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特許無効審判

2024-800176

多層可燃性熱源

審判番号
2024-800176
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2014-558100
登録番号
6302417
請求日
2024年12月04日
審決日
2026年03月30日
公報発行日
2026年06月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】Future Technology 株式会社
  • 【被請求人】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
  • 【被請求人代理人】▲吉▼田 和彦
  • 【被請求人代理人】須田 洋之
  • 【被請求人代理人】山崎 一夫
  • 【被請求人代理人】近藤 直樹
  • 【被請求人代理人】那須 威夫
  • 【被請求人代理人】鈴木 信彦
  • 【被請求人代理人】岩上 健
審判長/審判官
  • 審判長 水野 治彦
  • 審判官 槙原 進
  • 審判官 柳幸 憲子
分類
P1123.121-Y (A24B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第123条第1項第2号、特許法第169条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第6302417号発明「多層可燃性熱源」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨 1 請求の趣旨 特許第6302417号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。 2 答弁の趣旨 本審判の請求は成り立たない。 審判費用は請求人の負担とする。 との審決を求める。 第2 手続の経緯 1 本件特許の出願から設定登録までの経緯 本件特許に係る出願は、2013年(平成25年)2月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年2月24日、(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であり、その後の手続の経緯は概略以下のとおりである。 平成30年 1月26日付け 特許査定 同年 3月 9日 設定登録 2 本件無効審判事件の手続の経緯 本件無効審判事件の手続の経緯の概略は、以下のとおりである。 令和 6年12月 4日 審判請求書の提出 令和 7年 3月 6日 手続補正書(方式)の提出 同年 4月 8日 手続補正書(方式)の提出 同年 7月24日 審判事件答弁書の提出 同年12月17日付け 審理事項通知 令和 8年 1月28日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人) 同年 2月18日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人) 同年 3月11日 口頭審理 第3 本件発明 本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 喫煙物品のための多層可燃性熱源であって、 炭素を含む可燃性第1層と、 前記第1層と直接に接触し、炭素及び少なくとも1つの発火補助剤を含む第2層と、 炭素及び少なくとも1つの発火補助剤の一方又は両方を含む第3層と、 を含み、 前記第1層及び前記第2層は、少なくとも0.6g/cm3の見かけの密度を有する非繊維性の縦方向同心層であり、 前記第1層の組成が、前記第2層の組成とは異なっている、 ことを特徴とする多層可燃性熱源。」 第4 請求人の主張 1 証拠方法 ・甲第1号証 :特公昭44-14094号公報 ・甲第2号証 :実公平1-21963号公報 ・甲第3号証 :国際公開第2011/118024号 (以下、それぞれ「甲1」、「甲2」及び「甲3」という。) 2 無効理由の概要 審判請求書、令和7年3月6日付け手続補正書、令和7年4月8日付け手続補正書、口頭審理陳述要領書を踏まえると、請求人が主張する無効理由は、概略次のとおりである。 甲1には、以下の発明が記載されている。 a1.暖房用蝋製の燃焼体であって、 b1.蝋を含む可燃性第1層と、 c1.第1層と円筒状の芯体を介して接触し、蝋を含む第2層と、 を含み、 f1.