審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2025-002403

クロトータンパク質レベルを評価および改善するための製品および方法

審判番号
2025-002403
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2023-086449外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2025年02月17日
審決日
2026年01月06日
公報発行日
2026年06月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G01N) / P18 .537-Z (G01N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2023- 86449「クロトータンパク質レベルを評価および改善するための製品および方法」拒絶査定不服審判事件〔令和5年8月16日出願公開、特開2023-113737〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 18項目
理 由

1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2018年(平成30年)12月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年12月6日、米国 2018年5月4日、米国、2018年6月29日、米国、2018年12月3日、米国)を国際出願日とする特願2020-531132号の一部を、令和5年5月25日に新たな特許出願としたものであって、同年6月26日に上申書の提出とともに手続補正がなされ、令和6年4月2日付けの拒絶理由の通知に対し、同年7月9日に意見書の提出とともに手続補正がなされたが、同年10月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和7年2月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 本件発明

本願の請求項1~10に係る発明は、令和6年7月9日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないしに記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。

「 室温で、または凍結せずに、10~1000μlの哺乳動物の毛細血管血を容器内で少なくとも48時間保管するステップであって、
前記毛細血管血が、ある量の可溶性クロトータンパク質を含有し、
前記容器が、その中に配置された保存剤または抗凝血剤を有し、前記保存剤または抗凝血剤が、ヘパリンまたはEDTAを含み、
前記保存剤または抗凝血剤が、前記容器内の前記毛細血管血と混合され、
前記保存剤または抗凝血剤が、室温で、または凍結せずに、前記可溶性クロトータンパク質を少なくとも48時間安定化させる、前記保管するステップと、
前記保管するステップの後にアッセイすることにより、前記容器内で安定化された可溶性クロトータンパク質の量に基づいて、前記毛細血管血中の可溶性クロトータンパク質の量を定量化するステップと、を含む方法。」

3 原査定における拒絶の理由

原査定の拒絶の理由の概要は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の最先の優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

引用文献1:HUMAN SOLUBLE ALPHA KLOTHO (Α-KLOTHO)

ELISA,Immuno-Biological Laboratories, Inc.,201

6年11月24日,https://www.ibl-america.com/

klotho-alpha-human-soluble/

引用文献2:Technical Report # 27998 Human soluble α-Klotho

Assay Kit - IBL Sample stability information,

Immuno-Biological Laboratories, Inc.,2010年,

https://www.ibl-america.com/content/brochures

/Tech_P.pdf

引用文献3:米国特許出願公開第2007/0190668号明細書
引用文献4:欧州特許出願公開第00440350号明細書
引用文献5:国際公開第2011/050110号
引用文献6:米国特許出願公開第2017/0343466号明細書
引用文献7:米国特許第04313927号明細書
引用文献8:Jasna Lenicek Krleza,Capillary blood sampling:

national recommendations on behalf of the Croatian

Society of Medical Biochemistry and Laboratory

Medicine,Biochemia Medica,2015年,Vol.25 No.3,

Page.335-358

引用文献9:米国特許出願公開第2011/0021370号明細書
引用文献10:米国特許出願公開第2007/0099203号明細書
引用文献11:特表2017-524362号公報
引用文献12:CRCグループTOP > シー・アール・シー >

よくある検査のご質問 > 質問 採血後、全血のまま

保存する場合の温度は?,CRC CORPORATION,201

3年6月30日,

https://web.archive.org/web/20130630024235

/http://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/149.html

引用文献13:ご提出材料の保存条件見直しのお知らせ,株式会社エス

アールエル,2011年,https://www.

srl.info/srlinfo/srlnews/2011/2011-27.html

なお、引用文献1を主引用発明が記載された文献として引用し、引用文献2及び引用文献11を副引用文献として引用し、引用文献3~8及び引用文献12~13を周知技術を示す文献として引用している。

4 引用文献

(1)引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明

折りたたみ中(クリックで表示)

ア 引用文献1の記載事項

原査定の拒絶の理由で引用され、本願の最先の優先権主張の日前の2016年11月24日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、HUMAN SOLUBLE ALPHA KLOTHO (A-KLOTHO) ELISA,Immuno-Biological Laboratories, Inc.,,https://www.ibl-america.com/klotho-alpha-human-soluble/(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載事項がある。なお、括弧内に当審による翻訳文を記載するとともに、引用発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。

(ア)「Solid phase sandwich ELISA for the determination of human soluble Alpha Klotho (α-Klotho) in serum and EDTA-plasma. For research use only, not for use in diagnostic procedures.」

(血清およびEDTA血漿中のヒト可溶性アルファクロトー(α-クロトー)を測定するための固相サンドイッチELISA。研究用のみ。診断手順での使用は不可。)

(イ)「α-Klotho is a key player that integrates a multi-step regulatory system of calcium metabolism and phosphate homeostasis. α-klotho was identified as an extremely down-regulated gene in the genetic mutation mouse (Klotho mouse) of which phenotype is very similar to various symptoms of human aging. 」

(α-クロトーは、カルシウム代謝とリン酸恒常性の多段階調節システムを統合する重要な役割を果たす。α-クロトーは、遺伝子変異マウス(クロトーマウス)において極度の発現抑制遺伝子として同定され、その表現型はヒトの老化のさまざまな症状と非常に類似する。)

(ウ)「Assay Description: 1 hour incubation(RT)+30 min.(RT)+30 min.(RT)=2 hours total incubation time」

(試験方法: 1時間(室温)+30分(室温)+30分(室温)のインキュベーション=合計2時間のインキュベーション時間)

(エ)「Catalog number: 27998」

(カタログ番号: 27998)

(オ)「design: Solid phase sandwich ELISA using 2 kinds of highly specific antibodies」

(設計: 2種類の高特異性抗体を用いた固相サンドイッチELISA)

(カ)「Sample types: Serum, plasma (EDTA, Heparin, Citrate), urine and cell culture supernatant」

(検体種別: 血清、血漿(EDTA、ヘパリン、クエン酸塩)、尿、細胞培養上清)

(キ)「Sample volume: 100 μL of properly diluted unknown / determination」

(試料量: 100μLの適切に希釈した未知試料/測定試料)

(ク)「Standards: 8 standards, serially diluted from 1 prepared lyophilized standard」

(標準液: 8種類の標準液。1種類の調整済み凍結乾燥標準液を段階的に希釈)

(ケ)「Standard range: 0 / 93.75 - 6000 pg/mL」

(標準範囲: 0/93.75~6000pg/mL)

(コ)「storage: 2-8℃」

(保存温度:2~8℃)

(サ)「Species: Human」

(種: ヒト)

イ 引用文献1に記載された発明

「血清およびEDTA血漿中のヒト可溶性アルファクロトーを測定するための固相サンドイッチELISAを用いる試験方法であって、
ヒトの血清、血漿(EDTA、ヘパリン、クエン酸塩)を、100μLに適切に希釈して未知試料又は測定試料とし、1種類の調整済み凍結乾燥標準液を段階的に希釈した8種類の標準液を用い、2種類の高特異性抗体を用いた固相サンドイッチELISAにより、1時間(室温)+30分(室温)+30分(室温)のインキュベーションを行う試験方法。」

(2)引用文献11の記載事項及び引用文献11に記載された技術的事項

折りたたみ中(クリックで表示)

ア 引用文献11の記載事項

原査定の拒絶の理由において、クロトーたんぱく質は凍結保存に向かないものであるという技術的事項を示す文献として引用され、本願の最先の優先権主張の日前の平成29年8月31日に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特表2017-524362号公報(以下「引用文献11」という。)には、図面と共に以下の記載事項がある。なお、技術的事項の認定に用いた箇所に下線を追加した。

