特許異議申立
2024-700489
生海苔異物分離除去装置のクリアランスの構造
- 審判番号
- 2024-700489
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-012347
- 登録番号
- 7385891
- 請求日
- 2024年05月24日
- 審決日
- 2024年07月19日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】フルタ電機株式会社
- 【権利者代理人】木村 満
- 【権利者代理人】竹中 一宣
- 【権利者代理人】榊原 靖
- 【異議申立人】渡邊機開工業 株式会社
- 【異議申立人代理人】涌井 謙一
- 【異議申立人代理人】山本 典弘
- 【異議申立人代理人】鈴木 一永
- 【異議申立人代理人】工藤 貴宏
- 【異議申立人代理人】三井 直人
- 審判長/審判官
- 審判長 植前 充司
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 松本 陶子
- 分類
- P1652.121-Y (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7385891号発明「生海苔異物分離除去装置のクリアランスの構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7385891号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7385891号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、平成31年1月28日の出願であって、令和5年11月15日にその特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和6年5月24日に特許異議申立人 渡邊機開工業株式会社(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし4)がされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
生海苔混合液槽に設けた選別ケーシングと、この選別ケーシングに設けた環状内周面(5a)、及びピン角内周面(5b)を備えた選別ケースリングと、前記環状内周面(5a)、及び前記ピン角内周面(5b)の開口に挿設する外周面を備えた回転板と、前記選別ケースリングの前記環状内周面(5a)、及び前記ピン角内周面(5b)と前記回転板の前記外周面の鉛直外周面(7b)及び傾斜収れん外周面(7c)とで形成した生海苔異物分離除去装置のクリアランスにおいて、
前記生海苔混合液槽に設けた回転軸に、前記回転板を支持するとともに、前記回転板の前記外周面に設けた鉛直外周面と傾斜収れん外周面の上昇、又は降下を司る昇降手段を設け、
前記昇降手段を介して、前記鉛直外周面の摩耗時に、前記外周面を備える前記回転板を、上昇、又は降下し、前記クリアランスの寸法を確保することを特徴とした生海苔異物分離除去装置のクリアランスの構造。
【請求項2】
生海苔混合液槽に設けた環状内周面(3a)、及びピン角内周面(3b)を備えた選別ケーシングと、前記選別ケーシングの前記環状内周面(3a)、及び前記ピン角内周面(3b)で形成された開口に挿設する外周面を備えた回転板と、前記選別ケーシングの前記環状内周面(3a)、及び前記ピン角内周面(3b)と前記回転板の前記外周面の鉛直外周面(7b)及び傾斜収れん外周面(7c)とで形成した生海苔異物分離除去装置のクリアランスにおいて、
前記生海苔混合液槽に設けた回転軸に、前記回転板を支持するとともに、前記回転板の前記外周面に設けた鉛直外周面と傾斜収れん外周面の上昇、又は降下を司る昇降手段を設け、
前記昇降手段を介して、前記鉛直外周面の摩耗時に、前記外周面を備える前記回転板を、上昇、又は降下し、前記クリアランスの寸法を確保することを特徴とした生海苔異物分離除去装置のクリアランスの構造。
【請求項3】
前記鉛直外周面の高さ(鉛直方向での高さ)を、1~2mmとする構成とした請求項1、又は請求項2に記載の生海苔異物分離除去装置のクリアランスの構造。
【請求項4】
前記内周面の開口上端は、前記選別ケースリングに設けた前記ピン角内周面(5b)、又は、前記選別ケーシングに設けた前記ピン角内周面(3b)にする構成とした請求項1、又は請求項2に記載の生海苔異物分離除去装置のクリアランスの構造。」
第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要等
令和6年5月24日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。
1 申立理由(甲第1号証に基づく進歩性)
本件特許発明1ないし4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 証拠方法
甲第1号証:特開2007-306832号公報
甲第2号証:特開2005-237368号公報
甲第3号証:特開2003-325142号公報
以下、順に「甲1」のようにいう。
第4 申立理由(甲1に基づく進歩性)について