第1層と第2層は蝋が同軸に層状に仕切られている。 甲2には、着火層と点火層が層別されている点火練炭において、着火層と点火層は、着火層は桐炭粉を必須成分とし、点火層は桐炭塊を必須成分とすることから、その組成が異なること、点火層は燃焼補助剤を含む点火補助芯11を備えることが記載されている。 本件発明と甲1に記載された発明を対比すると、以下の相違点で相違する。 (相違点1)本件発明は、「喫煙物品のための多層可燃性熱源」であるのに対して、甲1に記載された発明では「暖房用蝋製の燃焼体」であること。 (相違点2)本件発明は「前記第1層と直接に接触し、炭素及び少なくとも1つの発火補助剤を含む第2層と、」とあるが甲1に記載された発明には記載されてないこと。 (相違点3)本件発明では「炭素及び少なくとも1つの発火補助剤の一方又は両方を含む第3層と、を含み、」とあるが甲1に記載された発明には記載されてないこと。 (相違点4)本件発明は「前記第1層及び前記第2層は、少なくとも0.6g/cm3の見かけの密度を有する」とあるが甲1に記載された発明には記載されていないこと。 (相違点5)本件発明は「前記第1層の組成が、前記第2層の組成とは異なっている」とあるが、甲1に記載された発明にはこの記載がないこと。 ここで、甲1に記載された発明のロウ製の燃焼体と、甲2記載事項の点火練炭は、炭素を含むということと層構造を有する熱源という点で共通する。そして、蝋も練炭も本件発明の出願時に周知の素材である。 したがって、炭素を含む素材という共通事項に着目して、甲2記載事項を甲1に記載された発明に適用することは容易である。 また、甲3に記載の喫煙物品にみられるように、炭素を含む素材からなる熱源を喫煙具に使用する例は、本件発明の出願前に存在したといえる。 してみると、 相違点1については、甲1に記載された発明の燃焼体を、喫煙物品に適用することは当業者にとって容易であり、特段の困難性を認めることはできない。 相違点2については、蝋は炭素を含むことから、本件発明の「炭素」は甲1に記載された発明の「蝋」に相当する。また、甲2記載事項によれば、点火層は燃焼補助剤を含む点火補助芯11を備えることが記載されているが、これは本件発明の「発火補助剤」に相当する。また、甲1に記載された発明の「円筒状の芯体」を省略して蝋を含む1層と2層を直接接触させることに、当業者をして特段の困難性を認めることはできない。 相違点3については、甲1に記載された発明では、円筒状の芯体の数に特に限定はされておらず、3層以上にすることに当業者をして特段の困難性を認めることはできない。 相違点4については、甲1に記載された発明において、第1層、第2層の見かけの密度をどのように設定するかは、当業者が適宜行う設計事項に過ぎない。 相違点5については、甲2記載事項によると、着火層と点火層が層別されている点火練炭において、着火層と点火層で、その組成が異なっていることが記載されている。 そうすると、本件発明は、甲1に記載された発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 第5 被請求人の主張 1 被請求人の主張の概要 被請求人の主張は、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書を踏まえると、概略次のとおりである。 甲1のロウ製本体1は多層に分かれた構造ではなく単一体である。また、甲1に記載された発明の「円筒状の芯体4,4’」は、ロウ製本体1から液体ロウを吸い上げて燃焼するためにロウ製本体1内に埋設されているにすぎないから、芯体4,4’によりロウ製本体1を複数の層に分割してロウ製本体1を「同軸に層状に仕切」ることが甲1に記載されているともいえない。 したがって、「円柱形状の固体蝋本体が円筒状の芯体によって、同軸に層状に仕切られている燃焼体が記載されている」とした請求人による甲1の記載事項の認定には誤りがある。 甲2記載の着火層の「桐炭粉」と点火層の「桐炭塊」は同一の材料である「桐炭」であり、甲2において着火層と点火層の組成が異なっているとする請求人の主張は根拠を欠く。 また、甲2に記載された点火補助芯11は、点火層9を貫通して形成された空気孔10の中に差しこまれているのであり、「点火層は燃焼補助剤を含む点火補助芯11を備える」との請求人の認定には誤りがある。 甲1に記載された「暖房用蝋製」の燃焼体は、石油ストーブと対比されるような暖房器具のための燃焼体であり、使用時には注水された容器5内に収納されて用いられるものである。そのような甲1の暖房用の燃焼体を、喫煙時には指で持ち口から吸引される喫煙物品用の熱源に変更する論理付けはできない。 