特許異議申立
2024-700977
車両、車両制御方法及び車両制御プログラム
- 審判番号
- 2024-700977
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-076264
- 登録番号
- 7478285
- 請求日
- 2024年10月08日
- 審決日
- 2026年05月21日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ブロードリーフ
- 【権利者代理人】小笠原 匡隆
- 【権利者代理人】足立 俊彦
- 【権利者代理人】法橋 宏高
- 【権利者代理人】石川 勇介
- 【異議申立人】田中 貞嗣
- 審判長/審判官
- 審判長 佐藤 智康
- 審判官 田川 泰宏
- 審判官 古川 哲也
- 分類
- P1651.121-YAA(G08G) / P1651.536-YAA(G08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7478285号発明「車両、車両制御方法及び車両制御プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7478285号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕、3、4について訂正することを認める。
特許第7478285号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7478285号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和2年12月28日に出願された特願2020-219113号の一部を分割して、令和4年8月31日に新たな出願とした特願2022-138461号の一部を分割して、令和5年5月2日に新たな出願としたものであって、令和6年4月23日にその特許権の設定登録がされ、同年5月2日に特許掲載公報が発行された。
本件異議申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年10月 8日 特許異議申立人 田中貞嗣(以下「申立人」という。)による請求項1ないし4に係る発明の特許に対する特許異議の申立て
令和7年 2月19日付け 取消理由通知
同年 4月23日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 5月14日付け 手続補正指令書
同年 5月21日 手続補正書の提出
同年 5月29日付け 申立人への訂正請求があった旨の通知
同年 6月23日 申立人による意見書の提出
同年10月 6日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年12月 8日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年12月18日付け 手続補正指令書
令和8年 1月 5日 手続補正書の提出
同年 2月16日付け 訂正拒絶理由通知書
同年 3月16日 特許権者による意見書及び手続補正書の提出
なお、令和7年4月23日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げたものとみなされる。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和7年12月8日にされ、令和8年3月16日に補正された訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、特許第7478285号の特許請求の範囲の請求項1~4を、補正された訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4に訂正することを求めるものであり、訂正の内容は、訂正事項1~9のとおりである。
なお、請求項1~2は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(請求項1~2に係る訂正)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記自車両の位置情報を、前記自車両の走行を操作可能な操作装置にネットワークを介して送信する通信部と、」を直列的に付加する訂正をする(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記車両制御装置は、前記自車両におけるレイアウト情報に対応した合成映像と、前記自車両に搭載された車載ECUから得られる前記自車両の車両情報と、前記自車両に搭載された車載センサから得られる前記自車両の外部環境の検出情報と、前記補正相対位置又は前記補正絶対位置を用いた前記自車両の位置情報とを、前記操作装置に送信し、」を直列的に付加する訂正をする(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「前記操作装置から前記自車両における前記レイアウト情報に対応した前記合成映像と、前記車両情報と、前記外部環境の検出情報と、前記位置情報とに基づく前記自車両の運転操作情報を受信する、」を直列的に付加する訂正をする(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2に「前記車両制御装置は、前記レイアウト情報をレイアウト識別情報と対応付けて記録し、」を直列的に付加する訂正をする。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2に「前記操作装置から前記レイアウト識別情報の変更による前記レイアウト情報の変更を受け付けると、変更後のレイアウト識別情報に対応するレイアウト情報に基づいて合成映像を生成し、該合成映像を前記操作装置へ送信し、前記操作装置から変更後のレイアウト情報に対応した前記合成映像に基づく前記自車両の前記運転操作情報を受信し、前記自車両の前記運転操作情報をもとに前記自車両の走行を制御する」を直列的に付加する訂正をする。
(請求項3に係る訂正)
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3に「前記自車両におけるレイアウト情報に対応した合成映像と、前記自車両に搭載された車載ECUから得られる前記自車両の車両情報と、前記自車両に搭載された車載センサから得られる前記自車両の外部環境の検出情報と、前記補正相対位置又は前記補正絶対位置を用いた前記自車両の位置情報とを、操作装置にネットワークを介して送信する工程と、」を直列的に付加する訂正をする。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項3に「前記操作装置から前記自車両における前記レイアウト情報に対応した前記合成映像と、前記車両情報と、前記外部環境の検出情報と、前記位置情報とに基づく前記自車両の運転操作情報を受信する工程と、」を直列的に付加する訂正をする。
(請求項4に係る訂正)
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項4に「前記自車両におけるレイアウト情報に対応した合成映像と、前記自車両に搭載された車載ECUから得られる前記自車両の車両情報と、前記自車両に搭載された車載センサから得られる前記自車両の外部環境の検出情報と、前記補正相対位置又は前記補正絶対位置を用いた前記自車両の位置情報とを、操作装置にネットワークを介して送信する処理と、」を直列的に付加する訂正をする。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項4に「前記操作装置から前記自車両における前記レイアウト情報に対応した前記合成映像と、前記車両情報と、前記外部環境の検出情報と、前記位置情報とに基づく前記自車両の運転操作情報を受信する処理と、」を直列的に付加する訂正をする。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1に係る請求項1とこれを引用する請求項2についての訂正は、車両制御装置が「前記自車両の位置情報を、前記自車両の走行を操作可能な操作装置にネットワークを介して送信する通信部」を具備することを特定するものであるから、「車両制御装置」で特定される事項を減縮するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか
上記アで説示したとおり、訂正事項1は、「車両制御装置」が具備する事項を特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか
願書に添付した明細書(以下、「明細書等」という。)の段落【0030】には、「車両制御装置1」は「通信部108」を「主な構成要素として備えている。」と記載され、段落【0040】には、「具体的には、通信部108は、車両Vの「遠隔運転」に必要な情報として、外部情報取得部101によって得られた「外部環境の検出情報」と、位置特定部106によって特定された「現在位置の情報」とを操作装置50に向けて送信する。」と記載されている。そうすると、段落【0030】、【0040】には、「車両制御装置」が「前記自車両の位置情報を、前記自車両の走行を操作可能な操作装置にネットワークを介して送信する通信部」が記載されているといえ、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正である。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2に係る請求項1とこれを引用する請求項2についての訂正は、車両制御装置が「前記自車両における前記レイアウト情報に対応した合成映像と、前記自車両に搭載された車載ECUから得られる前記自車両の車両情報と、前記自車両に搭載された車載センサから得られる前記自車両の外部環境の検出情報と、前記補正相対位置又は前記補正絶対位置を用いた前記自車両の位置情報とを、前記操作装置に送信」することを特定するものであるから、「車両制御装置」で特定される事項を減縮するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか
上記アで説示したとおり、訂正事項2は、「車両制御装置」が具備する事項を特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか
明細書等の段落【0012】には、「車両遠隔操作システムS」は「車両Vに搭載され、車両Vの走行を総合的に制御する車両制御装置1と、車両Vの周囲の外部環境を検出する車載センサ10と、人工衛星SA及び基準局STからGNSS信号を受信し、車両Vの現在位置を測定する車載ロケータ20と、車両Vの操舵及び加減速等を制御する車載ECU30と、車両Vの外部に設置された操作装置50や外部機器と通信する車載通信装置40と、を備えている。」と記載され、段落【0014】には、「車両制御装置1は、「自動運転」を実行すべく、車載センサ10から得られる外部環境の情報と、車載ロケータ20から得られる現在位置の情報と、車載ECU30から得られる車両情報とに基づいて車載ECU30(総合ECU31)を制御することで、車両Vの走行を制御する。
また、車両制御装置1は、「遠隔運転」を実行すべく、車載通信装置40を通じて操作装置50と無線通信し、外部環境の情報と、現在位置の情報と、車両情報とを操作装置50に向けて送信する。」と記載され、段落【0039】には、「複数の撮影装置11a-11iから車両Vの外部映像データをそれぞれ取得し、所定のレイアウト情報に基づいてそれぞれの外部映像を合成した合成映像(合成映像データ)を作成する」及び「上記合成映像を生成し、生成した合成映像データを操作装置50に向けて送信する」と記載され、段落【0038】には、「詳しく述べると、位置特定部106は、図6に示すように、GNSS情報及びGNSS情報をリアルタイムで受信できると判定された場合には(図6のS3)、最も位置精度が高い「補正相対位置」を用いて車両Vの現在位置を特定する(図6のS4)。
また、位置特定部106は、GNSS情報をリアルタイムで受信でき、GNSS補正情報をリアルタイムで受信できないと判定された場合には(図6のS3)、位置精度が高い「補正絶対位置」を用いて車両Vの現在位置を特定する(図6のS5)。」との記載されている。
そうすると、段落【0012】、【0014】、【0038】、【0039】には、「車両制御装置」が「前記自車両における前記レイアウト情報に対応した合成映像と、前記自車両に搭載された車載ECUから得られる前記自車両の車両情報と、前記自車両に搭載された車載センサから得られる前記自車両の外部環境の検出情報と、前記補正相対位置又は前記補正絶対位置を用いた前記自車両の位置情報とを、前記通信部により前記操作装置に送信」することが記載されているといえ、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正である。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正前請求項1の「車両」の「車両制御装置」が、「前記操作装置」から、「前記自車両における前記レイアウト情報に対応した合成映像」と、「前記自車両の車両情報」と、「前記自車両に搭載された車載センサから得られる前記自車両の外部環境の検出情報」と、「前記位置情報とに基づく前記自車両の運転操作情報」を受信するとの構成を特定するものであるから、「車両制御装置」で特定される事項を減縮するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか
上記アで説示したとおり、訂正事項3は、「車両制御装置」が具備する事項を特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか
願書に添付した明細書の段落【0014】には、「また、車両制御装置1は、「遠隔運転」を実行すべく、車載通信装置40を通じて操作装置50と無線通信し、外部環境の情報と、現在位置の情報と、車両情報とを操作装置50に向けて送信する。操作装置50は、これら情報を受信し、外部環境の情報と、現在位置の情報とに基づく内容をモニタ51(ナビモニタ52)に表示するほか、オペレータに向けてユーザ報知することができる。」と記載され、段落【0039】には「複数の撮影装置11a-11iから車両Vの外部映像データをそれぞれ取得し、所定のレイアウト情報に基づいてそれぞれの外部映像を合成した合成映像(合成映像データ)を作成する」及び「上記合成映像を生成し、生成した合成映像データを操作装置50に向けて送信」と記載され、段落【0040】には、「また、通信部108は、オペレータによるユーザ入力を受け付けた操作装置50から、車両Vの運転操作情報を受信する。」と記載され、段落【0041】には、「また、車両制御部109は、操作装置50から取得した車両Vの「運転操作情報」に基づいて総合ECU31を制御し、車両Vの「遠隔運転」を実行する。」と記載されている。
そうすると、段落【0014】、【0039】~【0041】には、「車両制御装置」が「前記操作装置から前記自車両における前記レイアウト情報に対応した前記合成映像と、前記車両情報と、前記外部環境の検出情報と、前記位置情報とに基づく前記自車両の運転操作情報を受信」することが記載されているといえ、訂正事項3に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的
訂正事項4に係る請求項2についての訂正は、車両制御装置が「前記レイアウト情報をレイアウト識別情報と対応付けて記録」することを特定するものであるから、「車両制御装置」で特定される事項を減縮するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか
上記アで説示したとおり、訂正事項4は、「車両制御装置」が具備する事項を特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか
明細書等の段落【0028】には、「このときの所定のレイアウト情報は、複数のレイアウト情報を車両Vの所定の記憶部においてレイアウトID(レイアウト識別情報)を対応付けて記憶しておくことも可能である。」と記載されている。
そうすると、段落【0028】には、「車両制御装置」が「前記レイアウト情報をレイアウト識別情報と対応付けて記録」することが記載されているといえ、訂正事項4に係る訂正は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正である。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的
訂正事項5に係る請求項2についての訂正は、車両制御装置が「前記操作装置から前記レイアウト識別情報の変更による前記レイアウト情報の変更を受け付けると、変更後のレイアウト識別情報に対応するレイアウト情報に基づいて合成映像を生成し、該合成映像を前記操作装置へ送信し、前記操作装置から変更後のレイアウト情報に対応した前記合成映像に基づく前記自車両の前記運転操作情報を受信し、前記自車両の前記運転操作情報をもとに前記自車両の走行を制御する」ことを特定するものであるから、「車両制御装置」で特定される事項を減縮するものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか
上記アで説示したとおり、訂正事項5は、「車両制御装置」が具備する事項を特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか
明細書等の段落【0028】には、「モニタ51、ナビモニタ52は、「遠隔運転」を行うための視覚情報を出力する表示部であって、モニタ51には、複数の撮影装置11a-11iによって撮影された車両Vの外部映像を所定のレイアウト情報に基づいて合成した合成映像(合成画像)が表示される。
所定のレイアウト情報とは、例えば、オペレータの死角を作らない、オペレータが操作し易いレイアウトの表示態様である。このときの所定のレイアウト情報は、複数のレイアウト情報を車両Vの所定の記憶部においてレイアウトID(レイアウト識別情報)を対応付けて記憶しておくことも可能である。この場合、後述する操作スイッチ等を用いてレイアウト表示に切り替え後、さらにレイアウト情報の変更操作を行うことで、操作装置50(操作スイッチ56)から車両Vに対して変更後のレイアウトIDが送信される。詳細については後述するが、このとき、車両Vでは、変更後のレイアウトIDに対するレイアウト情報に基づいて外部映像を合成した合成映像が生成され、モニタ51にはその合成映像が表示される。」と記載され、段落【0039】には、「映像処理部107は、複数の撮影装置11a-11iから車両Vの外部映像データをそれぞれ取得し、所定のレイアウト情報に基づいてそれぞれの外部映像を合成した合成映像(合成映像データ)を作成するものである。
上記合成映像を生成し、生成した合成映像データを操作装置50に向けて送信することで、複数の外部映像データを送信する場合と比較して送信するデータ量を少なくし(通信回線数を少なくし)、データ通信にかかるコストを削減することができる。」と記載されている。
そうすると、段落【0028】、【0039】には、「車両制御装置」が「前記操作装置から前記レイアウト識別情報の変更による前記レイアウト情報の変更を受け付けると、変更後のレイアウト識別情報に対応するレイアウト情報に基づいて合成映像を生成し、該合成映像を前記操作装置へ送信し、前記操作装置から変更後のレイアウト情報に対応した前記合成映像に基づく前記自車両の前記運転操作情報を受信し、前記自車両の前記運転操作情報をもとに前記自車両の走行を制御する」ことが記載されているといえ、訂正事項5に係る訂正は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正である。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
(6)訂正事項6~7
訂正事項6~7に係る請求項3は、訂正事項1~3に係る訂正後の請求項1に係る発明を、「車両制御方法」として表現したものであり、訂正事項6~7に係る訂正の内容は、それぞれ訂正事項2~3に係る訂正の内容と同様のものであり、したがって、訂正事項6~7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。
(7)訂正事項8~9
訂正事項8~9に係る請求項4は、訂正事項1~3に係る訂正後の請求項1に係る発明を、「車両制御プログラム」として表現したものであり、訂正事項8~9に係る訂正の内容は、それぞれ訂正事項2~3に係る訂正の内容と同様のものであり、したがって、訂正事項8~9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。
