特許拒絶査定不服審判
2025-002097
車両用サイドドア
- 審判番号
- 2025-002097
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-206993
- 請求日
- 2025年02月10日
- 審決日
- 2026年04月16日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社神戸製鋼所
- 【請求人代理人】山尾 憲人
- 【請求人代理人】前堀 義之
- 【請求人代理人】近田 暢朗
- 審判長/審判官
- 審判長 八木 誠
- 審判官 遠藤 秀明
- 審判官 北村 亮
- 分類
- P18 .121-WZ (B60J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-206993「車両用サイドドア」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年10月 4日出願公開、特開2022-145485〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年12月21日の出願(国内優先権主張 令和3年3月18日)であって、令和6年2月29日付け(発送日:令和6年3月5日)の拒絶理由の通知に対し、同年4月25日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、同年6月25日付け(発送日:同年7月2日)の拒絶理由の通知に対し、同年8月29日に意見書が提出されたが、同年10月31日付け(発送日:同年11月12日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して、令和7年2月10日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同年10月15日付け(発送日:同年10月21日)で当審により拒絶理由が通知され、同年12月18日に意見書の提出とともに手続補正がされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和7年12月18日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりであると認められる。
「【請求項1】
ドア本体部を構成するインナパネル又はアウタパネルであり、アルミニウム材からなるドアパネル部材と、
サッシュ部を構成するサッシュインナ又はサッシュアウタであり、前記ドアパネル部材に接合されたドア用部品と
を備え、
前記ドア用部品は、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板であって、
鋼材からなる母材と、
耐食性を有し、前記母材の表面に形成されためっき層と
を備え、
前記ドアパネル部材と前記ドア用部品とが接合された接合部において、前記ドアパネル部材と前記めっき層とが接触する一方で、前記ドアパネル部材と前記母材とが直接接触しないように、前記ドアパネル部材と前記母材との間に前記めっき層が介在しており、
前記接合部は、
前記ドアパネル部材に設けられ、前記ドア用部品側に突出した凸部と、
前記ドア用部品に設けられ、前記ドアパネル部材とは反対側に窪んだ凹部と
を備え、
前記ドアパネル部材と前記ドア用部品とは、前記凸部と前記凹部とが噛み合うことによりクリンチ接合されている、車両用サイドドア。」
第3 拒絶の理由の概要
令和7年10月15日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用文献に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 1
・引用文献 1、2又は1、 5
・請求項 2
・引用文献 1~3又は1、5、3
・請求項 3、4
・引用文献 1、2、4又は1、5、4
・請求項 5
・引用文献 1~5
<<引用文献一覧>>
1.特開2020-189505号公報
2.韓国登録特許第10-1500218号公報
3.特開2015-78722号公報
4.特許2008-267594号公報
5.特開2018-70973公報
第4 当審の判断
1 引用文献1の記載事項、引用発明
(1) 記載事項
引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同じ)
