特許異議申立
2024-700518
メタン富化ガス組成物の製造のためにCO2含有産業ガスを使用する方法
- 審判番号
- 2024-700518
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-524336
- 登録番号
- 7391092
- 請求日
- 2024年06月03日
- 審決日
- 2025年02月26日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】エレクトロハエア・ゲーエムベーハー
- 【権利者代理人】村山 靖彦
- 【権利者代理人】実広 信哉
- 【権利者代理人】阿部 達彦
- 【異議申立人】吉田 真理奈
- 審判長/審判官
- 審判長 上條 肇
- 審判官 荒木 英則
- 審判官 中根 知大
- 分類
- P1652.121-YAA(C12P) / P1652.537-YAA(C12P)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第4号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
結論
結 論
特許第7391092号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。
特許第7391092号の請求項1~13に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯及び証拠方法
1.手続の経緯
特許第7391092号(請求項の数14。以下、「本件特許」という。)についての出願は、2019年(令和1年)10月28日(パリ条約による優先権主張 2018年(平成30年)10月29日 (DE)ドイツ)を国際出願日とする出願であり、令和5年11月24日にその特許権の設定登録がされ、令和5年12月4日に特許掲載公報が発行され、その後、令和6年6月3日に、その請求項1~13に係る特許を対象として特許異議申立人 吉田真理奈(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。
以降の主な手続きは以下のとおりである。
令和6年 8月27日付け 取消理由通知
令和6年12月 3日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提
出
令和6年12月10日付け 訂正請求があった旨の通知
(特許法第120条の5第5項)
なお、令和6年12月10日付けの訂正請求があった旨の通知に対し、申立人からは何ら応答がなかった。
2.証拠方法
申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
甲第1号証:米国特許出願公開第2011/0165667号明細書
甲第2号証:米国特許出願公開第2011/0287504号明細書
甲第3号証:米国特許出願公開第2018/0094283号明細書
甲第4号証:米国特許第7608439号明細書
甲第5号証:米国特許第4540666号明細書
甲第6号証:Hindawi Publishing Corporation Archaea Volume 2013,ArticleID 157529
(以下、「甲第1号証」~「甲第6号証」を、それぞれ「甲1」~「甲6」という。)
第2 訂正の適否
1.訂正事項
令和6年12月3日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。訂正された箇所は、当審において、下線を付した。なお、本件特許の設定登録時の願書に添付した明細書及び図面を「本件明細書」という。)の請求は、特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりのものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に記載した下記ステップd:
「d.適切な量の酸及び/または塩基を添加することによって、pH7.1~10の所定の値のpH値に維持するために前記pH値を連続的に制御及び調節すること」を、
「d.適切な量の酸及び/または塩基を添加することによって、pH7.1~8の所定の値のpH値に維持するために前記pH値を連続的に制御及び調節すること」
に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5の
「前記メタン生成微生物の培養物が、滴切な量の酸及び/もしくは塩基を添加することによって、pH9以下、もしくはpH8以下、もしくはpH7の所定の値に維持されるように連続的に安定化もしくは調節されること」を、
「前記メタン生成微生物の培養物が、適切な量の酸及び/もしくは塩基を添加することによって、pH8以下の所定の値に維持されるように連続的に安定化もしくは調節されること」
に訂正する。
2.一群の請求項について
訂正前の請求項2~13は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~13は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項5の「前記メタン生成微生物の培養物が、滴切な量の酸及び/もしくは塩基を添加することによって、pH9以下、もしくはpH8以下、もしくはpH7の所定の値に維持されるように連続的に安定化もしくは調節されること」の記載及び図1の記載に基づいて、訂正前の請求項1の
「d.適切な量の酸及び/または塩基を添加することによって、pH7.1~10の所定の値のpH値に維持するために前記pH値を連続的に制御及び調節すること」を、
「d.適切な量の酸及び/または塩基を添加することによって、pH7.1~8の所定の値のpH値に維持するために前記pH値を連続的に制御及び調節すること」に訂正することで、pH値をより狭い範囲に限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項5及び図1の記載に基づいて、訂正前の請求項5の
「前記メタン生成微生物の培養物が、滴切な量の酸及び/もしくは塩基を添加することによって、pH9以下、もしくはpH8以下、もしくはpH7の所定の値に維持されるように連続的に安定化もしくは調節されること」を、
「前記メタン生成微生物の培養物が、適切な量の酸及び/もしくは塩基を添加することによって、pH8以下の所定の値に維持されるように連続的に安定化もしくは調節されること」
に訂正することで、pH値をより狭い範囲に限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
4.独立特許要件
本件訂正の請求は、訂正前の請求項1~13に対してなされているところ、本件特許異議の申立ては、訂正前の請求項1~13に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
5.小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正事項1、2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合している。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
訂正後の請求項1~13に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~13に記載された、以下の事項によって特定されるとおりのものである。下線は、訂正箇所を示す。
「【請求項1】
a.連続プロセスでメタン生成微生物を培養すること;
b.H2S及び/またはO2を含むCO2含有ガスを準備すること;
c.前記メタン生成微生物の培養物に、CO2:H2が1:0.6~1:5である化学量論比で追加のH2を供給すること;
d.適切な量の酸及び/または塩基を添加することによって、pH7.1~8の所定の値のpH値に維持するために前記pH値を連続的に制御及び調節すること;
e.メタンまたはメタン富化ガス組成物を回収すること;
を含む、バイオリアクターにおけるCO2含有ガスからのメタンの製造方法。
【請求項2】
前記メタン生成微生物を培養する前記工程が、
i.窒素源及び塩を供給する適切な液体培地の中に前記メタン生成微生物を保持すること;
ii.前記培養条件を嫌気性または通性嫌気性に保持すること;
iii.前記培養物を撹拌すること;
iv.前記培養物から連続的に代謝水を除去すること;及び
v.温度を大気圧で32℃~90℃または32℃~85℃の範囲に保つこと;
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メタン生成微生物が、Na2Sの形態の硫化物から選択される硫化物、及び/又はアンモニウムの存在下で培養されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記メタン生成微生物が、少なくとも14かつ最大60のOD610として測定される、少なくとも2.5g/Lかつ最大20g/Lの前記培養物中の前記微生物の乾燥重量に相当する前記培養物中の微生物の密度まで培養されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記メタン生成微生物の培養物が、適切な量の酸及び/もしくは塩基を添加することによって、pH8以下の所定の値に維持されるように連続的に安定化もしくは調節されること;
または前記メタン生成微生物の培養物が、適切な量のNaOHもしくはNH4OH及びHClもしくはH2SO4を前記培養物に添加することによって、前記所定のpH値を維持するように連続的に安定化もしくは調節されること;
を特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種のメタン生成微生物が、Methanobacterium、Methanobrevibacter、Methanothermobacter、Methanococcus、Methanosarcina、Methanopyrus、またはこれらの混合からなる古細菌またはarchaebacteriaの群から選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記メタン生成微生物が嫌気性及び/または酸素耐性であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程iの前記適切な液体培地が適度な塩分環境であり、塩化物アニオンの濃度が12mmol/L~300mmol/Lの範囲であること;及び/または