1 証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「生海苔の異物分離装置」に関して、おおむね次の事項が記載されている。下線は当審で付したものである。他の証拠も同様。
・「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
異物分離槽に投入した生海苔(海苔の原藻)と海水との混合液を回転させつつ、間隔が0.1mm~0.2mm程度の狭いクリアランスを介して当該生海苔(海苔の原藻)と海水との混合液を強制的に吸引し、当該クリアランスを通過する生海苔(海苔の原藻)と海水との混合液から当該クリアランスを通過できない異物を分離する従来の生海苔の異物分離装置では、より微小な異物をも除去するためにクリアランスの間隔、サイズをより狭くすると、生海苔(海苔の原藻)がクリアランスに詰まりやすくなるので、より微小な異物をも除去するという目的と、より大量の生海苔(海苔の原藻)からより効率よく異物を除去するという目的を両立させることは容易ではなかった。
【0007】
そこで、この発明は、異物分離槽に投入した生海苔(海苔の原藻)と海水との混合液を回転させつつ、間隔が0.1mm~0.2mm程度の狭いクリアランスを介して当該生海苔(海苔の原藻)と海水との混合液を強制的に吸引し、当該クリアランスを通過する生海苔(海苔の原藻)と海水との混合液から当該クリアランスを通過できない異物を分離する生海苔の異物分離装置において、より微小な異物をも、より確実に除去するという目的を達成しつつ、より短い時間で、より多くの量の生海苔(海苔の原藻)からより効率よく異物を除去することを可能ならしめる、すなわち、効率的で大量の生海苔の異物分離処理を可能ならしめる生海苔の異物分離装置を提案することを目的にしている。」
・「【0017】
発明者等の検討によれば、本発明の生海苔の異物分離装置におけるこのように優れた作用・効果は、前記のクリアランスが、円形孔の内周壁と回転円板の外周壁とが対向している区間に対応する奥行きをクリアランスの入口側と出口側との間に有していることと、回転円板の外周壁に備えられているテーパー面の上端周縁が、円形孔の内周壁のテーパー面の上端周縁よりも上側に位置しているという本発明の装置に特有の構造・形態によって発揮されているものと認められた。」
・「【発明の効果】
【0033】
この発明の生海苔の異物分離装置によれば、そこを介して生海苔と海水との混合液が強制的に吸引されることにより、そこを通過する生海苔と海水との混合液から、そこを通過できない異物を分離する役割を果たすクリアランスを、異物分離槽の底面に形成されている円形孔の内周壁と、当該円形孔の内側に回転自在に遊嵌されている回転円板の、当該円形孔の内周壁に対向する外周壁との間に形成し、このクリアランスが、円形孔の内周壁と回転円板の外周壁とが対向している区間に対応する奥行きをクリアランスの入口側と出口側との間に有し、回転円板の外周壁に備えられているテーパー面の上端周縁が、円形孔の内周壁のテーパー面の上端周縁よりも上側に位置していることにより、より微小な異物をもより確実に分離・除去しつつ、クリアランスへの目詰まりをより少なく抑えて、より大量の生海苔(海苔の原藻)からより効率よく異物を分離、除去することができる。」
・「【0035】
本発明の生海苔の異物分離装置1は、異物分離槽2に投入した生海苔(海苔の原藻)と水(例えば、海水)との混合液を回転させつつ、クリアランス3を介して生海苔(海苔の原藻)と水(例えば、海水)との混合液を強制的に吸引することにより、クリアランス3を通過する生海苔(海苔の原藻)と水(例えば、海水)との混合液から、クリアランス3を通過できない異物(例えば、藁屑などのごみ、アミ、エビ虫、合成樹脂片、甲殻類の破片、海苔以外の海藻、など)を分離・除去するものである。
【0036】
図2に図示されているように、周囲を隔壁8で区画されている異物分離槽2の底面10aに、図1図示のように円形孔4が形成されており、モータ49に駆動される回転軸6により回転する回転円板5が、図1、図3図示のように、円形孔4の内側に、回転自在に遊嵌されている。
【0037】
図3図示の実施形態では、円形の孔が設けられている異物分離槽2の底面10aの当該円形の孔部に金属製のリング10bをネジ止め等によって取り付け、このリング10bの内側に円形孔4が形成されている。
【0038】
クリアランス3は、円形孔4の内周壁、すなわち、図3の実施形態では、リング10bの内周壁20と、これに対向する回転円板5の外周壁15との間に形成される。
【0039】
そして、このクリアランス3は、円形孔4の内周壁、すなわち、図3の実施形態では、リング10bの内周壁20と、回転円板5の外周壁15とが対向している区間に対応する奥行きを、クリアランス3の入口側3a(図3(b))と、出口側と3b(図3(b))との間に有している。
【0040】
円形孔4の内周壁、すなわち、図3の実施形態では、リング10bの内周壁20は、大径の上端周縁20a(図3(b))から小径の下端周縁20b(図3(b))に向かって傾斜するテーパー面になっている。
【0041】
回転円板5の外周壁15は、円形孔4の内周壁のテーパー面、すなわち、図3の実施形態では、リング10bの内周壁20に対応する傾斜角度で、大径の上端周縁15a(図3(b))から小径の下端周縁15b(図3(b))に向かって傾斜するテーパー面になっている。
【0042】
