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特許無効審判

2024-800171

誘導加熱式エアロゾル発生物品、そのような物品を製造するための方法、およびそのような物品のサセプタを製造するための器具

審判番号
2024-800171
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2021-549831
登録番号
7575389
請求日
2024年12月02日
審決日
2026年03月04日
公報発行日
2026年05月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】Future Technology 株式会社
  • 【被請求人】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
  • 【被請求人代理人】▲吉▼田 和彦
  • 【被請求人代理人】須田 洋之
  • 【被請求人代理人】山崎 一夫
  • 【被請求人代理人】大塚 文昭
  • 【被請求人代理人】近藤 直樹
  • 【被請求人代理人】那須 威夫
  • 【被請求人代理人】鈴木 信彦
  • 【被請求人代理人】岩上 健
審判長/審判官
  • 審判長 水野 治彦
  • 審判官 鈴木 充
  • 審判官 上田 雄
分類
P1123.121-Y (A24B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第169条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第7575389号発明「誘導加熱式エアロゾル発生物品、そのような物品を製造するための方法、およびそのような物品のサセプタを製造するための器具」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨 1 請求の趣旨 特許第7575389号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。 2 答弁の趣旨 本件審判請求は成り立たない。 審判費用は請求人の負担とする。 との審決を求める。 第2 手続の経緯 1 特許第7575389号(以下「本件特許」という。)の出願から設定登録までの経緯 本件特許の出願から設定登録までの経緯は、大略次のとおりである。 2020年(令和2年)2月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2019年2月28日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願 令和6年9月5日付け 特許査定 令和6年10月21日 設定登録 2 本件無効審判の手続の経緯 本件無効審判の手続の経緯は、以下のとおりである。 令和6年12月2日 審判請求書の提出 令和7年2月19日 手続補正書の提出(請求人) 令和7年6月19日 審判事件答弁書の提出 令和7年10月22日付け 審理事項通知 令和7年11月21日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人) 令和8年1月5日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人) 令和8年1月26日 口頭審理 第3 本件発明 本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 誘導加熱式エアロゾル発生装置で使用するための誘導加熱式エアロゾル発生物品であって、前記物品が、少なくとも1つのエアロゾル形成基体と、前記エアロゾル形成基体と熱的に近接している、または前記エアロゾル形成基体と熱的に接触している、少なくとも1つのサセプタと、を含み、前記サセプタが、平坦化された拡張された金属シートであって、前記シートを通して複数の開口部を含む、平坦化された拡張された金属シートを含む、誘導加熱式エアロゾル発生物品。」 第4 請求人の主張及び証拠方法 1 請求人の主張の概要 令和7年2月19日提出の手続補正書(以下「手続補正書」という。)により補正された審判請求書、口頭審理陳述要領書によれば、請求人が主張する無効理由は、本件発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである、というものであり、その内容は大略以下のとおりである。 ・ 本件発明は、サセプタを構成する拡張された金属シートが「平坦化された」ものであるが、甲第1号証に記載された発明はかかる事項がない点で相違する。 ・しかしながら、甲第2号証には、多孔性の空気分配板に平坦にされた伸展金属が使用されていることが記載され、甲第3号証には、メッシュ材料のステントが拡大金属シートからなり、平らに伸ばされた状態が記載されているから、「拡張された金属シートを平坦化すること」は、本件発明の出願前に周知の技術であったと考えられる。 ・そして、甲1発明に甲第2号証及び甲第3号証に記載された周知技術を適用して、当業者が本件特許発明の構成に想到することは容易である。 2 証拠方法 甲第1号証:国際公開第2018/002084号 甲第2号証:特開昭51-125508号公報 甲第3号証:特表2002-533157号公報 第5 被請求人の主張 1 被請求人の主張の概要 答弁書、口頭審理陳述要領書によれば、被請求人の無効理由に対する主張は、本件発明は、当業者が容易に発明できたものではない、というものであり、上記の相違点についての主張は、大略以下のとおりである。 ・甲第2号証はウェブ取り扱い装置用の空気棒組立体に関するもので、エアロゾル発生装置のサセプタとは無関係な技術分野を扱っている。甲第3号証は透析や開心術における血流チューブに関するもので、こちらもエアロゾル発生装置のサセプタとは無関係である。甲第2号証と甲第3号証は、サセプタの総質量の減少や広範囲の熱放射を提供することとは無関係であり、当業者がこれらを参照する動機付けはない。 ・甲第1号証は、加熱材の本体40が平面でない形状であることにより、熱伝達を改善し、喫煙材料の加熱を増大させる効果があるとされており、平坦化することには阻害要因がある。 ・したがって、甲第1号証の本体40を平坦化された金属シートに変更することは当業者にとって合理的ではなく、本件発明は甲第1号証に記載された発明、甲第2号証、甲第3号証に基づいて想到し得るものではないため、無効理由には該当しない。 第6 当審の判断 1 甲号証の記載事項 (1)甲第1号証 甲第1号証(以下「甲1」という。)には、次の記載事項及び図示事項がある。なお、摘記箇所で示す行数の数え方については、甲1の本文側方にある番号によるものとし、空行も行数に含んでいる。なお、訳は、甲第1号証訳文(特表2019-524079号公報)による。 ア「As used herein, the term "smokable material" includes materials that provide volatilised components upon heating, typically in the form of vapour or an aerosol. "Smokable material" may be a non-tobacco-containing material or a tobacco-containing material. "Smokable material" may, for example, include one or more of tobacco per se, tobacco derivatives, expanded tobacco, reconstituted tobacco, tobacco extract, homogenised tobacco or tobacco substitutes. The smokable material can be in the form of ground tobacco, cut rag tobacco, extruded tobacco, reconstituted tobacco, reconstituted smokable material, liquid, gel, gelled sheet, powder, or agglomerates, or the like. "Smokable material" also may include other, non-tobacco, products, which, depending on the product, may or may not contain nicotine. "Smokable material" may comprise one or more humectants, such as glycerol or propylene glycol.」(第5ページ第5~15行) (訳:「【0030】 本書では、用語「喫煙材」は、加熱されると揮発成分を、典型的には蒸気又はエアロゾルの形態で供する材料を含む。「喫煙材」は非タバコ含有材料であってもよいし、タバコ含有材料であってもよい。「喫煙材」は、例えば、タバコ自体、タバコ派生物、膨張タバコ、再生タバコ、タバコ抽出物、均質化タバコ、又はタバコ代替品のうちの1つ以上を含んでいてもよい。喫煙材は、挽きタバコ、刻みラグタバコ、押出タバコ、再生タバコ、再生喫煙材、液体、ゲル、ゲル化シート、粉末、又は塊などの形態とすることが可能である。「喫煙材」は、他に非タバコ製品を含んでいてもよい。この非タバコ製品は、製品によってニコチンを含んでもよいし、含まないでもよい。「喫煙材」は、1つ以上の保湿剤、例えばグリセロール又はプロピレングリコールを含んでいてもよい。」) イ「Referring to Figure 1 there is shown a schematic perspective view of an example of an article according to an embodiment of the invention. The article 1 comprises a foam 20 that comprises smokable material. The article 1 is for use with apparatus for heating the smokable material to volatilise at least one component of the smokable material without burning the smokable material, such as the apparatus 100 shown in Figure 9 and described below.」(第7ページ第17~21行) (訳:「【0039】 図1を参照すると、本発明の実施形態による物品の例の概略透視図が示されている。物品1は、喫煙材を含む発泡体20を備える。物品1は、図9に示し下記で説明する装置100など、喫煙材を燃焼させることなく喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱するための装置とともに使用するためのものである。」) ウ「Referring to Figures 4 and 5 there are shown a schematic perspective view and a schematic cross-sectional view of an example of another article according to an embodiment of the invention. The article 3 of Figures 4 and 5 is identical to the article 1 described above with reference to Figure 1, except that the article 3 comprises heating material that is heatable by penetration with a varying magnetic field. Therefore, in the interests of conciseness features common to the two embodiments will not be described again in detail. The article 3 is for use with apparatus