(ア)技術分野

「【0003】
αKlothoポリペプチド内のエピトープと特異的に、例えば、競合的ELISAアッセイにより測定した場合に約2nM以下の解離定数(KD)で結合する抗体および/またはその結合フラグメント、ならびに例えば、腎臓病を診断するための前記抗体の作製方法および使用方法。」

(イ)発明の具体的説明

「【0149】
さらなる態様は、サンプルにおいてαKlothoポリペプチドを検出するためのアッセイであり、このアッセイは、
a)サンプルと本明細書に記載の抗体または結合フラグメントとを、抗体:αKlotho複合体を形成する条件下で接触させること、および
b)抗体:αKlotho複合体を検出すること
続きを表示(全24行)
を含んでなる。
・・・
【0154】
1つの実施形態では、本方法は、例えば可溶性αKlothoを検出するためのものであり、この場合、サンプルは体液である。
【0155】
さらなる態様は、可溶性αKlothoを検出および/または測定する方法を含み、その方法は、
a)体液であるサンプルと本明細書に記載の抗体または結合フラグメントとを、抗体:可溶性αKlotho複合体を形成する条件下で接触させること、および
b)抗体:可溶性αKlotho複合体を検出および/または測定すること
を含んでなる。
【0156】
検出は、定性的方法、または例えば標準もしくは標準曲線と比較することによる定量的方法を用いて測定される方法を用いて実施することができる。
【0157】
1つの実施形態では、体液サンプルは血液、または血清もしくは血漿などのその一部、あるいは尿である。
・・・
【0173】
1つの実施形態では、サンプルは、血液、または血漿もしくは血清などのその画分などの体液であり、本方法は、例えば、可溶性αKlothoを検出する。1つの実施形態では、体液は尿である。
【0174】
別の実施形態では、サンプルは、新鮮な体液サンプルまたは組織サンプルなどの新鮮なサンプル(例えば、凍結されていないまたは1回凍結(例えば、サンプル入手時に1回の凍結)を含む)および反復凍結サンプル(例えば、凍結および解凍ならびに凍結体液サンプルまたは反復凍結組織サンプル)から選択される。1つの実施形態では、サンプルは、固定が限定された変性および/または折り畳みの解除を誘導する軽度固定サンプルなどの固定サンプルである。
【0175】
1つの実施形態では、αKlothoのレベルは、本明細書に記載の抗体または結合フラグメントを用いて測定される。」

(ウ)実施例

「【0193】
実施例3:αKlothoアッセイおよび詳細な方法
ELISAは、製造者(Immuno-Biological Laboratory、日本)により説明されている通りに実施した。IP-IBアッセイでは、一般に、50μlの血清または尿をKRHバッファー[25mM Hepes-NaOH(pH7.4)、120mM NaCl、5mM KCl、1.2mM MgSO4、1.3mM CaCl2、1.3mM KH2PO4]で希釈して最終容量0.5mlとし、低結合性のシリコン処理済みチューブ中、4℃で一晩、2μgのsb106-Fabとともにインキュベートした。KRHバッファーで3回前洗浄した抗FLAG抗体(50%v/v)を結合させたセファロースビーズ(50μL)を加え、インキュベートした(4℃×2時間)、洗浄し(チューブ当たりKRH-500μl 3回;22℃)。免疫複合体を2×SDSサンプルローディングバッファー(50μl;100℃×3分;4℃×3分;回転)で溶出させ、SDS-PAGEで分画し、ニトロセルロース膜に転写し、抗KL1抗体(KM2076、1:4000または3.1mg/mL、1:10000希釈)および希釈剤(Dako#S3022、カーピンテリア、CA、USA)で一晩(4℃、ロッカー)ブロットした。膜を洗浄し(3回、0.1%Tweenを含むTris緩衝生理食塩水;TBS-T)、抗ラットIgG2A(LSBio cat#LS-C59051、5%ミルク/2%ヤギ血清/TBS-T中1:20000×1時間)に曝し、洗浄した(3回、TBS-T)。化学発光については、膜をSuperSignal West Femto Maximum Sensitivity基質(Thermo Scientific、ロックフォード、IL、USA)で覆い、30~90秒間露光した。130kDバンドをスキャンし、Adobe Photoshop CS4を用い、既知量のKlothoの内部対照サンプルと密度を比較した。
・・・
続きを表示(全16行)
【0198】
実施例7:ヒトCKDにおけるαKlothoレベル
IP-IB法がCKD患者の一施設データベースからの血清αKlothoレベルを確実に決定できるかどうかを試験した。
・・・
【0200】
CKD診療から動員された患者の性質は、糖尿病および高血圧症が優勢であるCKDの全国的特性と類似している(表1)。拡散しているものの、CKDのステージとともにαKlothoの明らかな段階的低下が見られる(図5A)。血清αKlothoの低下はCKDの早期に見られ、高FGF23、高PTH、および高リン酸塩血症に先行した(表1)。IP-IBアッセイでは、同サンプルで、市販のαKlotho ELISAキットと直接比較した(図5B)。全体的に見れば、二者の間に相関が見られるが、直線の両側に同一直線からの分離がある。新鮮サンプルでは、ELISAはIP-IBよりも高い値を示すが(識別ライン(the line of identity)の左側のグレーの菱形、図5B)、1回以上の凍結-解凍を経たサンプルでは、ELISA値ははるかに低い(識別ラインの右側の黒い菱形、図5B)。厳密に同じサンプルが反復凍結-解凍前および後にこれらの2つの方法で試験された場合、IP-IBアッセイはより安定な結果を示すが、ELISA値は急速に下降した(図5C)。
・・・
【0207】
IP-IBアッセイのバリデーションおよび市販のELISAとの比較
・・・
【0211】
IP-IBおよび市販のELISAは両方とも、CKDにおいて低い尿αKlothoを検出したが、αKlothoの絶対レベルはELISAアッセイを用いた場合にはるかに高く、低下率はIP-IBアッセイと同じではない。CKDにおける尿αKlothoレベルの劇的な低下では、これら2つのアッセイは、量的には異なるが、同じ結論を示した。血清での状況は異なる。全体的には正の相関が見られるが、これらの2つのアッセイを比較すると、完全に2群に分離した(図5B)。新鮮サンプルは、ELISAのほうが高い読み取りを示したが、保存サンプルはELISAで極めて低い結果を示した。1つの可能性は、ELISAがαKlothoと新鮮サンプル中の他のいくつかの反応性タンパク質を測定しているということである。IP-IBアッセイは、反復凍結-解凍によりいくらか有効性を失ったが、これはELISAではるかに重大な問題である。」
合議体注:図5A~5Cは、以下のものである。

[図:0001435900000001.jpg]

イ 引用文献11に記載された技術的事項

前記ア(ウ)の記載に基づけば、本願の最先の優先権主張の日前において、次の技術的事項が知られていたといえる。

「凍結-解凍を経たサンプルは、ELISAやIP-IBにおいて可溶性αKlothoの測定値が低下する」

(3)周知技術

ア 引用文献3の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

原査定の拒絶の理由で周知技術を示す文献として引用され、本願の最先の優先権主張の日前の2007年8月16日に頒布された引用文献である、米国特許出願公開第2007/0190668号明細書(以下「引用文献3」という。)には、以下の記載事項がある。なお、括弧内に当審による翻訳文を記載するとともに、周知技術の認定に用いた箇所に下線を付した。

(ア)発明の分野

「[0002] 1. Field of the Invention
[0003] This invention relates to a homogenous immunoassay method and a system for determining specific antibody levels to a multiplicity of allergens from a blood sample, or for determining total immunoglobulins E levels in such a sample, for the purpose of diagnosing allergy.」