そして、回転円板5の外周壁15からなるテーパー面の上端周縁15aが、円形孔4の内周壁、すなわち、図3の実施形態では、リング10bの内周壁20からなるテーパー面の上端周縁20aよりも上側に位置するように、円形孔4の内側に回転円板5が回転自在に遊嵌されている(図1、図3(a)、(b))。
【0043】
図示の実施形態では、円形孔4の内周壁、すなわち、リング10bの内周壁20に備えられているテーパー面と、回転円板5の外周壁15に備えられているテーパー面との間の間隔によって定められるクリアランス3の大きさ(サイズ)・間隔(S)(図3(b))は、0.1mm~0.2mm、円形孔4の内周壁20と回転円板5の外周壁15とが対向している区間に対応するクリアランス3の入口側3aと出口側3bとの間の奥行き(L)(図3(b))は、少なくとも2mm以上、回転円板5の外周壁15に備えられているテーパー面の上端周縁15aと、円形孔4の内周壁、すなわち、リング10bの内周壁20に備えられているテーパー面の上端周縁20aとの間の間隔(H)(図3(b))は、少なくとも0.5mm以上に設定されている。
【0044】
なお、回転軸6の上端側に着脱自在に取り付けている回転円板5を回転軸6に対して矢印60a、60b(図3(a))方向に上下動させ(すなわち、回転円板5をリング10bに対して矢印60a、60b(図3(a))方向に上下動させ)、クリアランス3の大きさ(サイズ)・間隔(S)(図3(b))の大きさ及び、円形孔4の内周壁20と回転円板5の外周壁15とが対向している区間に対応するクリアランス3の入口側3aと出口側3bとの間の奥行き(L)(図3(b))の大きさ、並びに、回転円板5の外周壁15に備えられているテーパー面の上端周縁15aと、円形孔4の内周壁20のテーパー面の上端周縁20aとの間の間隔(H)の大きさを任意に調整することが可能である。
【0045】
図7は、回転円板5がその回転軸6が延びる方向に上下動可能になっていて、回転円板5をその回転軸6が延びる方向に上下動させることによって、円形孔4の内周壁20と回転円板5の外周壁15との間に形成されるクリアランス3の間隔(S)の大きさ及び、円形孔4の内周壁20と回転円板5の外周壁15とが対向している区間に対応するクリアランス3の奥行き(L)の大きさ、並びに、回転円板5の外周壁15に備えられているテーパー面の上端周縁15aと、円形孔4の内周壁20のテーパー面の上端周縁20aとの間の間隔(H)を所望の大きさに調節可能になっている構造の一例を説明するものである。
【0046】
回転軸6の上端側に着脱自在となっている回転円板5は、キー結合により回転軸6に対して回転軸6が延びる方向(上下方向)に摺動自在になっており、回転円板5の上端部80から図中、下側に向かって延びるネジ部81を、回転軸6の上端側に螺合することによって回転軸6の上端側に取り付けられる。
【0047】
この状態で、回転円板5の上端部側に取り付けられている間隙調整回転板82を39a方向あるいは39b方向に回転させることにより、回転円板5を両方向矢印66で示すように上下動させることができる。間隙調整回転板82の下側は、回転円板5に設けてある孔内に図7中、上下方向に摺動可能に配置されている砲弾型ピン83の上端に常に当接している。この実施形態では、砲弾型ピン83は、図7示のように、回転円板5に設けてある孔内で、スプリング84の内側に配置されている。このスプリング84により、間隙調整回転板82の回転に応じて、回転円板5が両方向矢印66で示すように上下動する大きさ(位置)が定められる。例えば、間隙調整回転板82を回転させることによって、回転円板5を0.01mmずつ上昇、あるいは下降する大きさ(位置)を定める役割をスプリング84が果たしている。
【0048】
そこで、回転円板5を回転軸6の上端側に取り付けた状態で、間隙調整回転板82を39a方向あるいは39b方向に回転させるだけで、回転円板5を、スプリング84によって位置決めされる大きさずつ上昇、あるいは下降させ、簡単に、クリアランス3の間隔(S)の大きさ及び、クリアランス3の奥行き(L)の大きさ、並びに、回転円板5の外周壁15に備えられているテーパー面の上端周縁15aと、円形孔4の内周壁20のテーパー面の上端周縁20aとの間の間隔(H)を所望の大きさに微調整できる。
【0049】
なお、回転円板5の上端部80を回転させてネジ部81を回転軸6の上端側から取り外すと共に、回転円板5を回転軸6の上端側から抜き取ることにより、回転円板5を回転軸6の上端側から取り外すこともできる。
【0050】
図1は、本発明の生海苔の異物分離装置1が配備されている生海苔処理装置の全体構成の一例を説明するものである。
【0051】
異物分離槽2の底面10aには図2図示のように4個の円形孔が設けられており、ここにそれぞれ回転円板5a、5b、5c、5d(総称して「回転円板5」ということがある)が、回転自在に遊嵌されている。
【0052】
回転円板5は、モータ49によって回転される回転軸6の上端側に図3(a)図示のようにそれぞれ取り付けられている。
【0053】
4個の円形孔の下側にはそれぞれ吸引室7a、7b、7c、7d(総称して「吸引室7」ということがある)が配備されており、この吸引室7a、7b、7c、7dには、それぞれ、吸引パイプ51a、51b、51c、51d、51eを介して吸引ポンプ50が接続されている。
【0054】