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サイドドアの製造方法、ドア用部品及びサイドドアに関するものである。」
イ 「【0011】
上記のような材料の組み合わせの具体例として、前記第1の材料はアルミニウム合金であり、前記第2の材料は鋼であるという態様を挙げることができる。
【0012】
前記車両用サイドドアの製造方法において、前記第1接合工程は、前記前側フレームの前記一方の端部および前記後側フレームの前記一方の端部のそれぞれと前記少なくとも一つのドアパネル部材との間に接着剤を介在させることを含むことが好ましい。
【0013】
この態様は、前記前側フレーム及び前記後側フレームの剛性を向上させることと、異種金属間における電食の発生が抑制されることと、を可能にする。具体的には、この態様では、前記前側フレームの前記一方の端部と前記ドアパネル部材との接合部位、及び前記後側フレームの前記一方の端部と前記ドアパネル部材との接合部位では、前記接着剤による接合方法と、当該接着剤とは別の接合方法とが併用される。それぞれの前記接合部位が前記別の接合方法により接合されるとともに前記接着剤により接合されるので、前記別の接合方法のみが用いられる場合と比べて、前記前側フレーム及び前記後側フレームのそれぞれの前記一方の端部(すなわち、これらのフレームの根元部分)が前記ドアパネル部材に対してより強固に固定される。このことは、前記前側フレーム及び前記後側フレームが前記根元部分において強く拘束され、その結果、前記前側フレーム及び前記後側フレームの剛性が向上する。しかも、前記前側フレーム及び前記後側フレームと前記ドアパネル部材との間に前記接着剤が介在するので、異種金属間における電食の発生が抑制される。なお、前記別の接合方法はサイドドアに要求される接合特性を満たすものであれば特に限定されないが、当該別の接合方法の具体例として、溶接による接合方法、リベットによる接合方法などを挙げることができる。
【0014】
前記車両用サイドドアの製造方法において、前記第2の材料は、アルミニウムめっき鋼板であることが好ましい。
【0015】
この態様は、前記前側フレーム及び前記後側フレームのそれぞれを前記ドアパネル部材に対してスポット溶接により接合することを可能にする。具体的には次の通りである。一般に、アルミニウム合金製の板と鋼板とをスポット溶接することは困難である。本態様では、前記前側フレーム及び前記後側フレームのそれぞれを構成する前記第2の材料がアルミニウムめっき鋼板であるので、前記前側フレーム及び前記後側フレームのそれぞれを、アルミニウム合金を用いて成形された前記ドアパネル部材に対してスポット溶接により接合することが可能になる。
【0016】
前記車両用サイドドアの製造方法において、前記少なくとも一つのドアパネル部材は、インナパネルおよびアウタパネルの一方のパネルと、・・・」
ウ 「【0028】
本発明のドア用部品は、第1の線膨張係数を有する第1の材料により構成される少なくとも一つのドアパネル部材と、前記少なくとも一つのドアパネル部材に接合され、前記第1の線膨張係数とは異なる第2の線膨張係数を有する第2の材料により構成されるサッシュ部と、を含み、前記サッシュ部は、車両前後方向において前側部分を構成する前側フレームと、前記車両前後方向において後側部分を構成する後側フレームと、を含み、前記前側フレームの一方の端部および前記後側フレームの一方の端部のそれぞれは、前記少なくとも一つのドアパネル部材に接合される接合部を有し、前記前側フレームと前記後側フレームとの少なくとも一方は、前記前側フレームの他方の端部と前記後側フレームの他方の端部とが互いに相対変位することを許容するように、前記前側フレームの前記他方の端部と前記後側フレームの前記他方の端部とを仮止めするための仮止め部を有する。」
エ 「【0048】
[サイドドアの構造]図1は、前記実施の形態に係る製造方法を用いて製造される車両用サイドドア100を示す側面図であり、前記サイドドア100を車両の車幅方向外側から見た図である。図1に示す前記サイドドア100は、自動車の前側のサイドドア(フロントサイドドア)であるが、本発明の車両用サイドドアの製造方法を用いて製造されるサイドドアは、自動車の後側のサイドドア(リアサイドドア)であってもよい。
・・・
【0050】
