特許異議申立
2022-700715
空調装置
- 審判番号
- 2022-700715
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-159467
- 登録番号
- 7011012
- 請求日
- 2022年07月25日
- 審決日
- 2023年09月28日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱電機株式会社
- 【権利者代理人】木村 満
- 【権利者代理人】八島 耕司
- 【権利者代理人】美恵 英樹
- 【権利者代理人】渡邉 幸男
- 【権利者代理人】宮脇 良平
- 【権利者代理人】龍竹 史朗
- 【異議申立人】吉田 真理奈
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 充
- 審判官 水野 治彦
- 審判官 間中 耕治
- 分類
- P1651.121-YAA(F24F) / P1651.851-YAA(F24F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第7項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7011012号発明「空調装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7011012号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1ないし5]、[6、7]について訂正することを認める。
特許第7011012号の請求項1ないし3、6及び7に関する特許を維持する。
特許第7011012号の請求項4及び5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
1.手続の経緯
特許第7011012号の請求項1ないし7の特許(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、2018年(平成30年)8月15日を国際出願日とする特願2019-525934号の一部を令和元年6月17日に新たな特許出願とした特願2019-112365号の一部を令和2年9月24日に新たな特許出願としたものであって、平成4年1月17日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月26日に特許掲載公報が発行された。
その後、特許異議申立人吉田 真理奈(以下、「特許異議申立人」という。)により本件特許についての特許異議の申立てがされたものであり、その主な経緯は、次のとおりである。
令和4年7月25日 :特許異議申立人による請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立て。
令和4年11月16日付け:取消理由通知。
令和5年1月17日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求。
令和5年2月13日付け :訂正拒絶理由通知。
令和5年3月14日 :特許権者による意見書及び手続補正書の提出。
令和5年3月30日付け :取消理由通知(以下、「決定の予告」という。)。
令和5年5月23日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求。
なお、令和5年1月17日に特許権者がした訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、特許異議申立人に期間を指定して意見書を提出する機会を設けたが、特許異議申立人からの応答はなかった。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
令和5年5月23日の訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下の訂正事項1ないし訂正事項4のとおりである。
ア 一群の請求項1ないし5に係る訂正
(ア) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記空調制御部は、前記部分冷却除湿運転を行う場合には、前記膨張弁の開度を、前記取得部により取得された前記蒸発温度が前記室内熱交換器に吸い込まれる前記空気の露点温度よりも低くなる開度に制御する、」と記載されているのを、「前記空調制御部は、前記取得部により取得された前記湿度と前記室内空間の設定湿度との湿度差が湿度閾値より大きい場合に、前記取得部により取得された前記温度と前記室内空間の設定温度との温度差に応じて前記弱冷房除湿運転と前記部分冷却除湿運転とを行い、前記空調制御部は、前記弱冷房除湿運転を行う場合には、前記膨張弁の開度を、前記室内熱交換器における前記冷媒の出口での前記冷媒の過熱度がゼロに近くなる開度に制御し、前記部分冷却除湿運転を行う場合には、前記膨張弁の開度を、前記取得部により取得された前記蒸発温度が前記室内熱交換器に吸い込まれる前記空気の露点温度よりも低くなる開度に制御する、」に訂正する。請求項1を引用する請求項2及び請求項3も同様に訂正する。
(イ) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記空調制御部は、前記取得部により取得された前記温度と前記室内空間の設定温度との温度差が温度閾値より小さくなると、前記弱冷房除湿運転から前記部分冷却除湿運転に変える、」と記載されているのを、「前記空調制御部は、前記湿度差が前記湿度閾値より大きい場合において、前記取得部により取得された前記温度と前記室内空間の設定温度との温度差が温度閾値より小さくなると、前記弱冷房除湿運転から前記部分冷却除湿運転に変える、」に訂正する。
(ウ) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記空調制御部は、前記取得部により取得された前記温度と前記室内空間の設定温度との温度差が前記温度閾値より大きくなると、前記部分冷却除湿運転から前記弱冷房除湿運転に変える、」と記載されているのを、「前記空調制御部は、前記湿度差が前記湿度閾値より大きい場合において、前記取得部により取得された前記温度と前記室内空間の設定温度との温度差が前記温度閾値より大きくなると、前記部分冷却除湿運転から前記弱冷房除湿運転に変える、」に訂正する。
(エ) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4及び請求項5を削除する。
(オ) 一群の請求項
訂正前の請求項1ないし請求項5について、請求項2ないし請求項5は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用した請求項である。そして、訂正事項1によって記載が訂正される訂正後の請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正後の請求項1ないし請求項5は、訂正前の請求項1ないし請求項5に対応する。したがって、本件訂正請求における訂正事項1ないし4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。
イ 一群の請求項6、7に係る訂正
(ア) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「前記空調制御部は、前記部分冷却除湿運転を行う場合には、前記第1の膨張弁の開度を、前記取得部により取得された前記蒸発温度が前記室内熱交換器に吸い込まれる前記空気の露点温度よりも低くなる開度に制御する、」と記載されているのを、「前記空調制御部は、前記取得部により取得された前記湿度と前記室内空間の設定湿度との湿度差が湿度閾値より大きい場合に、前記取得部により取得された前記温度と前記室内空間の設定温度との温度差に応じて前記弱冷房除湿運転と前記部分冷却除湿運転とを行い、前記空調制御部は、前記弱冷房除湿運転を行う場合には、前記第1の膨張弁の開度を、前記室内熱交換器における前記冷媒の出口での前記冷媒の過熱度がゼロに近くなる開度に制御し、前記部分冷却除湿運転を行う場合には、前記第1の膨張弁の開度を、前記取得部により取得された前記蒸発温度が前記室内熱交換器に吸い込まれる前記空気の露点温度よりも低くなる開度に制御する、」に訂正する。請求項6を引用する請求項7も同様に訂正する。
(イ)一群の請求項
訂正前の請求項6及び請求項7について、請求項7は、請求項6を引用した請求項である。そして、訂正事項5によって記載が訂正される訂正後の請求項6に連動して訂正されるものであるから、訂正後の請求項6及び請求項7は、訂正前の請求項6及び請求項7に対応する。したがって、本件訂正請求における訂正事項5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項1ないし訂正事項5について、訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否を検討する。
ア 一群の請求項1~5に係る訂正
(ア) 訂正の目的
訂正事項1は、「前記空調制御部」に係る発明特定事項について、「前記空調制御部は、前記取得部により取得された前記湿度と前記室内空間の設定湿度との湿度差が湿度閾値より大きい場合に、前記取得部により取得された前記温度と前記室内空間の設定温度との温度差に応じて前記弱冷房除湿運転と前記部分冷却除湿運転とを行」うと限定するとともに、「前記空調制御部は、前記部分冷却除湿運転を行う場合には、前記膨張弁の開度を、前記取得部により取得された前記蒸発温度が前記室内熱交換器に吸い込まれる前記空気の露点温度よりも低くなる開度に制御する、」との発明特定事項を「前記空調制御部は、前記弱冷房除湿運転を行う場合には、前記膨張弁の開度を、前記室内熱交換器における前記冷媒の出口での前記冷媒の過熱度をゼロに近くなる開度に制御し、前記部分冷却除湿運転を行う場合には、前記膨張弁の開度を、前記取得部により取得された前記蒸発温度が前記室内熱交換器に吸い込まれる前記空気の露点温度よりも低くなる開度に制御する、」と限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。
訂正事項2は、「前記空調制御部は、前記取得部により取得された前記温度と前記室内空間の設定温度との温度差が温度閾値より小さくなると、前記弱冷房除湿運転から前記部分冷却除湿運転に変える」との発明特定事項を「前記空調制御部は、前記湿度差が前記湿度閾値より大きい場合において、前記取得部により取得された前記温度と前記室内空間の設定温度との温度差が温度閾値より小さくなると、前記弱冷房除湿運転から前記部分冷却除湿運転に変える」と限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。
訂正事項3は、「前記空調制御部は、前記取得部により取得された前記温度と前記室内空間の設定温度との温度差が前記温度閾値より大きくなると、前記部分冷却除湿運転から前記弱冷房除湿運転に変える」との発明特定事項を「前記空調制御部は、前記湿度差が前記湿度閾値より大きい場合において、前記取得部により取得された前記温度と前記室内空間の設定温度との温度差が前記温度閾値より大きくなると、前記部分冷却除湿運転から前記弱冷房除湿運転に変える」と限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。
訂正事項4は、請求項4及び請求項5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。
したがって、訂正事項1ないし訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書に掲げる事項を目的とした訂正と認める。
(イ) 新規事項の有無
訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0063】、【0160】ないし【0164】の記載事項に基づく訂正であるから、新規事項を導入するものではない。
訂正事項2及び訂正事項3は、いずれも願書に添付した明細書の段落【0160】ないし【0164】の記載事項に基づく訂正であるから、新規事項を導入するものではない。
訂正事項4は、請求項の削除を目的とした訂正であるから、新規事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1ないし訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合すると認める。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1ないし訂正事項4は、(ア)にて上述した目的の訂正であって、発明のカテゴリー、対象を変更するものに該当しないことから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、訂正事項1ないし訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合すると認める。
イ 一群の請求項6、7に係る訂正
(ア) 訂正の目的
訂正事項5は、「前記空調制御部」に係る発明特定事項について、「前記空調制御部は、前記取得部により取得された前記湿度と前記室内空間の設定湿度との湿度差が湿度閾値より大きい場合に、前記取得部により取得された前記温度と前記室内空間の設定温度との温度差に応じて前記弱冷房除湿運転と前記部分冷却除湿運転とを行」うと限定するとともに、「前記空調制御部は、前記部分冷却除湿運転を行う場合には、前記第1の膨張弁の開度を、前記取得部により取得された前記蒸発温度が前記室内熱交換器に吸い込まれる前記空気の露点温度よりも低くなる開度に制御する、」との発明特定事項を「前記空調制御部は、前記弱冷房除湿運転を行う場合には、前記第1の膨張弁の開度を、前記室内熱交換器における前記冷媒の出口での前記冷媒の過熱度をゼロに近くなる開度に制御し、前記部分冷却除湿運転を行う場合には、前第1の記膨張弁の開度を、前記取得部により取得された前記蒸発温度が前記室内熱交換器に吸い込まれる前記空気の露点温度よりも低くなる開度に制御する、」と限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書に掲げる事項を目的とした訂正と認める。
(イ) 新規事項の有無
訂正事項5は、願書に添付した明細書の段落【0063】、【0160】ないし【0164】の記載事項に基づく訂正であるから、新規事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合すると認める。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、(ア)にて上述した目的の訂正であって、発明のカテゴリー、対象を変更するものに該当しないことから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合すると認める。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1ないし5]、[6、7]について訂正を認める。
3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項1ないし請求項7に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし請求項7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
冷媒配管を流れる冷媒を減圧して膨張させる膨張弁と、前記膨張弁で減圧された前記冷媒と室内空間の空気との間で熱交換を行う室内熱交換器と、を有し、前記室内空間を空調する空調部と、
前記室内空間の温度及び湿度と、前記冷媒配管における前記室内熱交換器の上流側に設置された蒸発温度センサにより検知された、前記室内熱交換器に前記冷媒が流入する流入口における前記冷媒の蒸発温度と、を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記温度及び前記湿度に応じて、前記空調部に前記室内空間を除湿させる弱冷房除湿運転と、前記空調部に前記室内空間を除湿させる、前記弱冷房除湿運転より冷房能力が低い部分冷却除湿運転と、を行う空調制御部と、を備え、
前記空調制御部は、前記取得部により取得された前記湿度と前記室内空間の設定湿度との湿度差が湿度閾値より大きい場合に、前記取得部により取得された前記温度と前記室内空間の設定温度との温度差に応じて前記弱冷房除湿運転と前記部分冷却除湿運転とを行い、
前記空調制御部は、前記弱冷房除湿運転を行う場合には、前記膨張弁の開度を、前記室内熱交換器における前記冷媒の出口での前記冷媒の過熱度がゼロに近くなる開度に制御し、前記部分冷却除湿運転を行う場合には、前記膨張弁の開度を、前記取得部により取得された前記蒸発温度が前記室内熱交換器に吸い込まれる前記空気の露点温度よりも低くなる開度に制御する、
空調装置。
【請求項2】
前記空調制御部は、前記湿度差が前記湿度閾値より大きい場合において、前記取得部により取得された前記温度と前記室内空間の設定温度との温度差が温度閾値より小さくなると、前記弱冷房除湿運転から前記部分冷却除湿運転に変える、
請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記空調制御部は、前記湿度差が前記湿度閾値より大きい場合において、前記取得部により取得された前記温度と前記室内空間の設定温度との温度差が前記温度閾値より大きくなると、前記部分冷却除湿運転から前記弱冷房除湿運転に変える、
請求項2に記載の空調装置。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
冷媒配管を流れる冷媒を減圧して膨張させる第1の膨張弁と、前記第1の膨張弁で減圧された前記冷媒と室内空間の空気との間で熱交換を行う室内熱交換器と、を有し、前記室内空間を空調する空調部と、
前記室内空間の温度及び湿度と、前記冷媒配管における前記室内熱交換器の上流側に設置された蒸発温度センサにより検知された、前記室内熱交換器に前記冷媒が流入する流入口における前記冷媒の蒸発温度と、を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記温度及び前記湿度に応じて、前記空調部に前記室内空間を除湿させる弱冷房除湿運転と、前記空調部に前記室内空間を除湿させる、前記弱冷房除湿運転より冷房能力が低い部分冷却除湿運転と、を行う空調制御部と、を備える空調装置であって、
前記室内熱交換器は、
前記室内空間の空気と前記冷媒との間で熱交換を行う第1の熱交換器と、
前記第1の熱交換器の下流側に設置されており、前記室内空間の空気と前記冷媒との間で熱交換を行う第2の熱交換器と、
前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器との間に設置されており、前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器との間を流れる前記冷媒の圧力を調整する第2の膨張弁と、を備え、
前記空調制御部は、前記取得部により取得された前記湿度と前記室内空間の設定湿度との湿度差が湿度閾値より大きい場合に、前記取得部により取得された前記温度と前記室内空間の設定温度との温度差に応じて前記弱冷房除湿運転と前記部分冷却除湿運転とを行い、
前記空調制御部は、前記弱冷房除湿運転を行う場合には、前記第1の膨張弁の開度を、前記室内熱交換器における前記冷媒の出口での前記冷媒の過熱度がゼロに近くなる開度に制御し、前記部分冷却除湿運転を行う場合には、前記第1の膨張弁の開度を、前記取得部により取得された前記蒸発温度が前記室内熱交換器に吸い込まれる前記空気の露点温度よりも低くなる開度に制御する、
空調装置。
【請求項7】
前記空調制御部は、前記取得部により取得された前記温度及び前記湿度に応じて、前記弱冷房除湿運転と、前記部分冷却除湿運転と、再熱除湿運転と、を行い、
前記空調制御部は、前記再熱除湿運転を行う場合には、前記弱冷房除湿運転及び前記部分冷却除湿運転を行う場合よりも、前記第2の膨張弁の開度を絞る、
請求項6に記載の空調装置。」
(2)決定の予告の概要
訂正前の請求項1ないし請求項7に係る特許に対する決定の予告の概要は以下のとおりである。
本件特許の請求項1ないし請求項7に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証ないし甲第6号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
<引用した文献>
甲第1号証:特開2014-88977号公報
甲第2号証:特開2013-221669号公報
甲第4号証:特開2004-108618号公報
甲第5号証:特開2002-61922号公報
甲第6号証:特開2003-254583号公報
<請求項に係る発明と引用文献との関係>
請求項1に係る発明は、甲1発明及び技術常識または甲2記載事項に示される公知の技術的事項に基いて、また、甲4発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明できた。
請求項2に係る発明は、甲1発明及び甲2記載事項、並びに、甲1に記載の示唆または甲6記載事項に基いて、また、甲4発明及び甲2記載事項に示される公知の技術的事項、並びに、甲1に記載の示唆または甲6記載事項に基いて、当業者が容易に発明できた。
請求項3に係る発明は、甲1発明及び甲2、甲5記載事項に示される公知の技術的事項、並びに、甲1に記載の示唆または甲6記載事項に基いて、当業者が容易に発明できた、または、甲4発明及び甲2、甲5記載事項に示される公知の技術的事項、並びに、甲1に記載の示唆または甲6記載事項に基いて、当業者が容易に発明できた。
請求項4に係る発明は、甲1発明、甲1記載事項及び甲2記載事項に示される公知の技術的事項、並びに甲5記載事項または甲6記載事項に基いて、当業者が容易に発明できた。
請求項5に係る発明は、甲1発明、甲1記載事項及び甲2記載事項に示される公知の技術的事項、並びに甲5記載事項または甲6記載事項に基いて、当業者が容易に発明できた。
請求項6に係る発明は、甲4発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明できた。
請求項7に係る発明は、甲4発明、甲4記載事項及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明できた。
(3)甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証ないし甲第6号証の記載
ア 甲第1号証
甲第1号証は、「空気調和装置」に関し、次の記載事項及び図示事項がある。(下線は、当審にて付加したものである。以下同様。)
(ア)「【0020】
(1)空気調和装置1の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る空気調和装置1の構成図である。図1において、空気調和装置1は、空調室外機2と空調室内機10とを備えている。空気調和装置1は、冷媒が充填された冷媒回路100を備えている。冷媒回路100は、空調室外機2に収容された室外側回路部と空調室内機10に収容された室内側回路部とがガス側連絡配管117a及び液側連絡配管117bによって接続されることによって構成されている。
【0021】
(2)空調室外機2の構成
空調室外機2における室外側回路部には、圧縮機101、四路切換弁102、室外熱交換器103、及び膨張弁104が接続されている。」
