特許無効審判
2024-800152
エアロゾル発生物品で使用するための熱伝導ロッド
- 審判番号
- 2024-800152
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2015-514513
- 登録番号
- 6557139
- 請求日
- 2024年11月22日
- 審決日
- 2026年03月30日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】Future Technology 株式会社
- 【被請求人】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
- 【被請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【被請求人代理人】須田 洋之
- 【被請求人代理人】山崎 一夫
- 【被請求人代理人】近藤 直樹
- 【被請求人代理人】那須 威夫
- 【被請求人代理人】鈴木 信彦
- 【被請求人代理人】岩上 健
- 【被請求人代理人】豊島 匠二
- 審判長/審判官
- 審判長 大山 健
- 審判官 竹下 和志
- 審判官 柳幸 憲子
- 分類
- P1123.121-Y (A24B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第6557139号発明「エアロゾル発生物品で使用するための熱伝導ロッド」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
特許第6557139号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
2 答弁の趣旨
本審判の請求は成り立たない。
審判費用は請求人の負担とする。
との審決を求める。
第2 手続の経緯
1 本件特許の出願から設定登録までの経緯
本件特許に係る出願は、2013年(平成25年)5月30日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2012年5月31日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、本件特許の請求項1~11に係る発明についての、出願から本件無効審判請求の前までの手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
平成25年 5月30日 出願(特願2015-514513号;パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年5月31日(EP)欧州特許庁)
平成29年 3月24日付け 拒絶理由通知
同年 8月21日 意見書・手続補正書の提出
同年 8月28日付け 拒絶査定
同年12月27日 (拒絶査定不服審判)審判請求書・手続補正書の提出
平成30年 9月 7日 上申書の提出
同年10月 3日付け 拒絶理由通知
平成31年 4月 4日 意見書・誤訳訂正書の提出
令和 元年 6月 3日付け 審決
同年 7月19日 設定登録
2 本件無効審判事件の手続の経緯
本件無効審判事件の手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和6年11月22日 審判請求書の提出
令和7年 3月 6日 手続補正書(方式)の提出
同年 4月15日 手続補正書(方式)の提出
同年 7月28日 審判事件答弁書の提出
同年11月17日付け 審理事項通知
同年12月23日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
令和8年 1月27日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
同年 3月 3日 口頭審理
第3 本件発明
本件特許の請求項1~11に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(本件発明)は次のとおりである。
「【請求項1】