NaClの濃度が0.4g/L~12g/Lの範囲であること;
を特徴とする、請求項2~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記メタン生成微生物が、自然に選択されたまたは天然に適応した微生物、適応した好塩性微生物、及び遺伝子操作された微生物の群から選択され、これらは全て適度な塩分環境で生存及び繁殖することが可能であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記CO2含有ガスが、前記メタン生成のための炭素源であり、CO2を多く含む排出物及び/または廃ガス排出物由来であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記CO2含有ガスが少なくとも20%のCO2を含む、及び/または前記CO2含有ガスが最大5000mg/LのH2Sを含む、及び/または前記CO2含有ガスが5%以下のO2を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記手順全体または少なくとも1つの工程が、大気圧条件下または最大16bar(1.6MPa)もしくは最大420bar(42MPa)の加圧条件下で行われることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記回収されたメタンが、固体状汚染物質、固体粒子、懸濁液中の固体状汚染物質、グリース、または気体状汚染物質、揮発性有機化合物(VOC)、及びその他の微量汚染物質を含まないことを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。」
以下、訂正後の請求項1~13に係る発明を、項番に従い、「本件発明1」~「本件発明13」といい、これらを総称して、「本件発明」という。また、訂正前の本件発明を、「訂正前本件発明1」~「訂正前本件発明13」といい、これらを総称して、「訂正前本件発明」という。
第4 当審が通知した取消理由及び特許異議申立ての理由の概要
1.当審が通知した取消理由通知の概要
当審が令和6年8月27日付け取消理由通知書で通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
(1)取消理由1(サポート要件)
訂正前の本件特許は、特許請求の範囲の記載が、下記アの点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
ア 本件発明の解決しようとする課題は、CO2含有する排出物及び廃ガスを主供給源として使用してメタン富化ガス組成物を製造するための、スケール拡張性及び信頼性を有する連続生産プロセスを提供することにあると認められるところ、訂正前本件発明1のpH値の範囲(7.1~10)のうち、pH値を8~10に維持する場合については、上記課題を解決できることを当業者が推認できないから、訂正前本件発明1~13は上記課題を解決できない範囲を含む。
2.特許異議申立ての理由の概要
申立人が申し立てた特許異議申立ての理由は、以下のとおりである。
(1)申立理由1(進歩性)
訂正前本件発明1~13は、甲1又は甲2を主引例とし、甲3~6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反するから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(サポート要件)
培養物のpH値を「連続的」に調節するための具体的な適切な手段が本件特許明細書に記載されていない点、「連続的」に制御及び調整する間隔について、例えば10分毎、5分毎、1分毎、1秒毎、及び0.1秒毎にモニターすることが含まれるのかは明らかでない点から、訂正前本件発明1~13に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 取消理由に係る当審の判断
本件発明1~13に係る特許は、以下のとおり、当審が通知した取消理由通知書に記載した取消理由によっては、取り消すことができない、と判断する。
1.取消理由1(サポート要件)について
(1)サポート要件の考え方
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)本件明細書に記載された事項
本件明細書には、以下のとおりの記載がある。なお、下線は当審にて付した。
本a
「【0021】
したがって、本発明の目的は、メタン富化ガス組成物のための、スケール拡張性及び信頼性を有する連続生産プロセスを提供することであり、これは、CO2含有排出物及び廃ガスを主供給源として使用して行うことができる。」
本b
「【0022】
以前の刊行物、特にUS2014/0377830には、メタン生成システムにおいて酸素または一酸化炭素で汚染されたCO2含有ガスを使用する試みについて既に記載されている。この出願では、厳密に嫌気性のメタン生成古細菌に供給されるガス中に酸素または一酸化炭素が存在することによるメタン生成の中断の影響が詳しく説明されている。嫌気性メタン生成古細菌との関係において、酸素、及び存在する場合は一酸化炭素も、水素の取り込みに関与して通常メタン生成を妨げる酵素の阻害剤として広く知られている。上述した文献では、メタン生成培養物に通常の空気を供給すると、結果的にメタン生成の中断、CO2の置換/減少が生じ、そのためpH値が上昇することが判明した。これに関し、純粋な水素及び二酸化炭素がプロセス供給流として使用される場合、メタン生成プロセスは、通常pH7.5~pH8.5のpH値で運転される。このpH値の範囲は、具体的に設定または調節されていない。CO2ガスを通常の空気に置き換え、その結果培地からのCO2の置換/削減を行うと、メタン生成が中断される。また、純粋なCO2ガスが、空気ではなく低いパーセント割合でしか酸素を含まない産業廃ガスに置き換えられた状況でも、培養物中でのメタン生成が中断されるため、pH値への影響は同等である。」
本c
「【0024】
人工的な培養条件下で、かつ本質的に純粋なH2ガス及びCO2ガスを用いた供給形式を利用した場合、メタン生成への有意な影響が観察されなかったことから、最大pH9.00までのpH値の上昇はほとんど問題がないようであった。しかしながら、本発明者らは、ガスの混合物を含むガスを供給する条件下で、それが廃棄排出物であっても地熱ガス組成物であっても、特に硫化水素の含有量及びそれに応じて、典型的なpH条件下での不溶性硫化物塩の制御不能な形成により最初にメタンの生産性が低下し、最終的にはメタン生成古細菌の培養物が回復不可能に急減することを見出した。それにもかかわらず、そのような条件下では、流出ガスは増加したH2S量を示し、燃料としてのその後の利用には不適切である。」
本d
「【0042】
したがって、メタン生成微生物の開発の一般的な分野では、メタンの収量を低下させない培養物のガス汚染の可能性を含む方法を追求することは有意義である。pHが制御/調節された培養物における好気性の操作が前記培養物の生存率を抑制せず、そのためそのメタン収量も抑制されないという発明者らの確かな知見は、本発明の場合のようなガス汚染物質の存在下で様々なメタン生成菌を培養する可能性を高めた。」
本e
「【0065】
例えばpHなどの他のパラメータを調節することで、リアクターの活性サイクル全体にわたるメタン生成が可能になり、かつガス汚染物質の存在下でもメタンの連続的な生産が可能になることが本発明者らによって見出された。
【0066】
したがって、本発明は、pH値を連続的に制御する工程を特徴とする。これとの関係において、制御は、培養に関係するパラメータを一定の監視下に保ち、当該技術分野で公知の一般的な方法論及び測定機器を使用して、前記パラメータまたは状態の指標を本質的に測定するという一般的な普通の意味で理解され、一定の監視下に保ち、その結果培養物のpHを制御することのみでは不十分な可能性があることから、本発明の更なる実施形態は、特に、pH値を連続的に調節することを含む。本出願の理解において、調節は、そのための適切な手段を使用することによって例えば培養物のpHなどのパラメータについての所定の値を積極的に維持することであることが意図されている。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、メタン生成微生物の培養物は、適切な量の適切な酸または塩基を連続的に添加することによって、連続的に制御及び/または調節される、すなわち、pH10以下の所定の値の、あるいはpH9以下の所定の値の、あるいはpH8以下、あるいはpH7の所定の値のpH値に維持されるように安定化される。
【0068】
仮説に拘束されるものではないが、培養物のpHの調節は、請求項に記載の方法の効率を決定するメタン生成活性の継続性を維持するために特に重要であると考えられる。」
本f
「【0113】
著しく高いレベルのH2Sは潜在的にメタン生成を深刻に阻害し得ることが知られているものの、そのような既に高い濃度では、所定の量の酸素の存在と一緒では、pH調節と組み合わせると、本発明に従って培養された古細菌からの連続的に生じるメタン生成活性を可能にするという点でむしろ驚くほど有利であることが証明された。」
本g
「【0139】
実施例3:Methanothermobacter thermautotrophicusの培養物の使用においてpH値を調節することによるプロセスの改善
H2Sの添加後に試験設定でメタン生成プロセスの性能を維持するために、本発明者らは、pH値を効果的に制御する追加の処理工程を導入し、それによってプロセス全体で約7のpHを確実に得られるようにした。Methanothermobacter thermautotrophicusの培養物を使用するこれらのプロセス条件下では、HS-及びS2-の形成ははるかに少ないことが判明し、不溶性塩の形成も減少したようであった。
【0140】
このために、プロセスの培養物(実施例1の実験設定の後)を新鮮な培地で1:2に希釈した(図1の実行時間381時間)。希釈法はプロセスを完全に再開せずに生体触媒懸濁液中の不要な成分(以前に析出した金属塩など)の濃度を下げる簡単な方法であることから、この実験では希釈法を使用した。更に、pH値は7(約±0.3)の範囲に設定した。この開始段階では、供給されたH2Sは60ppmのままであった。