(イ)「【0025】
(3)空調室内機10の構成
図1において、室内側回路部には、補助熱交換器13a、主熱交換器13bが接続されている。補助熱交換器13a及び主熱交換器13bは、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。この補助熱交換器13a及び主熱交換器13bを総称して室内熱交換器13と呼ぶ。この室内熱交換器13の近傍には、室内空気を室内熱交換器13へ送るための室内ファン14が設けられている。」
(ウ)「【図1】
[図:0001404754000001.jpg]
」
(エ)「【0026】
(4)空調室内機10の詳細構成
図2は、運転時の空調室内機10の斜視図である。また、図3は、図2における空調室内機10の断面図である。図2及び図3において、空調室内機10には、本体ケーシング11、室内熱交換器13、室内ファン14、底フレーム16、及び制御部40が搭載されている。
【0027】
(4-1)本体ケーシング11
本体ケーシング11は、天面部11a、前面パネル11b、背面板11c及び下部水平板11dを有し、内部に室内熱交換器13、室内ファン14、底フレーム16、フィルタ24、及び制御部40を収納している。」
(オ)「【図2】
[図:0001404754000002.jpg]
」
(カ)「【0047】
(4-10)各種センサ
図1に示すように、冷媒回路100において、蒸発温度センサ105が室外熱交換器103側から視て膨張弁104の下流側配管に取り付けられている。蒸発温度センサ105は、蒸発温度を検知する。
【0048】
また、補助熱交換器13aの上端近くの風下側(図4参照)には、室内熱交温度センサ106が配置されている。室内熱交温度センサ106は、補助熱交換器13aにおいて液冷媒の蒸発が終了したことを検知する。
【0049】
さらに、本体ケーシング11側面のスリット11e(図2参照)の奥側には、室内温度センサ107が配置されている。室内温度センサ107は、室内温度を検知する。また、室内温度センサ107の近傍には、湿度検出手段としての湿度センサ108が配置されている。」
(キ)「【0052】
圧縮機101から吐出された高圧の冷媒は、室外熱交換器103で室外空気と熱交換して凝縮する。室外熱交換器103を通過した冷媒は、膨張弁104を通過する際に減圧され、その後に補助熱交換器13a及び主熱交換器13bで室内空気と熱交換して蒸発する。補助熱交換器13a及び主熱交換器13bを通過した冷媒は、圧縮機101へ吸入されて圧縮される。」
(ク)「【0055】
(5-3)除湿運転
除湿運転では、冷媒の流れは冷房運転時と同じである。この空気調和装置1では、制御部40は、第1除湿運転と第2除湿運転とを実行可能である。第1除湿運転は、主熱交換器13bの冷媒出口138(図4参照)で冷媒が蒸発をほぼ完了するように膨張弁104の開度を制御して空調対象空間の除湿を行う運転である。第2除湿運転は、膨張弁104を出た冷媒が補助熱交換器13aの途中で蒸発を完了するように膨張弁104の開度を制御して空調対象空間の除湿を行う運転である。制御部40は、空調対象空間の湿度と目標湿度との差が所定範囲から外れているときは第1除湿運転を行い、空調対象空間の湿度と目標湿度との差が所定範囲内にあるときは第2除湿運転を行う。以下、除湿運転の制御について、フローチャートを参照しながら説明する。
【0056】
図5は、除湿運転の制御フローチャートである。図5において、制御部40は、ステップS1において、リモコン等から除湿運転指令があるか否かを判定し、除湿運転指令がある場合はステップS2へ進み、除湿運転指令がない場合は待機して除湿運転指令があるか否かの判定を継続する。
【0057】
制御部40は、ステップS2において、室温とリモコン等で設定される目標温度との差が所定値d(例えば、d=4deg)未満であるか否かを判定し、その差が所定値d未満のときはステップS3へ進み、その差が所定値d以上のときはステップS7へ進む。
【0058】
制御部40は、ステップS3において、現在湿度とリモコン等で設定される目標湿度との差が所定値h1(例えば、h1=20%)未満であるか否かを判定し、その差が所定値h1未満のときはステップS4へ進み、その差が所定値h1以上のときはステップS7へ進む。
【0059】
制御部40は、ステップS4において、第2除湿運転を実行する。室温と目標温度との差が所定値d未満で、且つ、現在湿度と目標湿度との差が所定値h1未満であるとき、潜熱負荷が小さくて冷房運転では除湿できない状態にある。このようなとき、制御部40は、膨張弁104の開度を急激に絞って補助熱交換器13aの一部だけを蒸発域として利用する。補助熱交換器13aの冷媒入口131(図4参照)から供給された液冷媒は、補助熱交換器13aの途中で全て蒸発するので、補助熱交換器13aの冷媒入口131近くの一部の範囲だけが蒸発域となり、補助熱交換器13aの蒸発域の下流側の範囲と主熱交換器13bとはいずれも過熱域となる。
【0060】
そして、補助熱交換器13aの上端近くの過熱域を流れた冷媒が、補助熱交換器13aの下方部分の風下側に配置された前面主熱交換器13baの下方部分を流れる。したがって、吸込口12からの吸込空気において、補助熱交換器13aの蒸発域で冷却された空気は、前面主熱交換器13baで加熱された後、吹出口15から吹き出される。
【0061】
他方、吸込口12からの吸込空気において、補助熱交換器13aの過熱域と前面主熱交換器13baを流れた空気と、背面主熱交換器13bbを流れた空気とは、室内温度と略同一の温度で、吹出口15から吹き出される。
【0062】
つまり、補助熱交換器13aを通過する空気は除湿され温度が低下するが、主熱交換器13bを通過する空気は室温程度の空気であるので、両者が混合されることで温度を下げ過ぎることなく除湿が行われる。
【0063】
第2除湿運転時の補助熱交換器13aの上端近くの過熱域では、吸込口12からの吸込空気がほとんど冷却されない。したがって、室内熱交温度センサ106で検知される温度が、室内温度センサ107で検知される室内温度と略同一である場合には、補助熱交換器13aの途中で蒸発が終了して、補助熱交換器13aの上端近くの範囲が過熱域であることを検知できる。
【0064】
なお、室内熱交温度センサ106は、室内熱交換器13の中間部の伝熱管に配置されているので、室内熱交換器13の中間部近くにおいて、冷暖房運転での凝縮温度または蒸発温度を検知できる。
【0065】
次に、制御部40は、ステップS5において、現在湿度と目標湿度との差が所定値h2以上であるか否かを判定し、その差が所定値h2以上のときはステップS6へ進み、その差が所定値h2未満のときはステップS4の第2除湿運転を継続する。
【0066】
例えば、現在湿度と目標湿度との差が所定値h2以上となるのは、外気温度が変化により潜熱(湿度)負荷が増大した場合が想定されている。
【0067】
制御部40は、ステップS6において、運転停止指令の有無を判断し、運転停止指令がある場合はステップS10に進んで運転を停止し、運転停止指令がない場合はステップS7に移行して第1除湿運転を実行する。つまり、ステップS5からステップS6を経てステップS7へ移行する過程は、制御部40が湿度の増大によって第2除湿運転では対処しきれないと判断したときに、運転停止指令がないことを確認した上で除湿運転を第1除湿運転に切り換えることを意味している。
【0068】
なお、ステップS7における第1除湿運転は、主熱交換器13bの冷媒出口138で冷媒が蒸発をほぼ完了するように膨張弁104の開度を制御して空調対象空間の除湿を行う運転であり、冷房運転による除湿とほとんど変わらないので説明を省略する。
【0069】
制御部40は、ステップS7において第1除湿運転を実行し、ステップS8において現在湿度と目標湿度との差が所定値h3未満であるか否かを判定し、その差が所定値h3未満のときはステップS9へ進み、その差が所定値h3以上のときはステップS7の第1除湿運転を継続する。
【0070】
制御部40は、ステップS9において、運転停止指令の有無を判断し、運転停止指令がある場合はステップS10に進んで運転を停止し、運転停止指令がない場合はステップS4に移行して第2除湿運転を実行する。つまり、ステップS8からステップS9を経てステップS4へ移行する過程は、制御部40がこのまま第1除湿運転を継続すると室温を下げ過ぎてしまう状態にまで湿度が低下したと判断したときに、運転停止指令がないことを確認した上で除湿運転を第2除湿運転に切り換えることを意味している。」
(ケ)「【0071】
なお、上記実施形態では、第1除湿運転および第2除湿運転のいずれかが実行されているとき、第1除湿運転と第2除湿運転との切換要否は現在湿度と目標湿度との差に基づいて判断されているが、それだけに限定されるものではなく、室温と目標温度との差が所定範囲内か否か、或いは、室温と目標温度との差が所定範囲から外れた後の経過時間が所定時間を越えたか否かを切換要否判断の条件として追加してもよい。」
(コ)「【図5】
[図:0001404754000003.jpg]
」
上記記載事項及び図示事項を総合し、整理すると、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「空調室外機2に収容された室外側回路部と空調室内機10に収容された室内側回路部とがガス側連絡配管117a及び液側連絡配管117bによって接続された冷媒回路100を流れる冷媒を減圧する膨張弁104と、前記膨張弁104で減圧された前記冷媒が室内空気と熱交換する補助熱交換器13a及び主熱交換器13bとを有し、前記室内空気を空調する冷媒回路100と、
室内温度を検知する室内温度センサ107と、前記室内温度センサ107の近傍に配置される湿度検出手段としての湿度センサ108と、前記膨張弁104の下流側配管に取り付けられた蒸発温度センサ105と、
室温とリモコン等で設定される目標温度との差が所定値d未満であるか否かを判定し、空調対象空間の湿度と目標湿度との差が所定値d未満のときは現在湿度と目標湿度の差が所定値h1未満であるか否かを判定し、その差が所定値h1未満のときは第2除湿運転を実行し、その差が所定値h1以上の時は第1除湿運転を実行する制御部40と、
を有する空気調和装置1であって、
前記第1除湿運転は、主熱交換器13bの冷媒出口138で冷媒が蒸発をほぼ完了するように膨張弁104の開度を制御して空調対象空間の除湿を行う運転であり、
前記第2除湿運転は、膨張弁104を出た冷媒が補助熱交換器13aの途中で蒸発を完了するように膨張弁104の開度を制御して空調対象空間の除湿を行う運転である
空気調和装置1。」
イ 甲第2号証
甲第2号証には、「空気調和機」に関し次の記載事項及び図示事項がある。
(ア)「【0033】
空気調和機1では、図1に示すように、室外機3に、冷媒回路において膨張弁13の下流側において蒸発温度を検知する蒸発温度センサ30が取り付けられる。そして、室内機2に、室内温度(室内機2の吸込口2aからの吸込空気の温度)を検知する室内温度センサ31と、補助熱交換器20において液冷媒の蒸発が終了したことを検知する室内熱交温度センサ32が取付けられる。
【0034】
室内熱交温度センサ32は、図3に示すように、補助熱交換器20の上端近くの風下側に配置される。そして、補助熱交換器20の上端近くの過熱域では、吸込口2aからの吸込空気がほとんど冷却されない。したがって、室内熱交温度センサ32で検知される温度が、室内温度センサ31で検知される室内温度と略同一である場合には、補助熱交換器20の途中で蒸発が終了して、補助熱交換器20の上端近くの範囲が過熱域であることを検知できる。また、室内熱交温度センサ32は、室内熱交換器14の中間部の伝熱管に配置される。したがって、室内熱交換器14の中間部近くにおいて、冷暖房運転での凝縮温度または蒸発温度を検知できる。
【0035】
