造方法、生体情報検出モジュールおよびその製造方法

審判番号
2022-013021
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-141420
請求日
2022年08月19日
審決日
2023年04月18日
公報発行日
2023年07月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】セイコーグループ株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人つばさ国際特許事務所
  • 【請求人】学校法人昭和大学
  • 【請求人代理人】弁理士法人つばさ国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 石井 哲
  • 審判官 松本 隆彦
  • 審判官 上田 泰
分類
P18 .121-Z (A61B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-141420「生体情報検出装置およびその製造方法、生体情報検出モジュールおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月30日出願公開、特開2020- 14769〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 特願2018-141420「生体情報検出装置およびその製造方法、生体情報検出モジュールおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和2年1月30日出願公開、特開2020-14769〕について、次のとおり審決する。 結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 理 由 第1 手続の経緯 本件に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成30年7月27日の出願であって、令和4年3月3日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 令和4年8月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和4年8月19日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由](補正の適否の判断) 1 本件補正について(補正の内容) 本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「 【請求項1】 口腔内に設置される生体情報検出装置であって、 光を発することのできる発光素子、および前記発光素子から発せられた前記光を受光可能な受光素子を含むセンサと、 前記発光素子を覆うと共に前記光を透過可能な第1の透光部分、前記受光素子を覆うと共に前記光を透過可能な第2の透光部分、および前記光を遮る遮光部分を含み、前記センサを密封する可撓性の封止部材と、 上顎の一部の歯または下顎の一部の歯に取り付けられて前記封止部材を保持可能な可撓性の保持部材と を有し、 前記発光素子は、前記第1の透光部分を介して歯茎または頬の内面と対向するように配置され、 前記受光素子は、前記第2の透光部分を介して歯茎または頬の内面と対向するように配置されており、 前記第1の透光部分は前記発光素子よりも広い領域を占めており、前記第2の透光部分は前記受光素子よりも広い領域を占めている 生体情報検出装置。」 本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和4年4月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「 【請求項1】 口腔内に設置される生体情報検出装置であって、 光を発することのできる発光素子、および前記発光素子から発せられた前記光を受光可能な受光素子を含むセンサと、 前記発光素子を覆うと共に前記光を透過可能な第1の透光部分および前記受光素子を覆うと共に前記光を透過可能な第2の透光部分を含み、前記センサを密封する封止部材と、 上顎の一部の歯または下顎の一部の歯に取り付けられて前記封止部材を保持可能な保持部材と を有し、 前記発光素子は、前記第1の透光部分を介して歯茎または頬の内面と対向するように配置され、 前記受光素子は、前記第2の透光部分を介して歯茎または頬の内面と対向するように配置されている 生体情報検出装置。」 2 補正の適否 本件補正における請求項1に係る補正は、本件補正前に請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「封止部材」について、「第1の透光部分」及び「第2の透光部分」に加えて「前記光を遮る遮光部分」を備えること、及び、「可撓性」であることを限定するとともに、「第1の透光部分」及び「第2の透光部分」の占める領域について、「前記第1の透光部分は前記発光素子よりも広い領域を占めており、前記第2の透光部分は前記受光素子よりも広い領域を占めている」との限定を付加するものである。これらの補正事項は、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 なお、これらの補正事項は、願書に最初に添付された明細書、図面、特許請求の範囲(以下、「当初明細書等」という。)の段落0017及び図2に基づくものであり、新規事項の追加に該当せず、同条第3項に規定する要件を満たす。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が、同条6項において準用する同請求項126条7項の記載に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 引用文献の記載事項 ア 引用文献1 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開2005/0113654号明細書(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審において付与した。以下、同様。)。なお、各摘記に当審訳を付けた。 (ア)引用文献1の記載 (引1-ア) 「[0027] FIG. 1A shows the key elements of an embodiment of the present mouth guard 10. The human tongue 20 can protrude in and around the mouth guard, which includes an outer peripheral rim 30, which lies exterior to the teeth when the teeth are in the biting position. The inner rim 40 of the mouth guard are near the teeth when the teeth are in the biting position, and it is this inner rim which comes into close proximity to the human tongue. The outer rim 30 comes in close proximity in its rear area to the oral mucosa, which is the inner side of the mouth, which can also be relatively representative of core temperature. A forced bulge or flap 50 is made in the inner lining 40, so that good apposition in measuring of the tongue may occur. The frontal extrusion area or a thickening area 90 of the peripheral rim 30 in which the retaining strap 100 is usually placed, is frequently cut off by athletes. Nonetheless, the protrusion 90 is a relatively comfortable area to mount excess material in the rim 30 because the lips typically do not meet in this area when a large mouth guard is put in place, and no rubbing or irritation occurs. Additionally, this area is usually very visible through the front lips on almost all athletes. This would be the ideal place to put a light-emitting diode, such as a red flashing diode to indicate a warning to another person.」 (当審訳:図1Aは、本発明のマウスガード10の実施形態の重要な要素を示す。ヒトの舌20は、歯が噛む位置にあるときに歯の外側にある外周リム30を含むマウスガード内およびその周りに突出することができる。マウスガードの内側リム40は、歯が噛む位置にあるときに歯の近くにあり、人間の舌に近接するのはこの内側リムである。外周リム30は、その後部領域において、口の内側である口腔粘膜に近接し、それはまた、深部体温を比較的代表することができる。 内側ライニング40に強制的な膨らみまたはフラップ50が作られているので、舌の測定において良好な並置が生じ得る。 保持ストラップ100が通常配置される周辺リム30の前面突出領域または肥厚領域90は、運動選手によってしばしば切断される。それにもかかわらず、突出部90は、リム30に余分な材料を取り付けるのに比較的快適な領域である。というのは、大きなマウスガードが所定の位置に置かれるとき、通常、この領域では唇が接触せず、摩擦や刺激が生じないからである。さらに、この領域は通常、ほぼすべてのアスリートの前唇を通して非常に目立つ。これは、別の人に警告を示す赤色の点滅ダイオードなどの発光ダイオードを配置するのに理想的な場所である。) (引1-イ) 「[0032] In one embodiment the LED 170 continues to flash red even if the temperature returns below the preset value. This allows the user to determine if his temperature has been at a dangerous level. Coach's and other team players will be able to see the bright flashing red LED even when the mouth guard is within the mouth. The device can be reset by turning it off and on using switch 140. It is important to note that all the temperature sensor elements shown in FIG. 4 are encapsulated within the biocompatible mouth guard material. This protects the elements and user from direct contact In order to reduce risk, it is important that the materials used in the sensor elements have minimal or no toxicity. Although FIG. 4 shows that most of the device elements are located within the front protrusion 90, the device elements can be placed any where within the mouth guard.」 (当審訳:一実施形態において、発光ダイオード170は、温度が予め設定された値以下に戻る場合でも赤に点滅し続ける。