特許異議申立
2024-700762
樹脂ペレットの製造方法
- 審判番号
- 2024-700762
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-171432
- 登録番号
- 7432080
- 請求日
- 2024年08月14日
- 審決日
- 2024年12月26日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
- 【権利者】三菱ケミカル株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
- 【異議申立人】小松 純
- 審判長/審判官
- 審判長 里村 利光
- 審判官 西岡 貴央
- 審判官 井口 猶二
- 分類
- P1651.121-Y (B29B) / P1651.537-Y (B29B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7432080号発明「樹脂ペレットの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7432080号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7432080号の請求項1に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2018-171432号)は、平成30年9月13日に特許出願したものであって、令和6年2月7日にその特許権の設定登録がされ、令和6年2月16日に特許掲載公報が発行された。
本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和6年8月14日に、特許異議申立人 小松 純(以下「特許異議申立人」という。)から、請求項1に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明1」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
【請求項1】
ニーディングディスクが装着された1対のスクリューを有する二軸押出機を用いて、熱可塑性樹脂を溶融混練して樹脂ペレットを製造する方法であって、
熱可塑性樹脂がポリブチレンテレフタレート樹脂であり、
ニ―ディングディスクとして3条偏心ニーディングディスクを使用し、
3条偏心ニーディングディスクは、各辺の中央部が膨出する略三角形状のディスクであり、互いの角度間隔θが110°~130°である3つの頂部を有し、頂部における半径が0.4D~0.5D、各頂部間の中央部の半径が0.25D~0.38Dの範囲にあり、スクリュー軸に偏心量が0.01D~0.07D(Dはシリンダー内径)で偏心的に回転するように装着され、左右のスクリュー上のパドルは同方向に偏心しており、
スクリュー回転数が400~600rpm、スクリューの回転軸に設けられたトルク計から検出された又はモータの電流値から算出されたスクリュー軸トルクと、スクリュー中心間距離から算出されるスクリュー軸トルク密度が11~15Nm/cm3の条件で、溶融混練することを特徴とする樹脂ペレットの製造方法。
第3 特許異議申立ての概要
1 証拠方法
特許異議申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
甲第1号証:木村嘉隆,外4名,”二軸スクリュ押出機TEXにおける新分野対応“,日本製鋼所技報,2016年11月,67号,p.52-61
甲第2号証:特開昭60-208209号公報
甲第3号証:米国特許第4131371号
甲第4号証:米国特許第6783270号
甲第5号証:特開2012-213997号公報
甲第6号証:特開2012-504057号公報
甲第7号証:特表2002-535177号公報
甲第8号証:特開2002-154114号公報
以下、「甲第1号証」~「甲第8号証」をそれぞれ「甲1」~「甲8」という。
(当合議体注:令和6年8月14日に提出された証拠説明書によれば、甲3は米国特許第4824256号と記載されているが、特許異議申立書の記載(10頁下から3行~11頁下から5行)からみて、上記公報であることが明らかである。)
2 申立て理由の概要
特許異議申立人が主張する特許異議の申立て理由は、概略、以下のとおりである。
(1) 申立理由1:特許法29条2項(同法113条2号)
本件特許発明1は、当業者が甲1ないし甲8に記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。
(2) 申立理由2:特許法36条6項1号(同法113条4号)
本件特許発明1は、発明の課題が解決できることを認識することができないものである。)
(3) 申立理由3:特許法36条6項2号(同法113条4号)
本件特許発明1は、不明確である。
(申立理由1において、甲1は主引用文献である。また、甲2~甲8は副引用文献である。)
第4 甲1に記載された発明及び甲1~甲8に記載された技術事項
1 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。
なお、下線は当合議体が付与したものであって、引用発明の認定、判断等において活用した箇所を示す。以下同様である。
(1) 「二軸スクリュ押出機は主にプラスチックの溶融混練用途として開発され、プラスチック製造プロセスの開発及びプロセスの改良が盛んに行われる中大きく発展してきた。スクリュ回転速度やバレル設置温度のような運転条件を自由に変更できるといった二軸スクリュ押出機の持つ高いフレキシビリティと優れた混練性能により、近年はプラスチックの溶融混練用途だけに留まらず、界面活性剤の反応・脱揮濃縮といった化学反応を伴う新プロセスへの適用が進んでいる。」(52頁要旨1行~5行)
(2) 「1.諸言
二軸スクリュ押出機TEXシリーズは1978(昭和53)年に開発が始まって以来、主にプラスチックの溶融混練用途として使用されている。」(56頁左欄1~3行)
(3) 「4.2 ABS+SANコンパウンド
従来からABS/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styrene Resin)+SAN/スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂(Styrene Acrylonitrile Copolymer)の混練には二軸スクリュ押出機が使用されている。
・・・(中略)・・・
図11に実験装置概要を示す。実験は日本製鋼所製TEX54αIIIにて実施された。ABSとSAN原料は重量式フィーダにより定量的、連続的に二軸スクリュ押出機に供給される。ABSとSANの混練では押出機から混練品が押し出される際の樹脂温度と、サンプルペレットを評価用押出機によりシート化し、そのシート表面の単位面積当たりの100μm程度以上の未混練異物である通称ブツの数によって品質評価される。バンバリミキサ同等の混練を得るために使用されたのが写真3に示される偏芯3条ニーディングエレメントである。このスクリュエレメントはニーディングチップ部とバレル内面で発生する局部圧力を抑える効果を持っており、樹脂温度の上昇を抑制できる。また、高粘度のABSと比較的低粘度のSANを混練する場合、分散混練が難しいためスクリュ形状に注意が必要である。分散混練の指標は「τ=γ×η(せん断速度×せん断粘度)」で表されるせん断応力でありので、混練品の粘度を保つことがせん断応力を大きくし、分散能力を高める。SANの溶融が促進することによる原料の粘度低下がABSの混練を阻害するため、3条ニーディングエレメントを入れて、SANの粘度を保った状態でABSの混練が行えるようなスクリュ構成としている。
図12に偏芯3条ニーディングエレメントを組み込んだ場合と通常ニーディングエレメントを組み込んだ場合の押出樹脂温度を示す。また、スクリュ回転温度を変更した場合の樹脂温度も併せて示される。図12、偏芯3条ニーディングエレメントを組み込んだスクリュ形状の方が通常ニーディングエレメントを組み込んだスクリュ形状より樹脂温度を低下させる効果があることがわかった。また、スクリュ回転速度を低くした条件により、限界樹脂温度(290℃)以下を達成した。ここで、TEXシリーズの最新シリーズであるウルトラ高トルク二軸スクリュ押出機α-IIIでは回転速度を10%低減することができるため、樹脂温度を低下させることを可能とした。
図13にスクリュ形状とシート評価によるブツ数の関係を示す。同図にスクリュ回転速度とブツ数の関係も示される。偏芯3条ニーディングエレメントを組み込んだスクリュ形状によりブツ数の目標を達成できている。
従来のバッチミキサでの製品と同等の混練性能を得られたことで、このテスト結果が実機生産機へ展開された。これは日本製鋼所の特殊技術である偏芯3条ニーディングエレメントと世界最高レベルのトルクを持ったTEXα-IIIシリーズを用いて初めて達成された性能である。」(58頁左欄1行~59頁左欄9行)
(4) 「
[図:0001419366000001.jpg]
」
(5) 「
[図:0001419366000002.jpg]
[図:0001419366000003.jpg]
[図:0001419366000004.jpg]
[図:0001419366000005.jpg]
」
2 甲2の記載
甲2には以下の記載がある。
(1) 「第1図に図示した同方向回転式ダプルスクリューニーダは、ハウジング1を有し、該ハウジング1は、軸線方向に直列に配置され且つ互いにフランジ結合しているいくつかのハウジング部分、いわゆる筒部2, 3, 4から構成されている。ハウジング内には、互いに連通し軸線平行な2つの孔5, 6が形成されている。さらにハウジング1内には、孔5, 6の軸線7, 8に対して同心的に、伝動装置11を介してモータ12によって駆動される2つの軸9, 10が取り付けられている。・・・第3のハウジング筒部4には混練区帯が形成され、該混練区帯には、混練部20に統合される混練板21がそれぞれ軸9, 10に相対回転不能に配置されている軸9, 10の駆動は、回転方向を示す矢印22に対応して同方向に行なわれる。このような同方向回転式ダブルスクリューニーダの基本構成は公知であり、実際に広く用いられている。この場合、さらに他の混練装置を備えるハウジング筒部を設けることももちろん可能である。」(51頁右上欄14行~右下欄4行)
(2) 「第8図の実施例が第7図の実施例と異なる点は、両混練板21’がわずかな偏心率eでずれ、その結果軸線7’と8’が、頂部遊隙Sよりも小さい、もしくはこれに等しい量eだけ孔5, 6の軸線7, 8に対してずれていることである。このような偏心率eによって、第8図の孔5, 6の左方上部領域からわかるように、頂部25’eがハウジング壁27或は28のそばを通りすぎ、該ハウジング壁をも清浄することが可能になる。即ちこのような場合には、周囲全体が自動清浄されるシステムが得られる。」(52頁左下欄7行~17行)
(3) 「
[図:0001419366000006.jpg]
」
3 甲3の記載
甲3には以下の記載がある。