甲1のロウ製本体1は多層に分かれた構造ではなく単一体であるから、そもそも甲1には「1層」も「2層」も存在せず、当然「3層」も存在しない。 したがって、本件発明は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、本件特許の出願の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすべきものではない。 第6 当審の判断 1 甲1について (1)甲1の記載 甲1には、次の記載事項及び図示事項がある。なお、下線は、当審において付した。以下同様。 ア 「本発明は動植物ロウの材料と多くの可燃性芯との組合せよりなる暖房用蝋製の燃焼体に関するもので、その目的とするところは公知のロウソクの形状のものにおける固体ロウの上口面における加熱芯体を延長し火力を強力にして暖房用とし使用上調整操作をする必要もなくきわめて簡単に固体による長時の燃焼持続とともに火気の安全確保を計つたことにある。 次にこの発明を例示する図面について説明する、1は円柱形ロウ製本体で中心部には液体ロウ吸上性の芯棒3が底面より上口面2にいたり突設してあり該芯棒3を囲み同質円筒状の芯体4,4’を任意の間をおいて外周に順次周設したものである。 なお、本体1の上口面2に突設の各芯は中央の芯棒3を高く外周設の芯体4’にいたり順次低く形成し使用時各芯体の上面に張設の燃焼綱の円弧形に沿うように突設し、また図示例の芯体周設数は数列なるも暖房の程度により必らずしも数列とは限らない。 本発明は上記のような構造であるから、第2図に示すように容器5内に本体1を収容するに当り底部は空室7を有し容器5との間に数個所の揺動止弁8を外周に有する底板6に乗架し上部には各芯体を囲周し多数の通気孔を有する押圧板9を冠挿し調整螺杆10により押圧板9と上面に設けた燃焼綱11とに良好な燃焼位置を設定し容器とロウ製本体との空積に注水し各芯体に点火使用する時はロウ製燃焼体1は燃焼とともに消耗し短くなつてゆくが水中にある本体1自身の浮力とこれを乗架する底板の空室7との浮力により常時上方に矢印のごとく揚圧を受け押圧板に密接し消耗するため燃焼綱の火熱面との間隙は常に良好な燃焼状態になんら支障なく消耗に順密して暖房の目的を達しうるものである。」(第1欄第16行-第2欄第16行) イ 「 [図:0001435843000001.jpg] 」 ウ 「 [図:0001435843000002.jpg] 」 (2)甲1発明 上記(1)から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 [甲1発明] 「暖房用蝋製の燃焼体であって、円柱形ロウ製本体1を有する暖房用蝋製の燃焼体。」 2 甲2について (1)甲2の記載 甲2には、次の記載事項及び図示事項がある。 ア 「この考案は、点火層と着火層を備えた点火煉炭に関する。」(第1欄第9-10行目) イ 「この考案は、硝酸ストロンチユーム等の高価な薬剤の使用量が少なくても、本体への着火に要する時間が短く、低コストの点火煉炭を提供することを目的とする」(第3欄第4-7行目) ウ 「第1図および第2図は、その一実施例を示し、同図にみるように、この点火煉炭は、全体として一体成型されていて、本体7の上に着火層8が配置され、この着火層8の上に点火層9が配置されている。すなわち、本体7の上面には凹部7aが形成されていて、この凹部7aに着火層8が埋込まれている。この着火層8は、凹型をしており、そのくぼみ8aの中に点火層9が埋込まれている。本体7、着火層8、点火層9には空気孔10が貫通している。中央の空気孔10には、上から点火補助芯11が差し込まている。この点火煉炭の全側面は無煙炭12で固められている。」(第3欄第17-28行目) エ 「点火層9は、この桐炭塊に、粘結剤、素灰粉炭などを加えて形成されている。この場合、桐炭塊の配合割合は、硝酸ストロンチユーム等の薬剤の使用量を減少させる等の必要性と、成型上の都合で素灰粉炭を加える必要性等を考慮して適宜に定められる。素灰粉炭を加えるのは、桐炭塊と桐炭塊のすき間を埋める必要があるからである。燃えにくい素灰粉炭を使用すると燃焼性が低下するおそれがあるが、点火層9は、燃焼性の高い桐炭塊を必須成分としているので、その心配はないし、何よりも安価であるので都合がよい。 着火層7は、桐炭を2mm以下に粉砕してなる桐炭粉に、粘結剤、素灰粉炭等を加えて形成されている。必要に応じ、硝酸ストロンチユーム等の薬剤が少量加えられていてもよい。