図1に示すように、前記サイドドア100は、ドア本体部10と、サッシュ部50と、を備える。前記ドア本体部10は、前記サイドドア100のウエストラインWLよりも下方に位置している。前記ドア本体部10は、車幅方向内側の面を構成するインナパネル20と、サイドドア100の車幅方向外側の面を構成するアウタパネル30と、これらのパネル20、 30の間に配置される図略の補強部材と、を備える。図1では、前記アウタパネル30は二点鎖線によりその輪郭のみが図示されている。なお、本実施の形態では、前記インナパネル20は、ドアパネル部材を構成する。」
オ 「【0052】
前記サッシュ部50は、前記ドア本体部10の上方において窓ガラスのための窓枠を形成する。前記サッシュ部50は、当該サッシュ部50の前側部分を構成する前側フレーム60と、当該サッシュ部50の後側部分を構成する後側フレーム70と、を含む。前記前側フレーム60は、前記ドア閉状態において図略の車体のサイドレールに沿って後方に湾曲しながら上方に延びる部材であり、前記後側フレーム70は、図略の車体のセンターピラーに沿って上方に延びる部材である。」
カ 「【0054】
図2及び図3に示すように、前記前側フレーム60及び前記後側フレーム70のそれぞれは、例えば、剛性に優れた閉断面構造と、窓ガラスの縁を収容するための図略の溝部を形成するチャネル断面構造と、を有する。図2及び図3においては、前記チャネル断面構造の図示は省略されている。図2に示すように、前記前側フレーム60における前記閉断面構造は、車幅方向内側に位置するインナー部分60Aと、車幅方向外側に位置するアウター部分60Bとにより形成されている。図3に示すように、前記後側フレーム70における前記閉断面構造は、車幅方向内側に位置するインナー部分70Aと、車幅方向外側に位置するアウター部分70Bとにより形成されている。ただし、これらのフレーム60、 70の構造は、図2及び図3に示す具体例に限られない。本実施の形態では、前記前側フレーム60及び前記後側フレーム70のそれぞれは、例えば金属板をロール成形することにより作製されるが、ロール成形以外の方法、例えばプレス成形することにより作製されたものであってもよい。前記プレス成形が用いられる場合には、例えば図12の断面図に示すように、前記前側フレーム60のインナー部分60Aと、前記前側フレーム60のアウター部分60Bとは、前記プレス成形により個別に成形された後、例えば溶接などの接合方法を用いて互いに接合される。前記プレス成形が用いられる場合の前記後側フレーム70の断面構造の図示は省略するが、図12に示す前記前側フレーム60の断面構造と同様である。
【0055】
前記前側フレーム60は、前記インナパネル20の前端部21に固定される下端部61(一端部の一例)と、当該下端部61とは反対側の上端部62(他端部の一例)とを有する。前記後側フレーム70は、前記インナパネル20の後端部22に固定される下端部71(一端部の一例)と当該下端部71とは反対側の上端部72(他端部の一例)とを有する。具体的には、前記前側フレーム60の前記下端部61は、前記インナパネル20の上部に位置する前端部21に固定され、前記後側フレーム70の前記下端部71は、前記インナパネル20の上部に位置する後端部22に固定されている。当該後側フレーム70は、当該後側フレーム70の前記下端部71から前記前側フレーム60の前記上端部62に向かって延びている。
【0056】
図2に示すように、前記前側フレーム60の前記下端部61は、前記インナパネル20の前記前端部21に対して、接着剤90により形成された接着層91によって接合されるとともに、当該接着剤90による接合方法とは別の接合方法により形成された第1接合部92において接合されている。同様に、図3に示すように、前記後側フレーム70の前記下端部71は、前記インナパネル20の前記後端部22に対して、接着剤90により形成された接着層91によって接合されるとともに、当該接着剤90による接合方法とは別の接合方法により形成された第1接合部92において接合されている。前記第1接合部92を形成する前記別の接合方法としては、例えば、溶接による接合方法、リベットによる接合方法などを挙げることができる。
【0057】
前記前側フレーム60及び前記後側フレーム70のそれぞれは、線膨張係数が前記インナパネル20を構成する材料の線膨張係数と異なる材料により構成されている。具体的に、前記前側フレーム60及び前記後側フレーム70のそれぞれは、鋼(第2の線膨張係数を有する第2の材料の一例)により構成され、前記インナパネル20は、アルミニウム合金(第1の線膨張係数を有する第1の材料の一例)により構成されている。当該アルミニウム合金としては、例えば5000系アルミニウム合金、6000系アルミニウム合金、7000系アルミニウム合金などが用いられる。また、前記前側フレーム60及び前記後側フレーム70のそれぞれは、アルミニウムめっき鋼板を用いて成形されたものであることが好ましい。また、前記アウタパネル30は、アルミニウム合金により構成されている。」
