特許無効審判
2024-800141
疎水性プラグラップ
- 審判番号
- 2024-800141
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2017-205783外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6802774
- 請求日
- 2024年11月20日
- 審決日
- 2025年11月05日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】Future Technology 株式会社
- 【被請求人】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
- 【被請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【被請求人代理人】須田 洋之
- 【被請求人代理人】山崎 一夫
- 【被請求人代理人】大塚 文昭
- 【被請求人代理人】近藤 直樹
- 【被請求人代理人】那須 威夫
- 【被請求人代理人】鈴木 信彦
- 【被請求人代理人】岩上 健
- 分類
- P1123.537-YAA(A24D) / P1123.853-YAA(A24D) / P1123.854-YAA(A24D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第134条の2第1項、特許法第123条第1項第4号、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第6802774号発明「疎水性プラグラップ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6802774号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項7について訂正することを認める。
特許第6802774号の請求項7に係る発明についての本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
特許第6802774号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項7に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
2 答弁の趣旨
次を結論とする審決を求める。
(1)訂正を認める。
(2)本件審判の請求は成り立たない。
(3)審判費用は請求人の負担とする。
第2 手続の経緯
本件特許に係る出願は、2015年(平成27年)10月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年10月20日、アメリカ合衆国(US))を国際出願日とする特願2016-545291号の一部を平成29年10月25日に、新たな出願とするものであって、その請求項1~11に係る発明について令和2年12月1日に特許権の設定登録がなされたものである。
本件特許無効審判の手続の経緯は、次のとおりである。
令和 6年11月20日 :審判請求書の提出
令和 7年 4月15日 :審判事件答弁書の及び訂正請求書の提出
同年 5月14日付け:手続補正指令書(方式)
同年 6月20日 :手続補正書の提出(被請求人)
同年 9月17日付け:書面審理通知
なお、請求人に対して、答弁書の副本を送付し、期間を指定して弁駁書を提出する機会を与えたが、弁駁書は提出されず、審判請求書で主張した無効理由について、請求人が争わないことが明らかとなったため、本件の審理は、職権により書面審理によるものとした。
第3 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨
本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項7について訂正することを求める。
2 訂正の内容
令和7年6月20日付けの手続補正書により補正された令和7年4月15日付けの訂正請求書に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。なお、下線部は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項7に
「前記疎水性である前記プラグラップが、脂肪酸ハロゲン化物を含む液体組成物をプラグラップの少なくとも一つの表面に塗布する工程と、表面を約120℃~約180℃の温度に維持する工程とを含むプロセスによって製造され、前記脂肪酸ハロゲン化物は、プラグラップ中の材料のプロトン供与性基と原位置で反応し、その結果として脂肪酸エステルが形成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の喫煙物品。」
とあるのを、
「請求項1~4のいずれか1項に記載の喫煙物品を製造する方法であって、前記疎水性である前記プラグラップを、脂肪酸ハロゲン化物を含む液体組成物をプラグラップの少なくとも一つの表面に塗布する工程と、表面を約120℃~約180℃の温度に維持する工程とを含むプロセスによって製造し、前記脂肪酸ハロゲン化物は、プラグラップ中の材料のプロトン供与性基と原位置で反応し、その結果として脂肪酸エステルが形成される、前記方法。」
に訂正する。
3 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正前の請求項7の記載は、「・・・(略)・・・喫煙物品」であるから、訂正前の請求項7に係る発明の対象は、「喫煙物品」という「物」であることは明らかである。