for heating the smokable material to volatilise at least one component of the smokable material without burning the smokable material, such as the apparatus 100 shown in Figure 9 and described below. Any of the herein-described possible variations to the article 1 of Figure 1 may be made to the article 3 of Figures 4 and 5 to form separate respective embodiments. In this embodiment, in addition to the cover 10 and the foam 20, the article 3 comprises heating material that is heatable by penetration with a varying magnetic field. More specifically, the article 2 comprises a body of the heating material 40 within the foam 20. The heating material is in thermal contact with the smokable material. Therefore, the heating material is heatable in use to heat the smokable material. In this embodiment, the foam 20 is fixed to the heating material of the body 40. This is achieved by adhering the foam 20 to the body 40. However, in other embodiments, the fixing may be by other than adhesion. In some embodiments the foam 20 may not be fixed to the heating material as such.」(第11ページ第21行~第12ページ第14行) (訳:「【0053】 図4及び5を参照すると、本発明の実施形態による別の物品の例の概略透視図及び概略断面図が示されている。図4及び5の物品3は、物品3が変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材を含むことを除けば、図1を参照して上記で説明した物品1と同一である。したがって、説明を簡潔にするために、2つの実施形態に共通の特徴は再び詳細には説明しない。物品3は、図9に示し下記で説明する装置100など、喫煙材を燃焼させることなく喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるように喫煙材を加熱するための装置とともに使用するためのものである。図1の物品1に対して本書で説明した可能な変形のいずれも、図4及び5の物品3に対してなされて個別の各実施形態を形成することができる。 【0054】 この実施形態では、カバー10及び発泡体20に加えて、物品3は、変動磁場の侵入によって加熱可能な加熱材を含む。より詳細には、物品2は、発泡体20の中に加熱材の本体40を備える。加熱材は喫煙材と熱接触している。したがって、加熱材は、使用時、喫煙材を加熱するために加熱可能である。この実施形態では、発泡体20は、本体40の加熱材に固定されている。これは、発泡体20を本体40に接着することによって達成される。しかしながら、他の実施形態では、この固定は接着以外によるものでもよい。いくつかの実施形態では、発泡体20は、このように加熱材に固定されなくてもよい。」) エ「In some embodiments, the body of heating material 40 may be non-planar. For example, the body 40 may follow a wavelike or wavy path, be twisted, be corrugated, be helical, have a spiral shape, comprise a plate or strip or ribbon having protrusions thereon and/or indentations therein, comprise a mesh, comprise expanded metal, or have a non-uniform non-planar shape. Such non-planar shapes may help air passing through the article to pick up the volatilised material created when the smokable material is heated. Non-planar shapes can provide a tortuous path for air to follow, creating turbulence in the air and causing better heat transfer from the heating material to the smokable material. The non-planar shapes can also increase the surface area of the body of heating material 40 per unit length of the body 40. This can result in greater or improved Joule heating of the body 40, and thus greater or improved heating of the smokable material. In some embodiments, the body of heating material 40 may be hollow or perforated.」