エアロゾル形成材料(2)を含む第1のシートと、熱伝導材料(3)を含む第2のシートとを含むロッドであって、前記第1のシートと前記第2のシートは、前記ロッドの円筒軸に対して実質的に横方向に、共に折り重ねられるように、又は、共に圧縮され若しくは収縮されるように、共にギャザー加工されてラッパー(12)に取り巻かれており、前記ギャザー加工された第1及び第2のシートは、前記ロッドの実質的に全長に沿って、前記ロッドの横断面積の実質的に全体にわたって延びており、前記第1のシート(2)は、均質化タバコ材料のシートである、
ことを特徴とするロッド。」
第4 請求人・被請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
審判請求書、令和7年3月6日付け手続補正書、令和7年4月15日付け手続補正書、令和7年12月23日付け口頭審理陳述要領書(以下「請求人側陳述要領書」という。)によれば、請求人が主張する無効理由の要旨は、以下のとおりである。
本件特許の本件発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基いて、優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同発明に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
2 証拠方法
・甲第1号証 :特許第2767445号公報
・甲第2号証 :特表平8-511175号公報
(以下、それぞれ「甲1」及び「甲2」という。)
3 被請求人の主張の概要
令和7年7月28日付け審判事件答弁書、令和8年1月27日付け口頭審理陳述要領書によれば、被請求人の主張は、以下のとおりである。
本件発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、同発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に反するものではなく、同法第123条第1項第2号に該当するものではない。
第5 当審の判断
1 甲1記載事項
甲1には、次の記載事項、図示事項がある。なお、下線は当審において付した。以下同様。
(1)「本発明は、喫煙物品の製造に用いるためのロッド(棒状体)の製造に関し、特に、シート状材料のウエブからロッドを製造することに関する。
従来の技術
1985年の後半に、紙巻タバコに随伴する利点を提供することができ、しかも多量の不完全燃焼生成物又は熱分解生成物を生じることのない新規な喫煙物品を開示した一連の外国特許が許可され、登録された。それらの特許のうち最も早期のものは、1985年9月13日に発行されたリベリア特許第13985/3890号であり、これに相当するヨーロッパ特許出願公告第174,645号が1986年3月19日に公告された。
このヨーロッパ特許出願公告第174,645号及びヨーロッパ特許出願公告第212,645号に開示された紙巻タバコ型喫煙物品は、可燃燃料素子と、それとは物理的に別体のエアゾール発生手段を含むものである。燃料素子の燃焼によりエアゾール発生手段に熱が与えられ、エアゾールを発生する。このようにして発生したエアゾールは、吸口端部材から喫煙者の口へ吸引される。このような独特の形態の紙巻タバコのための改良された吸口端部材並びにその他の構成部材の提供が望まれており、すでに、そのような吸口端部材並びにその他の構成部材は、1987年8月25日付けで出願された米国特許願第089,692号に記載されている。
又、喫煙物品、特に、上記ヨーロッパ特許出願公告第174,645号に開示された型式の紙巻タバコ型喫煙物品の製造に用いるためのロッド(棒状体)を能率的、かつ、効率的に製造することができる装置を提供することが大いに望まれている。」(第4欄第21~49行)
(2)「本明細書でいう「ひだ寄せ」とは、シート状材料のウエブを連続的に折重ね、ひだつけすることをいう。ひだ寄せされた材料は、その端面図でみて波形状に折重ねられた、あるいは何らかの形で収束された外観を呈する。
「シート状」とは、その材料の幅及び長さがその厚みより大きい形態を有することをいう。「ウエブ」とは、その長手が幅より大きい寸法を有する形態(連続した帯状形態)のシート状材料のことをいう。シート状材料のウエブは、ロールの形で供給することが好ましい。」(第5欄第31~40行)
(3)「第1図を参照して説明すると、ロッド製造装置10は、ロッド製造ユニット13と、シート状材料のウエブ(以下、単に「ウエブ」とも称する)19を供給するための繰出しユニット16と、ウエブ予備成形装置22を含む。」(第6欄第18~21行)