(1) 「Referring in FIG. 1, there is shown a conventional three-tipped twin screw apparatus for which is depicted the action of the screws on the process material. It will be seen that each screw 1 has three equiangularly disposed tips 2 which each wipe their associated bores 3 and propel the viscous material 4 in process as wedges down the bore. The bores 3 intersect at points 5 and 6, so that screws 1 interact and wipe each other. Also, the screws each rotate in the same direction, clockwise in this instance, although rotation can equally well be counter-clockwise if desired, around the geometric centers 7 of the individual bores. While three-tipped screws are detailed here, the screws can optionally have any number of tips as desired.」(7頁右欄45~58行)
(参考訳)
「図1を参照すれば、スクリューの材料への作用が示された従来の3条ツインスクリュー装置が示されている。各スクリュー1は、それぞれが関連するボア3を拭い、ウェッジがボアの下流に粘性材料4を推進する3つの等角度間隔で配置されたチップ2を有する点が理解される。ボア3は、点5および6で交差し、スクリュー1が互いにかみ合い、こすり合う。また、各スクリューは、対応するボアの中心7を中心に時計方向または所望なら時計反対方向に同方向に回転する。3条ツインスクリューは詳細に説明されるが、スクリューは、所望なら任意の条数を選択的に有することが可能である。」
(2) 「Referring to FIGS. 2A-2F, there is shown a twin screw, three-tipped apparatus according to this invention which resembles that of FIG. 1 in all respects except that the screws incorporate "short" tips, 32, 36 and 33, 37, i.e., those not scraping the bore wall. To achieve this, the screws are machined to have longitudinally staged eccentric cross-sections with respect to the bores so that dots 20 denote the geometric centers, or centroids, of successive transverse sections of the screws whereas crosses 21 denote the respective centers of rotation (and also the bore centers). For this embodiment, each screw cross-section has a congruent shape and size relative to the other screw, and the geometric centers 20 (and 20') are always a constant (and equal) distance from the centers of rotation 21 (and 21').
This eccentricity of the screws spaces tips 32, 36 and 33, 37 equal distances radially of, typically, one to several millimeters from their associated bore walls, whereas remaining tips 22 and 23 clear the bore walls at close clearance, typically, 0.2-0.3 % of the barrel diameter, over their full lengths and thereby collect the viscous material as gobs 25, 26 which thereafter transfer from one screw to the other via the bore intersection region as the screw tips sequentially wipe adjacent profiles of their co-acting mates.」(第7頁右欄67行~第8頁左欄23行)
(参考訳)
「図2Aないし図2Fを参照すれば、スクリューが『短い』チップ32, 36および33, 37、つまり、ボア面を擦らないチップを有する以外図1の装置と類似する本発明の3条ツインスクリュー装置が示されている。これを達成するため、スクリューはボアに対して長手方向に段付き偏心断面を有し、点20がスクリューの連続的な断面の中心、または重心となる一方、交差部21がそれぞれの回転中心(さらに、ボアの中心)となるように機械加工される。本実施形態において、各スクリュー断面は、他のスクリューに対して一致形状および大きさを有し、中心20(20') は、回転中心21(21') から常に一定である。
スクリューのこの偏心性は、チップ32, 36および33, 37と半径方向に等距離、代表的には、対応するボア壁に対して1ないし数ミリメートルをなす一方、残りのチップ22および23は、全体長さに亘って、代表的には、ボア壁とボア径の0.2ないし0.3%の間隔をなし、それにより、スクリューのチップが協働噛み合い部の隣接外形を漸次ワイプする際、ボアの噛み合い領域を介して1つのスクリューから他へと移送する片25, 26として粘性材料を集める。」
(3)「
[図:0001419366000007.jpg]
」
4 甲4の記載
甲4には以下の記載がある。
(1) 「The objective of the invention is to provide co-rating twin-screw extruders with new element geometry that can provide a greater flexibility in design of individual elements. The end geometry of known elements is limited by constant Up angle for all lobes. The known end geometry are limited to just a few possibilities for a given center distance to barrel diameter ratio ‘r’.」(第7頁左欄1~7行)
(参考訳)
「本発明の目的は、個々のエレメントの設計におけるより大きな柔軟性を可能とする新規な形状のエレメントを備えた同方向回転のツインスクリューの押出機を提供することにある。既知のエレメントの端部形状は、すべてのロブに対する一定の角度により制限される。既知の端部形状は、
バレル径に対する所与の中心距離比に対する2, 3の可能性を調整するのに制限される。」
(2) 「A twin-screw extruder having elements for processing thermoplastic, thermoset and other material, embodies a barrel with two parallel intersecting bores, two sets of co-rotating fully intermeshed extruder elements that are linked to each other in a non rotary manner forming a continuous chain, each operating in one of the bores, each screw being provided with multi-lobed elements that have geometry such that the tip angles are different for some of the lobes that range from two to infinity and these geometry are transformed in a cylindrical or helical or rotary manner with or without interruption to form various types of fractional elements for various operations defined in the specification.」(第7頁左欄20~32行)
(参考訳)
「熱可塑性、熱硬化性および他の材料を処理するためのエレメントを有するツインスクリューエレメントは、2つの平行な交差するボアを備えたバレルと、互いに連結し、非回転態様で噛み合う、2対の同方向に回転する押出機エレメントであって、無端チェーンを形成し、各々はボアの1つで稼働するものとを備え、各スクリューは、複数条数のエレメントを有し、複数条数のエレメントは、チップ角度は2から無限までに及ぶ他のロブのそれと異なり、かつ、これらの形状は、中断の有無に係わらず、円柱状または螺旋状または回転状で変形し、明細書内で定義された種々の作用のためのフラクショナルエレメントの種々のタイプを形成する。」
(3) 「The processing section of a twin-screw extruder shown in FIG.2 has segmented barrels ‘B’ and extruder elements ‘E’ [primarily conveying elements ‘E(C)’ and kneading elements ‘E(K)’]. A view of the extruder from the front shows tri-lobed elements located inside the intersecting parallel bores in FIG.1.」(第7頁左欄64行~第7頁右欄2行)
(参考訳)
「本発明の詳細な説明は、以下のとおりである。図2に示されるツインスクリュー押出機の処理部分は、分割バレルBと押出要素E(主に、搬送要素E(C) およびニーディング要素E(K)) を有する。押出機の正面は、図1の交差する平行ボア内に位置する3条エレメントを示す。」
(4) 「The eccentric tri-lobed shown in FIG. 7 is discussed in U.S. Pat. No. 4,824,256. The tip angle ti is constant across all the lobes of this geometry. FIG. 9 shows a rotated position of FIG.7.