これにより、ユーザは、自身の温度が危険なレベルにあるかどうかを判定する。コーチのおよび他のチームの選手はマウスガードがマウス内にある場合であっても、明るい赤色LEDの点滅を見ることができるようになる。デバイスは、スイッチ 140 を使用してオフおよびオンにすることでリセットできる。なお、図4に示した全ての温度センサ要素は、生体適合性のマウスガード材料内にカプセル化されることに留意することが重要である。これにより、要素とユーザが直接接触するのを防ぐ。危険性を低減するためには、センサ要素に使用される材料が最少か又はまったく毒性を有さないことが重要である。図4は、装置の要素の大部分は、前突出部90内に配置されていることが示されているが、装置の要素は、マウスガード内のどこにでも配置することができる。) (引1-ウ) 「[0034] In another embodiment, an RF transmitter is incorporated into the mouth guard and the sensor measurements are communicated to a central receiver that can be used to monitor multiple players simultaneously. Another alternative is to replace the temperature sensor with a different sensor element For example, a saturated blood oxygen sensor similar to those used in pulsed oximetery could be used to monitor blood oxygen and heart rate. A more advanced mouth guard could incorporate multiple sensors (e.g., temperature, blood oxygen, heart rate, sodium and potassium level) and be used not only for sports but also for monitoring patients while sleeping. The wireless communication module could replace LED 170 and use simple RF communication or technology now available such as the Blue Tooth chip set.」 (当審訳:別の実施形態では、RF送信機は、マウスガードに組み込まれており、センサ測定値は複数のプレーヤを同時にモニターするのに使用することができる中央受信機に通信される。別の代替手段は、温度センサを別のセンサ要素に置き換えることである。例えば、パルス酸素濃度測定で使用されるものと同様の飽和血中酸素センサを使用して、血中酸素と心拍数を監視できます。より高度なマウスガードは、複数のセンサ(例えば、温度、血中酸素濃度、心拍数、ナトリウムおよびカリウムレベル)を組み込んで、スポーツだけでなく、睡眠中に患者を監視するために使用することができる。無線通信モジュールは、LED(170)を交換し、次に、ブルートゥースチップセットのような利用可能な簡単なRF通信技術を使用することができる。) (引1-エ) 「[0039] In one embodiment utilizing near-IR interactance, the instrument, including near-infrared source, transmitter, detector, in some cases, an amplifier, and wireless transmitter are contained in an athletic-type mouth guard. Data processing circuitry and readouts are remotely located. Infrared emitting diodes (IREDs) disposed in one chamber of the unit are focused to transmit near-IR energy of preselected wavelength(s) to, e.g., the gum, the tongue or the inner wall of the mouth. The near-IR energy interacts with the constituents of the blood and is re-emitted or scattered onto the detector. A detector housed within a second chamber of the unit is disposed a distance from the emitter and collects this energy. The detected signal is amplified and data processed into a signal indicative of the amount of glucose in the blood. This signal is then wirelessly transmitted to a readout device (preferably a digital readout) for recordation and analysis.」 (当審訳:近赤外線相互作用を利用する一実施形態では、近赤外線源、送信機、検出器、場合によっては増幅器、および無線送信機を含む器具は、運動用マウスガードに含まれる。データ処理回路と読み出しは離れた場所にある。ユニットの1つのチャンバーに配置された赤外線発光ダイオード(IRED)は、事前に選択された波長の近赤外エネルギーを、例えば、歯茎、舌、または口の内壁に送信するように集束される。近赤外エネルギーは血液の成分と相互作用し、検出器に再放出または散乱される。ユニットの第2チャンバー内に収容された検出器は、エミッターから離れて配置され、このエネルギーを収集する。検出された信号は増幅され、データは血液中のグルコースの量を示す信号に処理される。 