図4に示すように、空気調和機1の制御部には、圧縮機10と、四方弁11、膨張弁13と、室内ファン16を駆動するモータ16aと、蒸発温度センサ30と、室内温度センサ31と、室内熱交温度センサ32とが接続される。したがって、制御部は、リモコンからの指令(運転開始操作や室内温度の設定温度等)や、蒸発温度センサ30で検知される蒸発温度、室内温度センサ31で検知される室内温度(吸込空気の温度)、室内熱交温度センサ32で検知される熱交中間温度に基づいて空気調和機1の運転を制御する。
【0036】
そして、空気調和機1では、所定の除湿運転モードにおいて、補助熱交換器20が、液冷媒が蒸発する蒸発域と蒸発域の下流側の過熱域を有するが、この蒸発域の範囲が、負荷に応じて変化するように、圧縮機10及び膨張弁13が制御される。ここで、負荷に応じて変化するとは、蒸発域に供給される熱量に応じて変化することであって、熱量は例えば室内温度(吸込空気の温度)と室内風量によって決まる。また、負荷は、必要除湿能力(必要冷房能力)に対応しており、例えば室内温度と設定温度との差に基づいて検知できる。
【0037】
圧縮機10は、室内温度と設定温度との差に基づいて制御される。室内温度と設定温度との差が大きい場合に負荷が大きいことから圧縮機10の周波数が増加され、室内温度と設定温度との差が小さい場合に負荷が小さいことから、圧縮機10の周波数が減少するように制御される。
【0038】
膨張弁13は、蒸発温度センサ30で検知される蒸発温度に基づいて制御される。上述したように、圧縮機10の周波数が制御された状態において、蒸発温度が目標蒸発温度(12℃)近くの所定範囲(10℃-14℃)内の温度になるように、膨張弁13が制御される。この蒸発温度の所定範囲は、圧縮機10の周波数によらず一定に制御されるのが好ましい。ただし、周波数によって、わずかに変化するようにしても実質的に一定であれば問題ない。」
(イ)「【図1】
[図:0001404754000004.jpg]
」
(ウ)「【0058】
また、本実施形態の空気調和機1では、圧縮機10及び膨張弁13が、蒸発温度が所定範囲内の温度になるように制御されるので、負荷に応じて補助熱交換器20の蒸発域の範囲を適正に変更できると共に、蒸発温度を除湿できる範囲に調整できる。」
上記記載事項及び図示事項を総合し、整理すると、甲第2号証には、以下の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されている。
「圧縮機10と室外熱交換機と膨張弁と室内熱交換機とを接続した冷媒回路を備えた空気調和機であって、除湿運転モードの運転の際、室内機の熱交換器に供給される熱量に応じて膨張弁13の開度を、補助熱交換器20が、液冷媒が蒸発する蒸発域と蒸発域の下流側の過熱域を有するようになる、室内空気を除湿できる目標蒸発温度の範囲になるように制御すること。」
ウ 甲第4号証
甲第4号証には、「空気調和機」に関し次の記載事項、図示事項及び認定事項がある。
(ア)「【0029】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態に係る空気調和機の構成図である。なお、以下の説明では、主として冷房運転モードで運転する場合につき説明する。この図において、コンプレッサ1で圧縮され高温高圧で気体化された冷媒は四方弁2を通って(図示された四方弁2内の冷媒経路は冷房時のものを示している)凝縮器としての室外熱交換器3に送出され、ここで外気との熱交換により凝縮液化され液冷媒とされるようになっている。この液冷媒は第1の電子膨張弁4で絞られることにより低温低圧の液冷媒となって第1の室内熱交換器5に送られ、更に第2の電子膨張弁6を通って第2の室内熱交換器7に送られるようになっている。低温低圧となった液冷媒は、蒸発器として機能するこれら2つの室内熱交換器5,7で室内空気と熱交換を行って気化し、低温低圧の気体状冷媒となる。室内空気はこのときの液冷媒との熱交換により熱を奪われるので、室温が低下することになる。そして、第2の室内熱交換器7からの気体状冷媒は、再度四方弁2を通ってコンプレッサ1の吸入側に送られ、このコンプレッサ1で圧縮されて上記と同様の過程を繰り返すようになっている。
【0030】
コンプレッサ1は、インバータ装置8からの電力供給により回転駆動されるようになっており、また、室外熱交換器3にはプロペラ型の室外ファン9が、室内熱交換器5,7には横流型の室内ファン10がそれぞれ取り付けられて熱交換が促進されるようになっている。これらインバータ装置8、室外ファン9、及び室内ファン10は、運転制御回路11からの制御信号により制御されるようになっている。
【0031】
そして、リモコン12からは、ユーザの操作により設定された室温設定値Ts及び湿度設定値Hsが出力されるようになっている。また、室内機の吹き出し口付近すなわち室内ファン10の付近には室温検出器13及び湿度検出器14が取り付けられており、これらからの室温検出値Ta及び湿度検出値Haも運転制御回路11に出力されるようになっている。更に、第2の室内熱交換器7の冷媒入口部及び冷媒出口部、並びに第1の室内熱交換器5の冷媒入口部にはそれぞれ熱交温度検出器15~17が取り付けられており、これらからの熱交温度Tc1~Tc3も運転制御回路11に出力されるようになっている。運転制御回路11は、これらの各信号の入力に基づき、インバータ装置8を介してコンプレッサ1の可変速制御を行うと共に、室外ファン9、及び室内ファン10を制御し、更に、第1及び第2の電子膨張弁4,6に対して開度指令PLS1,PLS2を出力してこれらの開度制御を行うようになっている。
【0032】
図2は、図1に示した空気調和機が有する運転モードの名称、及び各運転モードの特性を示す事項が記載された図表である。この図2から明らかなように、図1の空気調和機は、冷房運転及び暖房運転の双方の運転が可能なものであり、冷房運転モードとしては、少なくとも、通常冷房モード、過絞り冷房モード、冷房時再熱ドライモードの3つのモードを持ち、また、暖房運転モードとしては、少なくとも、暖房時再熱ドライモード、通常暖房モードの2つのモードを持っている。すなわち、図1の空気調和機は、室内機に2つの室内熱交換器5,7を有する再熱ドライ型の空気調和機であるため、冷房時再熱ドライモード及び暖房時再熱ドライモードを持っているのは当然であるが、これらのモードに加えて過絞り冷房モードも持っている。したがって、冷房運転に関しては通常冷房モード及び冷房時再熱ドライモードの2つのモードしか持っていなかった従来の空気調和機に比べてよりきめ細かな除湿制御を行うことが可能になっている。なお、製品として実際に製造される空気調和機においては、図2に示した運転モードの他に種々のモードが具備されている。
【0033】
図2の各運転モードにつき説明すると、まず、通常冷房モードでは、室外熱交換器3が凝縮器として機能すると共に、第1の室内熱交換器5及び第2の室内熱交換器7が蒸発器として機能するようになっている。この場合、蒸発器内を通る冷媒は主として2相領域のものであり、冷房時の顕熱能力は大きく(「大」の前に付されているマイナス符号は冷房時の能力であることを示している)、潜熱能力は小さなものとなっている。ここで、顕熱とは、空気の乾球温度を変化させるための熱のことであり、したがって、本明細書において顕熱能力とは室内温度を変化させるための能力を指すものとする。また、潜熱とは、空気の絶対湿度を変化させる水蒸気の蒸発又は凝縮に要する熱のことであり、したがって、本明細書において潜熱能力とは室内湿度を変化させるための能力を指すものとする。
【0034】
過絞り冷房モードでは、室外熱交換器3が凝縮器として機能すると共に、第1の室内熱交換器5及び第2の室内熱交換器7が蒸発器として機能するようになっている。但し、この場合の蒸発器内を通る冷媒は、第1の室内熱交換器5側では主として2相領域のものであり、第2の室内熱交換器7側では主としてガス領域のものとなる。そして、顕熱能力及び潜熱能力は共に中程度となっている。
【0035】
冷房時再熱ドライモードでは、室外熱交換器3及び第1の室内熱交換器5が凝縮器として機能すると共に、第2の室内熱交換器7が蒸発器として機能するようになっている。そして、顕熱能力は小であり、潜熱能力は大となっている。
【0036】
暖房時再熱ドライモードでは、室外熱交換器3及び第1の室内熱交換器5が蒸発器として機能すると共に、第2の室内熱交換器7が凝縮器として機能するようになっている。そして、暖房時の顕熱能力は中程度であり、潜熱能力は大となっている。
【0037】
通常暖房モードでは、室外熱交換器3が蒸発器として機能すると共に、第1の室内熱交換器5及び第2の室内熱交換器7が凝縮器として機能するようになっている。そして、暖房時の顕熱能力は大であり、潜熱能力はゼロとなっている。
【0038】
なお、図2の図表では第1の電子膨張弁4及び第2の電子膨張弁6の開度制御の内容については記載を省略しているので、これにつき簡単に説明しておく。第1の電子膨張弁4については、通常冷房モード及び通常冷房モードにおいて各モード固有の開度に固定されているが、過絞り冷房モードにおいては基本的には第2の室内熱交換器7を流れるガス冷媒の過熱度(Tc2-Tc1)を制御するために可変するようになっている。そして、冷房時再熱ドライモード及び暖房時再熱ドライモードにおいて、従来は全開状態としていたが、本実施形態ではコンプレッサ1の回転数に応じて可変できるようにしている(これについては、冷房時の場合を例に取り後述する)。
【0039】
また、第2の電子膨張弁6については、通常冷房モード、過絞り冷房モード、及び通常暖房モードにおいては全開状態としておくが、冷房時再熱ドライモード及び暖房時再熱ドライモードにおいては、第2の室内熱交換器7を流れる過熱度Tc2-Tc1)を制御するために、第1の電子膨張弁4と同様に可変できるようになっている。従来の空気調和機では、この第2の電子膨張弁6の代わりに2方弁などの一定開度しか維持できない絞り弁を用いており、通常冷房モード、過絞り冷房モード、及び通常暖房モードにおいては全開状態としておき、冷房時再熱ドライモード及び暖房時再熱ドライモードにおいては一定の絞り開度に切り換わるようにしていた。これに対し、本実施形態では、電子膨張弁を用いることにより多段階の開度制御を可能にしている。このように、本実施形態では、運転モード数が増えたことに加えて、第1の電子膨張弁4及び第2の電子膨張弁6の双方を多段階に開度制御できるようにしているので、従来よりも更にきめ細かな除湿制御が可能になっている。」
(イ)「【図1】
[図:0001404754000005.jpg]
」
(ウ)「【図2】
[図:0001404754000006.jpg]
」
(エ)「【0059】
従来の再熱ドライモードでは、室外ファン9の回転数は常に一定となっていると共に、第1の電子膨張弁4の開度は常に全開状態となっていたため、室温制御が可能な領域は極めて狭いものとなっていたが、本実施形態では室外ファン9の回転数、及び第1の電子膨張弁4の開度の双方を可変制御するようにしているので、室温制御が可能な領域を大幅に広げることが可能になっている。但し、室内湿度が一定以上高い場合(例えば、80%以上)に、室外ファン9の回転数を最大にしたり、第1の電子膨張弁4の開度を最小又は最小近くまで絞ると結露が生じ、熱交換効率が低下する。したがって、室外ファン9の回転数を最大にし、第1の電子膨張弁4の開度を最小又は最小近くまで絞ることができるのは、室内湿度Haが80%を下回っている場合であることに注意する必要がある。
【0060】
また、本実施形態では、コンプレッサ1の回転数制御すなわちインバータ装置8と、第2の電子膨張弁6の開度制御とにより、冷房時再熱ドライモードにおける湿度制御を広い範囲で行うことができるようになっている。すなわち、運転制御回路11は、まず、潜熱負荷を演算し、その演算した潜熱負荷の大きさに基づきインバータ装置8の周波数制御を行うようにする。なお、潜熱負荷とは室内湿度現在値と目標湿度との差を指している。