(4)「第7図は、ウエブ予備成形装置の変形実施例を示す。このウエブ予備成形装置22は、外側切頭円錐形チューブ130と、内側切頭円錐形チューブ133を含み、更に内側チューブ133の中にチューブ130及び133と同心的に内側切頭円錐部材220が配設され、外側チューブ130の内周面と内側チューブ133の外周面との間に環状空間136が、そして内側チューブ133の内周面と内側部材220との間に環状空間222形成されている。この構成によれば、2つの適当なウエブ繰出しユニットを用いて2つの独立したウエブを同時に併行してそれぞれ環状領域136及び222内へ送給することができ、ロッドを形成するために各ウエブをひだ寄せする。各して、2種類のひだ寄せシート状材を有するロッドを製造することができる。即ち、外側環状領域136を通してひだ寄せされたウエブは、内側環状領域222を通って出てくるひだ寄せウエブを囲繞するようにして連続ロッドを形成する。
再び第1図を参照して説明すると、ウエブ予備成形装置22の狭細出口領域169は、ひだ寄せされロッド状複合体(図示せず)の形に形成されたウエブがロッド形成ユニット13内へ受容されるうるように舌状部材175又は他の収束手段に対して位置づけされる。即ち、ひだ寄せウエブは、ほぼ円筒形状を有する。ウエブ予備成形装置の狭細領域169からロッド状複合体として出てきたひだ寄せされたウエブは、無端コンベヤベルト243を有するラップ包被機構243内へ送入される。無端コンベヤベルト243は、送り機構245を用いて連続的に長手方向に送られる。ローラ247は、コンベヤベルト243をロッド形成ユニットの舌状部材175の下に案内するための手段を構成する。ラップ包被機構240は、ラップ材249のウエブを円筒形ロッド複合体の外周面へ導き、連続したロッド252を形成する。通常、ラップ材249のウエブは、ボビン254から供給される。ローラ257は、ラップ材249のウエブをコンベヤベルトへ案内するための手段を構成する。
無端コンベヤベルト243は、ラップ材249のウエブ及び円筒形複合体を、ラップ材249のウエブが円筒形複合体に垂れかかり、それを包み込むようにしてラップ包被機構240を通して長手方向に搬送する。ラップ材の端縁を重ね合わせることによって形成される継ぎ目に塗布器262によって接着剤(例えばホットメルト接着剤)が塗布される。ホットメルト接着剤は、再活性化部署265において再活性化され、ラップ材の継ぎ目を接着し円筒形複合体を包被するための筒状容器を構成する。接着剤は、迅速に硬化させるために冷却バー270を用いて冷却することができる。連続したロッドを形成するに当りラップ材を固着し密封するための手段として上述した手段以外の手段を用いることもできる。
連続ロッド252は、密封手段262、265、270から排出され、切断手段276を用いて一定の間隔で所望の長さに切断される。一連の切断されたロッド278は、トレー又は収集ドラムのような収集手段280内に収集される。
ウエブの材料としてはいろいろなものを使用することができる。例えば、ウエブは、再構成タバコ材のような天然材料であってもよく、熱可塑性ポリマー材のような合成材料であってもよい。」(第9欄第49行~第11欄第2行)
(5)「第8~10図を参照して説明すると、ロッド278は、実質的に円筒形を有し、ほぼ円形の断面形状を有する。各ロッドの両端面は、ロッドの長手軸線に対して垂直な平面を画定することが好ましい。ロッドは、そのシート状材料19のウエブに多数の長手方向に延長したひだを有するものであることが極めて望ましい。ひだ寄せされたウエブは、筒状に形成された紙巻タバコ用紙ラップ又は紙プラグのようなラップ材249によって包被する。第10図に示されたロッドは、長手方向に貫通したチューブ285を有している。」(第11欄第38~47行)
(6)「本発明を更に説明するために以下に実際の例を示すが、これらの例は本発明を限定するものではない。特に断わらない限り、以下の例において挙げられた部及び%は重量を基準としたものである。
例1
第1、2及び3図に示されたのとほぼ同様のロッド製造装置を準備した。(・・・・中略・・・・)
キンバリー-クラーク・コーポレーシヨン社から販売されている商品番号PP-100-Fのポリプロピレン材のメルトブローされたマクロ繊維のウエブを入手し、その材料の加工性を改良するために該ウエブに約2%のグリセリンを添加した。」(第12欄第20~45行)
