特許異議申立
2024-700409
天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム、天然ゴムの実由来バイオリファイナリー方法及びプログラム
- 審判番号
- 2024-700409
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-542965
- 登録番号
- 7372615
- 請求日
- 2024年04月30日
- 審決日
- 2024年09月24日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】Innovare株式会社
- 【異議申立人】篠▲崎▼ 哲也
- 審判長/審判官
- 審判長 関根 裕
- 審判官 長谷川 真一
- 審判官 光本 美奈子
- 分類
- P1651.121-Y (C10L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7372615号発明「天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム、天然ゴムの実由来バイオリファイナリー方法及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7372615号の請求項1~14に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7372615号の請求項1~14に係る特許についての出願は、令和5年6月2日を国際出願日とする出願であって、令和5年10月24日に特許権の設定登録がされ(請求項の数14)、同年11月1日に特許掲載公報が発行された。その後、令和6年4月30日に特許異議申立人である篠崎 哲也(崎はたつさきが正式表記。以下「申立人」という。)により、全請求項に係る特許について特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件発明
本件発明は、次のとおりの発明(以下、請求項番号にしたがって「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということもある。)である。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムであって、
天然ゴムの実を、殻部分と核部分とに分離処理する分離部と、
分離処理した前記核部分を加熱処理する加熱処理部と、
加熱処理した前記核部分を粉砕処理する粉砕部と、
粉砕処理した前記核部分から植物油を抽出処理する抽出部と、
抽出した前記植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成部と、
分離処理した前記殻部分を炭化処理して、バイオ炭を生成する第2生成部と、
前記抽出処理後の前記核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成部と、
を備える天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。
【請求項2】
天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムであって、
天然ゴムの実を丸ごと加熱処理する加熱処理部と、
加熱処理した前記天然ゴムの実に含まれる核部分を粉砕処理する粉砕部と、
粉砕処理した前記核部分から植物油を抽出処理する抽出部と、
抽出処理した前記植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成部と、
加熱処理した前記天然ゴムの実の殻部分を炭化処理し、バイオ炭を生成する第2生成部と、
前記抽出処理後の前記核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成部と、
を備える天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。
【請求項3】
前記加熱処理は、抽出する前記植物油の劣化防止および水分除去のために行う請求項1または2に記載の天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。
【請求項4】
前記加熱処理の条件が、温度範囲が50乃至150度で、加熱時間が4乃至8時間である請求項1または2に記載の天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。
【請求項5】
前記粉砕処理は、前記核部分を10mm以下に粉砕する請求項1または2に記載の天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。
【請求項6】
前記抽出処理は、少なくともスクリュープレスによる圧搾法、および/または、少なくともヘキサンあるいはイソプロピルアルコールを含む有機溶媒による抽出法で行う請求項1または2に記載の天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。
【請求項7】
前記抽出処理の前記有機溶媒は循環させて再利用する請求項6に記載の天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。
【請求項8】
前記第1生成部の前記メチルエステル化処理は、前記バイオ燃料とグリセリンを生成する請求項1または2に記載の天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。
【請求項9】
前記第2生 成部の前記炭化処理は、前記バイオ炭、カーボンブラック、負極材料を生成する請求項1または2に記載の天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。
【請求項10】
前記加熱処理した天然ゴムの実を、前記殻部分と前記核部分とに分離処理する分離部を備える請求項2に記載の天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。
【請求項11】
天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリー方法において、
天然ゴムの実を、殻部分と核部分とに分離処理する分離ステップと、
分離処理した前記核部分を加熱処理する加熱処理ステップと、
加熱処理した前記核部分を粉砕処理する粉砕ステップと、
粉砕処理した前記核部分から植物油を抽出する抽出ステップと、
抽出した前記植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成ステップと、
分離した前記殻部分を炭化処理して、バイオ炭を生成する第2生成ステップと、
前記抽 出ステップ後の前記核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成ステップと、
を備える天然ゴムの実由来バイオリファイナリー方法。
【請求項12】
天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムと連携するコンピュータに、
天然ゴムの実を、殻部分と核部分とに分離処理する分離ステップと、
分離処理した前記核部分を加熱処理する加熱処理ステップと、
加熱処理した前記核部分を粉砕処理する粉砕ステップと、
粉砕処理した前記核部分から植物油を抽出する抽出ステップと、
抽出した前記植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成ステップと、
分離処理した前記殻部分を炭化処理して、バイオ炭を生成する第2生成ステップと、
前記抽 出ステップ後の前記核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成ステップと、を実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラム。
【請求項13】
天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリー方法において、
天然ゴムの実を丸ごと加熱処理する加熱処理ステップと、
加熱処理した前記天然ゴムの実に含まれる核部分を粉砕処理する粉砕ステップと、
粉砕処理した前記核部分から植物油を抽出処理する抽出ステップと、
抽出処理した前記植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成ステップと、
加熱処理した前記天然ゴムの実の殻部分を炭化処理し、バイオ炭を生成する第2生成ステップと、
前記抽出処理後の前記核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成ステップと、
を備える天然ゴムの実由来バイオリファイナリー方法。
【請求項14】
天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成する天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムに、
天然ゴムの実を丸ごと加熱処理する加熱処理ステップと、
加熱処理した前記天然ゴムの実に含まれる核部分を粉砕処理する粉砕ステップと、
粉砕処理した前記核部分から植物油を抽出処理する抽出ステップと、
抽出処理した前記植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成ステップと、
加熱処理した前記天然ゴムの実の殻部分を炭化処理し、バイオ炭を生成する第2生成ステップと、
前記抽出処理後の前記核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成ステップと、を実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラム。」
第3 異議申立ての概要及び証拠方法
1 異議申立ての概要
申立理由(進歩性欠如)
本件発明1~14は、下記2の甲1に記載された発明及び甲2~25に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明1~14に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 証拠方法の一覧
申立人は、次の甲第1号証~甲第25号証及び参考資料1~13を提出した。甲第1号証~甲第25号証を、以下「甲1」~「甲25」ともいう。
なお、参考資料1~13(甲1のオンライン版である参考資料1、甲4の【0057】で引用されている参考資料2、ゴムの実等の用語を説明する参考資料3~6、バイオディーゼル燃料に関する参考資料7、天然ゴムの実の写真を示す参考資料8、バイオガスに関する参考資料9及び10、油脂の劣化に関する参考資料11、ソクスレー抽出機に関する参考資料12、電気二重層キャパシタに関する参考資料13)は、下記第5の「申立理由(進歩性欠如)についての当審の判断」で用いないため、引用自体を省略した。
甲第1号証:Miao Yang, et al., Biorefinery methods for extraction of oi1 and protein from rubber seed. Bioresources and Bioprocessing 8 Article Number 45 (2021)、公開日:2021年6月8日
甲第2号証:Widayat, et al., Study on production process of biodiesel from rubber seed (hevea brasiliensis) by in situ (trans)esterification method with acid catalyst. Energy Procedia 32 (2013) 64-73、公開日:2013年5月17日