【0061】
運転制御回路11は、予め所定の制御特性を記憶しており、現在の潜熱負荷に対する目標過熱度Tsh0`のレベルをどのように設定すればよいか分かっている。したがって、運転制御回路11は(2)式により与えられる過熱度Tshを目標過熱度Tsh0`に近づけるような制御を行う。このような過熱度制御は、基本的にはインバータ装置8の周波数制御に基づく冷媒流量の制御により行う。
【0062】
上記の過熱度Tshは、インバータ装置8の周波数制御(コンプレッサの回転数制御)によっても制御することが可能であるが、第2の電子膨張弁6の開度制御によって行うことも可能である。すなわち、前述したように、一般に、蒸発器の熱交換能力が最大となるのは、過熱度Tshが、Tsh=0±α(α:約1~2〔K〕)の場合であり、この場合には蒸発器出口で冷媒が完全にガス化されることになる。そして、当初はインバータ周波数の制御のみで過熱度Tshを制御していたため、Tsh<0となっていた状態(所謂「液バック状態」)を、第2の電子膨張弁6の開度PLS2を絞ることによりTsh≒0とすることができる。このように、第2の電子膨張弁6の開度PLS2を絞ると、第1の電子膨張弁4を絞った場合とは異なり、第1の室内熱交換器5の熱交換器温度は上昇し、一方、第2の室内熱交換器7の熱交換器温度は低下する。したがって、室内機の吹き出し口温度を大きく変化させずに除湿能力だけを高くすることができる。なお、開度PLS2をあまりに絞りすぎると凝縮器圧力が上昇するので、運転制御回路11は熱交温度Tc3を監視して高圧保護を行うようにしている。」
(オ) (イ)の図1の図示事項から、室外熱交換器3、第1の電子膨張弁4、室内熱交換器5、7、第2の電子膨張弁6、四方弁2、コンプレッサ1などを繋いで冷媒を循環させる冷媒循環回路と、第1の電子膨張弁4、第2の電子膨張弁6、コンプレッサ1を制御する運転制御回路11を備える空気調和機が看取できる。
上記記載事項、図示事項及び認定事項を総合し、整理すると、甲第4号証には、以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されている。
「室外熱交換器3から送られた液冷媒を低温低圧にする第1の電子膨張弁4と、前記第1の電子膨張弁4で低圧とされた前記液冷媒と室内空気との間で熱交換を行う2つの室内熱交換器5,7と、前記2つの熱交換器5、7が直列に接続された中間に設置された第2の電子膨張弁6とを有し、前記室内空気を空調する冷媒循環回路と、
室内機の吹き出し口付近に置かれ、室温検出値Ta及び湿度検出値Haを運転制御回路11に出力する、室温検出器13及び湿度検出器14と、第2の室内熱交換器7の冷媒入口部及び冷媒出口部、並びに第1の室内熱交換器5の冷媒入口部にそれぞれ取り付けられた熱交温度検出器15~17と、
通常冷房モードと、過絞り冷房モードの運転の切替を、室温検出値Taと、室温設定値Ts1及び湿度設定値Hs1並びに湿度検出値Ha1とで算出される目標体感温度Tf1との差である(Ta1-Tf1)の大きさの程度によって行う運転制御回路11であって、前記通常冷房モードは、室内温度を変化させるための能力である顕熱能力が大であり、前記第1の室内熱交換器5及び前記第2の室内熱交換器7を共に冷媒が2相領域の蒸発器として機能するようモード固有の開度に第1の電子膨張弁4及び第2の電子膨張弁は制御され、前記過絞り冷房モードは、顕熱能力が中程度であり、第1の室内熱交換器5の冷媒を2相領域の蒸発器とし、第2の室内熱交換器7の冷媒をガス領域の蒸発器として機能するよう第1の電子膨張弁4の開度を第2の熱交換器7を流れる冷媒の過熱度を制御するため可変とする、運転制御回路11を備える
空気調和機。」
エ 甲第5号証
甲第5号証には、「空気調和機の制御方法」に関し次の記載事項及び図示事項がある。
(ア)「【0022】まず、リモコン26により除湿運転(あるいは冷房運転)の操作が行われると、室内機制御装置20および室外機制御装置21は開閉パネル部15を全開状態にするとともに、リモコン20の設定状態に応じた運転を実行し、冷凍サイクルを作動して除湿運転(あるいは冷房運転)を行い、室温調節を行う。
【0023】なお、この室温調節については室温や設定温度等を用いて行う。また、除湿制御についても、サクションセンサ6による検出温度や吐出センサ23による検出温度等を用いて行うが、既に公知の制御であるあることから、それらの詳しい説明を省略する。
【0024】このとき、室内機制御装置20は図1に示すルーチンを実行し、室温センサ18を用いて室内の温度(室温)Trを検出し(ステップST1)、この室温Trとリモコン26の設定温度Tsとを比較し、この比較結果により電子膨張弁1の制御信号を室外機制御装置21に送信し、室外機制御装置21は電子膨張弁1を制御する。
【0025】室温Trと設定温度Tsとの差が所定値(例えば3℃)より大きいか否かを判断し(ステップST2)、その温度差が3℃より大きい場合、室内機側熱交換器11の入口センサ12による検出温度(入口温度)が出口センサ14による検出温度(出口温度)になるように、電子膨張弁1の絞りを制御する(ステップST3)。
【0026】すなわち、室温Trが高いため、室内を冷やす必要があることから、室内機側熱交換器11の全ての熱交換器の冷房能力を大きくする。この大きい冷房能力により、除湿量を多くし、また、室温の低下を大きくして室内の快適性を上げることができる。
【0027】続いて、所定時間(例えば1分)の間、当該ルーチンの実行をマスクする(ステップST4)。つまり、1分間待機した後、ステップST1に戻る。なお、その1分間においても、ステップST3の処理が継続され、つまり室外機制御装置21は室内機制御装置20からの指令にしたがって電子膨張弁1の絞りを制御する。」
(イ)「【図1】
[図:0001404754000007.jpg]
」
(ウ)「【図3】
[図:0001404754000008.jpg]
」
上記記載事項及び図示事項を総合し、整理すると、甲第5号証には、次の事項(以下「甲5記載事項」という。)が記載されている。
「空気調和機の冷房または除湿運転の制御であって、室温Trとリモコン26の設定温度Tsとを比較し、室温Trと設定温度Tsとの差が所定値(例えば3℃)より大きい場合、熱交換器の冷房能力を大きくし、除湿量を多くし、また、室温の低下を大きくするよう電子膨張弁1を制御すること。」
オ 甲第6号証
甲第6号証には、「空気調和機」に関し次の記載事項及び図示事項がある。
(ア)「【0018】つぎに、冷房運転時の作用を図3のフローチャートを参照して説明する。室内温度センサ11の検知温度Taとリモコン34の操作による設定室内温度Tsとの差ΔTが空調負荷として求められ(ステップ101)、その空調負荷に応じて圧縮機1の運転周波数Fが制御される(ステップ102)。たとえば、運転開始時のように空調負荷が大きい状況では運転周波数Fが高めに設定され、運転が進んで空調負荷が減少するのに伴い、運転周波数Fが低減される。
【0019】運転周波数Fが許容最低運転周波数Fminより高ければ(ステップ103のNO)、室内熱交換器5(蒸発器)における冷媒の過熱度SH(=温度センサ14,13の検知温度の差)が検出される(ステップ104)。この過熱度SHが予め定めた一定値SHsを維持するように、絞り弁4の絞り量(開度)が制御される(ステップ105)。
【0020】室内に吹出される空調用空気の風量(室内送風機7の速度)および風向(吹出しフラップ44の角度)については、自動またはリモコン34の操作に応じて設定される(ステップ106)。
【0021】空調負荷が減少し、運転周波数Fが許容最低運転周波数Fminになると(ステップ103のYES)、そのときの圧縮機能力が空調負荷に対し過剰な状態にあるかどうか判定される(ステップ107)。たとえば、室内温度Taが設定室内温度Ts以下に下がっていれば、圧縮機能力が過剰であるとの判定の下に(ステップ107のYES)、絞り弁4が過絞りな状態に設定される(ステップ108)。この場合、空調負荷が小さいほど、絞り弁4の過絞り量を増すような調整が行われる。
【0022】通常の過熱度一定制御が行われている場合の室内熱交換器5における冷媒状態を図4に示し、過絞りな状態が設定された場合の室内熱交換器5における冷媒状態を図5に示している。すなわち、過絞りな状態が設定されると、室内熱交換器5に流入する冷媒の量が減少し、室内熱交換器5内の冷媒の二相領域(液体とガスが存在する領域)の占める割合が減少する。二相領域の占める割合が減少すると、空調能力が下がる。
【0023】このように、絞り弁4を過絞りな状態に設定して空調能力を下げることにより、圧縮機1を止めることなく、低能力運転を継続することができる。これにより、図6に示すように、室内温度Taが設定室内温度Tsに収束して安定し、室内が快適環境に維持される。」
(イ)「図1
[図:0001404754000009.jpg]
」
上記記載事項及び図示事項を総合し、整理すると、甲第6号証には、次の事項(以下「甲6記載事項」という。)が記載されている。
「空気調和機の運転制御であって、室内温度センサ11の検知温度Taとリモコン34の操作による設定室内温度Tsとの差ΔTが空調負荷として求められ、室内温度Taが設定室内温度Ts以下に下がっていれば、絞り弁4が過絞りな状態に設定され、空調能力を下げた低能力運転とすること。」
(4)対比及び判断
ア 決定の予告に記載した取消理由について
(ア)甲1発明を主たる引用発明とした場合
あ 本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「空調室外機2に収容された室外側回路部と空調室内機10に収容された室内側回路部とがガス側連絡配管117a及び液側連絡配管117bによって接続された冷媒回路100を流れる冷媒を減圧する膨張弁104」、「前記膨張弁104で減圧された前記冷媒が室内空気と熱交換する補助熱交換器13a及び主熱交換器13b」は、各々、本件発明1の「冷媒配管を流れる冷媒を減圧して膨張させる膨張弁」、「前記膨張弁で減圧された前記冷媒と室内空間の空気との間で熱交換を行う室内熱交換器」に相当する。
よって、甲1発明の「空調室外機2に収容された室外側回路部と空調室内機10に収容された室内側回路部とがガス側連絡配管117a及び液側連絡配管117bによって接続された冷媒回路100を流れる冷媒を減圧してする膨張弁104と、前記膨張弁104で減圧された前記冷媒が室内空気と熱交換する補助熱交換器13a及び主熱交換器13bとを有し、前記室内空気を空調する冷媒回路100」は、本件発明1の「冷媒配管を流れる冷媒を減圧して膨張させる膨張弁と、前記膨張弁で減圧された前記冷媒と室内空間の空気との間で熱交換を行う室内熱交換器と、を有し、前記室内空間を空調する空調部」に相当する。
また、甲1発明の「室内温度を検知する室内温度センサ107」、「前記室内温度センサ107の近傍に配置される湿度検出手段としての湿度センサ108」、「前記膨張弁104の下流側配管に取り付けられた蒸発温度センサ105」は、各々、本件発明1の「取得部」が取得するとした、「前記室内空間の温度」、「前記室内空間の」「湿度」、「前記冷媒配管における前記室内熱交換器の上流側に設置された蒸発温度センサにより検知された、前記室内熱交換器に前記冷媒が流入する流入口における前記冷媒の蒸発温度」である物理量を計測する機器に相当する。
甲1発明の「第1除湿運転」は、「主熱交換器13bの冷媒出口138で冷媒が蒸発をほぼ完了するように膨張弁104の開度を制御して空調対象空間の除湿を行う運転」とされ、「第2除湿運転」は、「膨張弁104を出た冷媒が補助熱交換器13aの途中で蒸発を完了するように膨張弁104の開度を制御して空調対象空間の除湿を行う運転」とされており、冷房能力の観点から見ると、「第1除湿運転」の冷房能力は「第2除湿運転」の冷房能力より高いことが明らかなので、甲1発明の「制御部40」が行う制御規則は、本件発明1の「空調制御部」が行う「弱冷房除湿運転」と「部分冷却除湿運転」の「冷房能力」の高低を定めた制御規則を充足し、甲1発明の「制御部40」は、本件発明1の「空調制御部」に相当する。