この場合も、桐炭粉の配合割合は、硝酸ストロンチユーム等の薬剤の使用量を減少させる等の必要性と、成型上の都合で素灰粉炭を加える必要性等を考慮して適宜に定められる。着火層7は、その作用上、点火層9のようにすぐに燃焼し尽くしてしまつては都合が悪いので、上述のように、桐炭を着火層の場合よりも細かく砕いて気孔を少なくし燃焼性を少し落とすようにしているのである。 中央の空気孔10に上から差し込んである点火補助芯11は、ひも状に形成された紙あるいは繊維に燃焼補助剤を染みこませたものでできている。燃焼補助剤としては、浸透性・非吸湿性を有し、さらに、点火補助芯に易燃性を備えさせる材料が適しており、パラフイン等がその例としてあげられる。点火補助芯11は、これに点火した火が確実に点火層9まで伝わることができるとともに、自身を気孔10内に固定することができるような形状のものであればよい。点火補助芯11は、例えば、第2図に示すように、芯先が複数の細い足11′に切り分けられていると、その足を気孔10の内壁面に接触させることで、気孔10からは落ちないようになる。」(第3欄第44行目-第4欄第37行目) オ 「 [図:0001435843000003.jpg] 」 カ 上記エの記載及びオの図示から、点火層9は点火補助芯11を備え、点火層9と着火層8は直接に接触していると認められる。 キ 上記エ及びカから、点火層9は、点火補助剤を染みこませ、点火補助芯11を備えているものであるから、着火層8と組成が異なることが認められる。 (2)甲2記載技術事項 上記(1)から、甲2には、次の技術事項(以下「甲2記載技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 [甲2記載技術事項] 「点火層9の組成と着火層8の組成が異なっている点火煉炭において、 燃焼補助剤を染みこませた点火補助芯11を含む点火層9と、 点火層9と直接に接触する着火層8を含むこと。」 3 甲3について (1)甲3の記載 甲3には、次の記載事項がある。 (ア)「本発明は、炭素熱源を有する喫煙物品に関するものである。」([0001]) (イ)「先端に炭素熱源を有し、炭素熱源から発生する熱を利用して香喫味発生源を加熱する喫煙物品が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1にも記載されている喫煙物品では、炭素熱源はグラスマット等の断熱ジャケットを有し、その弾性を利用して先端の炭素熱源を保持している。この保持方法では、グラスマット等の断熱ジャケットを使用するためコストがかかり、熱源をグラスマットで巻き上げる工程も併せて必要となる。また、炭素熱源が断熱ジャケットに包まれることにより着火性が悪化する等の問題も発生すると考えられる。」([0002]) (2)甲3記載技術事項 上記(1)から、甲3には、次の技術事項(以下「甲3記載技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 [甲3記載技術事項] 「炭素熱源から発生する熱を利用して加熱する喫煙物品」 4 本件発明と甲1発明との対比 (1)対比 ア 本件発明と、甲1発明とを対比すると、甲1発明の「暖房用蝋製の燃焼体」と、本件発明の「喫煙物品のための多層可燃性熱源」とは、「可燃性熱源」という限りにおいて一致する。 イ 甲1発明の「円柱形ロウ製本体1」は、本件発明の「炭素を含む可燃性第1層」に相当する。 してみると、本件発明と、甲1発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。 [一致点] 「可燃性熱源であって、炭素を含む可燃性第1層を含む、可燃性熱源。」 [相違点1] 本件発明は、「喫煙物品のための」ものであるのに対して、甲1発明は、「暖房用」である点。 [相違点2] 本件発明の「可燃性熱源」は、「多層」で「前記第1層と直接に接触し、炭素及び少なくとも1つの発火補助剤を含む第2層と、を含み、前記第1層及び前記第2層は、少なくとも0.6g/cm3の見かけの密度を有する非繊維性の縦方向同心層であり、前記第1層の組成が、前記第2層の組成とは異なっている」のに対して、甲1発明の「円柱形ロウ製本体1」である「蝋製の燃焼体」は、多層を形成していないので、第2層を備えていない点。 [相違点3] 本件発明の「可燃性熱源」は、「炭素及び少なくとも1つの発火補助剤の一方又は両方を含む第3層」を含むのに対して、甲1発明の「円柱形ロウ製本体1」である「ロウ製の燃焼体」は、多層を形成していないので、第3層を備えていない点。 (2)甲1発明の認定に係る請求人の主張について 請求人は、第4 2のとおり、甲1発明は、b1.