The end geometry with unequal tip angle ‘t2’ and ‘t3’ shown in FIG. 8 is that of one of the fractional elements invented. The fractional element classified as 1.3.80 means that it is formed as a transition of a single-lobed and a tri-lobed geometry and the new geometry is one closer to the tri-lobed. FIG. 10 shows a rotated position.」(第7頁右欄12~21行)
(参考訳)
「図7に示される偏心的3条スクリューは、米国特許第4824256号に記載されている。チップ角度tiは、この形状のすべてのロブを通じて一定である。図9は、図7の回転した位置を示す。図8に示される異なるチップ角度t2 とt3 との端部形状は、発明されたフラクショナルエレメントの1つである。1.3.80として特定されるフラクショナルエレメントは、単一ロブと3条形状との移行として形成され、新規な形状は、3条により近いことを意味する。図10は、回転された位置を示す。」
(5) 「
[図:0001419366000008.jpg]
」
5 甲5の記載
甲5には以下の記載がある。
(1) 「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物ペレットの生産性を従来よりも高めるとともに、製造されたペレット中にモノフィラメントの集合体(未解繊ガラス繊維束)が残存する確率を非常に低くすることが可能なガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法を提供することにある。
・・・
【0025】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂の種類は特に限定されない。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリプロピレン、ポリアセタール、液晶性樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ナイロン66等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂の中でも特に、粘性の低いものほど、上記ガラス繊維束の未解繊の問題は生じやすい。粘性が低いと溶融状態ではせん断応力が発生し難くなり、モノフィラメントを収束したガラス繊維束は、解繊し難くなるからである。粘性の低い樹脂としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート、液晶性樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン66等が挙げられる。
・・・
【0030】
[混練工程]
混練工程では、可塑化工程後に、一束以上のガラス繊維束を押出機に供給して、上記ガラス繊維束を解繊しながら、解繊されたガラス繊維と可塑化工程で溶融した熱可塑性樹脂とを混練する。混練工程は、スクリュー2の搬送部22と混練部23とで行われる。搬送部22で使用するスクリューエレメントとしては、例えば、順フライトからなる搬送用のエレメントが挙げられる。また、混練部23で使用するスクリューエレメントとしては、逆フライト、シールリング、順ニーディングディスク、逆ニーディングディスク等のスクリューエレメントの組み合わせが一般的である。
・・・
【0035】
[押出工程、ペレット化工程]
ガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物がどのように押出され、どのようにペレット化されるかは特に限定されない。例えば、ダイ3から棒状に押出されたガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物を切断してペレット化することができる。なお、切断方法は特に限定されず、従来公知の方法を利用することができる。なお、押出工程における吐出量が吐出量Qにあたり、スクリューの回転数が回転数Nsにあたる。
【0036】
<スクリューエレメント>
従来のスクリューの混練部としては、逆フライト、シールリング、順ニーディングディスク、逆ニーディングディスク等のスクリューエレメントの組み合わせが一般的である。しかし、Q/Nsが大きい条件で、高吐出の場合、一部のガラス繊維束は解繊されず、未解繊のまま残存することになる。
・・・
【0062】
<ガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物ペレットの生産性>
スクリューで出力されるトルクを、隣り合うスクリュー間の芯間距離の3乗で割った値を、トルク密度と定義することで、押出機のサイズにかかわらず、トルク密度で、押出機の性能を規定することができる。
【0063】
本発明では、スクリューのトルク密度が、11(Nm/cm3)以上になるように設定する。トルク密度が11(Nm/cm3)以上になることで、押出機内の材料の充満率が高まり、エネルギー密度が小さくなり、回転数を、従来より高くしても温度上昇が低いという効果がある。また、好ましいトルク密度の範囲は13(Nm/cm3)以上18(Nm/cm3)以下である。」
(2) 「【図2】
[図:0001419366000009.jpg]
」
6 甲6の記載
甲6には以下の記載がある。
(1) 「【請求項1】
互いの軸が平行かつ距離aを隔てて配列された少なくとも2つの円筒形のハウジング穴を有するハウジングと、
第1の前記ハウジング穴および第2の前記ハウジング穴の中に配設され、直径がDで谷径がdである第1のスクリューおよび第2のスクリューを備える第1のスクリューシャフトおよび第2のスクリューシャフトと、
前記ハウジング穴の近傍に設けられ、前記ハウジング穴に通じる少なくとも2つの入口ホッパーであって、該入口ホッパーの少なくとも1つが前記ハウジング穴への側方入口を有する入口ホッパーとを有し、
前記第1のスクリューシャフトおよび前記第2のスクリューシャフトの各々は前記直径Dを前記谷径dで割ることによって定められる体積比が少なくとも1.4である押出機の動作方法であって、
処理される材料を、前記少なくとも2つの入口ホッパーを通して前記ハウジング穴に供給し、
前記入口ホッパーから前記押出機の出口まで前記材料を運搬し、
前記第1のスクリューシャフトおよび前記第2のスクリューシャフトのそれぞれを、少なくとも1000rpmの速度で、かつ前記第1のスクリューシャフトおよび前記第2のスクリューシャフトそれぞれにおける軸トルクを前記距離aの3乗で割ることによって定められるトルク密度を少なくとも8.5Nm/cm3として駆動する押出機の動作方法。」
(2) 「【0004】
剪断速度が増大すると混合および均質化の質が向上するが、剪断速度の増大は、比エネルギー要件および温度の増大をまねくと考えられる。この比エネルギー要件および温度の増大を釣り合わせるには、押出機内での材料の滞在時間を減らし、スループットを高めることが極めて重要である。スループットを高めるための手法は、押出機の体積比を高めることであり、最小の比トルク要件を著しく高めることによるものであった。押出機の体積比は、押出機の直径[D]をスクリューの谷径[d]で割った比として定義される。体積比の増大は押出機の充填能力を高めるが、トルク伝達能力に悪影響を及ぼす。押出機の比トルク[T/a3]とは、トルク[T]と二軸押出機の2つの軸間の中心距離[a]の3乗との比を指す。比トルク要件を高めるには、より高い出力のモータが必要とされ、それには、ギアボックス内部の他の部品およびトルク伝達システムを強化することが求められる。体積比および比トルクを増大するには、設計、材料、処置およびより高いレベルの安全性の組み合わせを含めて、様々な変更が必要とされる。