してみると、甲1発明の「室温とリモコン等で設定される目標温度との差が所定値d未満であるか否かを判定し、空調対象空間の湿度と目標湿度との差が所定値d未満のときは現在湿度と目標湿度の差が所定値h1未満であるか否かを判定し、その差が所定値h1未満のときは第2除湿運転を実行し、その差が所定値h1以上の時は第1除湿運転を実行する制御部40」は、本件発明1の「前記温度及び前記湿度に応じて、前記空調部に前記室内空間を除湿させる弱冷房除湿運転と、前記空調部に前記室内空間を除湿させる、前記弱冷房除湿運転より冷房能力が低い部分冷却除湿運転と、を行う空調制御部」に相当する。
以上により本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。
[一致点]
冷媒配管を流れる冷媒を減圧して膨張させる膨張弁と、前記膨張弁で減圧された前記冷媒と室内空間の空気との間で熱交換を行う室内熱交換器と、を有し、前記室内空間を空調する空調部と、
前記室内空間の温度及び湿度と、前記冷媒配管における前記室内熱交換器の上流側に設置された蒸発温度センサにより検知された、前記室内熱交換器に前記冷媒が流入する流入口における前記冷媒の蒸発温度と、を取得し、
取得された前記温度及び前記湿度に応じて、前記空調部に前記室内空間を除湿させる弱冷房除湿運転と、前記空調部に前記室内空間を除湿させる、前記弱冷房除湿運転より冷房能力が低い部分冷却除湿運転と、を行う空調制御部と、を備える、
空調装置。
[相違点1-1-1]
本件発明1は、「取得部」を備えるのに対し、甲1発明は「取得部」に相当する手段を備えると直接的にはされていない点。
[相違点1-1-2]
本件発明1の空調制御部は、「前記取得部により取得された前記湿度と前記室内空間の設定湿度との湿度差が湿度閾値より大きい場合に、前記取得部により取得された前記温度と前記室内空間の設定温度との温度差に応じて前記弱冷房除湿運転と前記部分冷却除湿運転とを行」うのに対し、甲1発明の制御部40は、「室温とリモコン等で設定される目標温度との差が所定値d未満であるか否かを判定し、空調対象空間の湿度と目標湿度との差が所定値d未満のときは現在湿度と目標湿度の差が所定値h1未満であるか否かを判定し、その差が所定値h1未満のときは第2除湿運転を実行し、その差が所定値h1以上の時は第1除湿運転を実行する」ものである点。
[相違点1-1-3]
本件発明1では、「前記空調制御部は、前記弱冷房除湿運転を行う場合には、前記膨張弁の開度を、前記室内熱交換器における前記冷媒の出口での前記冷媒の過熱度をゼロに近くなる開度に制御し、前記部分冷却除湿運転を行う場合には、前記膨張弁の開度を、前記取得部により取得された前記蒸発温度が前記室内熱交換器に吸い込まれる前記空気の露点温度よりも低くなる開度に制御する」のに対し、甲1発明では、「膨張弁104」の「開度」について「膨張弁104を出た冷媒が補助熱交換器13aの途中で蒸発を完了するように膨張弁104の開度を制御して空調対象空間の除湿を行う」としている点。
事案に鑑み、初めに相違点1-1-2について検討する。
相違点1-1-2は、空調制御部における弱冷房除湿運転と部分冷却除湿運転の切り替えにおいて、本件発明1は「前記取得部により取得された前記湿度と前記室内空間の設定湿度との湿度差が湿度閾値より大きい場合に、前記取得部により取得された前記温度と前記室内空間の設定温度とに応じて前記弱冷房除湿運転と前記部分冷却除湿運転とを行う」のに対し、甲1発明は「室温と目標温度との差と所定値を比較するという温度条件を判定した後、現在湿度と目標温度との差と所定値とを比較するという湿度条件を判定することで第1除湿運転と第2除湿運転とを切り替えている」ものである。
言い換えると、2つの除湿運転を切り替えるための条件として、本件発明1は「温度条件を優先しているの」に対し、甲1発明は、「湿度条件を優先している」点で異なる。そして、甲第1号証には、2つの除湿条件を切り替えるための条件として温度条件を優先することについての示唆はない。
さらに、甲2記載事項、甲5記載事項及び甲6記載事項には、空調制御部における弱冷房除湿運転と部分冷却除湿運転の切り替えにおいて、湿度条件を判断した後で、室内空間の温度と室内空間の設定温度との温度差という温度条件に応じて弱冷房除湿運転と部分冷却除湿運転とを行うことについての記載もなく、示唆もない。
そうすると、甲1発明、甲2記載事項、甲5記載事項及び甲6記載事項をみても、温度条件を判定した後で湿度条件を判定する甲1発明において、当業者の通常の創作能力の範囲で湿度条件を判断した後で温度条件に応じて弱冷房除湿運転と部分冷却除湿運転とを行うよう構成し、相違点1-1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とする動機を見いだすことはできない。
そして、本件発明1は、本件特許の明細書の段落【0007】に記載される格別な効果を奏するものである。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲2記載事項、甲5記載事項及び甲6記載事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
い 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をすべて有し、さらに本件発明2において新たに特定される発明特定事項を備えるものである。そうすると、本件発明2も本件発明1と同様の理由により、甲1発明、甲2記載事項、甲5記載事項及び甲6記載事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
う 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1の発明特定事項をすべて有し、さらに本件発明3において新たに特定される発明特定事項を備えるものである。そうすると、本件発明3も本件発明1と同様の理由により、甲1発明、甲2記載事項、甲5記載事項及び甲6記載事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)甲4発明を主たる引用発明とした場合
あ 本件発明1について
本件発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「液冷媒を低温低圧にする第1の電子膨張弁4」、「前記第1の電子膨張弁4で低圧とされた前記液冷媒と室内空気との間で熱交換を行う2つの室内熱交換器5,7」は、各々、本件発明1の「冷媒配管を流れる冷媒を減圧して膨張させる膨張弁」、「前記膨張弁で減圧された前記冷媒と室内空間の空気との間で熱交換を行う室内熱交換器」に相当する。
よって、甲4発明の「液冷媒を低温低圧にする第1の電子膨張弁4と、前記第1の電子膨張弁4で低圧とされた前記液冷媒と室内空気との間で熱交換を行う2つの室内熱交換器5,7と」「を有し、前記室内空気を空調する冷媒循環回路」は、本件発明1の「冷媒配管を流れる冷媒を減圧して膨張させる膨張弁と、前記膨張弁で減圧された前記冷媒と室内空間の空気との間で熱交換を行う室内熱交換器と、を有し、前記室内空間を空調する空調部」に相当する。
また、甲4発明の「室内機の吹き出し口付近に置かれ、室温検出値Ta及び湿度検出値Haを運転制御回路11に出力する、室温検出器13及び湿度検出器14」は、本件発明1の「取得部」で取得する「前記室内空間の温度及び湿度」が検知する物理量の計測手段に、甲4発明の「第1の室内熱交換器5の冷媒入口部に」「取り付けられた熱交温度検出器」「17」は、本件発明1の「前記冷媒配管における前記室内熱交換器の上流側に設置された蒸発温度センサにより検知された、前記室内熱交換器に前記冷媒が流入する流入口における前記冷媒の蒸発温度」を取得する手段に、夫々相当する。
甲4発明の「通常冷房モード」は、「室内温度を変化させるための能力である顕熱能力が大であり」とされ、「過絞り冷房モード」は、「顕熱能力が中程度であり」とされており、冷房能力の観点から見ると、「通常冷房モード」の冷房能力は、「過絞り冷房モード」の冷房能力より高いことが明らかなので、甲4発明の「運転制御回路11」が行う「通常冷房モード」と「過絞り冷房モード」との制御規則は、本件発明1の「空調制御部」が行う「弱冷房除湿運転」と「部分冷却除湿運転」の「冷房能力」の高低を定めた制御規則を充足する。
してみると、甲4発明の「通常冷房モードと、過絞り冷房モードの運転の切替を、室温検出値Taと、室温設定値Ts1及び湿度設定値Hs1並びに湿度検出値Ha1とで算出される目標体感温度Tf1との差である(Ta1-Tf1)の大きさの程度によって行う運転制御回路11」と、本件発明1の「前記取得部により取得された前記温度及び前記湿度に応じて、前記空調部に前記室内空間を除湿させる弱冷房除湿運転と、前記空調部に前記室内空間を除湿させる、前記弱冷房除湿運転より冷房能力が低い部分冷却除湿運転と、を行う空調制御部」とは、「前記取得部により取得された前記温度及び前記湿度に応じて、弱冷房運転と、前記弱冷房運転より冷房能力が低い部分冷却運転と、を行う空調制御部」の限りで一致する。
以上により本件発明1と甲4発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。
[一致点]
冷媒配管を流れる冷媒を減圧して膨張させる膨張弁と、前記膨張弁で減圧された前記冷媒と室内空間の空気との間で熱交換を行う室内熱交換器と、を有し、前記室内空間を空調する空調部と、
前記室内空間の温度及び湿度と、前記冷媒配管における前記室内熱交換器の上流側に設置された蒸発温度センサにより検知された、前記室内熱交換器に前記冷媒が流入する流入口における前記冷媒の蒸発温度と、を得て、
前記温度及び前記湿度に応じて、弱冷房運転と、前記弱冷房運転より冷房能力が低い部分冷却運転と、を行う空調制御部と、を備える、
空調装置。
[相違点1-2-1]
本件発明1は、「取得部」を備えるのに対し、甲4発明は「取得部」に相当する手段を備えると直接的にはされていない点。
[相違点1-2-2]
「空調制御部」による「弱冷房運転」と「部分冷却運転」に関して、本件発明1の「弱冷房除湿運転」及び「部分冷却除湿運転」は、各々「前記空調部に前記室内空間を除湿させる」のに対し、甲4発明の「通常冷房モード」及び「過絞り冷房モード」は、除湿に関し不明である点。
[相違点1-2-3]
本件発明1は、「前記空調制御部が前記取得部により取得された前記湿度と前記室内空間の設定湿度との湿度差が湿度閾値より大きい場合に、前記取得部により取得された前記温度と前記室内空間の設定温度との温度差に応じて前記弱冷房除湿運転と前記部分冷却除湿運転とを行」うのに対し、甲4発明は、かかる事項を備えていない点。
[相違点1-2-4]
本件発明1では、「前記弱冷房除湿運転を行う場合には、前記膨張弁の開度を、前記室内熱交換器における前記冷媒の出口での前記冷媒の過熱度をゼロに近くなる開度に制御し、前記部分冷却除湿運転を行う場合には、前記膨張弁の開度を、前記取得部により取得された前記蒸発温度が前記室内熱交換器に吸い込まれる前記空気の露点温度よりも低くなる開度に制御する」とされているのに対し、甲4発明では、「第1の電子膨張弁4」の「開度」について「第2の熱交換器7を流れる冷媒の過熱度を制御するため可変とする」とされる点。
事案に鑑み、初めに相違点1-2-3について検討する。
甲2記載事項及び甲5記載事項は、相違点1-2-3に係る本件発明1の発明特定事項を開示するものではない。また、甲第1号証の空調装置は、空調制御部における弱冷房除湿運転と部分冷却除湿運転の切り替えにおいて、温度条件を判定した後で湿度条件を判定するものであって、湿度条件を判定した後で温度条件を判定する本件発明1とは、判定の順序が異なるものであるから、甲第1号証は、相違点1-2-3に係る本件発明1の発明特定事項を開示も示唆もしていない。そうすると、甲4発明において、当業者の通常の創作能力の範囲で、相違点1-2-3に係る本件発明1の発明特定事項とする動機を見いだすことはできない。