([0002] 1.発明の分野

[0003] 本発明は、均質イムノアッセイの方法および血液サンプルから、またはそのような試料中の全免疫グロブリンEレベルを決定するための多数のアレルゲンに対する特異的抗体レベルを決定するためのシステムに関し、アレルギーを診断する目的のためにある。)

(イ)発明の概要

「[0017] Speaking very generally, this invention provides a method and a system for simultaneously detecting and quantifying levels of specific immunoglobulin antibodies to a plurality of allergens, using a very small sampling of blood, for the purpose of diagnosing allergy. The invention also provides a method and a system for detecting and quantifying levels of total immunoglobulin E in such a small blood sampling.
[0018] In general, the method of this invention comprises simultaneously measuring specific immunoglobin antibody levels to from 2 to about 100 allergens in a blood sample, said method comprising:
[0019] (a) collecting a blood sample of from about 10 to about 100 μL from an individual;
[0020] (b) performing a homogeneous immunoassay on the blood sample or a portion thereof, wherein the immunoassay is capable of determining specific immunoglobin antibody levels to from 2 to about 100 allergens; and
[0021] (c) determining the said specific immunoglobin antibody levels,
[0022] and the system comprises a system for simultaneously measuring a plurality of specific immunoglobin antibody levels by use of a homogeneous immunoassay, said system comprising:
[0023] (a) a plurality of particles coupled to from 2 to about 100 allergens;
[0024] (b) a first conjugate comprising an anti-human IgE or IgG antibody conjugated to a first member of a specific binding pair; and
[0025] (c) a second conjugate comprising a second specific binding pair member that binds to the first specific binding pair member; the system being capable of conducting simultaneous quantitative determination of specific immunoglobin antibody levels to from 2 to about 100 allergens, by a homogeneous immunoassay.」

([0017] 非常に一般的に述べると、本発明は、アレルギー診断を目的として、微量の血液サンプルを用いて、複数のアレルゲンに対する特異的免疫グロブリン抗体のレベルを同時に検出し、定量する方法およびシステムを提供する。また、本発明は、このような微量の血液サンプル中の総免疫グロブリンEのレベルを検出し、定量する方法およびシステムも提供する。

[0018] 一般に、本発明の方法は、血液サンプル中の2~約100種のアレルゲンに対する特異的免疫グロブリン抗体レベルを同時に測定することを含み、前記方法は以下を含む:

[0019] (a) 個体から約10~約100μLの血液サンプルを採取する工程;

[0020] (b) 血液サンプルまたはその一部に対して、2~約100種のアレルゲンに対する特異的免疫グロブリン抗体レベルを測定可能な均一系免疫アッセイを実施する工程;および

[0021] (c) 前記特異的免疫グロブリン抗体レベルを測定する工程、

[0022] また、このシステムは、均質免疫アッセイを用いて複数の特異的免疫グロブリン抗体レベルを同時に測定するシステムを含み、前記システムは以下を含む:

[0023] (a) 2~約100種のアレルゲンに結合した複数の粒子;

[0024] (b) 特異的結合ペアの第1のメンバーに結合した抗ヒトIgE又はIgG抗体を含む第1のコンジュゲート;および

[0025] (c) 第1の特異的結合ペアメンバーに結合する第2の特異的結合ペアメンバーを含む第2のコンジュゲート;前記システムは、均質免疫アッセイによって、2~約100種のアレルゲンに対する特異的免疫グロブリン抗体レベルの同時定量測定を行うことができる。)

(ウ)発明の詳細な説明

「[0049] This invention provides a method and a system for detecting and quantifying specific antibodies to allergens in a blood sample of an individual, for the diagnosis of allergy. Heretofore, in vitro tests for allergy have employed immunoassay methods requiring venous draw samplings of blood to enable testing on a panel of allergens. Typically, sample requirements of current methods, to determine levels of specific antibodies against a panel of five or more allergens, are from one to three milliliters of blood. As compared to the prior art, the invention limits the sample volume requirements to ten microliters of sample or less, which can be used to test against two or more allergens, preferably against ten, twenty, forty or more allergens. The amount of sample required is sufficiently small that individuals can remotely obtain a blood sample using a fingerstick or similar procedure. The invention removes the need for obtaining blood samples by venous drawing procedures at physicians' offices, hospital laboratories or clinical reference laboratories.
[0050] In a preferred embodiment of this invention, the individual whose blood is to be tested is provided with a kit for collecting and mailing, or otherwise submitting, the blood sample. The kit typically contains one or more devices for puncturing the skin of a finger or other portion of the body (e.g., a “fingerprick” or “fingerstick” device) in order to draw some blood, an alcohol or other antiseptic swab for cleaning the area to be punctured, a vial or other small container in which the blood is to be put and sealed, and an appropriate container for mailing the blood sample to the laboratory for testing. The kit also may contain additional items such as adhesives to protect the wound, instructional inserts and labels with individual identification numbers (e.g., PIN) for samples. In any case, the exact form and contents of such a kit can vary according to the desires of the laboratory and do not form a part of this invention. Numerous components for such kits are readily available for collection and/or testing of blood (for instance, at home) for various purposes.」

[0049] 本発明は、アレルギーの診断のために、個人の血液サンプル中のアレルゲンに対する特異的抗体を検出し、定量化する方法およびシステムを提供する。従来、アレルギーの体外検査では、アレルゲン群の検査を可能にするために静脈から血液を採取する必要がある免疫測定法が採用されていた。通常、5種類以上のアレルゲン群に対する特異的抗体レベルを測定する現行手法の血液の検体必要量は、1~3ミリリットルである。従来技術と比較して、本発明は必要なサンプル容積を10マイクロリットル以下に制限し、これにより2種類以上のアレルゲン、好ましくは10、20、40種類以上のアレルゲンに対する検査が可能となる。必要な検体量が十分に少ないため、個人が指先穿刺法や類似の手順を用いて遠隔で血液サンプルを採取することが可能である。本発明は、診療所、病院検査室、または臨床検査室における静脈採血による血液サンプルの採取を不要とする。

[0050] 本発明の好ましい実施形態において、血液検査を受ける個人には、血液サンプルを採取し郵送、またはその他の方法で提出するためのキットが提供される。キットには通常、指やその他の部位の皮膚を穿刺するための装置(例えば、「フィンガープリック」又は「フィンガースティック」装置)、穿刺部位を消毒するためのアルコールまたはその他の消毒用綿棒、採取した血液を密封するためのバイアルまたはその他の小型容器、そして検査のために血液サンプルを検査室へ郵送するための適切な容器が含まれる。キットには、創傷保護用接着剤、取扱説明書、検体用個別識別番号(例えば、PIN)ラベルなどの追加品が含まれる場合がある。いずれにせよ、当該キットの正確な形態および内容は検査室の要望に応じて異なる可能性があり、本発明の一部を構成するものではない。こうしたキット用の多数の部品は、様々な目的で血液を採取および/または検査するために(例えば家庭で)容易に入手可能である。)

イ 引用文献5の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

原査定の拒絶の理由で周知技術を示す文献として引用され、本願の最先の優先権主張の日前の2011年4月28日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2011/050110号(以下「引用文献5」という。)には、図面と共に以下の記載事項がある。なお、括弧内に当審による翻訳文を記載するとともに、周知技術の認定に用いた箇所に下線を付した。

(ア)技術分野

「[0001] Disclosed herein are methods and systems related to sample collection, assays, and fluid control and management.」

([0001] 試料収集、分析、および流体制御及び管理に関する方法及びシステムを開示する。)

