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特許拒絶査定不服審判

2023-011729

シールド要素を備えた電気圧着コネクタ

審判番号
2023-011729
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-530457
請求日
2023年07月12日
審決日
2025年04月16日
公報発行日
2025年10月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】エージーシー グラス ユーロップ
  • 【請求人代理人】風早 信昭
  • 【請求人代理人】浅野 典子
審判長/審判官
  • 審判長 河端 賢
  • 審判官 倉橋 紀夫
  • 審判官 山本 信平
分類
P18 .121-WZ (B60J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-530457「シールド要素を備えた電気圧着コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔令和元年6月13日国際公開、WO2019/110565、令和3年2月18日特許出願公表、特表2021-505465〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2018年(平成30年)12月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年12月4日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和 4年10月 6日付け:拒絶理由通知書 令和 4年12月19日提出:意見書、手続補正書 令和 5年 3月 8日付け:拒絶査定 令和 5年 7月12日提出:審判請求書、手続補正書 令和 6年 6月 5日付け:拒絶理由通知書 令和 6年 9月 4日提出:意見書、手続補正書 令和 6年 9月25日付け:拒絶理由通知書 令和 6年12月23日提出:意見書、手続補正書、物件提出書 第2 本願発明 本願の請求項1~6に係る発明は、令和6年12月23日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「導電性構造(3)を有する基板(2)と; はんだ材料(5)によって前記導電性構造(3)にはんだ付けされたシールド要素(7 )と; 前記シールド要素に固定された電気圧着コネクタ(4)と; 前記電気圧着コネクタによって圧着された電気ケーブル(6)と を少なくとも備えるグレージングパネル(1)であって、 前記電気圧着コネクタ(4)が前記はんだ材料(5)の真上で前記シールド要素(7) に固定されていること、前記電気圧着コネクタ(4)が前記シールド要素(7)に溶接されているか、又は前記電気圧着コネクタ(4)が少なくとも1つのリベットによって前記シールド要素(7)に固定されていること、及び前記電気ケーブル(6)が接続されている前記電気圧着コネクタ(4)の端と、上方に前記電気ケーブル(6)が存在する前記シールド要素(7)の端との間の距離が、前記電気ケーブル(6)の直径以上であることを 特徴とするグレージングパネル(1)。」 第3 拒絶の理由 令和6年9月25日付けで当審が通知した拒絶理由通知書中で判断を留保した令和6年6月5日付けで当審が通知した拒絶理由通知書中の理由4は、次のとおりのものを含むものである。 本願発明は、その優先日前日本国内または外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献2に記載された発明及び引用文献1、3及び4に、それぞれみられるような周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献2:国際公開第2016/096248号 引用文献1:特表2013-532116号公報(周知技術を示す文献) 引用文献3:特表2016-505195号公報(周知技術を示す文献) 引用文献4:特表2016-503568号公報(周知技術を示す文献) 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献2について (1)記載事項 引用文献2には、以下の事項が記載されている。なお、翻訳文は引用文献2に係る国際特許出願の日本国特許公表公報である特表2018-503944号公報の該当する記載によるものである。また、ae、oe、ueは、それぞれaウムラウト、oウムラウト、uウムラウトを表し、ssはエスツェットを、○RはRを○で囲んだものを表す。さらに、下線は当審で付した。以下同様。 ア 「Die Erfindung betrifft eine Scheibe mit einem elektrischen Anschlusselement und einem flexiblen Anschlusskabel, ein Verfahren zu deren Herstellung sowie deren Verwendung.」