3 小括
以上のとおり、訂正事項1~9に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項の規定によって準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
なお、特許異議の申立ては、請求項1~4に対してされているから、訂正事項1~9のいずれについても、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(独立特許要件)は課されない。
よって、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕、3、4について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正請求は認められるから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明4」という。なお、下線は訂正箇所。特許権者が付与した。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
自車両の走行を制御する車両制御装置と、
前記自車両の加速度及び角速度の情報を計測する慣性測定装置と、を具備し、
前記車両制御装置は、
前記自車両に搭載されたGNSS受信機を通じて、単独測位に必要なGNSS情報と、外部の基準局から相対測位に必要なGNSS補正情報と、を取得する外部情報取得部と、
前記GNSS情報と、前記慣性測定装置で測定した前記自車両の加速度及び角速度の情報とに基づいて前記自車両の補正絶対位置を算出する補正絶対位置算出部と、
前記GNSS補正情報と、前記慣性測定装置で計測した前記自車両の加速度及び角速度の情報とに基づいて前記自車両の補正相対位置を算出する補正相対位置算出部と、
前記自車両の位置情報を特定する位置特定部と、
前記自車両の位置情報を、前記自車両の走行を操作可能な操作装置にネットワークを介して送信する通信部と、を具備し、
前記位置特定部は、
前記GNSS情報をリアルタイムに取得できる場合であって、
前記GNSS補正情報をもリアルタイムに取得できるときには前記補正相対位置を用いて前記自車両の位置情報を特定し、
前記GNSS補正情報をリアルタイムに取得できないときには前記補正絶対位置を用いて前記自車両の位置情報を特定し、
前記車両制御装置は、
前記自車両におけるレイアウト情報に対応した合成映像と、前記自車両に搭載された車載ECUから得られる前記自車両の車両情報と、前記自車両に搭載された車載センサから得られる前記自車両の外部環境の検出情報と、前記補正相対位置又は前記補正絶対位置を用いた前記自車両の位置情報とを、前記操作装置に送信し、
前記操作装置から前記自車両における前記レイアウト情報に対応した前記合成映像と、前記車両情報と、前記外部環境の検出情報と、前記位置情報とに基づく前記自車両の運転操作情報を受信する、車両。
【請求項2】
前記車両制御装置は、前記自車両の速度情報を取得し、
前記補正絶対位置算出部は、さらに前記自車両の速度情報を組み合わせて前記補正絶対位置を算出し、
前記補正相対位置算出部は、さらに前記自車両の速度情報を組み合わせて前記補正相対位置を算出し、
前記車両制御装置は、
前記レイアウト情報をレイアウト識別情報と対応付けて記録し、
前記操作装置から前記レイアウト識別情報の変更による前記レイアウト情報の変更を受け付けると、変更後のレイアウト識別情報に対応するレイアウト情報に基づいて合成映像を生成し、該合成映像を前記操作装置へ送信し、
前記操作装置から変更後のレイアウト情報に対応した前記合成映像に基づく前記自車両の前記運転操作情報を受信し、
前記自車両の前記運転操作情報をもとに前記自車両の走行を制御する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
車両制御装置と、慣性測定装置とを備えた車両を用いた車両制御方法であって、
自車両の走行を制御する前記車両制御装置が、
前記自車両に搭載されたGNSS受信機を通じて、単独測位に必要なGNSS情報と、外部の基準局から相対測位に必要なGNSS補正情報と、を取得する工程と、
前記GNSS情報と、前記慣性測定装置で測定した前記自車両の加速度及び角速度の情報とに基づいて前記自車両の補正絶対位置を算出する工程と、
前記GNSS補正情報と、前記慣性測定装置で計測した前記自車両の加速度及び角速度の情報とに基づいて前記自車両の補正相対位置を算出する工程と、
前記自車両の位置情報を特定する工程と、
前記自車両におけるレイアウト情報に対応した合成映像と、前記自車両に搭載された車載ECUから得られる前記自車両の車両情報と、前記自車両に搭載された車載センサから得られる前記自車両の外部環境の検出情報と、前記補正相対位置又は前記補正絶対位置を用いた前記自車両の位置情報とを、操作装置にネットワークを介して送信する工程と、
前記操作装置から前記自車両における前記レイアウト情報に対応した前記合成映像と、前記車両情報と、前記外部環境の検出情報と、前記位置情報とに基づく前記自車両の運転操作情報を受信する工程と、を行い、
前記自車両の位置情報を特定する工程では、
前記GNSS情報をリアルタイムに取得できる場合であって、
前記GNSS補正情報をもリアルタイムに取得できるときには前記補正相対位置を用いて前記自車両の位置情報を特定し、
前記GNSS補正情報をリアルタイムに取得できないときには前記補正絶対位置を用いて前記自車両の位置情報を特定する、車両制御方法。
【請求項4】
自車両に搭載され、前記自車両の走行を制御する車両制御装置としてのコンピュータに、
前記自車両に搭載されたGNSS受信機を通じて、単独測位に必要なGNSS情報と、外部の基準局から相対測位に必要なGNSS補正情報と、を取得する処理と、
前記GNSS情報と、慣性測定装置で計測した前記自車両の加速度及び角速度の情報とに基づいて前記自車両の補正絶対位置を算出する処理と、
前記GNSS補正情報と、前記慣性測定装置で測定した前記自車両の加速度及び角速度の情報とに基づいて前記自車両の補正相対位置を算出する処理と、
前記自車両の位置情報を特定する処理と、
前記自車両におけるレイアウト情報に対応した合成映像と、前記自車両に搭載された車載ECUから得られる前記自車両の車両情報と、前記自車両に搭載された車載センサから得られる前記自車両の外部環境の検出情報と、前記補正相対位置又は前記補正絶対位置を用いた前記自車両の位置情報とを、操作装置にネットワークを介して送信する処理と、
前記操作装置から前記自車両における前記レイアウト情報に対応した前記合成映像と、前記車両情報と、前記外部環境の検出情報と、前記位置情報とに基づく前記自車両の運転操作情報を受信する処理と、を実行させ、
前記自車両の位置情報を特定する処理では、
前記GNSS情報をリアルタイムに取得できる場合であって、
前記GNSS補正情報をもリアルタイムに取得できるときには前記補正相対位置を用いて前記自車両の位置情報を特定し、
前記GNSS補正情報をリアルタイムに取得できないときには前記補正絶対位置を用いて前記自車両の位置情報を特定する、車両制御プログラム。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
1 理由1(実施可能要件)
請求項1、3~4には、「自車両の加速度及び角速度に基づいて」、また、請求項2には「さらに自車両の速度」を組み合わせて位置を算出するとあるが、本件明細書の詳細な説明には、具体的にこれらの物理量をどのように用いて位置を算出を行うのかについて開示がなく、技術常識を勘案しても、どのような算出をすべきであるのか、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分には記載されていない。
2 理由2(甲第1号証を主引用例とする進歩性欠如)
請求項1~4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~第5号証に記載された周知技術により進歩性を有しない。
3 証拠方法
甲第1号証 特表2018-520335号公報
甲第2号証 特開2019-179421号公報
甲第3号証 特開2017-106842号公報
甲第4号証 特開2017-156112号公報
甲第5号証 特開2017- 90239号公報
4 申立人は、令和7年6月23日に提出した意見書とともに甲第6号証を提出し、当該意見書において、訂正事項1~11によって付加された事項は、甲第6号証に記載された公知の技術事項であり、本件発明1~4は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2~第5号証に記載の周知技術に加え、甲第6号証により進歩性を有しないと主張している。
甲第6号証 特開2018-106676号公報
(「甲第1号証」~「甲第6号証」を、以下、「甲1」~「甲6」という。)
第5 取消理由の概要
本件特許に対して、当審において令和7年10月6日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は以下のとおりである。
(1)本件発明1~4は、甲1に記載された発明、甲6記載の技術事項及び甲2~甲3、甲5に記載された周知技術に基づいて容易に発明ができたものである。
第6 甲各号証
1 甲1
(1)甲1の記載
本件特許出願前に公開された甲1には、次の事項が記載されている(下線は当審において加筆した。以下同じ。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、全地球測位システム(GPS)に関し、さらに詳しくは、自動車用GNSSリアルタイムキネマティックデッドレコニング受信機の実装の方法及び/又は装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のGPSシステムは一般に、リアルタイムキネマティック(RTK)を使用して、固定の地上観測基準点を提供する。従来のシステムでは、高価なセンサを使用して、標準的なGPSの精度を向上させている。かかるシステムは、農業用途及び土地測量用途でセンチメートルレベルの精度を提供するのに有益である。従来の自動車用全地球的航法衛星システム(GNSS)受信機は、センサベースのデッドレコニング搭載の位置ソリューションを採用し、オンボードジャイロスコープ及び車両コントローラエリアネットワーク(CAN)からのホイールクリックメッセージを使用して屋外条件で最大5メートルの精度を維持する。精度は、群葉地及び市街地では低下する。車両センサは不正確であり、ドリフトを有し、CANからのデータにアクセスするデッドレコニング(DR)技術のレイテンシに依存する。次世代自動車用位置ソリューションは、車線を安全に検知する、及び/又は自動運転をサポートするために、おそらくより高い精度(より精密なGNSS位置ソリューション)を必要とするであろう。従来のシステムは、次世代自動車用位置決定システムの安全かつ広範な使用に必要とされる精度をサポートしていない。