(イ)詳細な説明

「[0047] Example methods and systems are disclosed herein with respect to point-of-care, user-initiated fluidic assay methods and systems, for illustrative purposes. Methods and systems disclosed herein are not, however, limited to the assay methods and systems disclosed herein. Based on the teachings herein, one skilled in the art will understand that methods and system disclosed herein may be implemented with respect to other assay systems, including diagnostic assays and chemical assays.」

([0047] 例示的な方法およびシステムは、ポイントオブケア、ユーザ起動流体分析方法及びシステムに関連して本明細書で開示され、例示の目的のためのものである。本明細書に開示する方法及びシステムは、本明細書に開示される分析方法及びシステムに限定されるものではない。本明細書の教示に基づいて、当業者であれば、本明細書に開示する方法及びシステムは、他のアッセイ系、診断アッセイおよび化学的アッセイを含むに対して実施することができることを理解するであろう。)

「[0048] An immunoassay is a biochemical test to detect a substance, or measure a concentration of a substance, in a biological sample such as blood, saliva, or urine, using a reaction between an antibody and an antigen specific to the antibody.」

([0048] 免疫学的測定法は、物質を検知するものや、物質の濃度を測定し、血液、唾液、尿等の生物学的サンプル中、抗体に特異的な抗体と抗原との反応を使用する生化学検査である。)

「[00193] Methods and systems to collect samples are described below with respect to FIGS. 24-27.」

([00193] サンプルを収集する方法およびシステムについて、図24~27を参照して以下に説明する。)

合議体注:図24~27は、以下のものである。

[図:0001435900000002.jpg]

「[00194] FIG. 24 is a perspective view of a sample collection system 2400, including a body 2402, a cover 2404, and a plunger 2406.」

([00194] 図24は、試料収集システム2400の斜視図であり、本体2402と、カバー2404と、プランジャ2406を備えている。)

「[00195] FIG. 25 is another perspective view of sample collection system 2400, wherein body 2402 includes a sample collection region 2502, and cover 2404 includes an inner surface 2504 sized to slideably enclose sample collection region 2502.」

([00195] 図25は、試料収集システム2400の他の斜視図であり、本体2402は、サンプル収集領域2502とを備えており、カバー2404は、サンプル収集領域2502をスライド可能に囲むサイズの内面2504が含まれている。)

「[00196] Sample collection system 2400 may include O-rings 2506 and 2508 to sealingly enclose or isolate sample collection region 2502 from an exterior environment.」

「[00198] Sample collection region 2502 may be configured to receive a sample collection pad, which may include a glass fiber pad or other material to absorb an amount of sample. The sample collection pad may be sized to hold or absorb a relatively small amount of sample, such as, for example approximately 250 micro-liters (μl) or less, which is approximately a volume of a drop of blood from a finger puncture.」

([00198] サンプル収集領域2502は、サンプル収集パッドを受け入れるように構成することができ、サンプル収集パッドには、一定量のサンプルを吸収するためのガラス繊維パッドまたはその他の材料を含めることができる。サンプル収集パッドは、比較的少量のサンプル、例えば、約250マイクロリットル(μl)以下(指を穿刺して採取した一滴の血液の量程度)を保持または吸収できるサイズにすることができる。)

「[00203] In FIG. 26A, a finger 2600 is lanced to expel a drop of blood 2602 to a blood collection pad 2604 within sample collection region 2502 of FIG. 25. Finger 2600 is subsequently withdrawn from sample collection region 2502 and cover 2404 is slid over sample collection region 2502.」

([00203] 図26Aでは、指2600を穿刺し、図25のサンプル収集領域2502内の血液収集パッド2604に血液2602を一滴排出する。その後、指2600をサンプル収集領域2502から引き抜き、カバー2404をサンプル収集領域2502の上にスライドさせる。)

「[00204] In FIG. 26B, plunger 2406 is pushed towards a fluid passage 2606. Fluid 2608 within fluid chamber 2614 is forced into a fluid passage 2616 to entry lumen 2510. The fluid flows through sample collection pad 2604, where it mixes with or dislodges blood from sample 2602. Resultant blood containing fluid exits sample collection region 2502 through exit lumen 2512, and passes through a fluid passage 2618 to fluid passage 2606, from where it can exit the sample collection system 2400, such as for assay and/or storage.」

([00204] 図26Bでは、プランジャー2406が流体通路2606に向かって付勢されている。流体室2614内の流体2608は、流体通路2616を通って入口管腔2510に押し出される。液体はサンプル収集パッド2604を通過し、そこでサンプル2602において、血液が混合又は除去される。得られた血液を含む流体は、出口管腔2512を通ってサンプル収集領域2502から排出され、流体通路2618を通過して流体通路2606に送られ、そこから分析および/または保管のためにサンプル収集システム2400から排出される。)

ウ 引用文献6の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

原査定の拒絶の理由で周知技術を示す文献として引用され、本願の最先の優先権主張の日前の2017年11月30日に頒布され、又は、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2017/0343466号明細書(以下「引用文献6」という。)には、以下の記載事項がある。なお、括弧内に当審による翻訳文を記載するとともに、周知技術の認定に用いた箇所に下線を付した。

(ア)発明の概要

「[0003] Provided herein are systems, detection methods, and kits for assaying multiple antigens, analytes or other microparticulates from patient samples. In one embodiment, provided herein is a system for detecting analytes in a sample comprising: one or more housing units; a bead array, wherein the bead array comprises at least one detection bead labelled with a detectable signal and a capture probe attached to the detection bead surface and wherein the bead array is capable of detecting more than two analytes in a sample; an analyte detection molecule; a fluidic chip, the fluidic chip incorporating at least one microfluidic channel that one or more detection beads flows through within the fluidic chip; a detection window incorporated in one of the one or more housings, the detection window being operable to facilitate the capture of one or more images of one or more detection beads flowing within the detection window; and a detection module, the detection module comprising an optical imaging system and software for image analysis, that allows communication to and from a central database.」

([0003] 本明細書では、患者のサンプルから複数の抗原、分析対象物、またはその他の微粒子を分析するためのシステム、検出方法、およびキットが提供される。一実施形態では、本明細書では、サンプル中の分析対象物を検出するためのシステムが提供され、このシステムは、1つ以上のハウジングユニットと、検出可能な信号で標識された少なくとも1つの検出ビーズと、検出ビーズ表面に付着した捕捉プローブとを含み、サンプル中の2つ以上の分析対象物を検出することができるビーズアレイと、分析対象物検出分子と、流体チップと、流体チップ内を1つ以上の検出ビーズが流通する少なくとも1つのマイクロ流体チャネルとを組み込んだ流体チップと、1つ以上のハウジングの1つに組み込まれた検出ウィンドウと、検出ウィンドウ内を流通する1つ以上の検出ビーズの1つ以上の画像の捕捉を容易にするように動作可能な検出モジュールと、中央データベースとの通信を可能にする光学画像システムおよび画像解析用ソフトウェアとを含む検出モジュールとを備える。)

「[0010] In some embodiments, all reagents required for the test are supplied and sealed in the cartridge. In further embodiments, the reagents are dried in the cartridge or device. In further embodiments, the reagents are lyophilized. In further embodiments, the reagents on the cartridge have a shelf life of at least 12 months at 0℃. to 40℃., at least 12 months at 10℃. to 40℃., at least 12 months at 10℃. to 30℃., at least 12 months at 20℃. to 30℃., at least 12 months at 10℃., at least 12 months at 20℃., at least 12 months at 30℃., at least 12 months at 40℃. In further embodiments, the reagents on the apparatus have a shelf life of at least 48 hours with fluctuations between 0℃. and 50℃. In some embodiments, the cartridge holds a maximum volume of 50 microliters. In other embodiments, the cartridge holds a maximum volume of 10 microliters to 50 microliters. In yet other embodiments, the cartridge holds a maximum volume of 20 microliters to 40 microliters. In still other embodiments, the cartridge holds a maximum volume of 25 microliters to 30 microliters. In some embodiments, the cartridge requires a minimum of 2 microliters for analysis. In some embodiments the cartridge requires a minimum of 2 microliters to 15 microliters for analysis. In some embodiments, the cartridge requires a minimum of 2 microliters to 10 microliters for analysis. In some embodiments, the cartridge requires a minimum of 2 microliters to 5 microliters for analysis. In some embodiments, the cartridge has a system for metering the amount of blood to be analyzed.」