(1頁3行~4行) (【0001】 本発明は、電気的な接続エレメントおよび可撓性の接続ケーブルを備えた板ガラスと、該板ガラスを製造する方法と、その使用とに関する。) イ 「Die Erfindung ist nicht auf eine bestimmte Form des Anschlusselements beschraenkt. Die Erfindung kann vielmehr auf beliebig geformte Anschlusselemente angewendet werden. Das Anschlusselement kann beispielsweise rund, oval, rechteckig oder brueckenfoermig ausgeformt sein.」(10頁14行~17行) (【0050】 本発明は、接続エレメントの特定の形状に制限されていない。本発明はむしろ任意に成形された接続エレメントにおいて使用され得る。接続エレメントはたとえば円形、楕円形、方形またはブリッジ状に成形されていてよい。) ウ 「Die Lotmasse tritt mit einer Austrittsbreite von bevorzugt kleiner 1 mm aus dem Zwischenraum zwischen der Loetflaeche des Anschlusselements und der elektrisch leitfaehigen Struktur aus. In einer bevorzugten Ausgestaltung ist die maximale Austrittsbreite kleiner 0,5 mm und insbesondere etwa 0 mm. Das ist besonders vorteilhaft im Hinblick auf die Reduzierung von mechanischen Spannungen in der Scheibe, die Haftung des Anschlusselements und die Einsparung des Lots. Die maximale Austrittsbreite ist definiert als der Abstand zwischen den Aussenkanten des Loetbereichs und der Stelle des Lotmasseuebertritts, an dem die Lotmasse eine Schichtdicke von 50 μm unterschreitet. Die maximale Austrittsbreite wird nach dem Loetvorgang an der erstarrten Lotmasse gemessen. Eine gewuenschte maximale Austrittsbreite wird durch eine geeignete Wahl von Lotmassenvolumen und lotrechtem Abstand zwischen Anschlusselement und elektrisch leitfaehiger Struktur erreicht, was durch einfache Versuche ermittelt werden kann. Der lotrechte Abstand zwischen Anschlusselement und elektrisch leitfaehiger Struktur kann durch ein entsprechendes Prozesswerkzeug, beispielsweise ein Werkzeug mit einem integrierten Abstandshalter, vorgegeben werden. Die maximale Austrittsbreite kann auch negativ sein, also in den vom Loetbereich des elektrischen Anschlusselements und elektrisch leitfaehiger Struktur gebildeten Zwischenraum zurueckgezogen sein. In einer vorteilhaften Ausgestaltung der erfindungsgemaessen Scheibe ist die maximale Austrittsbreite in dem vom Loetbereich des elektrischen Anschlusselements und der elektrisch leitfaehigen Struktur gebildeten