そして、訂正前の請求項7には、「前記疎水性である前記プラグラップが、脂肪酸ハロゲン化物を含む液体組成物をプラグラップの少なくとも一つの表面に塗布する工程と、表面を約120℃~約180℃の温度に維持する工程とを含むプロセスによって製造され、前記脂肪酸ハロゲン化物は、プラグラップ中の材料のプロトン供与性基と原位置で反応し、その結果として脂肪酸エステルが形成される」と特定されていることから、喫煙物品が備える「プラグラップ」に関し、その「製造方法」が記載されている。
ここで、「物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう『発明が明確であること』という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である」(最高裁第二小法廷判決平成27年6月5日(平成24年(受)第1204号))と判示されている。
そこで、上記判示事項を踏まえて検討すると、訂正前の請求項7の「前記疎水性である前記プラグラップが、脂肪酸ハロゲン化物を含む液体組成物をプラグラップの少なくとも一つの表面に塗布する工程と、表面を約120℃~約180℃の温度に維持する工程とを含むプロセスによって製造され、前記脂肪酸ハロゲン化物は、プラグラップ中の材料のプロトン供与性基と原位置で反応し、その結果として脂肪酸エステルが形成される」との喫煙物品が備える「プラグラップ」の製造方法が記載されているから、「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがあるものである。
そして、訂正事項1は、「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがある訂正前の請求項7を、「喫煙物品を製造する方法」として、「前記疎水性である前記プラグラップを、脂肪酸ハロゲン化物を含む液体組成物をプラグラップの少なくとも一つの表面に塗布する工程と、表面を約120℃~約180℃の温度に維持する工程とを含むプロセスによって製造し、前記脂肪酸ハロゲン化物は、プラグラップ中の材料のプロトン供与性基と原位置で反応し、その結果として脂肪酸エステルが形成される」ことを特定する訂正後の請求項7に訂正するものであって、「発明が明確であること」という要件を満たすものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内であること
本件の願書に添付した明細書の段落【0045】には、訂正後の請求項7に係る発明に対応する「本発明によれば、疎水性のプラグラップは、脂肪族の酸ハロゲン化物(脂肪酸ハロゲン化物が好ましい)を含む液体組成物をプラグラップの少なくとも一つの表面に塗布する工程と、随意にガス流を表面に適用して、塗布された脂肪酸ハロゲン化物の拡散を助ける工程と、表面を約120℃~約180℃の温度に保つ工程とを含むプロセスによって製造でき、ここで脂肪酸ハロゲン化物は、プラグラップ中のセルロース系材料のヒドロキシル基と原位置で反応し、その結果として脂肪酸エステルが形成される。」ことが記載されているから、訂正事項1は、本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと
(ア)発明が解決しようとする課題とその解決手段について
願書に添付された明細書の段落【0007】~【0010】の記載から、訂正前の請求項7に係る発明の課題は、「喫煙物品を通過する主流煙もしくはエアロゾルや、フィルターセグメントで作動した風味源から放出される液体風味剤中にある水または化合物を簡単には吸収しない、プラグラップを含む喫煙物品を提供すること」であると認められる。
また、上記課題の解決手段は、願書に添付された明細書の上記段落及び段落【0045】の記載から、「疎水性のプラグラップ」について、「脂肪族の酸ハロゲン化物(脂肪酸ハロゲン化物が好ましい)を含む液体組成物をプラグラップの少なくとも一つの表面に塗布する工程と」、「表面を約120℃~約180℃の温度に保つ工程とを含むプロセス」によって、「脂肪酸ハロゲン化物は、プラグラップ中のセルロース系材料のヒドロキシル基と原位置で反応し、その結果として脂肪酸エステルが形成される」よう製造することであると認められる。
一方、訂正後の請求項7に係る発明も、願書に添付された明細書の段落【0007】~【0010】、【0045】の記載から、「喫煙物品を通過する主流煙もしくはエアロゾルや、フィルターセグメントで作動した風味源から放出される液体風味剤中にある水または化合物を簡単には吸収しない、プラグラップを含む喫煙物品を提供すること」が課題であると認められ、「疎水性のプラグラップ」について、「脂肪族の酸ハロゲン化物(脂肪酸ハロゲン化物が好ましい)を含む液体組成物をプラグラップの少なくとも一つの表面に塗布する工程と」、「表面を約120℃~約180℃の温度に保つ工程とを含むプロセス」によって、「脂肪酸ハロゲン化物は、プラグラップ中のセルロース系材料のヒドロキシル基と原位置で反応し、その結果として脂肪酸エステルが形成される」よう製造することが上記課題の解決手段であると認められる。
してみると、訂正前の請求項7に係る発明の課題と、訂正後の請求項7に係る発明の課題との間には、何ら変更はなく、訂正前の請求項7に係る発明の課題解決手段と、訂正後の請求項7に係る発明の課題解決手段との間にも、実質的な変更はない。
したがって、訂正後の請求項7に係る発明の技術的意義は、訂正前の請求項7に係る発明の技術的意義を実質上拡張し、又は変更するものではない。
(イ)訂正による第三者の不測の不利益について
訂正前の請求項7に係る発明は、「脂肪酸ハロゲン化物を含む液体組成物をプラグラップの少なくとも一つの表面に塗布する工程と、表面を約120℃~約180℃の温度に維持する工程とを含むプロセスによって製造され、前記脂肪酸ハロゲン化物は、プラグラップ中の材料のプロトン供与性基と原位置で反応し、その結果として脂肪酸エステルが形成される」という製造方法(以下「特定の製造方法」という)により「疎水性であるプラグラップ」という喫煙物品が備える物が特定された「物の発明」であるから、前記特定の製造方法により製造された「疎水性であるプラグラップ」を備える喫煙物品に加え、前記特定の製造方法により製造された「疎水性であるプラグラップ」と同一の構造・特性を有する物を備える喫煙物品も、特許発明の実施に含むものである。