そして、本件発明1は、本件特許の明細書の段落【0007】に記載される格別な効果を奏するものである。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明、甲2記載事項、甲5記載事項及び甲第1号証の示唆から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
い 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をすべて有し、さらに本件発明2において新たに特定される発明特定事項を備えるものである。そうすると、本件発明2も本件発明1と同様の理由により、甲4発明、甲2記載事項、甲5記載事項及び甲第1号証の示唆から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
う 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1の発明特定事項をすべて有し、さらに本件発明3において新たに特定される発明特定事項を備えるものである。そうすると、本件発明3も本件発明1と同様の理由により、甲4発明、甲2記載事項、甲5記載事項及び甲第1号証の示唆から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
え 本件発明6について
本件発明6と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「液冷媒を低温低圧にする第1の電子膨張弁4」、「前記第1の電子膨張弁4で低圧とされた前記液冷媒と室内空気との間で熱交換を行う2つの室内熱交換器5,7」は、各々、本件発明6の「冷媒配管を流れる冷媒を減圧して膨張させる膨張弁」、「前記膨張弁で減圧された前記冷媒と室内空間の空気との間で熱交換を行う室内熱交換器」に相当するので、甲4発明の「室外熱交換器3から送られた液冷媒を低温低圧にする第1の電子膨張弁4と、前記第1の電子膨張弁4で低圧とされた前記液冷媒と室内空気との間で熱交換を行う2つの室内熱交換器5,7と、前記2つの熱交換器5、7が直列に接続された中間に設置された第2の電子膨張弁6とを有し、前記室内空気を空調する冷媒循環回路」は、本件発明6の「冷媒配管を流れる冷媒を減圧して膨張させる膨張弁と、前記膨張弁で減圧された前記冷媒と室内空間の空気との間で熱交換を行う室内熱交換器と、を有し、前記室内空間を空調する空調部」に相当する。
また、甲4発明の「室内機の吹き出し口付近に置かれ、室温検出値Ta及び湿度検出値Haを運転制御回路11に出力する、室温検出器13及び湿度検出器14」は、本件発明6の「前記室内空間の温度及び湿度と」を検出する手段に、甲4発明の「第1の室内熱交換器5の冷媒入口部に」「取り付けられた熱交温度検出器」「17」は、本件発明6の「前記冷媒配管における前記室内熱交換器の上流側に設置された蒸発温度センサにより検知された、前記室内熱交換器に前記冷媒が流入する流入口における前記冷媒の蒸発温度」を検出する手段に、夫々相当する。
甲4発明の「通常冷房モード」は、「室内温度を変化させるための能力である顕熱能力が大であり」とされ、「過絞り冷房モード」は、「顕熱能力が中程度であり」とされており、冷房能力の観点から見ると、「通常冷房モード」の冷房能力は、「過絞り冷房モード」の冷房能力より高いことが明らかなので、甲4発明の「運転制御回路11」が行う「通常冷房モード」と「過絞り冷房モード」との制御規則は、本件発明6の「空調制御部」が行う「弱冷房除湿運転」と「部分冷却除湿運転」の「冷房能力」の高低を定めた制御規則を充足する。
してみると、甲4発明の「通常冷房モードと、過絞り冷房モードの運転の切替を、室温検出値Taと、室温設定値Ts1及び湿度設定値Hs1並びに湿度検出値Ha1とで算出される目標体感温度Tf1との差である(Ta1-Tf1)の大きさの程度によって行う運転制御回路11」と、本件発明6の「前記取得部により取得された前記温度及び前記湿度に応じて、前記空調部に前記室内空間を除湿させる弱冷房除湿運転と、前記空調部に前記室内空間を除湿させる、前記弱冷房除湿運転より冷房能力が低い部分冷却除湿運転と、を行う空調制御部」とは、「前記取得部により取得された前記温度及び前記湿度に応じて、弱冷房運転と、前記弱冷房運転より冷房能力が低い部分冷却運転と、を行う空調制御部」の限りで一致する。
さらに、甲4発明の「室内熱交換器5」、「室内熱交換器7」、「第2の電子膨張弁6」は、各々本件発明6の「前記室内空間の空気と前記冷媒との間で熱交換を行う第1の熱交換器」、「前記第1の熱交換器の下流側に設置されており、前記室内空間の空気と前記冷媒との間で熱交換を行う第2の熱交換器」、「前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器との間に設置されており、前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器との間を流れる前記冷媒の圧力を調整する第2の膨張弁」に相当する。
以上により本件発明6と甲4発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で
相違する。
[一致点]
冷媒配管を流れる冷媒を減圧して膨張させる第1の膨張弁と、前記第1の膨張弁で減圧された前記冷媒と室内空間の空気との間で熱交換を行う室内熱交換器と、を有し、前記室内空間を空調する空調部と、
前記室内空間の温度及び湿度と、前記冷媒配管における前記室内熱交換器の上流側に設置された蒸発温度センサにより検知された、前記室内熱交換器に前記冷媒が流入する流入口における前記冷媒の蒸発温度と、を得て、
取得された前記温度及び前記湿度に応じて、弱冷房運転と、前記弱冷房運転より冷房能力が低い部分冷却運転と、を行う空調制御部と、を備える空調装置であって、
前記室内熱交換器は、
前記室内空間の空気と前記冷媒との間で熱交換を行う第1の熱交換器と、
前記第1の熱交換器の下流側に設置されており、前記室内空間の空気と前記冷媒との間で熱交換を行う第2の熱交換器と、
前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器との間に設置されており、前記第1の熱交換器と前記第2の熱交換器との間を流れる前記冷媒の圧力を調整する第2の膨張弁と、を備える、
空調装置。
[相違点6-1]
本件発明6は、「取得部」を備えるのに対し、甲4発明は「取得部」に相当する手段を備えると直接的にはされていない点。
[相違点6-2]
「空調制御部」による「弱冷房運転」と「部分冷却運転」に関して、本件発明6の「弱冷房除湿運転」及び「部分冷却除湿運転」は、各々「前記空調部に前記室内空間を除湿させる」のに対し、甲4発明の「通常冷房モード」及び「過絞り冷房モード」は、除湿に関し不明である点。
[相違点6-3]
本件発明6は、「前記空調制御部が前記取得部により取得された前記湿度と前記室内空間の設定湿度との湿度差が湿度閾値より大きい場合に、前記取得部により取得された前記温度と前記室内空間の設定温度との温度差に応じて前記弱冷房除湿運転と前記部分冷却除湿運転とを行」うのに対し、甲4発明は、かかる事項を備えていない点。
[相違点6-4]
本件発明6では、「前記弱冷房除湿運転を行う場合には、前記膨張弁の開度を、前記室内熱交換器における前記冷媒の出口での前記冷媒の過熱度をゼロに近くなる開度に制御し、前記部分冷却除湿運転を行う場合には、前記膨張弁の開度を、前記取得部により取得された前記蒸発温度が前記室内熱交換器に吸い込まれる前記空気の露点温度よりも低くなる開度に制御する」のに対し、甲4発明では、「第1の電子膨張弁4」の「開度」について「第2の熱交換器7を流れる冷媒の過熱度を制御するため可変とする」とされる点。
事案に鑑み、初めに相違点6-3について検討する。
相違点6-3は、本件発明1における相違点1-2-3と同じものである。そして、相違点1-2-3の検討において上述したとおりであるから、甲2記載事項は、相違点6-3に係る本件発明6の発明特定事項を開示するものではない。また、甲第4号証の記載されるすべての事項を総合しても、甲第4号証が相違点6-3に係る本件発明6の発明特定事項を示唆するものではない。そうすると、甲4発明において、当業者の通常の創作能力の範囲で、相違点6-3に係る本件発明6の発明特定事項とする動機を見いだすことはできない。
そして、本件発明6は、本件特許の明細書の段落【0007】に記載される格別な効果を奏するものである。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明6は、甲4発明、甲2記載事項及び甲第4号証の示唆から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
お 本件発明7について
本件発明7は、本件発明6の発明特定事項をすべて有し、さらに本件発明7において新たに特定される発明特定事項を備えるものである。そうすると、本件発明7も本件発明6と同様の理由により、甲4発明、甲2記載事項、及び甲第4号証の示唆から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)まとめ
以上のとおり、本件発明1ないし本件発明3は、甲1発明、甲2記載事項、甲5記載事項及び甲6記載事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、本件発明1ないし本件発明3は、甲4発明、甲2記載事項、甲5記載事項及び甲第1号証の示唆から当業者が容易に発明をすることができたものではない。さらに、本件発明6及び本件発明7は、甲4発明、甲2記載事項、及び甲第4号証の示唆から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 決定の予告において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項7に関し、大略、次の主張をしている。
(主張1)請求項1ないし請求項5に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に、甲第1号証、甲第4号証ないし甲第6号証を適用することで容易に想到し得た。
(主張2)請求項6及び請求項7に係る発明は、甲1発明に、甲4記載事項及び甲第7号証~甲第12号証の記載事項を適用することで容易に想到し得た。
(主張3)請求項6請求項7に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に甲第1号証、甲第4号証及び甲第7号証ないし甲第12号証に記載された事項を適用することで容易に想到し得た。
そこで、以下、特許異議申立人の主張を検討する。
(ア) 上記主張1の検討
あ 甲第3号証
甲第3号証には、「空気調和機」に関し次の記載事項、図示事項及び認定事項がある。
(あ)「【0022】
図1に示すように、この発明の空気調和機1は、室内に設置される室内機2と、室外に設置される室外機3とを備えている。そして、室内機2には、室内熱交換器4が搭載されている。また、室外機3には、圧縮機5,四方弁6,室外熱交換器7および上記減圧機構の一例としての膨張弁8が搭載されている。そして、圧縮機5と、四方弁6と、室外熱交換器7と、膨張弁8と、室内熱交換器4と、上記四方弁6とが、この順序で冷媒管によって接続されて、冷媒回路を構成している。
【0023】
上記冷媒回路において、上記圧縮機5の吐出口に、四方弁6を介して室外熱交換器7が接続される一方、室内熱交換器4には四方弁6を介して圧縮機5の吸込口が接続されている。また、室内熱交換器4は、補助熱交換器9と主熱交換器10とを含んでいる。」