【0141】
希釈されてpHが安定した培養条件下で、生体触媒培養物はメタン生産性とバイオマス生産の両方を再開した(図1;実行時間450時間)。
【0142】
実行時間501時間の時点で、H2Sの供給を再度2000ppmに設定した。新しいpH設定により、培養性能と増殖に対するH2S添加の以前に観察された負の影響を解決することができた。
【0143】
約500時間から630時間の間のpH変動は、pH投与量を手動で調節する必要があり、pH7を維持するのに十分な新しい投与率を最初に決定する必要があったためである。pHを制御する塩基の供給が不十分であると、pH値が約pH6のpH値まで低下し、これもメタン生産性の喪失を示した。」
本h
「【0128】
【図1】実施例1及び2による、H2Sの添加後の、Methanothermobacter thermautotrophicusの培養物におけるpH調節後のメタン生成の回復。培養物の急減(400時間)は、単にH2Sの量を減少させるだけでは回避できなかったことが観察できる(300時間)。したがって、pH調節は、メタン生成の回復とバイオマス濃度の増加に関連する役割を果たす。
…」
本i
「【図1】
[図:0001423501000001.jpg]
」
(3)本件発明が解決しようとする課題
本件明細書の段落【0021】の記載(本a)によれば、本件発明が解決しようとする課題は、CO2含有する排出物及び廃ガスを主供給源として使用してメタン富化ガス組成物を製造するための、スケール拡張性及び信頼性を有する連続生産プロセスを提供することにあると認められる。
(4)本件発明のサポート要件の判断
本件明細書の段落【0022】(本b)の記載から、酸素はメタン生成古細菌によるメタン生成を妨げるものであるといえる。また、段落【0024】(本c)の記載から、硫化水素もまたメタン生成古細菌によるメタンの生産性を低下させるものであるといえる。そして、段落【0042】(本d)、【0065】(本e)、【0068】(本e)、【0113】(本f)の記載に照らせば、本件発明1は、培養物のpHの制御・調節を行うことにより、酸素、硫化水素(H2S)のようなガス汚染物質の存在下でも連続的なメタン生成が可能になることを通じて、上記(3)で示した課題を解決しようとしたものと理解できる。
ここで、実施例3(本g)では、Methanothermobacter thermautotrophicusの培養物の使用においてpH値を調節することによるプロセスの改善に関する実験を行っており、段落【0140】(本g)には、図1(本h、本i)の実行時間381時間の時点で、プロセス培養物を新鮮な培地で1:2に希釈し、更にpH値を7(約±0.3)の範囲に設定した旨記載されており、図1中には、実行時間381時間の時点で8未満のpH制御を開始したことが記載されている。そして、段落【0142】(本g)には、「実行時間501時間の時点で、H2Sの供給を再度2000ppmに設定した。新しいpH設定により、培養性能と増殖に対するH2S添加の以前に観察された負の影響を解決することができた。」と記載されており、図1における実行時間501時間以降のメタン生成速度とpH値のデータからすると、おおむねpH値が7~8の範囲である場合には、H2Sの存在下でも連続的なメタン生成が可能となり、pH値を7.1~8に維持する場合には、「pH値を連続的に制御及び調節」することにより上記(3)で示した課題を解決できることを当業者は理解できる。
よって、本件発明1は、当業者が、本件明細書の発明の詳細な説明の記載から、上記(2)で示した課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。
したがって、本件発明1及びそれを直接又は間接的に引用する本件発明2~13は、サポート要件を満たすものである。
(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~13に係る特許は、取消理由1(サポート要件)によって取り消すことはできない。
第6 取消理由通知において採用しなかった申立理由について
1.申立理由1(進歩性)について
(1)甲号証に記載された事項
ア 甲1に記載された事項
甲1には、以下の記載がある。(原文は英文であるため当審による翻訳文で示す。下線は当審による。)
甲1a
「1.電力をメタンに変換するシステムであって、当該システムは、
プロトン透過性バリアによって分離された第1チャンバーと第2チャンバーを有する反応器であって、第1チャンバーは、入口と出口の間に、少なくとも多孔質で導電性の陰極、生きたメタン生成微生物を含む培養物、および水を含む通路を備え、第2チャンバーは少なくとも陽極を備える反応器、
培養物が50℃を超える温度に維持される動作状態を有する反応器、
陽極と陰極に接続された電源、および、
第1チャンバーからメタンを受け取る出口を備える第1チャンバーに接続された二酸化炭素供給源
を含むシステム。」(請求項1)
甲1b
「[0014] 図2は、本開示による、二酸化炭素をメタンに変換するシステムの概略図である。」
甲1c
「[0034] 本発明は、電気生物学的装置を用いて二酸化炭素をメタンに処理または変換することに関する。…」
甲1d
「[0037] メタン生成微生物は、例えば、振盪または撹拌タンクバイオリアクター、中空糸バイオリアクター、または流動床バイオリアクターで培養され、バッチ、流加バッチ、連続、半連続、または灌流モードで操作される。…」
甲1e
「[0054] 下記で詳細を説明するように、バイオリアクター102は、培養物が50℃を超える温度に維持される動作状態を有することができる。ただし、特定の実施形態は、約60℃から約100℃の間の範囲の動作状態を有し得る。バイオリアクター102はまた、電気および/または二酸化炭素が反応器102に供給されない休止状態を有してもよい。そのような休止状態によれば、メタンの生成は、動作状態に比べて著しく減少し、その結果、生成量は、動作状態よりも数桁少なくなる可能性があり、同様に入力電力および入力二酸化炭素の必要量も動作状態よりも数桁少なくなる可能性がある。…」
甲1f
「[0059] 本方法では、第1のチャンバー104からメタンを回収することをさらに含んでもよい。…」
甲1g
「[0066] …。電流の存在下で、メタン生成微生物は二酸化炭素を処理してメタンを生成する。…」
甲1h
「[0100] …。したがって、いくつかの態様においては、細胞物質に変換されたCO2分子の数に対するメタンに変換されたCO2分子の数の比は、活発な増殖期における天然に存在するメタン生成微生物の比よりも高い。例示的な実施形態では、細胞物質に変換されたCO2分子の数に対するメタンに変換されたCO2分子の数の比はN:1であり、Nは20より大きい数、例えば、約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、またはそれ以上である。いくつかの態様では、Nは500未満、400未満、300未満、または200未満である。いくつかの態様では、Nは約40から約150の範囲である。」
甲1i
「[0101] …。生理学に基づいて、古細菌は部分的に重複する3つのグループ、メタン生成菌(メタンを生成する原核生物)、極限好塩菌(非常に高濃度の塩(NaCl)で生息する原核生物)、および極限(超)好熱菌(非常に高い温度、例えば50~122℃で生息する原核生物)に分類できる。細菌とは異なる古細菌の統一的特徴(細胞壁にムレインがないこと、エーテル結合膜脂質など)に加えて、これらの原核生物は、特定の生息地に適応する独自の構造的または生化学的特性を示す。クレン古細菌は主に超好熱性硫黄依存性原核生物で構成され、ユーリ古細菌にはメタン生成菌と高度好塩菌が含まれる。」
甲1j
「[0102] …。このような環境源には、嫌気性の土壌と砂、沼地、沼地、沼地、河口、密集した藻類のマット、陸地と海の両方の泥と堆積物、深海と深井戸の場所、下水と有機廃棄物サイトと処理施設、動物の腸管、および糞便が含まれる。適切な生物の例は、Methanobacteriaクラス内の4つの異なる属(例えば、Methanobacterium alcaliphilum、Methanobacterium bryantii、Methanobacterium congolense、Methanobacterium defluvii、Methanobacterium espanolae、Methanobacterium formicicum、Methanobacterium ivanovii、Methanobacterium palustre、Methanobacterium thermaggregans、Methanobacterium uliginosum、Methanobrevibacter acididurans、Methanobrevibacter arboriphilicus、Methanobrevibacter gottschalkii、Methanobrevibacter olleyae、Methanobrevibacter rum inantium、Methanobrevibacter smithii、Methanobrevibacter woesei、Methanobrevibacter wolinii、Methanothermobacter marburgensis、Methanothermobacter thermautotrophicum(Methanothermobacter thermautotrophicus、Methanobacterium thermalcaliphilum、Methanobacterium thermoformicicum、Methanobacterium thermautotrophicum、Methanobacterium thermoalcaliphilum、Methanobacterium thermoautotrophicumとしても知られている)、Methanothermobacter thermoflexus、Methanothermobacter thermophilus、Methanothermobacter wolfeii、Methanothermus sociabilis) 、 Methanomicrobiaクラス内に属する5つの異なる属(例えば、Methanocorpusculum bavaricum、Methanocorpusculum parvum、Methanoculleus chikuoensis、Methanoculleus submarinus、Methanogenium frigidum、Methanogenium liminatans、Methanogenium marinum、Methanosarcina acetivorans、Methanosarcina barkeri、Methanosarcina mazei、Methanosarcina thermophila、Methanomicrobium mobile)、Methanococciクラス内に属する7つの異なる属(例えば、Methanocaldococcus jannaschii、Methanococcus aeolicus、Methanococcus maripaludis、Methanococcus vannielii、Methanococcus voltaei、Methanothermococcus thermolithotrophicus、Methanocaldococcus fervens、Methanocaldococcus indicus、Methanocaldococcus infernus、Methanocaldococcus vulcanius)及びMethanopyriクラスに属する1つの属 (例えば、Methanopyrus kandleri)に分類される。