([0010] いくつかの実施形態では、試験に必要な全ての試薬は、カートリッジ内に供給され、封止されている。さらなる実施形態では、試薬は、カートリッジまたは装置の中で乾燥される。さらなる実施形態では、試薬を凍結乾燥する。さらなる実施形態では、カートリッジ上の試薬の保存期間は、0℃~40℃で少なくとも12ヶ月間、10℃~40℃で少なくとも12ヶ月間、10℃~30℃で少なくとも12ヶ月間、20℃~30℃で少なくとも12ヶ月間、10℃で少なくとも12ヶ月間、20℃で少なくとも12ヶ月間、30℃で少なくとも12ヶ月間、40℃で少なくとも12ヶ月間である。さらなる実施形態では、装置上の試薬は、0℃から50℃の間で変動する条件下で少なくとも48時間の保存期間を有する。いくつかの実施形態では、カートリッジは最大50マイクロリットルの容量を保持する。他の実施形態では、カートリッジは最大10マイクロリットルから50マイクロリットルの容量を保持する。さらに他の実施形態では、カートリッジは、最大20マイクロリットル~40マイクロリットルの容量を保持する。さらに他の実施形態では、カートリッジは、最大25マイクロリットル~30マイクロリットルの容量を保持する。いくつかの実施形態では、カートリッジは分析に最低2マイクロリットルを必要とする。いくつかの実施形態では、カートリッジは分析のために最低2マイクロリットルから15マイクロリットルを必要とする。いくつかの実施形態では、カートリッジは分析のために最低2マイクロリットルから10マイクロリットルを必要とする。いくつかの実施形態では、カートリッジは分析のために最低2マイクロリットルから5マイクロリットルを必要とする。いくつかの実施形態では、カートリッジは分析される血液の量を計測するためのシステムを有する。)

(イ)流体チップ

「[0034] In some embodiments, the systems, methods, and kits described herein include fluidic chip, or use of the same. In further embodiments, the fluidic chip may be a fluidic cartridge, a microfluidic cartridge, a fluidic cartridge, a microfluidic cartridge, a microfluidic chip, or some other applicable element. ・・・」

([0034] いくつかの実施形態において、本明細書に記載のシステム、方法、およびキットは、流体チップの使用を含む。さらなる実施形態では、流体チップは、流体カートリッジは、マイクロ流体カートリッジの流体カートリッジ、マイクロ流体チップ、または他の適用可能な素子であってもよい。・・・)

「[0035] In some embodiments, the fluidic chip may incorporate one or more areas, such as a sample loading compartment, a mixing chamber, a reaction chamber, a fluidic channel, an analysis chamber, and a waste collection chamber. In further embodiments, the fluidic chip may contain a sample loading compartment, where the sample is transferred by pipette into a port. In further embodiments, the sample loading compartment is treated with EDTA. In some embodiments, the cartridge accommodates a blood sample, for example from a finger prick collected using a pipette. In some embodiments, from about 1 to about 100 microliters, from about 1 to about 50 microliters, from about 1 to about 25 microliters, from about 1 microliters, from about 5 microliters, from about 10 microliters, from about 15 microliters, from about 20 microliters, from about 25 microliters, from about 30 microliters, from about 35 microliters, from about 40 microliters, from about 45 microliters, from about 50 microliters, from about 55 microliters, from about 60 microliters, from about 65 microliters, from about 70 microliters, from about 75 microliters, from about 80 microliters, from about 85 microliters, from about 90 microliters, from about 95 microliters, from about 100 microliters will be transferred to the microfluidic cartridge using the pipette. In another embodiment, the microfluidic cartridge can have a sample collection port where a blood sample, for example from a finger prick, can be directly collected and loaded on to the cartridge.」

([0035] いくつかの実施形態では、流体チップは、1つ以上の領域、試料充填室、混合室、反応室、流体チャネル、分析チャンバ、および廃棄物収集室を組み込んでもよい。さらなる実施形態では、流体チップは、サンプル添加区画は、サンプルをピペットへ転送される場合を含んでもよい。さらなる実施形態において、試料液装填室がEDTAで処理される。いくつかの実施形態では、カートリッジは、ピペットを使用して集められた指穿刺血液サンプルを収容している。いくつかの実施形態では、約1~約100マイクロリットル、約1~約50マイクロリットル、約1~約25マイクロリットル、約1マイクロリットル、約5マイクロリットル、約10マイクロリットル、約15マイクロリットル、約20マイクロリットル、約25マイクロリットル、約30マイクロリットル、約35リットル、約40マイクロリットル、約45マイクロリットル、約50マイクロリットル、約55マイクロリットル、約60マイクロリットル、約65マイクロリットル、約70から約75マイクロリットル、約80マイクロリットル、約85マイクロリットル、約90マイクロリットル、約95マイクロリットル、約100マイクロリットルピペットを使用して微小流体カートリッジに移される。別の実施形態では、微小流体カートリッジは、例えば指を刺すことにより、血液サンプルを直接カートリッジに収集および挿入可能なサンプル回収ポートを有することができる。)

エ 引用文献7の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

原査定の拒絶の理由で周知技術を示す文献として引用され、本願の最先の優先権主張の日前の1982年2月2日に頒布された引用文献である、米国特許第04313927号明細書(以下「引用文献7」という。)には、以下の記載事項がある。なお、括弧内に当審による翻訳文を記載するとともに、周知技術の認定に用いた箇所に下線を付した。

(ア)第1欄第8~19行 発明の背景

「1. Field of the Invention
This invention relates to immunoassay methods for detecting the presence of antibodies to viral antigens in test samples derived from human blood. The detection of viral antibodies in a patient's blood is indicative of past or current viral infection. Such information can be of great clinical value, particularly in prenatal screens to determine risks from infections due to such viral agents as cytomegalovirus, Rubella virus, herpesvirus, and the like or to determine success obtained with vaccinations against viral diseases such as measles, Rubella, mumps, polio and the like.」

(1.発明の分野

本発明は、ヒト血液由来の試験サンプル中のウイルス抗原に対する抗体の存在を検出するためのイムノアッセイ法に関する。患者の血中におけるウイルス抗体の検出は、過去又は現在の感染を示す。このような情報は、大きな臨床的価値、特に出生前スクリーニングサイトメガロウイルス、風疹ウイルス、ヘルペスウイルスなどのウイルス因子による感染からの危険性を決定するために、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ポリオウイルス等のようなウイルス性疾患に対するワクチン接種で得られた成功を決定するためのものとすることもできる。)

(イ)第2欄第37~56行 発明の概要

「 It has now been discovered that the prior art indirect, solid-phase immunoassays for detecting viral antibodies can be applied directly to whole human blood samples. The qualitative and quantitative results using whole blood samples are virtually the same as those using serum samples as required by the prior art. In accordance with the present invention, the test sample employed in the assay is whole human blood diluted at least 1:20 by volume with an isotonic (i.e., having the same osmotic pressure as human blood) aqueous solution. Whole blood samples can be obtained by a simple finger prick or by conventional venipuncture and the assay run on the diluted sample without removal of red blood cells. The present assay is particularly applicable to the detection of antibodies to cytomegalovirus and/or Rubella antigens. Antibodies of various immune globulin classes, including IgG and IgM particularly, can be detected. Any conventional label may be used, including radioactive and enzyme labels.」