甲第3号証:Hanh Ngoc Thi Le, et al., Biodiesel Production from Rubber Seed Oil by Transesterification Using a Co-solvent of Fatty Acid Methyl Esters. Chem. Eng. Technol. 2018, 41, No. 5, 1013-1018、公開日:2018年3月13日
甲第4号証:特許第67496649号公報
甲第5号証:C.S. Ezeanyanaso, et al., Comparative Analysis of Rubber Seed Methyl Ester with Other Methyl Esters. Global Journal of Pure and Applied Sciences Vol. 16, No. 2, 2010, 195-199、公開日:2010年12月14日
甲第6号証:Chen Yubao, et al., Converting rubber seed oil into hydrocarbon fuels via supported Pd-catalyst. Int. J. Agric. & Biol. Eng., 2017, 10 (6), 201-209、公開月:2017年11月
甲第7号証:Mariam Ameen, et al., Catalytic hydrodeoxygenation of rubber seed oil over sonochemically synthesized Ni-Mo/γ-Al2O3 catalyst for green diesel production. Ultrasonics-Sonochemistry, 2019, Vol. 51, 90-102、公開日:2018年10月10日
甲第8号証:Muhammad Al Muttaquii, et al., Hydrocracking of Rubber Seed Oil Over Cobalt-Nickel Impregnated on the HZSM-5 Catalyst. Research Trends in Chemical Sciences, AkiNik Publications, Page 101-118、公開年:2021年
甲第9号証:Ali Shemsedin Reshad, et al. Thermo-chemical conversion of waste rubber seed shell to produce fuel and value-added chemicals. Journal of the Energy Institute 91 (2018) 940-950、公開日:2017年9月18日
甲第10号証:Widyarani, et al., Valorisation of Proteins from Rubber Tree. Waste and Biomass Valorization (2017) 8:1027-1041、公開日:2016年9月21日
甲第11号証:Kang Sun, et al., Preparation and characterization of activated carbon from rubber-seed shell by physical activation with steam. BIOMASS AND BIOENERGY 34 (2010) 539-544、公開日:2010年1月25日
甲第12号証:「2022年度CRF研究助成活動採択テーマ一覧」、一般社団法人カーボンリサイクルファンド、<URL: https://carbon-recycling-fund.jp/wp/wp-content/uploads/2020/07/カーボンリサイクルファンド2022年度研究助成概要.pdf
>、第20頁、出力日:2024年4月11日、公開日:2022年8月1日
甲第13号証:Anee Mohanty, et al., A critical review on biogas production from edible and non-edible oil cakes. Biomass Conversion and Biorefinery (2022) 12: 949-966、公開日:2021年1月26日
甲第14号証:Muhammad Yusuf Abduh, et al. Bioconversion of rubber seeds to produce protein and oi1-rich biomass using black soldier fly larva assisted by microbes. Journal of Entomology and Zoology Studies 2017; 5 (4); 591-597、公開年:2017年
甲第15号証:M. Y. Abudh, et al. Techno-Economic Analysis for Small Scale Production of Rubber Seed Oil and Biodiesel in Palangkaraya, Indonesia. Journal of Clean Energy Technologies, Vol. 5, No. 4,pp. 268-273, 2017、公開月:2017年7月
甲第16号証:A. F. Iyayi, et al., Rubber seed processing for value-added latex production in Nigeria. African Journal of Agricultural Research Vol. 3 (7), pp. 505-509,July 2008、公開月:2008年7月
甲第17号証:Said Nurdin, et al., Activated Paphia undulate Shells Waste (APSW): A Cost-Effective Catalyst for Biodiesel Synthesis from Rubber and Jatropha curcas Seeds Oil (RSOME & JSOME). International Journal of Chemical Engineering and Applications, Vol. 5, No. 6, December 2014, pp. 483-488、公開月:2014年12月
甲第18号証:Ainaatul Asmaa'Ishak and Jumat Salimon, Synthesis of Rubber Seed Oil and Trimethylolpropane Based Bioluburicant Base Stocks. Malaysian Journal of Analytical Sciences, Vol. 17, No. 3, (2013), 414-421、公開月:2013年12月
甲第19号証:Clara Leyibo Igeleke and Victor Irogue Omorusi, Review of post-harvest deterioration of rubber seeds. Journal of Agriculture and Social Research, Vol. 7, No. 2, 2007, pp. 11-19、公開日:2008年7月29日
甲第20号証:T.F. Adepoju, et al., Hevea brasiliensis (Rubber seed): An alternative source of renewable energy., Scientific African 8 (2020) e00339、公開日:2020年3月5日
甲第21号証:Samuel E. Onoji, et al., Rubber seed oil: A potential renewable source of biodiesel for sustainable development in sub-Saharan Africa. Energy Conversion and Management 110 (2016) 125-134.、公開日:2015年12月24日
甲第22号証:Munirah Onn, et al., Performance evaluation of carbonized rubber seed shell (CRSS) filler as reinforcer in rubber binder. Malaysian Journal of Fundamental and Applied Sciences Vol. 14, No. 3 (2018) 418-422、公開日:2018年9月3日
甲第23号証:Lawrence 0. Ekebafe, et al., Advances in natural rubber seed shell utilization in polymer technology. Journal of Advances in Science and Engineering 3 (2020) 106-112、公開日:2020年8月1日
甲第24号証:Thanchanok Pagketanang, et al., Microporous Activated Carbon from KOH-Activation of Rubber Seed-Shells for Application in Capacitor Electrode. Energy Procedia 79 (2015) 651-656、公開日:2015年12月3日
甲第25号証:Nurhafizah Md Disa, et al., The Synthesized Reduced Graphene Oxide Enhanced the Capacitive Behavior of Activated Carbon/PVA as Potential Electrode Materials. J. Nanostruct. 2020, 10 (2): 296-306、公開日:2020年4月1日
第4 甲号証等の記載
甲1~甲15の記載は次のとおりである。また、甲16~甲25の摘記は省略した。
1 甲1の記載
甲1には、次の記載がある。翻訳については、申立人が提出した翻訳文を採用した。
(1)第1頁「
[図:0001415322000001.jpg]
」
(翻訳)
[図:0001415322000002.jpg]
(2)「
[図:0001415322000003.jpg]
」(第1頁、左欄、Introduction、上から1行目~第2頁、左欄、上から18行目)
(翻訳)
[図:0001415322000004.jpg]
(3)「
[図:0001415322000005.jpg]
」(第2頁、左欄)
(翻訳)
[図:0001415322000006.jpg]
(4)「
[図:0001415322000007.jpg]
」(第2頁、左欄~右欄)
(翻訳)
[図:0001415322000008.jpg]
(5)「
[図:0001415322000009.jpg]
」(第2頁、右欄)
(翻訳)
[図:0001415322000010.jpg]
(6)「
[図:0001415322000011.jpg]
」(第2頁、右欄)
(翻訳)
[図:0001415322000012.jpg]
(7)「
[図:0001415322000013.jpg]
」(第2頁、右欄)
(翻訳)
[図:0001415322000014.jpg]
(8)「
[図:0001415322000015.jpg]
」(第8頁、左欄、Outlook for application of RSO、上から1行目~右欄、下から1行目)
(翻訳)
[図:0001415322000016.jpg]
(9)「
[図:0001415322000017.jpg]
」(第9頁、右欄)
(翻訳)
[図:0001415322000018.jpg]
2 甲2の記載
甲2には、次の記載がある。翻訳については、申立人が提出した抄訳を翻訳として採用した。