・・・
【0016】
前述の押出機の動作方法においては、押出機が少なくとも1.4の体積比を有し、体積比は、押出機の直径Dをスクリューの谷径dで割ることによって定められる。押出機は、ハウジング穴の近くに設けられ、ハウジング穴に通じる少なくとも2つの入口ホッパーを含み、入口ホッパーの少なくとも1つは、ハウジング穴への側方入口を有する。材料は、少なくとも1つの側方ホッパーを含むこれらのホッパーを通して押出機に供給される。押出機の動作方法はまた、第1のスクリューシャフトおよび第2のスクリューシャフトのそれぞれが、少なくとも1000rpmの速度で、かつ少なくとも8.5Nm/cm3のトルク密度で駆動される。」
(3) 「【図1】
[図:0001419366000010.jpg]
」
7 甲7の記載
甲7には以下の記載がある。
(1) 「【0001】
・・・
発明の属する背景分野
本発明は、一般に、押出機に関し、特に、プラスチック材及びプラスチック状材料に使用するためのスクリュー押出機に関する。
本発明の主要な用途は、カラーコンセントレート(濃厚顔料)、ポリマーブレンド、及びポリマーアロイ等の製造にある。
・・・
【0004】
スクリューは、供給材料を押出ダイに向けて搬送することに加えて、材料の混合を行うという機能をも果たす。一般に、「混合」とは、配合物の不均一を少なくする作用であると定義することができる。混合に関与する基本的な仕組みは、配合物の構成成分中に物理的運動を誘起することである。スクリュー押出機の作動において重要な2種のタイプの混合は、分配と分散である。分配性混合(以下、単に「分配混合」と称する)は、粒子のサイズを減小させることなく(即ち、破砕することなく)粒子の空間的分配のランダム性を増大させるために用いられる。一方、分散性混合(以下、単に「分散混合」と称する)とは、凝集性粒子の位置をランダム化するとともに凝集性粒子のサイズを減小させる(即ち、破砕する)作用のことである。分散混合においては、凝集塊又は凝集物のような固形成分、又は高粘性の液体粒子又は液滴が、それらにそれらの降伏応力を超える応力を与えるのに十分に高い応力に露呈される。それによって、固形成分又は液体粒子は、より小さい粒子に細分又は破砕される。凝集塊を解体する(さばく、ばらばらにする)のに要する応力の大きさは、それらの凝集塊のサイズ及び形状、及び、凝集塊を結合又は凝集状態に保持している結合の性質によって決まる。加える応力は、剪断応力であっても、延伸(引張)応力であってもよいが、分散作用を与えるには剪断応力よりも延伸応力の方が効果的である。
・・・
【0056】
図4は、図1の線A-Aに沿ってみたスクリュー押出機10の断面図である。バレル18は、バレルの内面によって画定される中心内孔26を囲うバレル壁24を有する。この実施形態では、中心内孔26は、円筒形であり、単一の押出機スクリュー28を備えているが、本発明は2つ以上の押出機スクリューにも適用することができ、その場合は、内孔26の断面は、多数の円又は楕円がオーバーラップした形状とすることができる。
【0057】
スクリュー28の羽根30は、この実施形態では、中心軸34の円周の周りに90°間隔で配置された4枚の羽根として示されているが、羽根の数は、2枚、3枚、5枚、6枚などと必要に応じて変更することができ、羽根の軸34の円周周りの位置も変更することができることは当業者には明らかであろう。ただし、それらの羽根30は、軸34にかかる力をバランスさせて軸の撓み又は歪みを防止するために軸34の円周の周りに対称的に配置することが望ましい。
・・・
【0090】
図10は、従来技術におけるように二軸スクリュー押出機の一方のスクリュー軸の混練櫂の形状を示す。これに対して、図11は、中心軸線104上に心合させた分散用ディスク102を有する、単軸スクリュー押出機に適用するための本発明の好ましい第2実施形態100(スクリュー押出機)を示す。
・・・
【0100】
又、本発明は、多軸スクリューを備えたスクリュー押出機にも適用することができる。本発明を適用する二軸スクリュー押出機は、同方向に回転するスクリューを備えた同方向回転式であってもよく、対向回転するスクリューを備えた対向回転式であってもよい。更に、3軸、4軸スクリュー押出機であってもよく、円形に配列された10個のスクリューを備えたスクリュー押出機であってもよい。どのようなタイプのスクリュー押出機であっても、上述した本発明の好ましい各実施形態を用いることによって分散混合作用を改善することができる。上述した断面輪郭を有する羽根を用いることによって高応力領域の数を増やすことは、単軸スクリュー押出機を始め、あらゆる多軸スクリュー押出機に適用することができる有用な技術である。従って、本発明は、上述した各例に加えて、他のいろいろな変更及び改変が可能である。」
8 甲8の記載
甲8には以下の記載がある。
(1) 「【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の1つの主要な目的は、難燃性、機械的物性及び色調に優れるだけでなく、高温高湿環境下に長時間曝露された場合においても、機械的物性及び色調の低下が極めて少ない、有機リン化合物を難燃剤として含有する難燃性ポリカーボネート難燃樹脂組成物を製造することができる方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、難燃性、機械的物性及び色調に優れるだけでなく、高温高湿環境下に長時間曝露された場合においても、機械的物性及び色調の低下が極めて少ない有機リン化合物を難燃剤として含有する難燃性ポリカーボネート難燃樹脂組成物を製造する方法を開発すべく鋭意研究を重ねた。その結果、驚くべきことに、主としてポリカーボネートからなる樹脂成分、及び有機リン化合物をスクリュー押出機を用いて混練しながら押出して難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を製造する方法であって、該有機リン化合物の酸価が0.1mgKOH/g以下であり、且つ該押出しを、該押出機中の樹脂の温度が300℃以下であって、押出機における該樹脂成分の滞留時間が40秒以下である条件下で行うことを包含する方法によって、上記の優れた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を製造することができることを見出した。この新しい知見に基づき本発明を完成したものである。
・・・
【0054】本発明の方法においては、上記押出機として、2軸押出機を使用することが好ましく、同方向回転かみ合い型2軸押出機が最も好ましく使用される。同方向回転かみ合い型2軸押出機では、左右のスクリュー軸がお互いに噛み合うことによりセルフクリーニング効果が得られ、且つ樹脂原料の押出機内滞留時間を短くすることができ、優れた樹脂輸送性能、混練性能、脱揮性能を持つので、押出機として本発明で好ましく使用される。特に、高トルク対応型であり且つ高回転のスクリュー回転数が得られる2軸押出機を使用するのが、生産速度を向上でき、混練の際の溶融樹脂温度を低減できるので特に好適に使用することができる。更に、好ましくは300rpm以上、より好ましくは400rpm以上、さらに好ましくは500rpm以上のスクリュー回転数が得られる押出機が好ましい。