(第14ページ第3~14行) (訳:「【0062】 いくつかの実施形態では、加熱材の本体40は平面状でなくともよい。例えば、本体40は、波状の経路又は波打った経路を辿ってもよく、ねじれていてもよく、ひだ状、螺旋状、渦巻状であってもよく、上に突起を有する、及び/又は中にぎざぎざを有する板又は片又はリボンを備えてもよく、網目を備えてもよく、展伸金属を備えてもよく、又は不均一で平面状でない形状を有してもよい。このような平面状でない形状は、空気が物品を通過して、喫煙材が加熱されたときに生成される揮発材を受け取る助けとなり得る。平面状でない形状によって、空気は曲がりくねった経路を辿り、空気に乱流が生じ、加熱材から喫煙材への熱伝達がより良くなり得る。平面でない形状によって、また、本体40の単位長さ当たりの加熱材の本体40の表面積を大きくすることもできる。これは、本体40のジュール加熱を増大させる、又は改善することができ、したがって、喫煙材の加熱を増大させる、又は改善することができる。いくつかの実施形態では、加熱材の本体40は、中空又は孔が空いていてもよい。」) オ「In each of the above described embodiments, the apparatus 100 is configured to cause heating of heating material, and thus the smokable material, using induction heating. However, in other embodiments, the apparatus may be configured to use a different form of heating, such as resistive heating. In some such embodiments, the magnetic field generator 112 may be omitted from the apparatus 100.」(第26ページ第5~9行) (訳:「【0096】 上記の実施形態の各々において、装置100は、誘導加熱を用いて加熱材を加熱するように、したがって喫煙材を加熱するように構成される。しかしながら、他の実施形態では、装置は、抵抗加熱など、異なった加熱形態を用いるように構成することができる。いくつかのこのような実施形態では、装置100から磁場発生器112を省略してもよい。」) カ「 [図:0001434911000001.jpg] 」 キ 上記エの記載事項より、加熱材の本体40は、平面状でなく、展伸金属を備え、中空又は孔が空いていることが認められる。 上記ア~キの記載事項及び認定事項並びに令和7年11月21日付けの請求人の口頭審理陳述要領書及び口頭審理における両当事者の主張を踏まえると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という)が記載されているものと認められる。 [甲1発明] 「加熱されると揮発成分をエアロゾルの形態で供する材料を含む喫煙材を、誘導加熱を用いて加熱する装置100とともに使用される物品3であって、前記物品3が、喫煙材を含む発泡体20と、前記発泡体20の中に備えられ、前記喫煙材と熱接触する加熱材の本体40と、を含み、前記加熱材の本体40が、平面状でなく、展伸金属を備え、中空又は孔が空いている、物品3。」 (2)甲第2号証 甲第2号証(以下「甲2」という。)には、次の記載事項がある。 ア「この多孔性の空気分配板50は金属板の巾を横断してまたは組織に対し切断した後平坦にされた伸展せる金属から形成されている。伸展金属は、平坦にされた後、空気がダクトから空気棒に入る際、空気棒の全長および巾にわたって空気を平均に分配するようにきわめて効果的な状態で作動する。空気分配板50は1/4インチメツシュのステンレス鋼から形成されるのが望ましい。」(第4ページ右上欄第14行~左下欄第7行) 上記アの記載事項より、甲2には、次の技術事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されているものと認められる。 [甲2記載事項] 「多孔性の空気分配板50を平坦にされた伸展金属から形成すること。」 (3)甲第3号証 甲第3号証(以下「甲3」という。)には、次の記載事項及び図示事項がある。 ア「【0039】 図9~図12には、カテーテル法により挿入される拡大可能なメッシュ材料のステント101が示されている。このようなステントは、時々、形状記憶能力をもつ金属で作られる。これらのステントは、収縮形態でカテーテルに取り付けられ、体温に到達してカテーテルから解放されると拡大する。他のステントは、繋留ハウジングから押し出されると弾性的に拡大する。図9および図10に示す拡大状態において、ステントは、例えば、その周囲で螺旋状に延びている結合セグメント103を備えた溶接ワイヤ102で形成されたメッシュシリンダからなるが、或るステントは拡大金属シートからなり、この場合にはセグメントは一体ストリップで形成される。ステント101の或るセグメント102の内面にはベーン部材104が取り付けられている。溶接ワイヤ構造では、ベーン部材104はセグメントに溶接される板で構成でき、一方、拡大シート構造では、ベーン部材104は、メッシュの対応孔を残して、シートの部分で構成できる。図11は、ステント101のシリンダの母線に沿って切断し、内面を上にして平らに伸ばした状態を示す、ステント101の展開図である。図12は、ステント101がカテーテルワイヤ105の周囲で収縮状態にあるところを示す拡大図である。しかしながら、挿入のためにステントを収容しかつひとたび操作されるとステントを所定位置に押し出す関連ハウジングは備えていない。」 イ「 [図:0001434911000002.jpg] 」 上記ア及びイの記載事項及び図示事項より、甲3には、次の技術事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されているものと認められる。 [甲3記載事項] 「拡大可能なメッシュ材料のステント101が拡大金属シートからなり、当該ステント101が平らに伸ばされていること。」 