( ウイルス抗体を検出するための従来の間接固相免疫測定法が、ヒトの全血サンプルに直接適用できることが発見された。全血サンプルを使用した定性的および定量的結果は、従来技術で要求されている血清サンプルを使用した場合と実質的に同じである。本発明によれば、アッセイに用いられる試験サンプルは、等張性(すなわち、ヒトの血液と同じ浸透圧を有する)水溶液で少なくとも1:20の体積に希釈されたヒトの全血である。全血サンプルは、指先を刺すだけの簡単な操作又は従来の静脈穿刺によって採取することができ、赤血球を除去せずに希釈サンプルで検査を実施する。本発明のアッセイは、特にサイトメガロウイルスおよび/または風疹の抗原に対する抗体の検出にも適用可能である。特にIgGおよびIgMを含むさまざまな免疫グロブリンクラスの抗体を検出できる。放射性ラベルや酵素ラベルなど、従来のラベルも使用できる。)

(ウ)第5欄第32~48行 実施例6

「Radioimmunoassay for CMV Antibody in Finger Prick Whole Human Blood
Approximately 10 microliters (μl) of finger prick blood were diluted with 0.5 ml PBS (described in Example 1) containing 1% bovine serum albumin (approximately a 1:50 dilution). A 0.2 ml aliquot of the diluted sample was added to a CMV antigen coated tube (prepared as in Example 3) and incubated 1 hour at 37℃. After aspirating the sample by vacuum, the tube was washed twice with approximately 3 ml PBS. A 0.2 ml volume of 125I-anti-human IgG (300,000 counts per minute; prepared as in Example 5) in PBS containing 1% bovine serum albumin was added to the tube and incubated 1 hour at 37℃. After aspirating the liquid by vacuum, the tube was washed twice with approximately 3 ml PBS. The radioactivity remaining in the tube was measured in a gamma-counter.」

(フィンガープリックヒト全血中CMV抗体の放射免疫測定法

約10マイクロリットル(μl)のフィンガープリックの血液を、1%ウシ血清アルブミン(約1:50希釈)を含む0.5mlのPBS(実施例1に記載)で希釈した。希釈したサンプルの0.2mlの画分を、CMV抗原コートチューブ(実施例3と同様に調製)に添加し、37℃で1時間インキュベートした。サンプルを真空により吸引した後、管を約3mlのPBSで2回洗浄した。1%ウシ血清アルブミンを含むPBS中の125I抗ヒトIgG(300,000カウント/分、実施例5と同様に調製)0.2mlをチューブに加え、37℃で1時間インキュベートした。真空により液体を吸引した後、管を約3mlのPBSで2回洗浄した。チューブ内に残った放射能をガンマカウンターで測定した。)

オ 引用文献8の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

原査定の拒絶の理由で周知技術を示す文献として引用され、本願の最先の優先権主張の日前の2015年に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、Jasna Lenicek Krleza,Capillary blood sampling: national recommendations on behalf of the Croatian Society of Medical Biochemistry and Laboratory Medicine,Biochemia Medica,2015年,Vol.25 No.3,Page.335-358(以下「引用文献8」という。)には、以下の記載事項がある。なお、括弧内に当審による翻訳文を記載するとともに、周知技術の認定に用いた箇所に下線を付した。

(ア)要約

「Capillary blood sampling is a medical procedure aimed at assisting in patient diagnosis, management and treatment, and is increasingly used worldwide, in part because of the increasing availability of point-of-care testing. It is also frequently used to obtain small blood volumes for laboratory testing because it minimizes pain. The capillary blood sampling procedure can influence the quality of the sample as well as the accuracy of test results, highlighting the need for immediate, widespread standardization. A recent nationwide survey of policies and practices related to capillary blood sampling in medical laboratories in Croatia has shown that capillary sampling procedures are not standardized and that only a small proportion of Croatian laboratories comply with guidelines from the Clinical Laboratory Standards Institute (CLSI) or the World Health Organization (WHO). The aim of this document is to provide recommendations for capillary blood sampling. This document has been produced by the Working Group for Capillary Blood Sampling within the Croatian Society of Medical Biochemistry and Laboratory Medicine. Our recommendations are based on existing available standards and recommendations (WHO Best Practices in Phlebotomy, CLSI GP42-A6 and CLSI C46-A2), which have been modified based on local logistical, cultural, legal and regulatory requirements. We hope that these recommendations will be a useful contribution to the standardization of capillary blood sampling in Croatia.」

(毛細管血液サンプリングは、患者の診断、管理、治療を支援することを目的とした医療処置であり、ポイントオブケア検査の利用可能性が高まっていることもあって、世界中でますます使用されている。また、痛みを最小限に抑えられるため、臨床検査のために少量の血液を採取するのにもよく使用される。毛細血管採血手順は検体の質と検査結果の正確性に影響を及ぼすため、即時かつ広範な標準化の必要性が強調されている。クロアチアの医療検査室における毛細血管採血に関連する方針と実施状況に関する最近の全国調査では、毛細血管採血手順が標準化されておらず、クロアチアの検査室のうち臨床検査標準化機構(CLSI)または世界保健機関(WHO)のガイドラインに準拠しているのはごく一部であることが明らかになった。この文書の目的は、毛細血管血液採取に関する推奨事項を提供することである。この文書は、クロアチア医学生化学および臨床検査医学会内の毛細管血液サンプリング作業部会によって作成された。我々の推奨事項は、既存の入手可能な基準及び推奨事項(WHO採血優良事例、CLSI GP42-A6及びCLSI C46-A2)に基づき、現地の物流、文化、法的および規制上の要件に応じて修正を加えたものである。これらの推奨事項がクロアチアにおける毛細管血液サンプル採取の標準化に役立つことを期待する。)

(イ)第335頁左欄第1~3行 序論

「Capillary blood sampling, which refers to sampling blood from a puncture on the finger, heel or an earlobe, is increasingly common in medicine.」

(毛細血管採血は、指、かかと、または耳たぶの穿刺から血液を採取することを指し、医療の分野でますます一般的になりつつある。)

カ 引用文献3、5~8に記載された周知技術

上記ア~オの記載事項に基づけば、本願の最先の優先権主張の日前において、以下の周知技術が存在したといえる。

「血液中の物質を検出及び定量する方法において、指先穿刺法の手順を用いて少ない量の血液サンプルを採取すること」

(4)技術常識

ア 引用文献12の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

原査定の拒絶の理由で周知技術を示す文献として引用され、本願の最先の優先権主張の日前の2013年6月30日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったウェブサイトである、CRCグループTOP > シー・アール・シー > よくある検査のご質問 > 質問 採血後、全血のまま保,CRC CORPORATION,https://web.archive.org/web/20130630024235/http://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/149.html(以下「引用文献12」という。)には、以下の記載事項がある。なお、技術常識の認定に用いた箇所に下線を付した。

(ア)回答 第1~5行

「採血後、できるだけ速やかに検査することが原則ですが、やむを得ず保存する場合は適切な環境下で保存します。多くの場合血液は血清(血漿)の凍結保存が最も安定していることから、検体採取後、速やかに血清(血漿)分離し、凍結保存します。ただし、やむを得ず保存する場合は通常の生化学検査では常温で保存します。」