(7)「【第1図】
[図:0001435840000001.jpg]
」
(8)「【第7図】
[図:0001435840000002.jpg]
」
(9)「【第8図】
[図:0001435840000003.jpg]
」
2 上記1から認められる事項
(1)上記1(1)の記載事項によれば、甲1に記載された喫煙物品の製造に用いるためのロッドとは、「喫煙物品、特に、上記ヨーロッパ特許出願公告第174,645号に開示された型式の紙巻タバコ型喫煙物品の製造に用いるためのロッド(棒状体)を能率的、かつ、効率的に製造することができる装置を提供することが大いに望まれている」ことを背景に開発されたものと理解されるところ、「このヨーロッパ特許出願公告第174,645号及びヨーロッパ特許出願公告第212,645号に開示された紙巻タバコ型喫煙物品は、可燃燃料素子と、それとは物理的に別体のエアゾール発生手段を含むものである。燃料素子の燃焼によりエアゾール発生手段に熱が与えられ、エアゾールを発生する」ものである。
そうすると、甲1に記載された喫煙物品の製造に用いるためのロッドは、燃料素子の燃焼によりエアゾール発生手段に熱が与えられ、エアゾールを発生するものであって、エアゾール発生手段自体は燃焼せずに、燃料素子の燃焼を加熱手段として、燃料素子の燃焼により生じた発熱が、エアゾール発生手段に伝熱するものといえる。
したがって、甲1に記載された喫煙物品の製造に用いるためのロッドとは、エアゾール発生手段自体は燃焼せずに、エアゾール発生手段とは別体の燃料素子の燃焼を発熱体として、燃焼により生じた発熱が、エアゾール発生手段に伝熱するような喫煙物品の製造に用いるためのロッドと理解される。
(2)上記1(6)の記載事項には、「第1、2及び3図に示されたのとほぼ同様のロッド製造装置」に「グリセリンを添加した」「ウエブ」を用いることが開示されている。
そして、甲1において第7図は、図1のウエブ予備成形装置の変形実施例を示すものであり、製造装置に用いるウエブについて何ら制限がないことを踏まえれば、第7図に示された製造装置に利用可能なウエブに、「第1、2及び3図に示されたのとほぼ同様のロッド製造装置」に利用可能なウエブと同様に、グリセリンを添加したウエブが含まれることは、実質的に記載されているに等しいものといえる。
また、上記1(4)の記載事項によれば、ウエブの材料について、再構成タバコ材を含む、いろいろなものを使用することができることが示唆されている。
以上を踏まえると、甲1に記載されたウエブには、グリセリンを添加し、再構成タバコ材を材料に含むものが対象となるといえる。
(3)第1図及び第7図の図示事項に示されるウエブ予備成形装置について、上記1(3)及び(4)の記載事項を踏まえると、ウエブ予備成形装置は、「2つの独立したウエブを同時に併行してそれぞれ環状領域136及び222内へ送給」し、「各ウエブをひだ寄せ」し、「外側環状領域136を通してひだ寄せされたウエブは、内側環状領域222を通って出てくるひだ寄せウエブを囲繞するようにして連続ロッドを形成する」ものであり、第1図及び第8図の図示事項から「連続ロッド」の円筒軸に対して、それぞれ横方向(ウエブの送給方向に垂直な方向)に対してひだを寄せるものと理解される。
また、上記1(4)の記載事項から、切断されたロッド278は、連続ロッドを切断手段を用いて切断することで得られるものであり、切断されたロッドの内部には、切断されたウエブが「シート」として含まれているといえる。
そうすると、切断されたロッド278には、外側環状領域136を通してひだ寄せされた「第1のシート」と、内側環状領域222を通してひだ寄せされた「第2のシート」とが含まれ、いずれも切断されたロッド278の円筒軸に対して横方向にひだ寄せされるものであるといえる。
(4)上記1(4)の記載事項の「舌状部材175又は他の収束手段」は、「ウエブ予備成形装置22の狭細出口領域169」に対して、「ひだ寄せされロッド状複合体(図示せず)の形に形成されたウエブがロッド形成ユニット13内へ受容されるうるように」「位置づけ」られ、「2つの独立したウエブ」を、「ほぼ円筒形状を有する」ように形成するものといえる。