次に、この信号は、記録および分析のために、読み取りデバイス(デジタル読み取りが望ましい)に無線で送信される。) (引1-オ) 「[0040] In the interactance blood glucose embodiment 210 illustrated in FIG. 5, included is one or more means for providing at least one battery powered point source of near-infrared energy of a predetermined bandwidth of interest which is positioned within a first chamber 230 of the instrument 210. The near-infrared point source means is positioned so that near-infrared energy being emitted from the point source means will be focused by lens 212 through window 214 and onto the mouth tissue of the test subject The near-infrared point source means may comprise one or a plurality of battery-powered infrared emitting diodes (IREDs). Two such IREDs 216 and 216 are visible in the embodiment illustrated in FIG. 5. In other embodiments employing a plurality of IREDs, three, four or more IREDs may be utilized as the point source means.」 (当審訳:図5に示すインタラクタンス血糖実施形態210には、器具210の第1のチャンバー230内に配置された、関心のある所定の帯域幅の近赤外線エネルギーの少なくとも1つの電池式点源を提供するための1つまたは複数の手段が含まれる。 近赤外線点光源手段は、点光源手段から放出される近赤外線エネルギーが、窓214を通してレンズ212によって試験対象の口組織上に集束されるように配置される。 近赤外線点光源手段は、1つまたは複数の電池式赤外線発光ダイオード(IRED)を備えることができる。 2つのそのようなIRED216および216は、図5に示される実施形態で見ることができる。 複数のIREDを使用する他の実施形態では、3つ、4つ、またはそれ以上のIREDを点源手段として使用することができる。) (引1-カ) 「[0044] The embodiment of FIG. 5 includes an optical filter 229 for shielding all but the desired near-IR energy from detector 228. Filter 229 and window 214 are positioned for direct contact with the membrane or mouth tissue of the test subject. An optically clear window can be employed in lieu of filter 229, if desired.」 (当審訳:図5の実施形態は、検出器228からの所望の近赤外線エネルギー以外のすべてを遮蔽するための光学フィルタ229を含む。フィルタ229およびウィンドウ214は、被験者の膜または口腔組織と直接接触するように配置される。 必要に応じて、フィルタ229の代わりに光学的に透明な窓を使用することができる。) (引1-キ) 「[0047] Pulse oximetry is a non-invasive medical technique useful for measuring certain vascular conditions. In practice of the technique, light is passed through a portion of a patient's body that contains arterial blood flow. An optical sensor is used to detect the light that has passed through the body, and variations in the detected light at various wavelengths are then used to determine arterial oxygen saturation and/or pulse rates. Oxygen saturation may be calculated using some form of the classical absorption equation known as Beer's Law. The embodiments of FIGS. 5-7B are adaptable for pulse oximetry. Pulse oximetry is described in U.S. Pat. Nos. 6,421,549; RE28990; 4,086,915; 4,407,290; 4,807,631; 5,111,817; 5,411,024; 5,431,159; 5,448,991; 5,725,480; 5,820,550; 6,064,898; 6,151,107 and 6,226,540, all incorporated herein by reference.」 (当審訳:パルス酸素濃度測定法は、特定の血管の状態を測定するのに有用な非襲侵的医療技法である。この技術の実施においては、光は、動脈血流を含む患者の身体の一部を通過する。光学センサは、身体を通過した光を検出するために使用され、様々な波長で検出された光における変動は、動脈血酸素飽和度および/または脈拍数を求めるのに使用される。酸素飽和度は、Beerの法則として知られている古典的な吸収式の何らかの形態を用いて計算することができる。