異物分離槽2内に生海苔(海苔の原藻)と水(例えば、海水)との混合液を投入した後、モータ49によって回転板5a、5b、5c、5dを矢印30a、30b、30c、30d(総称して「矢印30」ということがある)のように回転させ、回転円板5a、5b、5c、5d上の混合液を同じように回転流動させつつ、吸引ポンプ50による吸引を開始すると、混合液は、矢印32、31(図3(b))のように、クリアランス3を介して吸引室7a、7b、7c、7d内にそれぞれ強制的に吸引され、さらに、吸引パイプ51a、51b、51c、51d、51eを介して、矢印37e、矢印38のように貯留タンク52内に投入される。
【0055】
生海苔(海苔の原藻)と水(例えば、海水)との混合液がこのように回転力を受けつつ、強制的にクリアランス3を通過することにより、クリアランス3を通過する生海苔(海苔の原藻)と水(例えば、海水)との混合液からクリアランス3を通過できない異物が分離・除去されて、異物分離槽2内に残る。」
・「【図1】
[図:0001413383000001.jpg]
」
・「【図2】
[図:0001413383000002.jpg]
」
・「【図3】
[図:0001413383000003.jpg]
」
・「【図7】
[図:0001413383000004.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特に図1ないし3に図示される実施形態に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明>
「生海苔の異物分離装置1は、異物分離槽2に投入した生海苔と水との混合液を回転させつつ、クリアランス3を介して生海苔と水との混合液を強制的に吸引することにより、クリアランス3を通過する生海苔と水との混合液から、クリアランス3を通過できない異物を分離・除去するものであり、周囲を隔壁8で区画されている異物分離槽2の底面10aに、円形孔4が形成されており、モータ49に駆動される回転軸6により回転する回転円板5が、円形孔4の内側に、回転自在に遊嵌され、円形の孔が設けられている異物分離槽2の底面10aの当該円形の孔部に金属製のリング10bをネジ止め等によって取り付け、このリング10bの内側に円形孔4が形成され、クリアランス3は、円形孔4の内周壁、すなわち、リング10bの内周壁20と、これに対向する回転円板5の外周壁15との間に形成され、このクリアランス3は、円形孔4の内周壁、すなわち、リング10bの内周壁20と、回転円板5の外周壁15とが対向している区間に対応する奥行きを、クリアランス3の入口側3aと、出口側3bとの間に有し、円形孔4の内周壁、すなわち、リング10bの内周壁20は、大径の上端周縁20aから小径の下端周縁20bに向かって傾斜するテーパー面になっており、回転円板5の外周壁15は、円形孔4の内周壁のテーパー面、すなわち、リング10bの内周壁20に対応する傾斜角度で、大径の上端周縁15aから小径の下端周縁15bに向かって傾斜するテーパー面になっており、そして、回転円板5の外周壁15からなるテーパー面の上端周縁15aが、円形孔4の内周壁、すなわち、リング10bの内周壁20からなるテーパー面の上端周縁20aよりも上側に位置するように、円形孔4の内側に回転円板5が回転自在に遊嵌され、回転軸6の上端側に着脱自在に取り付けている回転円板5を回転軸6に対して上下動させ、クリアランス3の大きさ(サイズ)・間隔(S)の大きさ及び、円形孔4の内周壁20と回転円板5の外周壁15とが対向している区間に対応するクリアランス3の入口側3aと出口側3bとの間の奥行き(L)の大きさ、並びに、回転円板5の外周壁15に備えられているテーパー面の上端周縁15aと、円形孔4の内周壁20のテーパー面の上端周縁20aとの間の間隔(H)の大きさを任意に調整することが可能であり、異物分離槽2の底面10aには4個の円形孔が設けられており、ここにそれぞれ回転円板5が、回転自在に遊嵌され、回転円板5は、モータ49によって回転される回転軸6の上端側にそれぞれ取り付けられ、4個の円形孔の下側にはそれぞれ吸引室7が配備されており、この吸引室7には、それぞれ、吸引パイプ51a、51b、51c、51d、51eを介して吸引ポンプ50が接続されている生海苔の異物分離装置1のクリアランス3。」
(2)甲2に記載された事項
甲2には、「生海苔の異物分離方法及び装置」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【発明の効果】
【0022】
この発明は、回転円板の外周縁と隔壁との微小間隙から生海苔と水との混合液を押し出すので、微小間隙が小さくなり、抵抗が増加すれば、これに見合うように加圧力を増大させることができるので、効率よく異物分離ができる効果がある。
【0023】
また回転円板の回転によって、混合液の通過摩擦を軽減し、生海苔に作用する外力を可及的に軽減する効果がある。更に、回転円板の外縁を回転軸に直角な方向に微小角変化させると、混合液の通過を一層容易にさせる効果がある。
【0024】
次に回転円板の外周縁と摺接する摺接片を設ける(又は弾力的に当接する)ことにより、詰った物を切断して目詰りを解消し得る効果がある。」
・「【実施例2】
【0035】
この発明の装置の実施例を図2、3、4、5に基づいて説明すると、機体1上に加圧室2を設置し、該加圧室2の上部へ隔壁3を介して処理済槽4を設置する。前記隔壁3に円形孔5を穿設し、この円形孔5に回転円板6を、小間隙Sを保って回転自在に架設する。