(イ)採血した検体の取り扱い

「(2)抗凝固剤など添加物入り全血:測定まで4~10℃下で保存します。」

イ 引用文献13の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

原査定の拒絶の理由で周知技術を示す文献として引用され、本願の最先の優先権主張の日前の2011年に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったウェブサイトである、ご提出材料の保存条件見直しのお知らせ,株式会社エスアールエル,2011年,https://www.srl.info/srlinfo/srlnews/2011/2011-27.html(以下「引用文献13」という。)には、以下の記載事項がある。なお、周知技術の認定に用いた箇所に下線を付した。

「弊社ではご提出時の保存条件を、従来は「凍結」を基本としておりましたが、検査データへの影響を改めて検討いたしました結果、「冷蔵」を標準的な保存条件とさせて頂きました。」

ウ 引用文献12及び13に記載された周知技術

上記ア及びイの記載事項に基づけば、本願の最先の優先権主張の日前において、以下の技術常識が存在したといえる。

「検体の安定性に応じて、試料を冷蔵保存すること」

5 対比

本件発明と引用発明とを対比する。

(1)保管するステップ

引用発明は、「ヒトの血清、血漿(EDTA、ヘパリン、クエン酸塩)を、100μLに適切に希釈して未知試料又は測定試料」とするものである。本件発明の「10~1000μlの哺乳動物の毛細血管血」と引用発明の「ヒトの血清、血漿(EDTA、ヘパリン、クエン酸塩)を、100μLに適切に希釈して未知試料又は測定試料」とは、「10~1000μlの哺乳動物の血液に由来する試料」である点で共通する。

また、引用発明は、「血清およびEDTA血漿中のヒト可溶性アルファクロトーを測定する」試験方法である。そうすると、引用発明の「未知試料又は測定試料」には、「ヒト可溶性アルファクロトー」が含まれているといえる。したがって、引用発明の「未知試料又は測定試料」は、本件発明の「ある量の可溶性クロトータンパク質を含有し、」とする要件を満たしている。

さらに、引用発明の「ヒトの血清、血漿(EDTA、ヘパリン、クエン酸塩)」は、ヒトの血液に由来する試料に、EDTA、ヘパリン、クエン酸塩が混合されて得られたものであり、EDTA及びヘパリンは、技術的にみて保存剤又は抗凝結剤として作用し、ヒトの血液に由来する試料を安定化するといえる。したがって、本件発明の「前記保存剤または抗凝血剤が、前記容器内の前記毛細血管血と混合」されるステップと引用発明の「ヒトの血清、血漿(EDTA、ヘパリン、クエン酸塩)を、100μLに適切に希釈して未知試料又は測定試料」とするステップとは、「前記保存剤または抗凝血剤が、前記血液に由来する試料と混合」されるステップである点で一致する。また、引用発明の「ヒトの血清、血漿(EDTA、ヘパリン、クエン酸塩)」は、本件発明の「保存剤または抗凝血剤を有し、前記保存剤または抗凝血剤が、ヘパリンまたはEDTAを含み、」とする要件、及び、「前記可溶性クロトータンパク質」を「安定化させる」とする要件を満たしている。

(2)定量化するステップ

引用発明は、「血清およびEDTA血漿中のヒト可溶性アルファクロトーを測定するため」に、「1種類の調整済み凍結乾燥標準液を段階的に希釈した8種類の標準液を用い、2種類の高特異性抗体を用いた固相サンドイッチELISAにより、1時間(室温)+30分(室温)+30分(室温)のインキュベーション」を行うものである。引用発明の「ヒト可溶性アルファクロトー」の測定は、複数の標準液を用いていることから、定量化しているといえる。そうすると、本件発明の「前記保管するステップの後にアッセイすることにより、前記容器内で安定化された可溶性クロトータンパク質の量に基づいて、前記毛細血管血中の可溶性クロトータンパク質の量を定量化するステップ」と引用発明の「1種類の調整済み凍結乾燥標準液を段階的に希釈した8種類の標準液とを用い、2種類の高特異性抗体を用いた固相サンドイッチELISAにより、1時間(室温)+30分(室温)+30分(室温)のインキュベーション」を行うステップとは、「前記ステップの後にアッセイすることにより、安定化された可溶性クロトータンパク質の量に基づいて、前記毛細血管血中の可溶性クロトータンパク質の量を定量化するステップ」である点で共通する。

(3)一致点及び相違点

以上より、本件発明と引用発明とは、

「 10~1000μlの哺乳動物の血液に由来する試料であって、
前記血液に由来する試料が、ある量の可溶性クロトータンパク質を含有し、
保存剤または抗凝血剤を有し、前記保存剤または抗凝血剤が、ヘパリンまたはEDTAを含み、
前記保存剤または抗凝血剤が、前記血液に由来する試料と混合され、
前記保存剤または抗凝血剤が、前記可溶性クロトータンパク質を安定化させる、ステップと、
前記ステップの後にアッセイすることにより、安定化された可溶性クロトータンパク質の量に基づいて、前記毛細血管血中の可溶性クロトータンパク質の量を定量化するステップと、を含む方法。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]

本件発明の試料は「毛細血管血」であるのに対し、引用発明の試料は「血清、血漿」である点。

[相違点2]

本件発明は、「室温で、または凍結せず」に、「容器内で少なくとも48時間保管」するとともに「容器が、その中に配置された保存剤または抗凝血剤を有し」、「室温で、または凍結せず」に、「少なくとも48時間」安定化させると特定するのに対し、引用発明は、室温で、または凍結せずに、容器内で少なくとも48時間保管し、安定化されると特定しておらず、「EDTA、ヘパリン、クエン酸塩」が容器内に配置されると特定していない点。

6 判断

(1)[相違点1]について

前記4(3)カに記載したとおり、本願の最先の優先権主張の日前において、「血液中の物質を検出及び定量する方法において、指先穿刺法の手順を用いて少ない量の血液サンプルを採取すること」は、周知技術である。ここで、指先穿刺法により採取された血液サンプルは、前記4(3)オ(イ)の引用文献8における「毛細血管採血は、指、かかと、または耳たぶの穿刺から血液を採取すること」との記載に基づけば、毛細血管血であるといえる。

引用発明は、「ヒトの血清、血漿(EDTA、ヘパリン、クエン酸塩)を、100μLに適切に希釈して未知試料又は測定試料」とするものであって、少ない量の血液試料を用いるものである。引用発明と上記周知技術とは血液検査の分野において血液サンプルを採取する手法に関する点で共通している。そうすると、本願の最先の優先権主張の日前において、少ない量の血液サンプルを採取するための周知技術として知られていた「指先穿刺法」の採用を試みることは、当業者が容易に想到し得ることである。

また、「指先穿刺法」は、引用文献3、5~8に示されるとおり、従来より血液中の様々な物質の検知及び定量に用いられている。そして、毛細血管血中における「ヒト可溶性アルファクロトー」が、血液中に存在する他の物質とは異なる挙動を示すという根拠も見出せない。そうすると、血液サンプル中に存在するタンパク質である「ヒト可溶性アルファクロトー」を試験するにあたり、上記周知の「指先穿刺法」により採取された毛細血管血を用いることに阻害要因が存在したということはできない。

そして、本願の明細書の記載を参酌しても、「可溶性クロトータンパク質」を検査する際の試料として、毛細血管血を採用したことにより、異なる効果を奏するということもできない。そうすると、上記[相違点1]に係る効果が、格別顕著なものということもできない。

したがって、引用発明において、上記周知技術を採用し、本件発明の[相違点1]に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(2)[相違点2]について