【0003】
自動車用GNSSリアルタイムキネマティックデッドレコニング受信機を実装することが好ましいであろう。」
「【0018】
図1を参照すると、本発明の実施形態によるシステム50の図が示されている。システム50は全体として、複数の車両52a~52n、衛星56、及び基地局58を含む。車両52a~52nはそれぞれ、複数の装置(すなわちモジュール又は回路)100a~100nのうちの少なくとも2つを含む(明瞭にするため、システム50は、装置100a~100nのうちの1つを有する車両52a~52nを示している)。車両52a~52nのそれぞれにおける2つ以上のモジュール100a~100nの配置は、図2に関連してより詳細に説明される。モジュール100aは、図3に関連してより詳細に説明される。」
「【0023】
図2を参照すると、本発明の実施形態によるシステム50’の図が示されている。システム50’は、車両52aのより詳細な図を示している。車両52aは、モジュール100a及びモジュール100a’を備えるように示されている。
モジュール100a及び/又は100a’は、モジュール100a~100nと同様であってもよい。車両52a内に実装された複数のモジュール100a~100nは、特定の実装の設計基準に従って変更されてもよい。
・・・
【0025】
モジュール100a及び/又は100a’は、デュアルRTKタイプのGPS受信機を実装してもよい。・・・」
「【0030】
図3を参照すると、モジュール100a(又は100a’)の図が示されている。装置100aは、全体として、ブロック(又は回路)102、ブロック(又は回路)104、ブロック(又は回路)106、及び/又はブロック(又は回路)108を含む。回路102は、プロセッサを実装してもよい。回路104は、アンテナを実装してもよい。回路106は、メモリを実装してもよい。回路108は、通信ポートを実装してもよい。他のブロック(又は回路)を実装してもよい(例えば、クロック回路、I/Oポート、電源コネクタなど)。例えば、ブロック(又は回路)114は、フィルタを実装した状態のものが示されている。モジュール100a’は、全体として、同様の構成要素を備える。いくつかの実施形態では、モジュール100a’は、示されている構成要素のサブセットを含んでよい。
【0031】
プロセッサ102は、記憶されたコンピュータ読み取り可能な命令(例えば、メモリ106に記憶された命令110)を実行するように構成されてよい。プロセッサ102は、記憶された命令110に基づいて1つ又は2つ以上の工程を実施してもよい。例えば、プロセッサ102によって実行/実施される工程の1つは、アンテナ104とGPS衛星56との間の接続を介して測定される値(例えば、補正値及び/又は位置データ)を計算してもよい。」
「【0033】
アンテナ104は、セルラーネットワーク(例えば、基地局58に潜在的な接続オプションを提供する)及び/又はGPSネットワーク(例えば、衛星56)の両方に接続できるデュアルバンドアンテナとして実装されてもよい。他の実施例では、アンテナ104は、2つのアンテナとして実装されてもよい。例えば、1つのアンテナが基地局58に接続するように特別に設計されてもよく、その一方で、他のアンテナは、GPSネットワーク56に接続するように最適化されているものとして実装されてもよい。アンテナ104は、個別のアンテナモジュール及び/又はデュアルバンドアンテナモジュールとして実装されてもよい。」
「【0034】
メモリ106は、ブロック(又は回路)110及びブロック(又は回路)112を備えてよい。ブロック110は、コンピュータ読み取り可能な命令(例えば、プロセッサ102によって読み取り可能な命令)を記憶してもよい。ブロック112は、車両位置データを記憶してもよい。例えば、車両位置データ112は、様々なデータセット120a~120nを記憶してもよい。データセットの例は、位置座標120a、ID番号120b、タイムスタンプ120c、補正値120d、デッドレコニングデータ120e、及び/又は他のデータ120nであってもよい。
【0035】
位置座標120aは、GPS衛星56からモジュール100aによって取得された位置データを記憶してもよい。GPS衛星56は、位置データ精度の特定の解像度を提供してもよい。いくつかの実施形態では、位置座標120aは、特定の用途(例えば、車線検知、自動運転など)に十分な精度を提供できない場合がある。補正値120dを使用することで、位置座標120aの精度を向上させてもよい。いくつかの実施形態では、位置座標120aは、フィルタ114によって計算されてもよい。
・・・
【0038】
補正値120dは、位置座標120aの精度を高める(例えば、向上させる)ために使用されてもよい。補正データ120dは、位置座標120aに対するリアルタイム精度補正を実装してもよい。補正データ120dは、位置座標120aの精度に影響し得る局所的条件を考慮する(例えば、補償する)ために使用されてもよい。一実施例では、モジュール100aの補正値120dは、モジュール100a’によって提供されてもよい。他の実施例では、モジュール100a’は、追加の位置座標120aを提供してもよく、モジュール100aのプロセッサ102は、モジュール100aによって計算される位置座標120aと、モジュール100a’によって計算される位置座標120aと、に基づいて補正値120dを計算してもよい。いくつかの実施形態では、補正値120dは、基地局58から受信されてもよい。
【0039】
デッドレコニングデータ120eは、過去及び/又は現在の情報を記憶するために使用されてもよく、これにより、車両52aで移動する位置を決定する。例えば、デッドレコニングデータ120eは、車両52aの以前決定された位置を記憶してもよい(例えば、推定速度、推定移動時間、推定場所など)。以前決定された位置は、車両52aの現在位置の決定を助けるために使用されてよい。いくつかの実施形態では、デッドレコニングデータ120eは、車両52aのセンサからのデータ(例えば、オンボードジャイロスコープ及び/又はホイールクリックメッセージ)に基づいて決定されてもよい。デッドレコニングデータ120eを決定するための実装及び/又は記憶された情報は、特定の実装の設計基準に従って変更されてもよい。」
「【0050】
図5を参照すると、方法(又はプロセス)300が示されている。・・・
【0051】
状態302は、方法300を開始してもよい。状態304は、GNSS(例えば、GPS衛星56)に接続してもよい。次に、状態306では、モジュール100aが衛星56からGPSデータ(例えば、位置座標120a)を受信してもよい。状態308では、モジュール100aが、通信ポート108で他のアンテナ(例えば、モジュール100a’のアンテナ104)からのデータを走査してもよい。次に、方法300は、決定状態310に進んでもよい。
【0052】
決定状態310は、他のアンテナが使用可能かどうかを決定してもよい。使用可能でない場合、方法300は、状態312に進んでもよい。使用可能である場合、方法300は、状態316に進んでもよい。状態312は、デッドレコニングを使用して(例えば、デッドレコニングデータ120eに基づいて)、車両52aの位置を推定してもよい。次に、状態314は、補正フラグを設定せずに車両52aの位置を電子バス70に送信してもよい。次に、方法300は、状態326に進んでもよい。
【0053】
状態316は、他のアンテナ(例えば、モジュール100a’のアンテナ104)から補正値120dを受信してもよい。次に、決定状態318は、補正値120dが品質検査に合格するかどうかを決定してもよい。合格しない場合、方法300は、状態312に進んでもよい。合格する場合、方法300は、状態320に進んでもよい。状態320は、補正値120dを適用(例えば、位置座標120aから補正値120dを差し引き)してもよい。次に状態322は、デッドレコニングを使用して(例えば、デッドレコニングデータ120e及び/又は補正値120dによって補正された位置座標120aに基づいて)、車両52aの位置を推定してもよい。状態324は、補正フラグを設定した状態で車両52aの位置を電子バス70に送信してもよい。次に、方法300は、状態326に進んでもよい。状態326は、方法300を終了してもよい。」
ア 上記【0018】によれば、甲1に記載されたシステムは、複数の車両52a~52n、衛星(GPS衛星)56及び基地局58を含むものである。
イ 上記【0023】によれば、車両52aは、モジュール100a及びモジュール100a’を備えている。
また、上記【0025】及び【0030】によれば、モジュール100a及びモジュール100a’は、プロセッサ102、アンテナ104、メモリ106、通信ポート108及びGPS受信機を実装している。
ウ 上記【0031】によれば、プロセッサ102は、アンテナ104とGPS衛星56との間の接続を介して測定される補正値及び/又は位置データを計算するものである。
エ 上記【0033】によれば、アンテナ104は、セルラーネットワークの基地局58と、GPS衛星56の両方に接続できるデュアルバンドアンテナとして実装されている。
オ 上記【0034】によれば、メモリ106は、位置座標120a、補正値120d、デッドレコニングデータ120e等の車両位置データ112を記憶するものである。
カ 上記【0035】によれば、位置座標120aは、GPS衛星56からモジュール100aによって取得された位置データである。
キ 上記【0038】によれば、補正値120dは、位置座標120aの精度を高めるために使用されるものであり、位置座標120aに対するリアルタイム精度補正を実装するものであって、基地局58から受信されるものである。
ク 上記【0039】によれば、デッドレコニングデータ120eは、過去及び/又は現在の情報を記憶するために使用され、車両52aのセンサからのオンボードジャイロスコープデータに基づいて決定されるものである。