Zwischenraum in einem konkaven Meniskus zurueckgezogen. Ein konkaver Meniskus entsteht beispielsweise durch Erhoehen des lotrechten Abstands zwischen Abstandshalter und leitfaehiger Struktur beim Loetvorgang, waehrend das Lot noch fluessig ist. Der Vorteil liegt in der Reduzierung der mechanischen Spannungen in der Scheibe, insbesondere im kritischen Bereich, der bei einem grossen Lotmasseuebertritt vorliegt.」(12頁16行~13頁7行) (【0059】 はんだ材料は、接続エレメントのはんだ付け面と導電性の構造体との間の中間室から、有利には1mmよりも小さなはみ出し幅ではみ出している。有利な態様では、最大のはみ出し幅は0.5mmよりも小さく、特に約0mmである。このことは、板ガラス内の機械的な応力の減少、接続エレメントの接着およびはんだ材料の節約に関して特に有利である。最大のはみ出し幅は、はんだ付け領域の外側エッジと、はんだ材料越境部の、はんだ材料が50μmの層厚を下回る箇所との間の間隔として定義されている。最大のはみ出し幅は、はんだ付け工程後に、硬化したはんだ材料において測定される。所望の最大のはみ出し幅は、はんだ材料容積の適切な選択と、接続エレメントと導電性の構造体との間の垂直方向の間隔の適切な選択とにより達成される。このことは簡単な実験により求められ得る。接続エレメントと導電性の構造体との間の垂直方向の間隔は、相応するプロセス工具、たとえば統合されたスペーサを備える工具により予め規定され得る。最大のはみ出し幅は、凹状であってもよく、つまり電気的な接続エレメントと導電性の構造体とのはんだ付け領域により形成された中間室内に引っ込んでいてもよい。本発明に係る板ガラスの有利な態様では、最大のはみ出し幅は、電気的な接続エレメントと導電性の構造体とのはんだ付け領域により形成された中間室内に凹状メニスカスとして引き込まれている。凹状メニスカスは、たとえばスペーサと導電性の構造体との間の垂直方向の間隔を高めることによってはんだ付け工程中に、はんだ材がまだ液状である間に生じる。利点は、特に大きなはんだ越境部が存在する臨界的な領域における板ガラスにおける機械的な応力の減少にある。) エ 「Fig.1 und Fig. 2 zeigen je ein Detail einer erfindungsgemaessen Scheibe im Bereich des elektrischen Anschlusselements 3. Die Scheibe umfasst ein Substrat 1 , welches ein 3 mm dickes thermisch vorgespanntes Einscheibensicherheitsglas aus Kalk-Natron- Glas ist. Das Substrat 1 weist beispielsweise eine Breite von 150 cm und eine Hoehe von 80 cm auf und ist als Heckscheibe eines Personenkraftwagens vorgesehen. Auf das Substrat 1 ist eine elektrisch leitfaehige Struktur 2 in Form einer Heizleiterstruktur aufgedruckt, die Silberpartikel und Glasfritten enthaelt. Im Randbereich der Scheibe ist die elektrisch leitfaehige Struktur 2 auf eine Breite von beispielsweise 10 mm verbreitert und bildet eine Kontaktflaeche fuer das elektrische Anschlusselement 3. Im Randbereich des Substrats 1 befindet sich weiter ein nicht dargestellter Abdecksiebdruck. Das Anschlusselement 3 ist brueckenfoermig ausgebildet. Es umfasst zwei Fussbereiche, an deren dem Substrat 1 zugewandten Oberflaechen die Loetflaechen angeordnet sind. Die