一方、訂正後の請求項7に係る発明は、上記特定の製造方法により 「疎水性であるプラグラップを」「製造する」「喫煙物品の製造方法」という方法が特定された「物を生産する方法の発明」であるから、前記特定の製造方法により製造された「疎水性であるプラグラップ」を備える喫煙物品を、特許発明の実施に含むものである。
したがって、訂正後の請求項7に係る発明の「実施」に該当する行為は、訂正前の請求項7に係る発明の「実施」に該当する行為に全て含まれるので、第三者にとって不測の不利益が生じるおそれはないから、訂正前の請求項7に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)小括
訂正後の請求項7に係る発明の技術的意義は、訂正前の請求項7に係る発明の技術的意義を実質上拡張し、又は変更するものではなく、訂正後の請求項7に係る発明の「実施」に該当する行為は、訂正前の請求項7に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものとはいえないから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件について
訂正事項1は、無効審判の請求の対象とされている請求項7に係る訂正であるので、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する同法126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 訂正請求についてのむすび
以上のとおり、本件訂正は、訂正の要件を全て満たすものであるから、これを認める。
第4 本件発明
前記第3のとおり、本件訂正の請求による請求項7の訂正は認められるから、本件特許の請求項1~11に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
喫煙物品であって、
たばこ基体と、
前記たばこ基体と端と端を接した関係で軸方向に整列させた濾過材料を含むフィルターセグメントと、
前記濾過材料の周りに配置されたプラグラップとを備え、前記プラグラップが前記プラグラップのセルロース系材料に共有結合された疎水性基によって疎水性であり、疎水性である前記プラグラップがセルロースの脂肪酸エステルを含む、喫煙物品。
【請求項2】
前記疎水性基がC12-C30アルキルを含む脂肪酸基を含む、請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項3】
前記疎水性基がC14-C24アルキルを含む脂肪酸基を含む、請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項4】
前記疎水性基がC16-C20アルキルを含む脂肪酸基を含む、請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項5】
前記プラグラップが約20~約100グラム毎平方メートルの坪量を有し、また前記疎水性基が約0.1~約3グラム毎平方メートルの坪量を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の喫煙物品。
【請求項6】
前記プラグラップが紙であって20g/m2未満のCobb水吸収値(60秒での値)を示す、請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の喫煙物品を製造する方法であって、前記疎水性である前記プラグラップを、脂肪酸ハロゲン化物を含む液体組成物をプラグラップの少なくとも一つの表面に塗布する工程と、表面を約120℃~約180℃の温度に維持する工程とを含むプロセスによって製造し、前記脂肪酸ハロゲン化物は、プラグラップ中の材料のプロトン供与性基と原位置で反応し、その結果として脂肪酸エステルが形成される、前記方法。
【請求項8】
液体風味剤を含む液体放出構成要素をさらに含む、請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項9】
前記液体放出構成要素がカプセルを含む、請求項8に記載の喫煙物品。
【請求項10】
前記液体放出構成要素が、前記液体風味剤を囲む複数の領域を画定するマトリクス構造を含む、請求項8に記載の喫煙物品。
【請求項11】
前記疎水性基が、パターンを形成する複数の不連続な島状に疎水性試薬を前記プラグラップの表面上に配置することにより形成される、請求項1に記載の喫煙物品。」
第5 請求人の主張する無効理由(明確性要件違反)の概要
本件特許の請求項7に係る発明は、物の発明であるが、その構成にその物の製造方法が記載されており明確でないから、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができない 。
したがって、本件特許の請求項7に係る発明についての特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
第6 当審の判断
本件訂正により、請求項7は、方法の発明を特定するものに訂正されたから、本件訂正後の請求項7に係る発明は明確である。
よって、請求人の主張する無効理由は、理由がない。
第7 むすび
以上のとおり、請求人の主張する無効理由は、理由がなく、請求項7に係る発明についての特許は、無効とすることはできない。
審判費用は、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
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