2 本件発明と甲1発明との対比 (1)対比 本件発明と甲1発明とを対比する。 ア 甲1発明の「加熱されると揮発成分をエアロゾルの形態で供する材料を含む喫煙材を、誘導加熱を用いて加熱する装置100」は、本件発明の「誘導加熱式エアロゾル発生装置」に相当し、甲1発明の「物品3」は、「加熱されると揮発成分をエアロゾルの形態で供する材料を含む喫煙材」を含むものであるから、本件発明の「誘導加熱式エアロゾル発生物品」に相当する。 そうすると、甲1発明の「加熱されると揮発成分をエアロゾルの形態で供する材料を含む喫煙材を誘導加熱を用いて加熱する装置100とともに使用される物品3」は、本件発明の「誘導加熱式エアロゾル発生装置で使用するための誘導加熱式エアロゾル発生物品」に相当する。 イ 甲1発明の「喫煙材を含む発泡体20」は、喫煙材が、加熱されると揮発成分をエアロゾルの形態で供する材料を含むから、本件発明の「少なくとも1つのエアロゾル形成基体」に相当する。 ウ 甲1発明の「前記発泡体20の中に備えられ、前記喫煙材と熱接触する加熱材の本体40」は、本件発明の「前記エアロゾル形成基体と熱的に近接している、または前記エアロゾル形成基体と熱的に接触している、少なくとも1つのサセプタ」に相当する。 エ 甲1発明の「展伸」は、本件発明の「拡張された」に相当し、甲1発明の「展伸金属」と、本件発明の「平坦化された拡張された金属シート」とは、「拡張された金属からなる部材」であるという限りにおいて一致する。 オ 甲1発明の「中空又は孔」は、本件発明の「開口部」に相当し、甲1発明の「前記加熱材の本体40が」、「中空又は孔が空いている」ことと、本件発明の「前記サセプタが」、「前記シートを通して複数の開口部を含む」こととは、「前記サセプタが」、「前記開口部を含む」という限りにおいて一致する。 (2)一致点・相違点 上記(1)から、本件発明と甲1発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。 ア 一致点 「誘導加熱式エアロゾル発生装置で使用するための誘導加熱式エアロゾル発生物品であって、前記物品が、少なくとも1つのエアロゾル形成基体と、前記エアロゾル形成基体と熱的に近接している、または前記エアロゾル形成基体と熱的に接触している、少なくとも1つのサセプタと、を含み、前記サセプタが、開口部を含む、拡張された金属からなる部材を含む、誘導加熱式エアロゾル発生物品。」 イ 相違点 [相違点1] 「拡張された金属からなる部材」に関して、本件発明1は、サセプタが、「平坦化された」拡張された「金属シート」であるのに対して、甲1発明は、加熱材の本体40が、「平面状でなく」、また、「金属シート」であるか不明な点。 [相違点2] 「前記サセプタが、開口部を含む」ことに関して、本件発明は、サセプタが、「前記シートを通して複数の開口部を含む」のに対して、甲1発明は、加熱材の本体40が、中空又は孔が空いているものの、「複数」であるか不明な点。 3 判断 (1)相違点1について 甲1の上記1(1)エの記載事項(特に、訳の「このような平面状でない形状は、空気が物品を通過して、喫煙材が加熱されたときに生成される揮発材を受け取る助けとなり得る。平面状でない形状によって、空気は曲がりくねった経路を辿り、空気に乱流が生じ、加熱材から喫煙材への熱伝達がより良くなり得る。平面でない形状によって、また、本体40の単位長さ当たりの加熱材の本体40の表面積を大きくすることもできる。これは、本体40のジュール加熱を増大させる、又は改善することができ、したがって、喫煙材の加熱を増大させる、又は改善することができる。」)のとおり、甲1発明の加熱材の本体40は、その形状を平面状でないものとすることによって、喫煙材の加熱を増大させる又は改善するという効果を奏する。そして、このような平面状でない甲1発明の加熱材の本体40を平坦化すると、当該効果が失われることは明らかである。 そうすると、たとえ甲2記載事項や甲3記載事項のように、拡張された金属シートを平坦化することが周知技術であったとしても、平面状でないことにより効果を奏する甲1発明に、当該周知技術を適用し、拡張された金属シートを平坦化することには阻害要因が存在するといえる。 したがって、当業者であっても、甲1発明において、当該周知技術に基づいて、相違点1に係る本件発明の構成とすることはできない。 (2)相違点2について 甲1の上記1(1)エの記載事項(特に、訳の「平面でない形状によって、また、本体40の単位長さ当たりの加熱材の本体40の表面積を大きくすることもできる。」)のとおり、甲1には、本体40の単位長さ当たりの加熱材の本体40の表面積を大きくすることが示唆されているところ、表面積を大きくするために、中空又は孔の大きさを変更したり、複数設けたりすることは、例示するまでもない慣用技術である。 そうすると、甲1発明において、単位長さ当たりの加熱材の本体40の表面積を大きくするために、中空又は孔(開口部)を複数設ける程度のことは、当業者が容易に想到し得たものである。 4 請求人の主張 請求人は、「甲1発明に対して、甲2記載事項および甲3記載事項に基づく周知技術である『拡張された金属を平坦化すること』を使用して、当業者が出願前に本件特許発明1の構成に想到することは、当業者であれば容易である。」旨主張する(上記第4の1) しかしながら、上記3(1)で説示したとおり、甲1発明の効果は、加熱材の本体40が平面状でないことによるものであり、これを平坦化すると当該効果は失われるから、甲1発明に甲2記載事項及び甲3記載事項のような周知技術を適用することには阻害要因が存在するといえる。 したがって、請求人の主張は採用しない。 5 小括 したがって、本件発明は、甲1発明、甲2記載事項及び甲3記載事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由は理由がないものであり、本件発明についての特許は、請求人が主張する無効理由及び証拠方法によって無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人の負担とする。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-800171

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