ここで、第7図の図示事項から、「舌状部材175又は他の収束手段」は、「2つの独立したウエブ」の送給方向に対して、出口が入り口よりも小さい、すぼまった形状となっていることが看取できるから、送給される「2つの独立したウエブ」は、外側環状領域136を通してひだ寄せされたウエブが、内側環状領域222を通してひだ寄せされたウエブを囲繞した状態で、さらに「連続ロッド」の径方向に収縮されるように、共にひだ寄せされるものといえる。
そして、上記(3)で説示したのと同様の理由で、切断されたロッドにおいては、上記第1のシートが、上記第2のシートを囲繞した状態で、切断されたロッドの径方向に収縮されるように、共に横方向にひだ寄せされるものであるといえる。
(5)上記1(4)及び(5)の記載事項から、ひだ寄せされたウエブは、ラップ材により、包被されることで連続ロッドを形成し、連続ロッドが切断されることで、切断されたロッドとなることから、切断されたロッドの上記「第1のシート」と上記「第2のシート」は、ラップ材により包被されているといえる。
(6)上記1(5)の記載事項及び第8図の図示事項から、切断されたウエブからなる2つのシート(「第1のシート」及び「第2のシート」)が、切断されたロッドの横断面積の全体にわたっていることが看守できる。
3 甲1発明
上記1及び2を踏まえると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
〔甲1発明〕
「外側環状領域136を通してひだ寄せされると共にグリセリンを添加し、再構成タバコ材を材料に含む第1のシートと、内側環状領域222を通してひだ寄せされると共にグリセリンを添加し、再構成タバコ材を材料に含む第2のシートとを含む燃焼式の喫煙物品の製造に用いるためのロッドであって、前記第1のシートと前記第2のシートは、前記燃焼式の喫煙物品の製造に用いるためのロッドの円筒軸に対して横方向に、前記第1のシートが、前記第2のシートを囲繞した状態で、前記燃焼式の喫煙物品の製造に用いるためのロッドの径方向に収縮されるように、共にひだ寄せされてラップ材により包被されており、前記第1のシート及び前記第2のシートは、前記燃焼式の喫煙物品の製造に用いるためのロッドの実質的に全長に沿って、前記ロッドの横断面積の全体にわたって延びている、
エアゾール発生手段とは別体の燃料素子の燃焼を発熱体として、燃焼により生じた発熱が、前記エアゾール発生手段に伝熱するような燃焼式の喫煙物品の製造に用いるためのロッド。」
4 甲2記載事項
甲2には、次の記載事項、図示事項がある。
(1)「発明の技術分野
本発明は電気的に駆動される喫煙物品のための加熱システム、特に電気的に駆動される喫煙物品のための誘導加熱システムに関する。」(第8ページ第4~6行)
(2)「例えば、図1、図2に示す如く、誘導加熱源10は、電流担持ワイヤ又は励起コイル12を一部の回りに巻かれてトロイドを形成したフェライト又は他の透磁性材料からなる適正な形状の極片11を含むことができる。電流担持ワイヤ12は交番電流回路LCへ接続される。誘導源は第1図に示す如くE字形にでき、二つの端脚の間に位置して端脚と同じ方向に延びた中央脚20の回りにワイヤ12が螺旋巻され、あるいは第2図に示す如く方形化されたC字形にでき、ワイヤ12は二つの垂直に延びた脚32、34間の中央区分30に沿って螺旋巻されている。あるいは、極片は励起コイルにより取り囲まれたロッドを含む。回路は後で詳述する如く電池又は他の電源へ接続された適当な回路LCにできる。誘導加熱源は故に交番磁界を形成する。図1のE字形極片の場合、磁界βの磁力線は中央脚からそれぞれの端脚へ延び、複数個のフィールドラインからなる二つの弧を形成する。故に、磁界は脚間で自己シールする。図2のC字形極片の場合、磁力線は複数個のフィールドラインからなる弧として端脚間に延び、且つ自己シールされる。この発生した交番磁界は下に述べる如く、適正に位置したサセプタ内に渦電流を誘導する。
図3に最もよく見られる如く、一実施例に於て、複数個の誘導源10が採用され、タバコ風味媒体からなる筒状シガレットCの回りに円周状に、実質的に平面関係に配置されている。」(第15ページ第2~19行)