【0036】
前記において隔壁3と、回転円板6の軸7とは直角にしてあり、回転円板6の外周部下縁に摺接片34が当接してある。前記処理済槽4には、堰板8を立設して排出槽9と区分し、該排出槽9の底部口の排出筒9bに排出ホース10を連結し、排出ホース10は貯留槽11に臨ませて、この発明の異物分離装置15を構成した(図2(a)(b))。前記排出槽9と処理済槽4は、その隔壁9aに設けた連通口12で連通している。」
・「【実施例3】
【0042】
次にこの発明の他の実施例を図7に基づいて説明すると、加圧室2aと処理済槽4aの垂直の隔壁3aに円形孔5aを設け、この円形孔5aに回転円板6aを、微小間隙を介して回転自在に架設し、この発明の異物分離装置15aを構成した。
【0043】
前記実施例においては、給送パイプ14aから矢示28のように混合液を給送すれば、加圧室2aを経て間隙Sから生海苔と海水との混合液を矢示40のように押し出し、生海苔は処理済槽4aに入るので、加圧室2a内に分離した異物が残留する。図中29はドレンパイプ、30はバルブ、31は清水パイプである。前記における堰板8aの上縁は、回転円板6aの最高の高さより高い方が異物分離が円滑にできる。」
(3)甲3に記載された事項
甲3には、「生海苔の異物分離方法及び装置」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【0032】
【実施例3】この発明の実施例を図5、6、7について説明する。この実施例は、回転盤の環状突条と、固定盤の環状溝とを嵌合させて、前記環状突条の側壁と環状溝の上側壁との間に微細隙を設け、減圧吸引により生海苔のみを通過させて異物を分離しようとするものである。」
・「【0037】前記において、排出パイプ69に連結してあるポンプ(図示していない)を始動すると、矢示71のように吸引するので、匣体68を介し、微細隙Sも減圧されて、洗浄槽60内の生海苔は矢示72のように間隙Sを通過し、矢示72aのように吸引されるが、異物は間隙Sを通過できないので、環状突条63a、63b、63cではねとばされる(図6(a)、(b))。
【0038】前記において、環状突条63a、63b、63cは、外壁が下細のテーパーに形成してあるので、回転盤63を昇降(矢示86、87)させることにより、微細隙Sを0~0.3mmなどに調節することができる。前記回転盤63の回転軸75内に挿通した昇降軸89の昇降量をねじ調節すれば、前記微細隙を百分の1の精度で調節するのは容易である。」
・「【0049】
【発明の効果】この発明によれば、生海苔をミンチにかけてから清水と混合して異物分離装置に入り、異物を除去されるので、異物分離の効率及び能率を著しく向上させることができる効果がある。また、この発明には清水を使用するので、生海苔の葉が拡がり、これに付着している異物も有効に除去することができるので、製品の品質を向上させる効果がある。
【0050】次に、異物分離装置についても、ウレタンゴム片又は金属片などを回転盤又は固定盤に固定し、生海苔による目詰りを防止したが、この装置は、荒切りした生海苔の異物分離についても有効である。」
2 対比・判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明における「異物分離槽2」は本件特許発明1における「生海苔混合液槽」に相当する。
甲1発明における「異物分離槽2の底面10a」及び「吸引室7」から構成される部分は本件特許発明1における「選別ケーシング」に相当する。
甲1発明における「リング10b」は本件特許発明1における「選別ケースリング」に相当する。
甲1発明における「内周壁20」は本件特許発明1における「環状内周面(5a)」に相当する。
甲1発明における「回転円板5」は本件特許発明1における「回転板」に相当する。
甲1発明における「回転円板5」の「外周壁15」は本件特許発明1における「回転板」の「外周面」に相当する。
甲1発明における「リング10bの内周壁20と、これに対向する回転円板5の外周壁15との間に形成される」「クリアランス3」は本件特許発明1における「前記選別ケースリングの前記環状内周面(5a)」と「前記回転板の前記外周面」「とで形成した生海苔異物分離除去装置のクリアランス」に相当するとともに「生海苔異物分離除去装置のクリアランスの構造」に相当する。
甲1の【0044】ないし【0048】及び図7に記載された事項からみて、甲1発明が「回転円板5を回転軸6に対して上下動」させる手段を有していることは当業者に明らかであり、該手段は本件特許発明1における「前記回転板の前記外周面」の「上昇、又は降下を司る昇降手段」に相当する。
甲1発明における「回転円板5を回転軸6に対して上下動させ、クリアランス3の大きさ(サイズ)・間隔(S)の大きさ及び、円形孔4の内周壁20と回転円板5の外周壁15とが対向している区間に対応するクリアランス3の入口側3aと出口側3bとの間の奥行き(L)の大きさ、並びに、回転円板5の外周壁15に備えられているテーパー面の上端周縁15aと、円形孔4の内周壁20のテーパー面の上端周縁20aとの間の間隔(H)の大きさを任意に調整する」は本件特許発明1における「前記昇降手段を介して」、「前記外周面を備える前記回転板を、上昇、又は降下し、前記クリアランスの寸法を確保する」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「生海苔混合液槽に設けた選別ケーシングと、この選別ケーシングに設けた環状内周面(5a)を備えた選別ケースリングと、前記環状内周面(5a)の開口に挿設する外周面を備えた回転板と、前記選別ケースリングの前記環状内周面(5a)と前記回転板の前記外周面とで形成した生海苔異物分離除去装置のクリアランスにおいて、