(1)「Biodiesel is fatty acid methyl or ethyl esters made from vegetable oils(edible and non edible)or animal fats. The objective of this research was to produce biodiesel from rubber seed by in situ method with acid catalyst with a goal for obtaining environmentally friendly alternative fuels from non edible raw material.」(第64頁、Abstract、上から1行目~3行目)
(翻訳)
バイオディーゼルは、(食用および非食用の)植物油又は動物性油脂から作られる脂肪酸のメチルエステル又はエチルエステルである。本研究の目的は、非食用原料から環境に優しい代替燃料を得ることを目的として、酸触媒を用いたin situ法によりゴムの種子からバイオディーゼルを製造することである。
(2)「The results shows that the operation time for biodiesel production by in situ method with acid catalyst was 120 minutes and the yield of Fatty Acid Methyl Ester(FAME) obtained was at 91.05%.」(第64頁、Abstract、下から1行目~3行目)
(翻訳)
その結果、酸触媒を用いたin situ法によるバイオディーゼル製造時間は120分であり、得られた脂肪酸メチルエステル(FAME)の収率は91.05%であった。
(3)「Transesterification is a reaction between triglyceride and alcohol to produce fatty acid methyl ester(FAME)and glycerol. Transesterification reaction is presented in Figure 1.」(第65頁、Introduction、第3パラグラフ、下から1行目~2行目)
(翻訳)
トランスエステル化とは、トリグリセリドとアルコールの反応であり、脂肪酸メチルエステル(FAME)とグリセロールを生成する。エステル交換反応を図1に示す。
(4)「
[図:0001415322000019.jpg]
」(第65頁 Fig.1)
(5)「Rubber seed sample were peeled. The seed kernel was macerated, blended and dried in an oven at 55 ℃ for 2 hours. One hundred grams of samples were introduced into flask equipped with mixer(see Fig. 2). Aqueous methanol and H2S04 were added and then heated and mixed. The solution was heated to 60 ℃ at atmospheric pressure. The in situ process(extraction-reaction process) was done for 120 minutes. The product was fi1tered and methanol was separated with distillation. Biodiesel product was analyzed for weight, viscosity, density and concentration. Concentration of methyl ester in biodiesel product was analyzed by GC.」(第66頁、下から9行目~3行目)
(翻訳)
ゴムの種子の試料の殻を剥いた。種子の核を浸漬して柔らかくした後、混合し、55℃のオーブンで2時間乾燥させた。100gの試料を撹拌機付きのフラスコに入れた(図2参照)。水性メタノールと硫酸(H2S04)を加え、加熱混合した。得られた溶液を大気圧で60℃まで加熱した。in situプロセス(抽出-反応プロセス)を120分間行った。生成物をフィルター濾過し、蒸留によりメタノールを分離した。バイオディーゼル生成物の重量、粘度、密度、濃度を分析した。バイオディーゼル生成物中のメチルエステル濃度はGCで分析した。
(6)「The (trans)esterification reaction produced methyl ester and glycerol.」(第67頁、3. Results and discussion, 3.1 Preliminary study, 上から2行目~3行目)
(翻訳)
(トランス)エステル化反応により、メチルエステルとグリセロールが生成した。
3 甲3の記載
甲3には、次の記載がある。翻訳については、申立人が提出した抄訳を翻訳として採用した。
(1)「Rubber seed oi1(RSO) is a high potential feedstock for the production of biodiesel fuel(BDF)in Asia.」(第1013頁、表題下、上から1行目~2行目)
(翻訳)
ゴムの種子油(RSO)は、アジアにおけるバイオディーゼル燃料(BDF)製造のための有望な原料である。
(2)「Transesterification using fatty acid methyl esters (FAMEs) as co-solvents was developed for BDF production from RSO with high content of free fatty acids (FFAs).」(第1013頁、表題下、上から2行目~4行目)
(翻訳)
遊離脂肪酸(FFAs)を多く含むゴムの種子油(RSO)からバイオディーゼル燃料(BDF)を製造するために、脂肪酸メチルエステル(FAMEs)を共溶媒として用いたトランスエステル化を開発した。
(3)「In the present study, a new method was developed using a co-solvent of FAMEs for the production of BDF from RSO with a high content of FFAs (35.6 wt%). After esterification, transesterification was performed using FAMEs as the co-solvent converted from contaminated FFAs in RSO. A high quality of BDF with 99.2% ester content was achieved at 40 in 30 min. The physicochemical properties of BDF produced from RSO were evaluated with the EN 14214 and JIS K2390 standards.」(第1013頁、右欄の上から8行目~第1014頁、左欄の上から5行目)
(翻訳)
本研究では、遊離脂肪酸(FFA)の含量が高い(35.6wt%)RSOからBDFを製造するために、脂肪酸メチルエステル(FAME)を共溶媒とする新しい方法を開発した。エステル化後、ゴムの種子油(RSO)中に夾雑物質として含まれる遊離脂肪酸(FFA)から変換された脂肪酸メチルエステル(FAMEs)を共溶媒として用いてトランスエステル化反応を行った。40℃、30分の条件で、エステル含量が99.2%の品質の高いバイオディーゼル燃料(BDF)が得られた。ゴムの種子油(RSO)から製造されたバイオディーゼル燃料(BDF)の物理化学的特性を、EN14214及びJIS K2390の規格と比較して評価した。
(4)「2.2 Procedures
The two-step process for BDF production from RSO using co-solvents was examined. In the initial esterification step, the FFAs with high concentrations in the RSO were esterified by MeOH in the presence of H2S04 as a catalyst with acetonitrile as the co-sol vent [15] in order to reduce its content in the oi1 to less than 2% that is important for avoiding saponification in the alkaline transesterification. Subsequently, the crude RSO was used for the transesterification. In this process, the TGs, diglycerides (DGs) and monoglycerides (MGs) were transesterified with a methanolic KOH solution and using a co-solvent of FAMEs produced by the esterification.」(第1014頁、左欄、2.2 Procedures)
(翻訳)
2.2 手順
共溶媒を用いるゴムの種子油(RSO)からバイオディーゼル燃料(BDF)を製造する2段階のプロセスを検討した。最初のエステル化ステップでは、アルカリ性条件下で行われるトランスエステル化における鹸化を避けるために重要な油中の遊離脂肪酸(FFA)の含有量を2%未満にするため、アセトニトリルを共溶媒として[15]、硫酸(H2SO4)を触媒として存在させた環境下で、ゴムの種子油(RSO)中の高濃度の遊離脂肪酸(FFA)をメタノールでエステル化した。その後、得られたクルードRSOをトランスエステル化に使用した。このプロセスにおいて、トリグリセリド(TGs)、ジグリセリド(DG)、及びモノグリセリド(MG)は、メタノール性KOH溶液と、エステル化によって生成したFAMEの共溶媒を用いて、トランスエステル化された。
(5)「2.2.2 Transesterification and Purification Process
A 20-g quantity of the crude RSO as produced in Sect. 2.2.1 was put into a 100-mL three-necked round bottom flask in a water bath controlled at 40℃. A solution of 1 wt% KOH (based on the mass of oil) in MeOH, giving a MeOH/RSO molar ratio of 4.5:1, was then added, and the mixture was stirred gently for 60 min. Following the reaction, the mixture was transferred into a separatory funnel and allowed to stand for 30 min. After separation of the lower (glycerol) phase, the residual MeOH contained in the upper FAME phase was removed at 60℃ under reduced pressure over 30 min. The crude FAMEs were then washed with water unti1 the pH of wastewater was around 7, and finally dried under reduced pressure at 90℃ in 60 min.」(第1014頁、右欄、2.2.2 Transesterification and Purification Process、上から1行目~13行目)