図5~7Bの実施形態は、パルス酸素濃度測定に適応可能である。パルス酸素濃度測定法は、米国特許第6,421,549号; RE28990; 4,086,915; 4,407,290; 4,807,631; 5,111,817; 5,411,024; 5,431,159; 5,448,991; 5,725,480; 5,820,550; 6,064,898; 6,151,107および6,226,540に記載されており、これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる。) (引1-ク) 「We claim: 1.A body function monitor; comprising: a mouth guard comprising pliable material configured to protect teeth and mouth tissue; and at least one sensor integrated into said mouth guard, wherein said at least one sensor is selected to measure at least one blood constituent selected from the group consisting of blood sugar, blood oxygen, oxygen saturation level, blood acidity and carbon dioxide level.」 (当審訳: 歯および口腔組織を保護するように構成された柔軟な材料を含むマウスガードと、 前記マウスガードに組み込まれた少なくとも1つのセンサからなる身体機能モニターであって、前記少なくとも1つのセンサは、血糖、血中酸素、酸素飽和レベル、血液酸性度、および二酸化炭素レベルからなる群から選択される少なくとも1つの血液成分を測定するように選択されるものである身体機能モニター。) (引1-ケ) [図:0001399108000001.jpg] (引1-コ) [図:0001399108000002.jpg] (引1-サ) [図:0001399108000003.jpg] (引1-ケ)のFig.1aは、マウスガードの上面図であり、全体がU字状であることが看取される。そして、Fig.1bは、マウスガードの後背図であり、左右にH字の形状を有することが看取でき、(引1-ア)の記載の記載から、Fig.1aにおける外側リム30と内側リム50間に、歯が位置することが把握されるから、Fig.1bのマウスガードにおけるH字の溝部分に歯が位置すると認められる。 上記(引1-イ)には、温度センサ要素を「生体適合性のマウスガード材料内にカプセル化」することが記載されており、(引1-ウ)には、温度センサを他のセンサに置き換えることが記載されており、置き換えるセンサの例として、「パルス酸素濃度計で使用されるものと同様の飽和血中酸素センサ」が挙げられていることを合わせると、引用文献1には、飽和血中酸素センサを生体適合性のマウスガード材料内にカプセル化することが開示されていると認められる。 また、上記(引1-エ)~(引1-カ)は、(引1-サ)に示される図5の実施形態である「血液中のグルコースの量」の測定に関するセンサについての記載であり、このセンサは「事前に選択された波長の近赤外エネルギーを、」「歯茎」「または口の内壁に送信するように集束」する「赤外線発光ダイオード(IRED)」(引1-エ)と、「血液の成分と相互作用し、」「再放出または散乱される」「近赤外エネルギー」「を収集する」「検出器」(引1-エ)を備えるものである。そして、(引1-キ)に「図5~7Bの実施形態は、パルス酸素濃度測定に適応可能である。」との記載があるとおり、図5の実施形態のセンサをパルス酸素濃度センサとすることが示唆されている。更に、(引1-ウ)に「パルス酸素濃度測定で使用されるものと同様の飽和血中酸素センサを使用して、血中酸素と心拍数を監視できます。」と記載されていることから、図5の実施形態のセンサ(「事前に選択された波長の近赤外エネルギーを、」「歯茎」「または口の内壁に送信するように集束」する「赤外線発光ダイオード(IRED)」と、「血液の成分と相互作用し、」「再放出または散乱される」「近赤外エネルギー」「を収集する」「検出器」を備えるセンサ)を飽和血中酸素センサとすることが開示されていると認められる。 してみると、引用文献1には、「事前に選択された波長の近赤外エネルギーを、」「歯茎」「または口の内壁に送信するように集束」する「赤外線発光ダイオード(IRED)」と、「血液の成分と相互作用し、」「再放出または散乱される」「近赤外エネルギー」「を収集する」「検出器」を備える飽和血中酸素センサを、生体適合性のマウスガード材料内にカプセル化して組み込むことが記載されているといえる。 (イ)引用文献1に記載された発明 上記(ア)の記載事項及び図面を総合的に勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「歯および口腔組織を保護するように構成された柔軟な材料を含むマウスガードと前記マウスガードに組み込まれた少なくとも1つのセンサからなる身体機能モニターであって、少なくとも一つのセンサは、飽和血中酸素センサであり、赤外線発光ダイオード (IRED)及び検出器を備え、赤外線発光ダイオード (IRED)は、事前に選択された波長の近赤外エネルギーを、歯茎または口の内壁に送信するように集束されるものであり、検出器は、血液の成分と相互作用し再放出または散乱される近赤外エネルギーを収集するものであり、さらに、飽和血中酸素センサはマウスガード材料内にカプセル化されており、前記マウスガードは、背面視でH字形状を有し、全体として上面視でU字状の形状であって、H字形状の上下溝部分に歯が位置するものである身体機能モニター。」 イ 引用文献2 本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献であり、周知の技術の例示として提示する、実願平4-28710号(実開平5-86304号)のCD-ROM(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0013】 パッド32は、プローブ本体31の送受光面12a,15a側に着脱可能な状態で接着されている。