ケ 上記【0051】~【0053】によれば、モジュール100aは、GPS衛星56から位置座標120aを受信し、通信ポート108でモジュール100a’のアンテナ104からのデータを走査し、モジュール100a’のアンテナ104が使用可能でない場合、デッドレコニングデータ120eに基づいて、車両52aの位置を推定し、モジュール100a’のアンテナ104が使用可能な場合、補正値120dを受信し、補正値120dが品質検査に合格すると、補正値120dを適用し、デッドレコニングデータ120e及び補正値120dによって補正された位置座標120aに基づいて、車両52aの位置を推定する。
(2)甲1に記載された発明
上記(1)によれば、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているということができる。
「 複数の車両52a~52n、GPS衛星56及び基地局58を含むシステムにおいて、
車両52aは、
モジュール100a及びモジュール100a’を備え、
モジュール100a及びモジュール100a’は、プロセッサ102、アンテナ104、メモリ106、通信ポート108及びGPS受信機を実装しており、
プロセッサ102は、アンテナ104とGPS衛星56との間の接続を介して測定される補正値及び/又は位置データを計算するものであり、
アンテナ104は、セルラーネットワークの基地局58と、GPS衛星56の両方に接続できるデュアルバンドアンテナとして実装され、
メモリ106は、位置座標120a、補正値120d、デッドレコニングデータ120e等の車両位置データ112を記憶し、
位置座標120aは、GPS衛星56からモジュール100aによって取得された位置データであり、
補正値120dは、位置座標120aの精度を高めるために使用されるものであり、位置座標120aに対するリアルタイム精度補正を実装するものであって、基地局58から受信されるものであり、
デッドレコニングデータ120eは、過去及び/又は現在の情報を記憶するために使用され、車両52aのセンサからのオンボードジャイロスコープデータに基づいて決定されるものであり、
モジュール100aは、GPS衛星56から位置座標120aを受信し、通信ポート108でモジュール100a’のアンテナ104からのデータを走査し、モジュール100a’のアンテナ104が使用可能でない場合、デッドレコニングデータ120eに基づいて、車両52aの位置を推定し、モジュール100a’のアンテナ104が使用可能な場合、補正値120dを受信し、補正値120dが品質検査に合格すると、補正値120dを適用し、デッドレコニングデータ120e及び補正値120dによって補正された位置座標120aに基づいて、車両52aの位置を推定する、
車両52a。」
2 甲2
(1)甲2の記載
本件特許出願前に公開された甲2には、次の事項が記載されている。
「【0002】
自律的に走行するダンプトラックにおいてその位置を算出する機能は重要な機能の一つである。この位置算出の例として、慣性計測装置(IMU)を用い、車輪の回転数から速度を計測する車輪速度計、車輪の車軸に対する傾きを計測する操舵角計等の計測装置の結果を用いて、ダンプトラックの位置を算出する。GNSS等のように直接位置を算出する機器から出力される位置に対して、速度、姿勢、加速度、角速度などの関連する運動パラメータから位置を順次更新する方法があり、デッドレコニングと呼ばれる。
【0003】
従来よりデッドレコニングを用いて算出した位置を、カルマンフィルタなどに代表される確率フィルタを用いて、全地球航法衛星システム(GNSS)にて算出された位置へ徐々に修正する手法がある。この確率フィルタを用いた位置修正方法は、デッドレコニング、GNSSのそれぞれから算出される誤差を考慮して位置を修正するため、確率的に最も存在する可能性の高い位置を算出できることが長所である。この際に、確率フィルタを用いて、自律走行ダンプトラックの位置の誤差を分散値として算出し、この分散値が存在する可能性のある範囲を誤差楕円として表わすことが可能である。」
(2)甲2に記載の技術事項
上記(1)によれば、甲2には、次の技術事項が記載されているということができる。
「 慣性計測装置(IMU)における、車輪の回転数から速度を計測する車輪速度計、車輪の車軸に対する傾きを計測する操舵角計等の結果を用いて、ダンプトラックの位置を算出し、速度、姿勢、加速度、角速度などの関連する運動パラメータから位置を更新すること。」
3 甲3
(1)甲3の記載
本件特許出願前に公開された甲3には、次の事項が記載されている。
「【0023】
センサ情報取得部11は、移動体に搭載された各種センサが検出したその移動体の移動に関する情報を取得する。移動に関する情報とは、例えば、移動体の速度、加速度、移動方向、位置情報などをいう。また、各種センサとは、例えばGPS受信機、IMU(Inertial Measurement Unit)などである。なお、IMUとは加速度センサとジャイロセンサを備える慣性センサである。本実施形態で使用するGPS受信機は位置情報に加え、GPS衛星が送信する搬送波のドップラ効果に基づく速度(ドップラ速度と呼ぶ)および角度(ドップラ角度と呼ぶ)を出力する機能を有している。ドップラ速度およびドップラ角度は、GPSによって測位する位置情報に比べ精度が高いことが知られている。しかし、GPS受信機によって得られる測定値(位置情報、ドップラ速度、ドップラ角度)は何れも搬送波の反射などによるマルチパスの影響を受けて精度が劣化することがあり、測定値の確度がばらつく可能性がある。一方、IMUによる測定値は、GPS受信機による測定値のような確度のばらつきは少なく安定している。しかし、IMUの測定値には、ドリフトや倍率の誤差が含まれ高精度の測定値が得られない可能性がある。さらに、例えば、IMUの測定値に基づく位置情報には、IMUが検出した誤差を含む加速度を積分して移動体の速度を算出し、さらにその速度を積分することで移動体の位置情報を算出するため、累積された誤差が含まれることが知られている。後述するように本実施形態では、各センサの測定値を、特性の異なる他のセンサが測定した有効な測定値を用いて補正し、各センサの欠点を互いに補い合う。なお、IMUが測定した加速度、角速度をIMU測定値、GPS受信機が取得したドップラ速度、ドップラ角度、位置情報をGPS測定値、GPS受信機が取得した位置情報をGPS位置情報と記載することがある。
【0024】
速度算出部12は、センサ情報取得部11が取得したIMUが測定した加速度の情報を用いて、移動体の速度を算出する。
角度算出部13は、センサ情報取得部11が取得したIMUが測定した角速度の情報を用いて、移動体の移動方向(角度)を算出する。
位置算出部14は、速度算出部12が算出した速度、角度算出部13が算出した角度のうち少なくとも一方を用いて、移動体の位置情報を算出する。
補正部15は、複数のセンサが測定した測定値のそれぞれを、特性の異なる他のセンサによる測定値を用いて修正する。具体的には、比較的精度の高いGPS受信機による測定値でIMU測定値に基づいて算出した速度等を修正する。また、確度にばらつきのあるGPS受信機の測定値を、確度が安定したIMUの測定値を用いて修正する。また、補正部15は、複数のセンサのうち測定頻度の高いセンサによる高密度の測定値に基づいて測定頻度の低いセンサによる密度の低い測定値を補間する。例えば、補正部15は、測定頻度の低いGPS受信機が検出する測定値の隙間を、測定頻度が高いIMUが検出した測定値を用いて埋める(補間する)。なお、本明細書では、修正、補間を総称して補正という。」
(2)甲3に記載の技術事項
上記(1)によれば、甲3には、次の技術事項が記載されているということができる。
「移動体に搭載された、加速度センサとジャイロセンサを備える慣性センサ(IMU)によって、移動体の速度、加速度、移動方向、位置情報等の情報を取得すること。」
4 甲4
(1)甲4の記載
本件特許出願前に公開された甲4には、次の事項が記載されている。
「【0019】
車両位置検出装置9は、前方カメラ5から出力されるカメラ情報CAM_Info、アンテナ付き受信機7から出力されるGPS情報GPS_Signal及びGPS衛星測位数Sat_Num、車速センサ8から出力される車速Vel、地図情報10から出力される地図情報Map_Info、ヨーレートセンサ11から出力されるヨーレートYawrate、および、外部通信機4から出力されるサーバー保有地図情報オフセットOffset_Sから、補正後自車位置情報GPS_Pos_Corr及び補正地図情報MAP_Corrを演算して車両制御装置12へ出力すると共に、オフセット情報Offsetを演算して外部通信機4に出力する。」
「【0021】
ヨーレートセンサ11は、車両1に発生するヨーレートYawrateを検出し出力する。」
「【0027】
測位情報取得部22は、アンテナ付き受信機7から出力されるGPS信号GPS_Signalに基づいて、自車位置情報GPS_Pos、および、自車方位情報GPS_Azimathを演算し、出力する。自車位置情報及び自車方位情報の検出は、本実施の形態においては、例えば、Real Time Kinematic(RTK)-GPS、あるいは、Differential-GPS等の、公知の技術等を用いて実施すればよい。
【0028】
測位情報補正部23は、測位情報取得部22から出力される自車位置情報GPS_Pos及び自車方位情報GPS_Azimathと、ヨーレートセンサ11から出力されるヨーレートYawrateと、車速センサ8から出力される車速Velとに基づいて、自車位置情報GPS_Posを補正し、補正後自車位置情報GPS_Pos_Corrを出力する。自車位置情報GPS_Posの補正は、測位演算の遅れ分を補正することを目的としており、自車位置情報GPS_Pos受信までの遅れ時間分の車両移動量をヨーレートYawrateおよび車速Velを用いて補正する。受信までの遅れ時間は、例えば200msなど、予め計測した値を設定値とすれば良い。ここでは、一例として、遅れ時間を200msとした場合について説明するが、その場合の補正後自車位置情報GPS_Pos_Corr(X,Y)は、以下の式にて演算する。
【0029】
X=GPS_Pos_X+Vel×200ms×Cos(GPS_Azimath+Yawrate×200ms×0.5)