Loetflaechen sind ueber eine Lotmasse 4 mit der elektrisch leitfaehigen Struktur 2 verbunden. Zwischen den Fussbereichen ist ein verbrueckender Bereich angeordnet, der einen erhoehten mittleren Abschnitt enthaelt, der parallel zu den Fussbereichen angeordnet ist. Der verbrueckende Bereich ist nicht direkt ueber die Lotmasse mit der leitfaehigen Struktur verbunden. Das Anschlusselement 3 hat beispielsweise eine Laenge von 24 mm, eine Breite von 4 mm und eine Materialstaerke von 0,8 mm. Das Anschlusselement 3 besteht aus chromhaltigem Stahl der Werkstoff-Nummer 1 .4509 nach EN 10 088-2 (ThyssenKrupp Nirosta○R 4509) mit einem thermischen Ausdehnungskoeffizienten von 10,5 x 10-6 /°C im Temperaturbereich von 20°C bis 300°C. Das Kalk-Natron-Glas des Substrats 1 weist einen thermischen Ausdehnungskoeffizienten von etwa 9 x 10-6 /°C auf. Durch die geringe Differenz der Ausdehnungskoeffizienten koennen kritische thermische Spannungen beim Loeten vermieden werden. 」(17頁16行~18頁8行) (【0075】 図1および図2は、本発明に係る板ガラスの詳細を電気的な接続エレメント3の領域においてそれぞれ示している。板ガラスは、ソーダ石灰ガラスから成る、熱により予荷重を加えられた3mmの厚さの単板セーフティガラスである基板1を有している。基板1は、たとえば150cmの幅と、80cmの高さとを有しており、乗用車のリアガラスとして設けられている。基板1上には、導電性の構造体2が加熱導体構造体の形式で印刷されており、該加熱導体構造体は銀粒子およびガラスフリットを含んでいる。板ガラスの縁部領域において、導電性の構造体2は、たとえば10mmの幅に拡幅され、電気的な接続エレメント3のための接触面を形成する。基板1の縁部領域において、さらに遮蔽スクリーン印刷部(図示せず)が位置している。 【0076】 接続エレメント3は、ブリッジ状に形成されている。接続エレメント3は2つの基部領域を有しており、これらの基部領域の、基板1に面した表面には、はんだ付け面が配置されている。これらのはんだ付け面は、はんだ材料4を介して導電性の構造体2に結合されている。2つの基部領域の間に、架橋領域が配置されており、この架橋領域は、高められた中間の区分を含んでいる。この中間の区分は、基部領域に対して平行に配置されている。架橋領域は、はんだ材料を介して導電性の構造体2に直接に結合されていない。接続エレメント3は、たとえば24mmの長さ、4mmの幅、0.8mmの材料厚さを有している。接続エレメントは、20℃~300℃の温度範囲において10.5x10-6/℃の熱膨張係数を有する、EN10 088-2による材料番号1.4509のクロム含有の鋼(ThyssenKrupp社Nirosta登録商標4509)から成っている。基板1のソーダ石灰ガラスは、約9x10-6/℃の熱膨張係数を有している。膨脹係数の小さな差により、はんだ付け時の臨界的な熱応力は回避され得る。) オ 「Auf dem verbrueckenden Bereich des Anschlusselements 3 ist ein flexibles Anschlusskabel 5 angebracht. Das Anschlusskabel 5 ist ein Rundkabel, das Kupferdrahtlitzen enthaelt. Das Anschlusskabel ist mit einer Isolationshuelle 7 aus PE versehen. Das mit dem Anschlusselement 3 verbundene Ende des Anschlusskabels ist abisoliert und mit einem gecrimpten Metallplaettchen 9 versehen (B-Crimp). Der Crimp 9 ist mit dem Anschlusselement 3 verschweisst.」