キ 「【0078】
本実施の形態では、前記第1接合工程は、前記前側フレーム60の前記下端部61と前記インナパネル20の前記前端部21との間に接着剤を介在させた状態で、当該接着剤による接合方法とは別の接合方法を用いて前記前側フレーム60の前記下端部61を前記インナパネル20の前記前端部21に接合することと、前記後側フレーム70の前記下端部71と前記インナパネル20の前記後端部22との間に接着剤を介在させた状態で、前記別の接合方法を用いて前記後側フレーム70の前記下端部71を前記インナパネル20の前記後端部22に接合することと、を含む。このことは、前記前側フレーム60及び前記後側フレーム70の剛性を向上させることと、異種金属間における電食の発生が抑制されることと、を可能にする。
【0079】
また、前記前側フレーム60及び前記後側フレーム70のそれぞれがアルミニウムめっき鋼板を用いて成形されたものである場合には、当該前側フレーム60の下端部61及び後側フレーム70の下端部71を前記インナパネル20の前端部21及び後端部22に対してスポット溶接により接合することを可能にする。」
ク 「【0096】
(E)ドアパネル部材について図1~8、 10に示す態様では、本発明におけるドアパネル部材がインナパネル20である場合を例示し、図9に示す態様では、前記ドアパネル部材がインナパネル20及び補強部材40である場合を例示し、図11に示す態様では、前記ドアパネル部材が補強部材40である場合を例示したが、これらに限られない。本発明におけるドアパネル部材は、例えばアウタパネル30であってもよく、ドア本体部10の一部を構成する上記以外の部材であってもよい。」
ケ 「【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】
本発明の実施の形態に係る製造方法を用いて製造される車両用サイドドアを示す側面図である。
【図2】
図1のII-II線における断面図である。
【図3】
図1のIII-III線における断面図である。」
・図1~図3には、以下の内容が示されている。
【図1】
「
[図:0001435884000001.jpg]
」
【図2】
「
[図:0001435884000002.jpg]
」
【図3】
「
[図:0001435884000003.jpg]
」
(2)認定事項
ア 段落【0050】、【0057】、【0096】の下線部の記載事項から「ドア本体部10を構成するインナパネル20又はアウタパネル30であり、アルミニウム合金により構成されたドアパネル部材20、30」であることが理解できる。
イ 段落【0050】、【0052】、【0054】の下線部の記載事項から、サッシュ部50は「前側フレーム60のインナー部材60A、アウター部材60Bと、後側フレーム70のインナー部材70A、アウター部材70B」により構成されていることが理解できる。
ウ 段落【0048】、【0050】、【0096】の下線部の記載事項から「車両用サイドドア100」が「ドア本体部10」である「ドアパネル部材20、30」と「サッシュ部50」と「を備える」ことが理解できる。
エ 段落【0057】の下線部の記載事項から「前側フレーム60と後側フレーム70は、アルミニウムめっき鋼板を用いて形成され」ていることが理解でき、アルミニウムめっき鋼板であれば、鋼板からなる母材と、母材の表面に形成された(アルミニウムの)めっき層を備えることは明らかであるから、図2および図3の図示内容を参照すると、「前記インナパネル20と前記前側フレーム60、前記後側フレーム70が接合された接合部において、前記インナパネル20と前記前側フレーム60、後側フレーム70の母材との間に前記めっき層が介在して直接接触しないようになっている」ことが理解できる。
(3)引用発明
そうすると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ドア本体部10を構成するインナパネル20又はアウタパネル30であり、アルミニウム合金により構成されたドアパネル部材20、30と、
サッシュ部50を構成する前側フレーム60のインナー部材60A、アウター部材60Bと、後側フレーム70のインナー部材70A、アウター部材70Bと、