(翻訳)
2.2.2 トランスエステル化及び精製工程
2.2.1節で製造したクルードRSO 20gを、40℃に調温した水浴中の100mLの三口丸底フラスコに入れた。次に、(オイルの質量に基づき)1wt%のKOHのメタノール溶液を、メタノール/RSOのモル比が4.5:1となるように加え、混合物を60分間穏やかに撹拌した。反応後、混合物を分液漏斗に移し、30分間静置した。下層(グリセロール)の分離後、上層のFAME相に残留するメタノールを減圧下、60℃で、30分かけて除去した。その後、クルードFAMEを洗浄した廃水のpHが約7になるまで水で洗浄し、最後に、減圧下、90℃で60分間乾燥させた。
(6)「The physicochemical properties of BDF produced from RSO and the quality criteria of BDF provided in EN 14214 and JIS K2390 standards are summarized in Tab. 2」(第1017頁、左欄、3.5 Properties of the Resulting BDF,上から1行目~3行目)
(翻訳)
RSOから製造されたBDFの物理化学的特性と、EN 14214及びJIS K2390規格に規定されているBDFの品質基準を表2にまとめた。
(7)「
[図:0001415322000020.jpg]
」(第1017頁、右欄、Table 2)
(8)「All these results satisfy the quality of criteria. So, the use of RSO for BDF production could be expanded in the Asian countries where the rubber plantation has been developed.」
(翻訳)
これらの結果はすべて品質基準を満たすものである。従って、BDF生産へのRSOの使用は、ゴムプランテーションが発達したアジア諸国で拡大する可能性がある。
4 甲4の記載
甲4には、次の記載がある。
「【0012】
本発明に用いる非食用の油糧種子としては、特に限定されるものではないが、クロヨナ(Pongamia pinatta)、南洋アブラギリ(Jatropha curcas)、広東アブラギリ(Vernicia montana)、パラゴム(Hevea brasiliensis)、テリハボク(Calophyllum inophyllum)、ローゼリ草(Hibiscus sabdariffa)トウゴマ(Ricinus communis)、アマ(Linum usitatissimum)、シロゴチョウ(Sesbania grandiflora)などが挙げられる。なかでも、糖類、ビタミン類、薬効成分などの含有量が多く、また食用にならないことから、クロヨナ(Pongamia pinatta)、南洋アブラギリ(Jatropha curcas)、広東アブラギリ(Vernicia montana)、パラゴム(Hevea brasiliensis)およびテリハボク(Calophyllum inophyllum)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。」
「【0047】
このようにして、本発明によれば、非食用の油糧種子から、バイオエタノールの原料となる糖類、薬効成分、バイオディーゼル燃料の原料となる植物油脂そしてメタンガスの原料となる残渣およびバイオマスを一連のカスケードで製造することができ、石油系燃料と比較しても経済的に有利なバイオマス総合利用システムを構築することができる。」
「【0057】
<バイオディーゼル燃料への変換>
本発明で得られる植物油は、特別な処理をしなければ水分を含むものであるが、アルキルエステル化してバイオディーゼル燃料にする際、たとえばアセトンを用いる共溶媒法(国際公開第2010/106985号)を使用すれば数%水分を含んでいても特段問題になることはない。またこの共溶媒法を用いることで、副生する純度の高いグリセリンも利用することができ、さらに経済競争力の高いシステムとすることができる。」
5 甲5の記載
甲5には、次の記載がある。翻訳については、申立人が提出した抄訳を翻訳として採用した。
(1)「This study was carried out to compare the physico-chemical properties of rubber seed methyl ester with other methyl esters of non-edible oi1. In order to achieve a two-step transesterification process was developed to convert rubber seed oi1 to its methyl esters.」(第195頁、ABSTRACT、上から1行目~3行目)
(翻訳)
この研究は、天然ゴム種子のメチルエステルと他の非食用油のメチルエステルとの物理化学的特性を比較するために実施された。そのために、ゴムの種子油をメチルエステルに変換する2段階のトランスエステル化プロセスを開発した。)
(2)「The comparison of these properties with diesel shows that the methyl ester from rubber seed oil has a relatively close fuel property values to that of diesel, making it a viable alternative to diesel fuel.」(第195頁、ABSTRACT、下から3行目~1行目)
(翻訳)
これらの特性をディーゼル燃料と比較した結果、ゴムの種子油のメチルエステルはディーゼル燃料に比較的近い燃料特性を持つことがわかり、ディーゼル燃料の代替燃料として有用であることが明らかとなった。
(3)「Among these, transesterification of vegetable oils appears to be more suitable because of the by-product (glycerol) which has high commercial value.」
(翻訳)
中でも、植物油のトランスエステル化は、副生成物(グリセロール)の商品価値が高いため、より適していると思われる。
6 甲6の記載
甲6には、次の記載がある。翻訳については、申立人が提出した抄訳を翻訳として採用した。
(1)「The one-step hydrotreatment of rubber seed oil to produce hydrocarbon fuels has been carried out via supported Pd-catalyst, and analyzed emphatically some elements affected catalytic cracking process, for example, temperature, hydrogen partial pressure and dosage of catalyst, etc.」(第201頁、Abstract、上から1行目~3行目)
(翻訳)
炭化水素燃料を製造するためのゴムの種子油の一段階の水素化処理を、担持パラジウム触媒を用いて実施し、触媒によるクラッキングプロセスに影響を与えるいくつかの要素、例えば、温度、水素分圧、触媒の添加量などを重点的に分析した。
(2)「Under these conditions, effective component of hydrocarbon fuels in the converted oil accounts for 99.49%, and the proportion of C8-C16 can reach as high as 79.61%. The converted oil was similar to petroleum-based oil in chemical composition and can be used for future the aviation biofuels development as the source of raw material because it contains large amount of hydrocarbon in the range of C8-C16.」(第201頁、Abstract、下から4行目~1行目)
(翻訳)
これらの条件下では、変換された油中の炭化水素燃料の有効成分は99.49%を占め、C8-C16成分の割合は79.61%にも達する。変換された油は、その化学組成において石油系オイルと類似しており、C8-C16領域の炭化水素を多量に含むため、将来、航空バイオ燃料の開発における原料として利用できる。
7 甲7の記載
甲7には、次の記載がある。翻訳については、申立人が提出した抄訳を翻訳として採用した。
(1)「Hydrodeoxygenation is one of the promising technologies for the transformation of triglycerides into long-chain hydrocarbon fuel commonly known as green diesel.」(第90頁、 ABSTRACT、上から1行目~3行目)
(翻訳)
水素化脱酸素反応(HDO)は、トリグリセリドを、一般にグリーンディーゼルとして知られる、長鎖炭化水素燃料に変換するための有望な技術の一つである。
(2)「The hydrodeoxygenation(HDO) of rubber seed oil into diesel range over non-sulphided bimetallic Ni-Mo/γ-Al203 solid catalysts were studied.」(第90頁、ABSTRACT、上から2行目~3行目)
(翻訳)
本研究では、非硫化Ni-Mo/γ-Al203固体触媒を用いたゴムの種子油のディーゼル領域の炭化水素(C15-C18)への水素化脱酸素反応(HDO)を検討した。
(3)「The sonochemically synthesized Ni-Mo/γ-Al203 solid catalyst is found to be active, produced 80.87wt% of diesel range hydrocarbons, and it gives high selectivity for Pentadecane (18.7wt%), Hexadecane (16.65wt%), Heptadecane (24.45wt%) and Octadecane (21.Owt%).」 (第90頁、ABSTRACT、上から14行目~16行目)
(翻訳)
超音波化学的に合成されたNi-Mo/γ-Al203固体触媒は活性が高く、ディーゼル領域の炭化水素を80.87wt%生成し、ペンタデカン(18.7wt%)、ヘキサデカン(16.65wt%)、ヘプタデカン(24.45wt%)、オクタデカン(21.Owt%)への高い選択性を示すことが分かった。
8 甲8の記載
甲8には、次の記載がある。翻訳については、申立人が提出した抄訳を翻訳として採用した。
(1)「The aim of this work is to study the conversion of rubber seed oil using cobalt and nickel impregnated on HZSM-5 catalyst via the hydrocracking process.」(第104頁、下から3行目~1行目)
(翻訳)
本研究の目的は、HZSM-5型ゼオライト触媒に含浸担持させたコバルトとニッケルを用いて、水素化分解プロセスによるゴム種子油の変換を研究することである。