(18頁13行~18行) (【0078】 接続エレメント3の架橋領域には、可撓性の接続ケーブル5が取り付けられている。接続ケーブル5は、銅撚り線を含む丸形ケーブルである。接続ケーブルは、PEから成る絶縁スリーブ7を備えている。接続ケーブルの、接続エレメント3に結合される端部は、絶縁体を除去されており、圧着された金属小型プレート9(B形圧着端子)を備えている。圧着端子9は、接続エレメント3に溶接結合されている。) カ 「 [図:0001427192000001.jpg] 」(図1) キ 「 [図:0001427192000002.jpg] 」(図2) (2)認定事項 ア 上記(1)オの「接続ケーブル5は、銅撚り線を含む丸形ケーブルである。」という記載及び上記(1)カの図1、同キの図2の図示内容から、接続ケーブル5に備えられている圧着端子9の端と、上方に前記接続ケーブル5が存在する接続エレメント3の端との間の距離が、前記接続ケーブル5の直径以上であると認められる。 (3)引用発明 引用文献2の上記(1)の記載事項及び上記(2)の認定事項から、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「導電性の構造体2が印刷されている基板1と はんだ材料4を介して前記導電性の構造体2に結合されている接続エレメント3と 前記接続エレメント3に溶接結合されている圧着端子9と 前記圧着端子9に圧着された接続ケーブル5と を備えた板ガラスであって、 前記接続ケーブル5に備えられている前記圧着端子9の端と、上方に前記接続ケーブル5が存在する前記接続エレメント3の端との間の距離が、前記接続ケーブル5の直径以上である板ガラス。」 2 引用文献1について 引用文献1には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 本発明は、電気接続素子を備える窓ガラス、および、経済的で環境に優しいその製造方法に関する。」 イ 「【0040】 図1および図2は、いずれの場合も、電気接続素子3の領域内の、本発明による加熱可能な窓ガラス1の詳細を示す。窓ガラス1は、ソーダ石灰ガラスで作られた、3mm厚の熱的にプレストレスされた単一窓ガラス安全ガラスである。窓ガラス1は、150cmの幅および80cmの高さを有する、加熱導体構造2の形態の導電性構造2が、窓ガラス1に印刷されている。導電性構造2は、銀粒子およびガラスフリットを含有する。窓ガラス1の縁領域では、導電性構造2は10mmの幅まで広がっており、電気接続素子3のための接触面を形成している。窓ガラス1の縁領域には、被覆スクリーン印刷(図示せず)もまた配置されている。電気接続素子3と導電性構造2との間の接触面の領域には、半田材料4が付着され、これは、電気接続素子3と導電性構造2との間の耐久性のある電気的および機械的接続に影響を及ぼす。半田材料4は、57重量%のビスマス、42重量%のスズ、および1重量%の銀を含有する。半田材料4は、完全に電気接続素子3と導電性構造2との間に、所定の体積および形状を通じて配置される。半田材料4は、250μmの厚みを有する。50μmの層厚tを超える、電気接続素子3と導電性構造2との間の中間領域からの半田材料4の流出物は、最大流出幅b=0.5mmまで観察される。電気接続素子3は、54重量%の鉄、29重量%のニッケル、および17重量%のコバルトを含有する合金である。電気接続素子3は、長円形の底面を備えるように設計される。主軸の長さは12mmであり、短軸の長さは5mmである。接続素子3の材料厚は0.8mmである。接続素子3および導電性構造2によって事前に定義された、半田材料4の配置のため、窓ガラス1において臨界機械的応力は観察されない。導電性構造2を経由して電気接続素子3への窓ガラス1の接続は、永続的に安定している。」 ウ 「【0043】 図5は、本発明による接続素子3の代替実施形態の平面図を描写する。接続素子3は、長方形として設計され、5mmの幅および14mmの長さを有する。長方形の角部は、いずれの場合もたとえば1mmの曲率半径rを有する円弧を備えて、丸みを帯びている。さらに、接続ケーブル8が、溶接領域7を通じて接続素子3溶接されている。溶接領域7は、3mmの幅および6mmの長さを有する。接続ケーブル8は、細いスズめっき銅線で作られた、編み込みケーブルである。標準的なワイヤケーブルまたはワイヤが、接続ケーブル8として使用されることが可能である。あるいは、金属スリーブ、プラグコネクタ、またはクリンプ接続もまた、接続素子3に導電的に接続されることが可能である。具体的には接続素子3は、一体型または複数片のクランプ締めスリーブまたは圧着要素として設計されることも可能である。 