を備え、
前記前側フレーム60と前記後側フレーム70は、アルミニウムめっき鋼板であって、
鋼材からなる母材と、
耐食性を有し、前記母材の表面に形成されたアルミニウムめっき層と
を備え、
前記インナパネル20と前記前側フレーム60、前記後側フレーム70が接合された接合部において、前記インナパネル20と前記前側フレーム60、後側フレーム70の母材が直接接触しないように、前記インナパネル20と前記母材との間にめっき層が介在しており、
前記前側フレーム60の前記下端部61は、前記インナパネル20の前記前端部21に対して、接着剤90により形成された接着層91によって接合されるとともに、
前記後側フレーム70の前記下端部71は、前記インナパネル20の前記後端部22に対して、接着剤90により形成された接着層91によって接合され、
異種金属間における電食の発生が抑制される、
車両用サイドドア100。」
2 対比・判断
(1)発明の対比
ア 本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「アルミニウム合金」は前者の「アルミニウム材」に相当し、以下同様に、「インナパネル20」および「アウタパネル30」は「ドアパネル部材」に、「前側フレーム60」および「後側フレーム70」は「ドア用部品」に、「インナー部材60A」および「インナー部材70A」は「サッシュインナ」に、「アウター部材60B」および「アウター部材70B」は「サッシュアウタ」に、それぞれ相当する。
上記相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。
イ 後者の「ドア本体部10を構成するインナパネル20又はアウタパネル30であり、アルミニウム合金により構成されたドアパネル部材20、30と」は、前者の「ドア本体部を構成するインナパネル又はアウタパネルであり、アルミニウム材からなるドアパネル部材と」に相当する。
ウ 後者の「サッシュ部50を構成する前側フレーム60のインナー部材60A、アウター部材60Bと、後側フレーム70のインナー部材70A、アウター部材70Bと」であり、「前記前側フレーム60の前記下端部61は、前記インナパネル20の前記前端部21に対して、接着剤90により形成された接着層91によって接合されるとともに、前記後側フレーム70の前記下端部71は、前記インナパネル20の前記後端部22に対して、接着剤90により形成された接着層91によって接合され」ているから、後者の「サッシュ部50を構成するインナー部材60Aおよびインナー部材70A又はアウター部材60Bおよびアウター部材70B」は、前記インナパネル20に接合され」ていることになり、前者の「サッシュ部を構成するサッシュインナ又はサッシュアウタであり、前記ドアパネル部材に接合されたドア用部品と」に相当する。
エ 後者の「前記前側フレーム60と前記後側フレーム70は、アルミニウムめっき鋼板」であることと、前者の「前記ドア用部品は、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板であ」ることとは、「前記ドア用部品は、アルミニウムを含有するめっき鋼板であ」ることにおいて共通する。
オ 後者の「前記前側フレーム60と前記後側フレーム70は、アルミニウムめっき鋼板であって、前記インナパネル20と前記前側フレーム60、前記後側フレーム70が接合された接合部において、前記インナパネル20と前記前側フレーム60、後側フレーム70の母材が直接接触しないように、前記インナパネル20と前記母材との間に前記めっき層が介在して」いることと、前者の「鋼材からなる母材と、耐食性を有し、前記母材の表面に形成されためっき層とを備え、前記ドアパネル部材と前記ドア用部品とが接合された接合部において、前記ドアパネル部材と前記めっき層とが接触する一方で、前記ドアパネル部材と前記母材とが直接接触しないように、前記ドアパネル部材と前記母材との間に前記めっき層が介在して」いることとは、「鋼材からなる母材と、前記母材の表面に形成されためっき層とを備え、前記ドアパネル部材と前記ドア用部品とが接合された接合部において、前記ドアパネル部材と前記母材とが直接接触しないように、前記ドアパネル部材と前記母材との間に前記めっき層が介在している」ことにおいて共通する。
カ 後者の「車両用サイドドア100」は前者の「車両用サイドドア」に相当する。
そうすると、両者は、