(2)「The hydrocracking of rubber seed oil over cobalt-nickel supported on HZSM-5 was studied. The result shows that rubber seed oil, derived from biomass can be upgraded to biofuel over Co-Ni impregnated on HZSM-5 catalyst in a batch reactor.」(第115頁、Conclusions、上から2行目~4行目)
(翻訳)
HZSM-5型ゼオライト触媒に担持されたコバルト-ニッケルを介したゴム種子油の水素化分解を検討した。その結果、バッチ式反応器で、HZSM-5型ゼオライト触媒に含浸担持させたコバルト-ニッケルを介し、バイオマス由来のゴム種子油をバイオ燃料に改質できることが示された。
(3)「The mechanism hydrocracking process of rubber seed oi1, first, the double bonds in the triglycerides become saturated bonds with high temperature and hydrogen gas. Free fatty acids and propane produced when the saturated triglycerides cracked. Then, through hydrodeoxygenation, decarbonylation or decarboxylation reactions, straight-chain alkanes produced. In the hydrodeoxygenation process, water formed by removing oxygen by breaking the C=O bond and breaking the C-0 and C-C bonds. Meanwhile, the decarboxylation and decarbonylation processes produce carbon dioxide (CO2) and carbon monoxide (CO), respectively. The resulting product can be converted into aromatics, isomers, light hydrocarbons, depending on the operating conditions and the type of catalyst[22-25].」(第113頁、下から13行目~3行目)
」
(翻訳)
ゴム種子油の水素化分解のメカニズムとして、まず。トリグリセリド中の二重結合は高い温度と水素ガスにより飽和結合になる。飽和トリグリセリドが分解すると、遊離脂肪酸とプロパンが生成する。その後、水素化脱酸素反応、脱カルボニル化反応、脱炭酸反応などを経て、直鎖アルカンが生成する。水素化脱酸素反応の過程では、C=O結合を切断し、また、C-O結合とC-C結合を切断することによって酸素を除去し、水を生成する。一方、脱炭酸と脱カルボニル化の過程では、それぞれ二酸化炭素(CO2)と一酸化炭素(CO)を生成する。得られた生成物は、反応条件や触媒の種類によって、芳香族、異性体、軽質炭化水素に変換することができる。
9 甲9の記載
甲9には、次の記載がある。翻訳については、申立人が提出した抄訳を翻訳として採用した。
(1)「Rubber seeds were collected from Assam, India. The kernel were separated manually and used for oi1 extraction to produce methyl esters (biodiesel). Shell part of the seed (RSS) was sun dried for 2 days, then grinded and sieved to a particle size of less than 2mm.」(第941頁、Material and methods、上から1行目~2行目)
(翻訳)
ゴムの種子はインドのアッサム州から採取した。核部分は手作業で分離され、メチルエステル(バイオディーゼル)を製造するためのオイルの抽出に使用された。種子の殻の部分(RSS)は2日間天日干しされ、粉砕、ふるい分けされ、粒径2mm以下とした。
(2)「In this study, rubber seed shell (RSS), a solid waste generated during the biodiesel synthesis from non-edible rubber seed was subjected to active pyrolysis temperature window in a semi-batch lab scale reactor.」(第948頁、Conclusions、上から1行目~2行目)
(翻訳)
本研究では、非食用のゴムの種子からバイオディーゼルを合成する際に発生する固形性の廃棄物であるゴムの種子の殻(RSS)を、セミバッチラボスケールの反応器を用いて、活性熱分解温度域で処理した。
(3)「At this condition, maximum yield of liquid (46.14wt%) was obtained along with 31.92 wt% bio-char yield of comparable energy content with anthracite solid fuel (32-34 MJ/kg).」(第948頁、Conclusions、上から3行目~第949頁、上から2行目)
(翻訳)
この条件では、液体収量は46.14wt%で最大であり、無煙炭固形燃料(32-34MJ/kg)に匹敵するエネルギー含量を持つバイオ炭の収量は31.92%であった。
(4)「The produced bio-char was porous structure in nature with BET surface area of 175.95 m2/g. Hence, RSS bio-char can also be used as an alternative solid fuel as well as feedstock source for the preparation of activated carbon.」(第949頁、上から3行目~4行目)
(翻訳)
生産されたバイオ炭は多孔性の構造を有しており、BET表面積は175.95m2/gであった。したがって、ゴムの種子の殻(RSS)から得られるバイオ炭は、代替固体燃料として、また、活性炭を調製するための原料として使用することができる。
(5)「The utilization of RSS and produced bio-char may help sustaining the development of biodiesel industry.」(第949頁、上から5行目~6行目)
(翻訳)
ゴムの種子の殻(RSS)と生成されたバイオ炭の利用は、バイオディーゼル産業の持続的な発展に役立つ可能性がある。
10 甲10の記載
甲10には、次の記載がある。翻訳については、合議体が作成した。
「
[図:0001415322000021.jpg]
」(1033頁)
(翻訳:関連する経路のみ)
「Rubber seed」(ゴムの実)→「Dehulling」(殻むき)→「Hull」(殻)→「Pyrolysis」(熱分解)→「Bio-char」(バイオ炭)
「Rubber seed」(ゴムの実)→「Drying」(乾燥)
11 甲11の記載
甲11には、次の記載がある。翻訳については、申立人が提出した抄訳を翻訳として採用した。
(1)「The use of rubber-seed shell as a raw material for the production of activated carbon with physica1 activation was investigated.」(第539頁、ABSTRACT、上から1行目~2行目)
(翻訳)
物理的活性化を伴う活性炭の製造のための原料としてのゴム種子の殻の使用について検討した。
(2)「2.2.1. Carbonization
Pyrolysis of fresh rubber-seed shell was performed in a carbonization device under a flow of nitrogen gas. The sample was heated at 10℃min-1 from room temperature to the range of 400-650℃.」(第540頁、左欄、2.2.1. Carbonization)
(翻訳)
2.2.1 炭化処理
ゴム種子の殻の熱分解は炭化処理装置の中で窒素ガスをフローさせながら行った。試料は、室温から400℃~650℃の領域まで、10℃/minの昇温速度で加熱した。
(3)「2.2.2. Activation
Following the carbonization, the carbon samples were pyrolized also in the same device, in a flow of vapor stream, to the range of 800-900℃, activated carbons with various specific surface area were prepared.」(第544頁、左欄、2.2.2.Activation)
(翻訳)
2.2.2. 活性化
炭化処理に続き、各炭素試料を、同じ装置中で、水蒸気をフローさせながら、800℃~900℃の領域まで加熱することにより、熱分解し、様々な比表面積を有する活性炭を調製した。
(4)「The results of this work demonstrate that rubber-seed shell is an attractive source of raw material for preparing high quality activated carbon by physical activation with steam.」(第543頁、Conclusions、上から1行目~3行目)
(翻訳)
本研究の結果により、ゴム種子の殻は、水蒸気による物理的活性化によって商品質の活性炭を製造するための原料の魅力的な供給源であることが示された。
(5)「Thus preparing activated carbon from waste rubber-seed she11 is a promising work.」(第543頁、Conclusions、右欄、下から2行目~1行目)
(翻訳)
従って、廃棄されているゴム種子の殻から活性炭を調製することは有望な仕事である。
12 甲12の記載
甲12には、次の記載がある。
「
[図:0001415322000022.jpg]
」
13 甲13の記載
甲13には、次の記載がある。翻訳については、申立人が提出した抄訳を翻訳として採用し、抄訳がない箇所は、当審により、翻訳を作成した。
(1)「Several Countries have dedicated crops for biogas production. It is produced by anaerobic digestion of biomass. The controlled anaerobic process leads to primarily a gas mixture of 55-75% methane, 25-45% C02. This mixture is called biogas.」(第950頁、左欄、下から12行目~8行目)
(翻訳)
いくつかの国では、バイオガス生産用の作物がある。バイオガスは、バイオマスの嫌気性消化によって生産される。制御された嫌気性プロセスにより、主にメタン含量が55~57%、二酸化炭素含量が25~45%の混合ガスが生成される。この混合物はバイオガスと呼ばれている。
(2)「
[図:0001415322000023.jpg]
」(第951頁)
(翻訳:関連する箇所のみ)
「AGRI-WASTES」(農業廃棄物)→「OILCAKES」(オイルケーキ)→「ANAEROBIC DIGESTOR」(嫌気性消化装置)→「BIOGAS」(バイオガス)