」 エ 「 [図:0001427192000003.jpg] 」(【図1】) オ 「 [図:0001427192000004.jpg] 」(【図2】) 3 引用文献3について 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 本発明は、電気的な接続要素を備えるパネル、このパネルを製造する経済的かつ環境親和的な方法及びこのパネルの使用に係る。」 イ 「【0052】 図1及び図2は、それぞれ、電気的な接続要素3の領域における本発明に係るパネルあるいはグレージングの詳細図である。パネルは、基板1を有している。基板1は、ソーダ石灰ガラスからなる3mm厚の熱により予め応力が付与された一枚の安全ガラスである。基板1は、150cmの幅及び80cmの高さを有している。基板1には、発熱導体構造の形態の導電性の構造2がプリントされている。導電性の構造2は、銀粒子及びガラスフリットを含んでいる。パネルの縁部領域には、導電性の構造2が、10mmの幅に拡げられており、電気的な接続要素3のためのコンタクト面を形成している。接続要素3は、導電性の構造2を外部の電圧供給部に接続ケーブル5を介して電気的に接続するために用いられる。接続ケーブル5は、導電性の芯線を有している。導電性の芯線は、銅からなる従来慣用の撚り線導体として形成されている。さらに接続ケーブル5は、図示しないポリマー製の絶縁被覆を有している。絶縁被覆は、接続ケーブル5の導電性の芯線を接続要素3に電気的に接続することを可能にするために、端部領域において4.5mmの長さで除去されている。基板1の縁部領域には、さらに、図示しないカバースクリーン印刷部が設けられている。」 ウ 「【0054】 さらに接続要素3は、略長方形の平らなろう接領域10を有している。ろう接領域10は、移行領域12を介して圧着領域11に接続されている。ろう接領域10は、例えば4mmの長さ及び2.5mmの幅を有している。移行領域12は、例えば1mmの長さを有している。ろう接領域10は、圧着領域11の、接続ケーブル5の延在方向とは反対側に配置されている。ろう接領域10と圧着領域11との間の角度は、例えば160°である。移行領域12は、平らに形成されているが、択一的には例えば湾曲及び/又は屈曲されて形成されていてもよい。 【0055】 ろう接領域10の、基板1に面した表面は、電気的な接続要素3と導電性の構造2との間のコンタクト面8を形成している。コンタクト面8の領域には、ろう材料4が被着されている。ろう材料4は、電気的な接続要素3と導電性の構造2との間の持続的な電気的かつ機械的な接続を生じる。ろう材料4は、57質量%ビスマス、40質量%すず及び3質量%銀を含んでいる。ろう材料4は、250μmの厚さを有している。ろう接領域10は、コンタクト面8を介して全面的に導電性の構造2に接続されている。」 エ 「 [図:0001427192000005.jpg] 」(【図1】) オ 「 [図:0001427192000006.jpg] 」(【図2】) 4 引用文献4について 引用文献4には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 本発明は、電気的接続部材を備えた板ガラス、及び経済的かつ環境に配慮したこの板ガラスの製造方法並びにその使用に関する。」 イ 「【0066】 図1a及び図1bには、接続部材(4)及び補償プレート(3)を備えた本発明による板ガラスが示されている。図1bには、断面カットラインAA′に沿って見た断面が示されている。図1bのカットされた面は、ハッチングされて描かれている。基板(1)は、ソーダ石灰ガラスから成り熱によりプレストレスが与えられた厚さ3mmの単板安全ガラスから成り、この基板(1)の上にスクリーン印刷マスク(6)が取り付けられている。基板(1)は、幅150cm、高さ80cmであり、スクリーン印刷マスク(6)の領域の短辺のところに、補償プレート(3)を備えた接続部材(4)が取り付けられている。基板(1)の表面には、導電性構造体(2)が発熱体構造として取り付けられている。導電性構造体には銀粒子とガラスフリットが含まれており、この場合、銀の含有量は90%よりも高い。板ガラスの周縁領域において、導電性構造体(2)が10mmまで拡がっている。この領域に鉛フリーはんだ材料(5)が取り付けられており、これにより補償プレート(3)下側で導電性構造体(2)がコンタクト面(7)と接続される。コンタクト面(7)と鉛フリーはんだ材料(5)は、図1aの平面図では補償プレート(3)によって隠されているが、断面図(図1b)では見ることができる。車体に取り付けられた後、接触接続個所はスクリーン印刷マスク(6)によって隠される。鉛フリーはんだ材料(5)によって、導電性構造体(2)と補償プレート(3)との持続的な電気的及び機械的接続が確実に行われるようになる。鉛フリーはんだ材料(5)には、57重量%のビスマスと、42重量%のスズと、1重量%の銀が含まれている。鉛フリーはんだ材料(5)の厚さは250μmである。接続部材(4)は、曲げられた平坦な薄片から成り、これには脚部が設けられていて、この脚部の下面で補償プレート(3)の上面と溶接されている。