前記生海苔混合液槽に設けた回転軸に、前記回転板を支持するとともに、前記回転板の前記外周面の上昇、又は降下を司る昇降手段を設け、
前記昇降手段を介して、前記外周面を備える前記回転板を、上昇、又は降下し、前記クリアランスの寸法を確保する
生海苔異物分離除去装置のクリアランスの構造。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-1>
「選別ケースリング」に関して、本件特許発明1においては「ピン角内周面(5b)を備えた」と特定されているのに対し、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。
<相違点1-2>
「前記環状内周面(5a)の開口に挿設する外周面を備えた回転板」に関して、本件特許発明1においては「前記環状内周面(5a)、及び前記ピン角内周面(5b)の開口に挿設する外周面を備えた回転板」と特定されているのに対し、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。
<相違点1-3>
「前記選別ケースリングの前記環状内周面(5a)と前記回転板の前記外周面とで形成した生海苔異物分離除去装置のクリアランス」に関して、本件特許発明1においては「前記選別ケースリングの前記環状内周面(5a)、及び前記ピン角内周面(5b)と前記回転板の前記外周面の鉛直外周面(7b)及び傾斜収れん外周面(7c)とで形成した」と特定されているのに対し、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。
<相違点1-4>
「前記生海苔混合液槽に設けた回転軸に、前記回転板を支持するとともに、前記回転板の前記外周面の上昇、又は降下を司る昇降手段」に関して、本件特許発明1においては「前記回転板の前記外周面に設けた鉛直外周面と傾斜収れん外周面の上昇、又は降下を司る」と特定されているのに対して、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。
<相違点1-5>
「前記昇降手段を介して、前記外周面を備える前記回転板を、上昇、又は降下し、前記クリアランスの寸法を確保する」に関して、本件特許発明1においては「前記鉛直外周面の摩耗時に」と特定されているのに対して、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点1-3について検討する。
甲1には、甲1発明において、「回転板」の「外周面」を「鉛直外周面(7b)」及び「傾斜収れん外周面」とで形成することによって、相違点1-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はないし、甲2及び3にもない。
したがって、甲1発明において、相違点1-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、甲1ないし3に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の奏する「回転板、又は回転リングの外周面の形態と、この回転板の昇降を利用し、外周面に摩耗発生時の修復を回避し、かつクリアランスの寸法確保に役立つことと、この回転板の使用期間の延長確保が可能となること等の利点がある。併せて経済的な利点がある。」(本件特許の発明の詳細な説明の【0011】)という効果は、甲1発明並びに甲1ないし3に記載された事項(特に甲1ないし3それぞれの【発明の効果】欄の記載を参照。)からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、「本件特許の明細書には「回転板7の外周面7aは、上側は、例えば、1mm~5mm、好ましくは1mm~3mmの高さを備えた円周形態の鉛直外周面7bで、また、下側は、傾斜部を備えた円周形態の傾斜収れん外周面7Cで、形成される。」(0032段落)との記載がある。
甲1に記載されている図面における回転円板の該当する箇所を「傾斜収れん外周面」と定義することに困難性は無い。
甲第2号証には、円形孔5に回転円板6を、小間隙Sを保って回転自在に架設し、小間隙Sによって、小間隙Sを通過する混合液から小間隙Sを通過できない異物を除去する「生海苔異物分離除去装置のクリアランスの構造」であって、回転板の外周面に、鉛直外周面に相当する、甲第2号証における図7で水平方向に伸びる水平外周面を備えているものが記載されている。
また、甲第3号証では、回転板に相当する環状突条は、「外壁を下細のテーパーに形成」してあり、選別ケースリングの環状内周面に対向する回転板の外周面を、「鉛直外周面及び傾斜収れん外周面とで形成」するようにすることは、当業者に容易に想到できる範囲である。
そこで、当業者が、甲1、甲2、甲3の記載に基づいて、相違点1-3に係る構成に想到することには困難性が無い。」旨主張する(特許異議申立書第18及び19ページ)。