(3)「図8に関して、シガレット積層体の横断面が示されるが、これはタバコ風味材料TMの筒状層、TM層の上に位置する筒状サセプタ層300、及び紙20オーバーラップ310から成る。発生した磁界は紙オーバーラップ310を通過し、この紙オーバーラップは渦電流により加熱されないがその理由は紙は高い透磁率を有するからであり、それにより凝縮を減らすがその理由は紙は磁界により燃焼されないからである。紙オーバーラップ310は紙が加熱されたサセプタにより燃焼されないような寸法にされ作られる。発生した磁界は渦電流を下にあるサセプタ層300に誘導する。しかして、サセプタ層300は加熱され、密着した又は近接するタバコ材料層TMを主として伝導により加熱して所望の風味を発生する。」(第20ページ第20行~第21ページ第1行)
(4)「サセプタ層300及びオーバーラップ310は箔積層体、例えばアルミニウム箔積層体から構成することができる。」(第22ページ第7~9行)
(5)「この構成は、サセプタとタバコ風味媒体との間の有効な境界部域を増加させるが、その理由はサセプタ部域の大部分がタバコ風味媒体と熱的接触をしてそれに熱を伝導するからである。」(第22ページ第25~27行)
(6)「【図1】
[図:0001435840000004.jpg]
」
(7)「【図3】
[図:0001435840000005.jpg]
」
(8)「【図8】
[図:0001435840000006.jpg]
」
5 甲2記載技術事項
上記4を踏まえると、甲2には、次の技術事項(以下「甲2記載技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
〔甲2記載技術事項〕
「タバコ風味材料TMの筒状層、タバコ風味材料TMの筒状層の上に位置する筒状サセプタ層300及びオーバーラップ310から成るシガレット積層体で形成した筒状シガレットCにおいて、サセプタ層300をアルミニウム箔積層体から構成することで、サセプタとして機能するアルミニウム箔積層体が、誘導加熱源10が形成した交番磁界により渦電流が誘導されて加熱され、アルミニウム箔積層体で構成されたサセプタ層300に密着した又は近接するタバコ風味材料TMの筒状層を加熱すること。」
6 本件発明と甲1発明との対比
本件発明と、甲1発明とを対比すると、甲1発明の「外側環状領域136を通してひだ寄せされると共にグリセリンを添加し、再構成タバコ材を材料に含むシート」は、「グリセリン」が燃焼によりエアロゾルを形成するものであるから、本件発明の「エアロゾル形成材料(2)を含む第1のシート」に相当する。
また、甲1発明の「内側環状領域222を通してひだ寄せされると共にグリセリンを添加し、再構成タバコ材を材料に含む第2のシート」は、本件発明の「熱伝導材料(3)を含む第2のシート」と、「第2のシート」の限りにおいて一致する。
また、甲1発明の「燃焼式の喫煙物品の製造に用いるためのロッド」は、本件発明の「ロッド」に相当する。
そうすると、甲1発明の「外側環状領域136を通してひだ寄せされると共にグリセリンを添加し、再構成タバコ材を材料に含む第1のシートと、内側環状領域222を通してひだ寄せされると共にグリセリンを添加し、再構成タバコ材を材料に含む第2のシートとを含む燃焼式の喫煙物品の製造に用いるためのロッド」は、本件発明の「エアロゾル形成材料(2)を含む第1のシートと、熱伝導材料(3)を含む第2のシートとを含むロッド」と、「エアロゾル形成材料(2)を含む第1のシートと、第2のシートとを含むロッド」の限りにおいて一致する。
また、甲1発明の「ラップ材により包被されて」いることは、本件発明の「ラッパー(12)に取り巻かれて」いることに相当する。
そうすると、甲1発明の「前記第1のシートと前記第2のシートは」、「ラップ材により包被されて」いることは、本件発明の「前記第1のシートと前記第2のシートは」、「ラッパー(12)に取り巻かれて」いることに相当する。
甲1発明の「前記第1のシート及び前記第2のシートは、前記燃焼式の喫煙物品の製造に用いるためのロッドの実質的に全長に沿って、前記ロッドの横断面積の全体にわたって延びている」ことと、本件発明の「前記ギャザー加工された第1及び第2のシートは、前記ロッドの実質的に全長に沿って、前記ロッドの横断面積の実質的に全体にわたって延びて」いることとは、「前記第1及び第2のシートは、前記ロッドの実質的に全長に沿って、前記ロッドの横断面積の実質的に全体にわたって延びて」いる限りにおいて一致する。
また、甲1発明の「再構成タバコ材」は、粒子状タバコを塊にすることによって形成された材料を含むことから、本件発明の「均質化タバコ材料」に相当する。