【0055】本発明の方法で使用される押出機として特に好ましい例としては、東芝機械工業(株)より製造されているTEM-SSシリーズ、ドイツ国、Werner&Pfleiderer社より製造されているZSK-MCシリーズ、日本製鋼所(株)より製造されているTEXSuper α-IIシリーズを挙げることができる。本発明で用いる押出機は、図1の押出機のシリンダーブロックB1~B9のような、複数のシリンダーブロックが連結されてなるシリンダー状バレル(以下、屡々、単に「シリンダー」と称す)を有する。また、本発明の方法では、2軸押出機の押出機スクリュー構成(スクリュープロファイル)を押出機スクリュー要素(スクリューエレメント)の組み合えにより自在に選択でき、且つ、押出機のシリンダーの温度が各シリンダーブロック毎に制御できる2軸押出機を好適に使用することができる。このような押出機を用いて、スクリュープロファイルや押出機内の温度分布を適宜選択することにより、上記ゾーン(a) 、(b) 及び(c) の長さを調節したり、上記のゾーンI や混練を行うための領域IIを押出機内に形成することができる。
・・・
【0084】樹脂成分の押出機内滞留時間は、各成分の供給速度、スクリュー回転数、押出機のL/D(長さ/直径比)、押出機ダイ部分の空間容積等の因子に特に影響を受ける。本発明において樹脂成分の押出機内滞留時間を短縮するためには、押出機のL/Dは原材料の十分な溶融混練が得られる範囲においてできるだけ小さくすることが好ましく、L/Dは25~50の範囲にあることが好ましく、より好ましくは30~45であり、更に好ましくは35~40である。また、押出機ダイ部分の空間容積も可能な限り小さくし、樹脂の滞留時間の増大を防ぐことが好ましい。
【0085】また、各成分の供給速度や押出機スクリュー回転数に関しても、上記の押出機内滞留時間となるように適宜選択する。押出機への各成分の供給速度は、押出機の処理能力に制限されるが、可能な限り各成分の供給速度を高めることにより、溶融樹脂温度を低減でき、さらに押出機内の樹脂成分の滞留時間を短縮できるので好ましい。一方、押出機スクリューの回転数は一般に高回転であるほど樹脂成分の押出機内滞留時間を短縮できるが、押出機スクリューの回転数を増大させると樹脂のせん断発熱が顕著となり、過度の溶融樹脂の温度上昇は得られる樹脂組成物の物性や色調に対して悪影響を及ぼすので、溶融樹脂温度を考慮して押出機のスクリュー回転数を選択するのが好ましい。
【0086】本発明の方法として好適な例である図1に示すスクリュー構造を有する押出機を用いる方法においては、該有機リン化合物の配合により溶融樹脂の可塑化を容易にし、且つ溶融樹脂の粘度を低減できるので、溶融混練におけるせん断発熱による過度の溶融樹脂温度の上昇を抑制することができる。そのため、押出機スクリューの回転数が比較的に高い押出機の運転条件で難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を生産することが可能となる。押出機のスクリュー回転数を高くすることは溶融樹脂の搬送能力を高めこれにより押出機内滞留時間を短くすることができるので、耐高温高湿特性に優れた樹脂組成物を高い生産速度で製造する上で特に好ましい。
・・・
【0092】また、本発明の方法では、樹脂組成物を製造する際の比エネルギー(単位:kW・hr/kg)を0.13~0.20kW・hr/kgの範囲とすることが好ましく、これにより機械的強度及び色調に優れ、かつ燃焼時の燃焼物の滴下防止機能に優れた難燃性樹脂組成物を得ることができる。ここで、比エネルギーは、該難燃性樹脂組成物を1kg/hrの速度で製造するために消費されるスクリュー押出機運転モーターの出力(kW)で表され、樹脂の混練の程度を表す尺度である。比エネルギーが0.13kW・hr/kg未満の場合は樹脂組成物の混練が不充分であり、目的とする樹脂組成物の性能が低下する傾向にある。
【0093】一方、比エネルギーが0.20kW・hr/kgを越える場合は、溶融混練の際のせん断発熱が大きく、溶融樹脂の温度が必要以上に上昇するため、樹脂組成物の着色が顕著になるばかりか、樹脂組成物の耐衝撃性やのび特性等が低下し、さらに燃焼物滴下防止機能も低下する傾向にある。本発明の方法では、好ましい比エネルギーは0.135~0.18kW・hr/kgであり、さらに好ましくは0.14~0.17kW・hr/kgであり、最も好ましいのは0.145~0.16kW・hr/kgの範囲である。比エネルギーは、押出機のスクリュー構成、スクリュー回転数、各成分の供給速度、シリンダー設定温度、さらには、樹脂の分子量、配合組成比等を適宜選択して制御することができる。
・・・
【0097】さらに本発明の方法では、押出機のスクリュー回転数が高回転であるほど樹脂組成物中のフルオロポリマーの分散性が向上し、優れた燃焼物滴下防止機能を有する樹脂組成物を得ることができる傾向にある。押出機のスクリューの回転数は200~1,500rpmが好ましく、より好ましくは300~1,000rpm、更に好ましくは400~800rpmである。しかしながら、一方で、スクリュー回転数の増大と共に混練時の溶融樹脂の発熱が増大し、樹脂組成物の色調や機械的物性を低下させるので、スクリュー回転数は、押出機中の樹脂温度、各成分の供給速度、比エネルギー等を考慮して決定される。」
9 甲1に記載された技術事項及び甲1に記載された発明(甲1発明)
上記1によれば、甲1には次の技術事項が記載されていると認められる。
(1) 偏芯3条ニーディングエレメント
甲1の写真3(上記1(5))から、甲1に記載の「偏芯3条ニーディングエレメント」は、各辺の中央部が膨出する略三角形状であること及び略正三角形であることから、互いの角度間隔θが略120°である3つの頂部を有すること。
(2) ペレット及びペレットの製造方法
ア 甲1の図11(上記1(5))には、二軸スクリュ押出機TEX54αIII、ストランドバス及びペレタイザーからなる実験装置が記載されているところ、当該実験装置についての「ABSとSANの混練では押出機から混練品が押し出される際の樹脂温度と、サンプルペレットを評価用押出機によりシート化」(上記1(3))との記載によれば、甲1は、上記二軸押出機を用いた混練により、ABSとSANの「ペレット」を製造する製造方法を開示していること。
イ 上記1(1)「二軸スクリュ押出機は主にプラスチックの溶融混練用途として開発され、プラスチック製造プロセスの開発及びプロセスの改良が盛んに行われる中大きく発展してきた」の記載、及び上記1(2)の「二軸スクリュ押出機TEXシリーズは1978(昭和53)年に開発が始まって以来、主にプラスチックの溶融混練用途として使用されている。」との記載から、二軸スクリュ押出機TEX54αIIIは、ABSとSANを「混練」のみならず「溶融」もするものであること。
(3) 甲1発明
甲1の上記1(1)~(5)の記載並びに上記(1)及び(2)ア~イの技術事項を総合すると、甲1には、以下に示すペレットの製造方法の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、甲1発明における括弧内の記載は認定根拠(箇所)を示すものである。
「偏芯3条ニーディングエレメントを組み込んだ、二軸スクリュ押出機である日本製鋼所製TEX54αIIIを用い(上記(2))、
偏芯3条ニーディングエレメントは、各辺の中央部が膨出する略三角形状であり、互いの角度間隔θが120°である3つの頂部を有し(上記(1))、
ABS/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂+SAN/スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂を溶融混練し、ペレットを製造する(上記1(3))、
ペレットの製造方法(上記(2))。」
第5 当審の判断
1 申立理由1(進歩性)について
(1) 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