適切な培養液は公的な培養液コレクション(例えば、the American Type Culture Collection、the Deutsche Sammlung von Mikroorganismen and Zellkulturen GmbH及びthe Oregon Collection of Methanogens)から入手可能である。いくつかの実施形態において、メタン生成菌はMethanosarcinia barkeri、Methanococcus maripaludis及び Methanothermobacter thermautotrophicus からなる群から選択される。」
甲1k
「[0109] …。…反応器の培養液には、改変された(例えば、培養に適合させ、遺伝子組換えされた)メタン生成微生物が含まれる…。…。例えば、いくつかの実施形態では、遺伝子組換え前のメタン生成微生物はタンパク質を発現しない微生物であるが、遺伝子組換えによりタンパク質を発現するメタン生成微生物となったものである。さらに、例えば、いくつかの実施形態において、培養における適応前または遺伝子組換え前のメタン生成微生物は、特定の炭素源、窒素源、アミノ酸、ミネラル、塩、ビタミン、またはそれらの組み合わせの存在下で生存および/または増殖するものであるが、培養における適応または遺伝子組換えを通して、実質的にそれらが欠乏している状況において生存および/または増殖するメタン生成微生物となる。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、培養における適応前または遺伝子組換え前のメタン生成微生物は、特定の量または濃度の炭素源、窒素源、アミノ酸、ミネラル、塩、ビタミンの存在下で生存および/または増殖する微生物であるが、培養における適応または遺伝子組換えを通して、異なる量または濃度で生存および/または増殖するメタン生成微生物となる。」
甲1l
「[0110] …。いくつかの実施形態において、メタン生成微生物(例えば古細菌)は、培養液中で、約3.5~約10(例えば、約5.0~約8.0、約6.0~約7.5)のpH範囲でほぼ定常的な増殖期に適応される。…
[0111] ここで使用されるように、「培養における適応」という用語は、微生物(例えば、天然に存在する古細菌)が、以前の培養条件とは異なる一連の望ましい培養条件(例えば、高塩分、高温、炭素源の実質的な非存在、低pH等)下で培養されるプロセスを指す。望ましい条件下での培養は、望ましい条件下で生存および/または増殖(および/またはメタン生成)する改変された微生物(親系統(すなわち、未適応微生物)の子孫))を生じるのに十分な時間行われる。…。培養において適応させるプロセスでは、望ましい培養条件で生存および/または増殖および/またはメタン生成することができる微生物を選択する。…。」
甲1m
「無機材料:無機元素、鉱物、塩類
[0128] いくつかの実施形態では、古細菌を培養するための培地は、無機元素またはその塩である1つ以上の栄養素を含む。一般的な無機元素には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、塩化物、硫化水素や元素硫黄などの硫黄源、リン酸塩などのリン源、アンモニウム、窒素ガス、硝酸塩などの窒素源が含まれるが、これらに限定されない。例示的な供給源としては、NaCl、NaHCO3、KCl、MgCl2、MgSO4、CaCl2、硫酸第一鉄、Na2HPO4、NaH2PO4H2O、H2S、Na2S、NH4OH、N2、およびNaO3が挙げられる。…。
[0129] …。いくつかの実施形態では、培地は、約1mM~約10mM、例えば2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mMまたは上記範囲の端点の組み合わせの量で、水酸化アンモニウムまたは塩化アンモニウムなどの窒素源を含む。…」
甲1n
「炭素源
[0137] いくつかの側面では、培地は炭素源、例えば、二酸化炭素、ギ酸、または一酸化炭素を含む。…」
甲1o
「[0139] 主に嫌気性であるメタン生成菌は、長期間の酸素ストレス、例えば少なくとも6、12、18もしくは24時間、または2日、3日、4日、5日、6日、1週間またはそれ以上の期間の周囲の空気への暴露に耐えることができる可能性がある。…。しかしながら、嫌気性生物は、低酸素条件下で最適に増殖するであろう。いくつかの実施形態では、バイオリアクターは、実質的に酸素を除外して、高レベルのメタン産生を促進する。
[0140] いくつかの実施形態では、システムは、バイオリアクターに供給されるCO2ストリーム中の酸素の存在を低減するさまざまな方法および/または機能を含む。絶対嫌気性メタン生成微生物がメタン形成を触媒するために使用される場合、酸素の存在はプロセスの性能に悪影響を及ぼし、生成ガスを汚染する可能性がある。したがって、CO2ストリーム中の酸素の存在を低減することは、プロセスを改善するのに役立つ。一実施形態では、酸素は、バイオリアクター内のガスストリームの前処理によって除去される。…。他の実施形態では、供給される流入ガス中の二酸化炭素は、酸素を含む汚染されたガス中から選択的吸収または膜分離によって精製される。酸素を十分に含まない二酸化炭素を準備する方法は、当技術分野でよく知られている。」
甲1p
「[0142] いくつかの実施形態では、培地は以下の成分を含む:KH2PO4、NH4Cl、NaCl…。…。いくつかの態様において、培地は、NH4OHを用いて約6.8~約7.3のpHに調整される。…」
甲1q
「[0144] いくつかの実施形態では、NH4Clは、約10mM~約1500mM、例えば、約20mM~約600mM、約60mM~約250mMの範囲内の濃度で培地中に存在する。」
甲1r
「[0155] …これらの成分を含む培地は、ここでは培地2と称され、もともと海洋環境に由来するメタン生成菌、例えば、Methanocaldooccus種、Methanotorris種、Methanopyrus種、またはMethanothermococcus種の生存および/または成長を支援することができる。いくつかの態様では、培地は、NH4OHを用いて約6.3~約6.8(例えば、約6.4~約6.6)のpHに調整される。…」
甲1s
「[0157] いくつかの実施形態では、NaClは、約17mM~約1750mM、例えば、約30mM~約860mM、約80mM~約350mMの範囲内の濃度で培地中に存在する。」
甲1t
「[0176] いくつかの例では、培地には4:1の比率のH2:CO2ガス混合物がスパージされる。…」
甲1u
「培養条件
[0177] 微生物は、生存および/またはメタン生成に好適な任意の条件の組の下で培養することができる。…」
甲1v
「[0182] …。例えば、pHは、必要に応じて、CO2をスパージングすることにより、および/または酸(例えば、HCl)または塩基(例えば、NaOHまたはNH4OH)を添加することによって制御することができる。」
甲1w
「圧力およびその他の条件
[0183] いくつかの実施形態では、適切には、バイオリアクター内の圧力は、約0.5気圧から約500気圧の範囲である。…。また、一実施形態において、バイオリアクターから除去されたメタンガスは、好適には、約450ppm未満の硫化水素、あるいは約400ppm、300ppm、200ppm、150ppm、100ppm、50ppmまたは20ppm未満の硫化水素を含有する。…」
甲1x
「[0266] 特定の実施形態によれば、放出源からの二酸化炭素は、一酸化炭素、水素、硫化水素、窒素、酸素、または工業プロセスに共通する他のガスを含む他のガスと混合されてもよく、または実質的に純粋であってもよい。ガス混合物は、直接バイオリアクター502に送ることもできるし、バイオリアクターに送る前にガス混合物から二酸化炭素を分離することもできる。…」
甲1y
「IV その他の例示的な実施形態
[0277] 一実施形態によれば、二酸化炭素をメタンに変換する方法は、a)水素栄養性メタン生成古細菌の培養物を調製する工程、b)水素栄養性メタン生成古細菌の培養物を電解室の陰極室に配置する工程であって、電解室は、陽極及び陰極を有し、陰極は陰極室内に配置され、陽極室及び陰極室は選択的透過性バリアによって分離されている、工程、c)電解室の陰極室に二酸化炭素を供給する工程、d)電解室に水を供給する工程、および、e)水素栄養性メタン生成古細菌は、陰極から放出された電子を利用して、二酸化炭素をメタンに変換する工程を含む。…」
甲1z
「[0281] …。水はメタン生成の副産物であるため、液体は反応器から常に除去されている。微生物は培養容器内で、約0.005~約0.011g乾燥固体/mL水(単位体積あたり0.5~1%乾燥質量)のバイオマス測定範囲に維持される。」
甲1aa
「[0282] 菌株UC120910の微生物は、培地1またはATCC培地2133:0SU967のいずれかを含む培養管またはボトル中で、80%水素、20%二酸化炭素の気相を含む嫌気性条件下、60℃で維持される。…」