前記4(2)イに記載したとおり、本願の最先の優先権主張の日前において、「凍結-解凍を経たサンプルは、ELISAやIP-IBにおいて可溶性αKlothoの測定値が低下する」ことが知られていたといえる。また、前記4(4)ウに記載したとおり、「検体の安定性に応じて、試料を冷蔵保存すること」は、本願の最先の優先権主張の日前における技術常識であるといえる。

そうすると、「ヒトの血清、血漿(EDTA、ヘパリン、クエン酸塩)」に含まれる「ヒト可溶性アルファクロトー」の測定を「ELISA」で行う引用発明において、採取した試料を直接測定することが困難な場合に、測定値の低下を避けるために、凍結-解凍を経ることを避け、容器中で冷蔵保存を行うことは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、どの程度の時間にわたって保存を行うかは、試料採取及び試料測定が実施されるそれぞれのタイミングや時間的距離と、求められる試験精度などに応じて、当業者が適宜設定すべき事項である。そうすると、保存時間を少なくとも48時間とすることは、当業者が適宜設定し得た事項である。

また、試料として、「ヒトの血清、血漿(EDTA、ヘパリン、クエン酸塩)」を用いる引用発明において、採取した血液試料に、EDTA、ヘパリン、クエン酸塩を添加するため、保存に用いる容器に予め、EDTA、ヘパリン、クエン酸塩を担持させることは、文献を示すまでもない慣用手段であるといえる。

したがって、引用発明において、室温で、または凍結せずに、容器内で少なくとも48時間保管するとともに容器が、その中に配置された保存剤または抗凝血剤を有し、室温で、または凍結せずに、少なくとも48時間安定化させることは、当業者が容易になし得たことである。

(3)効果について

引用発明は、「ヒトの血清、血漿(EDTA、ヘパリン、クエン酸塩)」を測定試料とするものである。また、前記4(4)ア(ア)の引用文献12の記載に基づけば、採血後の試料をやむを得ず保存する場合に、抗凝固剤など添加物入り全血の場合、適切な環境下である、測定まで4~10℃下という環境下で保存することは技術常識である。そして、本願の明細書の記載を参酌しても、10~1000μlの毛細血管血を、ヘパリンまたはEDTAと混合して容器内で少なくとも48時間保管することによって、当業者の予測を超えた格別な効果が生じると理解することはできない。段落【0170】~【0190】には、表12~表23と共に、「ELISAキットを使用したヒト血漿中でのクロトー安定性」として、静脈及び毛細血管血の試料を採血し、EDTA又はヘパリン含有チューブ内に保管し、1.5ng/mLのクロトーを、静脈及び毛細血管血試料の組にスパイクし、室温で、0、1、4、16、24、48、72、96、または168時間分間保管し、その後沈降させた、各試料からの血漿を、ELISA試験の前に-80℃で保管したことが記載されている。また、段落【0191】~【0217】には、表24~表41と共に「輸送ストレスをエミュレートする様々な温度でのクロトー安定性試験」として、血液をヘパリン化血管チューブに採取し、ヘパリン化マイクロチューブに分注し、保管及び処理し、各時点で処理するか、遠心分離し、-80℃で保存し試験したことが記載されている。さらに、段落【0510】~【0517】には、実施例1として、HEKおよび/またはCHO細胞株内での列挙されたクロトー多様体の一過性発現および精製の結果が示されている。段落【0518】~【0525】には、実施例2として、(ヒト)クロトー由来タンパク質の発現を実施したことが示されている。段落【0526】~【0543】には、実施例3として、クロトーのELISAデータが示されている。段落【0544】~【0557】には、実施例4として、グリカン分析の実験条件及び結果が示されている。段落【0558】~【0561】には、実施例5として、発現タンパク質プールに対するウェスタンブロット分析の結果が示されている。段落【0562】~【0565】には、実施例6として、FGF23に対するクロトータンパク質の結合親和性試験が示されている。段落【0566】~【0580】には、実施例7として、ラットに静脈内投与した後の急性耐量を判定した試験が示されている。段落【0580】~【0597】には、実施例8として、薬物動態を判定したことが記載されている。段落【0598】~【0609】には、実施例9として、用量依存的効果を判定したことが示されている。段落【0610】~【0612】には、実施例10として、クロトータンパク質投与の効果が示されている。段落【0613】には、実施例11として、クロトー投与の治療効果が示されている。段落【0614】~【0616】には、実施例12として、クロトーが酸化的障害に対して肺を保護するかどうかを判定した結果が示されている。しかしながら、いずれの実験例も、ヘパリンまたはEDTAと混合して容器内で少なくとも48時間保管した場合の効果を、ヘパリン及びEDTAを混合せずに保管した場合の効果とを比較したものでないため、10~1000μlの毛細血管血を、ヘパリンまたはEDTAと混合して容器内で少なくとも48時間保管することによって、当業者の予測を超えた格別な効果が生じることを示していない。

そうすると、本件発明の効果は、引用文献1の記載及び技術常識に基づいて当業者が予測できる範囲のものといえる。

(4)請求人の主張について

請求人は、審判請求書において、本件特許の「保管するステップ」及び「定量化するステップ」について、引用文献1~13のいずれも、そのような特徴を開示ないし示唆していないと主張している。また、請求人は、意見書において、「室温で、または凍結せずに、10~1000μlの哺乳動物の毛細血管血を容器内で少なくとも48時間保管するステップ」について、いずれの引用文献もそのような特徴を開示も示唆もしていないと主張している。

しかし、引用発明は、「ヒトの血清、血漿(EDTA、ヘパリン、クエン酸塩)」を測定試料とするものである。また、前記4(4)ウに記載したとおり、「検体の安定性に応じて、試料を冷蔵保存すること」は、本願の最先の優先権主張の日前における技術常識である。そうすると、前記(2)において検討したとおり、引用発明において、室温で、または凍結せずに、容器内で少なくとも48時間保管すること、及び、室温で、または凍結せずに、少なくとも48時間安定化させることは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、上記請求人の主張は、採用することができない。

7 むすび(結論)

上記のとおり、本件発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献11の記載事項、周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2025-002403

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2024-020559拒絶査定不服審判 / 2026-01-27 / 請求不成立心血管イベントに対するバイオマーカー
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-013973拒絶査定不服審判 / 2025-12-03 / 請求不成立タンパク質をアッセイする方法
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-011773拒絶査定不服審判 / 2025-08-04 / 請求不成立膀胱がんのバイオマーカーとしてのケラチン17
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-007929拒絶査定不服審判 / 2025-07-23 / 請求不成立疑似インビボ条件での治療用タンパク質の選択
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-000398拒絶査定不服審判 / 2025-07-14 / 請求不成立試料における細胞間相互作用を検出するためのキット、方法、およびそれらの使用
    共通の条文: 特許法29条2項
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,052件(121・G01N、537・G01N)
  • 2024-020005拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)形質細胞関連疾患のためのアッセイ
    共通の審決分類: 121・G01N、537・G01N
  • 2025-005220拒絶査定不服審判 / 2026-08-17 / 原査定取消(特許/登録すべき)測定を実行するための最適化されたパラメータセットを特定するための方法および装置
    共通の審決分類: 121・G01N、537・G01N
  • 2025-009154拒絶査定不服審判 / 2026-08-10 / 原査定取消(特許/登録すべき)インピーダンス信号処理を用いた医療用分析装置
    共通の審決分類: 121・G01N、537・G01N
  • 2025-012340拒絶査定不服審判 / 2026-08-10 / 原査定取消(特許/登録すべき)大容量分離システム
    共通の審決分類: 121・G01N、537・G01N
  • 2025-008696拒絶査定不服審判 / 2026-08-04 / 原査定取消(特許/登録すべき)アッセイ
    共通の審決分類: 121・G01N、537・G01N

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存