ア 3条偏心ニーディングディスク
甲1発明の「偏芯3条ニーディングエレメント」は、本件特許発明1の「3条偏心ニーディングディスク」に相当する。
また、甲1発明の「偏芯3条ニーディングエレメント」は、「各辺の中央部が膨出する略三角形状であり、互いの角度間隔θが120°である3つの頂部を有」する形状であるから、本件特許発明1の「3条偏心ニーディングディスクは、各辺の中央部が膨出する略三角形状のディスクであり、互いの角度間隔θが110°~130°である3つの頂部を有し」という要件を満たす。
イ 熱可塑性樹脂
甲1発明の「ABS/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂」及び「SAN/スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂」が熱可塑性樹脂であることは技術的に明らかである。
したがって、甲1発明の「ABS/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂」及び「SAN/スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂」は本件特許発明1の「熱可塑性樹脂」に相当する。
ウ 二軸押出機
甲1発明の「二軸スクリュ押出機である日本製鋼所製TEX54αIII」は、「偏芯3条ニーディングエレメント」を「組み込ん」でいる「二軸スクリュ押出機」であるから、偏心3条ニーディングエレメントが装着された一対のスクリュを有することは明らかである。
そうすると、甲1発明の「二軸スクリュ押出機である日本製鋼所製TEX54αIII」は、本件特許発明1の「ニーディングディスクが装着された1対のスクリューを有する二軸押出機」に相当する。
また、甲1発明は、「ABS/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂」及び「SAN/スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂を溶融混練し、ペレットを製造する」ものであるから、本件特許発明1の「熱可塑性樹脂を溶融混練して樹脂ペレットを製造する」という要件を満たす。
エ 樹脂ペレットを製造する方法(樹脂ペレットの製造方法)
甲1発明のペレットの製造方法は、「偏芯3条ニーディングエレメントを組み込んだ、二軸スクリュ押出機である日本製鋼所製TEX54αIIIを用い」て、「ABS/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂+SAN/スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂を溶融混練し、ペレットを製造する」ものである。
上記ウの対比結果と併せれば、本件特許発明1と甲1発明は、「ニーディングディスクが装着された1対のスクリューを有する二軸押出機を用いて、熱可塑性樹脂を溶融混練して樹脂ペレットを製造する方法(樹脂ペレットの製造方法)であって、」「ニ―ディングディスクとして3条偏心ニーディングディスクを使用」する点で共通する。
(2) 一致点及び相違点
上記ア~エによれば、本件特許発明1と甲1発明は、以下の点で一致し、
(一致点)
「ニーディングディスクが装着された1対のスクリューを有する二軸押出機を用いて、熱可塑性樹脂を溶融混練して樹脂ペレットを製造する方法であって、
ニ―ディングディスクとして3条偏心ニーディングディスクを使用し、
3条偏心ニーディングディスクは、各辺の中央部が膨出する略三角形状のディスクであり、互いの角度間隔θが110°~130°である3つの頂部を有する、
樹脂ペレットの製造方法。」
以下の点で相違する。
(相違点1)
本件特許発明1は、「溶融混練」をする「熱可塑性樹脂」が、「ポリブチレンテレフタレート樹脂」であるのに対して、
甲1発明は、「ABS/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂」及び「SAN/スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂」である点。
(相違点2)
本件特許発明1は、「3条偏心ニーディングディスク」が、「頂部における半径が0.4D~0.5D、各頂部間の中央部の半径が0.25D~0.38Dの範囲にあり、スクリュー軸に偏心量が0.01D~0.07D(Dはシリンダー内径)で偏心的に回転するように装着され、左右のスクリュー上のパドルは同方向に偏心」しており、また、
「スクリュー回転数が400~600rpm、スクリューの回転軸に設けられたトルク計から検出された又はモータの電流値から算出されたスクリュー軸トルクと、スクリュー中心間距離から算出されるスクリュー軸トルク密度が11~15Nm/cm3の条件で、溶融混練するものであるのに対し、
甲1発明は、「偏芯3条ニーディングエレメント」の頂部における半径、各頂部間の中央部の半径、スクリュー軸の偏心量、偏心の方向が特定されておらず、また、「スクリュー回転数」及び「スクリュー軸トルク密度」が不明である点。
(3) 判断
ア 相違点1及び2の技術的関連性について
本件特許発明1の課題について、本件明細書の段落【0011】には、「本発明の樹脂ペレットの製造方法によれば、樹脂の溶融を促進し、高吐出条件での樹脂の溶融特性が優れ、樹脂温度を低くすることが可能となる。そして、本発明の樹脂ペレットの製造方法は、色調が良好な樹脂ペレットを、高吐出量で生産性よく製造することができる。このような本発明の効果は、3条偏芯ニーディングディスクを使用していることにより伸長流動が発生し、低い温度で効率的に樹脂を溶融することができるものと考えている。」と記載されている。(注:下線は当合議体が付した。)
また、本件明細書の段落【0028】~【0050】に記載の実施例は、ポリブチレンテレフタレートを溶融混練する場合において、所定形状の3条偏心ニーディングディスクを用い、スクリュー回転速度を400~600rpmとし、スクリュー軸トルク密度を、一般的な押出機において許容される最大トルクの約90%の範囲内に収まる11~15Nm/cm3に最適化することによって本願の上記課題が解決できることを示していると理解できる。
本件明細書の上記各記載を踏まえると、溶融混練の対象であるポリブチレンテレフタレートと、本件特許発明1の、3条ニーディングディスクの各諸元並びにスクリュー回転数及びスクリュー軸トルク密度は、本件特許発明1の課題を解決するにあたって相互に密接に関連した事項であることは当業者に自明である。
そこで、以下では、相違点1及び2の上記技術的な関連性に鑑み、まとめて検討する。
イ 判断
甲1~甲8には、上記「第4 1~8」に示したとおりの記載がある。しかしながら、これらの文献には、いずれも本件特許発明1において限定された特定の熱可塑性樹脂(ポリブチレンテレフタレート)との関連で、3条偏心ニーディングディスクの各諸元並びにスクリュー回転数及びスクリュー軸トルク密度の一部の条件は開示されているものの、これらを組み合わせて、本件特許発明1における上記相違点1及び2に係る構成にすることについて記載も示唆もない。すなわち、甲1発明において、ABS/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂及びSAN/スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂に替えて、ポリブチレンテレフタレートを溶融混練すること、さらには3条偏心ニーディングディスクの各諸元及びスクリュー回転数及びスクリュー軸トルク密度が特定の数値範囲とすることの動機づけとなり得る記載は、甲1~甲8のいずれの文献にもない。