Y=GPS_Pos_Y+Vel×200ms×Sin(GPS_Azimath+Yawrate×200ms×0.5)
【0030】 ただし、GPS_Pos_X、及び、GPS_Pos_Yは、自車位置GPS_PosをX方向(東方向)、及び、Y方向(北方向)に変換した値である。測位情報の補正により、地図情報のオフセット検出の精度向上が見込める。」
(2) 甲4に記載の技術事項
上記(1)によれば、甲4には、次の技術事項が記載されているということができる。
「車両に搭載された、測位情報取得部から出力される自車位置情報及び自車方位情報と、ヨーレートセンサから出力されるヨーレートと、車速センサから出力される車速に基づいて、自車位置情報を補正すること。」
5 甲5
(1)甲5の記載
本件特許出願前に公開された甲5には、次の事項が記載されている。
「【0025】
RTK-GPS13は、RTK測位方式(即ち干渉測位方式)に基づき車両の絶対的な位置(例えば緯度、経度、及び高度の3次元位置)を示す高精度な位置情報を生成する。また、GPS23は、単独測位方式又は相対測位方式に基づき車両の絶対的な位置を示す位置情報を生成する。RTK-GPS13が出力する位置情報は、GPS23が出力する位置情報よりも位置推定精度が高い。RTK-GPS13は本発明における「第1自己位置推定部」の一例であり、RTK-GPS13が出力する位置情報は本発明における「第1位置情報」の一例である。また、GPS23は本発明における「第2自己位置推定部」の一例であり、GPS23が出力する位置情報は本発明における「第2位置情報」の一例である。IMU(慣性計測装置)14、24は、3軸方向における車両の加速度及び角速度(又は角度)を出力する。
【0026】
車載機11は、RTK-GPS13から供給される出力に基づき、車両の絶対的な位置及び方位を特定し、ライダ12が検知した点群の各点について、車両の位置及び向きに依存した相対的な3次元位置情報から絶対的な3次元位置情報を算出する。なお、車両の絶対的な位置及び方位は、RTK-GPS13からの出力に加え、IMU14の出力に基づいて特定するようにしてもよい。そして、車載機11は、算出した3次元点群データ「Pt」を、サーバ装置3へ供給する。この場合、車載機11は、算出した3次元点群データPtを無線通信により即時にサーバ装置3へ送信してもよく、サーバ装置3が後で読取り可能な記憶媒体等に蓄積してもよい。3次元点群データPtは、本発明における「第1情報」の一例である。
【0027】
同様に、車載機21は、GPS23から供給される出力に基づき、車両の絶対的な位置及び方位を特定し、ライダ22が検知した点群の各点について、車両の位置及び向きに依存した相対的な3次元位置情報から絶対的な3次元位置情報を算出する。なお、なお、車両の絶対的な位置及び方位は、GPS23からの出力に加え、IMU24の出力に基づいて特定するようにしてもよい。そして、車載機21は、算出した3次元点群データ「Qt」を、サーバ装置3へ供給する。3次元点群データQtは、本発明における「第2情報」の一例である。」
(2)甲5に記載の技術事項
上記(1)によれば、甲5には、次の技術事項が記載されているということができる。
「 車両の絶対的な位置及び方位を、3軸方向における車両の加速度及び角速度(又は角度)を出力するIMU(慣性計測装置)の出力に基づいて特定すること。」
6 甲6
(1) 甲6の記載
本件特許出願前に公開された甲6には、次の事項が記載されている。
「【0054】
図2に示すように、被操作車両16は、車両が予め保有している走行データ、センサ等で検知した情報を元に生成した走行データ等に基づいて、自律走行を行うことが可能な車両であり、所定の条件で遠隔地にいるオペレータ10によって遠隔操作される、自動運転を行うことが可能な車両である。
【0055】
被操作車両16は、無線通信ユニット1601と、操舵角センサ1602と、速度/加速度センサ1603と、速度制御ユニット1604と、操舵制御ユニット1605と、車載ネットワーク1606、1607と、地図データベース1608と、遠隔制御ユニット1609と、1台以上のレーザーレーダ1610と、1台以上のミリ波レーダ1611と、1台以上のカメラ1612と、GPS(Global Positioning System)1613とを備える。」
「【0058】
無線通信ユニット1601は、無線基地局15と無線通信を行う通信装置である。無線通信ユニット1601は、後述する、車両走行情報、映像情報、障害物位置情報、センシングした時点を示す時間情報等を含むセンシング情報を、無線基地局15及びネットワーク14を介して遠隔操作装置13に送信する。無線通信ユニット1601は、送信部の一例である。」
「【0061】
速度制御ユニット1604は、被操作車両16のアクセル、ブレーキ、及び、シフトレバーの操作により速度を制御する装置である。速度制御ユニット1604は、例えばECU(engine control unit)である。速度制御ユニット1604は、操作入力装置11から出力された車両操作信号を、遠隔操作装置13、ネットワーク14、無線基地局15、及び、無線通信ユニット1601を介して受信する。」
「【0065】
遠隔制御ユニット1609は、遠隔操作装置13に送信するセンシング情報を生成する。具体的には、遠隔制御ユニット1609は、操舵角センサ1602、速度/加速度センサ1603、地図データベース1608、レーザーレーダ1610、カメラ1612、GPS1613から得られる被操作車両16のセンシング情報に基づき、被操作車両16を計測した時点における、被操作車両16の現在位置を示す車両位置情報を生成する。なお、車両位置情報には、地図データベース1608に格納された、被操作車両16が走行する道路のレーンの識別情報等を含んでいてもよい。
【0066】
また、遠隔制御ユニット1609は、操舵角センサ1602、速度/加速度センサ1603から得られるセンシング情報に基づき、被操作車両16のアクセル、ブレーキ、シフトレバー、ステアリング等の操作から、被操作車両16の操舵角、被操作車両16の速度、被操作車両16の加速度、及び、被操作車両16の進行方向のうちの少なくとも1つ以上を含む被操作車両16の走行状態を示す車両走行情報を生成する。
【0067】
さらに、遠隔制御ユニット1609は、1つ以上のカメラ1612から得られるセンシング情報に基づき、被操作車両16の周囲の映像情報を生成する。被操作車両16の周囲の映像情報は、被操作車両16の前後左右方向におけるそれぞれの方向を個別に映像情報として生成されていてもよく、被操作車両16の前後左右方向をまとめて一つの映像情報として合成して生成してもよい。
【0068】
また、遠隔制御ユニット1609は、レーザーレーダ1610、ミリ波レーダ1611、カメラ1612の各々のセンサから得られるセンシング情報に基づき、被操作車両16の車両周辺の障害物を検知して、障害物の現在位置を示す障害物位置情報を生成する。なお、障害物位置情報は、障害物の現在位置、障害物の速度、障害物の加速度、障害物の進行方向、障害物の大きさ、障害物の種類に関する情報を含んでもいてもよい。障害物の種類は、例えば、歩行者、バイク、自動車等を区別する種類である。障害物の現在位置は、各々のセンサが障害物をセンシングした時点における、障害物の位置を示す。
【0069】
次に、遠隔制御ユニット1609は、車両位置情報、車両走行情報、映像情報、及び、障害物位置情報を、無線通信ユニット1601を介して遠隔操作装置13に送信する。」
「【0075】
遠隔制御ユニット1609は、遠隔操作装置13が送信した車両操作信号を、無線通信ユニット1601を介して受信する。遠隔制御ユニット1609は、受信した車両操作信号に基づき、速度制御ユニット1604と操舵制御ユニット1605とを制御することで、被操作車両16の走行を制御する。」
「【0081】
図3に示すように、遠隔操作装置13は、通信インタフェース1301と、車両情報受信部1302と、車両操作信号送信部1303と、時間計測部1304と、車両操作信号生成部1305と、地図データベース1306と、HMI生成部1307とを備える。
【0082】
通信インタフェース1301は、ネットワーク14と接続し、ネットワーク14及び無線基地局15を介して、被操作車両16と通信を行う通信部である。
【0083】
車両情報受信部1302は、被操作車両16が送信する、少なくとも、車両位置情報、車両走行情報、映像情報、及び、障害物位置情報を、通信インタフェース1301を介して受信する。」
「【0086】
車両操作信号生成部1305は、オペレータ10による操作入力装置11の操作に基づいて、車両操作信号を生成し、生成した車両操作信号を車両操作信号送信部1303に出力する。
【0087】
車両操作信号送信部1303は、車両操作信号生成部1305が生成する車両操作信号を、通信インタフェース1301、ネットワーク14及び無線基地局15を介して被操作車両16に送信する。」
「【0089】
HMI生成部1307は、車両位置情報、車両走行情報、障害物位置情報、映像情報、遅延時間、及び、地図情報に基づいて、オペレータ10による被操作車両16の操作に必要となるマップ映像を生成し、マップ映像を表示装置12に出力する。具体的には、HMI生成部1307は、位置情報処理部1307aと、方向算出部1307bと、判断処理部1307cと、映像生成部1307dとを有する。」
「【0146】
次に、オペレータ10は、表示装置12に表示されているマップ映像から、被操作車両16が障害物と衝突する危険があると認識すると、操作入力装置11を操作する。操作入力装置11は、車両操作信号を遠隔操作装置13に送信する(S41)。
【0147】
次に、遠隔操作装置13は、車両操作信号を受信し、これを被操作車両16に送信する。
【0148】
次に、被操作車両16は、車両操作信号を受信し、車両操作信号に応じた走行を行う(S12)。こうして、遠隔操作システム100では、道路を走行する被操作車両16を遠隔制御することができる。」
「【0222】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。」
(2)甲6に記載の技術事項
ア 上記(1)によれば、甲6には、次の技術事項が記載されているということができる。
「無線通信ユニット、操舵角センサ、速度/加速度センサ、速度制御ユニット、操舵制御ユニット、車載ネットワーク、地図データベース、遠隔制御ユニット、レーザーレーダ、ミリ波レーダ、カメラ、GPSを備える被操作車両であって、