そこで、該主張について検討する。
甲1の【0017】の「発明者等の検討によれば、本発明の生海苔の異物分離装置におけるこのように優れた作用・効果は、・・・(略)・・・回転円板の外周壁に備えられているテーパー面の上端周縁が、円形孔の内周壁のテーパー面の上端周縁よりも上側に位置しているという本発明の装置に特有の構造・形態によって発揮されているものと認められた。」という記載事項によると、甲1発明は、「回転円板5」の「外周壁15」が「上端周縁が、円形孔の内周壁のテーパー面の上端周縁よりも上側に位置している」「テーパー面」を備えることにより、甲1発明の効果を奏するものであるから、甲1発明における「回転円板5」の「外周壁15」に、甲1発明の効果とは関係のない「鉛直外周面(7b)」を設ける動機付けが甲1に記載されているとはいえない。
また、甲2には、水平方向に伸びる水平外周面を備えているものが記載されているに過ぎないし、甲3には、外壁を下細のテーパーに形成したものが記載されているに過ぎず、いずれの証拠にも、甲1発明における「回転円板5」の「外周壁15」に、甲1発明の効果とは関係のない「鉛直外周面(7b)」を設ける動機付けが記載されているとはいえない。
したがって、「当業者が、甲1、甲2、甲3の記載に基づいて、相違点1-3に係る構成に想到することには困難性が無い。」とはいえず、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
エ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明及び甲1ないし3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件特許発明2について
ア 対比
本件特許発明2と甲1発明を対比する。
甲1発明における「異物分離槽2」は本件特許発明2における「生海苔混合液槽」に相当する。
甲1発明における「異物分離槽2の底面10a」、「リング10b」及び「吸引室7」から構成される部分は本件特許発明2における「選別ケーシング」に相当する。
甲1発明における「内周壁20」は本件特許発明2における「環状内周面(3a)」に相当する。
甲1発明における「回転円板5」は本件特許発明2における「回転板」に相当する。
甲1発明における「回転円板5」の「外周壁15」は本件特許発明2における「回転板」の「外周面」に相当する。
甲1発明における「リング10bの内周壁20と、これに対向する回転円板5の外周壁15との間に形成される」「クリアランス3」は本件特許発明2における「前記選別ケースリングの前記環状内周面(3a)」と「前記回転板の前記外周面」「とで形成した生海苔異物分離除去装置のクリアランス」に相当するとともに「生海苔異物分離除去装置のクリアランスの構造」に相当する。
甲1の【0044】ないし【0048】及び図7に記載された事項からみて、甲1発明が「回転円板5を回転軸6に対して上下動」させる手段を有していることは当業者に明らかであり、該手段は本件特許発明2における「前記回転板の前記外周面」の「上昇、又は降下を司る昇降手段」に相当する。
甲1発明における「回転円板5を回転軸6に対して上下動させ、クリアランス3の大きさ(サイズ)・間隔(S)の大きさ及び、円形孔4の内周壁20と回転円板5の外周壁15とが対向している区間に対応するクリアランス3の入口側3aと出口側3bとの間の奥行き(L)の大きさ、並びに、回転円板5の外周壁15に備えられているテーパー面の上端周縁15aと、円形孔4の内周壁20のテーパー面の上端周縁20aとの間の間隔(H)の大きさを任意に調整する」は本件特許発明2における「前記昇降手段を介して」、「前記外周面を備える前記回転板を、上昇、又は降下し、前記クリアランスの寸法を確保する」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「生海苔混合液槽に設けた環状内周面(3a)を備えた選別ケーシングと、前記選別ケーシングの前記環状内周面(3a)で形成された開口に挿設する外周面を備えた回転板と、前記選別ケーシングの前記環状内周面(3a)と前記回転板の前記外周面とで形成した生海苔異物分離除去装置のクリアランスにおいて、
前記生海苔混合液槽に設けた回転軸に、前記回転板を支持するとともに、前記回転板の前記外周面の上昇、又は降下を司る昇降手段を設け、
前記昇降手段を介して、前記外周面を備える前記回転板を、上昇、又は降下し、前記クリアランスの寸法を確保する生海苔異物分離除去装置のクリアランスの構造。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2-1>
「環状内周面(3a)を備えた選別ケーシング」に関して、本件特許発明2においては「ピン角内周面(3b)を備えた」と特定されているのに対し、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。
<相違点2-2>
「前記選別ケーシングの前記環状内周面(3a)で形成された開口に挿設する外周面を備えた回転板」に関して、本件特許発明2においては「前記選別ケーシングの前記環状内周面(3a)、及び前記ピン角内周面(3b)で形成された開口に挿設する外周面を備えた回転板」と特定されているのに対し、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。