加えて、本件明細書に記載された各実験例及び比較実験例の実験結果(【表1】~【表4】等)によれば、従来の2条の通常のニーディングディスクを用いた場合は色調が悪い樹脂ペレットしか製造できない一方、熱可塑性樹脂としてポリブチレンテレフタレートを用い、3条偏心ニーディングディスクの各諸元及びスクリュー回転数及びスクリュー軸トルク密度を特定の数値範囲とした本件特許発明1においては、色調が良好で、生産性よく樹脂ペレットを製造することができるという当業者が予測することができない顕著な効果が奏されることが理解される。
よって、甲1発明において、甲1~甲8に記載された事項に基づき、上記相違点1及び2に係る構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。
ウ 特許異議申立人の主張について
(ア) 特許異議申立人は、概略、以下の点を主張している。
本件特許発明において、3条偏心ニーディングスクリューの各諸元の数値範囲の設定と、スクリュー回転数及びスクリュー軸トルク密度の数値範囲の設定との間に本件特許発明の課題との関係で技術的な関連性はなく、前者(上記各諸元)については甲1に、後者(回転数及びスクリュー軸トルク密度)については甲5及び甲6に示されるように周知技術であるから、本件特許発明1は、当業者が容易に想到し得たものである点(異議申立書45頁(g))
(イ) 判断
上記主張について検討する。
上記(2)アで説示したとおり、本件特許発明の課題は、上記相違点1及び2の構成を組み合わせることにより実現されるものであることが本件明細書の記載から理解される。
したがって、上記主張は採用できない。
そして、甲1発明に、甲1~甲8に記載された技術事項を組み合わせて、相違点1及び2に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者といえども容易になし得たことではない。
(4) 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1に記載された発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠に記載された事項に基づいても当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 申立理由2(サポート要件)について
(1) 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、本件特許発明1のサポート要件について、概略、以下の主張をしている。(特許異議申立25頁32行~29頁24行)。
ア 請求項1には、本件特許発明の課題を達成するのに必要な構成要件といえる、一対のニーディングスクリューの軸方向の態様、ニーディングスクリューのチップとシリンダー内面とのクリアランス及び一対のニーディングスクリュー間のクリアランスが規定されていない(以下「主張ア」という。)。
イ 高重量%の添加剤を添加する場合には、それにより、加熱条件、混練条件が変動するのは明らかであり、これらの条件が熱劣化抑制と高吐出量の生産性向上を両立するという本件特許発明の課題を解決するために必要とされる、3条偏心ニーディングディスクの各諸元、スクリュー回転数、スクリュー軸トルク密度、樹脂温度の各数値範囲に影響を及ぼすのは明らかであるから、本件特許発明1は、当業者にとって課題を達成可能であるとの認識を超える範囲のものである(以下「主張イ」という。)。
ウ 本件特許発明1では、3条偏心ニーディングディスクの諸元、スクリュー回転数およびスクリュー軸トルク密度の数値範囲は互いに独立に規定されているが、これらは本件特許発明の課題を達成するうえで、互いに影響を及ぼし合い、たとえば、3条偏心ニーディングディスクの諸元が数値範囲の上限寄りであれば、スクリュー回転数またはスクリュー軸トルク密度がそれぞれの数値範囲の下限寄りの値を選択する必要がある等何らかの相関関係があるのは明らかである(以下「主張ウ」という。)。
(2) 判断
上記主張ア~ウの検討に先立ち、本件特許発明1がサポート要件を満たすかについての当合議体の判断を示す。
ア 本件特許発明が解決しようとする課題
本件明細書の【0005】及び【0011】等の記載からみて、本件特許発明1が解決しようとする課題は、色調が良好な樹脂ペレットを、高吐出量で生産性よく製造することができる樹脂ペレットの製造方法を提供すること(以下「本件課題」という。)、であると認められる。
イ 判断
本件明細書等には、本件課題を解決するための手段について、以下の記載がある。
「【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記した課題を解決するために鋭意検討した結果、ニーディングディスクとして三条偏心ニーディングディスクを使用し、スクリュー回転数を400~600rpmの範囲とし、且つスクリュー軸トルク密度を11~15Nm/cm3の条件で、溶融混練することにより、上記課題が解決することを見出した。」(【0006】)、
「さらに、本発明において、熱可塑性樹脂は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂またはポリアミド樹脂であることが好ましい。」(【0010】)
「【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂ペレットの製造方法によれば、樹脂の溶融を促進し、高吐出条件での樹脂の溶融特性が優れ、樹脂温度を低くすることが可能となる。そして、本発明の樹脂ペレットの製造方法は、色調が良好な樹脂ペレットを、高吐出量で生産性よく製造することができる。」(【0011】)
と記載されている。
加えて、本件明細書等には、好ましい3条偏心ニーディングディスクの形状、スクリュー軸トルク密度、スクリュー回転数について、以下の記載がある。
「スクリュー2、2’には、3条のニーディングディスク3、3’が装着されている。
ニーディングディスク3、3’は、図1に示すように、3つの頂部(チップ)T1、T2、T3を有する略三角形状をしている。3つの頂部(チップ)T1、T2、T3の互いの角度間隔θが110°~130°となっていることが好ましく、115°~125°であることがより好ましく、θが略120°の等角度間隔である略三角形状であることが特に好ましい。
そして、ニーディングディスク3、3’は、その3つの頂部T1、T2、T3を結ぶ各辺(フランク)が外向きの弧を描いて中央部が膨出する略三角形状であることが好ましい。」(【0016】)、
「ニーディングディスク3、3’は、頂部における半径Da(3条ニーディングディスクの幾何中心yから頂部Tまでの距離)が0.4D~0.5D(Dはシリンダー内径)の範囲にあることが好ましく、また、各頂部T1、T2、T3間のフランクの中央部kにおける半径Dk(3条ニーディングディスクの幾何中心yから中央部kまでの距離。yから最も短い距離)が0.25D~0.38Dの範囲にあることが好ましい。
頂部(チップ)Tのチップ巾dTは、0.02D~0.08Dであることが好ましい。」(【0017】)、
「そして、ニーディングディスク3、3’は、スクリュー2、2’のスクリュー軸に偏心的に回転するように装着されている。その偏心量e(スクリューの回転中心xからニーディングディスクの幾何中心yまでの距離)は、0.01D~0.07D(Dはシリンダー内径)であることが好ましい。偏心はニーディングディスク3と3’が2つのスクリュー軸を結ぶ方向に同方向に偏心していることが好ましい。」(【0018】)
「本発明の方法では、スクリュー軸トルク密度を11~15Nm/cm3の範囲になるようにして溶融混練する。トルクをこのような範囲とすることで高吐出量となり滞留時間を短くすることができる。スクリュー軸トルク密度は、好ましく12~15Nm/cm3である。