接続部材が曲げられている様子は、断面図(図1b)に示されている。電気的接続部材(4)は、材料番号CW004A (Cu-ETP)の銅から成り、幅4mm、長さ6mmのコンタクト面を有する。この材料は、低い電気抵抗率(1.8μΩ・cm)を有しており、その導電率が高いことから、接続部材(4)として特に適している。接続部材(4)の材料厚は0.8mmである。補償プレート(3)は、円形に打ち抜かれた金属薄板から成り、高さ(材料厚)0.5mm、直径4mmである。補償プレート(3)は、EN 10 088-2に準拠する材料番号1.4509の鋼(ThyssenKrupp Nirosta(登録商標)4509)から成る。補償プレート(3)は機械的な応力を補償し、これにより銅から成る接続部材(4)と鉛フリーはんだ材料(5)とを組み合わせることができるようになる。このようにすることで、板ガラスにおけるクリティカルな機械的応力が回避される一方、それにもかかわらずこれまで公知であった銅又は銅の合金から成る接続部材(4)を、引き続き使用できるようになる。さらにはんだ付けプロセスの標準化により、接続部材(4)の材料及び形状に左右されることなく、製造プロセスを簡単にすることができる。その理由は、はんだ付けプロセスのパラメータは、使用される補償プレート(3)のみに依存するからである。このような結果は、当業者にとって驚くべきものであり、予期しなかったことである。」 ウ 「 [図:0001427192000007.jpg] 」(【図1a】) エ 「 [図:0001427192000008.jpg] 」(【図1b】) 第5 対比 1 本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。 引用発明の「導電性の構造体2」は本願発明の「導電性構造(3)」に相当し、以下同様に、「印刷されている」態様は「有する」態様に、「基板1」は「基板(2)」に、「はんだ材料4」は「はんだ材料(5)」に、「はんだ材料4を介して前記導電性の構造体2に結合されている」態様は「はんだ材料(5)によって前記導電性構造(3)にはんだ付けされた」態様に、「接続エレメント3」は「シールド要素(7)」に、「前記接続エレメント3に溶接結合されている圧着端子9」は「前記シールド要素に固定された電気圧着コネクタ(4)」であって「前記シールド要素(7)に溶接されている」電気圧着コネクタ(4)に、「備えた」態様は「少なくとも備える」態様に、「板ガラス」は「グレージングパネル(1)」に、「備えられている」態様は「接続されている」態様に、それぞれ相当する。 2 したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致する。 「導電性構造を有する基板と; はんだ材料によって前記導電性構造にはんだ付けされたシールド要素と; 前記シールド要素に固定された電気圧着コネクタと; 前記電気圧着コネクタによって圧着された電気ケーブルと を少なくとも備えるグレージングパネルであって、 前記電気圧着コネクタが前記シールド要素に溶接されていること、及び前記電気ケーブルが接続されている前記電気圧着コネクタの端と、上方に前記電気ケーブルが存在する前記シールド要素の端との間の距離が、前記電気ケーブルの直径以上であるグレージングパネル。」 3 そして、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。 [相違点] 本願発明は、「前記電気圧着コネクタ(4)が前記はんだ材料(5)の真上で前記シールド要素(7) に固定されている」のに対し、引用発明は、そのように構成されていない点。 第6 判断 1 [相違点]について 上記第4の1(1)イに記載したとおり、引用文献2には、接続エレメントの形状としてブリッジ状の他に円形、楕円形又は方形に成形されていてよいことが示唆されている。ここで、円形、楕円形、方形とは、それぞれ円板状、楕円板状、方形板状と解せられる。 そして、円板状、楕円板状、方形板状の接続素子がガラス基板上の導電性構造体に全面ではんだ付けされることは、上記第4の2~4に記載した引用文献1、引用文献3及び引用文献4に、それぞれみられるように周知技術である。 したがって、引用発明の接続エレメントを円形、楕円形又は方形に成形する際に、周知技術を採用して全面ではんだ付けし、その結果として圧着端子9がはんだ材料4の真上で接続エレメント3に結合されるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 2 効果について 上記相違点を勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 3 予備的見解 (1)仮定に基づく相違点 仮に、引用文献2記載の接続ケーブル5に備えられている圧着端子9の端と、上方に前記接続ケーブル5が存在する接続エレメント3の端との間の距離が、前記接続ケーブル5の直径以上であるか否か明らかではないとして、以下予備的に検討する。 