(3)「Oi1 cakes are one of the common Agri-wastes, as it is a foremost product of the oil extraction from oilseeds [18]. Traditionally, the two methods used for oi1 extractions are mechanical extraction or solvent extraction. The former uses a mechanical device such as a screw press, and the later use solvents, hexane being the most common. The by-product obtained by pressing is termed as oil cake, and that by solvent extraction is labelled as oil meal [18].」(第950頁、右欄、下から5行目~第951頁、左欄、上から3行目)
(翻訳)
オイルケーキは、油糧種子から油を抽出する際の主要な産物であるため、一般的な農業廃棄物の一つである[18]。伝統的に、油の抽出には機械的抽出と溶剤抽出の2つの方法が用いられてきた。前者はスクリュープレスのような機械的装置を使用する。後者は溶剤を使用し、ヘキサンが最も頻繁に用いられる。圧搾によって得られる副産物はオイルケーキと呼ばれ、溶剤抽出によって得られる副産物はオイルミールと呼ばれる。
(4)「On the other hand, the oi1 cake resulting from the non-edible seeds that cannot be used as animal feeds owing to the existence of toxic compounds, and other impurities are distinguished as non-edible oil cakes [18].」(第951頁、左欄、上から12行目~15行目)
(翻訳)
一方、毒性のある化合物やその他の不純物の存在により、飼料として使用できない非食用種子から得られる油かすは、非可食オイルケーキとして区別される。
(5)「A massive amount of oil cake is produced every year according to Food and Agricultural Organisation (FAO)'s Food Outlook November 2020 report the global production of oil cakes and meal is forecasted to be 158.7 million tonnes globally in 2020-2021 which is similar to production in 2018-2019 which was 158.3 million tonnes [22]. Recently, biogas production from these cakes are gaining traction, resulting in more and more information on this innovative research in biogas production.」(第951頁、右欄、上から2~10行目)
(翻訳)
国連食糧農業機関(FAO)のFood Outlook November 2020によれば、毎年大量のオイルケーキが生産されており、オイルケーキとオイルミールの世界生産量は2020-2021年に1億5,870万トンになると予測されており、これは2018-2019年の生産量である1億5,830万トンと同水準である[22]。最近、これらのオイルケーキからのバイオガスの生産が注目を集めており、その結果、バイオガスの生産におけるこの革新的な研究に関する情報がますます増加している。
(6)「
[図:0001415322000024.jpg]
」(第956頁)
(翻訳:図4のタイトルと下線部の用語のみ)
図4:主な非可食用の脂肪酸組成。a飽和脂肪酸とb不飽和脂肪酸
「Rubber」(ゴム)
(7)「
[図:0001415322000025.jpg]
」(第956頁)
(翻訳:関連する箇所のみ)
「Oil Cakes」(オイルケーキ)→「Anaerobic digestion」(嫌気性消化)→「Biogas」(バイオガス)
(8)「Critical analysis of the literature shows that oi1 cakes oil/meals produced as by-products during oil extraction from edible and no-edible seeds, by the virtue its high nutritional content, could act as an excellent substrate for biogas production. As oi1 production is showing an upward trend in recent times, the expected output of oi1 cakes is also increasing. Biogas production from these oil cakes could be enhanced many folds by co-digestion with other substrates like animal manure. The edible oil cakes have been traditionally used mainly as animal fodder, but non-edible cakes do not have that utility. Therefore, they can be diverted for biogas production entirely.」(第963頁、左欄、上から4行目~15行目)
(翻訳)
文献の批判的な分析により、食用および非食用の種子から油を抽出する際に副産物として発生するオイルケーキ/オイルミールは、その高い栄養含有量により、バイオガス生産の優れた基質として機能し得ることが示された。昨今、油の生産が増加傾向にあるため、オイルケーキの生産量も増加していると予測される。これらのオイルケーキからのバイオガスの生産は、家畜のふん尿のような他の基質と共消化することで、何倍にも高め得る。可食オイルケーキは従来、主に家畜の飼料として利用されてきたが、非可食オイルケーキにはそのような用途はない。従って、それらは完全にバイオガス生産に転用することができる。
14 甲14の記載
甲14には、次の記載がある。翻訳については、申立人が提出した抄訳を翻訳として採用した。
(1)「Several studies on biorefinery of rubber seeds to produce other valuable bioproducts apart from latex have been carried out. The oil may be considered as a valuable source for producing biodiesel and biopolymers whereas the protein rich press cake may be valorised either as a valuable source for protein, biomaterials, and theremochemical process such as pyrolysis.」(第591頁、Introduction、上から7行目~11行目)
(翻訳)
ゴムの種子のバイオリファイナリーについて、ラテックス以外の価値あるバイオ製品を生産するためのいくつかの研究が行われている。油は、バイオディーゼルやバイオポリマーを生産するための貴重な供給源と考えられ、一方、タンパク質を豊富に含むプレスケーキは、タンパク質、バイオ材料、バイオガス、熱分解等の生化学的プロセス用の貴重な供給源として価値化される可能性がある。
(2)「The remaining biomass after the isolation of oil from rubber seeds (shell and press cake) which is normally discarded as waste contain protein and lignocellulose.」(第591頁、 Introduction、上から11行目~12行目)
(翻訳)
ゴムの種子から油を分離した後に残るバイオマス(殻とプレスケーキ)は、通常は廃棄物として捨てられるが、タンパク質とリグノセルロースを含んでいる。
(3)「2.2 Hydraulic pressing of rubber seeds
Rubber seeds from PT. Bajabang were first dehulled to separate kernels from the shells. The kernels were grounded and dried in the oven at 60℃ overnight. Approximately 500 g of sample was placed in a pressing chamber of a laboratory scale hydraulic pressing machine and pressed at room temperature (27℃) for overnight to isolate the oil from the kernel. The deoiled kernels or commonly known as pressed cake was used a substrate for the cultivation of BSFL.」(第592頁、左欄、上から27行目~35行目)
(翻訳)
2.2 ゴムの種子の油圧プレス
PT. Bajabangから得られたゴムの種子は、まず、殻から核を分離するために殻を剥かれた。核を粉砕し、60℃のオーブンで一晩乾燥させた。約500gの試料をラボスケールの油圧プレス式圧搾機の圧搾室に入れ、室温(27℃)で一晩圧搾し、核から油を分離した。一般にプレスケーキとして知られている脱油した核をブラックソルジャーフライの幼虫の培養に用いた。
15 甲15の記載
甲15には、次の記載がある。翻訳については、申立人が提出した抄訳を翻訳として採用した。
(1)「The rubber seeds consists of a kernel (61 wt%) surrounded by a hard shell (39 wt%). The kerne1 contains 40-50 wt% of oil [6],[7] embedded in a protein rich matrix which can be isolated from seeds by using for instance an expeller. By assuming the given composition and a rubber seed yield in the range of 100-1200 kg/(ha. y), the productivity of rubber seed oil (RSO) yield is estimated to be in the range 5-300 kg/(ha. y). The oil is a valuable source for the production of biodiesel (and by-product glycerol) and biopolymers [8],[9]. The protein rich press cake may find applications as a valuable source of protein [10], for instance to be used as cattle feed. In addition the press cake may also be used for the production of biomaterials such as binderless boards [11],biogas and as the input for thermochemical processes like pyrolysis [12],[13].」(第268頁、 1. INTRODUCTION、左欄、下から2行目~右欄、上から12行目)