このパッド32は、透光部32aと遮光部32bと舌部32cとから構成されている。 透光部32aは、たとえば可撓性を有する半透明のシリコンゴムを材料として構成され、送光面12a及び受光面15aに対応する位置に配置されている。この透光部32aは、送受光面12a,15aより僅かに大きい外形寸法で構成されている。遮光部32bは、透光部32aの外周側において、外部からの光を遮断するために設けられている。この遮光部32bはたとえば黒色のシリコンゴムで形成され、透光部32aと同様に可撓性を有している。遮光部32bの一端部には、パッド32を交換する際のつまみとなる舌部32cが形成されている。」 「図4 [図:0001399108000004.jpg] 」 ウ 引用文献3 本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献であり、周知の技術の例示として提示する「アーマーバイト(ArmourBite)」発売の平成23年10月のプレスリリース資料(以下「引用文献3」という。)には、次の製品写真が掲載されている。 [図:0001399108000005.jpg] 対比 ア 引用発明の「歯および口腔組織を保護するように構成された柔軟な材料を含むマウスガードと前記マウスガードに組み込まれた少なくとも1つのセンサからなる身体機能モニター」は、口腔内に設置されることは自明であるから、本件補正発明の「口腔内に設置される生体情報検出装置」に相当する。 イ 引用発明の「赤外線発光ダイオード (IRED)」は、本件補正発明の「光を発することのできる発光素子」に相当し、引用発明の「歯茎または口の内壁に送信」された「事前に選択された波長の近赤外エネルギー」が「血液の成分と相互作用し再放出または散乱され」た「近赤外エネルギーを収集する」「検出器」は、本件補正発明の「前記発光素子から発せられた前記光を受光可能な受光素子」に相当することから、引用発明の「赤外線発光ダイオード (IRED)及び検出器を備え」た「飽和血中酸素センサ」は、本件補正発明の「光を発することのできる発光素子、および前記発光素子から発せられた前記光を受光可能な受光素子を含むセンサ」に相当する。 ウ 引用発明は、「飽和血中酸素センサはマウスガード材料内にカプセル化され」ており、「マウスガード材料」は「柔軟な材料」であるから、引用発明において「マウスガード」のうち「飽和血中酸素センサ」が「カプセル化され」ている部分が、本件補正発明の「前記センサを密封する可撓性の封止部材」に相当する。 エ 引用発明の「柔軟な材料を含むマウスガード」のうち、「飽和血中酸素センサ」を「カプセル化」している部分以外の部分が、「カプセル化」している部分とつながっていることは当業者にとって明らかであるから、引用発明の「飽和血中酸素センサ」を「カプセル化」している部分以外の「柔軟な材料を含むマウスガード」が、本件補正発明の「前記封止部材を保持可能な可撓性の保持部材」に相当する。 オ 引用発明の「赤外線発光ダイオード (IRED)は、事前に選択された波長の近赤外エネルギーを、歯茎または口の内壁に送信するように集束されるもの」であるから、「赤外線発光ダイオード」が、「歯茎または口の内壁」に対向するように配置されていることは明らかであり、「口の内壁」は「頬の内面」であるので、引用発明の「赤外線発光ダイオード (IRED)は、事前に選択された波長の近赤外エネルギーを、歯茎または口の内壁に送信するように集束されるもの」であることは、本件補正発明の「前記発光素子は、前記第1の透光部分を介して歯茎または頬の内面と対向するように配置され」ることに相当する。 カ 引用発明の「検出器」は、「歯茎または口の内壁に送信」された「事前に選択された波長の近赤外エネルギー」が「血液の成分と相互作用し再放出または散乱され」た「近赤外エネルギーを収集する」ものであるから、「検出器」が「歯茎または口の内壁」に対向していることは明らかである。引用発明における「検出器」が「歯茎または口の内壁」に対向していることは、本件補正発明の「前記受光素子は、前記第2の透光部分を介して歯茎または頬の内面と対向するように配置され」ることに相当する。 以上によれば、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 一致点: 「 口腔内に設置される生体情報検出装置であって、 光を発することのできる発光素子、および前記発光素子から発せられた前記光を受光可能な受光素子を含むセンサと、 前記センサを密封する可撓性の封止部材と、 前記封止部材を保持可能な可撓性の保持部材と を有し、 前記発光素子は、前記第1の透光部分を介して歯茎または頬の内面と対向するように配置され、 前記受光素子は、前記第2の透光部分を介して歯茎または頬の内面と対向するように配置されている、 生体情報検出装置。」 相違点1: 封止部材について、本件補正発明が、「前記発光素子を覆うと共に前記光を透過可能な第1の透光部分、前記受光素子を覆うと共に前記光を透過可能な第2の透光部分、および前記光を遮る遮光部分を含み、」「前記第1の透光部分は前記発光素子よりも広い領域を占めており、前記第2の透光部分は前記受光素子よりも広い領域を占めている」のに対して、引用発明は、「飽和血中酸素センサ」を「カプセル化」している部分の光の透過性が不明である点。 相違点2: 保持部材について、本件補正発明が、「上顎の一部の歯または下顎の一部の歯に取り付けられて」いるのに対して、引用発明は、「背面視でH字形状を有し、全体として上面視でU字状の形状であって、H字形状の上下溝部分に歯が位置するもの」であり、取り付けられる対象の歯が上顎の歯と下顎の歯の両方であって、上顎と下顎のそれぞれの歯の一部か全部か不明である点。 判断 ア 上記相違点1の検討 飽和血中酸素センサといった光学式センサは、対象に光を照射して、対象からの光を受光することで測定するものであるから、光学式センサの外装部において発光素子に対応する部分と受光部に対応する部分に透光部を必要とすることは技術常識である。一方、光学式センサの外装部において発光素子に対応する部分と受光部に対応する部分に透光を目的として穴を空けてしまっては外装として機能しなくなることもまた自明のことであるから、引用発明において、赤外線発光ダイオード (IRED)と検出器に対応する箇所のカプセル化部材が透光性を有することは、光学式センサの上記測定原理から明らかである。 