(い)「【0032】
図1に示すように、上記室外機3には、空気調和機1の各種動作を制御する制御装置14が搭載されている。図3に示すように、制御装置14には、圧縮機5,四方弁6,膨張弁8,室内ファン11のファンモータ11a,蒸発温度センサ15,室内温度センサ16,室内熱交換器温度センサ17,室外温度センサ18および湿度センサ19が接続されている。但し、圧縮機5,四方弁6,膨張弁8およびファンモータ11aに関して、実際には、その駆動部が接続されている。そして、制御装置14はCPU(中央演算装置)や記憶部を含んでおり、リモコン20からの指令(運転開始指令や室内温度設定指令等)や、蒸発温度センサ15で検知された蒸発温度や、室内温度センサ16で検知された室内温度(吸込空気温度)や、室内熱交換器温度センサ17で検知された熱交換器中間温度や、室外温度センサ18で検知された室外温度や、湿度センサ19で検知された室内の湿度に基づいて、演算処理や判断処理を行って空気調和機1の運転を制御する。」
(う)「【0035】
上記除湿運転モード時においては、補助熱交換器9に供給された液冷媒は、補助熱交換器9の途中で総て蒸発するようにする。したがって、補助熱交換器9における液冷媒入口近くの一部の範囲だけが蒸発域であり、補助熱交換器9における上記蒸発域の下流側の範囲と主熱交換器10とは過熱域である。」
(え)「【0038】
上記膨張弁8は、上記蒸発温度センサ15で検知された蒸発温度が制御装置14で演算される目標蒸発温度になるように制御される。ここで、上記目標蒸発温度は、冷媒の露点温度よりもマージン分だけ低い温度に設定されている。例えば、露点温度が18℃の場合には、8℃のマージンを付けて、上記目標蒸発温度が10℃に設定される。
【0039】
そして、上述したようにして上記圧縮機5の周波数が制御された状態において、上記蒸発温度が目標蒸発温度(例えば10℃)になるように、膨張弁8の開度が制御される。この目標蒸発温度は、圧縮機10の周波数によらず一定に制御されるのが好ましい。
【0040】
こうして、上記圧縮機5の周波数と膨張弁8の開度とを、目標蒸発温度(例えば10℃)になるように制御することによって、補助熱交換器9における上記蒸発域の範囲を上記負荷に応じて変化させることができ、圧縮機5の周波数が低周波数であっても除湿することができるのである。」
(お)「【図1】
[図:0001404754000010.jpg]
」
上記記載事項及び図示事項を総合し、整理すると、甲第3号証には、以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。
「冷媒管に接続される減圧機構である膨張弁8と、冷媒管に接続される補助熱交換器9と、を有し、
室内温度センサ16及び湿度センサ19と、蒸発温度センサ15が接続され、
前記室内温度センサ16で検知された室内温度及び湿度センサ19で検知された室内の湿度に応じて制御する、除湿運転制御部を構成する制御装置14と、を備え、
前記補助熱交換器9の蒸発域は、室内温度と設定温度との差である必要除湿能力である負荷に応じて変化し、蒸発温度が露点温度よりもマージン分だけ低い目標蒸発温度となるように膨張弁8の開度が制御される、
空気調和機1。」
本件発明1と甲3発明と対比する。
甲3発明の「冷媒管に接続される減圧機構である膨張弁8」、「冷媒管に接続される補助熱交換器9」は、各々、本件発明1の「冷媒配管を流れる冷媒を減圧して膨張させる膨張弁」、「前記膨張弁で減圧された前記冷媒と室内空間の空気との間で熱交換を行う室内熱交換器」に相当するので、甲3発明の「冷媒管に接続される減圧機構である膨張弁8と、前記冷媒管に接続される補助熱交換器9と、を有し」は、本件発明1の「冷媒配管を流れる冷媒を減圧して膨張させる膨張弁と、前記膨張弁で減圧された前記冷媒と室内空間の空気との間で熱交換を行う室内熱交換器と、を有し、前記室内空間を空調する空調部と」に相当する。
甲3発明の「室内温度センサ16及び湿度センサ19と、蒸発温度センサ15が接続され」ることは、室内温度センサ16により室内空間の温度を取得し、湿度センサ19により室内空間の湿度を取得し、蒸発温度センサにより冷媒管における冷媒の蒸発温度を取得することであるから、本件発明1の「室内空間の温度及び湿度と、前記冷媒配管における前記室内熱交換器の上流側に設置された蒸発温度センサにより検知された、前記室内熱交換器に前記冷媒が流入する流入口における前記冷媒の蒸発温度と、を取得する取得部と、」とは、「室内空間の温度及び湿度と、前記冷媒配管に設置された蒸発温度センサにより検知された、前記冷媒の蒸発温度と、を取得する取得部と、」を備えるという限りで一致する。
そして、甲3発明の「空気調和機1」は、本件発明1の「空調装置」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲3発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で少なくとも相違する。
[一致点]
冷媒配管を流れる冷媒を減圧して膨張させる膨張弁と、前記膨張弁で減圧された前記冷媒と室内空間の空気との間で熱交換を行う室内熱交換器と、を有し、前記室内空間を空調する空調部と、
前記室内空間の温度及び湿度と、前記冷媒配管に設置された蒸発温度センサにより検知された、前記冷媒の蒸発温度と、を取得する取得部と、
を備えた、
空調装置。
[相違点3]
本件発明1は、「前記取得部により取得された前記温度及び前記湿度に応じて、前記空調部に前記室内空間を除湿させる弱冷房除湿運転と、前記空調部に前記室内空間を除湿させる、前記弱冷房除湿運転より冷房能力が低い部分冷却除湿運転と、を行う空調制御部と、を備え、
前記空調制御部は、前記取得部により取得された前記湿度と前記室内空間の設定湿度との湿度差が湿度閾値より大きい場合に、前記取得部により取得された前記温度と前記室内空間の設定温度との温度差に応じて前記弱冷房除湿運転と前記部分冷却除湿運転とを行」うのに対し、
甲3発明は、「前記室内温度センサ16で検知された室内温度及び湿度センサ19で検知された室内の湿度に応じて制御する、除湿運転制御部を構成する制御装置14と、を備え、
前記補助熱交換器9の蒸発域は、室内温度と設定温度との差である必要除湿能力である負荷に応じて変化し、蒸発温度が露点温度よりもマージン分だけ低い目標蒸発温度となるように膨張弁8の開度が制御される」ものである点。
上記相違点3について検討する。
甲第4号証ないし甲第6号証は、いずれも相違点3に係る本件発明1の発明特定事項、特に「空調制御部は、取得部により取得された湿度と室内空間の設定湿度との湿度差が湿度閾値より大きい場合に、前記取得部により取得された温度と前記室内空間の設定温度との温度差に応じて弱冷房除湿運転と部分冷却除湿運転とを行」うとの発明特定事項を開示も示唆もしていない。また、甲第1号証の空調装置は、空調制御部における弱冷房除湿運転と部分冷却除湿運転の切り替えにおいて、温度条件を判定した後で湿度条件を判定するものであって、湿度条件を判定した後で温度条件を判定する本件発明1とは、判定の順序が異なるものであるから、甲第1号証は、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を開示も示唆もしていない。そうすると、甲3発明において、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項とする動機を見いだすことはできない。
そして、本件発明1は本件特許の明細書の段落【0007】に記載される格別な効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲3発明、甲第1号証及び甲第4号証ないし甲第6号証から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そして、本件発明1の発明特定事項をすべて有し、さらに請求項2及び請求項3で新たに特定される発明特定事項を備えた本件発明2及び本件発明3も、本件発明1と同様に、甲3発明、甲第1号証及び甲第4号証ないし甲第6号証から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、主張1に係る特許異議申立人の主張は、採用できない。
(イ) 上記主張2の検討
本件発明6と甲1発明とを対比すると、両者は、相違点として少なくとも本件発明1と甲1発明との対比で上述した相違点1-1-2と同様の相違点4を有している。そして、当該相違点4に係る本件発明6の発明特定事項は、甲第1号証及び甲4記載事項に開示されておらず、示唆もない(「ア(ア)あ」を参照。)。さらに、当該相違点4に係る本件発明6の発明特定事項は、甲第7号証ないし甲第12号証にも開示はなく、示唆もない。
そうすると、甲1発明において、当該相違点4に係る本件発明6の発明特定事項とする動機を見いだすことはできない。
そして、本件発明6は、本件特許の明細書の段落【0007】に記載される格別な効果を奏するものである。
したがって、本件発明6は、甲1発明、甲第4号証、及び甲第7号証ないし甲第12号証から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そして、本件発明6の発明特定事項をすべて有し、さらに請求項7で新たに特定される発明特定事項を備えた本件発明7も、本件発明6と同様に、甲1発明、甲第4号証、及び甲第7号証ないし甲第12号証から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、主張2に係る特許異議申立人の主張は、採用できない。
(ウ) 上記主張3の検討
本件発明6と甲3発明とを対比すると、両者は、相違点として少なくとも本件発明1と甲3発明との対比で上述した相違点3と同様の相違点5を有している。当該相違点5に係る本件発明6の発明特定事項は、甲4発明、甲第1号証及び甲4記載事項に開示されておらず、示唆もない(「イ(ア)」を参照。)。さらに、当該相違点5に係る本件発明6の発明特定事項は、甲第7号証ないし甲第12号証にも開示はなく、示唆もない。
そうすると、甲3発明において、当該相違点5に係る本件発明6の発明特定事項とする動機を見いだすことはできない。
そして、本件発明6は、本件特許の明細書の段落【0007】に記載される格別な効果を奏するものである。
したがって、本件発明6は、甲3発明、甲第1号証、甲第4号証、及び甲第7号証ないし甲第12号証から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そして、本件発明6の発明特定事項をすべて有し、さらに請求項7で新たに特定される発明特定事項を備えた本件発明7も、本件発明6と同様に、甲3発明、甲第1号証、甲第4号証及び甲第7号証ないし甲第12号証から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、主張3に係る特許異議申立人の主張は、採用できない。
4.むすび
以上のとおり、決定の予告に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、訂正後の請求項1ないし請求項3、請求項6及び請求項7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の請求項1ないし請求項3、請求項6及び請求項7に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
また、請求項4及び5に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項4及び5に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700715