そうすると、甲1発明の「外側環状領域136を通してひだ寄せされると共にグリセリンを添加し、再構成タバコ材を材料に含む第1のシート」は、「再構成タバコ材」を含んでいるから、本件発明の「前記第1のシート(2)は、均質化タバコ材料のシートである」ことに相当する。
してみると、本件発明と、甲1発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。
〔一致点〕
「エアロゾル形成材料を含む第1のシートと、第2のシートとを含むロッドであって、前記第1のシートと前記第2のシートは、ラッパーに取り巻かれており、前記第1及び第2のシートは、前記ロッドの実質的に全長に沿って、前記ロッドの横断面積の実質的に全体にわたって延びており、前記第1のシートは、均質化タバコ材料のシートである、
ロッド。」(なお、符号は省略した。)
〔相違点1〕
「第2のシート」について、本件発明では、「熱伝導材料を含む」のに対して、甲1発明では、グリセリンを添加し、再構成タバコ材を材料に含むといえるものの、熱伝導材料を含むか不明な点。
〔相違点2〕
第1のシートと第2のシートが、本件発明では、「前記ロッドの円筒軸に対して実質的に横方向に、共に折り重ねられるように、又は、共に圧縮され若しくは収縮されるように、共にギャザー加工され」るのに対して、甲1発明では、「前記第1のシートが、前記第2のシートを囲繞した状態で、前記燃焼式の喫煙物品の製造に用いるためのロッドの径方向に収縮されるように、共にひだ寄せされ」るものである点。
7 相違点の判断
上記相違点1について検討する。
甲1発明の「ロッド」は、エアゾール発生手段とは別体の燃料素子の燃焼を加熱手段として、燃焼により生じた発熱が、エアゾール発生手段に伝熱するような喫煙物品の製造に用いるためのものである。
これに対して、甲2記載技術事項では、エアロゾルを発生する、筒状シガレットCのタバコ風味材料TMの筒状層は、サセプタとして機能するアルミニウム箔積層体に密着又は近接配置されることで、誘導加熱源10が形成した交番磁界により渦電流が誘導されて加熱されるものである。
そうすると、甲1発明は、エアゾール発生手段とは別体の燃料素子の燃焼により生じた発熱を、エアゾール発生手段(ロッド内のグリセリンや再構成タバコ材からなる第1のシート及び第2のシート)に伝熱するように構成したものであるから、甲1発明において、エアゾール発生手段であるロッド内のグリセリンや再構成タバコ材からなる第1のシート及び第2のシートを加熱するための更なる手段が必要ないことは明らかであるし、甲1発明は交番磁界により渦電流を誘導する誘導加熱源及びそのサセプタを備えるものでもないから、甲1発明に対して、甲2記載技術事項のサセプタとして機能するアルミニウム箔積層体を適用する動機付けが存在するとはいえない。
また、仮に、甲1発明に対して、甲2記載技術事項を適用できたとしても、発熱体として機能する甲1発明の「エアゾール発生手段とは別体の燃料素子」を、甲2記載技術事項のサセプタとして機能するアルミニウム箔積層体及びその誘導加熱源に置換することにとどまるものであって、甲1発明において、エアゾール発生手段である「第2シート」に代えて又は加えて、アルミニウム箔積層体とすることが容易になし得るとはいえないから、相違点1に係る本件発明の「第2のシート」が「熱伝導材料を含む」構成は、得られない。
さらに、本件発明は、相違点1に係る構成を備えることにより、「しかしながら、エアロゾル形成材料のシートは、低い熱伝導性を有することがある。このことは、エアロゾル発生材料のシートから形成されたロッド又はプラグを均等に加熱するのが困難な場合があることを意味する。加熱に差があると、ロッド又はプラグの一部の箇所が高温に加熱されることがある。これらのロッド部分は焦げて、不快な味の揮発性成分を放出又は発生させることがあり、又はこれらの部分からの揮発性物質の発生又は消費が急速過ぎて、満足のいくユーザ体験が得られないこともある。ロッド又はプラグのうち熱源から離れた残りの部分は、揮発性物質を発生させるのに十分な温度に達しないこともある。」(本件特許の段落【0024】)ことを解決し得るとの有利な効果を奏するものである。
したがって、甲1発明と、甲2記載技術事項とから、相違点1に係る本件発明の構成を得ることが、当業者にとって容易であるということはできない。
8 請求人の主張