トルクを検出するには、スクリュー2、2’の回転軸に軸端式トルク計を設けたり、スクリュー2、2’の回転軸や、減速機のような関連する回転部材に歪み計を設けるようにして検出すればよい。またモーターの電流値と電圧からトルクを求めることができる。」(【0022】)
「また、本発明の方法では、スクリュー回転数を400~600rpmの範囲とする。スクリュー回転数をこのような範囲とすることで滞留時間を短くでき熱劣化を抑制することができる。スクリュー回転数は、下限は450rpm以上であるのが好ましく、また上限は550rpm以下であるのが好ましい。」(【0023】)
「本発明の製造方法が適用される熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、・・・がいずれも使用できる。これらの樹脂は単独で使用することも、2種以上を併用することも可能である。
このような熱可塑性樹脂の中でも、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂等のエンジニアリングプラスチックスと称される熱可塑性樹脂は、押出機での溶融混練温度が高いため、色調の悪化が起こりやすいので、本発明の効果が大きいので好ましい。」(【0025】)
さらに、本件明細書等には、、熱可塑性樹脂としてポリブチレンテレフタレート樹脂を用い、かつ、上述した好ましい偏心3条ニーディングディスクの形状、スクリュー回転数、スクリュー軸トルク密度等を満たす実施例1~3においては、高い吐出量で色調が優れた樹脂ペレットが製造できるとの評価結果が記載されている(【0028】~【0045】(特に【0033】【表1】~【0037】【表2】等の実験結果を参照。))。
以上の各記載に接した当業者であれば、
「ニーディングディスクが装着された1対のスクリューを有する二軸押出機を用いて、熱可塑性樹脂を溶融混練して樹脂ペレットを製造する方法であって、
熱可塑性樹脂がポリブチレンテレフタレート樹脂であり、
ニ―ディングディスクとして3条偏心ニーディングディスクを使用し、
3条偏心ニーディングディスクは、各辺の中央部が膨出する略三角形状のディスクであり、互いの角度間隔θが110°~130°である3つの頂部を有し、頂部における半径が0.4D~0.5D、各頂部間の中央部の半径が0.25D~0.38Dの範囲にあり、スクリュー軸に偏心量が0.01D~0.07D(Dはシリンダー内径)で偏心的に回転するように装着され、左右のスクリュー上のパドルは同方向に偏心しており、
スクリュー回転数が400~600rpm、スクリューの回転軸に設けられたトルク計から検出された又はモータの電流値から算出されたスクリュー軸トルクと、スクリュー中心間距離から算出されるスクリュー軸トルク密度が11~15Nm/cm3の条件で、溶融混練することを特徴とする樹脂ペレットの製造方法。」
との特定事項を備えた本件特許発明1によれば、本件課題が解決できることを十分に認識できるというべきである。
したがって、本件特許発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものである。
ウ 主張ア~ウについて
上記主張ア~ウは、要するに、本件課題の解決に影響を及ぼし得る事項(条件)として、一対のニーディングスクリューの軸方向の態様、ニーディングスクリューのチップとシリンダー内面とのクリアランス及び一対のニーディングスクリュー間のクリアランス(主張ア)や、加熱条件、混練条件(主張イ)及び本件特許発明における各数値範囲の関連性(主張ウ)に着目し、これらの事項が本件特許発明1の構成として反映されていないことを根拠に、本件特許発明1がサポート要件を満たさない旨の主張と解される。
しかしながら、樹脂ペレットの製造は、もとより様々な条件下で製造されることが想定されたものであることは技術常識といえるところ、本件特許発明1は、本件明細書の段落【0011】に記載された作用機序(技術思想)を前提として、3条偏心ニーディングディスクの諸元、スクリュー回転数及びスクリュー軸トルク密度を最適化して、本件課題が解決できるように創意工夫した発明と理解することができるのであって、上記主張ア~ウにおいて着目した諸条件が本件課題の解決において何らかの影響を及ぼすとしても、ひとたび熱可塑性樹脂の材料として「ポリブチレンテレフタレート樹脂」を選択した場合において、本件特許発明1で特定された各数値範囲を満たすように条件設定を行えば、従来の技術とは異なり、本件課題を解決できることは、本件明細書等の記載に接した当業者であれば十分認識し得ることである。
したがって、上記主張ア~ウは、いずれも採用すべき理由がない。
(3) 小括
したがって、申立理由2は採用できない。
3 申立理由3(明確性要件)について
(1) 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、本件特許発明1について、概略、以下の主張をしている。(特許異議申立書22頁4行~25頁31行)。
ア 本件特許発明の課題が不明確である。
イ 本件特許発明の作用効果について、その技術的意義が不明確である。
ウ 請求項1に規定される構成要件には、課題を達成するうえで必要な構成要件が明らかに不足するとともに、多義的記載であるゆえに、技術的意義が不明であり、発明が不明確である。
(2) 判断
上記主張ア~ウは、本件特許発明1の課題及び作用効果が不明確であることを前提とした主張であるところ、当該課題は、上記1(2)ア(下線部)に示したとおり、本件明細書の記載から明確に理解することができる。
したがって、上記主張はその前提を欠くから採用できない。
ところで、特許異議申立人の上記主張は、本件特許発明1の課題が本件明細書において十分具体的に記載されていない(例えば、どの程度の樹脂温度であれば熱劣化が防止できるか、どの程度の吐出量であれば生産性の向上となるか等)ことから、本件特許発明1の発明特定事項の技術的意味を当業者が理解できず、さらに、出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかであるため、発明が不明確であるという趣旨のものと一応善解することができるから、このような観点からも検討しておく。(特許・実用新案審査基準 第II部 第2章 第3節2.明確性要件の判断 2.2明確性要件違反の類型(2)b)
本件特許発明1において、熱可塑性樹脂の材料が限定されるとともに、3条偏心ニーディングディスクの各諸元及びスクリュー回転数及びスクリュー軸トルク密度が特定の数値範囲に限定されていると、樹脂温度や吐出量がある程度の範囲内に収まることは、本件明細書の各実験例に関する記載(例えば、【表1】等)から明らかといえる。したがって、これらの事項が具体的に請求項1において特定されていないことをもって直ちに発明特定事項が不足しているとはいえない。そして、そもそも本件特許の請求項1の記載は、上記第2のとおりであり、それ自体に不明確な記載はない。そして、本件特許の請求項1が特定する事項が本件特許発明1において果たす働きや役割は、本件明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮すれば理解できるものである。
よって、本件特許の請求項1が特定する事項の技術的意味は不明確ではない。
その他、特許異議申立人は上記(1)の主張に関連して縷々主張するが、いずれも本件特許発明1が明確である、との上記判断を左右するものではない。
(3) 小括
したがって、申立理由3は採用できない。
第6 むすび
以上より、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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