また、光学式センサにおいて、測定部位以外からの光の存在が測定に好ましくないことは例示をするまでもない技術常識であり、光学センサを用いる引用発明においても、この課題が内在していることは当業者にとって明らかである。そして、この課題を解決する手段として、生体に用いる光学式センサにおいて、当該センサの外装部に送受光面より大きな透光部を設けるとともに経路外の光を遮光する遮光部を設けることは、(2)イに示した引用文献2の記載事項にみられるように周知技術であるから、引用発明に上記周知技術を適用し、赤外線発光ダイオード (IRED)と検出器に対応する箇所のカプセル化部材を赤外線発光ダイオード (IRED)と検出器より広い領域について透光部とするとともに、他の部分を遮光部とすること、つまり、上記相違点1に係る本願補正発明の構成を具備させることは、当業者が容易になし得ることである。 イ 上記相違点2の検討 歯とフィットする部分を歯の形状に合わせた形に成形して、上顎の一部の歯または下顎の一部の歯に取り付けるようにしたマウスガードは周知(例えば、引用文献3を参照。)であり、引用発明において、歯との接触部分を一部のみとすることで機能が失われたりすることもないから、引用発明を上顎の一部の歯または下顎の一部の歯に取り付けるような形状とすることは当業者が適宜なし得る設計的事項である。 ウ 審判請求人の主張についての判断 本件補正発明が奏する効果について、請求人は、審判請求書の「本願発明が特許されるべき理由」の項の(3-3)において、 封止部材および保持部材が可撓性を有することから生体情報検出装置を安定的に口腔内に設置することができること(効果1)、 封止部材の加工精度や生体情報検出装置を歯に装着した際の封止部材の変形により第1の透光部分と発光素子との位置ずれや第2の透光部分と受光素子との位置ずれが生じた場合であっても、第1の透光部分を透過する発光素子からの光の光量、および第2の透光部分を透過して受光素子に入射する光の光量を十分に確保できること(効果2)、 封止部材での乱反射による迷光の発生を低減することができ、測定精度を高めることができること(効果3)、 という旨を主張している。 しかし、効果1については、引用発明もマウスガードが「柔軟な材料」で構成されることから、同様の効果を奏することは当業者が引用文献1の記載から十分予想しうる範囲内のことである。 また、効果2について、当初明細書等には記載も示唆もされておらず、当初明細書等から自明であるとも認められないので、参酌できない。仮に、効果2が当初明細書等から自明であるとしても、当業者が周知技術から十分予想しうる範囲内のものである。 そして、効果3については、(4)アの相違点1についての検討で述べたように上記周知技術の効果にすぎず、引用発明に周知技術を適用する際に、当業者が十分に予想しうる範囲内のものである。 なお、引用発明の認定において、引用文献1の(引1-イ)及び(引1-ウ)の記載事項に基づいて、引用発明が「飽和血中酸素センサはマウスガード材料内にカプセル化されて」いるとしたが、引用文献1の(引1-カ)及び(引1-キ)の記載に基づいて、赤外線発光ダイオード (IRED)に対応する「ウインドウ」及び検出器に対応する「ウインドウ」が、「被験者の膜または口腔組織と直接接触するように配置され」ているものと認定したとしても、引用文献1の(引1-イ)には、カプセル化により、センサ要素とユーザが直接接触することを防ぐことが示唆されていることから、「飽和血中酸素センサをマウスガード材料内にカプセル化」することは当業者が容易になし得ることである。 したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 小括 以上のとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができず、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の来てにより却下すべきものである。 よって上記補正の却下の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和4年8月19日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、同年4月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、概略以下のとおりである。 2.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ●理由2(特許法29条1項3号)について 請求項1-5及び7-9 / 引用文献1 ●理由3(特許法29条2項)について 請求項1-5及び7-9 / 引用文献1 請求項6 / 引用文献1及び2 引用文献1:米国特許出願公開第2005/0113654号明細書 引用文献2:特開2018-930号公報(周知技術を示す文献) 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「封止部材」が「可撓性」であり、(「第1の透光部材」及び「第2の透光部材」に加えて)「光を遮る遮光部材」を含み、「前記第1の透光部分は前記発光素子よりも広い領域を占めており、前記第2の透光部分は前記受光素子よりも広い領域を占めている」こと、及び、「保持部材」が「可撓性」であることに係る限定事項を削除したものである。 本件補正発明については、前記第2の[理由]2(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、周知技術は透光部分の領域及び遮光部分に関連するものであるから、本件補正発明の特定事項の中で、「封止部材」が「光を遮る遮光部分を含」むこと、及び、「前記第1の透光部分は前記発光素子よりも広い領域を占めており、前記第2の透光部分は前記受光素子よりも広い領域を占めている」こと以外のすべての事項を含む発明については、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。 そして、本件補正発明の特定事項の中で、透光部分の領域と遮光部分の存在に関する上記事項以外のすべての事項を含む発明は、本願発明の発明特定事項を全て含むものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-013021

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