「ドア本体部を構成するインナパネル又はアウタパネルであり、アルミニウム材からなるドアパネル部材と、
サッシュ部を構成するサッシュインナ又はサッシュアウタであり、前記ドアパネル部材に接合されたドア用部品と
を備え、
前記ドア用部品は、アルミニウムを含有するめっき鋼板であって、
鋼材からなる母材と、
前記母材の表面に形成されためっき層と
を備え、
前記ドアパネル部材と前記ドア用部品とが接合された接合部において、前記ドアパネル部材と前記母材とが直接接触しないように、前記ドアパネル部材と前記母材との間に前記めっき層が介在している、
車両用サイドドア。」
において一致し、以下の各点において相違すると認められる。
<相違点1>
本願発明1では、ドア用部品の母材表面に溶融Zn-Al-Mg系めっきを形成し、接合部においてドアパネル部材とめっき層とが接触する一方で、ドアパネル部材とドア用部品の母材とが直接接触しないようにドアパネル部材と前記母材の間に溶融Zn-Al-Mg系めっき層を介在させているのに対して、引用発明では、前側フレーム60、後側フレーム70の母材表面にアルミニウムめっきを形成し、接合部においてインナパネル20と両フレームの母材とが直接接触しないようにインナパネル20と両フレーム母材との間にアルミニウムめっき層と接着層91を介在させている点。
<相違点2>
本願発明1では、「前記接合部は、前記ドアパネル部材に設けられ、前記ドア用部品側に突出した凸部と、前記ドア用部品に設けられ、前記ドアパネル部材とは反対側に窪んだ凹部とを備え、前記ドアパネル部材と前記ドア用部品とは、前記凸部と前記凹部とが噛み合うことによりクリンチ接合されている」のに対して、引用発明では、そのような特定はされていない点。
(2)相違点の検討
<相違点1ついて>
自動車部品等で用いられる鋼板において、異種金属腐食を抑えることを課題として、溶融Zn-Al-Mg系めっきを施して耐食性を向上させることは、本願の優先日前において周知の技術である(以下「周知技術1」という。必要があれば、引用文献5(特開2018-70973号公報)の【0002】、【0007】、【0009】、【0010】、特開2002-363721号公報の【請求項4】、【0006】、【0011】、【0015】、【0018】を参照のこと)。
そして、自動車分野では組付け工数の削減や材料削減は一般的な課題であるから、引用発明の接着層とアルミニウムめっき層に代えて、両フレームの母材表面に耐食性を向上させた溶融Zn-Al-Mg系めっき層を採用し、インナパネル20と両フレームの母材とが直接接触しないように溶融Zn-Al-Mg系めっき層を介在させて接合し、相違点1における本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
<相違点2について>
引用文献3(特開2015-78722号公報)には、自動車のドアなどで(【0002】)、腐食を防止しつつ異種金属を機械的手段で接合する方法において(【0007】)、アルミニウムの上板12と、上面に絶縁性被膜13を形成した鋼板の下板11を重ねた状態で、パンチ3をダイ4のキャビティ40内に押し込み、上板12の凸部と下板11の凹部とが噛み合う(インターロックする)ことで、かしめ接合(クリンチ接合)したこと(【0015】、【0017】、図1(a)(b))が記載されている。
また、特開2013-130238号公報(審査官が原査定において引用文献2として提示)には、自動車のドア等のパネル構造体において(【0003】)、鉄とアルミニウムのような異種金属板同士の接合に関し(【0004】)、異種金属腐食を課題とするとともに(【0006】)、第2の金属部材52(アルミニウム材)に設けられ、第1の金属部材51側に突出した凸部64aと、第1の金属部材51(鋼材)に設けられ、前記第2の金属部材52とは反対側に窪んだ凹部64bとを備え、第1金属部材51と第2の金属部材52とは、前記凸部64aと前記凹部64bとの間に噛み合い部64c(インターロック)を形成することによりメカニカルクリンチング(クリンチ接合)されていること(【0072】~【0074】、図4(a)~(d))が記載されている。
そうすると、接合部は、自動車のドア等に設けられ、異種金属腐食を課題とするとともに、アルミニウム材に設けられ、鋼材側に突出した凸部と、前記鋼材に設けられ、前記アルミニウム材とは反対側に窪んだ凹部とを備え、鋼材とアルミニウム材とは、前記凸部と前記凹部とが噛み合うことによりクリンチ接合されていることは、周知の技術である(以下「周知技術2」という。)。