(翻訳)
ゴムの種子は、硬い殻(39wt%)に覆われた核(61wt%)で構成されている。核には40~50wt%の油[6],[7]が含まれており、油はタンパク質が豊富なマトリックスに含まれており、例えば、圧搾機を用いて分離することができる。上記の所定の組成と100~1200kg/(ha.y.)の種子の収量を仮定すると、ゴムの種子油(RSO)の収量の生産性は5~300kg/(ha.y.)の範囲と推定される。この油は、バイオディーゼル(及び副産物のグリセロール)やバイオポリマーを生産するための貴重な原料である[8],[9]。タンパク質を豊富に含むプレスケーキは、貴重なタンパク源として、例えば、家畜の飼料として利用され得る[10]。さらに、プレスケーキは、バインダーレスボードなどのバイオマテリアル[11]やバイオガスの製造に使用でき、また、熱分解等の熱化学プロセスの原料としても使用できる[12],[13]。
(2)「
[図:0001415322000026.jpg]
」(第268頁)
(3)「The seeds typically have a moisture content of around 10 wt%. Directly after harvesting, the seeds are dried in an oven operated at 60℃ to reduce the moisture content to 7 wt% to improve storage stabi1ity.」(269頁、左欄、下から12行目~9行目)
(翻訳)典型的には、種子の水分含量は10w%前後である。収穫の直後、種子を60℃のオーブンで乾燥させ、水分含量を7wt%まで下げ、貯蔵安定性を向上させる。
(4)「
[図:0001415322000027.jpg]
」(第269頁)
第5 申立理由(進歩性欠如)についての当審の判断
1 甲1に記載された発明
甲1の第1頁~第2頁の「はじめに」には、「本研究ではゴムの種子から油とタンパク質を高い回収率で同時に得ることを目的としている」ことが記載されている。
また、甲1の第9頁の「結論」には、ゴム種子の核から、スクリュープレスにより油を回収し、プレスケーキから、水-アルカリ-アルカリ処理法により、最大のタンパク質回収を達成できたこと、ゴム種子の核から、ヘキサンを用いて核から油を抽出し、酵素処理によってミールからタンパク質を回収することは、ゴム種子の核を総合的に利用するための一つのアプローチを提供することが記載されている(上記第4の摘記1(9)を参照)。
さらに、甲1の第2頁の「試料及び方法」には、ゴム種子からの核の分離、乾燥処理、スクリュープレスや溶媒抽出によるゴム種子からの油の回収、水-アルカリ-アルカリ処理や酵素によるタンパク質の抽出について具体的に記載されている(上記第4の摘記1(3)~(7)を参照)。
そこで、甲1の「はじめに」、「結論」、「試料及び方法」の記載に着目して整理すると、甲1には、次の発明(以下「甲1A発明」、「甲1B発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1A発明>
「ゴムの種子の殻を機械的に剥き、核を分離する部分と、
ゴムの種子の核部分を、乾燥しやすいように細かく切断する部分と、
切断された核部分を60℃で6時間乾燥し、水分含量を29%から4~5%に低下させる部分と、
乾燥したゴムの種子の核部分を粉砕する部分と、
粉砕された核部分をスクリュープレスにより圧搾して油を回収する部分と、
スクリュープレスのプレスケーキから、水-アルカリ-アルカリ処理によりタンパク質の抽出を行う部分と、
を備えたゴムの種子から油とタンパク質を高い回収率で同時に得るためのシステム。」
<甲1B発明>
「ゴムの種子の殻を機械的に剥き、核を分離する部分と、
ゴムの種子の核部分を、乾燥しやすいように細かく切断する部分と、
切断された核部分を60℃で6時間乾燥し、水分含量を29%から4~5%に低下させる部分と、
乾燥したゴムの種子の核部分を粉砕する部分と、
粉砕された核部分をn-ヘキサンにより抽出を行い、抽出物からヘキサンを蒸発させて、油を回収する部分と、
溶媒抽出から副生するミールから、酵素処理によりタンパク質の抽出を行う部分と、
を備えたゴムの種子から油とタンパク質を高い回収率で同時に得るためのシステム。」
2 対比・判断
(1)甲1A発明との対比・判断
ア 対比
甲1A発明と本件発明1を対比する。
甲1A発明の「ゴムの種子」は、本件発明1の「天然ゴムの実」に相当し、甲1A発明の「ゴムの種子の殻を機械的に剥き、核を分離する部分」は、本件発明1の「天然ゴムの実を、殻部分と核部分とに分離処理する分離部」に相当する。
また、甲1A発明の「切断された核部分を60℃で6時間乾燥し、水分含量を29%から4~5%に低下させる部分」、「乾燥したゴムの種子の核部分を粉砕する部分」はそれぞれ、本件発明1の「分離処理した前記核部分を加熱処理する加熱処理部」、「加熱処理した前記核部分を粉砕処理する粉砕部」に相当する。
さらに、甲1A発明の「粉砕された核部分をスクリュープレスにより圧搾して油を回収する部分」は、本件発明1の「粉砕処理した前記核部分から植物油を抽出処理する抽出部」に相当する。
そして、甲1A発明の「ゴムの種子から油とタンパク質を高い回収率で同時に得るためのシステム」は、バイオマスであるゴムの種子から、油やタンパク質といった有用なものを製造するものであるから、本件発明1の「天然ゴムの実由来のバイオリファイナリーシステム」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1A発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムであって、
天然ゴムの実を、殻部分と核部分とに分離処理する分離部と、
分離処理した前記核部分を加熱処理する加熱処理部と、
加熱処理した前記核部分を粉砕処理する粉砕部と、
粉砕処理した前記核部分から植物油を抽出処理する抽出部と、
を備える天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。」
<相違点1A-1>
本件発明1は、抽出した植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成部を備えるのに対して、甲1A発明は、抽出した植物油に対してそのような処理を行うことについての特定がない点。
<相違点1A-2>
本件発明1は、分離処理した殻部分を炭化処理して、バイオ炭を生成する第2生成部を備えるのに対して、甲1A発明は、分離処理した殻部分をどのように扱うかについての特定がない点。
<相違点1A-3>
本件発明1は、抽出処理後の核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成部を備えるのに対して、甲1A発明は、抽出処理後の核部分の残渣から、水-アルカリ-アルカリ処理によりタンパク質の抽出を行う部分を備える点。
<相違点1A-4>
本件発明1は、天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムが、天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成するものであるのに対して、甲1A発明は、ゴムの種子から、油とタンパク質を得るものである点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点1A-3及び相違点1A-4についてまず検討する。
植物油を抽出した残渣をメタン発酵処理する点について、甲12には、未利用バイオマス資源である木の実から植物油を抽出した残渣として、殻と種子の搾り滓が残るが、種子の搾り滓は、バイオガス原料としての研究が進められている旨記載されている(上記第4の摘記12を参照)。
また、甲13には、バイオマスの嫌気性消化によって生産される、主にメタン含量が55~57%、二酸化炭素含量が25~45%の混合ガスは、バイオガスと呼ばれる旨(上記第4の摘記13(1)を参照)、食用および非食用の種子から油を抽出する際に副産物として発生するオイルケーキ/オイルミールは、バイオガス生産の優れた基質として機能し得る旨、ゴムの種子から得られるものを含む非可食オイルケーキは、完全にバイオガス生産に転用できる旨記載されている(上記第4の摘記13(6)、(8)を参照)。
さらに、甲14には、ゴムの種子のバイオリファイナリーにおいて、油を抽出した後のタンパク質を豊富に含むプレスケーキは、タンパク質、バイオ材料、バイオガス、熱分解等の生化学的プロセス用の貴重な供給源として価値化される可能性がある旨記載されている(上記第4の摘記14(1)を参照)。
加えて、甲15には、ゴムの種子油を抽出した後のタンパク質を豊富に含むプレスケーキは、バインダーレスボードなどのバイオマテリアルやバイオガスの製造に使用できる旨記載されている(上記第4の摘記15(1)を参照)。
そして、甲4の段落【0047】には、非食用の油糧種子から、バイオエタノールの原料となる糖類、薬効成分、バイオディーゼル燃料の原料となる植物油脂そしてメタンガスの原料となる残渣およびバイオマスを一連のカスケードで製造することができることが記載されている。
そうすると、ゴムの種子油を製造する際の副産物として得られるオイルケーキやオイルミールを用いて、嫌気性消化によってメタンガスを含むバイオガスを製造できることは、当業者にとっての周知の技術事項といえる。
しかしながら、甲1A発明は、ゴムの実からの油とタンパク質を高い回収率で同時に得ることを目的とするものである。そして、甲1には、ゴムの種子の核部分から油を抽出した残渣を、タンパク質の回収以外の用途に用いることについては記載も示唆もされていない。
してみると、ゴム種子油の抽出処理後の核部分の残渣を発酵処理して、メタンガスを生成することが周知の技術事項であったとしても、油及びタンパク質を高い回収率で得ることを目的とするゆえ、油を回収したあとのプレスケーキからタンパク質を回収することを必須の構成とする甲1A発明において、スクリュープレスにより圧搾して油を回収したあとのプレスケーキからタンパク質を回収する部分を、発酵処理によりバイオガスを生成する部分に置き換える動機付けはないし、そのように置き換えることが容易ともいえない。
また、甲2、甲3及び甲5には、ゴムの種子油に、メチルエステル化処理をしてバイオディーゼルを製造すること、甲6~8には、ゴムの種子油に、水素化処理をしてバイオ燃料を製造すること、甲9~甲11には、ゴムの種子の殻を熱分解して、バイオ炭を得ることは記載されているが、ゴムの種子の核部分から油を抽出した残渣から、バイオガスを製造することについては記載も示唆もされていない。
さらに、摘記を省略した甲16~甲25について、甲16~甲19には、ゴムの種子の乾燥に関する技術が記載され、甲17、甲20~甲21には、ヘキサンを用いてゴム種子から油を抽出する技術が記載され、甲22には、ゴム種子油のトランスエステル化反応によりバイオディーゼルを製造する際に、グリセロールが副生成物として生じることが記載され、甲23~甲25には、ゴムの種子の殻を炭化処理において、カーボンブラックや、電極に用いられるものが得られることが記載されているが、ゴムの種子の核部分から油を抽出した残渣から、バイオガスを製造することについては記載も示唆もされていない。
してみれば、甲1A発明において、甲1~甲25に記載された事項に基づいて、相違点1A-3及び相違点1A-4の構成を導くことは当業者といえども容易に想到し得たことではない。