その場合、本願発明と引用発明とは、上記相違点に加えて以下の点で相違する。 [相違点2] 本願発明は、「前記電気ケーブル(6)が接続されている前記電気圧着コネクタ(4)の端と、上方に前記電気ケーブル(6)が存在する前記シールド要素(7)の端との間の距離が、前記電気ケーブル(6)の直径以上である」が、引用発明は、接続ケーブル5に備えられている圧着端子9の端と、上方に前記接続ケーブル5が存在する接続エレメント3の端との間の距離が、前記接続ケーブル5の直径以上であるか否か明らかではない点。 (2)判断 相違点については、上記1及び2で検討したとおりである。 相違点2について、以下検討する。 引用発明において、接続ケーブル5に備えられている圧着端子9の端と、上方に前記接続ケーブル5が存在する接続エレメント3の端との間の距離が一定程度離れていることは、上記第4の1(1)カ及びキの図示内容から明らかであるところ、この一定程度離れている距離を接続ケーブル5の直径以上とするのは、当業者にとって通常の設計の自由度の範囲内の単なる選択肢の1つに過ぎず、当業者が必要に応じて適宜なし得るものである。 そして、上記相違点2をさらに勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 4 審判請求人の主張について (1)令和6年9月4日提出の意見書において、審判請求人は、以下のように主張している。 ア 「電気圧着コネクタを導電性構造にはんだ付けするためのはんだ材料の量が多すぎると、導電性構造への電気圧着コネクタのはんだ付け中に、はんだ材料は、ウィッキング効果とも呼ばれる毛管作用によって、ケーブルを上昇していく可能性がある(本願明細書[0007])。本願発明は、かかる「ウィッキング」の問題に対処するものである。 これに対して、主引例の引用文献1及び引用文献2ではいずれも、はんだ材料の「流出」や「はみ出し」は制限されているので、引用文献1及び引用文献2ではそもそも、「ウィッキング」の問題は生じない。」(4頁29行~35行) 「引用文献2の板ガラスでも、はんだ材料のはみ出し幅は、1mmよりも小さいとされている。」(5頁1行~2行) イ 「引用文献2では、「接続ケーブル(5)が補剛エレメント(7,8)を備えており、前記接続ケーブル(5)が該補剛エレメント(7,8)と共に収縮チューブ(6)により取り囲まれている」ことが必須であり(引用文献2の[請求項1])、「接続ケーブルは、補剛エレメントにより、十分な剛性を備えられるので、接続エレメントのはんだ付け面に対する規定された角度にもたらされると、接続ケーブルはこの傾斜角を自立式に維持する」(引用文献2の[0033])ので、引用文献2では、図1~3に示されるように、「接続ケーブル(5)」が「導電性の構造体2」に接触することはあり得ず、この点からも引用文献2の発明では「ウィッキング」の問題は生じ得ない。」(5頁44行~6頁1行) (2)審判請求人の上記主張について、以下検討する。 ア 上記(1)アに記載のとおり、電気圧着コネクタを導電性構造にはんだ付けする場合、導電性構造への電気圧着コネクタのはんだ付け中に、はんだ材料は、ウィッキング効果とも呼ばれる毛管作用によって、ケーブルを上昇していく可能性がある。 これに対し、引用発明は、導電性の構造体2に接続エレメント3がはんだ材料4を介して結合されており、当該接続エレメント3に、接続ケーブル5が圧着された圧着端子9が溶接結合されている。したがって、引用発明は、接続エレメント3を備えることにより、はんだ材料のはみ出し幅の制限の有無にかかわらず、導電性の構造体2に圧着端子9が直接はんだ付けされることによるウィッキング効果が生じないことが明らかである。 よって、引用発明は、接続エレメント3を備えることによって、本願発明と同様に「ウィッキング」の問題に対処するものであるといえる。 イ また、引用発明において、接続ケーブル5が傾斜角を自立式に維持するものであるか否かにかかわらず、及び、接続ケーブル5が導電性の構造体2に接触することはあり得ないものであるか否かにかかわらず、接続エレメント3を備えることにより、導電性の構造体2に圧着端子9が直接はんだ付けされることによるウィッキング効果が生じないことは明らかであり、引用発明は、接続エレメント3を備えることによって、本願発明と同様に「ウィッキング」の問題に対処するものであるといえる。 ウ さらに、仮に引用発明では「ウィッキング」の問題は生じ得ないとしても、上記のとおり引用発明が接続エレメント3を備えることによって「ウィッキング」の問題に対処した結果であって、そのことにより、引用発明が「ウィッキング」の問題に対処しないものとはいえない。 エ よって、審判請求人の上記主張は当を得たものではなく、採用できない。 5 まとめ したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-011729

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