甲1bb
「[0295] …。具体的には、所定の体積中の細胞の乾燥質量は、ペレット化した細胞を一定重量まで乾燥させることによって決定され、8.4g/L培養物であることが判明した。…」
甲1cc
「[0318] …。培養物からのサンプル中の細胞を、嫌気条件下での遠心分離によって3倍に濃縮し、最終濃度15~21g乾燥重量/Lで再懸濁した。…」
イ 甲2に記載された事項
甲2には、以下の記載がある。(原文は英文であるため当審による翻訳文で示す。下線は当審による。)
甲2a
「1.電気を利用してメタンを生成する方法であって、当該方法は、
プロトン透過性バリアによって分離された第1チャンバーと第2チャンバーを有する反応器であって、第1のチャンバーは、入口と出口の間に、少なくとも多孔質で導電性の陰極、培養物、および水を含む通路を備え、第2チャンバーは少なくとも陽極を含む反応器において、生きたメタン生成微生物を含む培養物を50℃以上の温度に維持すること、
電気を陽極と陰極に接続すること、
二酸化炭素を第1チャンバーの培養物に供給すること、及び
第1チャンバーの出口において培養物からメタンを回収すること
を含む、方法。」(請求項1)
甲2b
「[0014] 図2は、本開示による、二酸化炭素をメタンに変換するシステムの概略図である。」
甲2c
「[0034] 本発明は、電気生物学的装置を用いて二酸化炭素をメタンに処理または変換することに関する。…」
甲2d
「[0037] メタン生成微生物は、例えば、振盪または撹拌タンクバイオリアクター、中空糸バイオリアクター、または流動床バイオリアクターで培養され、バッチ、流加バッチ、連続、半連続、または灌流モードで操作される。…」
甲2e
「[0054] 下記で詳細を説明するように、バイオリアクター102は、培養物が50℃を超える温度に維持される動作状態を有することができる。ただし、特定の実施形態は、約60℃から約100℃の間の範囲の動作状態を有し得る。バイオリアクター102はまた、電気および/または二酸化炭素が反応器102に供給されない休止状態を有してもよい。そのような休止状態によれば、メタンの生成は、動作状態に比べて著しく減少し、その結果、生成量は、動作状態よりも数桁少なくなる可能性があり、同様に入力電力および入力二酸化炭素の必要量も動作状態よりも数桁少なくなる可能性がある。…」
甲2f
「[0059] 本方法では、第1のチャンバー104からメタンを回収することをさらに含んでもよい。…」
甲2g
「[0066] …。電流の存在下で、メタン生成微生物は二酸化炭素を処理してメタンを生成する。…」
甲2h
「[0100] …。したがって、いくつかの態様においては、細胞物質に変換されたCO2分子の数に対するメタンに変換されたCO2分子の数の比は、活発な増殖期における天然に存在するメタン生成微生物の比よりも高い。例示的な実施形態では、細胞物質に変換されたCO2分子の数に対するメタンに変換されたCO2分子の数の比はN:1であり、Nは20より大きい数、例えば、約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、またはそれ以上である。いくつかの態様では、Nは500未満、400未満、300未満、または200未満である。いくつかの態様では、Nは約40から約150の範囲である。」
甲2i
「[0101] …。生理学に基づいて、古細菌は部分的に重複する3つのグループ、メタン生成菌(メタンを生成する原核生物)、極限好塩菌(非常に高濃度の塩(NaCl)で生息する原核生物)、および極限(超)好熱菌(非常に高い温度、例えば50~122℃で生息する原核生物)に分類できる。細菌とは異なる古細菌の統一的特徴(細胞壁にムレインがないこと、エーテル結合膜脂質など)に加えて、これらの原核生物は、特定の生息地に適応する独自の構造的または生化学的特性を示す。クレン古細菌は主に超好熱性硫黄依存性原核生物で構成され、ユーリ古細菌にはメタン生成菌と高度好塩菌が含まれる。」
甲2j
「[0102] …。このような環境源には、嫌気性の土壌と砂、沼地、沼地、沼地、河口、密集した藻類のマット、陸地と海の両方の泥と堆積物、深海と深井戸の場所、下水と有機廃棄物サイトと処理施設、動物の腸管、および糞便が含まれる。適切な生物の例は、Methanobacteriaクラス内の4つの異なる属(例えば、Methanobacterium alcaliphilum、Methanobacterium bryantii、Methanobacterium congolense、Methanobacterium defluvii、Methanobacterium espanolae、Methanobacterium formicicum、Methanobacterium ivanovii、Methanobacterium palustre、Methanobacterium thermaggregans、Methanobacterium uliginosum、Methanobrevibacter acididurans、Methanobrevibacter arboriphilicus、Methanobrevibacter gottschalkii、Methanobrevibacter olleyae、Methanobrevibacter rum inantium、Methanobrevibacter smithii、Methanobrevibacter woesei、Methanobrevibacter wolinii、Methanothermobacter marburgensis、Methanothermobacter thermautotrophicum(Methanothermobacter thermautotrophicus、Methanobacterium thermalcaliphilum、Methanobacterium thermoformicicum、Methanobacterium thermautotrophicum、Methanobacterium thermoalcaliphilum、Methanobacterium thermoautotrophicumとしても知られている)、Methanothermobacter thermoflexus、Methanothermobacter thermophilus、Methanothermobacter wolfeii、Methanothermus sociabilis) 、 Methanomicrobiaクラス内に属する5つの異なる属(例えば、Methanocorpusculum bavaricum、Methanocorpusculum parvum、Methanoculleus chikuoensis、Methanoculleus submarinus、Methanogenium frigidum、Methanogenium liminatans、Methanogenium marinum、Methanosarcina acetivorans、Methanosarcina barkeri、Methanosarcina mazei、Methanosarcina thermophila、Methanomicrobium mobile)、Methanococciクラス内に属する7つの異なる属(例えば、Methanocaldococcus jannaschii、Methanococcus aeolicus、Methanococcus maripaludis、Methanococcus vannielii、Methanococcus voltaei、Methanothermococcus thermolithotrophicus、Methanocaldococcus fervens、Methanocaldococcus indicus、Methanocaldococcus infernus、Methanocaldococcus vulcanius)及びMethanopyriクラスに属する1つの属 (例えば、Methanopyrus kandleri)に分類される。
適切な培養液は公的な培養液コレクション(例えば、the American Type Culture Collection、the Deutsche Sammlung von Mikroorganismen and Zellkulturen GmbH及びthe Oregon Collection of Methanogens)から入手可能である。いくつかの実施形態において、メタン生成菌はMethanosarcinia barkeri、Methanococcus maripaludis及び Methanothermobacter thermautotrophicus からなる群から選択される。」
甲2k
「[0109] …。…反応器の培養液には、改変された(例えば、培養に適合させ、遺伝子組換えされた)メタン生成微生物が含まれる…。…。例えば、いくつかの実施形態では、遺伝子組換え前のメタン生成微生物はタンパク質を発現しない微生物であるが、遺伝子組換えによりタンパク質を発現するメタン生成微生物となったものである。さらに、例えば、いくつかの実施形態において、培養における適応前または遺伝子組換え前のメタン生成微生物は、特定の炭素源、窒素源、アミノ酸、ミネラル、塩、ビタミン、またはそれらの組み合わせの存在下で生存および/または増殖するものであるが、培養における適応または遺伝子組換えを通して、実質的にそれらが欠乏している状況において生存および/または増殖するメタン生成微生物となる。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、培養における適応前または遺伝子組換え前のメタン生成微生物は、特定の量または濃度の炭素源、窒素源、アミノ酸、ミネラル、塩、ビタミンの存在下で生存および/または増殖する微生物であるが、培養における適応または遺伝子組換えを通して、異なる量または濃度で生存および/または増殖するメタン生成微生物となる。」
甲2l
「[0110] …。いくつかの実施形態において、メタン生成微生物(例えば古細菌)は、培養液中で、約3.5~約10(例えば、約5.0~約8.0、約6.0~約7.5)のpH範囲でほぼ定常的な増殖期に適応される。…