蝋を含む可燃性第1層と、c1.第1層と円筒状の芯体を介して接触し、蝋を含む第2層と、を含むこと、f1.第1層と第2層は蝋が同軸に層状に仕切られていること、及び、それらの根拠は、例えば、令和8年1月28日付け口頭審理陳述要領書において、「甲1号証には令和7年4月8日請求人提出の手続補正書(方式)(以下「補正書」という)に添付した補正後の別紙「6 請求の理由」の欄の第2ページに記載した通り、「暖房用燃焼体は、円筒状の芯体を任意の間をおいて外周に順次周設するということから、円柱形状の固体蝋本体が円筒状の芯体によって、同軸に層状に仕切られている燃焼体が記載されているといえる。また、図1では二層に分かれており、各層を可燃性第1層、可燃性第2層とすると、各層とも蝋を含み、第2層は円筒状の芯体を介して第1層と接触しているといえる。さらに、図より第1層と第2層は、同軸かつ層状に仕切られている」と記載されている」(第2ページ第5-13行目)である旨主張している。 しかしながら、甲1の第1欄第29-32行目の「本体1の上口面2に突設の各芯は中央の芯棒3を高く外周設の芯体4’にいたり順次低く形成し使用時各芯体の上面に張設の燃焼綱の円弧形に沿うように突設し」及び第2欄第9-10行目の「各芯体に点火使用する時」との記載、及び、第1図、第2図を参照すると、芯体3は芯体4,4’とともに点火されていることは明らかであるから、芯体4,4’は点火使用するためのものと解することができる。そして、燃焼体を構成するものについて、点火使用するものと、燃焼体を仕切るものとは、通常異なる技術概念に属するものであることを踏まえると、甲1の上記記載から、点火使用されるためロウ製本体1を仕切る芯体4,4’が「仕切り」として機能すると解することはできない。 また、請求人が口頭審理陳述要領書の3ページで主張する「芯棒3にのみ着火し、芯体4と芯体4’に着火しないような使用態様」は、甲1には記載も図示もされていない。そうすると、芯棒3のみに着火した場合に、仮に外側のロウが固体の状態で残ると考えるとしても、その理由は、単に芯棒3と当該固体の状態の部分との間に距離があるためであり、このことをもって直ちに芯体4,4’が「仕切り」として機能したためと解することはできない。 さらに、甲1に記載されている「ロウ製本体1」が、芯体4,4’により仕分けられた複数のロウ部分から構成されていることを伺わせる記載も示唆もない。 したがって、請求人の当該主張を採用することはできない。 5 判断 上記相違点について検討する。 (1)相違点1について 甲3を参照しても、ロウ製の燃焼体を喫煙物品の可燃性熱源として利用することが従来知られていたとはいえない。また、ロウ製の燃焼体を喫煙物品の可燃性熱源として利用することが、従来知られていたことを示す他の事情もない。 よって、甲1発明の暖房用蝋製の燃焼体について、従来知られたことを踏まえて、喫煙物品に適用し、相違点1に係る本件発明の発明特定事項とすることは、当業者にとって容易であるということはできない。 (2)相違点2について 一般に、ロウソクは芯体からの熱により気化したロウが燃焼するものである。一方、練炭はそれ自体が燃焼するといえるものであるので、甲1発明のロウ製の燃焼体と、甲2記載技術事項の点火練炭とは、燃焼の形式が異なる。したがって、甲1発明のロウ製の燃焼体に対し、燃焼の形式が異なる甲2記載技術事項を適用することは、当業者であっても容易に想到し得るものとはいえない。 また、甲1発明の燃焼体は暖房用であるのに対して、甲2記載技術事項の点火練炭は、家庭内や野外の炊事で用いられるものであって、その使用形態は互いに異なるものと解される。 そうすると、甲1発明と甲2記載技術事項とは、燃焼の形式及び使用形態も異なるものであり、技術分野が共通するとはいえないと言わざるを得ない。 そして、甲1発明の課題は、甲1の第1欄第18-23行目に記載されるとおり「その目的とするところは公知のロウソクの形状のものにおける固体ロウの上口面における可燃芯体を延長し火力を強力にして暖房用として使用上調整操作をする必要もなくきわめて簡単に固体による長時の燃焼持続とともに火気の安全確保を計つたことにある」であり、甲2記載技術事項は、甲2の第3欄第4-7行目に記載されるとおり「この考案は、硝酸ストロンチユーム等の高価な薬剤の使用量が少なくても、本体への着火に要する時間が短く、低コストの点火練炭を提供することを目的とする」ものであるから、両者に課題の共通性を見出すこともできない。 したがって、甲1発明に甲2記載技術事項を適用して、相違点2に係る本件発明の発明特定事項とする動機付けがない。 