無線通信ユニットは、車両位置情報、車両走行情報、映像情報、障害物位置情報、センシングした時点を示す時間情報等を含むセンシング情報を、無線基地局及びネットワークを介して遠隔操作装置に送信するものであり、
遠隔制御ユニットは、被操作車両の操舵角、速度、加速度及び進行方向のうちの少なくとも1つ以上を含む被操作車両の走行状態を示す車両走行情報、カメラから得られるセンシング情報に基づく、被操作車両の前後左右方向をまとめて一つの映像情報として合成した映像情報、センサから得られるセンシング情報に基づく、被操作車両の車両周辺の障害物障害物の現在位置を示す障害物位置情報、及び被操作車両の現在位置を示す車両位置情報を前記無線通信ユニットにより遠隔操作装置に送信し、
操作入力装置の操作に基づいて生成された車両操作信号を前記無線通信ユニットにより受信し、
自律走行を行い、車両操作信号を受信して車両操作信号に応じた走行を行う、
被操作車両。」
第7 当審の判断
1 理由1(実施可能要件)について
(1) 申立人の主張
申立人は、異議申立書の第10頁~第11頁において、本件発明1~4について、
「本件特許発明1,3,4は、GNSS情報等と、少なくとも「自車両の加速度及び角速度」とに基づいて、また、本件特許発明2は、さらに「自車両の速度情報」を組み合わせて、位置を算出するものである。しかしながら、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、具体的にこれらの物理量をどのように用いて位置の算出を行うのかについて開示がなく、技術常識を勘案しても、本件特許発明1~4それぞれの目的(例えば、「走行する車両の現在位置をより正確に測定する(段落0006)、「新たに「速度の情報」を組み合わせて測位することで、位置精度のより高い「補正絶対位置」…(略)…、あるいは「補正相対位置」を算出する」(段落0042))に照らして、どのような算出をすべきであるのか、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分には記載されていない。」と主張している。
(2)検討
甲3の段落【0023】、【0024】に示されるように、車両の位置情報を算出するにあたり、「加速度」、「速度」、「角速度」を用いる具体的な手法は周知技術に過ぎないものである。そして、本件発明1~4においても、例えば当該周知技術を採用して、「自車両の加速度及び角速度」とに基づいて、あるいは、さらに「自車両の速度情報」を組み合わせて、位置を算出することが可能であることは明らかであるから、本件特許の発明の詳細な説明が、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分には記載されていないとはいえない。
(3)小括
よって、本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明1~4を当業者が実施できる程度に記載したものであるから、特許法36条4項1号の規定に違反しているとはいえない。
2 理由2(進歩性)について
(本件発明1)
(1) 対比
請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)と、甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「車両52a」は、本件発明1の「車両」に相当する。
イ 上記第6の1(1)の【0001】、【0002】及び【0035】によれば、甲第1号証に記載されたシステムは、車両に自動車用GNSSリアルタイムキネマティックデッドレコニング受信機を実装することによって、車線を安全に検知したり、自動運転をサポートするためのより高い精度(より精密なGNSS位置ソリューション)を必要とする次世代自動車用位置ソリューションを提供するものであるから、甲第1号証に記載された車両の位置の計算や推定は、車両における走行制御や自動運転を前提とするものである。
そして、甲1発明では、「モジュール100a及びモジュール100a’」において、車両の位置の計算や推定に関する具体的な処理を行っているところ、上述の前提に鑑みると、これらの計算や推定は、走行制御や自動運転のために行われる処理である。
そうすると、甲1発明の「車両52a」が備える「モジュール100a及びモジュール100a’」は、「自車両の走行を制御する車両制御装置」であるということができる。
ウ 甲1発明の「デッドレコニングデータ120e」は、「車両52aのセンサからのオンボードジャイロスコープデータに基づいて決定されるもの」であるから、甲1発明の「車両52a」は、「オンボードジャイロスコープデータ」を計測(測定)するための「測定装置」を具備しているということができる。
そして、「ジャイロスコープデータ」とは、物体の角速度の情報のことである。
そうすると、甲1発明の「車両52a」が具備する「オンボードジャイロスコープデータ」を計測(測定)する「測定装置」と、本件発明1の「前記自車両の加速度及び角速度の情報を計測する慣性測定装置」とは、「前記自車両の角速度の情報を計測する測定装置」で共通する。
エ 甲1発明の「アンテナ104」は、「セルラーネットワークの基地局58と、GPS衛星56の両方に接続できるデュアルバンドアンテナ」として実装されているところ、「GPS」は「GNSS」の一種であるから、「GPS衛星」に接続できる「アンテナ104」は、「GNSS情報」を受信しているといえ、「GPS受信機」は「GNSS受信機」といえる。
また、甲1発明の「GPS衛星56からモジュール100aによって取得された位置データ」である「位置座標120a」は、「単独測位に必要なGNSS情報」といえ、「位置座標120aに対するリアルタイム精度補正を実装するものであって、基地局58から受信される」「補正値120d」は、「相対測位に必要なGNSS補正情報」といえる。
そして、甲1発明の「メモリ106」は、「位置座標120a、補正値120d」を記憶しているから、甲1発明の「モジュール100a及びモジュール100a’」は、外部の「GPS衛星56」や「基地局58」から情報を取得しているといえる。
そうすると、甲1発明は、本件発明1の「前記自車両に搭載されたGNSS受信機を通じて、単独測位に必要なGNSS情報と、外部の基準局から相対測位に必要なGNSS補正情報と、を取得する外部情報取得部」に相当する構成を有しているということができる。
オ 甲1発明の「モジュール100a」は、「GPS衛星56から位置座標120aを受信し」、「モジュール100a’のアンテナ104が使用可能でない場合、デッドレコニングデータ120eに基づいて、車両52aの位置を推定」するから、推定(算出)するための推定部(算出部)を具備しているといえるところ、推定(算出)する位置は、「位置座標120a」(GNSS情報)と、「デッドレコニングデータ120e」に基づくものである。
そして、上記ウのとおり、甲1発明の「デッドレコニングデータ120e」は、「車両52aのセンサからのオンボードジャイロスコープデータに基づいて決定されるもの」である。
また、甲1発明の「位置座標120a」(GNSS情報)は、本件発明1の「絶対位置」に相当し、これが「デッドレコニングデータ120e」によって補正されて推定(算出)される位置は、本件発明1の「補正絶対位置」に相当する。
そうすると、甲1発明の推定部(算出部)は、本件発明1の「補正絶対位置算出部」に対応しており、甲1発明は、本件発明1の「前記GNSS情報と、前記慣性測定装置で測定した前記自車両の加速度及び角速度の情報とに基づいて前記自車両の補正絶対位置を算出する補正絶対位置算出部」と、「前記GNSS情報と、前記測定装置で測定した前記自車両の角速度の情報とに基づいて前記自車両の補正絶対位置を算出する補正絶対位置算出部」を具備する点で共通する。
カ 甲1発明の「モジュール100a」は、「GPS衛星56から位置座標120aを受信し」、「モジュール100a’のアンテナ104が使用可能な場合、補正値120dを受信し、補正値120dが品質検査に合格すると、補正値120dを適用し、デッドレコニングデータ120e及び補正値120dによって補正された位置座標120aに基づいて、車両52aの位置を推定」するから、推定(算出)するための推定部(算出部)を具備しているといえるところ、推定(算出)する位置は、「デッドレコニングデータ120e」と「補正値120dによって補正された位置座標120a」(GNSS補正情報)に基づくものである。
そして、上記ウのとおり、甲1発明の「デッドレコニングデータ120e」は、「車両52aのセンサからのオンボードジャイロスコープデータに基づいて決定されるもの」である。
また、甲1発明の「補正値120dによって補正された位置座標120a」(GNSS補正情報)は、本件発明1の「相対位置」に相当し、これが「デッドレコニングデータ120e」によって補正されて推定(算出)される位置は、本件発明1の「補正相対位置」に相当する。
そうすると、甲1発明の推定部(算出部)は、「補正相対位置算出部」にも対応しており、甲1発明は、本件発明1の「前記GNSS補正情報と、前記慣性測定装置で計測した前記自車両の加速度及び角速度の情報とに基づいて前記自車両の補正相対位置を算出する補正相対位置算出部」と、「前記GNSS補正情報と、前記測定装置で計測した前記自車両の角速度の情報とに基づいて前記自車両の補正相対位置を算出する補正相対位置算出部」を具備する点で共通する。
キ 甲1発明は、上記オのとおり、「補正絶対位置算出部」が「補正絶対位置」を算出するものであり、上記カのとおり、「補正相対位置算出部」が「補正相対位置」を算出するものである。
そうすると、甲1発明では、「補正絶対位置」及び「補正相対位置」を算出した結果、「車両52a」(自車両)の位置情報を特定することができるから、甲1発明は、本件発明1と同様、「前記自車両の位置情報を特定する位置特定部」を具備しているということができる。
ク 甲1発明の「補正値120d」は、「位置座標120aの精度を高めるために使用されるものであり、位置座標120aに対するリアルタイム精度補正を実装するものであって、基地局58から受信されるもの」であるから、甲1発明では、「基地局58」から受信する「補正値120d」(GNSS補正情報)も、「GPS衛星56」から取得する「位置座標120a」(GNSS情報)もリアルタイムに取得している。