[0111] ここで使用されるように、「培養における適応」という用語は、微生物(例えば、天然に存在する古細菌)が、以前の培養条件とは異なる一連の望ましい培養条件(例えば、高塩分、高温、炭素源の実質的な非存在、低pH等)下で培養されるプロセスを指す。望ましい条件下での培養は、望ましい条件下で生存および/または増殖(および/またはメタン生成)する改変された微生物(親系統(すなわち、未適応微生物)の子孫))を生じるのに十分な時間行われる。…。培養において適応させるプロセスでは、望ましい培養条件で生存および/または増殖および/またはメタン生成することができる微生物を選択する。…。」
甲2m
「無機材料:無機元素、鉱物、塩類
[0128] いくつかの実施形態では、古細菌を培養するための培地は、無機元素またはその塩である1つ以上の栄養素を含む。一般的な無機元素には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、塩化物、硫化水素や元素硫黄などの硫黄源、リン酸塩などのリン源、アンモニウム、窒素ガス、硝酸塩などの窒素源が含まれるが、これらに限定されない。例示的な供給源としては、NaCl、NaHCO3、KCl、MgCl2、MgSO4、CaCl2、硫酸第一鉄、Na2HPO4、NaH2PO4H2O、H2S、Na2S、NH4OH、N2、およびNaO3が挙げられる。…。
[0129] …。いくつかの実施形態では、培地は、約1mM~約10mM、例えば2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mMまたは上記範囲の端点の組み合わせの量で、水酸化アンモニウムまたは塩化アンモニウムなどの窒素源を含む。…」
甲2n
「炭素源
[0137] いくつかの側面では、培地は炭素源、例えば、二酸化炭素、ギ酸、または一酸化炭素を含む。…」
甲2o
「[0139] 主に嫌気性であるメタン生成菌は、長期間の酸素ストレス、例えば少なくとも6、12、18もしくは24時間、または2日、3日、4日、5日、6日、1週間またはそれ以上の期間の周囲の空気への暴露に耐えることができる可能性がある。…。しかしながら、嫌気性生物は、低酸素条件下で最適に増殖するであろう。いくつかの実施形態では、バイオリアクターは、実質的に酸素を除外して、高レベルのメタン産生を促進する。
[0140] いくつかの実施形態では、システムは、バイオリアクターに供給されるCO2ストリーム中の酸素の存在を低減するさまざまな方法および/または機能を含む。絶対嫌気性メタン生成微生物がメタン形成を触媒するために使用される場合、酸素の存在はプロセスの性能に悪影響を及ぼし、生成ガスを汚染する可能性がある。したがって、CO2ストリーム中の酸素の存在を低減することは、プロセスを改善するのに役立つ。一実施形態では、酸素は、バイオリアクター内のガスストリームの前処理によって除去される。…。他の実施形態では、供給される流入ガス中の二酸化炭素は、酸素を含む汚染されたガス中から選択的吸収または膜分離によって精製される。酸素を十分に含まない二酸化炭素を準備する方法は、当技術分野でよく知られている。」
甲2p
「[0142] いくつかの実施形態では、培地は以下の成分を含む:KH2PO4、NH4Cl、NaCl…。…。いくつかの態様において、培地は、NH4OHを用いて約6.8~約7.3のpHに調整される。…」
甲2q
「[0144] いくつかの実施形態では、NH4Clは、約10mM~約1500mM、例えば、約20mM~約600mM、約60mM~約250mMの範囲内の濃度で培地中に存在する。」
甲2r
「[0155] …これらの成分を含む培地は、ここでは培地2と称され、もともと海洋環境に由来するメタン生成菌、例えば、Methanocaldooccus種、Methanotorris種、Methanopyrus種、またはMethanothermococcus種の生存および/または成長を支援することができる。いくつかの態様では、培地は、NH4OHを用いて約6.3~約6.8(例えば、約6.4~約6.6)のpHに調整される。…」
甲2s
「[0157] いくつかの実施形態では、NaClは、約17mM~約1750mM、例えば、約30mM~約860mM、約80mM~約350mMの範囲内の濃度で培地中に存在する。」
甲2t
「[0176] いくつかの例では、培地には4:1の比率のH2:CO2ガス混合物がスパージされる。…」
甲2u
「培養条件
[0177] 微生物は、生存および/またはメタン生成に好適な任意の条件の組の下で培養することができる。…」
甲2v
「[0182] …。例えば、pHは、必要に応じて、CO2をスパージングすることにより、および/または酸(例えば、HCl)または塩基(例えば、NaOHまたはNH4OH)を添加することによって制御することができる。」
甲2w
「圧力およびその他の条件
[0183] いくつかの実施形態では、適切には、バイオリアクター内の圧力は、約0.5気圧から約500気圧の範囲である。…。また、一実施形態において、バイオリアクターから除去されたメタンガスは、好適には、約450ppm未満の硫化水素、あるいは約400ppm、300ppm、200ppm、150ppm、100ppm、50ppmまたは20ppm未満の硫化水素を含有する。…」
甲2x
「[0266] 特定の実施形態によれば、放出源からの二酸化炭素は、一酸化炭素、水素、硫化水素、窒素、酸素、または工業プロセスに共通する他のガスを含む他のガスと混合されてもよく、または実質的に純粋であってもよい。ガス混合物は、直接バイオリアクター502に送ることもできるし、バイオリアクターに送る前にガス混合物から二酸化炭素を分離することもできる。…」
甲2y
「IV その他の例示的な実施形態
[0277] 一実施形態によれば、二酸化炭素をメタンに変換する方法は、a)水素栄養性メタン生成古細菌の培養物を調製する工程、b)水素栄養性メタン生成古細菌の培養物を電解室の陰極室に配置する工程であって、電解室は、陽極及び陰極を有し、陰極は陰極室内に配置され、陽極室及び陰極室は選択的透過性バリアによって分離されている、工程、c)電解室の陰極室に二酸化炭素を供給する工程、d)電解室に水を供給する工程、および、e)水素栄養性メタン生成古細菌は、陰極から放出された電子を利用して、二酸化炭素をメタンに変換する工程を含む。…」
甲2z
「[0281] …。水はメタン生成の副産物であるため、液体は反応器から常に除去されている。微生物は培養容器内で、約0.005~約0.011g乾燥固体/mL水(単位体積あたり0.5~1%乾燥質量)のバイオマス測定範囲に維持される。」
甲2aa
「[0282] 菌株UC120910の微生物は、培地1またはATCC培地2133:0SU967のいずれかを含む培養管またはボトル中で、80%水素、20%二酸化炭素の気相を含む嫌気性条件下、60℃で維持される。…」
甲2bb
「[0295] …。具体的には、所定の体積中の細胞の乾燥質量は、ペレット化した細胞を一定重量まで乾燥させることによって決定され、8.4g/L培養物であることが判明した。…」
甲2cc
「[0318] …。培養物からのサンプル中の細胞を、嫌気条件下での遠心分離によって3倍に濃縮し、最終濃度15~21g乾燥重量/Lで再懸濁した。…」
ウ 甲3に記載された事項
甲3には、以下の記載がある。(原文は英文であるため当審による翻訳文で示す。下線は当審による。)
甲3a
「[0010] また、一実施形態において、バイオリアクターから除去されたメタンガスは、好適には、約450ppm未満の硫化水素、あるいは約400ppm、300ppm、200ppm、150ppm、100ppm、50ppmまたは20ppm未満の硫化水素を含有する。」
甲3b
「[0046] …。チャンバーには、Na2Sなどの化学還元剤の添加を制御できる蠕動ポンプも取り付けられている。…」
エ 甲4に記載された事項
甲4には、以下の記載がある。(原文は英文であるため当審による翻訳文で示す。下線は当審による。)
甲4a
「本発明の一実施形態は、(a)炭化水素燃料の燃焼プロセスから燃焼排ガスを回収するここと、(b)排ガス中のCO2からO2を分離して、CO2を多く含む排ガス画分を生成すること、(c)CO2を多く含む嫌気性排ガス画分を、メタン生成微生物を含む発酵混合物に供給すること、(d)H2、有機物質およびそれらの混合物からなる群から選択される還元基質を発酵混合物に供給すること、および、(e)メタン生成微生物の作用により、発酵混合物においてメタンを含むバイオガスを生成することを含み、CO2を多く含む嫌気性排ガス画分を、メタン生成微生物を含む発酵混合物に供給することで、発酵混合物におけるメタン生成が増加する、メタンの製造方法を提供する。」(第4欄第59行~第5欄第5行)
甲4b
「還元炭素基質14に対するメタン生成微生物18の作用により、メタンを含むバイオガス17が生成され、消化槽11のヘッドスペースに蓄積される。バイオガス17は、経路21を通じて消化槽11から採取することができる。還元炭素基質14を添加する代わりに、またはそれに加えて、H2ガス13を消化槽11内の発酵混合物10に供給することができる。水素ガスは、嫌気性消化槽11内で水素を溶解するガス気泡15を生成するために、CO2を多く含む嫌気性排ガス画分と同じ経路20を通して添加することができる。」(第5欄第17~27行)
(2)甲号証に記載された発明
ア 甲1に記載された発明
甲1の段落[0277](甲1y)には、「二酸化炭素をメタンに変換する方法は、a)水素栄養性メタン生成古細菌の培養物を調製する工程、b)水素栄養性メタン生成古細菌の培養物を電気分解チャンバーの陰極チャンバーに配置する工程であって、電気分解チャンバーは、陽極及び陰極を有し、陰極は陰極チャンバー内に配置され、陽極チャンバー及び陰極チャンバーは選択的透過性バリアによって分離されている、工程、c)電気分解チャンバーの陰極チャンバーに二酸化炭素を供給する工程、d)電気分解チャンバーに水を供給する工程、および、e)水素栄養性メタン生成古細菌が、陰極から放出された電子を利用して、二酸化炭素をメタンに変換する工程を含む。」と記載されている。
ところで、甲1の請求項1(甲1a)には、「電力をメタンに変換するシステムであって、当該システムは、
プロトン透過性バリアによって分離された第1チャンバーと第2チャンバーを有する反応器であって、第1チャンバーは、入口と出口の間に、少なくとも多孔質で導電性の陰極、生きたメタン生成微生物を含む培養物、および水を含む通路を備え、第2チャンバーは少なくとも陽極を備える反応器、
培養物が50℃を超える温度に維持される動作状態を有する反応器、
陽極と陰極に接続された電源、および、