<相違点2-3>
「前記選別ケーシングの前記環状内周面(3a)と前記回転板の前記外周面とで形成した生海苔異物分離除去装置のクリアランス」に関して、本件特許発明2においては「前記選別ケーシングの前記環状内周面(3a)、及び前記ピン角内周面(3b)と前記回転板の前記外周面の鉛直外周面(7b)及び傾斜収れん外周面(7c)とで形成した」と特定されているのに対し、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。
<相違点2-4>
「前記生海苔混合液槽に設けた回転軸」に設けた「前記回転板を支持する」「昇降手段」に関して、本件特許発明2においては「前記回転板の前記外周面に設けた鉛直外周面と傾斜収れん外周面の上昇、又は降下を司る」と特定されているのに対して、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。
<相違点2-5>
「前記昇降手段を介して、前記外周面を備える前記回転板を、上昇、又は降下し、前記クリアランスの寸法を確保する」に関して、本件特許発明2においては「前記鉛直外周面の摩耗時に」と特定されているのに対して、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2-3について検討する。
相違点2-3は相違点1-3と実質的に同じであるから、その判断も上記(1)イと同じである。
すなわち、甲1発明において、相違点2-3に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは、甲1ないし3に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明2の奏する「回転板、又は回転リングの外周面の別の形態と、この回転板の昇降を利用し、外周面に摩耗発生時の修復を回避し、かつクリアランスの寸法確保に役立つことと、この回転板の使用期間の延長確保が可能となること等の利点がある。併せて経済的な利点がある」(本件特許の発明の詳細な説明の【0013】)という効果は、甲1発明並びに甲1ないし3に記載された事項(特に甲1ないし3それぞれの【発明の効果】欄の記載を参照。)からみて、本件特許発明2の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は甲1発明及び甲1ないし3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、「そこで、上述したように、甲1発明と本件発明1との間の相違点1-1,1-2、1-3、1-4、1-5が、いずれも、本件発明1と技術分野を共通にしている甲第1号証及び甲第2号証、甲第3号証の記載されている事項に基づいて、本件特許の出願前に、当業者が容易に想到できる程度のものに過ぎないのと同様に、甲1発明と本件発明2との間の相違点も、本件発明1と技術分野を共通にしている甲第1号証及び甲第2号証、甲第3号証の記載されている事項に基づいて、本件特許の出願前に、当業者が容易に想到できる程度のものに過ぎない。
そこで、本件発明2は、いずれも、本件特許の出願日よりも前に日本国内で頒布されていた刊行物である甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証に記載されている事項にもとづいて、本件特許の出願前に、当業者が、容易に、発明できたものである。」旨主張する(特許異議申立書第20及び21ページ)。
そこで、該主張について検討する。
上記(1)のとおり、本件特許発明1は甲1発明及び甲1ないし3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、上記イ及びウのとおり、本件特許発明2は甲1発明及び甲1ないし3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、「本件発明2は、いずれも、本件特許の出願日よりも前に日本国内で頒布されていた刊行物である甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証に記載されている事項にもとづいて、本件特許の出願前に、当業者が、容易に、発明できたものである。」とはいえず、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(3)本件特許発明3及び4について
本件特許発明3及び4は、請求項1又は2の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1又は2の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1又は2と同様に、甲1発明及び甲1ないし3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)申立理由についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、申立理由によっては取り消すことはできない。
第5 結語
以上のとおり、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700489