請求人は、請求人側陳述要領書の「6.陳述の要領」の第2の1(1)及び(2)(P.2)並びに第3(2)○2(当審注:「○」の中に数字の「2」を意味する。)(P.3)において、以下の(1)~(3)の主張をしている。また、口頭審理において、以下の(4)の主張をしている。
(1)「甲1発明のロッドが用いられる喫煙物品と誘導加熱式の喫煙物品とは、加熱方式が、発熱体が可燃性熱源から発せられる燃焼熱か、サセプタから発せられるジュール熱及びヒステリシス損失の違いであり、両加熱手段に用いるロッドは本質的な違いはないといえるので、甲1発明と甲2とは技術分野に違いはないといえ、甲1発明に甲2を適用する動機付けは存在すると考えます。」
(2)「甲2の加熱方式である誘導加熱方式を甲1発明に適用する場合は、サセプタに相当する部材を甲1発明のロッドに付与する必要があり、甲2記載事項のアルミニウム箔をサセプタに使用する場合に、第2ウエブに代えてまたは第2ウエブに加えてシート状のサセプタを使用することは当業者であれば特段の困難を伴わないと考えます。」
(3)「請求人が主張しているのは、甲2記載事項、すなわちサセプタにアルミニウム箔が使用され、サセプタとタバコ風味媒体が熱的接触をし、サセプタから熱が伝導していることに触れた当業者であればこれを甲1発明の第2ウエブに代えてまたは第2ウエブに加えて使用することは当業者であれば容易であるということであります。仮に、「サセプタ層」だけを「タバコ風味媒体」と切り離して用いることが不自然であったとする場合、両者の複合体を第2ウェブに代えて用いることは特段不自然ではないので、結局甲2事項を甲1発明に適用することで本件発明に想到することは当業者であれば容易であるといえます。」
(4)(被請求人が口頭審理においてした、甲1発明に対して、甲2記載技術事項を適用することに阻害要因がある旨の主張に対して)「甲第2号証に記載されているサセプタの厚みが、約0.25~0.5ミルであることが、直ちに破断しやすいものといえる根拠はない。また、甲第1号証の第6ページ第11欄第25~30行の記載から、シート材料には破断することがないことが望ましいとされているのだから、甲1発明に甲第2号証の技術事項を適用する際に、サセプタの厚さを適宜調整して適用すれば良く、阻害要因にはならない。」
そこで、上記主張について検討する。
まず、(1)、(2)及び(4)の主張について検討する。
上記7で説示したとおり、甲1発明に対して、甲2記載技術事項を適用する動機付けが存在するとはいえない。また、仮に適用できたとしても、阻害要因の有無を論ずるまでもなく、相違点1に係る本件発明の「第2のシート」が「熱伝導材料を含む」構成は、得られない。
よって、(1)、(2)及び(4)の主張を採用することはできない。
次に、(3)の主張について検討する。
サセプタとタバコ風味媒体が熱的接触をし、サセプタから熱が伝導していることが甲2に記載されているとしても、甲1発明は、エアゾール発生手段とは別体の燃料素子の燃焼により生じた発熱を、エアゾール発生手段に伝熱するように構成したものであるから、甲1発明において、エアゾール発生手段であるロッド内のグリセリンや再構成タバコ材からなる第1のシート又は第2のシートに熱的に接触するサセプタを設ける必要はないし、甲1発明は交番磁界により渦電流を誘導する誘導加熱源を備えるものでもない。さらに、甲2には、タバコ風味材料TMの筒状層、タバコ風味材料TMの筒状層の上に位置する筒状サセプタ層300及びオーバーラップ310から成るシガレット積層体で形成した筒状シガレットCを前提として、サセプタとタバコ風味媒体が熱的接触をし、サセプタから熱が伝導していることが記載されているといえるところ、上記甲2の記載を参酌しても、サセプタを必要としない甲1発明のロッドにおいて、エアゾール発生手段である「第2シート」に代えて又は加えて、サセプタ(アルミニウム箔積層体)を設けることが容易になし得るとまではいうことができない。
よって、(3)の主張を採用することはできない。
9 小括
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明は、甲1発明及び甲2記載技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由には理由がないものであり、本件発明についての特許は、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-800152