第1チャンバーからメタンを受け取る出口を備える第1チャンバーに接続された二酸化炭素供給源
を含むシステム。」が記載されており、段落[0034](甲1c)には、「本発明は、電気生物学的装置を用いて二酸化炭素をメタンに処理または変換することに関する。」との記載があるところ、段落[0277](甲1y)には、「その他の例示的な実施形態」として上述の「二酸化炭素をメタンに変換する方法」が記載されていることから、段落[0277]に記載される「二酸化炭素をメタンに変換する方法」は、請求項1に記載のシステムと同様に、甲1に開示される電気生物学的装置を用いて二酸化炭素をメタンに処理または変換することに関する実施形態の1つであって、請求項1に記載のシステムにおける「第1チャンバー」と段落[0277]に記載の「二酸化炭素をメタンに変換する方法」における「陰極チャンバー」とは、その内部に陰極やメタン生成微生物を含むことからみて、互いに対応するものといえる。そして、甲1の請求項1(甲1a)には、「第1チャンバーからメタンを受け取る出口を備える」ことが記載されており、段落[0059](甲1f)には、「第1のチャンバー104からメタンを回収することをさらに含んでもよい。」と記載されていることに照らせば、段落[0277]に記載される「二酸化炭素をメタンに変換する方法」もまた、陰極チャンバーからメタンを回収する工程を含んでいるものといえる。
そうすると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「二酸化炭素をメタンに変換する方法であって、
a)水素栄養性メタン生成古細菌の培養物を調製する工程、
b)水素栄養性メタン生成古細菌の培養物を電気分解チャンバーの陰極チャンバーに配置する工程であって、電気分解チャンバーは、陽極及び陰極を有し、陰極は陰極チャンバー内に配置され、陽極チャンバー及び陰極チャンバーは選択的透過性バリアによって分離されている、工程、
c)電気分解チャンバーの陰極チャンバーに二酸化炭素を供給する工程、
d)電気分解チャンバーに水を供給する工程、
e)水素栄養性メタン生成古細菌が、陰極から放出された電子を利用して、二酸化炭素をメタンに変換する工程、および
陰極チャンバーからメタンを回収する工程
を含む方法」(以下、「甲1発明」という。)
イ 甲2に記載された発明
甲2の段落[0277](甲2y)には、「二酸化炭素をメタンに変換する方法は、a)水素栄養性メタン生成古細菌の培養物を調製する工程、b)水素栄養性メタン生成古細菌の培養物を電気分解チャンバーの陰極チャンバーに配置する工程であって、電気分解チャンバーは、陽極及び陰極を有し、陰極は陰極チャンバー内に配置され、陽極チャンバー及び陰極チャンバーは選択的透過性バリアによって分離されている、工程、c)電気分解チャンバーの陰極チャンバーに二酸化炭素を供給する工程、d)電気分解チャンバーに水を供給する工程、および、e)水素栄養性メタン生成古細菌が、陰極から放出された電子を利用して、二酸化炭素をメタンに変換する工程を含む。」と記載されている。
ところで、甲2の請求項1(甲2a)には、「電気を利用してメタンを生成する方法であって、当該方法は、
プロトン透過性バリアによって分離された第1チャンバーと第2チャンバーを有する反応器であって、第1のチャンバーは、入口と出口の間に、少なくとも多孔質で導電性の陰極、培養物、および水を含む通路を備え、第2チャンバーは少なくとも陽極を含む反応器において、生きたメタン生成微生物を含む培養物を50℃以上の温度に維持すること、
電気を陽極と陰極に接続すること、
二酸化炭素を第1チャンバーの培養物に供給すること、及び
第1チャンバーの出口において培養物からメタンを回収すること
を含む、方法。」が記載されており、段落[0034](甲2c)には、「本発明は、電気生物学的装置を用いて二酸化炭素をメタンに処理または変換することに関する。」との記載があるところ、段落[0277](甲2y)には、「その他の例示的な実施形態」として上述の「二酸化炭素をメタンに変換する方法」が記載されていることから、段落[0277]に記載される「二酸化炭素をメタンに変換する方法」は、請求項1に記載の方法と同様に、甲2に開示される電気生物学的装置を用いて二酸化炭素をメタンに処理または変換することに関する実施形態の1つであって、請求項1に記載の方法における「第1チャンバー」と段落[0277]に記載の「二酸化炭素をメタンに変換する方法」における「陰極チャンバー」とは、その内部に陰極やメタン生成微生物を含むことからみて、互いに対応するものといえる。そして、甲2の請求項1(甲2a)には、「第1チャンバーの出口において培養物からメタンを回収すること」ことが記載されており、段落[0059](甲2f)には、「第1のチャンバー104からメタンを回収することをさらに含んでもよい。」と記載されていることに照らせば、段落[0277]に記載される「二酸化炭素をメタンに変換する方法」もまた、陰極チャンバーからメタンを回収する工程を含んでいるものといえる。
そうすると、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。
「二酸化炭素をメタンに変換する方法であって、
a)水素栄養性メタン生成古細菌の培養物を調製する工程、
b)水素栄養性メタン生成古細菌の培養物を電気分解チャンバーの陰極チャンバーに配置する工程であって、電気分解チャンバーは、陽極及び陰極を有し、陰極は陰極チャンバー内に配置され、陽極チャンバー及び陰極チャンバーは選択的透過性バリアによって分離されている、工程、
c)電気分解チャンバーの陰極チャンバーに二酸化炭素を供給する工程、
d)電気分解チャンバーに水を供給する工程、
e)水素栄養性メタン生成古細菌が、陰極から放出された電子を利用して、二酸化炭素をメタンに変換する工程、および
陰極チャンバーからメタンを回収する工程
を含む方法」(以下、「甲2発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明、甲2発明をまとめて対比する。
甲1発明及び甲2発明の「二酸化炭素をメタンに変換する方法」は、「水素栄養性メタン生成古細菌の培養物」が「配置」された「電気分解チャンバーの陰極チャンバー」において行われるものであるので、本件発明1の「バイオリアクターにおけるCO2含有ガスからのメタンの製造方法」に相当する。
甲1発明及び甲2発明の「水素栄養性メタン生成古細菌」は、本件発明1の「メタン生成微生物」に相当する。そして、本件明細書の段落【0056】には、「連続プロセスにおけるメタン生成微生物の培養に関し、そのような連続性は、メタン生成における連続性及び培養における連続性として理解」されることが記載されているところ、甲1発明又は甲2発明においても、少なくとも一定期間は連続的にメタン生成ないし培養が行われるものと解されるから、甲1発明及び甲2発明の「水素栄養性メタン生成古細菌の培養物を調製する工程」は、本件発明1の「連続プロセスでメタン生成微生物を培養すること」に相当する。
甲1発明及び甲2発明の「電気分解チャンバーの陰極チャンバーに二酸化炭素を供給する工程」は、本件発明1の「CO2含有ガスを準備すること」に相当する。
甲1発明及び甲2発明の「陰極チャンバーからメタンを回収する工程」は、本件発明1の「メタンまたはメタン富化ガス組成物を回収すること」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明、甲2発明とは、
「a.連続プロセスでメタン生成微生物を培養すること;
b.CO2含有ガスを準備すること;
e.メタンまたはメタン富化ガス組成物を回収すること;
を含む、バイオリアクターにおけるCO2含有ガスからのメタンの製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1では、「準備するCO2含有ガス」が「H2S及び/またはO2を含む」ことが特定されているのに対し、
甲1発明、甲2発明は、そのような特定がない点。
<相違点2>
本件発明1は、「c.前記メタン生成微生物の培養物に、CO2:H2が1:0.6~1:5である化学量論比で追加のH2を供給すること」を含むものであるのに対し、
甲1発明、甲2発明では、そのような工程を含むことが特定されていない点。
<相違点3>
本件発明1は、「d.適切な量の酸及び/または塩基を添加することによって、pH7.1~8の所定の値のpH値に維持するために前記pH値を連続的に制御及び調節すること」を含むものであるのに対し、
甲1発明、甲2発明では、そのような工程を含むことが特定されていない点。
イ 判断
本件明細書の段落【0042】、【0065】、【0068】、【0113】の記載に照らせば、本件発明1は、培養物のpHの制御・調節を行うことにより、酸素、硫化水素(H2S)のようなガス汚染物質の存在下でも連続的なメタン生成を可能にしたものであり、実施例3の図1における実行時間501時間以降のメタン生成速度とpH値のデータからすると、pH値を7.1~8に維持する場合には、H2Sの存在下でも連続的なメタン生成が可能となることが理解できる。したがって、本件発明1が、連続的にメタンを生成できるという効果を発揮する上で、相違点1に係る本件発明1の構成と、相違点3に係る本件発明1の構成とは密接に関連する一連の構成であるといえ、方法の発明における一連の構成として把握されるべきものであるから、相違点1及び相違点3をまとめて検討する。
甲1及び甲2の段落[0183](甲1w、甲2w)には、バイオリアクターから除去されるメタンガスは、適切には約450ppm未満の硫化水素を含むことが、甲1及び甲2の段落[0266](甲1x、甲2x)には、放出源からの二酸化炭素は、硫化水素、酸素等の他のガスと混合されてもよいことが、甲1及び甲2の段落[0110](甲1l、甲2l)には、メタン生成微生物は、培養液中で、約3.5~約10のpH範囲でほぼ定常的な増殖期に適応されることが、甲1及び甲2の段落[0182](甲1v、甲2v)には、pHは、必要に応じて、酸(例えば、HCl)または塩基(例えば、NaOHまたはNH4OH)を添加することによって制御できることがそれぞれ記載されているものの、甲1及び甲2には、メタン生成微生物を用いたメタン生成において、H2S及び/またはO2を含むCO2含有ガスを用い、かつ、培養物のpH値を7.1~8の範囲に維持することを動機付ける記載や示唆は見当たらない。
そして、甲3、甲4、さらには甲5、甲6にも、メタン生成微生物を用いたメタン生成において、H2S及び/またはO2を含むCO2含有ガスを用い、かつ、培養物のpH値を7.1~8の範囲に維持することを動機付ける記載や示唆は見当たらない。