したがって、相違点1A-1及び相違点1A-2を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1A発明及び甲1~甲25に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
ウ 本件発明2について
本件発明2と、甲1A発明を対比すると、甲1A発明は、「ゴムの種子を、殻部分と核部分とに分離処理する分離部と、分離処理した前記核部分を加熱処理する加熱処理部」を備えるのに対して、本件発明2は、「天然ゴムの実を丸ごと加熱処理する加熱処理部」を備えており、両者は、天然ゴムの実の核を加熱処理する加熱処理部を備える点で共通する。
そして、その余の点については、前記アで検討したのと同様の相当関係があるから、本件発明2と甲1A発明とは、相違点1A-1、相違点1A-2、相違点1A-3及び相違点1A-4に加え、以下の点で相違する。
<相違点1A-5>
本件発明2は、加熱処理部が、天然ゴムの実を丸ごと加熱処理するものであるのに対して、甲1A発明は、加熱処理部が、ゴムの種子から殻部分が分離処理された核部分を加熱処理する点。
そこで、これらの相違点について検討すると、相違点1A-3及び相違点1A-4についての判断は、前記イと同様であるから、甲1A発明において、甲1~甲25に記載された事項に基づいて、相違点1A-3及び相違点1A-4の構成を導くことは当業者といえども容易に想到し得たことではない。
したがって、相違点1A-1、相違点1A-2及び相違点1A-5を検討するまでもなく、本件発明2は、甲1A発明及び甲1~甲25に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
エ 本件発明3~10について
本件発明3~9は、本件発明1又は2を包含し、さらに特定事項を追加したものであり、本件発明10は、本件発明2を包含し、さらに特定事項を追加したものであるから、前記イ及びウで検討したのと同様の理由により、甲1A発明及び甲1~甲25に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
オ 本件発明11について
本件発明11は、発明のカテゴリーが異なることを除けば、本件発明1の発明特定事項を実質的に全て含んでいるから、本件発明11は、前記イで検討したのと同様の理由により、甲1A発明及び甲1~甲25に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
カ 本件発明12について
本件発明12は、「プログラム」の発明であるのに対して、本件発明1は、「システム」の発明である点を除けば、本件発明12は、本件発明1の発明特定事項を実質的に全て含んでいる。
そうすると、本件発明12は、前記イで検討したのと同様の理由により、甲1A発明及び甲1~甲25に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
キ 本件発明13について
本件発明13は、発明のカテゴリーが異なることを除けば、本件発明2の発明特定事項を実質的に全て含んでいるから、本件発明13は、前記ウで検討したのと同様の理由により、甲1A発明及び甲1~甲25に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
ク 本件発明14について
本件発明14は、「プログラム」の発明であるのに対して、本件発明2は、「システム」の発明である点を除けば、本件発明14は、本件発明2の発明特定事項を実質的に全て含んでいる。
そうすると、本件発明14は、前記ウで検討したのと同様の理由により、甲1A発明及び甲1~甲25に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
(2)甲1B発明との対比・判断
ア 対比
甲1B発明と本件発明1を対比すると、甲1B発明の「粉砕された核部分をn-ヘキサンにより抽出を行い、抽出物からヘキサンを蒸発させて、油を回収する部分」は、本件発明1の「粉砕処理した前記核部分から植物油を抽出処理する抽出部」に相当する。
その余の点については、前記(1)アで検討したのと同様の相当関係があるから、本件発明1と甲1B発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムであって、
天然ゴムの実を、殻部分と核部分とに分離処理する分離部と、
分離処理した前記核部分を加熱処理する加熱処理部と、
加熱処理した前記核部分を粉砕処理する粉砕部と、
粉砕処理した前記核部分から植物油を抽出処理する抽出部と、
を備える天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステム。」
<相違点1B-1>
本件発明1は、抽出した植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成部を備えるのに対して、甲1B発明は、抽出した植物油に対してそのような処理を行うことについての特定がない点。
<相違点1B-2>
本件発明1は、分離処理した殻部分を炭化処理して、バイオ炭を生成する第2生成部を備えるのに対して、甲1B発明は、分離処理した殻部分をどのように扱うかについての特定がない点。
<相違点1B-3>
本件発明1は、抽出処理後の核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成部を備えるのに対して、甲1B発明は、抽出処理後の核部分の残渣から酵素処理によりタンパク質の抽出を行う部分を備える点。
<相違点1B-4>
本件発明1は、天然ゴムの実由来バイオリファイナリーシステムが、天然ゴムの実から、バイオ燃料、バイオ炭、およびメタンガスを生成するものであるのに対して、甲1B発明は、ゴムの種子から、油とタンパク質を得るものである点。
そこで、これらの相違点について検討すると、相違点1B-3及び相違点1B-4についての判断は、前記(1)イの相違点1A-3及び相違点1A-4の判断と同様であるから、甲1B発明において、甲1~甲25に記載された事項に基づいて、相違点1B-3及び相違点1B-4の構成を導くことは当業者といえども容易に想到し得たことではない。
したがって、相違点1B-1及び相違点1B-2を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1B発明及び甲1~甲25に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
イ 本件発明2~14について
甲1B発明と本件発明2~14との対比、判断については、前記(1)ウ~クで検討した内容と実質的に同じである。
そうすると、本件発明2~14は、甲1B発明及び甲1~甲25に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
(3)申立人の主張について
ア 申立人の主張
申立人は、特許異議申立書において、甲1発明及びその本件発明1との相違点について、以下(ア)、(イ)のように認定できるとし、当該相違点の1つについて以下(ウ)のように主張する。
(ア)甲1発明(特許異議申立書の第80~81頁)
a1:ゴムの種子からゴムの種子油を生成するゴムの種子のバイオリファイナリー方法であって、
b1:ゴムの種子の殻を機械的に剥き、核を分離する工程と、
c1:分離した核を60℃で6時間または105℃で3時間乾燥する工程と、
d1:スクリュープレスによる圧搾の前には乾燥した核を粉砕し、ふるいにかけ、平均粒径を47.0mmする工程、及び/又は、ヘキサンによる溶媒抽出の前には乾燥した核を0.5mm以下に粉砕する工程と、
e1:粉砕した核から、スクリュープレスによる圧搾及び/又はヘキサンによる溶媒抽出によりゴムの種子油を抽出する工程と、
を備えるゴムの種子のバイオリファイナリー方法。
(イ)相違点(特許異議申立書の第88~89頁)
<相違点1-1>
本件発明1は「抽出した前記植物油を、メチルエステル化処理、または水素化処理し、バイオ燃料を生成する第1生成部」を備え、「バイオ燃料・・・を生成する」のに対し、甲1発明は上記第1生成部を備えず、バイオ燃料を生成していない点。
<相違点1-2>
本件発明1は「分離処理した前記殻部分を炭化処理して、バイオ炭を生成する第2生成部」を備え、「バイオ炭・・・を生成する」のに対し、甲1発明は上記第2生成部を備えず、バイオ炭を生成していない点。
<相違点1-3>
本件発明1は、「前記抽出処理後の前記核部分の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成する第3生成部」を備え、「メタンガスを生成する」のに対し、甲1発明は上記第3生成部を備えず、メタンガスを生成していない点。
(ウ)相違点1-3の構成についての容易想到性(特許異議申立書の第99~103頁)
相違点1-3の構成について、甲13~甲15及び甲4等に示されるように、ゴムの種子(実)の核からゴムの種子油(植物油)を抽出した後に残る核の残渣がメタンガスの原料となること、抽出処理後の核の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成することは、当業者にとっての周知の技術的事項である。
そして、甲1には、天然ゴム産業の経済的価値を高めるため、ゴムの種子の油だけでなく、すべての部分を分離し、有効利用すべきである旨が記載されているから、甲1に接した当業者であれば、ゴムの種子をより一層の有効利用し、天然ゴム産業の経済的価値を高めるため、当該周知技術を参酌し、甲1に記載された発明において、ゴムの実(種子)の核の残渣をメタン発酵処理して、メタンガスを生成することは容易になし得たことである。
イ 申立人の主張に対する当審の判断
前記ア(ア)~(イ)の甲1発明及び相違点の認定について検討すると、甲1はその表題(上記第4の摘記1(1))や、「本研究ではゴムの種子から油とタンパク質を高い回収率で同時に得ることを目的としている」(上記第4の摘記1(2))等の記載からも明らかなとおり、ゴムの種子から油とタンパク質を抽出するバイオファイナリー方法について開示するものであり、ゴムの種子の油を回収した後の残渣であるプレスケーキやミールは、あくまでもタンパク質を回収するためのものとして開示されるものである。
したがって、甲1の記載から、タンパク質の抽出工程を除いて申立人のように引用発明を認定することが適切とはいえない。
そして、申立人は、上記相違点1-3について、油を抽出した残渣からタンパク質の抽出を行うことを相違点に含めていないが、当該構成は、甲1発明の必須の構成要素といえるから、上記相違点1-3は、この点を含めて認定する必要があると解される。
以上を踏まえ、前記ア(ウ)の申立人の主張について検討すると、前記「2(1)甲1A発明との対比・判断」でも検討したとおり、ゴムの種子から油とタンパク質を高い回収率で同時に得る甲1発明において、ゴムの種子から油を抽出した後の残渣であるプレスケーキ又はミールからタンパク質の抽出を行うことは、甲1発明の必須の構成要素であり、また、甲1には、油を抽出した残渣をタンパク質の抽出以外に用いることは記載も示唆もないことからすれば、ゴムの種子(実)の核からゴムの種子油(植物油)を抽出した後に残る核の残渣がメタンガスの原料となること、抽出処理後の核の残渣をメタン発酵処理し、メタンガスを生成することが当業者にとっての周知の技術事項だったとしても、甲1発明において、油を回収したあとのプレスケーキ又はミールからタンパク質を回収する部分を、発酵処理によりバイオガスを生成する部分に置き換える動機はない。
よって、上記申立人の主張は採用できない。
(4)小括
以上のとおり、本件発明1~14は、甲1に記載された発明、及び、甲1~甲25に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得たものであるとすることはできないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、申立人による特許異議申立書の理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~14に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700409