してみれば、異種金属腐食を課題とした、自動車のドア部材の接合部である、引用発明のインナパネル20と前側フレーム60及び後側フレーム70の接合に、同じく異種金属腐食を課題とした自動車のドア部材の接合部である上記周知技術2を適用して、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明の作用効果についても、引用発明、および周知技術1、2に基いて予測される事項から格別のものがあるとはいえない。
3 請求人の主張の検討について
(1)請求人の主張
請求人は、令和7年12月18日の意見書において、概略以下、ア~オの主張をする。
ア 引用文献5には、自動車部品または建材の分野において、アルミニウムと鋼の接合体を構成する部材として亜鉛系めっき鋼板を適用することが記載されていますが、具体的な適用箇所、特に車両サイドドアのドアパネル部材とドア用部品との接合部に適用することについては何ら開示も示唆もされていません。
イ 引用文献3および4についても、上記相違点1に係る構成は開示も示唆もされていません。
ウ 引用文献1に記載の発明に引用文献2または引用文献5に記載の発明を適用する動機付けがなく、かつ引用文献1に記載の発明に引用文献2または引用文献5に記載の発明を適用することについて阻害要因があると考えます。
エ 引用文献1において当該課題が解決されている以上、当業者が、示唆もないのに敢えて引用文献1に記載の接着層91を、既に解決済みの電食の抑制のために、耐食性のあるめっき層に置換する動機付けはありません。
オ 引用文献1に記載の発明において、上記拒絶理由通知書に記載されているように、接着層91とアルミめっきとに代えて、引用文献2、5に記載されている亜鉛系めっき層を適用すると、接着剤によるインナパネル20と前側フレーム60または後側フレーム70との接合ができなくなるだけでなく、亜鉛系めっき鋼板とアルミニウム合金とのスポット溶接が困難であるため、スポット溶接によるインナパネル20と前側フレーム60または後側フレーム70との接合もできなくなります。このように、インナパネル20と前側フレーム60または後側フレーム70との接着剤または溶接による接合ができなくなるにも関わらず、当業者が、示唆もないのに敢えて接着層91とアルミニウムめっきとに代えて、インナパネル20と前側フレーム60または後側フレーム70とを接合する機能を有しないめっき層を適用する動機付けがないと考えます。
さらに、上記拒絶理由通知書に記載されているように、接着層91とアルミめっきとに代えて、引用文献2、5に記載されている亜鉛めっき層を適用すると、前述したように、インナパネル20と、前側フレーム60または後側フレーム70との接合に、接着剤による接合およびスポット溶接による接合を使用することができません。その結果、インナパネル20と前側フレーム60または後側フレーム70とが接合された接合部の強度を確保することが困難になり、引用文献1に記載されている車両用サイドドアとしての機能を果たし得なくなるため、引用文献1に記載の発明に、引用文献2または引用文献5に記載の発明を適用することについて阻害要因があると考えます。
(2)請求人の主張に対する検討
引用発明は、アルミニウム材からなるドア本体部のドアパネル部材と、鋼材からなるサッシュ部のドア用部品の接合部における異種金属接触腐食を課題とするものである。
そして、以下ア~オに示すように、請求人の主張は、採用することができない。
ア 引用文献5を含む周知技術1は、自動車部品等のアルミニウム合金と鋼板間の異種金属接触腐食を課題として、耐食性を増大する溶融Zn-AlーMg系めっき鋼板に関するものである。
イ 相違点1に係る発明特定事項は、引用発明に上記周知技術1を適用することにより、容易に想到し得たものである。
ウ 引用発明、周知技術1、周知技術2のいずれも、自動車部品等におけるアルミニウム材と鋼板間の異種金属接触腐食を課題とするもので、動機付けは十分にあるといえる。
エ 課題がある程度解決されていても、改良の余地があれば改良しようとするのが、当業者であり、動機付けも上記ウに示すように十分にある。
オ 溶融Zn-AlーMg系めっき鋼板とアルミニウム合金との溶接は不可能ではなく阻害要因はない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に上記周知技術1、2を適用することにより、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-002097