そうすると、甲1~甲6の記載を勘案しても、甲1発明又は甲2発明において、「H2S及び/またはO2を含む準備するCO2含有ガスを準備すること」、及び、「d.適切な量の酸及び/または塩基を添加することによって、pH7.1~8の所定の値のpH値に維持するために前記pH値を連続的に制御及び調節すること」が当業者に動機づけられるとは認められない。
一方、本件発明1は、既に述べたとおり、相違点1と相違点3を備えることで、連続的にメタンを生成できるという効果を奏するものであるが、当該効果は、甲1~甲6の記載から、当業者が予測できないものである。
したがって、本件発明1は、相違点2の容易想到性について検討するまでもなく、甲1~甲6の記載を勘案しても、甲1発明又は甲2発明に基づき、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
(4)本件発明2~13について
本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~13は、本件発明1と同様の理由により、甲1発明又は甲2発明、及び、甲1~甲6の記載に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
(5)申立人の主張について
申立人は、甲1及び甲2の段落[0183](甲1w、甲2w)には、バイオリアクターから除去されるメタンガスは、適切には約450ppm未満の硫化水素を含むことが記載されており、甲1及び甲2の段落[0266](甲1x、甲2x)には、放出源からの二酸化炭素は、硫化水素、酸素等と混合されてもよいことが記載されているから、相違点1は、一致点である旨主張している。
しかしながら、申立人が引用する甲1及び甲2の段落[0183]の記載は、発明の詳細な説明中の「培養条件」の項の記載であり、甲1及び甲2の段落[0177](甲1u、甲2u)の「好適な任意の条件の組の下で培養することができる」、同段落[0183]の「一実施形態においては」の記載からも明らかなように、特許請求の範囲に記載されたメタンの製造方法を実施する場合に、適用可能な培養条件を単に例挙したにとどまるものであって、甲1及び甲2の段落[0034](甲1c、甲2c)、[0037](甲1d、甲2d)、[0183](甲1w、甲2w)の培養プロセスとして適用可能な培養条件である「バッチ、流加バッチ、連続、半連続、または灌流モード」のうちの「連続」プロセスと組み合わされた具体的な実施態様として開示したものとは認められない。そうすると、申立人が本件発明1と甲1又は甲2記載の発明との一致点であると認定されるべきであるとする構成を備えたメタンガスの製造方法が甲1又は甲2に記載されているとみることはできない。
また、甲1及び甲2の段落[0266]に記載される「硫化水素」や「酸素」は、放出源からの二酸化炭素に混合してもよいガスとして例示的に列挙されたものであるし、同段落には、放出源からの二酸化炭素は実質的に純粋であってもよいことも記載されているから、必ずしも放出源からの二酸化炭素に、硫化水素や酸素を混合させるとは限らない。さらに、同段落には、「ガス混合物は、直接バイオリアクター502に送ることもできるし、バイオリアクターに送る前にガス混合物から二酸化炭素を分離することもできる。」と記載されていることから、放出源からの二酸化炭素に他のガスを混合させた場合であっても、それをそのままバイオリアクターに送るとも限らない。そうすると、甲1及び甲2の段落[0266]の記載は、甲1発明及び甲2発明において、陰極チャンバーに供給される二酸化炭素として、硫化水素や酸素を含むものを用いることを記載ないし示唆するものではない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
また、申立人は、甲3の段落[0010](甲3a)には、バイオリアクターから除去されるメタンガスは、適切には約450ppm未満の硫化水素を含むことが記載されていると指摘するところ、当該指摘の趣旨は甲1発明又は甲2発明におけるCO2含有ガスが硫化水素を含むものであることないしCO2含有ガスに硫化水素を含ませることが容易になし得ることをいうものと認められる。
しかしながら、申立人が引用する上記記載は、「一実施形態においては」の記載からも明らかなように、特許請求の範囲に記載されたメタンの製造方法を実施する場合に、適用可能な培養条件を単に例挙したにとどまるものであって、甲1発明又は甲2発明におけるCO2含有ガスが硫化水素を含むことの根拠とはなり得ず、甲1発明又は甲2発明におけるCO2含有ガスに硫化水素を含ませるための動機付けとなりうる記載も見いだせない。したがって、申立人の甲3に係る指摘を採用することはできない。
また、甲4の第4欄第59行~第5欄第5行(甲4a)には「排ガス中のCO2からO2を分離して、」との記載があることを理由に、申立人は、当該記載から、甲1発明又は甲2発明におけるCO2含有ガスにO2が含まれることないしCO2含有ガスにO2を含ませることが容易になし得る旨主張するものと認められる。
しかしながら、甲1及び甲2の段落[0139]~[0140]には、それぞれ、嫌気性生物は低酸素状態で最適に成長し、いくつかの実施形態では、生物反応器は酸素を実質的に排除して、高レベルのメタン生成を促進すること、いくつかの実施形態では、システムは、生物反応器に供給される CO2ストリーム中の酸素の存在を低減するさまざまな方法および/または機能を含むこと、絶対嫌気性メタン生成微生物がメタン形成を触媒するために使用される場合、酸素の存在はプロセスの性能に悪影響を及ぼし、生成ガスを汚染する可能性があること、CO2ストリーム中の酸素の存在を低減することは、プロセスを改善するのに役立つこと、一実施形態では、酸素は、生物反応器内のガスストリームの前処理によって除去されることが記載されている(甲1o、甲2o)のであるから、甲1発明又は甲2発明におけるCO2含有ガスにO2が含まれるとは直ちにいえないし、CO2含有ガスにO2を含ませるべきではないことが記載されていることを考慮すると、CO2含有ガスにO2を含ませる動機付けがあるということもできない。
申立人は、甲1及び甲2の段落[0110](甲1l、甲2l)には、「メタン生成微生物(例えば、古細菌)は、培養において、約3.5~約10(例えば、約5.0~約8.0、約6.0~約7.5)のpH範囲におけるほぼ定常的な増殖期に適応される」ことが記載されており、段落[0182](甲1v、甲2v)には、「pHは、必要に応じて、CO2をスパージングすることによって、および/または酸(例えば、HCl)または塩基(例えば、NaOHまたはNH4OH)を添加することによって制御することができる」ことが記載されていることから、甲1には、「適切な量の酸及び/または塩基を添加することによって、pH7.1~10の所定の値のpH値に維持するために前記pH値を制御及び調節すること」が記載されている旨主張する。
しかしながら、甲1及び甲2の段落[0111](甲1l、甲2l)の「培養における適応」という用語は、微生物(例えば、天然に存在する古細菌)が、以前の培養条件とは異なる一連の望ましい培養条件(例えば、高塩分、高温、炭素源の実質的な非存在、低pH等)下で培養されるプロセスを指す。望ましい条件下での培養は、望ましい条件下で生存および/または増殖(および/またはメタン生成)する改変された微生物(親系統(すなわち、未適応微生物)の子孫))を生じるのに十分な時間行われる。」と記載されていることに照らせば、申立人が引用する甲1及び甲2の段落[0110]は、望ましい条件下で生存および/または増殖する改変微生物を取得するための培養において適用可能なpH範囲を記載したものであり、甲1発明及び甲2発明における水素栄養性メタン生成古細菌の培養物のpHの範囲について記載したものであるとはいえない。また、本件発明1は、訂正によりpH値の範囲が「7.1~8」に限定されているところ、仮に甲1及び甲2の段落[0110]の記載が、甲1発明及び甲2発明における水素栄養性メタン生成古細菌の培養物のpHの範囲について記載したものであるとしても、甲1及び甲2の段落[0110]の記載から、「pH7.1~8」という限定された範囲にpH値を維持することが直ちに示唆されるとはいえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(6)まとめ
以上のとおりであるから、申立理由1(進歩性)は、理由がない。
2.申立理由2(サポート要件)について
本件発明1~13がサポート要件を満たすことは、上記第5で述べたとおりである。
申立人は、培養物のpH値を「連続的」に調節するための具体的な適切な手段が本件特許明細書に記載されていない点、「連続的」に制御及び調整する間隔について、例えば10分毎、5分毎、1分毎、1秒毎、及び0.1秒毎にモニターすることが含まれるのかは明らかでない点から、本件発明1~13はサポート要件を満たさない旨主張する。
しかしながら、本件明細書の段落【0080】の「本出願の意味において、並びに培養物全体で及び時間内に連続的なメタン生成活性を可能にし、安定化する目的で、調節は、連続してまたは連続的な形式で達成され、その結果、任意の所定の時間において、培養物のパラメータ、例えば培養物のpHは、測定すると所定の値と同じ値であることが分かる。」との記載によれば、「pH値を連続的に制御及び調整する」とは、任意の所定の時間において培養物のpHを測定したときに、所定のpHの範囲内となるようにpHを制御・調整することであるといえるから、連続的」に制御及び調整する間隔が明らかでないとしても、そのことにより本件発明の課題の達成に支障が生じるとはいえない。
また、当該技術分野において、pHセンサーやpHコントローラーを用いて培養液のpHを自動的に適切な値に維持することは本件特許の優先日前に周知であることから、本件明細書にpHを「連続的」に調節するための具体的な手段が記載されていないとしても、そのことにより本件発明の課題の達成に支障が生じるとはいえない。
よって、申立人の上記主張は理由がない。
しがって、申立理由2(サポート要件)は、理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては、本件発明1~13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700518