また、多層を形成していない甲1発明のロウ製本体1に対して、2層構造といえる甲2記載技術事項の点火層9及び着火層8を適用するには、当業者の通常の能力を超える創作能力を要するものといえる。仮に、甲1発明に対して、甲2記載技術事項が適用し得たとしても、直ちに相違点2に係る本件発明の発明特定事項になるとは、当業者といえども容易に想起することはできない。 したがって、甲1発明に甲2記載技術事項を適用して、相違点2に係る本件発明の発明特定事項とすることは、当業者であっても容易に想到することはできない。 (3)相違点3について 甲1発明のロウ製本体1は、第2層及び第3層を備えるものではなく、当該ロウ製本体1に、第2層及び第3層を設けることについて、甲1には記載も示唆もないのであるから、第1層及び第2層に加えて、さらに第3層を形成するという技術的思想はそもそも存在しない。 また、甲2にも、第1層、第2層及び第3層からなるものは開示されていない。そうすると、甲1発明に対して、甲2記載技術事項を適用したとしても、第1層、第2層及び第3層を有するもの、すなわち相違点3に係る本件発明の発明特定事項とはならない。 さらに、上記(2)で論じたとおり、甲1発明に対して、甲2記載技術事項を適用する動機もない。 したがって、甲1発明から、または甲1発明に甲2記載技術事項を適用したとしても、当業者が相違点3に係る本件発明の発明特定事項を導くことはできない。 (4)相違点に係る請求人の主張について 相違点1に関して、請求人は、口頭審理陳述要領書第4ページの「4.陳述の要領」の(2)の「「(3)」について」において、「甲1発明に係る燃焼体はロウ製ではあるが、炭素を含むということと層構造を有する熱源という点で共通する。そして、例えば甲第3号証に記載に発明である喫煙物品にみられるように、炭素を含む素材からなる熱源を喫煙具に使用する例は、本件発明の出願前に存在していたといえます。」と主張している。 しかしながら、甲3には、炭素熱源として、ロウを含めどのような材料が採用できるかの記載はない。 したがって、請求人の上記主張は当を得ない。 相違点2に関して、請求人は、口頭審理陳述要領書第5ページ「4.陳述の要領」の(2)の「「(4)」について」において、「甲1発明は炭素を含む素材からなり、甲2記載事項は練炭を素材とする点で、甲2発明と甲2記載事項は共通します。そして、蝋も練炭も本件発明の出願時に周知の素材であることから、両者から炭素を含む素材という共通項に着目して甲2記載事項を甲1発明に適用することは可能であると考えます。」と主張している。 しかしながら、先に述べたとおり、甲1発明の燃焼体のロウ製本体1に対して、甲2記載技術事項の2層構造を適用させることは、当業者の通常の創作能力の範囲を超えるものであるといえる。 したがって、請求人の上記主張は当を得ない。 相違点3に関して、請求人は、令和7年4月8日提出の手続補正書の「6 請求の理由」の第4ページ第31-33行目において、「甲第1号証の記載では、円筒状の芯体の数に特に限定はされておらず、3層以上にすることに当業者をして特段の困難性を認めることはできない。」と主張している。 しかしながら、先に述べたとおり、甲1発明は、第2層及び第3層を有するものではなく、甲1の記載から第2層及び第3層を設けることは容易に想到できない。 また、上記(2)で述べたとおり、甲1発明に甲2記載技術事項を適用しても、相違点3に係る本件発明の発明特定事項とはならず、さらに、甲1発明に甲2記載技術事項を適用する動機もない。 したがって、請求人の上記主張は当を得ない。 6 小括 よって、本件発明は、甲1発明及び甲2記載技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第7 結論 以上のとおりであるから、無効理由には理由がないものであり、本件発明についての特許は、無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。 以上、結論のとおり審決する。

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2024-800176

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    同じ当事者: Future Technology 株式会社、フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
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