そして、上記キのとおり、甲1発明は、本件発明1と同様の「位置特定部」を具備しているところ、甲1発明の「モジュール100a’のアンテナ104が使用可能な場合、補正値120dを受信し、補正値120dが品質検査に合格すると、補正値120dを適用し、デッドレコニングデータ120e及び補正値120dによって補正された位置座標120aに基づいて、車両52aの位置を推定する」ことは、本件発明1の「前記GNSS補正情報をもリアルタイムに取得できるときには前記補正相対位置を用いて前記自車両の位置情報を特定」することに相当し、甲1発明の「モジュール100a’のアンテナ104が使用可能でない場合、デッドレコニングデータ120eに基づいて、車両52aの位置を推定」することは、本件発明1の「前記GNSS補正情報をリアルタイムに取得できないときには前記補正絶対位置を用いて前記自車両の位置情報を特定する」ことに相当する。
そうすると、甲1発明が具備する「位置特定部」は、本件発明1の「位置特定部」に相当する。
以上によれば、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
自車両の走行を制御する車両制御装置と、
前記自車両の角速度の情報を計測する測定装置と、を具備し、
前記車両制御装置は、
前記自車両に搭載されたGNSS受信機を通じて、単独測位に必要なGNSS情報と、外部の基準局から相対測位に必要なGNSS補正情報と、を取得する外部情報取得部と、
前記GNSS情報と、前記測定装置で測定した前記自車両の角速度の情報とに基づいて前記自車両の補正絶対位置を算出する補正絶対位置算出部と、
前記GNSS補正情報と、前記測定装置で計測した前記自車両の角速度の情報とに基づいて前記自車両の補正相対位置を算出する補正相対位置算出部と、
前記自車両の位置情報を特定する位置特定部と、
を具備し、
前記位置特定部は、
前記GNSS情報をリアルタイムに取得できる場合であって、
前記GNSS補正情報をもリアルタイムに取得できるときには前記補正相対位置を用いて前記自車両の位置情報を特定し、
前記GNSS補正情報をリアルタイムに取得できないときには前記補正絶対位置を用いて前記自車両の位置情報を特定する、車両。
[相違点1]
自車両の情報を計測する測定装置について、本件発明1は、「前記自車両の加速度及び角速度の情報を計測する慣性測定装置」であるのに対し、甲1発明は、「車両52a」が具備する「オンボードジャイロスコープデータ」を計測する「測定装置」であって、「車両52a」の「角速度」の情報を計測するものの、「加速度」の情報を計測するものではなく、それにともない、本件発明1は、「補正絶対位置算出部」が「前記慣性測定装置で測定した前記自車両の加速度及び角速度の情報」に基づいて前記自車両の補正絶対位置を算出し、「補正相対位置算出部」が「前記慣性測定装置で計測した前記自車両の加速度及び角速度の情報」に基づいて前記自車両の補正相対位置を算出するのに対し、甲1発明は、「補正絶対位置算出部」が算出する補正絶対値が「加速度」の情報に基づくものではなく、「補正相対位置算出部」が算出する補正相対位置が「加速度」の情報に基づくものではない点。
[相違点2]
外部からオペレータによる車両の操作を可能にするための構成として、本件発明1が、「前記自車両の位置情報を、前記自車両の走行を操作可能な操作装置にネットワークを介して送信する通信部」を有し、車両制御装置が「前記自車両におけるレイアウト情報に対応した合成映像と、前記自車両に搭載された車載ECUから得られる前記自車両の車両情報と、前記自車両に搭載された車載センサから得られる前記自車両の外部環境の検出情報と、前記補正相対位置又は前記補正絶対位置を用いた前記自車両の位置情報とを、前記操作装置に送信し、
前記操作装置から前記自車両における前記レイアウト情報に対応した前記合成映像と、前記車両情報と、前記外部環境の検出情報と、前記位置情報とに基づく前記自車両の運転操作情報を受信する」構成を有しているのに対し、甲1発明は、対応する構成を有していない点。
(2) 相違点についての判断
ア 相違点1について
(ア) 上記第6の2(2)、3(2)、4(2)のとおり、車両の位置を算出するために、慣性測定装置(IMU)で計測した車両の加速度や角速度の情報を用いることは、本件特許出願時において、周知技術であったと認められる。
(イ) そうすると、甲1発明において、自車両の情報を計測する測定装置(「車両52a」が具備する「オンボードジャイロスコープデータ」を計測する「測定装置 」)として、慣性測定装置(IMU)を採用することで、車両の加速度や角速度の情報を計測するように構成することは、当業者であれば適宜決定し得る設計的な事項であって、それにともない、計測された当該情報を用いて、「補正絶対位置算出部」が「前記慣性測定装置で測定した前記自車両の加速度及び角速度の情報」に基づいて前記自車両の補正絶対位置を算出し、「補正相対位置算出部」が「前記慣性測定装置で計測した前記自車両の加速度及び角速度の情報」に基づいて前記自車両の補正相対位置を算出するように構成することも、当業者であれば容易に想到し得るものである。
イ 相違点2について
(ア)甲1発明は、甲1の段落【0002】の「次世代自動車用位置ソリューションは、車線を安全に検知する、及び/又は自動運転をサポートするために、おそらくより高い精度(より精密なGNSS位置ソリューション)を必要とするであろう。」との記載からみて、車線を安全に検知すること、及び、自動運転をサポートすることを意図したものである。
一方、甲6記載事項は、甲6の段落【0054】の「被操作車両16は、車両が予め保有している走行データ、センサ等で検知した情報を元に生成した走行データ等に基づいて、自律走行を行うことが可能な車両であり、所定の条件で遠隔地にいるオペレータ10によって遠隔操作される、自動運転を行うことが可能な車両」との記載からみて、自動運転を行うことが可能な車両において、所定の条件で遠隔操作を可能とすることを意図したものである。
甲1発明と、甲6記載事項は、自動運転に対応した技術という点で共通するものの、甲1発明は、遠隔操作を意図したものではなく、車線を安全に検知すること、及び、自動運転をサポートするために、位置座標の精度を高めることを目的とするものであるから、本件特許明細書に示された先行技術文献である特開2020-164056号公報(摘記省略)に示されているように、本件特許に係る出願の原出願の出願当時において、「自動運転」と「遠隔運転」を選択できる車両は知られていたとしても、車両の遠隔操作を意図していない甲1発明に対して、車両の遠隔操作に係る甲6記載事項を組み合わせる動機付けがあるとはいえない。
(イ)そうすると、甲1発明に甲6記載事項を組み合わせて、甲1発明の車両制御装置を、前記自車両の位置情報を、前記自車両の走行を操作可能な操作装置にネットワークを介して送信する通信部を備えるものとし、前記自車両に搭載された車載ECUから得られる前記自車両の車両情報と、前記自車両に搭載された車載センサから得られる前記自車両の外部環境の検出情報と、前記自車両の位置情報とを、前記通信部により前記操作装置に送信し、前記操作装置から前記自車両における前記車両情報と、前記外部環境の検出情報と、前記位置情報とに基づく前記自車両の運転操作情報を前記通信部により受信し、前記自車両における前記運転操作情報に基づいて前記車両の走行を制御するものとすることは、当業者が容易に為し得たものではない。
(ウ)そして、甲2~甲5には、上記「第6 2~5」に示したとおりの記載があるのみで、上記相違点2に係る構成は、甲2~甲5のいずれにも記載されていない。
(エ)したがって、本件発明は、甲1発明及び甲2~甲6記載の技術事項に基づいて発明をすることができたものあるとはいえない。
(3) 申立人の主張に対する検討
ア 申立人の主張
申立人は、令和7年6月23日付けで提出された意見書において、「甲第1号証に記載された発明は、自動運転が可能な車両であり、甲第6号証に記載の技術事項も自律走行を行うことが可能な車両を前提として、遠隔操作を行うものであることを考慮すると、甲第1号証に記載された発明に、甲第6号証に記載の技術事項を適用して遠隔操作に関する機能を付加することは、当業者が容易に想到できたことである。」(意見書 第3頁)と主張する。
イ 検討
申立人の主張するとおり、甲1発明は「自動運転が可能な車両」を前提とするものであり、甲6記載事項も「自律走行を行うことが可能な車両」を前提として、「遠隔操作」を行うものである。
しかしながら、甲1発明は、自動運転が可能な車両において、車線を安全に検知すること、及び、自動運転をサポートするために、位置座標の精度を高めることを目的とするものであり、遠隔操作を意図したものではない。
したがって、甲1発明には、「自動運転が可能な車両」において、「遠隔操作」を行うことは示唆されておらず、「自律走行を行うことが可能な車両」を前提として、「遠隔操作」を行う甲6記載事項を組み合わせる動機付けがあるとはいえないから、「甲第1号証に記載された発明に、甲第6号証に記載の技術事項を適用して遠隔操作に関する機能を付加することは、当業者が容易に想到できたことである」との申立人の主張は採用できない。
(4)小括
よって、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲6記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(本件発明2)
本件発明2は、本件発明1の構成に限定を加えて減縮したものであり、これらの請求項に係る発明は、上記「(1)」に示した[相違点2]に係る構成を有しているから、上記「(2)イ」に示した理由と同様の理由により、本件発明2は、甲1発明及び甲2~甲6記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(本件発明3)及び(本件発明4)
本件発明3及び本件発明4に係る発明は、本件発明1の「車両」の発明を、それぞれ「車両制御方法」、「車両制御プログラム」として記載した発明であって、上記「(1)」に示した[相違点2]に係る構成と同様の構成を有しているから、上記「(2)イ」に示した理由と同様の理由により、本件発明3、及び、本件発明4は、甲1に記載された発明及び甲2~甲6記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1~4を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~4を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700977